説明

弁と管との継手構造および弁

【課題】シール材を広い範囲で均一に面接触させて水密性を維持し、シール材の水密性を発揮する部分が移動しても良好に水密性を維持できる弁と管との継手構造を提供する。
【解決手段】挿口8と受口7との隙間にシール材13が配設され、挿口8に外嵌されて管軸心方向18へ移動自在な押輪14が受口7の開口端面に外側から対向し、シール材13が押輪14によって受口7の奥側へ押込まれて挿口8と受口7との間をシールする弁1と管2との継手構造であって、シール材13は、その外周面が受口7の内周面12と平行に形成されるとともにその内周面が挿口8の外周面と平行に形成された円筒部を有して、受口7と挿口8との間で圧縮されたときに、この円筒部が挿口8の外周面と受口7の内周面との全周にわたって面接触する構成とされ、相対向する押輪14の端面と受口7の開口端面との間に、所定の間隙Mを形成するスペーサ31が介在している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁と管との継手構造、および、この継手構造によって管に接続される弁に関する。
【背景技術】
【0002】
図6、図7は、従来の管継手51の構造を示すものである。図6、図7に示すように、従来の一般な管継手51では、一方の管の端部に形成された受口52と、他方の管の端部に形成された挿口53との間の隙間55に、シール用のシール材54が挿入される(ここで、図6はシール材を挿入途中の状態を示し、図7はシール材を装着完了した状態を示す)。隙間55に挿入されたシール材54の端面56は押輪57によって押圧され、シール材54に形成された膨出部(丸部)62は、受口52の奥部63に押し付けられる。押輪57は、受口52の周縁部に取り付けられたT頭ボルト61に支持された状態でナット58により固定されている。受口52の奥部63に押し付けられ管軸方向に押圧されたシール材54は、管軸心方向と直角となる方向に変形し、受口52の内周面59および挿口53の外周面60から圧縮力を受けた状態で隙間55に配置され水密性を発揮する。なお、図6に示すように、従来の管継手におけるシール材54に形成された膨出部62は、単なる断面が丸(円形)の形状である。
【0003】
図8は、従来の他の管継手71の断面図、図9はその管継手71のパッキン74の断面図である(特許文献1等)。図8に示すように、接続した相互の管が撓んだ場合においても水密性を維持するために、シール材としてのパッキン74の圧縮度を小さくした管継手71が記載されている。押輪77を受口72内へ押し込むと、パッキン74は、このパッキン74の外周面75が、受口72の開口端側に形成されたテーパ面76に案内されて、受口72の内周面79と挿口73の外周面80とで形成された内部空間81に収容されている。パッキン74は、断面が中空円形のリング状であり、中空部78の直径bは肉厚aの2倍とされる。前記内部空間81の幅Tは、肉厚aの2倍とされ,パッキン74は、中空部78が塞がれた状態で内部空間81に収容されている。パッキン74は、自身の復元力によって水密性を発揮する。
【0004】
なお、これらの管継手51、71の構造を、管同士の間に弁が介装された状態で互いに接続される、弁と管との継手構造にも適用することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平3−55031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図6、図7に示すような従来の管継手51において、シール材54は、丸部62の外周面および内周面に水密性を発揮する部分を有するが、隙間55に押し込まれたシール材54に水圧が掛かると、シール材54は、受口52の開口端側に押し出されようとする。これに伴って、シール材54における水密性を発揮する部分が移動して、このシール材54における水密性を発揮する部分と、受口52の内周面59および挿口53の外周面60との掛かり代がなくなり、水密性を維持することができなくなることがある。そのために、この種の管継手51においては、押輪57を押圧するすべてのナット58の締め付けトルクを厳密に管理する必要があり、接合に際して手間がかかっていた。その点、特許文献1に開示された管継手71においては、シール材としてのパッキン74を受口72の奥部まで押し込む必要がないため押輪70を押圧するナット83の締め付けトルク管理は不要である。しかし、この管継手71において、パッキン74の断面は中空円形であるが、中空部78を塞ぐようにパッキン74を圧縮した場合に、パッキン74の、受口72の内周面79および挿口73の外周面80との当接面が受ける圧縮力は、管軸方向に対して均一ではないという課題がある。さらに中空部78には圧縮された空気が留まっているので、中空部78を完全に塞ぐことができず、パッキン74と、受口72の内周面79および挿口73の外周面80とは、全周にわたる広い範囲で均一な状態では面接触することができないという課題もある。
【0007】
したがって、この種の従来の管継手51、71の構造を、弁と管との継手構造に適用した場合にも同様な課題を生じてしまう。
本発明は、このような課題を解決するもので、押輪を押圧するナットの締め付けトルク管理が不要でありながら、シール材を広い範囲で均一に面接触させて水密性を維持し、シール材の水密性を発揮する部分が移動しても良好に水密性を維持できる弁と管との継手構造および弁を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明の弁と管との継手構造は、弁箱と弁箱内に形成された流路を開閉する弁体とを有する弁および管のいずれか一方に受口が備えられているとともに他方に挿口が備えられ、受口の内部に挿口が挿入され、挿口の外周面と、この挿口の外周面に対して平行に形成された受口の内周面との隙間に環状のシール材が配設され、挿口に外嵌されて管軸心方向へ移動自在な環状の押輪が受口の開口端面に外側から対向し、シール材が押輪によって受口奥側へ押し込まれて挿口の外周面と受口の内周面との間をシールする弁と管との継手構造であって、前記シール材は、その外周面が前記受口の内周面と平行に形成されるとともにその内周面が前記挿口の外周面と平行に形成された円筒部を有して、受口と挿口との間で圧縮されたときに、この円筒部が前記挿口の外周面と受口の内周面との全周にわたって面接触する構成とされ、相対向する押輪の端面と受口の開口端面との間に、所定の間隙を形成するスペーサが介在されていることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、シール材は、外周面が受口の内周面と平行に形成され、内周面が挿口の外周面と平行に形成された円筒部を有して、受口と挿口との間で圧縮されたときに、この円筒部が挿口の外周面と受口の内周面との全周にわたって面接触するので、シール材を広い範囲で均一に面接触させて水密性を維持することができ、シール材が水圧を受けて水密性を発揮する部分が移動した場合でも水密性が良好に維持される。また、相対向する押輪の端面と受口の開口端面との間に、所定の間隙を形成するスペーサが介在されているので、押輪を押込方向へ移動させる際に、押輪の端面と受口の開口端面との間隙を正確かつ容易に所定の間隙に保つことができる。これにより、押輪を押圧するナットの締め付けトルク管理をしなくても、シール機能の不足やシール材への過大な押圧力での押し付けなどの不具合の発生を防止でき、弁と管との良好な接続状態を容易に得ることができる。
【0010】
また、本発明の弁と管との継手構造における前記シール材は、その断面形状が、受口奥側に配設されて長円形状である膨出部と、受口開口端側に配設されて略角形である角部とを有して接続した形状とされており、前記膨出部の中央部に前記円筒部が形成され、前記角部の外周に、受口端部側ほど外径が拡大しながら厚みが増すテーパ面が形成されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の弁と管との継手構造における前記シール材は、押輪の端面における内周寄り部分に、シール材の端部が収容される段付き凹部が形成され、前記シール材の端部における前記段付き凹部に収容される部分は、その断面形状の外周が管軸心と平行となるように形成されていることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、押輪によりシール材を押圧しながらシール材を挿口の外周面と受口の内周面との隙間に配設する際に、シール材を押輪の段付き凹部に収容できるだけでなく、シール材の端部と押輪の段付き凹部が良好になり、押輪によるシール材の芯出機能やシール材が段付き凹部よりはみ出すことを防止する機能などを良好に得ることができる。
【0013】
また、本発明の弁と管との継手構造は、押輪の端面における内周寄り部分に、シール材の端部が収容される段付き凹部が形成され、この段付き凹部の外周周縁部に、端面外周側に向けて拡径するテーパ面が形成されていることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、押輪によりシール材を押圧しながらシール材を挿口の外周面と受口の内周面との隙間に配設する際に、シール材を押輪の段付き凹部に収容できるだけでなく、テーパ面によってシール材の端部が段付き凹部内に案内されて、シール材を良好に芯出しした状態で位置決めできる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように本発明によると、シール材として、その外周面が前記受口の内周面と平行に形成されるとともにその内周面が前記挿口の外周面と平行に形成された円筒部を有する構成としたので、シール材を広い範囲で均一に面接触させて水密性を維持することができ、シール材が水圧を受けて水密性を発揮する部分が移動した場合でも水密性が良好に維持され、信頼性が向上する。また、相対向する押輪の端面と受口の開口端面との間に、所定の間隙を形成するスペーサを介在させたことにより、押輪を押圧するナットの締め付けトルク管理をしなくても、シール材によるシール機能が不足したり或いはシール材が過大な押圧力で押し付けられたりするといった不具合の発生を防止することができて、弁と管との良好な接続状態を容易かつ確実に得ることができ、これによっても信頼性が向上する。
【0016】
また、シール材に、押輪の端面における内周寄り部分に、シール材の端部が収容される段付き凹部を形成し、前記シール材の端部における前記段付き凹部に収容される部分を、その断面形状の外周が管軸心と平行となるように形成したことにより、押輪によりシール材を押圧しながらシール材を挿口の外周面と受口の内周面との隙間に配設する際に、シール材を良好に芯出しした状態で位置決めできるとともに、シール材が段付き凹部よりはみ出すことを防止でき、これにより弁と管との継手構造の信頼性がさらに向上する。
【0017】
また、押輪の端面における内周寄り部分に、シール材の端部が収容される段付き凹部を形成し、この段付き凹部の外周周縁部に、端面外周側に向けて拡径するテーパ面を形成したことにより、押輪によりシール材を押圧しながらシール材を挿口の外周面と受口の内周面との隙間に配設する際に、シール材を良好に芯出しした状態で位置決めでき、これにより弁と管との継手構造の信頼性が一層向上する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係る弁と管との継手構造を示す図である。
【図2】同継手構造の継手部分の拡大断面図である。
【図3】同継手構造の押輪の断面図である。
【図4】(a)は同継手構造の継手部分の拡大断面図で、シール材が圧縮される前の状態を示している。(b)は同継手構造の押輪の要部拡大断面図である。(c)は同継手構造のシール材の別途実施の形態を示す断面図である。
【図5】(a)は同継手構造の仕切弁の側面図、(b)は同継手構造の押輪の側面図(詳しくは、押輪に対して受口開口端側より矢視した場合の側面図)である。
【図6】従来の管継手構造を示す拡大断面図であり、シール材の挿入途中状態を示す。
【図7】同従来の管継手構造を示す拡大断面図であり、シール材の装着完了状態を示す。
【図8】他の従来の管継手構造を示す拡大断面図である。
【図9】同他の従来の管継手構造に設けられているパッキンの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態に係る弁と管との継手構造および弁を、図面を参照しながら説明する。
図1において、1はソフトシール仕切弁であり、管2,3に接続されている。この仕切弁1は、鋳鉄製などからなる弁箱4と、弁箱4内に形成された流路5を開閉する弁体6とを有している。弁箱4の流路5の両端部には受口7が設けられている。また、各管2,3の端部にはそれぞれ挿口8が設けられ、挿口8が受口7の内部に挿入されて仕切弁1と管2,3との継手構造10が構成されている。
【0020】
図2に示すように、継手構造10は、挿口8の外周面11と、この挿口8の外周面11に対して平行に形成された受口7の内周面12との間の隙間に環状で弾性を有するシール材13が配設され、挿口8に外嵌されて管軸心方向へ移動自在な環状の押輪14が受口7の開口端面15に外側から対向し、シール材13が押輪14によって受口7の奥側へ押し込まれて挿口8の外周面11と受口7の内周面12との間がシールされた構造とされている。また、押輪14は、シール材13に当接した状態で、受口7の開口端面15に臨んだ状態でボルト16を介して取り付けられている。なお、図2における14cは押輪14においてボルト16が挿通される挿通孔である。
【0021】
受口7は、開口部内周において、開口端面15に向かって拡径されるテーパ面17を有し、受口7におけるテーパ面17の奥側には、管軸心18および挿口8の外周面11と平行な内周面12が形成されている。さらに受口7の内周面12の奥側には凹部19が形成され、この凹部19には、周方向1つ割りのロックリング20が収容されている。なお、挿口8の先端部外周には、ロックリング20に受口奥側から係合可能な挿口突部24が形成されている。
【0022】
シール材13は、受口7のテーパ面17および内周面12と、受口7の内部に挿入された挿口8の外周面11とによって形成される空間であるシール材収容溝21内に収容されている。受口7の端部外周にはフランジ部22が形成され、フランジ部22には、押輪14を取付けるボルト16の挿通孔23が設けられている。
【0023】
図3は、シール材13の断面図で、圧縮前の状態を示している。シール材13は、概ね環状で、シール材13の中心軸13aを含んだ切断面において、受口奥側に配設されて長円形状である膨出部25と、受口開口端側に配設されて略角形である角部26とを有して接続した形状とされている。膨出部25の一端には円弧部25aが形成され、円弧部25aに連続して、中心軸13aと平行である外周面25bおよび内周面25cを有する円筒部25dが形成されている。円筒部25dから見て円弧部25aの反対側には、角部26に接続する円弧部25eが形成されている。すなわち、膨出部25の中央部に円筒部25dが形成されている。シール材13の角部26の外周には、膨出部25に向かうに従って縮径される(つまり、受口端部側ほど、外径が拡大しながら厚みが増す)テーパ面26aや、膨出部25とは反対側に配設されている端面26bが形成されている。
【0024】
図4は、シール材13がシール材収容溝21に収容される手順を示す断面図で、図4(a)は継手構造10の断面図であり、シール材13が圧縮される前の状態を示しており、図4(b)は押輪14の断面図である。図4(a)に示すように、シール材13がシール材収容溝21に収容される際には、押輪14がシール材13の角部26の端面26bに当接されて、シール材13の膨出部25が受口7のテーパ面17に当接して圧縮される。ここで、押輪14の端面(受口7の開口端面15に臨む側の端面)14aにおける内周寄り部分には、シール材13の端部(角部26の端面26bを含む部分)が収容される段付き凹部27が形成されており、シール材13の端面26bが段付き凹部27に当接した状態で、シール材13の端面26bが設けられているシール材13の端部が収容される。ここで、図4(a)に示す実施の形態においては、シール材13の前記端部における段付き凹部27に収容される部分は、その断面形状の外周が管軸心と平行な形状とされている。押輪14の段付き凹部27の外径は、概ねシール材13の端面26bの外径と等しく形成されており、段付き凹部27の外周周縁部には、押輪14の端面14aの外周側に向けて拡径するテーパ面28が形成されている。管軸心18に直交する面を基準とするテーパ面28の傾斜角度αは、例えば60°に設定されている。この押輪14のテーパ面28が、シール材13の端面26bを段付き凹部27に案内するので、作業者は、容易に押輪14の位置決めを行うことができ、また、ボルト16に螺合するナット29の締め込み時に、反力により角部26が径方向外向きに変形して位置ずれを起こすことを防止することができる。なお、テーパ面28の傾斜角度αを60°に設定した場合を述べたが、これに限定されるものではなく、テーパ面28の傾斜角度αを50°〜80°の範囲で設定してもよい。
【0025】
ここで、テーパ面28の傾斜角度αに対するシール材13の挟み込み防止効果の有無と押輪14の自動芯出し効果の有無とについて説明する。なお、シール材13の挟み込み防止効果とは、シール材13の端面26bを含む端部が段付き凹部27からはみ出して押輪14の端面14aと受口7の開口端面15との間に挟まれることを防止することができる効果である。押輪14の自動芯出し効果とは、押輪14が挿口8に対してせり上がって自動的に芯出しされる効果である。
【0026】
テーパ面28の傾斜角度αを50°〜80°の範囲に設定することにより、シール材13の挟み込み防止効果と押輪14の自動芯出し効果とが共に確実に発揮される。なお、テーパ面28の傾斜角度αが50°未満の場合には、シール材13の端面26bに対するテーパ面28の拘束機能が不足し、シール材13の端面26bがテーパ面28上を滑って拡径方向に移動(変形)し易くなり、シール材13の挟み込み防止効果が得られなくなる。また傾斜角度αが80°を超える場合には、挿口8に対する押輪14のせり上がり量が不足し、押輪14の中心が管軸心18に一致しなくなるので、押輪14の自動芯出し効果が得られなくなる。
【0027】
図4(c)は、さらにテーパ面30が設けられたシール材13の断面図である。この図に示すように、シール材13の端面26bの外周縁部にも全周にわたってテーパ面30を形成してもよい。テーパ面30は、押輪14がシール材13を押し込む方向に拡径される。管軸心18に直交する面を基準とするテーパ面30の傾斜角度βを50°〜80°の範囲に設定することにより、シール材13の挟み込み防止効果と押輪14の自動芯出し効果とが共に確実に発揮される。段付き凹部27の外周周縁部に形成されるテーパ面28の傾斜角度αとシール材13側のテーパ面30の傾斜角度βとは同一であってもよく、または50°〜80°の範囲で異なっていてもよい。
【0028】
受口7のフランジ部22には複数のボルト(六角ボルト)16が挿通され、押輪14の外周周縁部35に形成された挿通孔14cに挿通される。挿通孔14cに挿通されたボルト16はナット29が螺合されており、ナット29を締め込むと、シール材13は、押輪14によって、徐々にシール収容溝21に収容される。受口7のフランジ部22に対向する押輪14の端面14aの周縁部には、周方向複数箇所にわたって、スペーサとしての凸部31が形成されており、この凸部31は、相対向する押輪14の端面14aと受口7の開口端面15との間に、所定の間隙Mを形成する。すなわち、ナット29を締め込むと、凸部31が受口7のフランジ部22に当接し、押輪14と受口7とは、所定間隔Mをあけた状態でメタルタッチ接合される。これにより、押輪14を押圧するナット29の締め付けトルク管理を厳密にしなくても、シール材13によるシール機能が不足したり或いはシール材13が過大な押圧力で押し付けられたりするといった不具合の発生を防止することができて、ソフトシール仕切弁1と管2、3とを良好に接続することができる。
【0029】
また、凸部31が形成されておらず、メタルタッチ接合後も押輪14と受口7のフランジ部22との間に隙間がある周方向複数箇所においては、その隙間部分からシール材13の装着状況を目視などの手段で確認することも可能である。本実施の形態においては、締結手段として六角のボルト16を用いた場合を述べたが、これに限定されるものではなく、たとえばT字型の頭部を有するT型ボルトなどを用いることも可能である。また、本実施の形態においては、図5(a)、(b)に示すように、フランジ部22において水平方向に突出する突部22aが形成され、この箇所にボルト16を挿通する挿通孔が形成され、また、これに対応して、押輪14においても水平方向に突出する突部14bが形成され、この箇所にボルト16を挿通する挿通孔14cが形成されているが、これに限るものではない。また、押輪14において、4箇所に凸部31が設けられている場合を述べたが、凸部31は2箇所以上設ければ差し支えない。
【0030】
ところで、シール材13がシール収容溝21に収容されると、シール材13のテーパ面26aが受口7の開口部に形成されたテーパ面17に当接する。シール材13のテーパ面26aと受口7のテーパ面17とが当接したときに、押輪14が受口7の開口端面15にメタルタッチ接合されるので、このメタルタッチ接合後においては、シール材13のテーパ面26aが受口7のテーパ面17にさらに押し付けられて変形することはない。なお、シール材13の角部26の硬度は膨出部25の硬度より高く、シール材13のテーパ面26aが受口7のテーパ面17に接すると、角部26によって受口7と挿口8とが一体化されるごとく密着する。
【0031】
シール収容溝21には、受口7の内周面12と挿口8の外周面11とによって形成される空間21aが設けられ、受口7の内周面12と挿口8の外周面11とは平行である。空間21aには、シール材13の膨出部25が収容され、円筒部25dが挿口8の外周面11および受口7の内周面12に当接する。円筒部25dを形成する内周面25cと外周面25bとは、膨出部25が空間21aに収容された後も平行を維持した状態で、挿口8の外周面11および受口7の内周面12に当接し、均一に圧縮される。
【0032】
また、シール材13の膨出部25は中実であるので、膨出部25が中空の場合のように圧縮された空気によって広い範囲の面接触が妨げられるということはない。膨出部25の内周面25cおよび外周面25bは、全周にわたって面接触し、均一に圧縮されることで水密性を良好に発揮する。なお、膨出部25は、押輪14がシール材13を押圧する押圧力の反力を受けることによって水密性を発揮するものではない。
【0033】
押輪14は、シール材13をシール収容溝21に押し込み、押し込まれたシール材13を受口7内の水圧に抗してシール収容溝21内に保持するために設けられるので、押輪14と受口7との接合は、良好な姿勢でメタルタッチ接合とすることができ、押輪14を受口7に取付けるボルト16の本数を減らした場合でも、受口7に対する押輪14の姿勢を良好に維持できる。
【0034】
シール材13が水圧を受けた場合について説明する。膨出部25は、水圧を受けると半径方向に膨張しようとするが、受口7の内周面12と挿口8の外周面11とによって膨張が制限されるので、円筒部25dには、水圧による圧縮力がさらに加わることになる。円筒部25dの内周面25cと外周面25bとは、膨出部25が水圧を受けた後も平行を維持した状態で外周面11および内周面12に当接する。円筒部25dの内周面25cおよび外周面25bは、全周にわたって面接触し、水圧による圧縮力がさらに加わった状態で均一に圧縮され、水密性が良好に維持される。
【0035】
膨出部25が水圧を受けて受口7の開口側に移動した場合について説明する。膨出部25の移動距離が、円筒部25dの管軸方向の長さの範囲内であれば、膨出部25が受口7の開口側に移動した後においても、円筒部25dの内周面25cおよび外周面25bと、挿口8の外周面11および受口7の内周面12との全周にわたる面接触が保たれる。円筒部25dの内周面25cおよび外周面25bの当接面は、均一に圧縮され水密性が良好に維持される。
【0036】
このように、挿口8の外周面11と、この挿口8の外周面11に対して平行に形成された受口7の内周面12との間で圧縮されることで所要のシール機能を発揮するシール材13を有するとともに、受口7の端面に接した状態でこの受口7に締結させることで、シール材13を受口7の開口端から挿口8の外周面11と受口7の内周面12との間に押し込んでその押し込み状態に保持させる押輪14を有し、シール材13は、その外周面25bが受口7の内周面12と平行に形成されるとともに、その内周面25cが挿口8の外周面11と平行に形成された円筒部25dを有して、受口7と挿口8との間で圧縮されたときに、この円筒部25dが挿口8の外周面11と受口7の内周面12との全周にわたって面接触するので、シール材13を広い範囲で均一に面接触させて水密性を維持することができ、シール材13が水圧を受けて水密性を発揮する部分が移動した場合でも水密性が良好に維持される。
【符号の説明】
【0037】
1 仕切弁(ソフトシール仕切弁)
2、3 管
4 弁箱
5 流路
6 弁体
7 受口
8 挿口
10 継手構造
13 シール材
14 押輪
21 シール材収容溝
25 膨出部
25a 円弧部
25b 外周面
25c 内周面
25d 円筒部
25e 円弧部
26a テーパ面
26b 端面
27 段付き凹部
28 テーパ面
30 テーパ面
31 凸部(スペーサ)
M 所定の間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁箱と弁箱内に形成された流路を開閉する弁体とを有する弁および管のいずれか一方に受口が備えられているとともに他方に挿口が備えられ、
受口の内部に挿口が挿入され、
挿口の外周面と、この挿口の外周面に対して平行に形成された受口の内周面との隙間に環状のシール材が配設され、
挿口に外嵌されて管軸心方向へ移動自在な環状の押輪が受口の開口端面に外側から対向し、
シール材が押輪によって受口奥側へ押し込まれて挿口の外周面と受口の内周面との間をシールする弁と管との継手構造であって、
前記シール材は、その外周面が前記受口の内周面と平行に形成されるとともにその内周面が前記挿口の外周面と平行に形成された円筒部を有して、受口と挿口との間で圧縮されたときに、この円筒部が前記挿口の外周面と受口の内周面との全周にわたって面接触する構成とされ、
相対向する押輪の端面と受口の開口端面との間に、所定の間隙を形成するスペーサが介在されている
ことを特徴とする弁と管との継手構造。
【請求項2】
前記シール材は、その断面形状が、受口奥側に配設されて長円形状である膨出部と、受口開口端側に配設されて略角形である角部とを有して接続した形状とされており、
前記膨出部の中央部に前記円筒部が形成され、
前記角部の外周に、受口端部側ほど外径が拡大しながら厚みが増すテーパ面が形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の弁と管との継手構造。
【請求項3】
押輪の端面における内周寄り部分に、シール材の端部が収容される段付き凹部が形成され、前記シール材の端部における前記段付き凹部に収容される部分は、その断面形状の外周が管軸心と平行となるように形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の弁と管との継手構造。
【請求項4】
押輪の端面における内周寄り部分に、シール材の端部が収容される段付き凹部が形成され、この段付き凹部の外周周縁部に、端面外周側に向けて拡径するテーパ面が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の弁と管との継手構造。
【請求項5】
前記請求項1〜4のいずれか1項に記載の継手構造によって管に接続される弁であって、
弁箱と、弁箱内に形成された流路を開閉する弁体とを有し、
弁箱の流路端部の少なくとも一方に受口が設けられていることを特徴とする弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−99515(P2011−99515A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−254493(P2009−254493)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】