説明

弁膜症治療方法及び化合物

狭窄性弁膜症を治療する方法である。本方法は、治療上有効量の脂質(特にコレステロール)の逆輸送アゴニストを哺乳類に投与するステップを具える。より好ましくは、アポリポタンパク質A−1(ApoA−1)模倣ペプチド/リン脂質複合体であり、このペプチドは、SEQ ID NO:1のアミノ酸配列によって規定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2006年6月1日出願の米国暫定特許出願シリアルナンバー60/809,850の優先権を主張し、ここにその開示の全体を参照によって組み込む。
【0002】
本発明は、医学的な方法及び化合物の一般的な分野に関し、特に、弁膜症治療の方法及び化合物に関係する。
【背景技術】
【0003】
心臓の機能は、心臓血管システムの血液循環に必要なエネルギーを供給することである。全臓器を介する血流は受動的であり、心臓のポンプ作用によって動脈圧が静脈圧より高く維持されるだけで起こる。右心ポンプは、血液が肺血管を介して流れるために必要なエネルギーを提供し、左心ポンプは、血液が全身の臓器を介して流れるエネルギーを提供する。
【0004】
静脈血は、全身の臓器から上大静脈及び下大静脈によって右心房へ戻る。これは、三尖弁を通って右心室内へ入り、ここから肺動脈弁を介して肺動脈によって肺循環内へ送り出される。酸素を豊富に含んだ肺静脈血は、肺静脈内を左心房へ流れ、僧帽弁を介して左心室へ入る。ここから大動脈弁を介して大動脈内へ送られ全身の臓器へ分配される。
【0005】
したがって、その正常な動作において、心臓の左心室は、酸素の豊富な血液を大動脈を介して身体の脈管構造内の動脈へ送り出す。心臓がポンプ作用を行うと、左心室と大動脈の間に配置された大動脈弁は、血流の方向を制御するために開閉する。より具体的には、心臓の鼓動又は心収縮中に、大動脈弁が開いて血液は左心室から大動脈へ流れることができる。心臓の鼓動の間、又は心拡張中、大動脈弁は閉じてしっかりとした密閉状態を作り出し、血液が心室内へ漏れ出ることを防ぐ。
【0006】
弁は、構造的に、一方向にのみ流れるようにするとともに、これらを横切る圧力差の方向に応じて受動的に開閉できるように構成されている。大動脈弁は一般的に、3つの線維性リーフレット又は弁尖から構成される。リーフレットは、心室の血液の駆出中に大動脈の壁に対して押されて開き、心拡張中に戻ってこれらの自由な縁部は接合して、心臓内へ血液が戻ることを防ぐ。
【0007】
各大動脈弁の弁尖の後の大動脈壁は外側に隆起しており、バルサルバ洞として知られる3つの構造を形成する。2つの最も前方の大動脈弁の弁尖は、それぞれバルサルバ洞からの左右の冠動脈の起点であるので左右の冠尖として知られ、残りの後部分は無冠尖として知られる。
【0008】
なんらかの理由によって、大動脈弁は、どういうわけか損傷を受けて狭窄することが起こる。これが起こると、大動脈弁は正常な広がりまで開かず、心臓から大動脈内への血流が妨げられる。これは、大動脈弁狭窄症として通常知られる心臓状態をもたらす。
【0009】
大動脈弁狭窄症の一般的な病因は、先天性異常、リウマチ熱、又は老齢患者における石灰化変性を含む。二尖弁は、最も一般的な先天性異常であり、弁尖のうちの一つにおける縫線(raphe)が交連の障害を生じることを示す。生まれた時に一又は四つの弁が存在することは滅多にない。二尖弁は初期段階の狭窄症ではないが、最終的に、線維症や肥厚によって石灰化による開口の大きさを小さくしてしまう。実際、機械的剪断応力が、一般的に石灰化損傷をもたらす。
【0010】
リウマチ熱は、リーフレットの周辺部に傷を残し、最終的に、交連を融合して石灰化する。大動脈弁狭窄症の50%以上の大人は二尖弁を有することが知られているが、線維症及び肥厚は弁が二尖か三尖かどうかを測定することを難しくする。
【0011】
変性型大動脈弁狭窄症の老齢患者において、カルシウム沈着は通常、洞や環で起こり、リーフレットの周辺部は石灰化されないまましばしば残る。
【0012】
現在、大動脈弁狭窄症の細胞生理学に対する理論が多く提案されている。このような理論には、損傷、機械的剪断応力、変性をもたらす自己免疫現象、1回の拍出量の慢性的な上昇、及びカルシウム代謝の変化(腎不全、ページェット病でみられるような)に反応する心臓血管の危険因子を含む。
【0013】
その病因にかかわらず、大動脈弁狭窄症は左心室収縮期圧を増加させる。心室腔の収縮期の高血圧は、心筋壁の求心性肥大によって補償され、壁圧は正常になる。心房の収縮が失われるとき、例えば心房細動又は心房心室の分離中に、左心室の動きが低下しうるように、非協調性の、肥厚の左心室は拡張期充満に対する心房の寄与により依存するようになる。また、心拡張期中の肥厚の左心室の異常弛緩や硬直が増加によって心拡張の機能低下と左心室及び左房拡張期圧の上昇がもたらされる。
【0014】
心筋障害は、最終的に、慢性の重度の弁閉塞及び収縮状態の低下から起こる。左心室の拡大は一部の患者にも起こる。心筋の酸素消費は、左心室の心収縮圧の上昇と左心室重量の増加によって高い状態である。さらに、左心室拡張気圧が増加することによって、心筋かん流に必要な圧力勾配を小さくする。したがって、著しい大動脈弁狭窄症は、酸素供給が減少することによって、高い心筋酸素要求量が不十分な状態で維持されるようになり、心内膜下虚血をもたらす。
【0015】
最終的に、心筋の変力状態の低下とともに、駆出分は正常範囲以下に低下する(左心室の関係する拡張を伴う又は伴わない)。左心室端部の拡張期圧がさらに上昇することによって(収縮機能障害を伴う又は伴わない二次的な拡張機能障害)、肺静脈圧が上昇する。かん流の悪い心内膜下心筋層を伴う大動脈弁狭窄症において、心筋酸素需要は増加し、狭心症、不整脈、及び突然死さえもたらす。
【0016】
重度の大動脈弁狭窄症の状態において、何らかの主な症状の進行は、著しい死亡リスクを示唆し、外科的治療適応とされる。発症後の平均寿命は2乃至3年であるか、症状が心不全の場合はそれ以下である。症状であるおそらく突然死は、しばしば身体活動に伴って起こり、大動脈弁狭窄症の患者は軽度から中程度の重症度であっても精力的な活動や競技を避けるべきである。したがって、大動脈弁狭窄症は高い死亡率だけではなく、実質的な病的状態にも関係する。
【0017】
石灰沈着性の大動脈狭窄が大動脈弁狭窄症の症例の大部分を占める。この状態は、大動脈弁のリーフレットの上又は上側面に石灰化結節を作ることを特徴とする。これらの結節は、リーフレットの可撓性を小さくし、これによってこれらの可動性と十分に開く能力を制限する。
【0018】
大動脈弁狭窄症を治療するために3つの技術、すなわち、弁置換術、手術における脱石灰化又は創面切除、あるいは心臓弁及びバルーンの弁形成術が、用いられている。
【0019】
最近は、心臓切開手術の際の弁置換術が症候性大動脈弁狭窄症の標準的な治療である。分離される大動脈弁置換術の10年の生存率は、老齢患者であっても比較的良い。しかしながら、この技術は、患者が胸骨切開(開胸)と心臓切開手術を受けるのに十分なほど健康である必要がある。この手順のための手術の死亡率は、特に高齢者で比較的高い。
【0020】
2種類の補綴心臓弁、すなわち、生物から得られていない材料のみから作られる機械弁と、生物材料からすべて又は一部が作られている生体補綴弁がある。最近使用する機械弁は、ボール・ケージ構造、傾斜したディスク構造(1又は2のディスク)、又はヒンジで連結されたリーフレット構造を具える。
【0021】
生体補綴弁は、一般的に、支持ステントと、複数のリーフレットとを具える。リーフレットは、通常、生物材料から作られるが、現在のステントは一般的に少なくとも部分的に非生物材料から作られる。リーフレットの生物材料は、心膜、大腿筋膜、又は心臓弁など自己組織にすることができる。代替的に、この材料は、ヒト移植用の非自己ヒト組織など同種組織に由来するようにしてもよく、又は異種にすることもできる。
【0022】
各種の補綴心臓弁は、利点と不利点とを有している。機械的な心臓弁は耐久性が良く、従って、長期的に機能性をもたらす可能性が高いが、血栓塞栓の危険性があるので、長期の抗凝固薬療法を必要とする。しかしながら、長期抗凝固薬療法は、血栓症事象に対する残存リスクと同等の発生率で出血の危険性を伴う。
【0023】
生体補綴弁は、最初、自然の弁の血行動態特性に近い。これらは、機械弁より血栓の危険性が小さい。しかしながら、このような弁は、機械弁より石灰化の危険性がかなり高い。機能的に障害のあるバイオ補綴心臓弁の治療法は、新しい弁との交換(従って、第二の開放心臓手術)を頻繁に必要とし、バイオ補綴心臓弁の予想有用寿命は、患者に深刻な医療問題と医療システムにおける経済的負担の両方を制限する。
【0024】
さらに、補綴心臓弁の全ては、やや狭窄する。血栓症又は石灰化に伴う補綴の機能不全によって障害物の増加や逆流が発生する。逆流は弁周囲の漏れからも生じ、それは弁縫合部の領域における漏れである。弁機能不全に伴う乱流は、溶血や貧血をもたらしうる。補綴弁が正常に機能している場合でさえ、一部の患者に溶血が起こりうる。
【0025】
心内膜炎は、人工心臓弁を有する患者において別の可能性のある大きな合併症である。抗生物質の予防的投与が、菌血症に関する歯、胃腸、及び尿生殖器の手術並びに他の手順の前に行われなければならない。
【0026】
さらに、一部の患者は、従来の置換弁を収容できるほど大きくない寸法の大動脈を有する。したがって、かなりの数の患者にとって、弁置換術は不可能であったり、非実用的、又は望ましくない。
【0027】
機械的置換弁が現れる以前、大動脈弁の術中機械的創面切除又は脱石灰化が長年用いられている。この技術では、弁を手動で置換するのではなく大動脈を外科的に入れて、外科医が好適な外科的道具を用いて石灰化した沈着物を取り除く。最近、超音波創面切除が石灰化した沈着物を取り除くのに有効であると説明されている。それにもかかわらず、この技術は、さらに患者が胸部手術に対して生存し、回復するほど十分に健康であることを必要とし、この外科的手術に関係する費用やリスク全てを伴う。
【0028】
大動脈弁狭窄症を治療する第3の技術は、経皮的大動脈弁バルーン形成術である。この手順において、膨張式のバルーンカテーテルが大動脈弁まで進められて膨張し、石灰化した小結節を圧縮して破壊し、リーフレットの可動性を増やす。この手順は、前述した2つの技術に関連する多くの危険性や不利点をなくすことができるが、再狭窄が一年以内にかなり一般的に起こるので、この技術の有用性は、外科的治療の対象とならない又は手術を拒む患者に対する一時的な症状の緩和に限定される。
【0029】
従って、大動脈弁狭窄症及び他の弁膜症の非外科的治療が必要とされる。
【0030】
本発明は、大動脈弁狭窄症の進行を妨げるだけではなく、脂質逆輸送アゴニストを用いて狭窄の程度を低減する方法を提供することによって、従来技術及び現在の傾向と著しく異なる。
【0031】
従って、本発明の目的は、弁膜症の新規的な非外科的治療を提供することである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0032】
広い態様において、本発明は、対象の狭窄性弁膜症を予防又は治療する方法を提供し、当該方法は、治療上有効量の脂質逆輸送アゴニストを必要時に対象に投与するステップを具える。例えば、前記脂質輸送アゴニストはコレステロール逆輸送アゴニストである。
【0033】
本発明のいくつかの実施例において、狭窄性弁膜症は、大動脈弁狭窄症、石灰化弁狭窄症、又はなんらかの他の狭窄性弁膜症である。
【0034】
本発明のいくつかの実施例において、前記脂質逆輸送アゴニストは、HDL、HDL様生理作用を有するペプチド、脂質と複合したHDL様生理作用を有するペプチド、HDL模倣剤、CETPモジュレータ、SRB1モジュレータ、LXR/RXRアゴニスト、ABCA1アゴニスト、及びPPARアゴニスト、及びアポリポタンパク質A−1(ApoA−1)模倣ペプチド/リン脂質複合体から成る群から選択される。
【0035】
この後者の場合において、前記ApoA−1模倣ペプチド/リン脂質複合体を投与するステップは、前記ApoA−1模倣ペプチド/リン脂質複合体を前記対象に注入するステップを具えてもよい。この場合の投与量の例は、前記対象の体重kgあたり約1μg乃至約10g、前記対象の体重kgあたり約1mg乃至約0.5g、前記対象の体重kgあたり約25mgである。
【0036】
例えば、前記ApoA−1模倣ペプチドは、後述するSEQ ID NO:1の配列を具え、前記ApoA−1模倣ペプチドはエッグスフィンゴミエリン及び1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2-dipalmitoyl-sn-glycero-3-phosphocholine)(DPPC)によって複合体形成されてもよい。
【0037】
いくつかの実施例において、前記対象は、哺乳動物、例えばヒトである。
【0038】
別の広い態様において、本発明は、対象の弁石灰化を予防又は治療する方法を提供し、当該方法は、治療上有効量の脂質逆輸送アゴニストを必要時に対象に投与するステップを具える。
【0039】
さらに別の広い態様において、本発明は、対象の狭窄性弁膜症を制御する方法を提供し、当該方法は、必要時に対象内のコレステロール逆輸送を増やすステップを具える。
【0040】
さらに別の広い態様において、本発明は、狭窄性弁膜症を予防又は回復する方法を提供し、当該方法は、脂質逆輸送アゴニストを必要時に患者に投与するステップを具える。
【0041】
さらに別の広い態様において、本発明は、対象の狭窄性弁膜症を制御する方法を提供し、当該方法は、治療上有効量の脂質逆輸送アゴニストを必要時に対象に投与するステップを具える。
【0042】
例えば、前記狭窄性弁膜症を制御するステップは、前記狭窄性弁膜症の進行速度を低下させるステップ又は前記狭窄性弁膜症を少なくとも部分的に回復させるステップを具えてもよい。
【0043】
さらに別の広い態様において、本発明は、対象の狭窄性弁膜症を制御するための脂質逆輸送アゴニストの使用を提供する。
【0044】
さらに別の広い態様において、本発明は、対象の狭窄性弁膜症を制御する医薬組成物質を作るための脂質逆輸送アゴニストの使用を提供する。
【0045】
変形例において、方法は、治療上有効量のアポリポタンパク質A−1(ApoA−1)の生物学的特性を模倣する化合物Aとして後述する化合物の投与を具える。化合物A及び他の好適な化合物が、2001年9月11に発表された米国特許第6,287,590号、2003年1月14日に発表された米国特許第6,506,799号に記述されており、これらは、ここに全体を参照によって組み込んでいる。実際に、これらの特許に記述されている化合物や分子の作用に関連する現在の知識を考慮して、これらの化合物や分子によってここに提示されている結果と同じ結果を得ることができる。
【0046】
利点として、提案された方法は、弁膜症に対し比較的侵襲性のある又は比較的無効の既存の治療に代替するものである。また、弁膜症の進行を遅くする事に加え、提案された方法は狭窄性弁膜症を回復する。従って、提案された治療は、大動脈弁狭窄及び他の弁膜症の進行を遅くする又は止める可能性を有するだけではなく、大動脈弁狭窄及び他の弁膜症の後退をももたらす。
【0047】
大動脈弁狭窄(AVS)は、最も一般的な心臓弁膜症であり、標準の治癒的療法は、心臓切開における外科的な弁置換術である。脂質逆輸送アゴニストがAVSを予防する又は治療する可能性を有するかどうかを決定するために、ApoA−1模倣ペプチドの注入が試験され、これらがAVSの後退を誘導することができるかどうかを測定した。その目的のために、15匹の雄性ニュージーランドホワイトラビットに、超音波心臓検査によってAVSが有意に検出されるまでコレステロール含有飼料及びビタミンDを与えた。動物を無作為に選んで、生理食塩水(コントロール群、n=8)又はApoA−1模倣ペプチド(処置群、n=7)を1週あたり3回を2週間与えた。連続的な超音波心臓検査図及び死後の弁組織学を行って。大動脈弁口面積が、コントロールと比較して処置群において、処置の7日(21.9±3.6mm対19.6±1.8mm, P=0.019) (14.2%と3.9%の増加)、10日 (23.0±4.1mm対20.3±2.4mm, P=0.006) (19.8%対7.6%)及び14日(23.8±3.1mm対21.3±2.4mm,P=0.012)(24.6%対12.9%)後に著しく改善された。大動脈弁の厚さは、コントロールでは変化しなかったことに対し、処置群(0.094±0.034cm対0.075±0.033cm)では処置の14日以内に21%減少した(P=0.0006) 。弁のリーフレット及びバルサルバ洞の基底部にある病変の範囲は、コントロール群と比較して処置群において小さかった (52.8±12.5%対66.7±9.9%,P=0.032)。石灰化領域が減少する顕著な傾向も観察された(1.6±2.0%対6.9±6.7%,P=0.063)。従って、ApoA−1模倣ペプチドは実験的にAVSの後退をもたらす。
【0048】
本発明の他の目的、利点、及び特性は、例示としてのみ示された好適な実施例の以下の非制限的な記述を読んで添付図面を参照することによってより明らかになりうる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1は、ApoA−1模倣ペプチドの処置期間中に得られた超音波心臓検査測定を介して得た大動脈弁口面積値を示す。「0」日目は、コレステロール及びビタミンD飼料の終了とApoA−1模倣ペプチドの処置期間の最初に対応する、*P≦0.05;**P≦0.01.(b)、大動脈弁の厚さの値、***P≦0.001。
【図2】図2は、ApoA−1模倣ペプチドの処置期間中に得られた超音波心臓検査測定を介して得た大動脈弁の厚さの値を示す。「0」日目は、コレステロール及びビタミンD飼料の終了とApoA−1模倣ペプチドの処置期間の最初に対応する、*P≦0.05;**P≦0.01.、***P≦0.001。
【図3】図3は、コントロール及び処置群の大動脈弁における分析領域(ROA)に対する病変領域(LA)のパーセンテージの比較を示す、*P≦0.032。
【図4】図4は、両方の群の大動脈弁口面積(AVA)と、大動脈弁における分析領域(ROA)に対する病変領域(LA)のパーセンテージとの相関を示す。
【図5】図5は、両方の群の動物において、超音波心臓検査における大動脈弁の厚さとバルサルバ洞領域における石灰化領域のパーセンテージとの相関を示す。一匹のコントロール動物の値(四角)が図の左下の2つの三角形の後に隠れている。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本記述は、多くの公文書を参照しており、これらの内容をここに全体を参照によって組み込む。病理組織学的、実験的、及び臨床データは、石灰化した大動脈弁狭窄(AVS)がリポタンパク質の沈殿、炎症、及び能動的なリーフレットの石灰化による能動的な疾患経過であることを示唆している(1)。AVSとアテローム性動脈硬化症との間には、いくつかの類似点があるが、これらの病態生理学及び治療はかなり異なる。病態生理学に関して、AVSの患者の約半分に二尖の大動脈弁が存在して疾患の一因となっているのに対し、アテローム性動脈硬化症は構造的な先天性の異常によるものではない。また、リウマチ性心臓疾患はAVSをもたらしうるが、アテローム性動脈硬化症に結びつくことはない。高齢者の石灰化AVSは、西洋諸国で最も頻繁な種類であり、しばしば単独の大動脈弁置換術をもたらし、関連する冠状動脈バイパス外科手術を必要としない。医学的な治療に関し、スタチンは、冠状動脈性心臓病の患者を保護して、進行を停止させるかアテローム性動脈硬化症の後退を引き起こすことが分かっている(3)。対照的に、最近の無作為化臨床試験における集中的なスタチン療法によって、AVSの進行を防ぐことはできない(4)。同様に、アンジオテンシン変換酵素阻害薬はいくつかの大規模な臨床試験において心臓を保護することが分かっているが、AVSの進行を遅くすることはできなかった。まとめると、アテローム性動脈硬化症とAVSは、異なる患者集団に作用する異なった疾患である。
【0051】
HDLコレステロールと冠動脈疾患との間には反比例関係がある。実験的なアテローム性動脈硬化症の動物における研究で、ApoA1ミラノ/リン脂質複合体がコレステロールを早く輸送し、これにより動脈硬化性プラーク負荷を減らすことが示されている(5、6)。さらに、2つの臨床研究の結果は、再構成HDLの注入によって冠状動脈硬化症を急速に改善できることを示している(7、8)。我々は、HDLに基づく治療は、AVSの後退も引き起こすと仮説をたてた。これを安全に達成できる場合、AVSの治療及び後退は、このよくある疾患の我々の臨床的なアプローチを一変させうる。アポリポタンパク質A−1(ApoA−1)は、コレステロール逆輸送の強化を含む多くのこの有益な作用を調節するHDLの構成成分である(9)。我々の研究において使用したペプチドは、ApoA−1と同様に脂質の存在下で両親媒性αへリックスを形成することができる(10、11)。従って、我々は、新生HDLを模倣するApoA−1模倣ペプチドとリン脂質の複合体の石灰化AVSの後退をもたらす能力を前述したラビットモデルで試験した(12)。
【0052】
よく知られるように、血漿中のリポタンパク質の主な機能は、コレステロールやトリグリセリドなどの脂質輸送である。血漿中の輸送では、通常、コレステロールエステルとしてのコレステロール及びトリグリセリドは、これらが疎水性コアを形成するリポタンパク質粒子内に含まれている。このコアは、リン脂質、非エステル化コレステロール、及びアポリポタンパク質と呼ばれるタンパク質を含む表面コートによって覆われている。後者は脂質輸送に関与しており、さらに一部は、多くの脂質代謝に関与している酵素に相互作用する。今までに、少なくとも10のアポリポタンパク質、すなわち、A−1、A−2、A−4、B−48、B−100、C−I、C−II、C−III、D及びEが確認されている。
【0053】
我々は、好適な化合物の使用を介して脂質逆輸送機構の効率を高める方法が、弁膜症の治療に可能なアプローチであるという仮説をたてた。また、石灰化沈着物を除去し、これによって狭窄性弁膜症を効果的に治癒しうる可能性がある。
【0054】
この仮説を試験するために使用した化合物は、化合物Aとして後述され、アポリポタンパク質A−1(ApoA−1)の生物学的特性を模倣するリポタンパク質である。この種の化合物、Apo A−1模倣剤又はアゴニストが、2002年4月23日にDasseuxらによって発行された標題「Lipid complexes of APO A−1 agonist compounds」米国特許第6,376,464号に詳細に開示されている。この文書はここに全体を参照によって組み込まれる。
【0055】
簡単に説明すると、これらの化合物は、脂質の存在中で両親媒性αへリックスを形成することができ、ApoA−1の活性を模倣するペプチド又はこの類似物を具える。従って、これらはApoA−1アゴニストと呼ばれる。このアゴニストは、これらの主な特性として15乃至29のアミノ酸残基、好ましくは22のアミノ酸残基、又はこの類似物から成る「コア」ペプチドを有しており、これにおいて、ペプチド内の少なくとも1のアミド結合が、置換アミド、アミドの同配体、又はアミド模倣剤に置き換えられる。
【0056】
これらのApoA−1アゴニストは、部分的に、活性に重要であると考えられる22−merコンセンサス配列の一次配列において、一定のアミノ酸残基を変化させることによって、天然ApoA−1の活性を達成するかいくつかの実施例ではそれ以上の活性を示す合成ペプチドを生じると開示した発見Venkatachalapathi他、1991、Mol. Conformation and Biol. Interactions、Indian Acad. Sci. B: 585−596 (PVLDEFREKLNEELEALKQKLK; 後述する“Segrest’s コンセンサス 22−mer”又は“コンセンサス 22−mer”)に基づく。Segrest’s コンセンサス 22−merペプチド (Glu−5、Lys−9、及びGlu−13) の3つの荷電アミノ酸残基を疎水性Leu残基に置換することによって、ApoA−1の構造及び機能の特性を技術分野においてそれまで見たことがない程に模倣するということが発見された。
【0057】
化合物Aは、配列:H−Pro−Val−Leu−Asp−Leu−Phe−Arg−Glu−Leu−Leu−Asn−Glu−Leu−Leu−Glu−Ala−Leu−Lys−Gln−Lys−Leu−Lys−OH(SEQ ID NO:1)を具えるペプチドを含み、Polypeptide Laboratoriesによって複合体形成された(Torrance、CA、USA)。純度は、高性能液体クロマトグラフィ及び質量スペクトル解析によって評価され、98%以上であった。ペプチドは、エッグスフィンゴミエリン及び1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DPPC)(Avanti Polar Lipids)(10)を生理食塩水中で構成成分を質量比1:1:1で混合し、溶液が完全に透明になるまで多数の加熱及び冷却サイクルを行うことによって複合体形成した。複合体を含む溶液は、アリコート内で凍結乾燥して長期間保存した。無菌状態下で毎週戻されて、新鮮な溶液を4℃で保持した。複合体の生物学的な活性は、その能力についてラットで試験し、ペプチドの静脈注射の後にコレステロールを移動し、血中のHDLコレステロールを上昇させることができた(データは図示せず)。
【0058】
これらの既知の生物活性及び構造に基づいて、上述した米国特許第6,376,464号に開示された化合物などの他の化合物が、化合物Aと同じ効果を示しうると考えられている。
【0059】
状態、疾患、不調、又は状況の「治療」又は「処置」という言葉は、
(1)状態、疾患、不調、又は状況に苦しむ又はかかりやすいかもしれないが状態、疾患、不調、又は状況の臨床又は潜在性の症状を経験又は発現していない対象に、発現する状態、疾患、不調、又は状況の臨床症状の発症を予防する又は遅らせること;
(2)状態、疾患、不調、又は状況を抑制する、すなわち状態、疾患、不調、もしくは状況又はこの少なくとも一の臨床又は潜在性の症状の発現を止めたり減らしたりすること;
(3)状態、疾患、不調、又は状況を緩和する、すなわち状態、疾患、不調、もしくは状況又は少なくとも一の臨床又は潜在性の症状の後退をもたらすこと;
を含む。
【0060】
処置を受ける対象の利点は、統計的に有意であるか少なくとも対象又は医師が認知できるかのいずれかである。
【0061】
「対象」という言葉は、哺乳動物(特にヒト)や家畜(例えば、猫や犬を含む家庭のペット)や非家畜動物(例えば野生動物)などの他の動物を含む。
【0062】
「治療上有効量」は、状態、疾患、不調、又は状況を治療するために対象に投与するとき、このような処置に十分な効果を有する化合物の総量を意味する。「治療上有効量」は、化合物、状態、疾患、不調、又は状況、及び重症度や処置を受ける対象の年齢、体重、身体状況、反応性に依存して変化しうる。
【0063】
医薬組成物
【0064】
本発明の医薬組成物は、本発明の少なくとも一の化合物と、薬剤として容認可能な賦形剤(薬剤として容認可能な担体又は希釈液など)とを含む。医薬組成物は、治療上有効量の本発明の化合物を含むことが好ましい。本発明の化合物は、薬剤として容認可能な賦形剤(担体又は希釈液など)を伴っていたり、担体によって希釈されたり、カプセル、袋、紙、又は他の容器の形にすることができる担体内に封入されたりしてもよい。
【0065】
好適な担体の例には、水、食塩水、アルコール類、ポリエチレングリコール、硬化ヒマシ油(polyhydroxyethoxylated castor oil )、ピーナツ油、オリーブ油、ゼラチン、ラクトース、テラアルバ(terra alba)、スクロース、デキストリン、カルボン酸マグネシウム、糖、シクロデキストリン、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシア、ステアリン酸又は低級アルキルエーテル化セルロース、珪酸、脂肪酸、脂肪酸アミン、脂肪酸モノグリセリド、及びジグリセリド、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン、ヒドロキシメチルセルロース、およびポリビニルピロリドンが含まれるが、限定ではない。
【0066】
担体もしくは希釈剤は、モノステアリン酸グリセリル、もしくはジステアリン酸グリセリルなどの持続性放出物質を、単独で、又はワックスと混合したものを含んでもよい。
【0067】
また、医薬組成物には、一又はそれ以上の薬剤として容認可能な補助剤、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、保存料、浸透圧に影響する塩、緩衝剤、甘味料、香料、着色料、又は先の任意の組合せが含まれてもよい。本発明の医薬組成物は、当該技術分野において公知である手順を用いて、対象への投与後に活性因子を、急速に放出する、徐放する、又は遅れて放出するような処方とすることができる。
【0068】
本発明の医薬組成物は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、20th Ed.、2003(Lippincott Williams & Wilkins)に記述されているように従来技術によって調整することができる。例えば、活性化合物は、担体と混合するか、もしくは担体で希釈するか、または、アンプル、カプセル、袋、紙、もしくは他の容器の形にしうる担体の内部に封入することができる。担体が希釈剤として提供されるとき、これは、活性化合物用の媒体、賦形剤、もしくは媒質として機能するような固体、半固体、または液体の物質とすることができる。活性化合物は、顆粒状固体である容器、例えば袋の中に吸着させることができる。
【0069】
医薬組成物は、従来の形、例えば、カプセル、錠剤、エアロゾル、溶液、懸濁液、又は局所適用のための物質にすることができる。
【0070】
投与の経路は、本発明に係る活性化合物が、適切な又は所望の活性箇所へ効率的に輸送されるような任意の経路とすることができる。投与の好適な経路には、限定ではなく、経口、経鼻、経肺、経口腔、真皮下、経皮、非経口的、直腸、デポー、皮下、静脈内、尿道内、筋肉内、鼻腔内、眼(例えば点眼液など)、又は局所(例えば局所の軟膏など)が含まれる。
【0071】
実験例
【0072】
ラビットにおける大動脈弁狭窄の複合的な動物モデルが行われている。このモデルは、ヒトで観察される臨床症状と同様の石灰化によって特徴付けられる大動脈弁狭窄をもたらした。
【0073】
方法
【0074】
動物及び実験
【0075】
Droletら(12)による開示を出展とする動物モデルを使用した。15匹の雄性ニュージーランドホワイトラビット(2.7乃至3.0kg、12乃至13週齢)に、飲料水で0.5%のコレステロール含有飼料(ハーラン、インディアナポリス、インディアナ州)及びビタミンD(1日50000UI;シグマ、マーカム、カナダ)を、超音波心臓検査によって大動脈弁口面積(AVA)の減少又はトランス弁(transvalvular)速度比(V1/V2)の減少≧10%によって規定されるAVSが有意に検出されるまで(12.9±2.4週)与えた。
【0076】
次いで、動物に、コレステロールの低下を模倣するように標準飼料(ビタミンD無し)に戻して、生理食塩水(コントロール群、n=8)又はApoA−1模倣ペプチド(処置群、n=7)のいずれかを受けるように無作為に割り当てた。ラビットに、生理食塩水又はリン脂質と複合したApoA−1模倣ペプチド(25mg/kg)(化合物A)を1週あたり3回を2週間、辺縁耳静脈を介して注入した。無作為化処置期間中、3乃至4日毎に、超音波心臓検査図を連続的に行った(超音波心臓検査法を参照)。これらの最後の注入の後2日に、動物に最後の超音波心臓検査図を行って屠殺し、大動脈弁を採取して組織分析を行った。血液試料をベースライン時、処置前、及び屠殺前に耳動脈を介して得た。総コレステロール、HDLコレステロール、トリグリセリド、及びカルシウムの量を自動フィルター光度計システム(DimensionRxL Max、 Dade Behring、IL)で測定した。
【0077】
動物の管理と手順は、カナダ動物管理協会(Canadian Council on Animal Care)のガイドラインに従っており、動物研究の機関倫理委員会によって認証された。
【0078】
超音波心臓検査
【0079】
経胸腔的超音波心臓検査の調査を、ベースライン時と、高コレステロール飼料の8週目から開始して有意なAVSが発現するまで週1回の頻度で、及びApoA−1模倣ペプチド又は生理食塩水コントロール処置の4、7、10、及び14日後に行った。調査は、標準の超音波心臓検査システム(Sonos 5500、Philips Medical Imaging、 MA)を使用するS12プローブを用いて行った。ケタミン(45mg/kg)及びミダゾラム(0.75mg/kg)の筋内注射を鎮静作用のために用いた。
【0080】
大動脈弁の胸骨傍長軸及び短軸像を記録してリーフレットの形態を評価した。左心室流出路(LVOT)の径をズームした胸骨傍長軸像で測定し、LVOT断面積(CSALVOT)をCSALVOT=Π(DLVOT/2)2に従って計算した。パルスドプラ法によって心尖部五腔像において大動脈弁の近位でサンプルし、LVOT速度値(V1)及び速度時間積分値(VTILVOT)を得た。大動脈弁を横切る連続波(CW)ドプラ探索(interrogation)を用いて、同じ像でトランス弁最大速度(V2)及びVTI(VTIAO)を得た。V1/V2比が、AVSの発現を決定するために前処置期間において計算された。大動脈弁口面積(AVA)を連続方程式:AVA=CSALVOTX(VTILVOT/VTIAO)によってそれぞれの時点で得た。中間部分での大動脈弁の厚さは、ベースライン時と、無作為化治療の前と、最後の超音波心臓検査試験においてズームした胸骨傍短軸像における拡張末期で測定した。
【0081】
3つの連続心臓サイクルの平均を各測定に用いた。追跡調査の前に前回の記録を参照することによって連続検査で同じ結像面を得るように、特に取り計られた。全ての超音波心臓検査の画像処理と測定は、全プロトコルを通じて無作為化処置の割り当てを無視して同じ調査経験者によって行われた。
【0082】
組織形態計測
【0083】
上行大動脈及び大動脈弁を縦に開いて3つの弁尖に分けた。2つの尖を包埋剤中ですぐに冷凍し(OCT Tissue−Tek; Sakura, USA)、−80℃で保存した。第3の尖は、10%の緩衝ホルマリン中で4℃、24時間浸漬固定され、パラフィン中に包埋した。それぞれの尖の中央の3分の1から得た染色した又は免疫組織化学的に分類された組織切片をデジタルビデオカメラ(Qcolor3、Olympus)に接続された光学顕微鏡(BX41、Olympus)を用いてコンピューターベースの数値化画像システムによって分析した。分析領域(ROA)は、リーフレットの基底部からバルサルバ洞1000μm及びリーフレットの基底部からリーフレット500μmから構成した。病変領域(LA)及びリーフレットの病変長(LLL)を測定した。
【0084】
組織化学
【0085】
ヘマトキシリン−フロキシン−サフラン(safran)、von Kossa及び Sirius−red(F3B、BDH、UK)染色部を調整し、組織の石灰化及びコラーゲンの調査それぞれの定期実験を行った。偏光下でSirius redピクリン酸染色部においてコラーゲン線維I型及びIII型を前述の通りに定量した(13)。免疫組織化学評価では、全ての切片を抗ラビットマクロファージ(RAM11、Dako、Canada)(希釈率1:100)か抗ラビット平滑筋細胞α−アクチン(Clone 1A4、Dako、Canada)(希釈率1:200)のいずれかのマウスlgG2aモノクローナル抗体で前培養した。種に適したビオチン化二次抗体を適用し、次にスレプトアビジンホースラディッシュペルオキシダーゼ複合体を適用し、アゾエチルカルバゾール(AEC)によって視覚化し、メイヤーのヘマトキシリンによって対比染色した。平滑筋細胞、マクロファージ、及び石灰化領域を倍率40Xで得られたデジタル画像のROAにおいて定量した。各切片の画像は、同じ照明設定でデジタル的に記録され、すべての試料に同じカラー閾値で自動コンピュータベース解析を行った。データは、ROAにおいてパーセントで分類した領域として示した。
【0086】
コレステロールフリーの組織の評価では、PBS(pH7.4)中の4%パラフォルムアルデヒドに固定された5μmの低温切開片をフィリピンで染色した(13)。切片は、DMSOを溶解しPBSで希釈されたフィリピン複合体(Sigma、Canada)中で室温で1時間培養し、Vectashield(Vector Laboratories、 USA) にマウントされ、DAPIフィルタセットとZeiss Axiovert 200M顕微鏡を用いる傾向顕微鏡によって観察された。画像は、0.63X C−mount アダプタに取り付けられたAxioCam MRm デジタルカメラによって得た。フィリピンデータは任意単位の蛍光強度として示した。
【0087】
統計分析
【0088】
データは、平均値±標準偏差として示されている。「前処置」期間では、反復測定分散分析(ANOVA)モデルを使用して経時的および群(処置対コントロール群)の間の超音波心臓検査及び血清測定を調査した。独立変数として時間、群、及び群x時間相互関係のモデルを用いて、所定の時点の群の間の比較が、有意な群x時間相互関係の存在時にだけ行った。その他の時点では、モデルの主要な群の効果に基づいて全体的な結果を出した。無作為化処置期間では、反復測定共分散分析(ANCOVA)モデルを使用して、経時的および群(処置対コントロール群)の間の超音波心臓検査及び血清測定を調査し、ベースライン値の反応変数で補正した。群x時間相互関係は、ANCOVAモデルにも含まれており、所定の時点の群の間の比較は、有意な群x時間相互関係の存在時にだけ行った。その他の時点で、モデルの主要な群の効果に基づいて全体的な結果を出した。組織学的変数は、スチューデントt検定を用いて処置群とコントロール群との間で比較した。組織形態計測と超音波心臓検査の変数との関係は、Pearson相関係数を用いて評価した。全ての分析はSASrelease8.2 (SAS Institute Inc., Cary, NC)で行い、有意水準0.05で行った。
【0089】
結果
【0090】
血清脂質及びカルシウム血
【0091】
前処置期間(高コレステロール飼料の期間)中の群の間で、総コレステロール(P=0.942)、HDLコレステロール(P=0.787)、トリグリセリド(P=0.906)、及びカルシウム血(P=0.727)の血清レベルに対する有意差はなかった。また、2週間の処置期間中、総コレステロールレベルは両方の群で統計的に同じであった(P=0.470)。コントロール群及び処置群のそれぞれの値は、無作為化の時に、20.46±3.52 mmol/L及び 20.13±5.18 mmol/L、処置の終了時に、13.78±6.24 mmol/L及び 17.57±10.32mmol/Lであった。処置期間中、HDLコレステロールレベルは、群の間で統計的に有意差はなかった(P=0.374)。HDLコレステロールは、無作為化の時に、0.50±0.20mmol/L及び0.50±0.15mmol/L、処置の終了時に、0.39±0.17mmol/L及び0.45±0.17mmol/Lであった。この期間中、トリグリセリドレベルも同じであった(P=0.544)。処置期間中、両方の群において、カルシウム血は群の間で統計的に有意差はなく(P=0.832)、無作為化の前で3.31±0.29 mmol/L及び3.15±0.37mmol/L、処置の終了時で3.22±0.11mmol/L及び3.22±0.12mmol/Lの値であった。
【0092】
高コレステロール飼料及びビタミンDの補給期間中のAVSの発現
【0093】
コレステロール及びビタミンD飼料によるAVS誘導時間は、コントロール及び処置群で同じであった(12.8±2.2対13.0±2.9週;P=0.852)。ベースライン時と高コレステロール含有飼料の期間の終了時のAVAの間に有意差があった(P<0.0001)。両方の群において、AVAは減少し、値はコントロールと処置したラビットとの間でほぼ同じであった(コントロールにおけるベースライン時の24.2±4.1mmから19.0±2.7mmへ、処置群における24.7±3.9mmから19.1±2.6へ)。従って、AVS発現期間中、群の間のAVAに有意差はなかった(P=0.852)。AVAは、コントロール群と処置群における無作為化処置の前に20.5±4.2%と21.6±3.7%に減少した。
【0094】
また、V/V比は、ベースライン時と高コレステロール飼料の期間の終了時の測定の間で有意差があった(P<0.0001)。V/V比は群の間で有意差なく、これらの時点の間で減少した(P=0.914)。
【0095】
処置に伴うAVSの進行−超音波心臓検査
【0096】
図1に示すように、処置期間中(AVS検出から処置の2週間後まで)、有意な群x時間相互関係がAVAで観察された(P=0.013)。反復測定ANCOVAモデルを用いて超音波心臓検査測定は、コントロールと比較して処置群において、処置の7日後(21.9±3.6mm対19.6±1.8mm, P=0.019) (14.2±3.5%対3.9±3.4%の相対的増加)、10日後 (23.0±4.1mm対20.3±2.4mm, P=0.006) (19.8±3.5%対7.6±4.2%の相対的増加)、及び14日後(23.8±3.1mm対21.3±2.4mm,P=0.012)(24.6±2.0%対12.9±3.5%の相対的増加)後にAVAの有意な増加を示した。
【0097】
大動脈弁の厚さが超音波心臓検査によって評価され、無作為化治療の前と、処置の14日後に測定された。有意な群x時間相互関係が大動脈弁の厚さで観察された(P=0.005)。無作為化時点で群の間に有意差は見られなかったが、大動脈弁の厚さの有意な減少が処置の14日後にコントロール群と比較して処置群で観察された。大動脈弁の厚さは、処置したラビットにおいて無作為化の前に0.094±0.034cm、処置の終了時に0.075±0.033cmであったが、コントロールにおいて両方の時点で0.080±0.024cmと 0.080±0.026cm であった。
【0098】
組織学
【0099】
全ての動物が大動脈弁の病変を示した。新組織(neotissue)のキャップ(cap)にある病変は、病変の約半分の深さから泡沫細胞を有する低密度の線維性材料に徐々に変わる泡沫細胞の多重層を構成した。病変は、一般的に、接合部(the sinotubular area)から進行し、バルサルバ洞全体を覆って尖の基底部及び動脈の近位リーフレットの最大2分の1乃至3分の2まで延在した。対照的に、リーフレット室(leaflet ventricularis)の病変は一般的ではなく、より重症度が軽かった。
【0100】
組織形態計測
【0101】
図3に示されるように、コントロール群と比較してApoA−1模倣ペプチド処置群において、ROAあたりのLAのパーセンテージは有意に減少した(52.8±12.5%/ROA対66.7±9.9%/ROA、P=0.032)。興味深いことに、両方の群において組織形態計測のLA/ROAのパーセンテージと超音波心臓検査で測定したAVAを統合計算すると、LA/ROAのパーセンテージとAVAの間に逆相関がみられた (r=−0.54、P=0.039、図4)。同様に、両群の統合データの分析は、AVAと%LLLの間に逆相関を示した(すなわち、病変が占めるリーフレット総長又はLLL/リーフレット総長X100のパーセンテージ)(r=−0.70、P=0.004)。しかしながら、%LLLにおいて処置及びコントロール群との間の差は、統計的有意性に達しなかった(55.7±24.3%対72.3±11.7%、P=0.109)。
【0102】
組織化学
【0103】
石灰化した病巣が動物の大部分に観察された。バルサルバ洞の病変コアにおけるカルシウム沈着を伴うラビットのパーセンテージは、処置群で57%(4/7)、コントロールで88%(7/8)であった。バルサルバ洞領域のvon Kossa染色による石灰化の占めるパーセンテージの定量は、コントロールと比較して処置群で77%に減少する強い傾向がみられた (1.6±2.0%対6.9±6.7%;P=0.063)。両方の調査群の統合データを使用して、洞領域内の石灰化病巣領域のこのパーセンテージは、 超音波心臓検査で測定した大動脈弁の厚さとかなりの相関を示した(r=0.63,P=0.012)(図5)。
【0104】
フィリピン染色によって検出されたフリーコレステロールは、ほとんどすべてのコントロール動物において大動脈弁全体の病変領域にわたって存在したが、蛍光標識は、ApoA−1模倣ペプチドで処置したほとんどの動物の病変の管腔縁部でより低下する傾向にあった。管腔縁部の第1の10μm内の蛍光標識の評価は、コントロールと比較して処置された動物において41%のフリーコレステロールの減少を示したが、この差は、統計的優位性に達しなかった(蛍光強度の任意ユニット221±54対377±229、P=0.231)。マクロファージ領域(34.5%)は、αアクチン陽性領域(17.1%)の大きさの約2倍であり、群の間に有意差はなかった。ROAにおいて、コラーゲン線維III型(薄緑色)のパーセンテージは、コラーゲン線維I型(赤黄色)より高かった(コントロールにおける19.7±5.5%/III型のROA対6.6±4.1%/I型のROA、P=0.00009;処置したラビットにおける19.1±11.3%/III型のROA対5.5±5.6%/I型のROA、P=0.015)。しかしながら、ROAにおけるコラーゲン線維(I型及びIII型)のパーセンテージは、両方の群の間で同じであった (それぞれP=0.671及びP=O.883)。
【0105】
考察
【0106】
これらの実験は、ApoA−1模倣ペプチドの注入が、実験的なAVSの有意な後退をもたらすことを照明している。コントロール群と比較して、ApoA−1模倣ペプチドの注入は、AVAのより良い改善及び大動脈弁の厚さにおける有意な減少をもたらした。超音波心臓検査のAVS重症度においてこれらの好ましい変化は、リーフレットの基底部範囲の病変延在部の有意な減少及び石灰化が減少する強い傾向によって組織切片に生じた。
【0107】
Droletら(12)によって明らかにされた大動脈弁の石灰化が有意に再現可能に起こるAVSのラビットモデルを用いて、臨床症状を模倣することが可能であった。コレステロール含有飼料及びビタミンDを約13週間補給した後、超音波心臓検査測定は、AVAにおいて21%減少を示した。二次元画像が、弁の厚さの増加とリーフレットの硬化及び石灰化領域に対応するエコー発生性を示した。組織学的検査は、リーフレットの肥厚及びバルサルバ洞とリーフレット基底部の両方においてカルシウム沈着を確認した。この調査は、実験的な石灰化AVSにおいてApoA−1模倣ペプチドの有益な効果の超音波心臓検査及び組織学的証明を提供する。AVAにおける増加は、積極的な処置の開始後7日と早くに観察され、14日で24%の改善を達成した。AVAは、ApoA−1模倣ペプチドの注入によって高コレステロール飼料を開始する前の正常な値へ実際にほぼ戻った。対照的に、コントロール群におけるコレステロール含有飼料及びビタミンD補給の中止は(脂質低下を模倣するために)、ペプチドの有益な効果を確認しているAVAにおいて軽い増加のみをもたらした。また、大動脈弁の厚さは、超音波心臓検査によって示すようにペプチドを伴う処置においてほんの14日後に著しく減少した。興味深いことに、超音波心臓検査によって決定されたAVAは、組織学による病変の延在部の指標に逆相関関係を示した。また、ApoA−1模倣ペプチドの注入は、リーフレット基底部周囲の組織学分析範囲における病変領域のパーセンテージにおいて、有意な減少をもたらした。さらに、高齢者の石灰化AVSが先進国が遭遇する狭窄症を最も頻繁に形成すると考えると、任意に選択した0.05レベルでの統計的優位性をほとんど達した弁石灰化の延在部における大きな減少は、臨床上重要になりうる。これは、大動脈弁の石灰化の存在によって、ペプチドによる好ましい結果を得ることが排除されないばかりではなく、このアプローチが弁の石灰化自体を後退させうることを示唆している。この結果は、僧帽弁および/または石灰化にも適用可能である。
【0108】
リン脂質と複合したApoA−1模倣ペプチドは、自然のApoA−1と同様の方法でコレステロール逆輸送を刺激する(14)。コントロールと比較してペプチドで処置したラビットにおいて総コレステロールのより高い循環レベル(処置の2週間後に観察された)は、組織コレステロールの可動性の強化を示した。
【0109】
本実験例は、例えば、HDLと同様の効果を有するHDL又はペプチド(脂質を含む又は含まない)の1又はそれ以上の注入又は投与、HDL模倣剤の経口投与、および/またはコレステリルエステル輸送タンパク(CETP)モジュレータ、スカベンジャー受容体クラスBメンバー1(SRB1)モジュレータ、肝臓X受容体(LXR)/レチノイドX受容体(RXR)アゴニスト、ATP結合カセット輸送体1(ABCA1)アゴニスト、及びペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)アゴニスト、同様の物など任意の好適なHDLに基づく治療を使用してヒトにおいて同じ結果を得ることが可能であるということを示唆している。
【0110】
ここに記述した実験は大動脈弁狭窄の調節に関係しているが、これらの実験がヒトや他の哺乳類において生物学的効果を予測しうるおよび/または全ての他の弁疾患に対してヒトや他の哺乳類において本発明を使用するモデルとして役立ちうることを当業者は容易に理解しうる。
【0111】
本発明は、この好適な実施例によって上述されているが、請求の範囲に規定される本発明の主題の意図及び原理から外れることなく改良することができる。
【0112】
参照文献
1. Freeman RV, Otto CM. Spectrum of calcific aortic valve disease: pathogenesis, disease progression, and treatment strategies. Circulation 2005;111 :3316-26.

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【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の狭窄性弁膜症を予防又は治療する方法において、当該方法が、治療上有効量の脂質逆輸送アゴニストを必要時に対象に投与するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記脂質輸送アゴニストがコレステロール逆輸送アゴニストであることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、前記狭窄性弁膜症が大動脈弁狭窄症であることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、前記狭窄性弁膜症が石灰化弁狭窄症であることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、前記脂質逆輸送アゴニストが、高比重リポタンパク質(HDL)、HDL様生理作用を有するペプチド、脂質と複合したHDL様生理作用を有するペプチド、HDL模倣剤、コレステリルエステル輸送タンパク質(CETP)モジュレータ、スカベンジャー受容体クラスBメンバー1(SRB1)モジュレータ、肝臓X受容体/レチノイドX受容体(LXR/RXR)アゴニスト、ATP結合カセット輸送体1(ABCA1)アゴニスト、及びペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)アゴニストから成る群から選択されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、前記脂質逆輸送アゴニストが、アポリポタンパク質A−1(ApoA−1)模倣ペプチド/リン脂質複合体であることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、前記ApoA−1模倣ペプチド/リン脂質複合体を投与するステップが、前記ApoA−1模倣ペプチド/リン脂質複合体を前記対象に注入するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、前記ApoA−1模倣ペプチド/リン脂質複合体が、前記対象の体重kgあたり約1μg乃至約10gの投与量で注入されることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法において、前記ApoA−1模倣ペプチド/リン脂質複合体が、前記対象の体重kgあたり約1mg乃至約0.5gの投与量で注入されることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、前記ApoA−1模倣ペプチド/リン脂質複合体が、前記対象の体重kgあたり約25mgの投与量で注入されることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項6に記載の方法において、前記ApoA−1模倣ペプチドが、SEQ ID NO:1の配列を具えることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項6に記載の方法において、前記ApoA−1模倣ペプチドが、エッグスフィンゴミエリン及び1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DPPC)によって複合体形成されていることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項6に記載の方法において、前記アゴニストが、SEQ ID NO:1の配列を有するポリペプチドを含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法において、前記対象が哺乳動物であることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、前記対象がヒトであることを特徴とする方法。
【請求項16】
対象の弁石灰化を予防又は治療する方法において、当該方法が、治療上有効量の脂質逆輸送アゴニストを必要時に対象に投与するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項17】
対象の狭窄性弁膜症を制御する方法において、当該方法が、必要時に対象内のコレステロール逆輸送を増やすステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項18】
狭窄性弁膜症を予防又は回復する方法において、当該方法が、脂質逆輸送アゴニストを必要時に患者に投与するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項19】
対象の狭窄性弁膜症を制御する方法において、当該方法が、治療上有効量の脂質逆輸送アゴニストを必要時に対象に投与するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法において、前記狭窄性弁膜症を制御するステップが、前記狭窄性弁膜症の進行速度を低下させるステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法において、前記狭窄性弁膜症を制御するステップが、前記狭窄性弁膜症を少なくとも部分的に回復させるステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項22】
対象の狭窄性弁膜症を制御するための脂質逆輸送アゴニストの使用。
【請求項23】
対象の狭窄性弁膜症を制御する医薬組成物質を作るための脂質逆輸送アゴニストの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−538835(P2009−538835A)
【公表日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−512379(P2009−512379)
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【国際出願番号】PCT/CA2007/000895
【国際公開番号】WO2007/137400
【国際公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(508113952)
【Fターム(参考)】