説明

建設汚泥の改良処理方法

【課題】建設汚泥について、安価であって粒径が揃い均質な固化材を用いて、改良処理土の品質を安定したものとする改良処理方法を提供する。
【解決手段】この建設汚泥の改良処理方法は、下水汚泥を下水汚泥炭化装置2の揺動する炭化炉21に投入して燃焼させ、その燃焼熱でもって重金属を揮発させるように800℃以上で炭化した粒状の下水汚泥炭化物を生成し、その下水汚泥炭化物を固化材として建設汚泥に添加し、これらを混合装置3にて混合することにより建設汚泥を固化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設汚泥を含む建設発生土の改良処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建設汚泥や下水汚泥などの汚泥は、わが国の産業廃棄物の中で多くの割合を占めている。建設汚泥は、掘削工事などの建設工事から生じる建設発生土のうち、含水率が非常に高い無機性の泥土であって、廃棄物処理法に規定する産業廃棄物として取り扱われるものである。建設発生土の強度指標であるコーン指数は、泥土の場合、おおむね200kN/m未満である。このような建設汚泥は、リサイクル(再利用)が望まれるが、土としての強度が極めて不十分であることから、そのままではリサイクルできず、適切な改良処理が必要である。
【0003】
建設汚泥を改良処理するためには、固化材を混合して固化することが行われている。固化材は、セメントや石灰を主成分としたものが多く普及しているが、改良処理土(改良処理後の土)が強アルカリ性を呈するため、用途が制限される。このため、用途制限を少なくする固化材も提案されている。例えば、特許文献1には、酸化カルシウムと二酸化ケイ素と三酸化硫黄と酸化アルミニウムとを主成分として含む固化材により固化することが提案されている。この固化材を用いると、固化処理後にアルカリ成分の溶出を防止する処理を別途行う必要がないとしている。特許文献2には、ケナフのような植物系の自然材料を粉末状にし、物理的作用により吸水して固化することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3235019号公報
【特許文献2】特許第3525084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のような固化材は、高価なものであり、多量の建設汚泥の改良処理に用いるにはコスト的に実現が困難なところがある。また、特許文献2のように植物系の自然材料をベースにする固化材は、茎、葉などの部位の違いもあって、粒径を揃えたり均質にしたりするのが容易ではなく、改良処理土の品質を安定したものとすることが難しい。
【0006】
本発明は係る事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、建設汚泥を含む建設発生土について、安価であって粒径が揃い均質な固化材を用いて、改良処理土の品質を安定したものとする改良処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の建設発生土の改良処理方法は、下水汚泥を炭化して生成した粒状の下水汚泥炭化物を固化材として建設発生土に添加し、これらを混合することにより建設発生土を固化することを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の建設発生土の改良処理方法は、請求項1に記載の建設発生土の改良処理方法において、前記下水汚泥炭化物は、投入された下水汚泥を燃焼させ、その燃焼熱でもって炭化する下水汚泥炭化装置により生成されるものであることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の建設発生土の改良処理方法は、請求項2に記載の建設発生土の改良処理方法において、前記下水汚泥炭化物は、800℃以上で炭化したものであることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の建設発生土の改良処理方法は、請求項2又は3に記載の建設発生土の改良処理方法において、前記下水汚泥炭化装置は、投入口及び排出口と、投入口及び排出口の間の側壁に空気又は酸素ガスを導入する複数の酸素導入管と、が設けられ揺動する炭化炉を有したものであり、下水汚泥は、投入口に投入された後、揺動により攪拌されながら移動し、酸素導入管から導入された酸素と下水汚泥が含有する有機質から熱分解により発生する可燃性ガスとにより燃焼が維持される状態でもって炭化されて排出口から排出されるものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る建設発生土の改良処理方法によれば、下水汚泥を炭化して生成した粒状の下水汚泥炭化物を固化材として建設発生土に添加し、これらを混合することにより建設発生土を固化するようにしたので、安価であって粒径が揃い均質な固化材を用いることができ、この改良処理方法により得られる建設発生土の改良処理土の品質を安定したものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る建設発生土の改良処理方法のフローを表す概念図である。
【図2】同上の建設発生土の改良処理方法に用いられる下水汚泥炭化装置における炭化炉の模式図である。
【図3】同上の建設発生土の改良処理方法による実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための好ましい形態を図面を参照しながら説明する。本発明の実施形態に係る建設発生土の改良処理方法は、下水汚泥を炭化して粒状の下水汚泥炭化物を生成し、この下水汚泥炭化物を固化材として主に建設汚泥である建設発生土に添加し、これらを混合することにより建設発生土を固化するものである。
【0014】
下水汚泥は、下水処理場において下水を微生物処理する最終過程で発生する汚泥であり、基本的には下水中の有機物を食べた微生物の死骸であるため、粒子の大きさは10nm〜100μmというように非常に小さく、かつ、非常に均質である。このような下水汚泥は、脱水処理されてから、いわゆる脱水ケーキの状態で下水処理場から搬出される。下水汚泥は、図1に示すように、乾燥手段(天日乾燥場や乾燥装置)1により乾燥された後、下水汚泥炭化装置2に搬入されて炭化される。
【0015】
下水汚泥炭化装置2の主要部である炭化炉21は、図2に示すように、投入口21i及び排出口21oと、投入口21i及び排出口21oの間の側壁21wに空気又は酸素ガスを導入する複数の酸素導入管21aと、が設けられている。乾燥手段(天日乾燥場や乾燥装置)1により乾燥された後の下水汚泥は、炭化炉21の投入口21iから投入された後、着火され、ゆっくりと排出口21oの方に攪拌されながら搬送される。下水汚泥は、複数の酸素導入管21aから導入された酸素と下水汚泥が含有する有機質から熱分解により発生するメタン等の可燃性ガスとにより燃焼が維持される状態でもって炭化される。そうして、攪拌されつつ高温状態が保たれて熱分解が継続し、粒状になった下水汚泥炭化物が生成(下水汚泥が炭化)されて排出口21oから排出される。
【0016】
下水汚泥の着火のために、廃材の木片等が添加されることもある。燃焼補助のため、場合によっては化石燃料(例えば、重油)を加えるが、上記のように投入口21iから投入される下水汚泥の含水率が40%以下であれば、自身が発生する可燃性ガスだけで燃焼の維持がほぼ可能である。また、下水汚泥の温度は、酸素導入管21aから導入される酸素の量により調整されるものである。高温であるほど硬質の下水汚泥炭化物が生成される。
【0017】
下水汚泥炭化装置2は、炭化炉21の他に、燃焼室22、ボイラ23、集塵機24を有している。炭化炉21で燃焼しなかった可燃性ガスは、燃焼室22に送出されて燃焼する。燃焼室22からの熱は、ボイラ23の水を蒸気化し、その蒸気は乾燥手段1や下水汚泥炭化装置2などの設備のためのエネルギーとして利用することができる。また、燃焼室22からの排ガスは、集塵機24により無害化されて、外部に排出される。
【0018】
こうして下水汚泥の内部から可燃性ガスを発出しながら下水汚泥が炭化されることによって生成された下水汚泥炭化物は、多数の空孔を有する多孔質のものとなる。また、下水汚泥炭化物は、小さく均質な下水汚泥の粒子が凝集した粒状物であるので、粒径が揃い易く均質である。
【0019】
炭化炉21は、揺動、すなわち、下水汚泥の搬送方向を軸線として右回転と左回転を繰り返すことによって攪拌するものが好ましい。揺動により攪拌すると、下水汚泥には変化の比較的少ない力が定常的に加えられるため、下水汚泥炭化物の粒形状が整い易く、また、粒径が更に揃い易くなる。例えば、後述の実験に用いた下水汚泥炭化物は、粒径が75μ未満のものが約1%、粒径が75μ〜2mmのものが約78%、粒径が2mm以上のものが約21%の構成割合である。なお、粒径は、揺動の速度などで調整可能である。
【0020】
炭化炉21の中の下水汚泥の最高温度は、800℃以上にすることが好ましい。炭化炉21に投入される下水汚泥は、重金属(砒素やカドニウムなど)を含有することが多く、800℃以上の温度は砒素やカドニウムなどを含む重金属の大部分の沸点(昇華点)よりも高いため、それらの重金属は揮発(昇華)するからである。揮発した重金属の気体は、炭化炉21から排出後に冷却して集塵機24等で回収すればよい。上記構造の炭化炉21は、炭化炉21の側壁21wを介して外部から熱が加えられるのではなく、内部で発熱するので、このような高温を得ることが可能である。
【0021】
以上のようにして生成された下水汚泥炭化物の粒状物は、固化材として建設発生土に添加されて混合装置3で混合される。下水汚泥炭化物は、建設発生土の水分を多量に、例えば、下水汚泥炭化物自らの重量以上もの水分を吸収することにより、建設発生土を固化する。そうして得られた改良処理土は、土としての強度が高く、固化する前が建設汚泥に該当するようなものであっても、リサイクル可能な強度にすることができる。下水汚泥炭化物は、粒径が揃い均質であるので、改良処理土の強度を含め、その品質が安定している。また、下水汚泥炭化物の粒形状が整っていると建設発生土と馴染んで混合し易くなる点も、改良処理土の品質の安定に寄与する。また、高温で生成した下水汚泥炭化物は硬質であるので、それによっても改良処理土の強度が高くなる。
【0022】
下水汚泥は、毎日膨大な量が発生しており、建設汚泥と同様にリサイクルが望まれている。そのような下水汚泥から生成した下水汚泥炭化物をリサイクルして用いることは、安価になるばかりか資源の有効活用となる。
【0023】
建設発生土と下水汚泥炭化物を混合した改良処理土は、建設発生土の区分基準に応じて、覆土材(埋戻し材)や盛土材などとしての利用が可能になる。この改良処理土は、重金属溶出に関して肥料取締法に基づく基準に適合するようにすることもできる。なお、建設発生土の区分基準によれば、第2種建設発生土のコーン指数は800kN/m以上、第3種建設発生土のコーン指数は400kN/m以上、第4種建設発生土のコーン指数はおおむね200kN/m以上、泥土のコーン指数は、上記のように、おおむね200kN/m未満である。
【0024】
図3は、本発明の実施形態に係る建設発生土の改良処理方法による強度の向上の実験結果を示すグラフである。この実験では、礫混じり細粒分質砂に水を加えて泥土とし、それに下水汚泥炭化物を添加して混合し、地盤工学会基準「安定処理土の突固めによる供試体作成方法」に準拠した方法で締固めてコーン指数を測定した。なお、この実験では、コーン指数の測定限界は2512kN/mであった。礫混じり細粒分質砂に水を加える割合(重量割合)は、礫混じり細粒分質砂の重量に対して、30%、40%、50%、60%、70%とした。図3より、例えば、30%の水を加えた礫混じり細粒分質砂の場合、その重量に対して10%を少し超えた量の下水汚泥炭化物を添加するとコーン指数が200kN/m以上になって第4種建設発生土として取り扱われることが可能になることが分かる。更に、同じく15%の下水汚泥炭化物を添加するとコーン指数が2000kN/m以上になり、第2種以上の建設発生土として取り扱われることが十分可能になる。40%以上の水を加えた礫混じり細粒分質砂の場合でも、添加する下水汚泥炭化物の量を増やすに従ってコーン指数が上昇するので、第4種、第3種、又は第2種以上の建設発生土として取り扱われることが可能になる。
【0025】
以上、本発明の実施形態に係る建設発生土の改良処理方法について説明したが、本発明は、上述の実施形態に記載したものに限られることなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でのさまざまな設計変更が可能である。例えば、建設発生土に下水汚泥炭化物を添加して更に別のものを添加することは任意である。また、改良処理土の利用方法は限定されない。
【符号の説明】
【0026】
1 乾燥手段
2 下水汚泥炭化装置
21 炭化炉
21a 酸素導入管
21i 投入口
21o 排出口
21w 側壁
3 混合装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下水汚泥を炭化して生成した粒状の下水汚泥炭化物を固化材として建設発生土に添加し、これらを混合することにより建設発生土を固化することを特徴とする建設発生土の改良処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の建設発生土の改良処理方法において、
前記下水汚泥炭化物は、投入された下水汚泥を燃焼させ、その燃焼熱でもって炭化する下水汚泥炭化装置により生成されるものであることを特徴とする建設発生土の改良処理方法。
【請求項3】
請求項2に記載の建設発生土の改良処理方法において、
前記下水汚泥炭化物は、800℃以上で炭化したものであることを特徴とする建設発生土の改良処理方法。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の建設発生土の改良処理方法において、
前記下水汚泥炭化装置は、投入口及び排出口と、投入口及び排出口の間の側壁に空気又は酸素ガスを導入する複数の酸素導入管と、が設けられ揺動する炭化炉を有したものであり、
下水汚泥は、投入口に投入された後、揺動により攪拌されながら移動し、酸素導入管から導入された酸素と下水汚泥が含有する有機質から熱分解により発生する可燃性ガスとにより燃焼が維持される状態でもって炭化されて排出口から排出されるものであることを特徴とする建設発生土の改良処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−240567(P2010−240567A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−91551(P2009−91551)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【特許番号】特許第4509210号(P4509210)
【特許公報発行日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【出願人】(507195678)
【Fターム(参考)】