説明

建設機械

【課題】 旋回フレームに対して建屋を傾転させるときにだけ傾転装置を設けることにより、旋回フレーム上の設置スペースを有効利用する。
【解決手段】 旋回フレーム5に対して建屋9を傾転させるための傾転装置18は、旋回フレーム5、建屋9と別個に設ける。この上で、カウンタウエイト7の上面7Bには、傾転装置18の下側取付部27を取付けることができる下側ブラケット16を設け、建屋9のキャブボックス14の後面部14Bには、傾転装置18の上側取付部28を取付けることができる上側ブラケット17を設ける構成としている。従って、旋回フレーム5に対して建屋9を傾転させる場合には、別個に設けられた傾転装置18を用意し、下側ブラケット16と上側ブラケット17とに取付けることにより、旋回フレーム5に対して建屋9を傾転させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油圧ショベル等の建設建設に関し、特に、旋回フレームに対してフロアが傾転可能となった建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械としての油圧ショベルには、ミニショベルと呼ばれる小型の油圧ショベルがある。この小型の油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体の前,後方向の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置とにより構成されている。
【0003】
また、上部旋回体は、支持構造体を形成する旋回フレームと、該旋回フレームの後側に搭載されたエンジンと、該エンジンの後側に位置して前記旋回フレームの後部に設けられ前記作業装置との重量バランスをとるカウンタウエイトと、前記エンジンの前側に位置して前記旋回フレーム上に設けられオペレータが着座する運転席を有する建屋とにより大略構成されている。この建屋は、エンジンの前側で旋回フレーム上を覆い運転席が載置されたフロア部材と、該フロア部材上に設けられ運転席の周囲および上方を覆ったキャブボックスまたは運転席の上方を覆ったキャノピとにより構成されている。
【0004】
ここで、小型の油圧ショベルでは、フロア部材の下側に配設した制御弁装置、旋回モータ等の機器類に対してメンテナンス作業を行えるように、このフロア部材を含む建屋を旋回フレームの前側を支点として該旋回フレーム上で傾転可能(チルトアップ、チルトダウン可能)に設ける構成としている。
【0005】
この場合、従来技術による油圧ショベルでは、建屋を傾転させるための動力源として、例えばガスばね等のアクチュエータを旋回フレームとフロア部材との間に設ける構成としている。これにより、ガスばねの付勢力によって建屋の後側を持ち上げることができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第WO2006/080488号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した特許文献1によるものでは、旋回フレームとフロア部材との間にガスばねを設けているから、このガスばねによって制御弁装置、旋回モータ等の機器類、配管、配線類を配置するためのスペースが狭くなる上に、組立作業時やメンテナンス作業時の障害ともなっている。
【0008】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、旋回フレームに対して建屋を傾転させるときに傾転装置を設けることができ、旋回フレーム上の設置スペースを有効利用できるようにした建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による建設機械は、自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置とからなり、前記上部旋回体は、支持構造体を形成する旋回フレームと、該旋回フレームの後部に設けられたカウンタウエイトと、前記旋回フレームの前側を支点として前記旋回フレーム上で傾転可能に設けられオペレータが着座する運転席を有する建屋とを備えてなる。
【0010】
そして、上述した課題を解決するために、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記建屋を傾転するために、外部からの操作によって長さ方向の下側に設けた下側取付部と上側に設けた上側取付部との間の離間距離を伸長、縮小する傾転装置を別個に設け、前記カウンタウエイトの上側部位には、前記建屋を傾転するときに前記傾転装置の下側取付部を取付けるための下側ブラケットを設け、前記建屋の後側部位には、前記傾転装置の上側取付部を取付けるための上側ブラケットを設ける構成としたことにある。
【0011】
請求項2の発明は、前記下側ブラケットと前記上側ブラケットとは、前記建屋の左,右方向の中間位置に配置する構成としたことにある。
【0012】
請求項3の発明は、前記旋回フレームの前側と前記建屋の前側との間には、左,右方向に離間した位置で前記旋回フレームに対し前記建屋を傾転可能に支持する2個の傾転支持機構を設け、前記建屋は、前記2個の傾転支持機構を支点として前記傾転装置を用いて3点で支持した状態で傾転させる構成としたことにある。
【0013】
請求項4の発明は、前記傾転装置は、複数本のアームを交差して連結することにより菱形状に配置し、この菱形状に配置した前記各アームの幅寸法を調整することにより伸長、縮小するパンタグラフ式のジャッキ装置として構成し、前記アームの下端側を前記下側取付部として前記下側ブラケットに取付け、前記アームの上端側を前記上側取付部として前記上側ブラケットに取付ける構成としたことにある。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、旋回フレームに対して建屋を傾転させる傾転装置は、この旋回フレーム、建屋と別個に設けている。この上で、カウンタウエイトの上側部位には、前記傾転装置の下側取付部を取付けることができる下側ブラケットを設け、建屋の後側部位には、前記傾転装置の上側取付部を取付けることができる上側ブラケットを設ける構成としている。
【0015】
従って、旋回フレームに対して建屋を傾転させる場合には、別個に設けられた傾転装置を用意し、その下側取付部をカウンタウエイトの下側ブラケットに取付け、上側取付部を建屋の上側ブラケットに取付ける。この状態で、傾転装置を外部から操作し、下側取付部と上側取付部との間の離間距離を伸長させることにより、旋回フレームに対して建屋の後部を上側に傾転(チルトアップ)させることができる。一方、傾転装置を逆方向に操作し、下側取付部と上側取付部との間の離間距離を縮小させることにより、旋回フレームに対して建屋の後部を下側に傾転(チルトダウン)させることができる。
【0016】
この結果、旋回フレームに対して建屋を傾転させるときに傾転装置を取付ければよいから、旋回フレーム上に各種機器類を設置するためのスペースを有効利用することができ、上部旋回体を小型化することができる。また、上部旋回体に傾転装置を常時搭載する必要がなくなるから、設置スペースに制約がある小型の建設機械に傾転構造を適用することができる。一方、別個に設けた傾転装置は、他の建設機械で共通して用いることができるから、製造コストを削減することができる。さらに、通常の作業時には、傾転装置を取外すことにより、チルトアップを禁止することができ、いたずら等を防止することができる。
【0017】
請求項2の発明によれば、下側ブラケットと上側ブラケットとを建屋の左,右方向の中間位置に配置しているから、該各ブラケットに取付けた傾転装置によって建屋を傾転させるときに、該建屋をバランス良く傾転させることができる。
【0018】
請求項3の発明によれば、旋回フレームの前側と建屋の前側との間に左,右方向に離間して設けた2個の傾転支持機構により、旋回フレームに対し2個の傾転支持機構を支点として建屋を傾転させることができる。このときに、建屋は、前側に位置する2個の傾転支持機構と後側に位置する1個の傾転装置との3点で支持した状態で安定的に傾転させることができる。
【0019】
請求項4の発明によれば、傾転装置としてパンタグラフ式のジャッキ装置を用いているから、交差して連結することにより菱形状に配置された複数本のアームの幅寸法を調整することにより、上,下方向に大きく伸長、縮小することができる。これにより、アームの下端側を下側取付部としてカウンタウエイトの下側ブラケットに取付け、アームの上端側を上側取付部として建屋の上側ブラケットに取付けることにより、パンタグラフ式のジャッキ装置を用いて建屋を傾転させることができる。また、パンタグラフ式のジャッキ装置は、縮小した状態ではコンパクトにすることができ、容易に持ち運ぶことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるキャブ仕様の油圧ショベルを示す正面図である。
【図2】図1の油圧ショベルを右後側から見た外観斜視図である。
【図3】図2の油圧ショベルに傾転装置を取付けた状態を示す外観斜視図である。
【図4】傾転装置を伸長して建屋をチルトアップした状態の油圧ショベルを図2と同様位置から見た外観斜視図である。
【図5】油圧ショベルを後側から拡大して示す左側面図である。
【図6】旋回フレームと傾転支持機構のフレーム側軸受を左後側から見た外観斜視図である。
【図7】旋回フレームとフロア部材と傾転支持機構とを拡大して示す分解斜視図である。
【図8】下側ブラケットと上側ブラケットをカウンタウエイト、キャブボックス等と一緒に示す要部拡大の外観斜視図である。
【図9】傾転装置を取付時の右後側から拡大して示す外観斜視図である。
【図10】傾転装置を取付時の右前側から拡大して示す外観斜視図である。
【図11】傾転装置を取付時の前側から示す正面図である。
【図12】図11に示す傾転装置の右側面図である。
【図13】傾転装置を伸長させた状態を示す動作説明図である。
【図14】本発明の第2の実施の形態によるキャブ仕様の油圧ショベルを示す正面図である。
【図15】分解した下側ブラケットと上側ブラケットをカウンタウエイト、キャブボックス等と一緒に示す要部拡大の外観斜視図である。
【図16】フロア部材と下側ブラケットとを左前側から示す外観斜視図である。
【図17】本発明の第3の実施の形態による傾転装置を示す正面図である。
【図18】本発明の第4の実施の形態によるキャノピ仕様の油圧ショベルを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態に係る建設機械として小型の油圧ショベルを例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
【0022】
図1ないし図13は本発明の第1の実施の形態を示している。図1ないし図5において、1は建設機械としてのキャブ仕様の油圧ショベルで、該油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、上部旋回体3の前側に揺動および俯仰動可能に設けられ土砂の掘削作業等を行うスイング式の作業装置4とにより構成されている。
【0023】
ここで、上部旋回体3は、下部走行体2の車幅とほぼ等しい左,右方向の幅寸法を有し、かつ旋回中心を中心とした旋回半径、一般的には後述するカウンタウエイト7の後面7Aの軌跡からなる仮想円に収まるように、上方から見てほぼ円形状に形成されている。これにより、油圧ショベル1は、上部旋回体3が下部走行体2上で旋回中心を中心として旋回したときに、カウンタウエイト7の後面7Aがほぼ下部走行体2の車幅内に収まる後方小旋回型の油圧ショベルとして構成されている。
【0024】
そして、上部旋回体3は、後述の旋回フレーム5、カウンタウエイト7、建屋9、傾転支持機構15、下側ブラケット16、上側ブラケット17等により構成されている。また、上部旋回体3は、建屋9を前側位置を支点としてチルトアップ(図4の状態)、チルトダウン(図1ないし図3の状態)することができる。
【0025】
5は上部旋回体3の支持構造体を構成する旋回フレームである。この旋回フレーム5は、図6に示す如く、左,右方向の中間部を前,後方向に延びた平板状の底板5Aと、該底板5Aの上面側に左,右方向に離間して略V字状に立設された左縦板5B,右縦板5Cと、該各縦板5B,5Cの前端部に設けられ、作業装置4を支持する支持ブラケット5Dと、前記底板5Aの前端部から左側に延びつつ屈曲して後側に延びた左サイドフレーム5Eと、前記底板5Aの前端部から右側に延びつつ屈曲して後側に延びた右サイドフレーム5Fとにより大略構成されている。
【0026】
ここで、旋回フレーム5の前側位置には、左寄りに位置して左サイドフレーム5Eの上方を左,右方向に延びる前梁5Gが設けられている。そして、旋回フレーム5の前側位置となる前梁5Gには、図7に示すように、左,右方向に間隔をもって後述する傾転支持機構15が取付けられている。
【0027】
また、旋回フレーム5上には、後側に位置してエンジン6(図1中に点線で図示)が搭載されている。さらに、旋回フレーム5上の右側には、後述する建屋9の右側に位置して作動油タンク、燃料タンク(いずれも図示せず)が搭載されている。
【0028】
7はエンジン6の後側に位置して旋回フレーム5の後端部に取付けられたカウンタウエイトである。このカウンタウエイト7は、作業装置4との重量バランスをとるもので、後面7Aが後向きに突出した凸湾曲形状に形成されている。また、カウンタウエイト7は、所望の高さ寸法をもって形成されており、その上面7Bには、図8等に示すように、後述の下側ブラケット16が設けられている。
【0029】
8は旋回フレーム5上に設けられた外装カバーである。この外装カバー8は、建屋9の周囲に設けられ、旋回フレーム5上に搭載されたエンジン6、作動油タンク、燃料タンク等の機器を覆うものである。
【0030】
9は旋回フレーム5上に設けられた建屋で、該建屋9は、油圧ショベル1を操作するオペレータの居住スペースを形成するものである。建屋9は、後述のチルトフロア10、運転席11、キャブボックス14等により旋回フレーム5上に搭載された一つのユニットとして構成されている。建屋9は、その下側に配設された油圧機器等(図示せず)のメンテナンス作業を行うことができるように、旋回フレーム5の前側を支点として該旋回フレーム5上で傾転可能となっている。
【0031】
10は旋回フレーム5上の左側寄りに設けられたチルトフロアである。このチルトフロア10は、図7に示すように、その前側位置が後述の傾転支持機構15を介して旋回フレーム5の前側位置となる前梁5Gに支持され、後側位置がカウンタウエイト7の上面7Bに支持されている。チルトフロア10は、後側に位置してステップ状に形成され、後述の運転席11が搭載される運転席台座10Aと、該運転席台座10Aの後部から後向きに延びた取付板部10Bと、前記運転席台座10Aの前側に位置してオペレータが足を置く足置き場10Cとにより大略構成されている。
【0032】
また、足置き場10Cの前側は、レバー・ペダル取付部10Dとなり、該レバー・ペダル取付部10Dには、後述する走行用の操作レバー・ペダル13等が設けられている。さらに、レバー・ペダル取付部10Dの下面側には、左,右方向に間隔をもって後述する傾転支持機構15のフロア側軸受15Bが取付けられている。
【0033】
11はチルトフロア10を構成する運転席台座10A上に設けられた運転席(図1参照)で、該運転席11は、オペレータが着座するものである。また、運転席11の左,右両側には、作業装置4等を操作するための作業用の操作レバー12(図1中に右側のみ図示)が配設されている。さらに、運転席11の前方となる足置き場10Cのレバー・ペダル取付部10Dには、下部走行体2を走行させるときに手動操作または足踏み操作によって操作する走行用の操作レバー・ペダル13が設けられている。
【0034】
14はチルトフロア10等と共に建屋9を構成するキャブボックスで、該キャブボックス14はチルトフロア10上に設けられている。この場合、キャブボックス14は、チルトフロア10上に載置されるもので、該チルトフロア10とキャブボックス14とは左,右方向で同じ幅方向寸法Wとなっている。キャブボックス14は、前面部14A、後面部14B、左面部14C、右面部14Dおよび天面部14Eにより箱状体として形成されている。また、左面部14Cには、前側寄りに位置して乗降口を開閉するためのドア(図示せず)が開閉可能に設けられている。
【0035】
ここで、後面部14Bは、キャブボックス14の右側寄りに配置され、左面部14Cの後側部分が湾曲して右側に回り込むことにより、該左面部14Cと後面部14Bとが接続されている。
【0036】
15は旋回フレーム5の前側と建屋9の前側との間に設けられた左,右で2個の傾転支持機構である(図7参照)。この2個の傾転支持機構15は、左,右方向に離間した位置、即ち、チルトフロア10のレバー・ペダル取付部10Dの両端位置に設けられている。そして、各傾転支持機構15は、旋回フレーム5の左,右方向に延びる軸線を回動軸線とし、建屋9の前側位置を旋回フレーム5の前側位置に傾転可能(チルトアップ、チルトダウン可能)に取付けるものである。
【0037】
各傾転支持機構15は、旋回フレーム5の前梁5Gの左,右両端部に取付けられたフレーム側軸受15Aと、該フレーム側軸受15Aと対向する位置でチルトフロア10のレバー・ペダル取付部10Dに取付けられた2枚で一対のフロア側軸受15Bと、前記フレーム側軸受15Aとフロア側軸受15Bとを回動可能(傾転可能)に連結する連結ピン15Cとにより大略構成されている。
【0038】
左,右の傾転支持機構15は、連結ピン15Cを支点としてチルトフロア10を傾転可能に支持するもので、チルトフロア10の後側を持上げたチルトアップ位置(図4の位置)と、チルトフロア10の後側を下ろしたチルトダウン位置(図1ないし図3の位置)とに配置することができる。
【0039】
次に、建屋9をチルトアップ、チルトダウンさせるために、カウンタウエイト7と建屋9とに設けられる構成について説明する。
【0040】
16はカウンタウエイト7の上面7Bに設けられた下側ブラケットを示している。この下側ブラケット16は、後述する傾転装置18の下側取付部27が取付け、取外し可能に取付けられるものである。下側ブラケット16は、カウンタウエイト7の上面7Bから上向きに立設された舌片状の板体からなり、その下端部がカウンタウエイト7に取付けられている。この場合、下側ブラケット16は、例えばカウンタウエイト7を吊上げるために設けられたねじ穴を利用して着脱可能に螺着したり、溶接手段を用いて一体的に固着したりすることができる。
【0041】
一方、下側ブラケット16の上側部分には、傾転装置18の下側取付部27を取付けるための下側連結ピン29が挿通されるピン孔16Aが形成されている。ここで、図5に示すように、下側ブラケット16は、建屋9の左,右方向の中間位置、具体的にはキャブボックス14の幅方向寸法Wに対し左,右方向の中間位置に配置されている。
【0042】
17は建屋9の後側部位となるキャブボックス14の後面部14Bに設けられた上側ブラケットである。この上側ブラケット17は、下側ブラケット16と対応するように、キャブボックス14の幅方向寸法Wに対し左,右方向の中間位置に取付けられている。上側ブラケット17は、後面部14Bから後向きに突出した舌片状の板体からなり、その基端側が溶接手段、ねじ止め手段等を用いて後面部14Bに取付けられている。一方、上側ブラケット17の先端側には、傾転装置18の上側取付部28を取付ける上側連結ピン31が挿通されるピン孔17Aが形成されている。
【0043】
このように、カウンタウエイト7の上面7Bに下側ブラケット16を設け、キャブボックス14の後面部14Bに上側ブラケット17を設ける構成としている。従って、下側ブラケット16と上側ブラケット17との間に外力によって伸縮する後述の傾転装置18を取付けることにより、この傾転装置18によって下側ブラケット16と上側ブラケット17との離間距離を伸長、縮小することができ、建屋9を傾転させることができる。
【0044】
次に、建屋9を傾転させるときの動力源として別個に設けられた傾転装置18の構成について述べる。
【0045】
18は建屋9を傾転するために油圧ショベル1と別個に設けられた傾転装置を示している。この傾転装置18は、カウンタウエイト7側の下側ブラケット16と建屋9側の上側ブラケット17との間に設けられるものである。そして、傾転装置18は、外部からの操作によって伸長、縮小することにより、下側ブラケット16と上側ブラケット17との間の離間距離を伸長、縮小することができる。傾転装置18は、後述の下側ベース部材19、上側ベース部材20、左,右の短尺アーム21、2種類の長尺アーム22,23、中間連結ブロック24、中間連結ねじブロック25、ねじ軸26、下側取付部27、上側取付部29等によりパンタグラフ式のジャッキ装置として構成されている。
【0046】
19は左,右方向に延びて設けられた下側ベース部材である。20は該下側ベース部材19の上方に間隔をもって配置され左,右方向に延びた上側ベース部材である。下側ベース部材19は、カウンタウエイト7側に取付けられた固定側の取付ベースとなり、上側ベース部材20は、建屋9の傾転動作に応じて移動する可動側の取付ベースとなっている。
【0047】
21は下側ベース部材19の左,右両端部と上側ベース部材20の左,右両端部にそれぞれ回動可能に取付けられた合計4本の短尺アームである。この4本の短尺アーム21は、例えば四角形状に切り出された金属板を略U字形状ないしC字形状に折曲げることにより強度部材として形成されている。
【0048】
22は左下側の短尺アーム21の先端部と右上側の短尺アーム21の先端部とに回動可能に取付けられた2本の第1の長尺アームである。下側に位置する第1の長尺アーム22は、短尺アーム21を折返すように右側に位置する後述の中間連結ブロック24に向けて延びている。上側に位置する第1の長尺アーム22は、左側に位置する後述の中間連結ねじブロック25に向けて延びている。
【0049】
23は右下側の短尺アーム21の先端部と左上側の短尺アーム21の先端部とに回動可能に取付けられた2組の第2の長尺アームである。下側に位置する第2の長尺アーム23は、第1の長尺アーム22を挟む2本を一対として設けられ、短尺アーム21を折返すように左側に位置する中間連結ねじブロック25に向けて延びている。上側に位置する各第2の長尺アーム23は、右側に位置する中間連結ブロック24に向けて延びている。
【0050】
ここで、第1の長尺アーム22と第2の長尺アーム23は、互いに交差するように配置され、長さ方向の中間位置が回動可能に連結されている。これにより、短尺アーム21と第1の長尺アーム22と第2の長尺アーム23とによって菱形構造を形成し、この菱形構造体の幅寸法を調整することで、大きく伸長、縮小することができる。
【0051】
24は傾転装置18の右側に位置して下側の第1の長尺アーム22の先端部と上側の第2の長尺アーム23の先端部との間に設けられた中間連結ブロックである。この中間連結ブロック24には、後述するねじ軸26の基端側が軸方向の移動を規制した状態で回転可能に支持されている。
【0052】
25は中間連結ブロック24と左,右方向で対向するように傾転装置18の左側に位置して設けられた中間連結ねじブロックである。この中間連結ねじブロック25は、下側の第2の長尺アーム23の先端部と上側の第1の長尺アーム22の先端部との間に設けられている。この中間連結ねじブロック25には、ねじ軸26が螺合するねじ孔25Aが左,右方向に貫通して設けられている。
【0053】
26は中間連結ブロック24と中間連結ねじブロック25との間に左,右方向に延びて設けられたねじ軸を示している。このねじ軸26の長さ方向の基端側は、中間連結ブロック24に軸方向の移動が規制された状態で回転可能に支持されている。一方、ねじ軸26の先端側は、中間連結ねじブロック25のねじ孔25Aに螺合している。さらに、ねじ軸26の基端部は、中間連結ブロック24から右側に突出した操作部26Aとなっている。この操作部26Aは、例えばボルトの頭と同様に六角形状をなすことにより、インパクトレンチ等のねじ締め用工具(図示せず)を外部から接続できるようになっている。
【0054】
ねじ軸26は、図13に示すように、操作部26Aにねじ締め用工具を係合させて回転駆動することにより、中間連結ブロック24と中間連結ねじブロック25との距離寸法、即ち、菱形状に配置した各アーム21,22,23の幅寸法を調整することにより、傾転装置18の全長を伸長、縮小することができる。ここで、ねじ軸26は、その回転量により建屋9をチルトアップしたときの角度を任意に調整することができるから、点検作業、メンテナンス作業、機器類の着脱作業等に応じた作業スペースを適宜に得ることができる。
【0055】
27は下側ベース部材19の前面側に設けられた下側取付部で、該下側取付部27は、図10ないし図12に示すように、左,右方向に平行に並べられた2枚の挟持板27Aからなり、該各挟持板27Aにはピン孔27Bが形成されている。
【0056】
28は上側ベース部材20の前面側に設けられた上側取付部で、該上側取付部28は、左,右方向に平行に並べられ屈曲して下側に延びた略L字状の2枚の挟持板28Aからなり、該各挟持板28Aの下端側にはピン孔28Bが形成されている。
【0057】
29は傾転装置18を下側ブラケット16に連結するための下側連結ピンである。この下側連結ピン29は、下側取付部27の各挟持板27Aで下側ブラケット16を挟み、この状態で各ピン孔16A,27Bに先端側から挿通することにより、下側ブラケット16に対して傾転装置18を前,後方向に回動可能に連結することができる。そして、挿通された下側連結ピン29の先端部には、Cリング等の抜止め部材30を取付けることができ、抜止め部材30によって下側連結ピン29を抜止めすることができる。
【0058】
31は傾転装置18を上側ブラケット17に連結するための上側連結ピンである。この上側連結ピン31は、上側取付部28の各挟持板28A下端側で上側ブラケット17を挟み、この状態で各ピン孔17A,28Bに先端側から挿通することにより、上側ブラケット17に対して傾転装置18を前,後方向に回動可能に連結することができる。そして、挿通された上側連結ピン31の先端部には、径方向に抜き差しされるピン等の抜止め部材32を取付けることができ、この抜止め部材32によって上側連結ピン31を抜止めすることができる。
【0059】
傾転装置18は、図13に示すように、ねじ軸26の操作部26Aにねじ締め用工具を係合させ、締付け方向に回転駆動することにより、中間連結ブロック24と中間連結ねじブロック25とを接近させることができる。これにより、各アーム21,22,23の幅寸法を小さく調整することができ、該各アーム21,22,23の幅寸法を大きくして傾転装置18を縮小した状態での下側取付部27と上側取付部28との離間距離寸法L1に対し、離間距離寸法L2以上に伸長させることができる。従って、傾転装置18の下側取付部27を下側連結ピン29を用いて下側ブラケット16に連結し、上側取付部28を上側連結ピン31を用いて上側ブラケット17に連結する。この状態で、前述したようにねじ軸26を回転駆動して傾転装置18の全長が伸長、縮小することにより、建屋9を傾転させることができる。
【0060】
第1の実施の形態による油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、次に、この油圧ショベル1の動作について説明する。油圧ショベル1を用いて掘削作業等を行う場合、オペレータは、チルトフロア10上に設けられた運転席11に着席し、走行用の操作レバー・ペダル13を操作することにより、油圧ショベル1を作業現場まで自走させることができる。そして、オペレータが作業用の操作レバー12を操作し、上部旋回体3を旋回させつつ作業装置4を俯仰動させることにより、土砂の掘削作業等を行うことができる。
【0061】
次に、油圧ショベル1のメンテナンス作業(点検作業、整備作業等)を行う場合について説明する。このメンテナンス作業の対象となるエンジン6、各種油圧機器等は建屋9のチルトフロア10の下側に配設されている。このため、建屋9は、図4に示すように、後側を上側にチルトアップする必要がある。
【0062】
そこで、建屋9をチルトアップするときの作業について説明する。まず、チルトフロア10の取付板部10Bをカウンタウエイト7に取付けているボルト(図示せず)を緩めて取外す。次に、別個に設けられた傾転装置18を用意し、キャブボックス14の後側でカウンタウエイト7の上側に配置する。傾転装置18の下側取付部27を下側ブラケット16に連結し、上側取付部28を上側ブラケット17に連結する。この状態で、ねじ締め用工具によってねじ軸26を締付け方向に回転駆動することにより、各アーム21,22,23の幅寸法を小さくして傾転装置18の全長を伸長させることができ、図4に示すように、建屋9を上側に傾転(チルトアップ)させることができる。
【0063】
このときに、下側ブラケット16と上側ブラケット17とは、左,右方向に離間して設けた2個の傾転支持機構15の間となるキャブボックス14の幅方向寸法Wに対し中間位置に配置しているから、傾転装置18によって建屋9を傾転させるときには、前側に位置する2個の傾転支持機構15と後側の中間に位置する1個の傾転装置18との3点で支持することができ、建屋9をバランス良く傾転させることができる。
【0064】
このように、建屋9を傾転支持機構15を支点としてチルトアップした状態では、エンジン6、各種油圧機器等のメンテナンス作業を行うことができる。一方、メンテナンス作業が終了したら、傾転装置18のねじ軸26を先程とは逆方向に回転駆動することにより、各アーム21,22,23の幅寸法を大きくして傾転装置18の全長を縮小させることができ、図3に示すように、建屋9を下側に傾転(チルトダウン)させることができる。そして、建屋9をチルトダウンしたら、傾転装置18を取外し、取付板部10Bをカウンタウエイト7側に固定する。
【0065】
かくして、第1の実施の形態によれば、旋回フレーム5に対して建屋9を傾転させるための傾転装置18は、旋回フレーム5、建屋9と別個に設ける構成としている。この上で、カウンタウエイト7の上面7Bには、傾転装置18の下側取付部27を取付けることができる下側ブラケット16を設け、建屋9のキャブボックス14の後面部14Bには、傾転装置18の上側取付部28を取付けることができる上側ブラケット17を設ける構成としている。
【0066】
従って、旋回フレーム5に対して建屋9を傾転させる場合には、別個に設けられた傾転装置18を用意し、下側ブラケット16と上側ブラケット17とに取付ける。この状態で、傾転装置18のねじ軸26を外部から操作し、下側ブラケット16と上側ブラケット17との間の離間距離を伸長させることにより、旋回フレーム5に対して建屋9の後部を上側に傾転(チルトアップ)させることができる。一方、傾転装置18のねじ軸26を逆方向に操作することにより、旋回フレーム5に対して建屋9の後部を下側に傾転(チルトダウン)させることができる。
【0067】
この結果、メンテナンス作業等を行うために建屋9を傾転させるときに、傾転装置18を取付ければよいから、傾転装置18を排除した分だけ、旋回フレーム5上の各種機器類を設置するためのスペースを広く有効に利用することができ、上部旋回体3を小型化することができる。しかも、上部旋回体3には、傾転装置18を常時搭載する必要がなくなるから、設置スペースに制約がある小型の油圧ショベル1に対しても傾転構造を適用することができる。
【0068】
また、別個に設けた傾転装置18は、他の油圧ショベルの建屋等で共通して用いることができるから、製造コストを削減することができる。さらに、通常の作業時には、傾転装置18を取外すことができるから、チルトアップを禁止することができ、いたずら等を防止することができる。
【0069】
カウンタウエイト7側の下側ブラケット16と建屋9側の上側ブラケット17とを、該建屋9の左,右方向の中間位置、具体的には、キャブボックス14の幅方向寸法Wに対し左,右方向の中間位置に配置している。従って、例えば建屋9の側面位置で傾転させる場合に比較し、各ブラケット16,17に取付けた傾転装置18によって建屋9を傾転させるときに、該建屋9をバランス良く傾転させることができる。
【0070】
また、建屋9を傾転させるときには、この建屋9を前側に位置して左,右方向に離間して設けた2個の傾転支持機構15と、後側に位置する1個の傾転装置18との3点で支持することができる。これにより、1個の傾転装置18だけであっても左,右の傾転支持機構15の間で建屋9をバランス良く安定的に傾転させることができる。
【0071】
さらに、傾転装置18を、ねじ軸26を回転駆動する形式のパンタグラフ式のジャッキ装置として構成しているから、インパクトレンチ、ラチェットレンチ等のねじ締め用工具を用いて容易に建屋9を傾転させることができ、傾転作業や構成を簡略化することができる。また、パンタグラフ式のジャッキ装置は、縮小した状態ではコンパクトにすることができ、容易に持ち運ぶことができる。
【0072】
次に、図14ないし図16は本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、下側ブラケットをカウンタウエイトの後面に設け、上側ブラケットをチルトフロアに設ける構成としたことにある。なお、第2の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0073】
図14において、41は第2の実施の形態によるカウンタウエイトで、該カウンタウエイト41は、第1の実施の形態によるカウンタウエイト7とほぼ同様に、旋回フレーム5の後端部に取付けられ、その後面41Aが後向きに突出した凸湾曲形状に形成されている。しかし、第2の実施の形態によるカウンタウエイト41は、図15に示すように、後面41Aの上側部位にねじ穴41Bが形成されている点で、第1の実施の形態によるカウンタウエイト7と相違している。このねじ穴41Bは、キャブボックス14の後面部14Bの左,右方向の中間位置に設けられ、後述の下側ブラケット42が取付け、取外し可能に螺着される。
【0074】
42はカウンタウエイト41に設けられた第2の実施の形態による下側ブラケットで、該下側ブラケット42は、第1の実施の形態による下側ブラケット16と同様に、キャブボックス14の幅方向寸法Wに対し左,右方向の中間位置に配置されている。この下側ブラケット42は、カウンタウエイト41の後面41Aに突出して設けられるものであるから、旋回動作時に邪魔にならないように、傾転作業時以外では取外すことができる。
【0075】
即ち、下側ブラケット42は、舌片状の板体42Aと、該板体42Aの基端側に設けられたねじ部42Bとからなり、前記板体42Aの先端側には、傾転装置18の下側取付部27を取付けるための下側連結ピン29が挿通されるピン孔42Cが形成されている。そして、下側ブラケット42は、そのねじ部42Bをカウンタウエイト41のねじ穴41Bに螺着することにより、該カウンタウエイト41に一体的に取付けることができる。
【0076】
43は建屋9の後側部位に設けられた第2の実施の形態による上側ブラケットである。この第2の実施の形態による上側ブラケット43は、図16に示すように、チルトフロア10の取付板部10Bに設けられている点で、第1の実施の形態による上側ブラケット17と相違している。また、上側ブラケット43は、第1の実施の形態による上側ブラケット17と同様に、下側ブラケット42と対応するように、キャブボックス14の幅方向寸法Wに対し左,右方向の中間位置に配置されている。さらに、上側ブラケット43は、チルトフロア10の取付板部10Bから後向きに突出した舌片状の板体からなり、その基端側が溶接手段、ねじ止め手段等を用いて取付板部10Bに取付けられている。一方、上側ブラケット43の先端側には、傾転装置18の上側取付部28を取付ける上側連結ピン31が挿通されるピン孔43Aが形成されている。
【0077】
かくして、このように構成された第2の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第2の実施の形態によれば、下側ブラケット42を脱着可能としたことにより、この下側ブラケット42を他の油圧ショベルと共用することができる。しかも、上側ブラケット43をチルトフロア10に取付けることにより、キャブボックス14を取外した状態でも、チルトフロア10等をチルトアップすることができる。
【0078】
次に、図17は本発明の第3の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、油圧シリンダを用いて傾転装置を伸長させる構成としたことにある。なお、第3の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0079】
図17において、51は第3の実施の形態による傾転装置で、該傾転装置51は、第1の実施の形態による傾転装置18とほぼ同様に、下側ベース部材52、上側ベース部材53、左,右の短尺アーム54、第1の長尺アーム55、第2の長尺アーム56、下側取付部(図示せず)、上側取付部57等によりパンタグラフ式のジャッキ装置として構成されている。しかし、第3の実施の形態による傾転装置51は、中間連結ブロック、中間連結ねじブロックおよびねじ軸が廃止され、後述の油圧シリンダ58が設けられている点で、第1の実施の形態による傾転装置18と相違している。
【0080】
58は傾転装置51に設けられた油圧シリンダで、該油圧シリンダ58は、チューブ58Aと、該チューブ58Aから伸縮可能に突出したロッド58Bとにより構成されている。この油圧シリンダ58は、例えばチューブ58Aに手動式の油圧ポンプ(図示せず)を接続することにより、この手動油圧ポンプから供給される圧油によってロッド58Bを伸長または縮小するものである。油圧シリンダ58は、チューブ58Aが下側ベース部材52に取付けられ、ロッド58Bの先端側が下側に位置する長尺アーム55,56の交点に取付けられている。これにより、油圧シリンダ58は、そのロッド58Bを伸長させることにより傾転装置51の全長を伸ばすことができる。
【0081】
かくして、このように構成された第3の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第3の実施の形態によれば、傾転装置51の下側取付部を下側ブラケット16に取付け、上側取付部57を上側ブラケット17に取付けることにより、油圧シリンダ58を動力源とする傾転装置51によって建屋9を傾転させることができる。
【0082】
次に、図18は本発明の第4の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、建屋をキャノピ仕様とし、このキャノピに上側ブラケットを設ける構成としたことにある。なお、第4の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0083】
図18において、61は第4の実施の形態によるキャノピ仕様の油圧ショベル、62は該油圧ショベル61の建屋を示している。この建屋62は、チルトフロア10、運転席11、キャノピ63等により旋回フレーム5上に搭載された一つのユニットとして構成されている。ここで、建屋62は、第1の実施の形態による建屋9の幅方向寸法Wとほぼ同じ幅方向寸法となっている。
【0084】
63は建屋62を構成するキャノピで、該キャノピ63は運転席11の上方を覆うものである。このキャノピ63は、チルトフロア10の取付板部10Bから上側に延びた支柱部63Aと、該支柱部63Aの上部に設けられ運転席11の上方を前方に延びたルーフ部63Bとにより大略構成されている。キャノピ63は、前記支柱部63Aが1本設けられた1柱式のキャノピ、または前記支柱部63Aが左,右方向に離間して2本設けられた2柱式のキャノピとして構成されている。
【0085】
64は建屋62の後側部位となるキャノピ63の支柱部63Aに設けられた第4の実施の形態による上側ブラケットである。この上側ブラケット64は、下側ブラケット16と対応するように、建屋62の幅方向寸法に対し左,右方向の中間位置に配置されている。上側ブラケット64は、支柱部63Aから後向きに突出した舌片状の板体からなり、その基端側が溶接手段、ねじ止め手段等を用いて該支柱部63Aに取付けられている。一方、上側ブラケット64の先端側には、傾転装置18の上側取付部28を取付ける上側連結ピン31が挿通されるピン孔64Aが形成されている。
【0086】
かくして、このように構成された第4の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第4の実施の形態によれば、傾転装置18の上側取付部28を上側ブラケット64に取付け、傾転装置18の下側取付部27を下側ブラケット16に取付けることにより、傾転装置18を用いてキャノピ仕様の建屋62を傾転させることができる。
【0087】
なお、第1の実施の形態では、ねじ軸26を動力源とするパンタグラフ式のジャッキ装置からなる傾転装置18を例示し、第3の実施の形態では、油圧シリンダ58を動力源とするパンタグラフ式のジャッキ装置からなる傾転装置51を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば動力源として歯車、チェーン等を用いてもよい。また、パンタグラフ式の他にもテレスコピック式の伸縮構造を用いる構成としてもよい。
【0088】
また、第4の実施の形態では、キャノピ仕様の建屋として、1柱式または2柱式のキャノピ63を備えた建屋62を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、チルトフロアの前側に支柱を有する3柱式または4柱式のキャノピを備えた建屋に適用する構成としてもよい。
【0089】
さらに、各実施の形態では、建設機械としてクローラ式の油圧ショベル1,61を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、例えばホイール式の油圧ショベル、油圧クレーン等の他の建設機械にも適用することができる。
【符号の説明】
【0090】
1,61 油圧ショベル(建設機械)
2 下部走行体
3 上部旋回体
4 作業装置
5 旋回フレーム
5G 前梁
7,41 カウンタウエイト
7A,41A 後面
7B 上面
9,62 建屋
10 チルトフロア
11 運転席
14 キャブボックス
14B 後面部
15 傾転支持機構
16,42 下側ブラケット
17,43,64 上側ブラケット
18,51 傾転装置
19,52 下側ベース部材
20,53 上側ベース部材
21,54 短尺アーム
22,55 第1の長尺アーム
23,56 第2の長尺アーム
24 中間連結ブロック
25 中間連結ねじブロック
26 ねじ軸
27 下側取付部
28,57 上側取付部
58 油圧シリンダ
63 キャノピ
W 建屋の幅方向寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置とからなり、
前記上部旋回体は、支持構造体を形成する旋回フレームと、該旋回フレームの後部に設けられたカウンタウエイトと、前記旋回フレームの前側を支点として前記旋回フレーム上で傾転可能に設けられオペレータが着座する運転席を有する建屋とを備えてなる建設機械において、
前記建屋を傾転するために、外部からの操作によって長さ方向の下側に設けた下側取付部と上側に設けた上側取付部との間の離間距離を伸長、縮小する傾転装置を別個に設け、
前記カウンタウエイトの上側部位には、前記建屋を傾転するときに前記傾転装置の下側取付部を取付けるための下側ブラケットを設け、前記建屋の後側部位には、前記傾転装置の上側取付部を取付けるための上側ブラケットを設ける構成としたことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記下側ブラケットと前記上側ブラケットとは、前記建屋の左,右方向の中間位置に配置する構成としてなる請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記旋回フレームの前側と前記建屋の前側との間には、左,右方向に離間した位置で前記旋回フレームに対し前記建屋を傾転可能に支持する2個の傾転支持機構を設け、
前記建屋は、前記2個の傾転支持機構を支点として前記傾転装置を用いて3点で支持した状態で傾転させる構成としてなる請求項1または2に記載の建設機械。
【請求項4】
前記傾転装置は、複数本のアームを交差して連結することにより菱形状に配置し、この菱形状に配置した前記各アームの幅寸法を調整することにより伸長、縮小するパンタグラフ式のジャッキ装置として構成し、
前記アームの下端側を前記下側取付部として前記下側ブラケットに取付け、前記アームの上端側を前記上側取付部として前記上側ブラケットに取付ける構成としてなる請求項1,2または3に記載の建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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