説明

弁装置

【課題】流体流入口からの流体の流入時には弁体を流れの力によって押し開かせるが、逆方向へは弁体が弁座に密着して流れを遮断するほか、その遮断されている流れを必要に応じて回復(採取)させることができるようにした弁装置を提供する
【解決手段】本発明に係る弁装置1は、流体流入口5に通じる流路6の奥側に弁座7を設け、該弁座7に対峙し、前記流入口5からの流体の流れによって前記弁座を開放し、逆方向へは前記弁座を閉じるように作動する弁体8を、前記流路6内に流れを遮蔽しない状態で設置されたスライダー9に支持させたことを特徴とし、流体流入口から差し込んだシリンジ3の先筒(針基接続部)4で、前記スライダー9を奥方へ向けて押し込むことにより弁座7に密着している弁体8を開放させることができるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、体外血液回路又は点滴セット等の流体回路の途中から、該回路内に薬液や栄養剤などの液体を適時注入するための側注装置として用いる弁装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の弁装置は、体外血液回路又は点滴セットの導液チューブを流れる流体中に、必要な液体を側注(混注)するような場合に、その流体回路の途中に流体流入口を設け、該流入口からの流体の流入をスムーズにさせ、流入後、流体の逆流を自動的に防止するために使われる。すなわち、流入方向へは弁体が流れ(流圧)によって押し開かれ、逆方向へは弁座に密着して流れ(逆流圧)を遮断するようになっている。
【0003】
このような機能をなす弁装置として、スイング式逆止め弁(特開2002−1391621号)、または傘型逆止め弁(特開2000−274373号)がある。これらの弁装置は、特に、側注装置として開発されたものではないが、前者は、弁座に蝶番によって支持された弁体を備えたもので、該弁体は液体の流れによる押上げ力によりスイングして流路を開き、流れが止まる(流圧が零となる)と自らの重力によって弁座に密着し、逆方向の流れを遮断する。また、後者は、弁座の中心に保持された中心管に、柄部を差し込んでなる傘型の弁体を備えたもので、該弁体は流れによる押上げ力により傘部が反り返えって流路を開き、流れが止まると旧形状に戻ることによって弁座に密着し、逆方向の流れを遮断するようになっている。
【特許文献1】特開2002−139162号
【特許文献2】特開2000−274373号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の特開2002−139162号及び特開2000−274373号の弁装置は、流体を一方向に通し、逆方向の流れを遮断するのみで、逆方向の流れを必要に応じて開放させることはできなかった。したがって、体外血液回路や点滴セット等の流体回路の途中に設置した側注装置として用いる弁装置としては不十分であった。換言すれば、体外血液回路や点滴セット等の流体回路に薬液や栄養剤などの液体を側注した後の流体の逆流を確実に防止できるが、流体回路中に流動する流体を、検査等の目的のために同じ弁装置を通して採取することができなかった。
【0005】
本発明は、上記課題を解消するためのもので、その目的とするところは、流体流入口からの流体の流入時には弁体を流れの力によって押し開かせるが、逆方向へは弁体が弁座に密着して流れを遮断するほか、その遮断されている流れを必要に応じて回復(採取)させることができるようにした弁装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明に係る弁装置は、流体流入口に連通する流路の奥側に弁座を設け、該弁座に対峙し、前記流入口からの流体の流路を開放し、逆方向へは閉塞する弁体を、前記流路内に、流路を遮蔽しないように設置したスライダーに支持させたことを特徴とし、流体流入口から差込んだシリンジの先筒(針基接続部)で、前記スライダーを奥方へ向けて押し込むことにより弁座に密着している弁体を開放させることができるように構成したものである。
【0007】
また、請求項2に記載の発明に係る弁装置は、前記弁体が、弁座に対峙させる傘部とスライダーに支持させる柄部とからなる傘型のものであることを特徴とし、前記流入口からの流体や逆方向の流体に的確かつ迅速に反応できるように構成したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る弁装置によれば、流体流入口にシリンジの先筒を差込んでシリンジ内の流体を圧入すると、その流れ(流圧)によって弁座に対峙させた弁体を開放させる一方、逆方向への流れには確実に流路を遮断できる。すなわち、体外血液回路や点滴セット等の流体回路中に薬液や栄養剤などの液体の側注をスムーズにするが、側注後、流体の逆流を確実に防止できるほか、前記流体流入口から差込んだシリンジの先筒で、前記スライダーを逆方向の流れに抗して奥方へ向けて押込むことにより、弁座に密着していた弁体を弁座から離反方向に強制的に移動させることができる。したがって、それまで遮断されていた逆方向の流れを一時的あるいは半永続的に回復させ、体外血液回路や点滴セット等の流体回路中に流動する流体をシリンジに的確に採取することができるという優れた効果を奏するものである。
【0009】
また、請求項2に記載の発明に係る弁装置によれば、前記弁体が弁座に対峙させる傘部とスライダーに支持させる柄部とからなる傘型のものであり、一方向の流れのみを許容する一方向弁としても、また、シリンジの先筒を差込む等により逆方向の流れを許容する二方向弁としても的確かつ迅速に反応できるという優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明の実施の態様を添付図面に基づいて説明する。図1は本願弁装置における流体流入時の断面図、図2は図1のA−A線断面図、図3は本願弁装置における逆流遮断時の断面図、図4は本願弁装置における逆流遮断を解除したときの断面図、図5(a)、(b)は弁体の移動量の調整手段を示した断面図である。
【0011】
本願弁装置1は、体外血液回路又は点滴セット等の導液チューブCの途中を切断し、その切断端を繋ぐための接続管2の一側面に、図1の如く、Tポート状に導通させて取付けられている。該本願弁装置1は、シリンジ3の先筒(針基接続部)4を差込むための流体流入口5と、該流入口5に連通した流路6と、該流路6の奥側に設けた弁座7と、該弁座7に対峙させた弁体8とを備えている。
【0012】
前記弁体8はゴム等の弾性素材により構成されている。また、その形状は、図示の例では、傘型になっており、その傘部8aは前記流路6の奥側に設けた弁座7に対峙し、柄部8bは前記流路6内に流路を塞がないように設置したスライダー9の中心管9aに支持させている。該スライダー9は、図2の如く、前記中心管9aの周囲に、前記流路3の内壁に摺接する翼片9bを放射状に突出してなり、前記流路6内の流体の流動を妨げないようにしている。
【0013】
前記弁座7の周囲にスカート部10が立上げられ、前記接続管2の側面に設けた扁平皿型ケーシング11に雌雄結合し、前記弁体(傘部8a)が作動する空間12を形成している。該空間12は前記ケーシング11の中央部に設けた透孔13を介して前記接続管2の内孔2′に連通している。したがって、流体流入口5にシリンジ3の先筒4を差込み、プランジャー(図示せず)を操作してシリンジ内の液体を流入Wすると、該液体は前記弁体8をスライダー9とともに、図1の如く、弁座7から離反するように移動し、前記空間12を介して圧力差により透孔13を経て接続管2の内孔2′から導液チューブCの流れの中に混注される。この場合、弁体8が弁座7から離反する移動量は、後記する逆流体の遮断性能を高めるために可及的に小さくする方がよい。すなわち、透孔13を有する対向壁との距離が調整される。図5(a)は、傘部8aのトップに同材からなる変形及び復元可能な突子Pを突設するとともに、該突子Pの当接部P′を前記透孔13を塞がない状態で設け、該突子Pの変形力と復元力を利用して前記移動量を調整するようにしてもよい。また、本願弁装置1を導通させる接続管2側の構造によっては、前記突子Pがあたる当接部P′を、図5(b)の如く、構成することもある。
【0014】
前記シリンジ3内の液体の圧入が終了し、流路6内の圧が下がると相対的に前記導液チューブCを流れる流体圧が高くなり、前記空間12内へ逆流W′するが、その瞬間に、前記弁体8がスライダー9とともに、図3の如く、弁座7に密着するように移動し、逆方向の流れを確実に遮断することとなる。したがって、体外血液回路や点滴セット等の流体回路中に薬液や栄養剤などの液体の側注後、流体の逆流は直ちに遮断されることとなる。この弁体8の反応を急速に行わせるため、前述の如く、弁体8が弁座7から離反する移動量が調整されるとよい。
【0015】
前記流体の逆流を防止している弁体8は、前記流体流入口5にシリンジ3の先筒4を、図4の如く、差込んでスライダー9を前記空間12の奥方へ向けて押し込むと、それまで密着していた弁体8は弁座7から強制的に離反させられる。したがって、この時点で逆方向の流れは回復し、体外血液回路や点滴セット等の流体回路中に流動する流体をシリンジ3内に適時容易に採取することができることとなる。このスライダー9を奥方へ向けて押し込む作用はシリンジ3の先筒4のほか、シリンジ3の先筒4に接続したアダプター(図示せず)で行うこともある。この場合、このスライダー9の設置位置(流体流入口5からの距離等)を考慮し、前記シリンジ3の先筒4あるいはアダプターが特殊な長さにしたものにするか、先筒4あるいはアダプターの先端部に特殊な長さの突起物を設けたものでなければスライダー9を可動させ得ないようにしておくとが安全対策上好ましい。
【0016】
前記流体流入口5の口端外周には、図示の如く、雄ねじ14が突設する一方、前記シリンジ3の先筒4を囲むように雌ねじ筒15を設け、該シリンジ3の先筒4を流体流入口5に差込みつつ所定の方向に回動させることにより前記雄ねじ14と、前記雌ねじ筒15の内周に形成した雌ねじ16とを螺合させると、本願弁装置1とシリンジ3の先筒4とを確実にロックできる機構(以下ロック機構と称す)17を構成している。
【0017】
前記本願弁装置1とシリンジ3の先筒4との間にロック機構17を応用し、確実なロックができると、プランジャー(図示せず)を操作してシリンジ内の液体を体外血液回路や点滴セット等の流体回路中に圧入するときに、流体流入口5とシリンジの先筒との離脱事故が未然に防止できる。また、体外血液回路や点滴セット等の流体回路中に流動する流体をシリンジ3内に採取する場合において、シリンジ3の先筒4を流体流入口5に差込んで弁体8を強制的に開放させるときも、同様の効果が得られる。
【0018】
さらに、本願弁装置1の流体流入口5に薬液持続注入器(図示せず)の出力端を結合して長時間にわたる薬液の持続注入することができるようにする場合において、前記流体流入口5と薬液持続注入器の出力端との間に上記ロック機構17を採用すれば、これら両者の結合状態を継続的に維持することが可能となり、薬液の持続注入時の安全性は極めて向上するようになる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本願弁装置1は、体外血液回路又は点滴セット等の導液チューブの途中に、Tポート状に取り付けた側注装置として説明したが、前記導液チューブに分岐した分岐チューブの外端部に本願弁装置1を取り付けて側注装置とすることもある。また、側注装置以外の弁装置に適用することも可能であり、産業上の利用可能性は極めて大きいものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本願弁装置における流体流入時の断面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】本願弁装置における逆流遮断時の断面図である。
【図4】本願弁装置における逆流遮断を解除したときの断面図である。
【図5】(a)、(b)は弁体の移動量の調整手段を示した断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 本願弁装置
2 接続管
2′ 内孔
3 シリンジ
4 先筒(針基接続部)
5 流体流入口
6 流路
7 弁座
8 弁体
8a 傘部
8b 柄部
9 スライダー
9a 中心管
9b 翼片
10 スカート部
11 扁平皿型ケーシング
12 空間
13 透孔
14 雄ねじ
15 雌ねじ筒
16 雌ねじ
17 ロック機構
C 導液チューブ
W 流入
W′ 逆流
P 突子
P′ 当接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体流入口に連通する流路の奥側に弁座を設け、該弁座に対峙し、前記流入口からの流体の流路を開放し、逆方向へは閉塞する弁体を、前記流路内に、流路を遮蔽しないように設置したスライダーに支持させたことを特徴とする弁装置。
【請求項2】
前記弁体が、弁座に対峙させる傘部とスライダーに支持させる柄部とからなる傘型のものであることを特徴とする請求項1に記載の弁装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−9835(P2006−9835A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−184135(P2004−184135)
【出願日】平成16年6月22日(2004.6.22)
【出願人】(504153451)株式会社オーキスメディカル (3)
【Fターム(参考)】