説明

弁機構及びその製造法

【課題】本発明は、開口が狭い場所に形成されている弁座にも耐蝕耐磨耗性合金製の環状弁座を適用できる弁機構及びその製造法を提供することにある。
【解決手段】本発明は、環状弁座6の1箇所を切断し、切断された環状弁座6を変形させて弁箱2内に挿入し、その後、変形させた環状弁座6を復元させて弁箱2への固着と切断部位の接合を行うようにしたのである。
このように、環状弁座1を変形させることで、開口が狭くても耐蝕耐磨耗性合金製の環状弁座6を内部に装着できるので、この種弁機構1においても弁座5の耐蝕耐磨耗性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は弁機構及びその製造法に係り、特に、弁箱に別部材の環状弁座を固着した弁機構及びその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、弁箱の弁座は耐蝕耐磨耗性が要求されるために、例えば特許文献1に記載のように、塊状又は粒状の炭化物の金属組織を有するCo基又はNi基又はFe基等の耐蝕耐磨耗性合金(以下、単に耐蝕耐磨耗性合金と称する)製の別部材の環状弁座を成形し、この環状弁座を弁箱に固着している。
【0003】
【特許文献1】特開2000-273573号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の技術によれば、弁座の耐蝕耐磨耗性が向上するので保守点検期間の延長を図ることができる。しかしながら、弁座が環状をしていることから、環状の弁座の直径よりも狭い開口を有する弁箱内に弁座が形成されている弁機構においては、別部材の環状の弁座を弁箱内に装着することができない問題がある。
【0005】
本発明の目的は、狭い開口の弁箱内に設けられている弁座にも耐蝕耐磨耗性合金製の環状弁座を適用できる弁機構及びその製造法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するために、環状弁座の1箇所を切断し、切断された環状弁座を変形させて弁箱内に挿入し、その後、変形させた環状弁座を復元させて弁箱への固着と切断部位の接合を行うようにしたのである。
【0007】
このように、1箇所を切断して環状弁座を変形させることで、狭い開口の弁箱内に形成されている弁座にも耐蝕耐磨耗性合金製の環状弁座を挿入することができるので、この種弁機構においても弁座の耐蝕耐磨耗性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように本発明によれば、狭い開口の弁箱内に設けられている弁座にも耐蝕耐磨耗性合金製の環状弁座を適用でき、したがって、弁座の保守点検期間の延長を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明による弁機構の一実施の形態を図1〜図5に基づいて説明する。
【0010】
弁機構1は、流路を有する弁箱2と、この弁箱2内を弁棒3によって一方向に進退する弁体4と、この弁体4が当接・開離する弁座5とを備えている。そして、前記弁体4が前記弁座5に当接・開離することで前記流路を遮断したり連通したりするようにしている。
【0011】
前記弁座5には、耐蝕耐磨耗性合金製の環状弁座6が溶接7により固着されている。この環状弁座6は、前記弁体4が接触する環状耐蝕耐磨耗性合金8と環状金属母材9とにより構成され、両者は、例えば周知の拡散接合技術を利用して接合されている。また、前記環状金属母材9は、弁箱2の弁座5と溶接ができる金属材料で形成されている。このように構成された環状弁座6は、環状の一箇所に切断個所10が設けられている。
【0012】
そして、このような環状弁座6を弁箱2内に挿入するときには、図2に示すように、切断個所10をずらした後、弁箱2の狭い開口に対して搬入可能となるように、輪を変形させて縮小し、縮小状態を保持させる。この状態で環状弁座6を弁箱2内の弁座5まで搬入し、環状金属母材9を弁座5に対向する状態にして縮小状態を解き元の形状に復元させる。その後、切断個所10を対向させ、図3に示すように、溶接11を施して接続する。そして、環状弁座6の環状金属母材9を前記弁箱2の弁座5に溶接7により固定する。尚、環状弁座6の切断個所10に溶接11を施して接続した後に、環状金属母材9を弁座5に溶接7により固定するか、環状金属母材9を弁座5に溶接7により固定した後に、環状弁座6の切断個所10を溶接11によって接続するかは、弁機構1の構造によって適宜変更すべきである。
【0013】
環状弁座6を弁箱2内に固定した後、前記弁体4との擦り合わせを行って取り付け作業を終了させる。
【0014】
以上説明したように本実施の形態によれば、環状弁座6の1箇所を切断して変形させることで、環状弁座6の直径よりも狭い開口を有する弁箱2内に環状弁座6を挿入することができ、その結果、弁座5の耐蝕耐磨耗性を向上して保守点検期間を延長させることができる。
【0015】
尚、環状弁座6を複数に分割して、狭い開口を有する弁箱2内に挿入し、内部で環状に配置し直して夫々溶接することも考えられる。この方法によれば、環状弁座6を複数に分割することで弁箱2内への挿入は容易になるが、挿入後の弁座5への溶接を分割された一片ごとに行わねばならず、溶接作業が厄介になると共に、溶接された各片の弁体4に対する密着度にバラツキが生じ、後の擦り合わせ作業が厄介になる問題がある。しかし、本実施の形態によれば、環状弁座6は一箇所のみ切断なので分断しておらず、そのため、環状弁座6の数箇所を仮溶接し、弁体4に対する密着度を調整した後に、本溶接を行うことで溶接作業を容易にできると共に、後の擦り合わせ所業も簡単に済ませることができる。
【0016】
ところで、本実施の形態においては、環状弁座6を弁座5へ搬入後に復元させる作業を必要とする。しかし、弾性を有する部材で環状弁座6を成形し、弾性変形の範囲内で変形させれば、搬入後は環状弁座6自体の復元力で復元するので、復元作業工数を大幅に低減することができる。
【0017】
また、上記実施の形態においては、環状弁座6を直角に切断したものであるが、切断形状は特に限定されるものではなく、例えば、図6に示すように、環状耐蝕耐磨耗性合金8と環状金属母材9との切断個所12を周方向にずらしても良く、図7に示すように、環状耐蝕耐磨耗性合金8と環状金属母材9とを連ねた状態で斜めに切断して切断個所13としても良い。
【0018】
さらに、上記実施の形態においては、溶接7によって環状弁座6を弁座5に固着した例を説明したが、ビスによって環状弁座6を弁座5に固着することも可能である。
【0019】
さらにまた、上記実施の形態においては、溶接熱による環状耐蝕耐磨耗性合金8の耐蝕耐磨耗性の低下を懸念して環状金属母材9側を溶接により弁座5に固着したものであるが、多少の耐蝕耐磨耗性の低下を問題としなければ、環状耐蝕耐磨耗性合金8のみで環状弁座6を形成し、これを溶接により弁座5に固着するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による弁機構の一実施の形態による環状弁座を示す斜視図。
【図2】図1の環状弁座の変形状態を示す斜視図。
【図3】図1の環状弁座の接合部を示す斜視図。
【図4】図1の環状弁座を適用した弁機構を示す一部破断斜視図。
【図5】図4の弁座の拡大図。
【図6】環状弁座の切断部の変形例を示す側面図。
【図7】環状弁座の切断部の別の変形例を示す側面図。
【符号の説明】
【0021】
1…弁機構、2…弁箱、4…弁体、5…弁座、6…環状弁座、7,11…溶接、8…環状耐蝕耐磨耗性合金、9…環状金属母材、10,12,13…切断個所。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁箱に耐蝕耐磨耗性合金で形成された環状弁座を固着し、この環状弁座に弁体を当接するように構成した弁機構において、前記環状弁座は、1ヶ所が切断された環状弁座を接合して用いることを特徴とする弁機構。
【請求項2】
弁箱に耐蝕耐磨耗性合金で形成された環状弁座を固着し、この環状弁座に弁体を当接するように構成した弁機構において、前記環状弁座は、1ヶ所が切断された環状弁座を接合して用いると共に、前記環状弁座を環状金属母材とこの環状金属母材に接合された耐蝕耐磨耗性合金製環状体とで構成し、かつ前記環状弁座の環状金属母材を前記弁箱に固着したことを特徴とする弁機構。
【請求項3】
前記環状弁座は、弾性を有する材料で形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の弁機構。
【請求項4】
前記環状弁座は、溶接により弁箱に固着されていることを特徴とする請求項1,2又は3記載の弁機構。
【請求項5】
前記環状弁座は、ビス止めにより弁箱に固着されていることを特徴とする請求項1,2又は3記載の弁機構。
【請求項6】
弁箱に耐蝕耐磨耗性合金で形成された環状弁座を固着する弁機構の製造法において、前記環状弁座の1箇所を切断し、切断された環状弁座を変形させて前記弁箱内に挿入し、その後、変形させた環状弁座を復元させて前記弁箱への固着と切断部位の接合を行うことを特徴とする弁機構の製造法。
【請求項7】
前記環状弁座は、弾性を有する材料で形成されており、前記環状弁座の変形は弾性変形の範囲内での変形である請求項6記載の弁機構の製造法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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