説明

建設物構築方法及び建設物構築支援装置

【課題】 建設物構築において電磁波の影響を受けにくい建物配置を検討する方法では、限られた建設予定地(敷地)内で建物配置を変更する場合には設計をやり直さなくてはならず、建設物の電磁環境対策を安価でかつ効果的に行えない。
【解決手段】 本発明は、建設物の建設予定地における電磁環境を調査し、その電磁環境を改善するための対策技術を組み込んで建設物を構築する。このための建設物構築支援装置1は、建設しようとする建設予定物の室内における電磁環境目標値を記憶する目標値記憶手段5と、建設しようとする建設予定物の室内における電磁環境予測値を演算するための演算式を記憶する予測値演算式記憶手段7と、予測値演算手段8と、対策選定のための判断値を演算する判断値演算手段9と、判断値−対策対応テーブル10と、判断値を判断値−対策対応テーブルに照合して対策を選定する対策選定手段11とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設物の電磁環境対策を安価でかつ効果的に行える建設物構築方法及び建設物構築支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建設予定地における電界強度を予測演算し、建設物構築において電磁波の影響を受けにくい建物配置を検討できるようにした電磁波環境評価システムが知られている。このシステムは、建設予定地における電磁波環境の影響を回避するための対策技術を建設物構築に組み込むものではなく、また、電磁波環境の影響を回避するための対策技術を設計者に提示するものでもない。
【特許文献1】特開平4−168374号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
発明が解決しようとする問題点は、建設物構築において電磁波の影響を受けにくい建物配置を検討する方法では、限られた建設予定地(敷地)内で建物配置を変更する場合には設計をやり直さなくてはならず、建設物の電磁環境対策を安価でかつ効果的に行えないという点である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明における建設物構築方法は、建設物の建設予定地における電磁環境を調査し、その電磁環境を改善するための対策技術を組み込んで建設物を構築することを特徴とする。
また、建設物の建設予定地において区画された複数の部位毎における電磁環境を調査し、部位毎にその電磁環境を改善するための対策技術を組み込んで建設物を構築することも特徴とする。
本発明における建設物構築支援装置は、建設しようとする建設予定物の室内における電磁環境目標値を記憶する目標値記憶手段と、建設しようとする建設予定物の室内における電磁環境予測値を演算するための演算式を記憶する予測値演算式記憶手段と、予測値演算手段と、対策選定のための判断値を演算する判断値演算手段と、判断値−対策対応テーブルと、判断値を判断値−対策対応テーブルに照合して対策を選定する対策選定手段とを備えたことを特徴とする。
また、予測値演算式記憶手段が以下の式を記憶し、判断値演算手段が、予測値dと目標値とを比較して予測値dの大きい場合には予測値dと目標値との差を判断値として求め、対策選定手段が、判断値により判断値−対策対応テーブルに照合して判断値としての差を解消するための対策としての電磁波吸収体を選定することを特徴とする。

d=D−(D×a/100+D×a/100+・・・+D×an+1/100)
(nは自然数)
但し、
d(V/m):建設予定物の任意の部位における電磁波の強度の予測値又は建設予定物の任意の部位から建設予定物の外部に漏洩する電磁波の強度の予測値
D(V/m):建設予定物に到来する電磁波の強度の実測値又は建設予定物の任意の部位内での電磁波の強度の設計値
(V/m):任意の部位までの各部位における電磁波の強度の予測値又は建設予定物の外部までの各部位における漏洩電磁波の強度の予測値
(%):電磁波が任意の部位に到達するまでの複数の壁のそれぞれの電磁波強度減衰率又は電磁波が任意の部位内から建設予定物の外部に到達するまでの複数の壁のそれぞれの電磁波強度減衰率
さらに、予測値演算式記憶手段が以下の式を記憶し、判断値演算手段が、予測値fと目標値とを比較して目標値と一致しない予測値fとしての周波数を判断値として求め、対策選定手段が、判断値により判断値−対策対応テーブルに照合して判断値としての不要周波数を吸収するための対策としての電磁波吸収体を選定することを特徴とする。

f=F−θ−θ−・・・−θ
(nは自然数)
但し、
f:建設予定物の任意の部位における残存周波数群の予測値(Hz)
F:到来電磁波の周波数群実測値(Hz)
θ:電磁波が任意の部位に到達するまでの複数の壁のそれぞれの電磁波吸収周波数(Hz)
【発明の効果】
【0005】
本発明による建設物構築方法によれば、建設物の電磁環境対策を安価でかつ効果的に行える。また、建設物の部位毎に電磁環境対策を図れて効率的である。本発明における建設物構築支援装置によれば、設計者に電磁環境対策を提示できるので、設計者が建設物の電磁環境対策設計を容易に行える。また、到来電磁波に対する建設予定物の任意の部位における電磁波の強度対策や、到来電磁波に対する建設予定物の任意の部位における周波数対策を容易に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1乃至図4を参照し、本発明の建設物構築方法及びこの方法を実現するための建設物構築支援装置について説明する。建設物構築支援装置1は、図1に示すように、コンピュータ2と、キーボード3aやマウス3bなどのコンピュータ入力機器3と、ディスプレイ装置4aや図外のスピーカーやプリンタなどのコンピュータ出力機器4とにより実現される。建設物構築支援装置1のコンピュータ2は、建設しようとする建設予定物の室内における電磁環境目標値を記憶する目標値記憶手段5、建設しようとする建設予定物の室内における電磁環境予測値を演算するための演算式を記憶する予測値演算式記憶手段7、予測値演算手段8、対策選定のための判断値を演算する判断値演算手段9、判断値−対策対応テーブル10、判断値を判断値−対策対応テーブルに照合して対策を選定する対策選定手段11とを備える。予測値演算手段8、判断値演算手段9は、コンピュータ2のCPUがROMに格納されたプログラムにしたがいRAMを使用しながら動作することで具現化される。目標値記憶手段5、予測値演算式記憶手段7、判断値−対策対応テーブル10は、コンピュータ2の記憶装置により実現される。
【0007】
建設物構築支援装置1を用いた建設物構築方法の概要を図2に基づいて説明する。例えば、医療施設事業主体から病院の建設依頼を受けた場合に、まず、建設予定物としての病院内の電磁環境目標値を設定する(ステップ100)。すなわち、コンピュータ2の記憶装置に建設予定物内の電磁環境目標値(以下「目標値」と略す)を記憶して目標値記憶手段5を構築する。目標値としては、例えばJEIDA−63(産業用情報処理・制御機器設置環境基準)により定められた「ClassB」の値を記憶させておく。次に、建設予定地及びその周辺における電磁環境調査を行う(ステップ101)とともに、その建設予定地に建設される予定の建設予定物内に収容される予定の電子・電気機器の仕様データの調査を行う(ステップ102)。
電磁環境調査としては、電磁気環境調査、建設予定地周辺の電場調査、電源調査、周辺地域の雷関連調査、周辺の電力・高周波発生施設有無調査を行う。
電磁気環境調査は、建設予定地への到来電磁波調査と建設予定地内地磁気調査と建設予定地内の大地抵抗率の調査である。到来電磁波調査は、到来電磁波の強度(利得)測定と、到来電磁波の周波数分析と、各周波数帯の発生源の推定などである。建設予定地内地磁気調査は、建設予定地内地球磁場強度測定と建設予定地内においての金属等電導埋設物の有無調査である。
建設予定地周辺の電場調査は、大電力・高電圧施設等による建設予定地への加電圧値の調査などである。
電源調査は、当該建設物へ供給可能な商用電源施設の安定度調査、電圧変動、周波数変動、瞬時電圧低下予想値、停電過去歴、災害時対応電源強度クラス、災害時の電源復旧時間の想定などである。
周辺地域の雷関連調査は、当該地区のBL値(雷撃の生じる頻度)、推定避雷電流値、落雷時における建設予定地の電位上昇値の推定などである。
周辺の電力、高周波発生施設有無調査は、送電所、配電線、発電所、変電所などのノイズ発生源の調査及び迷走電流の調査などである。
収容予定の電子・電気機器仕様データの調査は、機器のノイズ耐性、環境磁場強度、電源電圧及び変動幅、電源周波数及び変動幅、耐電圧、接地仕様、環境温度及び湿度などである。
【0008】
上述した調査により建設予定物内の電磁環境を予測する(ステップ103)。そして、設計者は、上述した検査で得られたデータと「ClassB」の値とに基づいて経験則により「ClassB」の値を確保するために必要な対策技術を選定する(ステップ104)。対策技術は、接地技術、絶縁化・非磁性化技術、電磁波シールド・吸収技術、電磁波透過技術、伝導ノイズ抑制技術、磁気シールド技術、静電気放電抑制技術、電磁波透過技術、予備電源装置、避雷装置技術などである。すなわち、上述した調査により建設予定物内の電磁環境を予測できて、この予測に基づいて電磁環境改善対策を施すことで、建設物の電磁環境対策を安価でかつ効果的に行える。
【0009】
予測値演算式記憶手段7には、以下の式(1)、(4)、(5)が記憶されている。式(1)は建設予定物の任意の部位における電磁波の強度の予測値を演算するための式であり、式(5)は建設予定物の任意の部位における残存周波数群の予測値を演算するための式である。
(数1)
d=D−(D×a/100+D×a/100+・・・+D×an+1/100)
………式(1)
ここで、
=D−a×D ………式(2)
=D−a×D ………式(3)



=Dn−1−a×Dn−1 ………式(4)
(nは自然数)
である。
【0010】
d(V/m):建設予定物の任意の部位における電磁波の強度の予測値
D(V/m):建設予定物に到来する電磁波の強度の実測値
(V/m):任意の部位までの各部位における電磁波の強度の予測値
(%):電磁波が任意の部位に到達するまでの複数の壁のそれぞれの電磁波強度減衰率
(数2)
f=F−θ−θ−・・・−θ
………式(5)
(nは自然数)
【0011】
f:建設予定物の任意の部位における残存周波数群の予測値(Hz)
F:到来電磁波の周波数群実測値(Hz)
θ:電磁波が任意の部位に到達するまでの複数の壁のそれぞれの電磁波吸収周波数(Hz)
【0012】
建設予定地に建物を構築する場合、例えば、図3の平面図のように、小さい□で示した複数の部屋をコンクリート壁で区画した建設予定物20の任意の1つの部屋21を任意の部位とすると、図3に矢示したように図3の上方向から到来する電磁波がコンクリート壁を通過して部屋21に到達する場合の部屋21内の電磁波の強度の予測値dは、d=D−(D×a/100+D×a/100)により計算される。ここで、D=D−a×Dである。従って、人が、表示装置4aの画面4bに、上述の調査において得られた建設予定地における到来電磁波の強度の実測値Dと設計したコンクリート壁22;23の電磁波強度減衰率a;aを入力するための入力画面を表示させ、入力画面上でD;a;aを入力し、予測値演算手段8に演算を指示する。これにより、予測値演算手段8が、予測値dを演算し、算出した予測値dを表示装置4aの画面4bに表示する。建設予定物20に到来する電磁波の強度の実測値Dは、部屋21から見た到来方向によって異なるので、様々な方向からの電磁波に起因する部屋21内の電磁波の強度の予測値を計算する。例えば、図3の右方向から到来する電磁波がコンクリート壁24;25;26を通過して部屋21に到達する場合の部屋21内の電磁波の強度の予測値dは、d=D−(D×a/100+D×a/100+D×a/100)により計算される。ここで、D=D−a×D、D=D−a×Dである。入力画面上でD;a;a;aを入力し、予測値演算手段8に演算を指示する。これにより、予測値演算手段8が、予測値dを演算し、算出した予測値dを表示装置4aの画面4bに表示する。同様に、図3の下方向から到来する電磁波がコンクリート壁27;28を通過して部屋21に到達する場合の部屋21内の電磁波の強度の予測値dや、図3の左方向から到来する電磁波がコンクリート壁29;30を通過して部屋21に到達する場合の部屋21内の電磁波の強度の予測値d、さらに、図示しないが、図3の左斜め上、左斜め下、右斜め上、右斜め下から到来する電磁波がコンクリート壁を通過して部屋21に到達する場合の部屋21内の電磁波の強度の予測値d等も求められることは容易に理解できるであろう。
【0013】
判断値演算手段9は、予測値dと目標値記憶手段に予め記憶させた電磁波の強度の目標値(電磁気環境目標値)とを比較する。予測値dが目標値(例えば3V/m)より大きい場合には、判断値を算出する。判断値−対策対応テーブル10には、予測値dと目標値との差に対応してその差を解消するための対策である電磁波吸収体としての内装下地材が対応付けられている。すなわち、判断値算出手段9が、予測値dと目標値とに基づいて判断値としての差(予測値−目標値)を算出し、その差である判断値を判断値−対策対応テーブル10に照らして、対応する対策として対応付けられている電磁波吸収体としての内装下地材を選定して画面4bに表示する。例えば、小さい判断値の場合(予測値dと目標値との差が小さい場合)は普通の内装下地石膏ボードが対策として対応付けられ、大きい判断値の場合(予測値dと目標値との差が大きい場合)は電磁波吸収用の内装下地石膏ボードが対策として対応付けられている。判断値−対策対応テーブル10の判断値と対策との対応付けは経験に照らして決定されて作成される。例えば、判断値である差を0.1V/m以上〜5V/m未満、5V/m以上〜10V/m未満、10V/m以上〜15V/m未満、15V/m以上〜20V/m未満、・・・というように区分し、この区分毎に対策としての内装下地石膏ボードの種類を対応付けておく。従って、図3の上方向から到来する電磁波に対する対策としては、選定された内装下地材をコンクリート壁22;23に取り付けることで、部屋21の目標値を達成できる。同様に、図3の左方向、右方向、下方向、上方向、左斜め上、左斜め下、右斜め上、右斜め下から到来する電磁波に対する電磁波吸収対策を行えることは容易に理解できるであろう。以上により、建設予定物20の外部から到来する電磁波に対する電磁波吸収対策として目的値を達成できる部屋21を構築できる。
【0014】
上記式(1)のdを建設予定物の任意の部位から建設予定物の外部に漏洩する電磁波の強度の予測値、Dを建設予定物の任意の部位内での電磁波の強度の設計値、Dを建設予定物の外部までの各部位における漏洩電磁波の強度の予測値、aを電磁波が任意の部位内から建設予定物の外部に到達するまでの複数の壁のそれぞれの電磁波強度減衰率とし、任意の部位(例えば部屋21)内から建設予定物の外部に漏洩する電磁波に対する対策についても可能であることは容易に理解できるであろう。
【0015】
例えば、図4の平面図のように、小さい□で示した複数の部屋をコンクリート壁で区画した建設予定物20の任意の1つの部屋21を任意の部位とすると、図4に矢示したように、上方向から到来する電磁波がコンクリート壁を通過して部屋21に到達する残存周波数群の予測値fは、f=F−θ−θにより計算される。従って、人が、表示装置4aの画面4bに、上述の調査において得られた図4の上方向から到来する電磁波の周波数群実測値Fと設計したコンクリート壁22;23の電磁波吸収周波数θ;θを入力するための入力画面を表示させ、入力画面上でF;θ;θを入力し、予測値演算手段8に演算を指示する。これにより、予測値演算手段8が、予測値fを演算し、算出した予測値fを表示装置4aの画面4bに表示する。建設予定物20に到来する電磁波の周波数群実測値Fは、部屋21から見た到来方向によって異なるので、様々な方向からの電磁波に起因する部屋21内の残存周波数群の予測値fを計算する。つまり、同様にして、図4の右方向から到来する電磁波がコンクリート壁24;25;26を通過して部屋21に到達する場合の部屋21内の残存周波数群の予測値fや、図4の下方向から到来する電磁波がコンクリート壁27;28を通過して部屋21に到達する場合の部屋21内の残存周波数群の予測値fや、図4の左方向から到来する電磁波がコンクリート壁29;30を通過して部屋21に到達する場合の部屋21内の残存周波数群の予測値f、さらに、図示しないが、図4の左斜め上、左斜め下、右斜め上、右斜め下から到来する電磁波がコンクリート壁を通過して部屋21に到達する場合の部屋21内の残存周波数群の予測値f等も求められることは容易に理解できるであろう。
【0016】
判断値演算手段9は、予測値fと目標値記憶手段5に記憶された目標値とを比較し、目標値の周波数と一致しない周波数、即ち、不要周波数が予測値fに存在する場合に、その不要周波数を判断値として求める。目標値は、部屋21内で使用する予定の電磁波周波数であり、例えば、現在の無線LANで使用されている2.45GHzあるいは5.2GHzである。対策選定手段11は、得られた判断値(不要周波数)を判断値−対策対応テーブル10に照らして対応する対策である電磁波吸収体としての内装下地材を表示装置4aの画面4bに表示する。判断値−対策対応テーブル10には、不要周波数とその不要周波数を吸収可能な対策である電磁波吸収体としての内装下地材とが対応付けられている。一例として、予測値fが2.45GHz、3GHz、4GHzである場合、判断値は、3GHz、4GHzであり、対策選定手段11は、判断値−対策対応テーブル10を照合して、3GHz、4GHzをそれぞれ吸収する内装下地材や3GHz及び4GHzを吸収する内装下地材を選定して画面4bに表示する。従って、図4の上方向から到来する不要電磁波の吸収対策としては、選定された内装下地材をコンクリート壁22;23に取り付けることで、部屋21の目標値を達成できる。同様に、図4の左方向、右方向、下方向、上方向、左斜め上、左斜め下、右斜め上、右斜め下から到来する不要電磁波の吸収対策を行えることは容易に理解できるであろう。以上により、部屋の内外で無線LANによる通信を良好に行える部屋21を構築できる。
【0017】
尚、任意の部屋内で例えば無線LANで使用する周波数の電磁波を反射させ、かつ、その他の周波数の不要電磁波を部屋内に残したり部屋外に漏らしたくない場合は、部屋のコンクリート壁の内側に、無線LANで使用する電磁波を遮蔽するとともに不要電磁波を吸収する電磁波吸収体を設置すればよい。
【0018】
また、コンクリート壁の厚さやコンクリート壁のコンクリートの成分を調整したりする設計を行って、式(1)のコンクリート壁の電磁波強度減衰率や式(2)のコンクリート壁の電磁波吸収周波数を調整することで、目標値を満足するような対策を図ることも可能である。このようなコンクリート壁の調整によっても目標値を満足するような対策を図ることができない場合は、上述した判断値による対策を図る。
【0019】
以上により、建設予定地における到来電磁波の影響を回避できて、建設予定地の内部空間に収容される電子・電気機器が電磁波の影響を受けない建物を設計者が容易に設計できるようになる。すなわち、設計者に電磁環境対策を提示できるので、設計者は建設物の電磁環境対策設計を容易に行えるようになる。
【0020】
また、例えば、病院における手術室などのように、特に、電磁波の影響を回避する必要のある建設物の部位においては、部位毎に、電磁気環境目標値を目標とした対策技術の選択や、予測値や判断値による対策を図ることにより、建設予定物20の部位毎に電磁環境対策を図れて効率的である。
【産業上の利用可能性】
【0021】
建設物をリニューアルする際においても上述した設計方法を適用できる。上述した壁は、コンクリート壁だけではなく、カーテンウオール、ブラインド、その他、電磁波吸収性能を有するものを含む。判断値−対策対応テーブル10に対応付ける対策としての電磁波吸収体は、内装下地石膏ボードのような内装下地材に限るものではなく、例えば、シート、塗料、巾木、廻り縁、タイル、電磁エアカーテン、パネル、ガラス、ドア、サッシ、壁紙、コンクリート等の電磁波吸収体として適用可能なすべての建築資材が考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】建設物構築支援装置を示す図(最良の形態)。
【図2】建設物構築方法の流れを示す図(最良の形態)。
【図3】到来電磁波に対する任意の部位における電磁波の強度対策の説明図(最良の形態)。
【図4】到来電磁波に対する任意の部位における周波数対策の説明図(最良の形態)。
【符号の説明】
【0023】
1 建設物構築支援装置、5 目標値記憶手段、7 予測値演算式記憶手段、
8 予測値演算手段、9 判断値演算手段、10 判断値−対策対応テーブル、
11 対策選定手段、20 建設予定物、21 部屋(任意の部位)、
22〜30 設計によるコンクリート壁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設物の建設予定地における電磁環境を調査し、その電磁環境を改善するための対策技術を組み込んで建設物を構築することを特徴とする建設物構築方法。
【請求項2】
建設物の建設予定地において区画された複数の部位毎における電磁環境を調査し、部位毎にその電磁環境を改善するための対策技術を組み込んで建設物を構築することを特徴とする建設物構築方法。
【請求項3】
建設しようとする建設予定物の室内における電磁環境目標値を記憶する目標値記憶手段と、建設しようとする建設予定物の室内における電磁環境予測値を演算するための演算式を記憶する予測値演算式記憶手段と、予測値演算手段と、対策選定のための判断値を演算する判断値演算手段と、判断値−対策対応テーブルと、判断値を判断値−対策対応テーブルに照合して対策を選定する対策選定手段とを備えたことを特徴とする建設物構築支援装置。
【請求項4】
予測値演算式記憶手段が以下の式を記憶し、判断値演算手段が、予測値dと目標値とを比較して予測値dの大きい場合には予測値dと目標値との差を判断値として求め、対策選定手段が、判断値により判断値−対策対応テーブルに照合して判断値としての差を解消するための対策としての電磁波吸収体を選定することを特徴とする請求項3に記載の建設物構築支援装置。

d=D−(D×a/100+D×a/100+・・・+D×an+1/100)
(nは自然数)
但し、
d(V/m):建設予定物の任意の部位における電磁波の強度の予測値又は建設予定物の任意の部位から建設予定物の外部に漏洩する電磁波の強度の予測値
D(V/m):建設予定物に到来する電磁波の強度の実測値又は建設予定物の任意の部位内での電磁波の強度の設計値
(V/m):任意の部位までの各部位における電磁波の強度の予測値又は建設予定物の外部までの各部位における漏洩電磁波の強度の予測値
(%):電磁波が任意の部位に到達するまでの複数の壁のそれぞれの電磁波強度減衰率又は電磁波が任意の部位内から建設予定物の外部に到達するまでの複数の壁のそれぞれの電磁波強度減衰率
【請求項5】
予測値演算式記憶手段が以下の式を記憶し、判断値演算手段が、予測値fと目標値とを比較して目標値と一致しない予測値fとしての周波数を判断値として求め、対策選定手段が、判断値により判断値−対策対応テーブルに照合して判断値としての不要周波数を吸収するための対策としての電磁波吸収体を選定することを特徴とする請求項3に記載の建設物構築支援装置。

f=F−θ−θ−・・・−θ
(nは自然数)
但し、
f:建設予定物の任意の部位における残存周波数群の予測値(Hz)
F:到来電磁波の周波数群実測値(Hz)
θ:電磁波が任意の部位に到達するまでの複数の壁のそれぞれの電磁波吸収周波数(Hz)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−301698(P2006−301698A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−118256(P2005−118256)
【出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【出願人】(505142562)
【出願人】(000141060)株式会社関電工 (115)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【出願人】(000003090)東邦テナックス株式会社 (246)
【出願人】(598072180)ファイベックス株式会社 (24)
【出願人】(000174943)三井住友建設株式会社 (346)
【Fターム(参考)】