弁
試料注入器は、それを貫通するまっすぐな通路を有する回転弁体を含み、この弁体を回転させて、溶媒源と連通したポートをカラムの入口と連通したポートに接続することができる。別の通路が隣接する2つのポートを接続する。弁体は、試料が注入されるまっすぐな経路を弁体が提供する1つの位置、パージガス源をクロマトグラフィシステムに接続する経路を弁体が提供する第2の位置、および前処理のために溶媒をカラムに接続する経路を弁体が提供する第3の位置に回転させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体クロマトグラフィにおける試料注入用の弁に関する。
【背景技術】
【0002】
ステータ、ロータおよびポートを有し、ポート対を接続するためにロータが所定位置で移動可能な試料注入弁は知られている。従来技術の試料注入弁は、試料源に接続された試料入口ポートまたは試料入口ポートよりも上流の点とカラムの入口に接続された注入ポートとの間の通路上に、曲がり(bend)またはコーナー(corner)を有する。このような従来技術の1つの試料注入システムが、1976年12月28日に発行された米国特許第3,999,439号に開示されている。これらの従来技術の試料注入弁は、例えばフラッシュクロマトグラフィ分離(flash chromatography sepatation)などの一部の分取クロマトグラフィ分離(preparatory chromatographic separation)に使用されたときに、大量の試料が使用されることにより、試料を運ぶ導管が詰まる可能性があるという欠点を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、本発明の目的は、試料を受け取る弁の入口と弁の出口との間に、分取クロマトグラフィにおいて大量の試料が使用されたときに詰まりを生じやすい曲がりまたは障害がない試料注入弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的のため、試料注入弁は、ロータと、ステータと、ステータに対してロータを、ある位置から別の位置へ移動させるアクチュエータと、複数の出口ポートとを含む。
この試料注入弁は、ロータが、該ロータの中心を通るまっすぐで滑らかな通路を有することを特徴とする。これにより、互いに180度の間隔を置いて配置された出口ポートが、ロータの前記まっすぐで滑らかな通路を介して連通する。ロータはさらに、第1の接続スロット端および第2の接続スロット端を有する接続スロットを有する。第1および第2の接続スロット端は、隣接した出口ポート間に接続スロットを通る経路を提供するように配置される。
【0005】
ロータを介した所望の接続を提供するため、(1)第1の出口ポートは溶媒システムと連通し、(2)第2の出口ポートはカラムと連通し、(3)第3の出口ポートは試料源の出口端と連通し、(4)第4の出口ポートは試料源の入口端と連通する。第2および第3の出口ポートは互いから180度であり、第4の出口ポートと第3の出口ポートは互いに隣接する。この構成では、ロータが第1の位置にあるときに、溶媒および試料が、溶媒システムから、試料源を通って第3の出口ポートまで流れ、そこから、まっすぐで滑らかな通路を通ってカラムまで流れることができる。ロータが第1の位置にあるときに、溶媒はさらに、溶媒システムから、接続スロットを通って試料源まで流れることができる。
【0006】
有利には、弁の第5の出口ポートがパージガス源に接続される。第4および第5の出口ポートは互いから180度であり、そのため、ロータが第2の位置にあるときに、試料源ならびに関係する管および通路をパージすることができる。第1の出口ポートは第2の出口ポートに隣接し、そのため、ロータが第3の位置にあるときに、溶媒システムからの溶媒が、接続スロットを通ってカラムに流れる。第6の出口ポートは廃棄物位置と連通する。第6の出口ポートは前記第1の出口ポートから180度であり、そのため、ロータが第4の位置にあるときに溶媒が、パージングのために、管を通って廃棄物まで流れることができる。
【0007】
以上の説明から理解できるように、本発明の注入弁は以下のものを含むいくつかの利点を有する:(1)構造が単純であり、安価な材料から容易に形成され、(2)操作が簡単であり、単一の弁体を移動させて、パージおよび前処理を可能にする組合せを容易に接続し、(3)分取液体クロマトグラフィ中の試料の詰まりを低減させるために、曲がりまたは障害のないまっすぐな貫通流路に試料を注入することができる。
【0008】
本発明の上記の目的および他の目的は、添付図面とともに検討したときにより完全に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】液体クロマトグラフィシステムの部分概略図/部分ブロック図である。
【図2】1つの動作位置にある、図1のクロマトグラフィシステムにおいて使用される弁の概略図である。
【図3】さらに別の動作位置にある、図1の実施形態において有用な試料注入弁の概略図である。
【図4】本発明の一実施形態に基づく試料注入弁の立面図である。
【図5】図4の弁の下面図である。
【図6】図5の線6−6で切られた断面図である。
【図7】1つの視点から見た図4の弁の分解透視図である。
【図8】別の視点から見た図1の弁の分解透視図である。
【図9】図7の弁に使用されているロータの透視図である。
【図10】1つの角度から見た図9の弁の立面図である。
【図11】別の角度から見た図9の弁の側面図である。
【図12】図11の線12−12に沿って切られた断面図である。
【図13】別の視点から見た図9の弁エレメントの透視図である。
【図14】図7の弁に使用されているステータの透視図である。
【図15】図14のステータの上面図である。
【図16】図15の線16−16に沿って切られた図14のステータの断面図である。
【図17】別の視点から見た図14のステータの透視図である。
【図18】図17のステータの下面図である。
【図19】分取液体クロマトグラフィプロセスの流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に、試料注入弁12と、制御装置/溶媒システム14と、下流構成要素16と、廃棄物位置18と、パージガス源20とを含む、分取分離(preparatory separation)に使用される液体クロマトグラフィシステム10の部分概略図/部分ブロック図が示されている。下流構成要素16は、カラム、検出器、表示器、記録器およびフラクションコレクタである。この構成では、この好ましい実施形態の試料注入弁12が分取用途に適したサイズに形成され、試料源24と6ポート弁22とを含む。弁22は、貫通した滑らかな通路46と、隣接開口接続スロット48とを有する弁体32をハウジング内に含む。この好ましい実施形態では、アクチュエータ32を、ある位置から別の位置へ手動で移動させることができ、アクチュエータ32が6つのポート26A〜26Fを含む。
【0011】
この好ましい実施形態では、滑らかな通路46が、互いに180度の間隔を置いて配置されたポートを接続して、試料カートリッジ、複数試料カートリッジまたは、例えば、より大きな試料塊から圧力によってカラムに注入された試料、またはカラムの入力ループに圧力によって注入され、次いで制御装置/溶媒システム14からの溶媒によってカラムに運ばれた試料などの他の試料源の出口からの滑らかな通路を提供する。本明細書では、語「滑らかな通路(smooth passageway)」が、注入器が分取サイズの試料を受け取る場合に試料が注入器を詰まらせる原因となる可能性がある急な曲がりを持たない通路を意味する。20度未満の角度を有するコーナーも弧(arc)もあってはならない。弁体を貫通する滑らかな通路は、弁体の片側のポートと、反対側のポートから170度および190度の範囲、好ましくは反対側のポートから180度の範囲にある弁体の反対側のポートとの間にある。本明細書では、語「分取サイズの試料(preparatory−sized sample)」が、分取液体クロマトグラフィに使用される試料のサイズを意味する。1回のラン(run)のために注入される試料の量は、分離させる物質によって異なる。本明細書では、試料の量は、必要な試料のサイズと、分離に使用でき、分離に有用な試料注入弁のサイズとに関係する。
【0012】
図2には、弁が、液体クロマトグラフィシステム10のカラムの前処理(preconditioning)のための位置にある、クロマトグラフィシステム10の概略図が示されている。この位置では、入口ポート26Eが、制御装置/溶媒システム14から溶媒を受け取る。この溶媒は、カラムを前処理するために、隣接開口接続スロット48を通ってポート26Dへ流れる。このとき、滑らかな通路46は、ポート26Fと26Cとを連通させ、ポート26Fと26Aとを接続する試料カートリッジまたは滑らかな通路46に溶媒は流れない。
【0013】
図3には、弁22がパージ操作のための位置にあるクロマトグラフィシステム10の概略図が示されている。この操作の間、滑らかな通路46は、溶媒供給と廃棄物との間の管を溶媒で洗浄するために、ポート26Eと26Bとを連通させ、パージガス源20は、ポート26Cとポート26Dとの間の隣接開口接続スロット48を介して連通して、カラム、検出器、表示器、記録器およびフラクションコレクタを含む下流構成要素16内のカラムにパージ空気を供給する。
【0014】
弁22の6つのポート26A〜26Fは、ロータの上記の3つの位置が、(1)試料注入およびクロマトグラフィの運転のための接続、(2)パージ操作のための接続、および(3)カラムの前処理のための接続を提供するように接続される。この目的のため、ポート26Aは試料源24の出口に接続され、ポート26Bは廃棄物18に接続され、ポート26Cはパージガス源20に接続され、ポート26Dは、カラムおよびフラクションコレクタをパージするため下流構成要素16に接続され、ポート26Eは制御装置/溶媒システム14に接続され、ポート26Fは試料源24の入口に接続される。弁体32は、滑らかな通路46と、滑らかな通路46の両端間の2つの開口を接続する隣接開口接続スロット48とを含む。
【0015】
動作時、1つまたは複数の分取サイズの試料が試料源24に挿入され、カラムを処理するために制御装置/溶媒システム14の間に流体が流された後、分離およびフラクションコレクタでの回収のために、下流構成要素16のカラムに試料が注入される。弁体が前記3つの位置のうちの第1の位置にあるとき(図1)、溶媒源は、ポート26E、隣接開口通路48、ポート26F、試料源24の入口、ポート26A、滑らかな通路46およびポート26Dを介してカラムに接続される。弁が第2の位置に移動すると、滑らかな通路46は、ポート26Aと26Dの間の位置から、ポート26Fとポート26Cの間の位置に移動し、隣接開口接続48は、ポート26Fとポート26Eを接続する位置から、ポート26Eとポート26Dを接続する位置に移動する。第2の位置(図2)では、前処理のために溶媒源が、ポート26E、隣接開口通路48およびポート26Dを介してカラムに接続される。この位置では、パージガス源20が、ポート26C、滑らかな通路46、ポート26Fおよび試料源24を介して、弁体によって遮断されたポート26Aに接続される。第3の位置(図3)では、溶媒源が、ポート26E、滑らかな通路46およびポート26Bを介して廃棄物に接続される。パージガス源は、ポート26C、隣接開口通路およびポート26Dを介して、カラムおよび制御装置/溶媒システム14に接続される。
【0016】
図4には、ロータ40(図4には示されておらず、図6〜図9に示されている)のシャフト28と、弁本体またはハウジング30と、調整ナット34と、円周方向に間隔を置いて配置された6つの出口ポート26A〜26F(図4にはポート26A、26D、26Eおよび26Fだけが示されている)とを有する弁22の正面図が示されている。この構成では、試料を注入して分離を実行するために、あるいはパージ操作を実行するために、あるいは前処理操作を実行するために、ロータ40のシャフト28を、ある位置から手動でまたは自動的に回転させて、アクチュエータ32(図4にはロータ40のシャフト28だけが示されている)を回転させることができる。適切な接続は、ロータ40のシャフト28を回転させる単一の操作においてある位置から別の位置へ移動したときに達成される。
【0017】
図5には、(クロマトグラフィシステム10を動作させるために)全体的に管状である適切な接続を受け取るように成形された出口ポート26A〜26Fを示す試料注入弁22の下面図が示されている。
【0018】
図6には、弁本体30、アクチュエータ32、調整ナット34、ロータ40、ステータ42およびスペーサ44を示す、図5の線6−6に沿って切られた立断面図が示されている。これらの部品は協力して、アクチュエータ32を回転させたときに、ロータ40が回転して、互いに180度の間隔を置いて配置された2つのポートを接続し、同時に、互いに隣接した別の2つのポートを接続するようにする。
【0019】
この目的のため、アクチュエータ32は、一端が調整ナット34を貫通して弁本体30の外側に延出し、他端にはロータ40のプラグ(plug)50を受けるソケット36を含むアクチュエータシャフト28を含む。円筒管状のスペーサ44および管状の調整ナット34は、ソケット36を回転させるために、アクチュエータのシャフト28をハウジング30の中心に沿って回転可能に支持する。ソケット36は、アクチュエータのシャフト28の回転とともにロータ40を回転させるために、プラグ50の平らな部分と係合する平らな部分を含む。アクチュエータ32を回転に適した張力に締め付けるため、調整ナット34は、六角形のヘッド38と、円筒管状スペーサ44の外周と係合し、弁本体30の上端のねじ山と係合するようにサイズが決められた雄ねじ付きのボア(bore)56とを含み、そのため、調整ナット34を下方へ締め、それによって、スペーサ44をアクチュエータソケット36の肩部に下方に押しつけることができる。
【0020】
ロータ40は、環状中央回転ガイドまたはフランジ52を有し、ロータ40の上端には、アクチュエータソケット36の中に受け取られるように成形されたプラグ50があり、環状中央回転ガイドまたはフランジ52の下のロータ40の下端には、弁体の役目を果たす円筒形のロータ本体部54がある。ロータ本体部54は、滑らかな通路46および隣接開口通路48を含む(図6に隣接開口通路48は示されていない)。環状中央フランジ52を支持するため、弁本体30の底に円筒形のステータ42が位置し、ステータ42は、ステータ42の円筒形の開口の中でロータ40が回転するように、弁本体30に対して動かないように保持される。
【0021】
図7には、弁本体30、ステータ42、ロータ40、アクチュエータ32、スペーサ44および調整ナット34をこの順番に示す弁22の分解透視図が示されている。この図には、直線流路を提供するためにロータ40の滑らかな通路を180度離れたポートと整列させ、同時に隣接するポートに接続するために、ロータ40がどのように配置されるのかが示されている。この構成では、分取液体クロマトグラフィにおける負荷などの重い試料負荷の下でも著しく詰まりが生じにくい、頑丈で単純な弁22が提供される。弁22で閉塞および詰まりが著しく生じにくいのは、試料源24(図1〜図3)からクロマトグラフィカラムに入る弁の出力まで、曲がりのないまっすぐで滑らかな通路が提供されるためである。
【0022】
ロータ40のプラグ50がアクチュエータ32のソケット36にはまり、ロータ40がステータ42と協力して、ステータ42を貫通する開口を弁本体30の出口ポートに整列させる態様をより明らかに示すため、図8には、逆角度から見た別の分解透視図が示されている。図7および図8に示されているように、ステータ42は、ポート26A〜26F(26A、26B、26Eおよび26Fは図7に、26A、26Eおよび26Fは図8に示されている)と整列する複数の開口58A〜58F(58Eおよび58Fは図7に、58A、58Eおよび58Fは図8に示されている)を含む。
【0023】
図9には、ロータ本体部54、環状中央フランジ52およびプラグ50を有するロータ40の透視図が示されている。この図に示されているように、弁本体54は、滑らかな通路46と隣接開口通路48とを含み、隣接開口通路48は、隣接した2つの開口間に流路を形成することができ、滑らかな通路46の両端間のその中央点において90度であるように滑らかな通路46の両端間に配置されたスロットである。このように、隣接開口通路48は、弁12(図6)に出入りする溶媒、ならびに曲がりのない弁体54を通して試料および試料成分をまっすぐにカラムまで運ぶ溶媒の通路を提供するために、滑らかな通路46の2つの端ポート間にある隣接した2つのポートを接続して、ロータ40を移動させたときに隣接する開口が接続されるようにする。
【0024】
図10には、中央フランジ52の両側の滑らかな通路46および隣接開口接続通路48をより分かりやすく示す、ロータ40の単純化された正面図が示されている。上端に、斜めに切られた上端60と平らに切られた側面62とを有するプラグ50が示されている。斜めに切られた端部60は、イージング(easing)およびセンタリング(centering)を提供し、平らに切られた側面62は、アクチュエータ32を回転させたときにロータ40が回転するように、アクチュエータのソケット36の平らな部分としっかりとかみあう。
【0025】
ロータ40の構造をより完全に示すため、図11は、弁本体54の下部の隣接開口通路48をより明らかに示す、ロータ40の単純化された側面図であり、図12は、貫通した滑らかな通路46および切り取られた平らな側面62をより明らかに示す、図11の線12−12に沿って切られた立面図であり、図13は、アクチュエータのソケット36の内側の対応する平らな部分とかみあう平らに切り取られた部分62をより明らかに示す、別の角度からのロータ40の透視図である。
【0026】
図14には、ロータ本体部56を中心に回転可能に受け取るようになっている円筒形の開口70を有する管状円筒を形成するために、環状の上面壁64、円筒形の外壁66および環状の下面壁68を有するステータ42の透視図が示されている。ステータ42の外周には、内側円筒開口70まで延びる図14の58A〜58Cに示された開口(開口58D〜58Fは図14に示されていない)を有する円筒形のボアが間隔を置いて配置される。これらの中心の開口はポート26A〜26Fと整列し、ポート26A〜26Fとともに所定の位置にしっかりと保持される(図5)。下端68の、該下端68が側壁66と接合する縁には、弁本体30の底部の、上方へ延びる対応する戻り止め(detent)と係合して、ロータ40と一緒に回転しないようにステータ42を保持する、間隔を置いて配置された複数の溝76がある。
【0027】
図15には、ステータ42の円筒形の開口70まで延びる中心開口58A〜58Fを有する円筒形のボアを示す、ステータ42の上面図が示されている。図16には、開口58Aおよび58Dが湾曲した外周から円筒形の開口70まで延びることをより明らかに示す、図15の線16−16に沿って切られたステータ42の断面図が示されている。図17には、中心開口を有する円筒形のボアと、弁胴30の底面の戻り止めに嵌まってステータを動かないように維持する溝76とを示す、反対端から見たステータ42の透視図が示されている。図18には、3つの溝76A〜76Cの位置を示すロータ40の下面図が示されている。
【0028】
図19には、本発明の一実施形態に基づく試料注入弁12を使用して分取液体クロマトグラフィを実行するプロセス80の流れ図が示されており、プロセス80は、分取サイズの試料を試料源の中に配置するステップ82を有する。試料源は、単一試料カートリッジまたは複数カートリッジとすることができ、あるいは試料塊から試料を抜き取り、ポンプによって試料注入弁に供給してもよい。これらの技法は全て当技術分野において知られており、それらの技法自体は本発明の部分ではない。
【0029】
試料がカートリッジ内にあるときに、ステップ84に示されているように、第1のポートおよび弁体を通して弁の第2のポートへクロマトグラフィ溶媒を供給し、次いで第2のポートからカラムへクロマトグラフィ溶媒を供給することによって、クロマトグラフィカラムを処理する。圧力が安定にあるなど、クロマトグラフィカラムが前処理されたときに、ステップ86に示されているように、弁体を回転させて溶媒を弁体から切り離し、試料源の出口を第3のポートおよび弁体を貫通する滑らかな通路を介して、第2のポートからカラムの入口に接続する。次いで、ステップ88に示されているように、ポンプによって溶媒をカートリッジに流して、弁体の滑らかな通路を通して試料を運び、カラム内へ注入する。試料をカラムに注入した後、ステップ90に示されているように、クロマトグラフィの動作を完了させ、次いで弁体を回転させて、溶媒を試料源から切り離し、滑らかな通路18を介して溶媒を廃棄物18に接続して管を洗浄し、弁体を介してパージ気体をクロマトグラフィシステムを通して接続する。
【0030】
以上の説明から理解できるように、本発明の注入弁は以下のものを含むいくつかの利点を有する:(1)構造が単純であり、安価な材料から容易に形成され、(2)操作が簡単であり、単一の弁体を移動させて、パージおよび前処理を可能にする組合せを容易に接続し、(3)分取液体クロマトグラフィ中の試料の詰まりを低減させるために、曲がりまたは障害のないまっすぐな貫通流路に試料を注入することができる。
【0031】
本発明の好ましい実施形態を相当に詳細に説明したが、添付の特許請求の範囲内において、具体的に記載された以外の方法で本発明を実施することができることを理解されたい。
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体クロマトグラフィにおける試料注入用の弁に関する。
【背景技術】
【0002】
ステータ、ロータおよびポートを有し、ポート対を接続するためにロータが所定位置で移動可能な試料注入弁は知られている。従来技術の試料注入弁は、試料源に接続された試料入口ポートまたは試料入口ポートよりも上流の点とカラムの入口に接続された注入ポートとの間の通路上に、曲がり(bend)またはコーナー(corner)を有する。このような従来技術の1つの試料注入システムが、1976年12月28日に発行された米国特許第3,999,439号に開示されている。これらの従来技術の試料注入弁は、例えばフラッシュクロマトグラフィ分離(flash chromatography sepatation)などの一部の分取クロマトグラフィ分離(preparatory chromatographic separation)に使用されたときに、大量の試料が使用されることにより、試料を運ぶ導管が詰まる可能性があるという欠点を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、本発明の目的は、試料を受け取る弁の入口と弁の出口との間に、分取クロマトグラフィにおいて大量の試料が使用されたときに詰まりを生じやすい曲がりまたは障害がない試料注入弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的のため、試料注入弁は、ロータと、ステータと、ステータに対してロータを、ある位置から別の位置へ移動させるアクチュエータと、複数の出口ポートとを含む。
この試料注入弁は、ロータが、該ロータの中心を通るまっすぐで滑らかな通路を有することを特徴とする。これにより、互いに180度の間隔を置いて配置された出口ポートが、ロータの前記まっすぐで滑らかな通路を介して連通する。ロータはさらに、第1の接続スロット端および第2の接続スロット端を有する接続スロットを有する。第1および第2の接続スロット端は、隣接した出口ポート間に接続スロットを通る経路を提供するように配置される。
【0005】
ロータを介した所望の接続を提供するため、(1)第1の出口ポートは溶媒システムと連通し、(2)第2の出口ポートはカラムと連通し、(3)第3の出口ポートは試料源の出口端と連通し、(4)第4の出口ポートは試料源の入口端と連通する。第2および第3の出口ポートは互いから180度であり、第4の出口ポートと第3の出口ポートは互いに隣接する。この構成では、ロータが第1の位置にあるときに、溶媒および試料が、溶媒システムから、試料源を通って第3の出口ポートまで流れ、そこから、まっすぐで滑らかな通路を通ってカラムまで流れることができる。ロータが第1の位置にあるときに、溶媒はさらに、溶媒システムから、接続スロットを通って試料源まで流れることができる。
【0006】
有利には、弁の第5の出口ポートがパージガス源に接続される。第4および第5の出口ポートは互いから180度であり、そのため、ロータが第2の位置にあるときに、試料源ならびに関係する管および通路をパージすることができる。第1の出口ポートは第2の出口ポートに隣接し、そのため、ロータが第3の位置にあるときに、溶媒システムからの溶媒が、接続スロットを通ってカラムに流れる。第6の出口ポートは廃棄物位置と連通する。第6の出口ポートは前記第1の出口ポートから180度であり、そのため、ロータが第4の位置にあるときに溶媒が、パージングのために、管を通って廃棄物まで流れることができる。
【0007】
以上の説明から理解できるように、本発明の注入弁は以下のものを含むいくつかの利点を有する:(1)構造が単純であり、安価な材料から容易に形成され、(2)操作が簡単であり、単一の弁体を移動させて、パージおよび前処理を可能にする組合せを容易に接続し、(3)分取液体クロマトグラフィ中の試料の詰まりを低減させるために、曲がりまたは障害のないまっすぐな貫通流路に試料を注入することができる。
【0008】
本発明の上記の目的および他の目的は、添付図面とともに検討したときにより完全に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】液体クロマトグラフィシステムの部分概略図/部分ブロック図である。
【図2】1つの動作位置にある、図1のクロマトグラフィシステムにおいて使用される弁の概略図である。
【図3】さらに別の動作位置にある、図1の実施形態において有用な試料注入弁の概略図である。
【図4】本発明の一実施形態に基づく試料注入弁の立面図である。
【図5】図4の弁の下面図である。
【図6】図5の線6−6で切られた断面図である。
【図7】1つの視点から見た図4の弁の分解透視図である。
【図8】別の視点から見た図1の弁の分解透視図である。
【図9】図7の弁に使用されているロータの透視図である。
【図10】1つの角度から見た図9の弁の立面図である。
【図11】別の角度から見た図9の弁の側面図である。
【図12】図11の線12−12に沿って切られた断面図である。
【図13】別の視点から見た図9の弁エレメントの透視図である。
【図14】図7の弁に使用されているステータの透視図である。
【図15】図14のステータの上面図である。
【図16】図15の線16−16に沿って切られた図14のステータの断面図である。
【図17】別の視点から見た図14のステータの透視図である。
【図18】図17のステータの下面図である。
【図19】分取液体クロマトグラフィプロセスの流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に、試料注入弁12と、制御装置/溶媒システム14と、下流構成要素16と、廃棄物位置18と、パージガス源20とを含む、分取分離(preparatory separation)に使用される液体クロマトグラフィシステム10の部分概略図/部分ブロック図が示されている。下流構成要素16は、カラム、検出器、表示器、記録器およびフラクションコレクタである。この構成では、この好ましい実施形態の試料注入弁12が分取用途に適したサイズに形成され、試料源24と6ポート弁22とを含む。弁22は、貫通した滑らかな通路46と、隣接開口接続スロット48とを有する弁体32をハウジング内に含む。この好ましい実施形態では、アクチュエータ32を、ある位置から別の位置へ手動で移動させることができ、アクチュエータ32が6つのポート26A〜26Fを含む。
【0011】
この好ましい実施形態では、滑らかな通路46が、互いに180度の間隔を置いて配置されたポートを接続して、試料カートリッジ、複数試料カートリッジまたは、例えば、より大きな試料塊から圧力によってカラムに注入された試料、またはカラムの入力ループに圧力によって注入され、次いで制御装置/溶媒システム14からの溶媒によってカラムに運ばれた試料などの他の試料源の出口からの滑らかな通路を提供する。本明細書では、語「滑らかな通路(smooth passageway)」が、注入器が分取サイズの試料を受け取る場合に試料が注入器を詰まらせる原因となる可能性がある急な曲がりを持たない通路を意味する。20度未満の角度を有するコーナーも弧(arc)もあってはならない。弁体を貫通する滑らかな通路は、弁体の片側のポートと、反対側のポートから170度および190度の範囲、好ましくは反対側のポートから180度の範囲にある弁体の反対側のポートとの間にある。本明細書では、語「分取サイズの試料(preparatory−sized sample)」が、分取液体クロマトグラフィに使用される試料のサイズを意味する。1回のラン(run)のために注入される試料の量は、分離させる物質によって異なる。本明細書では、試料の量は、必要な試料のサイズと、分離に使用でき、分離に有用な試料注入弁のサイズとに関係する。
【0012】
図2には、弁が、液体クロマトグラフィシステム10のカラムの前処理(preconditioning)のための位置にある、クロマトグラフィシステム10の概略図が示されている。この位置では、入口ポート26Eが、制御装置/溶媒システム14から溶媒を受け取る。この溶媒は、カラムを前処理するために、隣接開口接続スロット48を通ってポート26Dへ流れる。このとき、滑らかな通路46は、ポート26Fと26Cとを連通させ、ポート26Fと26Aとを接続する試料カートリッジまたは滑らかな通路46に溶媒は流れない。
【0013】
図3には、弁22がパージ操作のための位置にあるクロマトグラフィシステム10の概略図が示されている。この操作の間、滑らかな通路46は、溶媒供給と廃棄物との間の管を溶媒で洗浄するために、ポート26Eと26Bとを連通させ、パージガス源20は、ポート26Cとポート26Dとの間の隣接開口接続スロット48を介して連通して、カラム、検出器、表示器、記録器およびフラクションコレクタを含む下流構成要素16内のカラムにパージ空気を供給する。
【0014】
弁22の6つのポート26A〜26Fは、ロータの上記の3つの位置が、(1)試料注入およびクロマトグラフィの運転のための接続、(2)パージ操作のための接続、および(3)カラムの前処理のための接続を提供するように接続される。この目的のため、ポート26Aは試料源24の出口に接続され、ポート26Bは廃棄物18に接続され、ポート26Cはパージガス源20に接続され、ポート26Dは、カラムおよびフラクションコレクタをパージするため下流構成要素16に接続され、ポート26Eは制御装置/溶媒システム14に接続され、ポート26Fは試料源24の入口に接続される。弁体32は、滑らかな通路46と、滑らかな通路46の両端間の2つの開口を接続する隣接開口接続スロット48とを含む。
【0015】
動作時、1つまたは複数の分取サイズの試料が試料源24に挿入され、カラムを処理するために制御装置/溶媒システム14の間に流体が流された後、分離およびフラクションコレクタでの回収のために、下流構成要素16のカラムに試料が注入される。弁体が前記3つの位置のうちの第1の位置にあるとき(図1)、溶媒源は、ポート26E、隣接開口通路48、ポート26F、試料源24の入口、ポート26A、滑らかな通路46およびポート26Dを介してカラムに接続される。弁が第2の位置に移動すると、滑らかな通路46は、ポート26Aと26Dの間の位置から、ポート26Fとポート26Cの間の位置に移動し、隣接開口接続48は、ポート26Fとポート26Eを接続する位置から、ポート26Eとポート26Dを接続する位置に移動する。第2の位置(図2)では、前処理のために溶媒源が、ポート26E、隣接開口通路48およびポート26Dを介してカラムに接続される。この位置では、パージガス源20が、ポート26C、滑らかな通路46、ポート26Fおよび試料源24を介して、弁体によって遮断されたポート26Aに接続される。第3の位置(図3)では、溶媒源が、ポート26E、滑らかな通路46およびポート26Bを介して廃棄物に接続される。パージガス源は、ポート26C、隣接開口通路およびポート26Dを介して、カラムおよび制御装置/溶媒システム14に接続される。
【0016】
図4には、ロータ40(図4には示されておらず、図6〜図9に示されている)のシャフト28と、弁本体またはハウジング30と、調整ナット34と、円周方向に間隔を置いて配置された6つの出口ポート26A〜26F(図4にはポート26A、26D、26Eおよび26Fだけが示されている)とを有する弁22の正面図が示されている。この構成では、試料を注入して分離を実行するために、あるいはパージ操作を実行するために、あるいは前処理操作を実行するために、ロータ40のシャフト28を、ある位置から手動でまたは自動的に回転させて、アクチュエータ32(図4にはロータ40のシャフト28だけが示されている)を回転させることができる。適切な接続は、ロータ40のシャフト28を回転させる単一の操作においてある位置から別の位置へ移動したときに達成される。
【0017】
図5には、(クロマトグラフィシステム10を動作させるために)全体的に管状である適切な接続を受け取るように成形された出口ポート26A〜26Fを示す試料注入弁22の下面図が示されている。
【0018】
図6には、弁本体30、アクチュエータ32、調整ナット34、ロータ40、ステータ42およびスペーサ44を示す、図5の線6−6に沿って切られた立断面図が示されている。これらの部品は協力して、アクチュエータ32を回転させたときに、ロータ40が回転して、互いに180度の間隔を置いて配置された2つのポートを接続し、同時に、互いに隣接した別の2つのポートを接続するようにする。
【0019】
この目的のため、アクチュエータ32は、一端が調整ナット34を貫通して弁本体30の外側に延出し、他端にはロータ40のプラグ(plug)50を受けるソケット36を含むアクチュエータシャフト28を含む。円筒管状のスペーサ44および管状の調整ナット34は、ソケット36を回転させるために、アクチュエータのシャフト28をハウジング30の中心に沿って回転可能に支持する。ソケット36は、アクチュエータのシャフト28の回転とともにロータ40を回転させるために、プラグ50の平らな部分と係合する平らな部分を含む。アクチュエータ32を回転に適した張力に締め付けるため、調整ナット34は、六角形のヘッド38と、円筒管状スペーサ44の外周と係合し、弁本体30の上端のねじ山と係合するようにサイズが決められた雄ねじ付きのボア(bore)56とを含み、そのため、調整ナット34を下方へ締め、それによって、スペーサ44をアクチュエータソケット36の肩部に下方に押しつけることができる。
【0020】
ロータ40は、環状中央回転ガイドまたはフランジ52を有し、ロータ40の上端には、アクチュエータソケット36の中に受け取られるように成形されたプラグ50があり、環状中央回転ガイドまたはフランジ52の下のロータ40の下端には、弁体の役目を果たす円筒形のロータ本体部54がある。ロータ本体部54は、滑らかな通路46および隣接開口通路48を含む(図6に隣接開口通路48は示されていない)。環状中央フランジ52を支持するため、弁本体30の底に円筒形のステータ42が位置し、ステータ42は、ステータ42の円筒形の開口の中でロータ40が回転するように、弁本体30に対して動かないように保持される。
【0021】
図7には、弁本体30、ステータ42、ロータ40、アクチュエータ32、スペーサ44および調整ナット34をこの順番に示す弁22の分解透視図が示されている。この図には、直線流路を提供するためにロータ40の滑らかな通路を180度離れたポートと整列させ、同時に隣接するポートに接続するために、ロータ40がどのように配置されるのかが示されている。この構成では、分取液体クロマトグラフィにおける負荷などの重い試料負荷の下でも著しく詰まりが生じにくい、頑丈で単純な弁22が提供される。弁22で閉塞および詰まりが著しく生じにくいのは、試料源24(図1〜図3)からクロマトグラフィカラムに入る弁の出力まで、曲がりのないまっすぐで滑らかな通路が提供されるためである。
【0022】
ロータ40のプラグ50がアクチュエータ32のソケット36にはまり、ロータ40がステータ42と協力して、ステータ42を貫通する開口を弁本体30の出口ポートに整列させる態様をより明らかに示すため、図8には、逆角度から見た別の分解透視図が示されている。図7および図8に示されているように、ステータ42は、ポート26A〜26F(26A、26B、26Eおよび26Fは図7に、26A、26Eおよび26Fは図8に示されている)と整列する複数の開口58A〜58F(58Eおよび58Fは図7に、58A、58Eおよび58Fは図8に示されている)を含む。
【0023】
図9には、ロータ本体部54、環状中央フランジ52およびプラグ50を有するロータ40の透視図が示されている。この図に示されているように、弁本体54は、滑らかな通路46と隣接開口通路48とを含み、隣接開口通路48は、隣接した2つの開口間に流路を形成することができ、滑らかな通路46の両端間のその中央点において90度であるように滑らかな通路46の両端間に配置されたスロットである。このように、隣接開口通路48は、弁12(図6)に出入りする溶媒、ならびに曲がりのない弁体54を通して試料および試料成分をまっすぐにカラムまで運ぶ溶媒の通路を提供するために、滑らかな通路46の2つの端ポート間にある隣接した2つのポートを接続して、ロータ40を移動させたときに隣接する開口が接続されるようにする。
【0024】
図10には、中央フランジ52の両側の滑らかな通路46および隣接開口接続通路48をより分かりやすく示す、ロータ40の単純化された正面図が示されている。上端に、斜めに切られた上端60と平らに切られた側面62とを有するプラグ50が示されている。斜めに切られた端部60は、イージング(easing)およびセンタリング(centering)を提供し、平らに切られた側面62は、アクチュエータ32を回転させたときにロータ40が回転するように、アクチュエータのソケット36の平らな部分としっかりとかみあう。
【0025】
ロータ40の構造をより完全に示すため、図11は、弁本体54の下部の隣接開口通路48をより明らかに示す、ロータ40の単純化された側面図であり、図12は、貫通した滑らかな通路46および切り取られた平らな側面62をより明らかに示す、図11の線12−12に沿って切られた立面図であり、図13は、アクチュエータのソケット36の内側の対応する平らな部分とかみあう平らに切り取られた部分62をより明らかに示す、別の角度からのロータ40の透視図である。
【0026】
図14には、ロータ本体部56を中心に回転可能に受け取るようになっている円筒形の開口70を有する管状円筒を形成するために、環状の上面壁64、円筒形の外壁66および環状の下面壁68を有するステータ42の透視図が示されている。ステータ42の外周には、内側円筒開口70まで延びる図14の58A〜58Cに示された開口(開口58D〜58Fは図14に示されていない)を有する円筒形のボアが間隔を置いて配置される。これらの中心の開口はポート26A〜26Fと整列し、ポート26A〜26Fとともに所定の位置にしっかりと保持される(図5)。下端68の、該下端68が側壁66と接合する縁には、弁本体30の底部の、上方へ延びる対応する戻り止め(detent)と係合して、ロータ40と一緒に回転しないようにステータ42を保持する、間隔を置いて配置された複数の溝76がある。
【0027】
図15には、ステータ42の円筒形の開口70まで延びる中心開口58A〜58Fを有する円筒形のボアを示す、ステータ42の上面図が示されている。図16には、開口58Aおよび58Dが湾曲した外周から円筒形の開口70まで延びることをより明らかに示す、図15の線16−16に沿って切られたステータ42の断面図が示されている。図17には、中心開口を有する円筒形のボアと、弁胴30の底面の戻り止めに嵌まってステータを動かないように維持する溝76とを示す、反対端から見たステータ42の透視図が示されている。図18には、3つの溝76A〜76Cの位置を示すロータ40の下面図が示されている。
【0028】
図19には、本発明の一実施形態に基づく試料注入弁12を使用して分取液体クロマトグラフィを実行するプロセス80の流れ図が示されており、プロセス80は、分取サイズの試料を試料源の中に配置するステップ82を有する。試料源は、単一試料カートリッジまたは複数カートリッジとすることができ、あるいは試料塊から試料を抜き取り、ポンプによって試料注入弁に供給してもよい。これらの技法は全て当技術分野において知られており、それらの技法自体は本発明の部分ではない。
【0029】
試料がカートリッジ内にあるときに、ステップ84に示されているように、第1のポートおよび弁体を通して弁の第2のポートへクロマトグラフィ溶媒を供給し、次いで第2のポートからカラムへクロマトグラフィ溶媒を供給することによって、クロマトグラフィカラムを処理する。圧力が安定にあるなど、クロマトグラフィカラムが前処理されたときに、ステップ86に示されているように、弁体を回転させて溶媒を弁体から切り離し、試料源の出口を第3のポートおよび弁体を貫通する滑らかな通路を介して、第2のポートからカラムの入口に接続する。次いで、ステップ88に示されているように、ポンプによって溶媒をカートリッジに流して、弁体の滑らかな通路を通して試料を運び、カラム内へ注入する。試料をカラムに注入した後、ステップ90に示されているように、クロマトグラフィの動作を完了させ、次いで弁体を回転させて、溶媒を試料源から切り離し、滑らかな通路18を介して溶媒を廃棄物18に接続して管を洗浄し、弁体を介してパージ気体をクロマトグラフィシステムを通して接続する。
【0030】
以上の説明から理解できるように、本発明の注入弁は以下のものを含むいくつかの利点を有する:(1)構造が単純であり、安価な材料から容易に形成され、(2)操作が簡単であり、単一の弁体を移動させて、パージおよび前処理を可能にする組合せを容易に接続し、(3)分取液体クロマトグラフィ中の試料の詰まりを低減させるために、曲がりまたは障害のないまっすぐな貫通流路に試料を注入することができる。
【0031】
本発明の好ましい実施形態を相当に詳細に説明したが、添付の特許請求の範囲内において、具体的に記載された以外の方法で本発明を実施することができることを理解されたい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのロータ(40)および1つのステータ(42)と、前記ステータ(42)に対して前記ロータ(40)をある位置から別の位置へ移動させるアクチュエータ(32)と、複数の出口ポート(26A〜26F)とを含む試料注入弁(12)において、
前記ロータ(40)が、該ロータの中心を通るまっすぐで滑らかな通路(46)を有し、それにより、互いに180度の間隔を置いて配置された出口ポート(26A〜26F)が前記ロータ(40)の前記まっすぐで滑らかな通路(46)を介して連通し、
前記ロータ(40)が、第1の接続スロット端および第2の接続スロット端を有する接続スロット(48)を有し、
前記第1および第2の接続スロット端が、前記接続スロット(48)を通り隣接した出口ポートを通る経路を提供するように配置されており、
第1の出口ポート(26E)は溶媒システム(14)と連通し、第2の出口ポート(26D)はカラム(16)と連通し、第3の出口ポート(26A)は試料源(24)の出口端と連通し、第4の出口ポート(26F)は前記試料源(24)の入口端と連通し、前記第2および第3の出口ポート(26Dおよび26A)が互いから180度であり、前記第4の出口ポートと第3の出口ポートとが隣接し、
前記ロータ(40)が第1の位置にあるときに、溶媒および試料が、前記溶媒システム(14)から、前記試料源(24)を通って前記第3の出口ポートまで流れ、前記まっすぐで滑らかな通路(46)を通って前記カラム(16)まで流れ、溶媒が、溶媒システム(14)から、前記接続スロット(48)を通って、前記試料源(24)まで流れることができる、
ことを特徴とする、試料注入弁(12)。
【請求項2】
第5の出口ポート(26C)がパージガス源(20)に接続されており、
前記第4および第5の出口ポート(26Fおよび26C)が互いから180度であり、前記ロータ(40)が第2の位置にあるときに、試料源(24)ならびに関係する管および通路をパージすることができる、
ことを特徴とする、請求項1に記載の試料注入弁。
【請求項3】
前記第1の出口ポート(26E)が前記第2の出口ポート(26D)に隣接し、
前記ロータ(40)が第3の位置にあるときに、前記溶媒システム(14)からの前記溶媒が、前記接続スロット(48)を通って前記カラム(16)に流れることができる、
ことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の試料注入弁。
【請求項4】
第6の出口ポート(26B)が廃棄物位置(18)と連通しており、
前記第6の出口ポート(26B)が、前記第1の出口ポート(26E)から180度であり、
前記ロータ(40)が第4の位置にあるときに、前記溶媒が、パージのために、前記管を通って前記廃棄物位置(18)まで流れることができる、
ことを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の試料注入弁。
【請求項1】
少なくとも1つのロータ(40)および1つのステータ(42)と、前記ステータ(42)に対して前記ロータ(40)をある位置から別の位置へ移動させるアクチュエータ(32)と、複数の出口ポート(26A〜26F)とを含む試料注入弁(12)において、
前記ロータ(40)が、該ロータの中心を通るまっすぐで滑らかな通路(46)を有し、それにより、互いに180度の間隔を置いて配置された出口ポート(26A〜26F)が前記ロータ(40)の前記まっすぐで滑らかな通路(46)を介して連通し、
前記ロータ(40)が、第1の接続スロット端および第2の接続スロット端を有する接続スロット(48)を有し、
前記第1および第2の接続スロット端が、前記接続スロット(48)を通り隣接した出口ポートを通る経路を提供するように配置されており、
第1の出口ポート(26E)は溶媒システム(14)と連通し、第2の出口ポート(26D)はカラム(16)と連通し、第3の出口ポート(26A)は試料源(24)の出口端と連通し、第4の出口ポート(26F)は前記試料源(24)の入口端と連通し、前記第2および第3の出口ポート(26Dおよび26A)が互いから180度であり、前記第4の出口ポートと第3の出口ポートとが隣接し、
前記ロータ(40)が第1の位置にあるときに、溶媒および試料が、前記溶媒システム(14)から、前記試料源(24)を通って前記第3の出口ポートまで流れ、前記まっすぐで滑らかな通路(46)を通って前記カラム(16)まで流れ、溶媒が、溶媒システム(14)から、前記接続スロット(48)を通って、前記試料源(24)まで流れることができる、
ことを特徴とする、試料注入弁(12)。
【請求項2】
第5の出口ポート(26C)がパージガス源(20)に接続されており、
前記第4および第5の出口ポート(26Fおよび26C)が互いから180度であり、前記ロータ(40)が第2の位置にあるときに、試料源(24)ならびに関係する管および通路をパージすることができる、
ことを特徴とする、請求項1に記載の試料注入弁。
【請求項3】
前記第1の出口ポート(26E)が前記第2の出口ポート(26D)に隣接し、
前記ロータ(40)が第3の位置にあるときに、前記溶媒システム(14)からの前記溶媒が、前記接続スロット(48)を通って前記カラム(16)に流れることができる、
ことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の試料注入弁。
【請求項4】
第6の出口ポート(26B)が廃棄物位置(18)と連通しており、
前記第6の出口ポート(26B)が、前記第1の出口ポート(26E)から180度であり、
前記ロータ(40)が第4の位置にあるときに、前記溶媒が、パージのために、前記管を通って前記廃棄物位置(18)まで流れることができる、
ことを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の試料注入弁。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公表番号】特表2010−521653(P2010−521653A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−547286(P2009−547286)
【出願日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際出願番号】PCT/US2008/000897
【国際公開番号】WO2008/094431
【国際公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(504269213)テレダイン・イスコ・インコーポレーテッド (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際出願番号】PCT/US2008/000897
【国際公開番号】WO2008/094431
【国際公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(504269213)テレダイン・イスコ・インコーポレーテッド (4)
【Fターム(参考)】
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