引き違い戸の外止め装置及びスペーサ部材
【課題】引き違い戸の上端面とスペーサ部材の下面との間の長さを適正に調整できる引き違い戸の外止め装置及びスペーサ部材を提供する。
【解決手段】戸枠(2)と、下側レール装置(3)と、上側レール装置(4)と、前後一対の引き違い戸(5;5)と、戸枠(2)に取付けられた引き違い戸(5)の上方向への移動を規制して引き違い戸(5)の外れを防止するために引き違い戸(5)の上端面(36)と上枠(9)の下面(45)との間に位置するように上枠(9)又は上側レール装置(4)に取付けられたスペーサ部材(6)とを備え、上記スペーサ部材(6)は、スペーサ部(16)と、スペーサ部(16)を上枠(9)又は上側レール装置(4)に取付けるための取付部(17)と、スペーサ部(16)の下面(55)の高さ位置を変更するためのスペーサ高さ位置変更部(18)とを備えた。
【解決手段】戸枠(2)と、下側レール装置(3)と、上側レール装置(4)と、前後一対の引き違い戸(5;5)と、戸枠(2)に取付けられた引き違い戸(5)の上方向への移動を規制して引き違い戸(5)の外れを防止するために引き違い戸(5)の上端面(36)と上枠(9)の下面(45)との間に位置するように上枠(9)又は上側レール装置(4)に取付けられたスペーサ部材(6)とを備え、上記スペーサ部材(6)は、スペーサ部(16)と、スペーサ部(16)を上枠(9)又は上側レール装置(4)に取付けるための取付部(17)と、スペーサ部(16)の下面(55)の高さ位置を変更するためのスペーサ高さ位置変更部(18)とを備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引き違い戸の外れを防止するためのスペーサ部材を備えた引き違い戸の外止め装置及びスペーサ部材に関する。
【背景技術】
【0002】
戸枠に引き違い戸が取付けられた引き違い戸装置において、引き違い戸の外れを防止するためのスペーサ部材を備えた引き違い戸の外止め装置が知られている。この外止め装置は、スペーサ部材の下面と引き違い戸の上端面との間の長さを、引き違い戸の下端部と下枠に設けられた下レールとの係合長さより短くすることによって、引き違い戸が上方に移動したとしても引き違い戸の上端面がスペーサ部材の下面に衝突するようにして、引き違い戸が下レールから外れることを防止している。
【特許文献1】特開平11−107613号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
引き違い戸装置では、戸枠の取付精度などによってスペーサ部材の下面と引き違い戸の上端面との間の長さに違いが生じる場合がある。この場合、従来の引き違い戸の外止め装置によれば、スペーサ部材の下面の高さ位置を変更できないため、スペーサ部材の下面と引き違い戸の上端面との間の長さが短くなりすぎて引き違い戸を滑らかに開閉できなくなったり、スペーサ部材の下面と引き違い戸の上端面との間の長さが引き違い戸の下端部と下レールとの係合長さよりも長くなりすぎてスペーサ部材が引き違い戸の外止めとして機能しなくなるという課題があった。
本発明は、スペーサ部材の下面の高さ位置を変更可能として、引き違い戸の上端面とスペーサ部材の下面との間の長さを調整可能とすることで、引き違い戸の上端面とスペーサ部材の下面との間の長さを適正に調整できる引き違い戸の外止め装置及びスペーサ部材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係る引き違い戸の外止め装置は、戸枠(2)と、戸枠(2)の下枠(8)に左右に延長するよう設けられて下枠(8)の前後に互いに平行に位置された前後一対の下レール(10;10)からなる下側レール装置(3)と、戸枠(2)の上枠(9)に左右に延長するよう設けられて上枠(9)の前後に互いに平行に位置された前後一対の上レール(20;20)からなる上側レール装置(4)と、下端係合部(32)と下レール(10)とが係合するとともに上端係合部(22)と上レール(20)とが係合してレール上を移動可能なように戸枠(2)に取付けられた前後一対の引き違い戸(5;5)と、戸枠(2)に取付けられた引き違い戸(5)の上方向への移動を規制して引き違い戸(5)の外れを防止するために引き違い戸(5)の上端面(36)と上枠(9)の下面(45)との間に位置するように上枠(9)又は上側レール装置(4)に取付けられたスペーサ部材(6)とを備え、上記スペーサ部材(6)は、スペーサ部(16)と、スペーサ部(16)を上枠(9)又は上側レール装置(4)に取付けるための取付部(17)と、スペーサ部(16)の下面(55)の高さ位置を変更するためのスペーサ高さ位置変更部(18)とを備えたことを特徴とする。
スペーサ高さ位置変更部(18)は、上下に積層された複数の板層(110)が剥離構成部(111)を介して互いに剥離可能に形成されたスペーサ部(16)により構成されたことも特徴とする。
剥離構成部(111)は、上下の板層(110)間に間隔(m)を隔てて並ぶように設けられてスペーサ部(16)の一端面(105)と他端面(106)とに貫通する複数の中空部(117)と、隣り合う中空部(117)間において上下の板層(110)を繋ぐ連結部(118)とにより形成されたことも特徴とする。
スペーサ高さ位置変更部(18)は、前後の上レール(20;20)間に位置した上枠の下面形成板(57)を上下に貫通する貫通孔(58)と、スペーサ部(16)の上面(56)より延長する支柱(60)の外周面(61)より突出して支柱(60)の上下方向に間隔を隔てて形成された複数の係合部(62;63)とを備え、貫通孔(58)を通過させて下面形成板(57)の上面(67)と接触させる係合部(62;63)を選択することによってスペーサ部(16)の下面(55)の高さ位置を変更したことも特徴とする。
スペーサ高さ位置変更部(18)は、上枠(9)に取付けられた上スペーサ部(70)と、上スペーサ部(70)に対して着脱可能な下スペーサ部(71)とを備え、スペーサ部(16)の下面(55)が、上スペーサ部(70)の下面(83)又は上スペーサ部(70)に取付けられた下スペーサ部(71)の下面(84)により形成されたことも特徴とする。
上スペーサ部(70)は、前後の上レール(20;20)間に位置する上枠(9)の下面形成板(57)にねじ(82)止めされたことも特徴とする。
取付部(17)は、互いに向かい合う前側の上レール(20)の内側面(53)と後側の上レール(20)の内側面(53)とに突っ張るように摩擦接触してスペーサ部(16)を上側レール装置(4)に取付けるスペーサ部(16)の前後の端面(19;19)により形成されたことも特徴とする。
互いに向かい合う前側の上レール(20)の内側面(53)と後側の上レール(20)の内側面(53)とからそれぞれ突出するように設けられてスペーサ部(16)の下面(55)に接触する下面支持面(91)を備え、スペーサ部(16)が下面支持面(91)と上枠(9)の下面(45)とで挟まれたことも特徴とする。
本発明に係るスペーサ部材は、戸枠(2)に取付けられた引き違い戸(5)の上方向への移動を規制して引き違い戸(5)の外れを防止するために引き違い戸(5)の上端面(36)と戸枠(2)の上枠(9)の下面(45)との間に位置するように設けられるスペーサ部材(6)において、スペーサ部(16)と、スペーサ部(16)を上枠(9)又は上枠(9)に設けられた上側レール装置(4)に取付けるための取付部(17)と、スペーサ部(16)の下面(55)の高さ位置を変更するためのスペーサ高さ位置変更部(18)とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明に係る引き違い戸の外止め装置によれば、スペーサ部材が、スペーサ部と、取付部と、スペーサ高さ位置変更部とを備え、スペーサ部材の下面の高さ位置を変更可能としたので、引き違い戸の上端面とスペーサ部材の下面との間の長さを適正に調整できる引き違い戸の外止め装置を得ることができる。
スペーサ高さ位置変更部は、複数の板層が剥離構成部を介して互いに剥離可能に形成されたスペーサ部により構成されたので、板層を剥離することで、スペーサ部の下面の高さ位置を容易に変更できる。
剥離構成部は、板層間に形成された複数の中空部と連結部とにより形成されたので、板層を剥離しない場合は、連結部によって板層同士が連結された状態に維持され、板層を剥離する場合には、中空部によって板層を手などで容易に剥離できる。
スペーサ高さ位置変更部は、上枠の下面を形成する下面形成板を上下に貫通する貫通孔と、スペーサ部の支柱の上下方向に間隔を隔てて形成された複数の係合部とを備えたので、貫通孔を通過させて下面形成板の上面と接触させる係合部を選択することによってスペーサ部の下面の高さ位置を容易に変更できる。
スペーサ高さ位置変更部は、上枠に取付けられた上スペーサ部と、上スペーサ部に対して着脱可能な下スペーサ部とを備え、スペーサ部の下面が、上スペーサ部の下面又は上スペーサ部に取付けられた下スペーサ部の下面により形成されたので、上スペーサ部に対する下スペーサ部の着脱により、スペーサ部の下面の高さ位置を容易に変更できる。
上スペーサ部は、前側の上レールと後側の上レールとの間に位置する上枠の下面を形成する下面形成板にねじ止めされたので、上スペーサ部を上枠に確実に取付けることができる。
取付部は、互いに向かい合う前側の上レールの内側面と後側の上レールの内側面とに突っ張るように摩擦接触したスペーサ部の前後の端面により形成され、互いに接触した上レールの内側面とスペーサ部とが互いに押し合う状態に維持されたことでスペーサ部が上レールに取付けられたので、スペーサ部を上レール装置に確実に取付けることができる。
互いに向かい合う前側の上レールの内側面と後側の上レールの内側面とからそれぞれ突出するように設けられてスペーサ部の下面に接触する下面支持面を備え、スペーサ部が下面支持面と上枠の下面とで挟まれたので、スペーサ部の上レール装置への取付力が増し、スペーサ部を確実に取付けることができる。
本発明に係るスペーサ部材によれば、スペーサ部と、取付部と、スペーサ高さ位置変更部とを備えたので、引き違い戸の上端面との間の長さを適正に調整できるスペーサ部材を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
最良の形態1.
図1乃至図6、及び、図22乃至図25は最良の形態1を示す。図1は引き違い戸の外止め装置の縦断面を示し、図2は外止め装置を分解して示し、図3は戸枠に対する引き違い戸の取付手順を示し、図4はスペーサ部材を示し、図5は上枠に対するスペーサ部材の取付手順を示し、図6は上枠に対するスペーサ部材の取付手順を上枠の下方から見て示し、図22は外止め装置の正面図を示し、図23は外止め装置の正面図を示し、図24は外止め装置の横断面図を示し、図25は外止め装置の縦断面図を示す。
【0007】
図1;22に示すように、引き違い戸の外止め装置1は、戸枠2と、下側レール装置3と、上側レール装置4と、前後一対の引き違い戸5;5と、スペーサ部材6とを備える。
【0008】
図22に示すように、戸枠2は、左右の竪枠7;7と、左右の竪枠7;7の下端部同士を繋ぐ下枠8と、左右の竪枠7;7の上端部同士を繋ぐ上枠9とを備えた四角形状の枠である。戸枠2は、建物の躯体壁や間仕切壁のような壁に形成された出入口開口部の開口縁面に沿うように設置されて壁に固定される。
【0009】
図1に示すように、下側レール装置3を形成する前後一対の下レール10;10は、下枠8の上面11に左右に延長するよう設けられて下枠8の前後に互いに平行に位置される。下レール10;10は、下枠8の上面11より垂直に立ち上がって下枠8の左右に連続して延長する上凸状レールにより形成される。上側レール装置4を形成する前後一対の上レール20;20は、上枠9の下面12に左右に延長するよう設けられて上枠9の前後に互いに平行に位置される。上レール20;20は、上枠9の下面12より垂直に立ち下がるように下方に突出して上枠9の左右に連続して延長する下凸状レールにより形成される。即ち、上側レール装置4の上レール20;20と下側レール装置3の下レール10;10とが上下で互いに平行に向かい合うように設けられる。
【0010】
前後一対の引き違い戸5;5は、表裏に矩形の開閉面15を有した一定厚の矩形板状に形成される。引き違い戸5は、下端部に下係合部21を備えるとともに、上端部に上レール20と係合する上端係合部としての上係合凹部22を備える。
【0011】
下係合部21は、引き違い戸5の下端面23に形成された凹溝24と、凹溝24内に設置された滑車装置25とを備える。凹溝24は、引き違い戸5の下端面23の前後の中央部において下端面23の左右に連続して設けられて、引き違い戸5の下端面23と左右の側面13;13(図2参照)とに開口した溝である。滑車装置25は、車輪26と、車輪26が回転可能なように車輪26の回転中心軸27を支持する軸支持体28とを備える。軸支持体28は、車輪26の上側を覆って凹溝24の溝底部に嵌合状態に取付けられる嵌合部29と、車輪26の両側に突出する車輪26の回転中心軸27を回転可能に支持する軸受部30とを備える。
【0012】
滑車装置25は、車輪26の回転中心軸27が下レール10の延長方向に対して直交するように、嵌合部29が凹溝24の溝底部に嵌合状態に取付けられる。滑車装置25は、1つの引き違い戸5の凹溝24内に間隔を隔てて少なくとも2つ設けられる。車輪26は、車輪26の外周面に下レール10の上端部と係合する下端係合部としての周溝32を備え、これにより、車輪26が回転して車輪26が下レール10の上端38を転がるように構成される。このように車輪26が転がることで、下レール10と車輪26の周溝32との摩擦が軽減され、引き違い戸5の開閉時の摩擦が小さくなって引き違い戸5の開閉動作を滑らかにできる。
【0013】
上係合凹部22は、引き違い戸5の上端面36の前後の中央部において上端面36の左右に連続して設けられて、引き違い戸5の上端面36と左右の側面13;13とに開口した凹溝により形成される。よって、上レール20の下端部が上係合凹部22内に位置され、引き違い戸5が上レール20に沿って左右に移動可能に構成される。
【0014】
上枠9の下面12は、前側の上レール20よりも前側に位置する前側下面41と、後側の上レール20よりも後側に位置する後側下面42と、前側の上レール20と後側の上レール20との間に位置される中央側下面45とを備える。前側下面41の高さ位置と後側下面42の高さ位置とが同じである。中央側下面45は、前側下面41や後側下面42と比べて低い位置に形成される。このように、前側下面41や後側下面42の位置を中央側下面45の位置よりも高くした理由は、図3(a)に示すように、引き違い戸5を上レール20に係合させる際において、引き違い戸5を前後に傾ける場合に、前側下面41と対応する前側の引き違い戸5の上端面36の前縁44側や後側下面42と対応する後側の引き違い戸5の上端面36の後縁46側を上方に移動させやすくするためである。
【0015】
上下で互いに向かい合うように設けられた上レール20の下端37と下レール10の上端38との間の長さ(即ち、上下レール間寸法)fが、引き違い戸5の上端面36と下端面23との間の長さ(即ち、引き違い戸5の縦寸法)hよりも短く形成される。また、引き違い戸5の上係合凹部22の凹部底面位置40と引き違い戸5の下端面23との間の長さgが、上下レール間寸法fよりも短く形成される。
【0016】
そして、引き違い戸5を戸枠2に取付ける場合には、図3に示すように、前後方向に斜めに傾けられた引き違い戸5の上係合凹部22内に上レール20を入り込ませて引き違い戸5を上方に移動させるとともに引き違い戸5の下端面23が下レール10の上端38を乗り越えて下レール10の上端部39が車輪26の周溝32に入り込むようにする。これにより、引き違い戸5が上下のレール10;20に沿って戸枠2の左右の方向に移動可能なように戸枠2に取付けられた取付状態(以下、正規の取付状態という)となる。即ち、上係合凹部22と上レール20とが係合されて、かつ、車輪26の周溝32と下レール10の上端部39とが係合された状態となる。正規の取付状態においては、下レール10の上端部39と係合する周溝32の最下端位置47と引き違い戸5の下端面23との間の長さa(下レールと周溝との係合長さa)と、引き違い戸5の上端面36と上枠9の中央側下面45との間の長さxとの関係は、a<xである。従って、この正規の取付状態のままでは、引き違い戸5が上方に移動した場合、引き違い戸5を上下のレール10;20に取付けた場合とは逆の作用で引き違い戸5の車輪26の周溝32と下レール10との係合が解除され、引き違い戸5が下レール10より外れる可能性がある。そこで、スペーサ部材6を、正規の取付状態の引き違い戸5の上端面36と上枠9の中央側下面45との間に位置するように、上側レール装置4に取付けた。
【0017】
スペーサ部材6は、スペーサ部16と、取付部17と、スペーサ高さ位置変更部18とを備える。スペーサ部材6は、例えば合成樹脂、合成ゴムなどにより形成される。スペーサ部材6は、図22に示すように、左右の竪枠7;7の位置から左右の竪枠7;7間の長さWの1/3の所に位置する上側レール装置4の前後の上レール20;20の内側面53;53に取付けられる。W/3の位置にスペーサ部材6を設けたことによって、正規の取付状態の引き違い戸5がどの位置に位置したとしても引き違い戸5の上端面36の上方にスペーサ部材6が位置することになるので、引き違い戸5の外止めを確実にできる。
【0018】
スペーサ部16は、長方形状の平板材により形成される。図6に示すように、スペーサ部16の長方形状の長手方向の長さ寸法は、互いに向かい合う前側の上レール20の内側面53と後側の上レール20の内側面53との間の長さyよりも長い。スペーサ部16の長方形の短手方向の長さ寸法は、長さyの1/3程度である。スペーサ部16の長方形状は、対角部の角が面取りされ、一対の対角部の面取部のR(円弧の半径)が大きく形成される。従って、スペーサ部16の長方形の長手方向が上レール20の延長方向と同じになるようにしてかつスペーサ部16の上面56を中央側下面45に対して平行とした状態で図6(b);(c)に示すようにスペーサ部16を長方形の中心を回転中心として90°回転させることにより、スペーサ部16の長方形の長手方向の両方の端面19と前後の上レール20;20の内側面53;53とが摩擦接触して、互いに接触した上レール20の内側面53とスペーサ部16とが互いに押し合う状態に維持されたことで、スペーサ部16が上側レール装置4に取付けられる。この場合、上記Rの大きい面取部16aが先に上レール20と接触する回転方向にスペーサ部16を回転させる。
【0019】
このように設置されるスペーサ部16の下面55と引き違い戸5の上端面36との間の長さbを、下レール10と周溝32との係合長さaより短くすることによって、引き違い戸5が上方に移動したとしても引き違い戸5の上端面36がスペーサ部16の下面55に衝突して引き違い戸5の係合長さa以上の上方への移動が規制されるので、下レール10と車輪26の周溝32との係合が解除されることがなくなり、引き違い戸5が下レール10から外れることを防止できる。この場合、スペーサ部16の長手方向の両方の端面19;19が取付部17として機能し、この両方の端面19;19が圧接する前側の上レール20の内側面53及び後側の上レール20の内側面53が取付部17の取付部位として機能する。
【0020】
図4;5に示すように、スペーサ高さ位置変更部18は、中央側下面45を形成する下面形成板57を上下に貫通するように設けられた貫通孔58と、スペーサ部16の上面56の中心より上方に延長する支柱60の外周面61より突出して支柱60の上下方向に所定間隔を隔てて設けられた複数の係合部として上側の係合部62と下側の係合部63とを備える。支柱60は例えば円柱により形成される。上側の係合部62は、円柱の外周面61における互いに180°隔てた位置から外周面61より突出するように形成された2つの係合突出片65;65により形成される。この2つの係合突出片65;65は、支柱60の中心と直交する1つの面上に形成される。下側の係合部63も上側の係合部62と同じ構成である。2つの係合突出片65;65は、スペーサ部16の長手方向に延長するように形成される。貫通孔58は、2つの係合突出片65;65と支柱60とを支柱60の中心線と直交する面で切断した断面形状の異形貫通孔に形成され、その孔の大きさは、支柱60及び2つの係合突出片65;65を中央側下面45の下方から下面形成板57の上方に貫通させることのできる大きさに形成される。また、貫通孔58は、異形貫通孔の長手方向と上レール20の延長方向とが一致するように形成される。
【0021】
以上の構成からなるスペーサ高さ位置変更部18の作用を説明する。図5(a);(b)のように支柱60及び係合部62を中央側下面45の下方から貫通孔58に通して係合部62を下面形成板57の上方に位置させてから、図5(c)のようにスペーサ部16を支柱60の中心を回転中心として水平面上において90°回転させる。これにより、図1に示すように、係合部62を形成する2つの係合突出片65;65の下面66と下面形成板57の上面67とが接触した状態に係合するので、スペーサ部16の下面55の高さ位置が決定される。また、スペーサ部16の長手方向の両方の端面19;19が互いに向かい合う前側の上レール20の内側面53と後側の上レール20の内側面53とに突っ張るように接触して、互いに接触した上レール20の内側面53とスペーサ部16とが互いに押し合う状態に維持されたことで、スペーサ部16を上側レール装置4に確実に取付けることができる。この場合、上側の係合部62を形成する2つの係合突出片65;65の下面66と下面形成板57の上面67とが接触した状態で係合した場合におけるスペーサ部16の下面55の高さ位置は、第1の位置(低位置)に設定される。また、下側の係合部63を形成する2つの係合突出片65;65の下面52と下面形成板57の上面67とが接触した状態で係合した場合におけるスペーサ部16の下面55の高さ位置は、第1の位置よりも高い第2の位置(高位置)に設定される。つまり、貫通孔58を通過させて下面形成板57の上面67と接触させる上下の係合部62;63を選択することによって、スペーサ部16の下面55の高さ位置を、異なる第1の位置と第2の位置とに容易に変更できる。尚、スペーサ部材6の取付作業は、正規の取付状態に取付けられた前後の引き違い戸5;5を左右の竪枠7;7の一方側に寄せた状態で行う。
【0022】
上側の係合部62を形成する係合突出片65と下側の係合部63を形成する係合突出片65との間の長さ、及び、下側の係合部63を形成する係合突出片65とスペーサ部16の上面56との間の長さを、下面形成板57の板厚と同程度にすることによって、上側の係合部62を形成する係合突出片65と下側の係合部63を形成する係合突出片65とで下面形成板57を上下から挟み付けるように構成したり、下側の係合部63を形成する係合突出片65とスペーサ部16の上面56とで下面形成板57を上下から挟み付けるように構成する。このようにすることで、下面形成板57に対するスペーサ部材6の取付力が増すとともに、スペーサ部16の下面55の高さ位置を第1の位置または第2の位置に正確に設定できるようになる。
【0023】
最良の形態1によれば、スペーサ部16の下面55の高さ位置を変更できるので、引き違い戸5の上端面36とスペーサ部16の下面55との間の長さb(隙間b)を調整できる。よって、例えば、スペーサ部16の下面55の高さ位置が第1の位置(低位置)になるようにスペーサ部材6を取付けた際に隙間bが短かすぎる場合には、スペーサ部16の下面55の高さ位置が第2の位置(高位置)になるようにスペーサ部材6を取付け直すことによって、隙間bを適正間隔にすることが可能となる。逆に、例えば、スペーサ部16の下面55の高さ位置が第2の位置(高位置)になるようにスペーサ部材6を取付けた際に隙間bが係合長さaよりも長くなった場合には、スペーサ部16の下面55の高さ位置が第1の位置になるようにスペーサ部材6を取付け直すことによって、隙間bを係合長さaよりも短い適正間隔にすることが可能となる。即ち、引き違い戸5の上端面36とスペーサ部16の下面55との間の長さを適正に調整できる引き違い戸の外止め装置1及びスペーサ部材6を得ることができる。尚、係合突出片65の板厚(上下高さ)の異なる複数種類のスペーサ部材6を用いれば、より多くの高さ位置を設定できるので、高さ位置をより細かく調整できる。また、上側の係合部62を形成する係合突出片65や下側の係合部63を形成する係合突出片65を上下に2つ以上備えたスペーサ部材6を用いれば、より多くの高さ位置を設定できるので、高さ位置をより細かく調整できる。
【0024】
また、スペーサ部材6の取付けは、支柱60及び係合部62;63を中央側下面45の下方から貫通孔58に通してスペーサ部16を90°回転させるだけなので、スペーサ部材6を上側レール装置4の上レール20;20に容易に取付けることができる。
【0025】
最良の形態2.
図7乃至図10に基いて最良の形態2を説明する。図7に示すように、スペーサ部16とねじ82とを備えたスペーサ部材6を用いる。スペーサ部材6は、上枠9の中央側下面45にねじ止めされて取付けられた上スペーサ部70と、上スペーサ部70に対して着脱可能な下スペーサ部71とを備える。スペーサ部材6以外の構成は最良の形態1と同じである。図9(a)乃至(c)に示すように、上スペーサ部70は、中央側下面45の幅yよりも短い幅でかつ上レール20の延長方向に長い長方形の取付基板72と、取付基板72の幅方向(長方形の短手方向)の両方の端部64;64からそれぞれ下方に垂直に立ち下がる立下り部74と、両方の立下り部74の下端部より互いに近づく方向に延長するように設けられた下支持部75とを備える。取付基板72と立下り部74と下支持部75とで囲まれた空間により保持溝76が形成される。取付基板72には、取付基板72の幅方向の中心を通る中心線上に中心が位置するねじ通し孔77が形成される。図9(d)乃至(f)に示すように、下スペーサ部71は、上スペーサ部70の幅方向の両端部に形成された保持溝76に嵌合されることによって取付基板72と下支持部75とで上下から挟まれて保持される着脱部78と、着脱部78の下面79より下方に延長するように設けられて水平な下面84を備えたスペーサ機能部80とを備える。
【0026】
スペーサ部材6の取付けは、まず、上スペーサ部70の取付基板72の上面81と中央側下面45とを接触させた状態で取付基板72の下方からねじ通し孔77にねじ82を通してねじ82を下面形成板57にねじ込むことによって、上スペーサ部70を下面形成板57にねじ止めする。このように、上スペーサ部70が、中央側下面45を形成する下面形成板57にねじ止めされたので、上スペーサ部70を上枠9に確実に取付けることができる。そして、上スペーサ部70の横方向から下スペーサ部71の着脱部78を上スペーサ部70の保持溝76に挿入する。これにより、下スペーサ部71の着脱部78が上スペーサ部70の保持溝76内に嵌合された状態に取付けられる。
【0027】
最良の形態2のスペーサ部材6では、スペーサ部16が、下スペーサ部71と上スペーサ部70とにより形成され、取付部17が、取付基板72とねじ82とにより形成され、スペーサ高さ位置変更部18が、上スペーサ部70に下スペーサ部71を着脱可能とする構成である保持溝76と着脱部78とにより形成される。
【0028】
最良の形態2では、下面形成板57に上スペーサ部70のみが取付けられた状態においては、上スペーサ部70の下支持部75の下面83がスペーサ部16の下面55として機能して当該スペーサ部16の下面55の高さ位置が第2の位置(高位置)となる。下スペーサ部71が上スペーサ部70に取付けられた状態においては、下スペーサ部71の下面84がスペーサ部16の下面として機能して当該スペーサ部16の下面55の高さ位置が第1の位置(低位置)となる。つまり、上スペーサ部70に対する下スペーサ部71の着脱により、最良の形態1と同様に、スペーサ部16の下面55の高さ位置を容易に変更できるので、引き違い戸5の上端面36とスペーサ部16の下面55との間の隙間bの大きさを調整できる。
【0029】
また、最良の形態2においては、スペーサ機能部80の上下厚さの異なる複数種類の下スペーサ部71を用意することによって、スペーサ部16の下面55の高さ位置を3つ以上設定可能となる。
【0030】
最良の形態3.
図11乃至図14に基いて最良の形態3を説明する。図11に示すような、スペーサ部材6と上側レール装置4とを備えた引き違い戸の外止め装置1としてもよい。スペーサ部材6及び上側レール装置4以外の構成は最良の形態1と同じである。スペーサ部材6は、スペーサ部16と回転操作部50とを備える。スペーサ部16は、上スペーサ部70と、上スペーサ部70に対して剥離可能な下スペーサ部71とを備える。上スペーサ部70は、硬質樹脂製の長方形の平板材により形成される。上スペーサ部70の長方形の長手方向の長さ寸法は、互いに向かい合う前側の上レール20の内側面53と後側の上レール20の内側面53との間の長さyよりも長い。スペーサ部16の長方形の短手方向の長さ寸法は、長さyの1/3程度である。回転操作部50は、上スペーサ部70の下面83の中央から下方に延長する板状材又は棒状材により形成される。下スペーサ部71は、上スペーサ部70の下面83における回転操作部50の連結部分以外の部分に接着剤などにより取付けられて上スペーサ部70の下面83より剥離可能に形成される。下スペーサ部71は、上スペーサ部70を形成する硬質樹脂よりも軟質の軟質剛性樹脂製の板材により形成される。スペーサ部16は、最良の形態1と同様に、一対の対角部がRの大きい面取部16aに形成される。
【0031】
上側レール装置4は、上枠の左右に連続して延長する下凸状レールにより形成された上レール20;20を備える。上レール20;20は、上枠9の下面12より垂直に立ち下がる立下り板87と、立下り板87の下端より立下り板87の内側面89に沿って上方に立上る立上り板88とにより形成される。この立上り板88の上端面と中央側下面45との間の長さjと、スペーサ部16の上面56と下面55との間の長さk(即ち、スペーサ部の厚さ寸法)とが同じ長さに形成される。つまり、中央側下面45から長さjだけ下方の位置において、前後の上レール20;20の内側面89;89から互いに近づく方向に突出して水平面を形成する立上り板88の上端面を備え、この上端面が下スペーサ部71の下面55と接触する下面支持面91として機能する。この下面支持面91の位置は、正規の取付状態における引き違い戸5の上端面36よりも上方に位置するように形成される。そして、下面支持面91と中央側下面45とがスペーサ部16を上下から挟み込む挟持部92として機能する。
【0032】
スペーサ部16の長方形の長手方向が上レール20の延長方向と同じになるようにしてかつ上スペーサ部70の上面56と中央側下面45とを接触させた状態で図14(b)に示すように回転操作部50を摘んでスペーサ部16を長方形の中心を回転中心として90°回転させることにより、スペーサ部16の長方形の長手方向の両方の端面19;19と前後の上レール20;20の内側面89;89とが接触して、互いに接触した上レール20;20の内側面89;89とスペーサ部16とが互いに押し合う状態に維持されたことでスペーサ部16が上側レール装置4に取付けられる。
【0033】
下スペーサ部71を備えたスペーサ部16が取付けられた状態においては、下スペーサ部16の下面84がスペーサ部16の下面55として機能して当該スペーサ部16の下面55の高さ位置が第1の位置(低位置)となる。また、下スペーサ部16が剥離されて上スペーサ部70のみとなったスペーサ部16が取付けられた状態においては上スペーサ部70の下面83がスペーサ部16の下面55として機能して当該スペーサ部16の下面55の高さ位置が第2の位置(高位置)となる。
【0034】
最良の形態3によれば、最良の形態1と同様に、スペーサ部16の下面55の高さ位置を変更できるので、引き違い戸5の上端面36とスペーサ部16の下面55との間の隙間bの大きさを調整できる。
【0035】
また、スペーサ部材6の取付けは、回転操作部50を摘んでスペーサ部16を長方形の中心を回転中心として90°回転させるだけなので、スペーサ部材6を上側レール装置4に容易に取付けることができる。
【0036】
また、下スペーサ部71の下面84と接触する規制部材としての下面支持面91を備え、この下面支持面91と中央側下面45とがスペーサ部16を上下から挟み込む挟持部92として機能するので、スペーサ部16の長方形の長手方向の両方の端面19;19と前後の上レール20;20の内側面89;89との接触によって、スペーサ部材6の上レール装置4に対する取付力を挟持部92による挟持力によって強化できるので、スペーサ部16を確実に取付けることができる。
【0037】
最良の形態4.
図15乃至図17に基いて最良の形態4を説明する。図15に示すように、中央側下面45の下方から前後の上レール20;20間に向けて上方に押し込まれることによってスペーサ部16の前後の両方の端面19;19と前後の上レール20;20の内側面53;53とが接触し、互いに接触した上レール20の内側面53とスペーサ部16とが互いに押し合う状態に維持されたことでスペーサ部16が上側レール装置4に取付けられる構成のスペーサ部材6を用いる。このスペーサ部材6は、例えば、図16に示すように、上レール20の延長方向に長い連続形状物であって、その延長方向と直交する平面で切断した断面形状が図17に示すような形状に形成された構成である。断面形状は、前後の中心に位置する中心線oを基準とした線対称形に形成される。
【0038】
スペーサ部16は、下スペーサ部71と上スペーサ部70とにより形成される。下スペーサ部71の下面55は平面に形成され、下スペーサ部16の前側及び後側の上面には上スペーサ部70が剥離構成部としての接着剤などにより取付けられて上スペーサ部70が下スペーサ部16の上面より剥離可能に形成される。剥離可能な上スペーサ部70は、下スペーサ部71の前側及び後側の間の中央側上面71aには設けられておらず、下スペーサ部71の中央側上面71aは前後の上スペーサ部70で挟まれた谷部に形成される。
【0039】
下スペーサ部71の前部95には、上下に間隔を隔てて前方に突出するように設けられた複数の前方張り出し部100;101を備える。上側の前方張り出し部100は、下スペーサ部71の上面97における前縁より前方に傾斜して下る傾斜面98と傾斜面98の下端より後方に延長する後方延長面99とで囲まれた部分である。下側の前方張り出し部101は、後方延長面99の後端部より立ち下がる立下り面99aの下端より前方に傾斜して下る傾斜面102とこの傾斜面102の下端より後方に延長して下スペーサ部71の下面84に連続する後方延長面103とで囲まれた部分である。下スペーサ部71の後部96には、上下に間隔を隔てて後方に突出するように設けられた複数の後方張り出し部107;108を備える。後方張り出し部107;108の構成は、中心線oを基準として前方張り出し部100;101と線対称形であるため、前後が異なる以外は、前方張り出し部100;101の構成と同じである。下スペーサ部71の前後の両方の端面19;19間の長さ寸法は、互いに向かい合う前側の上レール20の内側面53と後側の上レール20の内側面53との間の長さyよりも長い。
【0040】
スペーサ部16の前後の両方の端面19;19を前後の上レール20;20の内側面53;53の真下に位置させ、スペーサ部材6を中央側下面45の下方から前後の上レール20;20間に向けて上方に真っ直ぐに押し込む。この場合、上スペーサ部70の上面56が中央側下面45と接触するまで押し込む。これにより、前方張り出し部100;101が下方に撓みながら前側の上レール20の内側面53と接触し、また、後方張り出し部107;108も下方に撓みながら後側の上レール20の内側面53と接触する。この場合、前方張り出し部100;101及び後方張り出し部107;108は、下方に傾斜する傾斜面98;102と前後方向に延長する延長面99;103とで囲まれた形状なので、内側面53と接触する先端部が下方に撓み易く、撓んだ後に当該前方張り出し部100;101及び後方張り出し部107;108と上レール20の内側面53とが互いに押し合う状態に維持される。よって、スペーサ部材6が当該撓み力によって上レール20の内側面53に強固に取付けられ、かつ、スペーサ部材6が上レール20の内側面53より外れにくくなる。
【0041】
下スペーサ部71を備えたスペーサ部16が取付けられた状態においては、下スペーサ部71の下面84がスペーサ部16の下面55として機能して当該スペーサ部16の下面55の高さ位置が第1の位置(低位置)となる。また、下スペーサ部71が剥離されて上スペーサ部70のみとなったスペーサ部16が取付けられた状態においては上スペーサ部70の下面83がスペーサ部16の下面55として機能して当該スペーサ部16の下面55の高さ位置が第2の位置(高位置)となる。
【0042】
最良の形態4によれば、最良の形態1と同様に、スペーサ部16の下面55の高さ位置を変更できるので、引き違い戸5の上端面36とスペーサ部16の下面55との間の隙間bの大きさを調整できる。
【0043】
また、スペーサ部材6の取付けは、前後の上レール20;20間にスペーサ部材6を押し込むだけなので、スペーサ部材6の取付作業を容易に行える。
【0044】
最良の形態5.
図18乃至図20に示すように、下スペーサ部71や上スペーサ部70を、剥離可能な複数の板層110で構成すれば、スペーサ部16の下面55の高さ位置の設定数を多くできる。
例えば、図18に示すように、最良の形態4の上スペーサ部70を剥離可能な複数の板層110で構成したり、図19に示すように、最良の形態3の下スペーサ部71を剥離可能な複数の板層110で構成したり、図20に示すように、最良の形態1の下スペーサ部71の構成を剥離可能な複数の板層110で構成したり、図示しないが、最良の形態2の下スペーサ部71を剥離可能な複数の板層110で構成したスペーサ部材6を用いる。
尚、図20に示したスペーサ部材6の場合、支柱60に上側の係合部62と下側の係合部63とを設けることなく、支柱60の外周面における互いに180°隔てた位置から外周面61より突出するように形成された2つの係合突出片65;65により形成された1組の係合部62を設けるだけでよいので、支柱60の構成を簡単にできる。
【0045】
最良の形態6.
図21に示すように、最良の形態4の上スペーサ部70と下スペーサ部71との間の剥離構成を、上スペーサ部70と下スペーサ部71との境界部に、スペーサ部16の一端面105(図16参照)と他端面106(図16参照)とに貫通する中空部117を一定間隔で複数個形成することによって、上スペーサ部70を手などで容易に剥離できる構成の剥離構成とした。即ち、上スペーサ部70を形成する板層110と下スペーサ部71を形成する板層110との間に間隔mを隔てて並ぶように設けられてスペーサ部16の一端面105と他端面106とに貫通する複数の中空部117と、隣り合う中空部117間において上下の板層110を繋ぐ連結部118とにより形成された剥離構成部111を備えたスペーサ部材6を用いる。このスペーサ部材6は、例えば、押出し成形により、複数の板層110を積層しつつ、板層110間には押出し方向に延長する複数並びの中空部117を形成して板層110を剥離可能に形成し、この押出し成形品を定尺に切断して形成される。また、最良の形態5で説明した複数の剥離可能な板層110を設ける場合の剥離構成も同様に構成できる。最良の形態6によれば、中空部117と連結部118とが交互に並べられて形成された剥離構成部111を備えるので、板層110を剥離しない場合は、連結部によって板層110同士が連結された状態に維持され、板層110を剥離する場合には、中空部によって板層110を手などで容易に剥離できる。つまり、板層110を意図的に剥離しない限りにおいては、経年によっても板層110が剥がれることはなく、板層110同士が接着剤などで剥離可能に形成された場合のように経年によって板層110が剥がれるようなことを防止できる。
【0046】
最良の形態4乃至最良の形態6で説明した剥離可能な構成のスペーサ部材6は、例えば、ショアA硬度60°〜70°程度のポリ塩化ビニルやアクリル樹脂などの軟質合成樹脂材を用いて形成される。また、スペーサ部材6の中空部117の断面形状は例えば矩形又は円形に形成される。また、スペーサ部材6において互いに隣り合う中空部117と中空部117との間隔mは例えば0.5mm〜1mm程度、中空部117の径寸法は例えば3mm程度に設定される。
尚、上述した二者間の長さa;b;f;g;h;j;k;m;x;yは、二者間の最短長さを言う。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明による引き違い戸の外止め装置は、図23に示すような、上部引き違い戸と下部引き違い戸とを備えた構成の上下引き違い戸装置に適用できる。つまり、上部引き違い戸の下枠及び下レールと下部引き違い戸の上枠及び上レールとを有した無目201を備える上下引き違い戸装置に適用できる。
本発明の引き違い戸の外止め装置は、戸棚のような収納筐体の前側開口に設けられる引き違い戸装置にも適用できる。
下レールを溝により形成し、車輪を当該溝にはめて滑走させる構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】引き違い戸の外止め装置の縦断面図(最良の形態1)。
【図2】外止め装置の分解斜視図(最良の形態1)。
【図3】戸枠に対する引き違い戸の取付手順を示す図(最良の形態1)。
【図4】スペーサ部材を示す図であって、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は右側面図(最良の形態1)。
【図5】上枠に対するスペーサ部材の取付手順を示す図(最良の形態1)。
【図6】上枠に対するスペーサ部材の取付手順を上枠の下方から見て示した図(最良の形態1)。
【図7】引き違い戸の外止め装置の縦断面図(最良の形態2)。
【図8】外止め装置の分解斜視図(最良の形態2)。
【図9】上スペーサ部及び下スペーサ部を示す図であって、(a)は上スペーサ部の正面図、(b)は上スペーサ部の平面図、(c)は上スペーサ部の断面図、(d)は下スペーサ部の正面図、(e)は下スペーサ部の平面図、(f)は下スペーサ部の右側面図(最良の形態2)。
【図10】上スペーサ部に対する下スペーサ部の取付手順を示す図(最良の形態2)。
【図11】引き違い戸の外止め装置の縦断面図(最良の形態3)。
【図12】外止め装置の分解斜視図(最良の形態3)。
【図13】スペーサ部を示す図であって、(a)はスペーサ部の正面図、(b)はスペーサ部の平面図、(c)はスペーサ部の右側面図(最良の形態3)。
【図14】上レール装置に対するスペーサ部材の取付手順を上枠の下方から見て示した図(最良の形態3)。
【図15】引き違い戸の外止め装置の縦断面図(最良の形態4)。
【図16】外止め装置の分解斜視図(最良の形態4)。
【図17】スペーサ部材を示す正面図(最良の形態4)。
【図18】スペーサ部材を示す正面図(最良の形態5)。
【図19】スペーサ部材を示す分解斜視図(最良の形態5)。
【図20】スペーサ部材を示す分解斜視図(最良の形態5)。
【図21】スペーサ部材を示す正面図(最良の形態6)。
【図22】外止め装置の正面図(最良の形態1乃至6)。
【図23】外止め装置の正面図(最良の形態1乃至6)。
【図24】外止め装置の横断面図(最良の形態1乃至6)。
【図25】外止め装置の縦断面図(最良の形態1乃至6)。
【符号の説明】
【0049】
1 引き違い戸の外止め装置、2 戸枠、3 下側レール装置、
4 上側レール装置、5 引き違い戸、6 スペーサ部材、8 下枠、9 上枠、
10 下レール、16 スペーサ部、17 取付部、
18 スペーサ高さ位置変更部、19 スペーサ部の前後の端面、
20 上レール、45 中央側下面(下面)、53 上レールの内側面、
57 下面形成板、58 貫通孔、60 支柱、61 外周面、70 上スペーサ部、
71 下スペーサ部、91 下面支持面、110 板層、111 剥離構成部、
117 中空部、118 連結部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、引き違い戸の外れを防止するためのスペーサ部材を備えた引き違い戸の外止め装置及びスペーサ部材に関する。
【背景技術】
【0002】
戸枠に引き違い戸が取付けられた引き違い戸装置において、引き違い戸の外れを防止するためのスペーサ部材を備えた引き違い戸の外止め装置が知られている。この外止め装置は、スペーサ部材の下面と引き違い戸の上端面との間の長さを、引き違い戸の下端部と下枠に設けられた下レールとの係合長さより短くすることによって、引き違い戸が上方に移動したとしても引き違い戸の上端面がスペーサ部材の下面に衝突するようにして、引き違い戸が下レールから外れることを防止している。
【特許文献1】特開平11−107613号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
引き違い戸装置では、戸枠の取付精度などによってスペーサ部材の下面と引き違い戸の上端面との間の長さに違いが生じる場合がある。この場合、従来の引き違い戸の外止め装置によれば、スペーサ部材の下面の高さ位置を変更できないため、スペーサ部材の下面と引き違い戸の上端面との間の長さが短くなりすぎて引き違い戸を滑らかに開閉できなくなったり、スペーサ部材の下面と引き違い戸の上端面との間の長さが引き違い戸の下端部と下レールとの係合長さよりも長くなりすぎてスペーサ部材が引き違い戸の外止めとして機能しなくなるという課題があった。
本発明は、スペーサ部材の下面の高さ位置を変更可能として、引き違い戸の上端面とスペーサ部材の下面との間の長さを調整可能とすることで、引き違い戸の上端面とスペーサ部材の下面との間の長さを適正に調整できる引き違い戸の外止め装置及びスペーサ部材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係る引き違い戸の外止め装置は、戸枠(2)と、戸枠(2)の下枠(8)に左右に延長するよう設けられて下枠(8)の前後に互いに平行に位置された前後一対の下レール(10;10)からなる下側レール装置(3)と、戸枠(2)の上枠(9)に左右に延長するよう設けられて上枠(9)の前後に互いに平行に位置された前後一対の上レール(20;20)からなる上側レール装置(4)と、下端係合部(32)と下レール(10)とが係合するとともに上端係合部(22)と上レール(20)とが係合してレール上を移動可能なように戸枠(2)に取付けられた前後一対の引き違い戸(5;5)と、戸枠(2)に取付けられた引き違い戸(5)の上方向への移動を規制して引き違い戸(5)の外れを防止するために引き違い戸(5)の上端面(36)と上枠(9)の下面(45)との間に位置するように上枠(9)又は上側レール装置(4)に取付けられたスペーサ部材(6)とを備え、上記スペーサ部材(6)は、スペーサ部(16)と、スペーサ部(16)を上枠(9)又は上側レール装置(4)に取付けるための取付部(17)と、スペーサ部(16)の下面(55)の高さ位置を変更するためのスペーサ高さ位置変更部(18)とを備えたことを特徴とする。
スペーサ高さ位置変更部(18)は、上下に積層された複数の板層(110)が剥離構成部(111)を介して互いに剥離可能に形成されたスペーサ部(16)により構成されたことも特徴とする。
剥離構成部(111)は、上下の板層(110)間に間隔(m)を隔てて並ぶように設けられてスペーサ部(16)の一端面(105)と他端面(106)とに貫通する複数の中空部(117)と、隣り合う中空部(117)間において上下の板層(110)を繋ぐ連結部(118)とにより形成されたことも特徴とする。
スペーサ高さ位置変更部(18)は、前後の上レール(20;20)間に位置した上枠の下面形成板(57)を上下に貫通する貫通孔(58)と、スペーサ部(16)の上面(56)より延長する支柱(60)の外周面(61)より突出して支柱(60)の上下方向に間隔を隔てて形成された複数の係合部(62;63)とを備え、貫通孔(58)を通過させて下面形成板(57)の上面(67)と接触させる係合部(62;63)を選択することによってスペーサ部(16)の下面(55)の高さ位置を変更したことも特徴とする。
スペーサ高さ位置変更部(18)は、上枠(9)に取付けられた上スペーサ部(70)と、上スペーサ部(70)に対して着脱可能な下スペーサ部(71)とを備え、スペーサ部(16)の下面(55)が、上スペーサ部(70)の下面(83)又は上スペーサ部(70)に取付けられた下スペーサ部(71)の下面(84)により形成されたことも特徴とする。
上スペーサ部(70)は、前後の上レール(20;20)間に位置する上枠(9)の下面形成板(57)にねじ(82)止めされたことも特徴とする。
取付部(17)は、互いに向かい合う前側の上レール(20)の内側面(53)と後側の上レール(20)の内側面(53)とに突っ張るように摩擦接触してスペーサ部(16)を上側レール装置(4)に取付けるスペーサ部(16)の前後の端面(19;19)により形成されたことも特徴とする。
互いに向かい合う前側の上レール(20)の内側面(53)と後側の上レール(20)の内側面(53)とからそれぞれ突出するように設けられてスペーサ部(16)の下面(55)に接触する下面支持面(91)を備え、スペーサ部(16)が下面支持面(91)と上枠(9)の下面(45)とで挟まれたことも特徴とする。
本発明に係るスペーサ部材は、戸枠(2)に取付けられた引き違い戸(5)の上方向への移動を規制して引き違い戸(5)の外れを防止するために引き違い戸(5)の上端面(36)と戸枠(2)の上枠(9)の下面(45)との間に位置するように設けられるスペーサ部材(6)において、スペーサ部(16)と、スペーサ部(16)を上枠(9)又は上枠(9)に設けられた上側レール装置(4)に取付けるための取付部(17)と、スペーサ部(16)の下面(55)の高さ位置を変更するためのスペーサ高さ位置変更部(18)とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明に係る引き違い戸の外止め装置によれば、スペーサ部材が、スペーサ部と、取付部と、スペーサ高さ位置変更部とを備え、スペーサ部材の下面の高さ位置を変更可能としたので、引き違い戸の上端面とスペーサ部材の下面との間の長さを適正に調整できる引き違い戸の外止め装置を得ることができる。
スペーサ高さ位置変更部は、複数の板層が剥離構成部を介して互いに剥離可能に形成されたスペーサ部により構成されたので、板層を剥離することで、スペーサ部の下面の高さ位置を容易に変更できる。
剥離構成部は、板層間に形成された複数の中空部と連結部とにより形成されたので、板層を剥離しない場合は、連結部によって板層同士が連結された状態に維持され、板層を剥離する場合には、中空部によって板層を手などで容易に剥離できる。
スペーサ高さ位置変更部は、上枠の下面を形成する下面形成板を上下に貫通する貫通孔と、スペーサ部の支柱の上下方向に間隔を隔てて形成された複数の係合部とを備えたので、貫通孔を通過させて下面形成板の上面と接触させる係合部を選択することによってスペーサ部の下面の高さ位置を容易に変更できる。
スペーサ高さ位置変更部は、上枠に取付けられた上スペーサ部と、上スペーサ部に対して着脱可能な下スペーサ部とを備え、スペーサ部の下面が、上スペーサ部の下面又は上スペーサ部に取付けられた下スペーサ部の下面により形成されたので、上スペーサ部に対する下スペーサ部の着脱により、スペーサ部の下面の高さ位置を容易に変更できる。
上スペーサ部は、前側の上レールと後側の上レールとの間に位置する上枠の下面を形成する下面形成板にねじ止めされたので、上スペーサ部を上枠に確実に取付けることができる。
取付部は、互いに向かい合う前側の上レールの内側面と後側の上レールの内側面とに突っ張るように摩擦接触したスペーサ部の前後の端面により形成され、互いに接触した上レールの内側面とスペーサ部とが互いに押し合う状態に維持されたことでスペーサ部が上レールに取付けられたので、スペーサ部を上レール装置に確実に取付けることができる。
互いに向かい合う前側の上レールの内側面と後側の上レールの内側面とからそれぞれ突出するように設けられてスペーサ部の下面に接触する下面支持面を備え、スペーサ部が下面支持面と上枠の下面とで挟まれたので、スペーサ部の上レール装置への取付力が増し、スペーサ部を確実に取付けることができる。
本発明に係るスペーサ部材によれば、スペーサ部と、取付部と、スペーサ高さ位置変更部とを備えたので、引き違い戸の上端面との間の長さを適正に調整できるスペーサ部材を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
最良の形態1.
図1乃至図6、及び、図22乃至図25は最良の形態1を示す。図1は引き違い戸の外止め装置の縦断面を示し、図2は外止め装置を分解して示し、図3は戸枠に対する引き違い戸の取付手順を示し、図4はスペーサ部材を示し、図5は上枠に対するスペーサ部材の取付手順を示し、図6は上枠に対するスペーサ部材の取付手順を上枠の下方から見て示し、図22は外止め装置の正面図を示し、図23は外止め装置の正面図を示し、図24は外止め装置の横断面図を示し、図25は外止め装置の縦断面図を示す。
【0007】
図1;22に示すように、引き違い戸の外止め装置1は、戸枠2と、下側レール装置3と、上側レール装置4と、前後一対の引き違い戸5;5と、スペーサ部材6とを備える。
【0008】
図22に示すように、戸枠2は、左右の竪枠7;7と、左右の竪枠7;7の下端部同士を繋ぐ下枠8と、左右の竪枠7;7の上端部同士を繋ぐ上枠9とを備えた四角形状の枠である。戸枠2は、建物の躯体壁や間仕切壁のような壁に形成された出入口開口部の開口縁面に沿うように設置されて壁に固定される。
【0009】
図1に示すように、下側レール装置3を形成する前後一対の下レール10;10は、下枠8の上面11に左右に延長するよう設けられて下枠8の前後に互いに平行に位置される。下レール10;10は、下枠8の上面11より垂直に立ち上がって下枠8の左右に連続して延長する上凸状レールにより形成される。上側レール装置4を形成する前後一対の上レール20;20は、上枠9の下面12に左右に延長するよう設けられて上枠9の前後に互いに平行に位置される。上レール20;20は、上枠9の下面12より垂直に立ち下がるように下方に突出して上枠9の左右に連続して延長する下凸状レールにより形成される。即ち、上側レール装置4の上レール20;20と下側レール装置3の下レール10;10とが上下で互いに平行に向かい合うように設けられる。
【0010】
前後一対の引き違い戸5;5は、表裏に矩形の開閉面15を有した一定厚の矩形板状に形成される。引き違い戸5は、下端部に下係合部21を備えるとともに、上端部に上レール20と係合する上端係合部としての上係合凹部22を備える。
【0011】
下係合部21は、引き違い戸5の下端面23に形成された凹溝24と、凹溝24内に設置された滑車装置25とを備える。凹溝24は、引き違い戸5の下端面23の前後の中央部において下端面23の左右に連続して設けられて、引き違い戸5の下端面23と左右の側面13;13(図2参照)とに開口した溝である。滑車装置25は、車輪26と、車輪26が回転可能なように車輪26の回転中心軸27を支持する軸支持体28とを備える。軸支持体28は、車輪26の上側を覆って凹溝24の溝底部に嵌合状態に取付けられる嵌合部29と、車輪26の両側に突出する車輪26の回転中心軸27を回転可能に支持する軸受部30とを備える。
【0012】
滑車装置25は、車輪26の回転中心軸27が下レール10の延長方向に対して直交するように、嵌合部29が凹溝24の溝底部に嵌合状態に取付けられる。滑車装置25は、1つの引き違い戸5の凹溝24内に間隔を隔てて少なくとも2つ設けられる。車輪26は、車輪26の外周面に下レール10の上端部と係合する下端係合部としての周溝32を備え、これにより、車輪26が回転して車輪26が下レール10の上端38を転がるように構成される。このように車輪26が転がることで、下レール10と車輪26の周溝32との摩擦が軽減され、引き違い戸5の開閉時の摩擦が小さくなって引き違い戸5の開閉動作を滑らかにできる。
【0013】
上係合凹部22は、引き違い戸5の上端面36の前後の中央部において上端面36の左右に連続して設けられて、引き違い戸5の上端面36と左右の側面13;13とに開口した凹溝により形成される。よって、上レール20の下端部が上係合凹部22内に位置され、引き違い戸5が上レール20に沿って左右に移動可能に構成される。
【0014】
上枠9の下面12は、前側の上レール20よりも前側に位置する前側下面41と、後側の上レール20よりも後側に位置する後側下面42と、前側の上レール20と後側の上レール20との間に位置される中央側下面45とを備える。前側下面41の高さ位置と後側下面42の高さ位置とが同じである。中央側下面45は、前側下面41や後側下面42と比べて低い位置に形成される。このように、前側下面41や後側下面42の位置を中央側下面45の位置よりも高くした理由は、図3(a)に示すように、引き違い戸5を上レール20に係合させる際において、引き違い戸5を前後に傾ける場合に、前側下面41と対応する前側の引き違い戸5の上端面36の前縁44側や後側下面42と対応する後側の引き違い戸5の上端面36の後縁46側を上方に移動させやすくするためである。
【0015】
上下で互いに向かい合うように設けられた上レール20の下端37と下レール10の上端38との間の長さ(即ち、上下レール間寸法)fが、引き違い戸5の上端面36と下端面23との間の長さ(即ち、引き違い戸5の縦寸法)hよりも短く形成される。また、引き違い戸5の上係合凹部22の凹部底面位置40と引き違い戸5の下端面23との間の長さgが、上下レール間寸法fよりも短く形成される。
【0016】
そして、引き違い戸5を戸枠2に取付ける場合には、図3に示すように、前後方向に斜めに傾けられた引き違い戸5の上係合凹部22内に上レール20を入り込ませて引き違い戸5を上方に移動させるとともに引き違い戸5の下端面23が下レール10の上端38を乗り越えて下レール10の上端部39が車輪26の周溝32に入り込むようにする。これにより、引き違い戸5が上下のレール10;20に沿って戸枠2の左右の方向に移動可能なように戸枠2に取付けられた取付状態(以下、正規の取付状態という)となる。即ち、上係合凹部22と上レール20とが係合されて、かつ、車輪26の周溝32と下レール10の上端部39とが係合された状態となる。正規の取付状態においては、下レール10の上端部39と係合する周溝32の最下端位置47と引き違い戸5の下端面23との間の長さa(下レールと周溝との係合長さa)と、引き違い戸5の上端面36と上枠9の中央側下面45との間の長さxとの関係は、a<xである。従って、この正規の取付状態のままでは、引き違い戸5が上方に移動した場合、引き違い戸5を上下のレール10;20に取付けた場合とは逆の作用で引き違い戸5の車輪26の周溝32と下レール10との係合が解除され、引き違い戸5が下レール10より外れる可能性がある。そこで、スペーサ部材6を、正規の取付状態の引き違い戸5の上端面36と上枠9の中央側下面45との間に位置するように、上側レール装置4に取付けた。
【0017】
スペーサ部材6は、スペーサ部16と、取付部17と、スペーサ高さ位置変更部18とを備える。スペーサ部材6は、例えば合成樹脂、合成ゴムなどにより形成される。スペーサ部材6は、図22に示すように、左右の竪枠7;7の位置から左右の竪枠7;7間の長さWの1/3の所に位置する上側レール装置4の前後の上レール20;20の内側面53;53に取付けられる。W/3の位置にスペーサ部材6を設けたことによって、正規の取付状態の引き違い戸5がどの位置に位置したとしても引き違い戸5の上端面36の上方にスペーサ部材6が位置することになるので、引き違い戸5の外止めを確実にできる。
【0018】
スペーサ部16は、長方形状の平板材により形成される。図6に示すように、スペーサ部16の長方形状の長手方向の長さ寸法は、互いに向かい合う前側の上レール20の内側面53と後側の上レール20の内側面53との間の長さyよりも長い。スペーサ部16の長方形の短手方向の長さ寸法は、長さyの1/3程度である。スペーサ部16の長方形状は、対角部の角が面取りされ、一対の対角部の面取部のR(円弧の半径)が大きく形成される。従って、スペーサ部16の長方形の長手方向が上レール20の延長方向と同じになるようにしてかつスペーサ部16の上面56を中央側下面45に対して平行とした状態で図6(b);(c)に示すようにスペーサ部16を長方形の中心を回転中心として90°回転させることにより、スペーサ部16の長方形の長手方向の両方の端面19と前後の上レール20;20の内側面53;53とが摩擦接触して、互いに接触した上レール20の内側面53とスペーサ部16とが互いに押し合う状態に維持されたことで、スペーサ部16が上側レール装置4に取付けられる。この場合、上記Rの大きい面取部16aが先に上レール20と接触する回転方向にスペーサ部16を回転させる。
【0019】
このように設置されるスペーサ部16の下面55と引き違い戸5の上端面36との間の長さbを、下レール10と周溝32との係合長さaより短くすることによって、引き違い戸5が上方に移動したとしても引き違い戸5の上端面36がスペーサ部16の下面55に衝突して引き違い戸5の係合長さa以上の上方への移動が規制されるので、下レール10と車輪26の周溝32との係合が解除されることがなくなり、引き違い戸5が下レール10から外れることを防止できる。この場合、スペーサ部16の長手方向の両方の端面19;19が取付部17として機能し、この両方の端面19;19が圧接する前側の上レール20の内側面53及び後側の上レール20の内側面53が取付部17の取付部位として機能する。
【0020】
図4;5に示すように、スペーサ高さ位置変更部18は、中央側下面45を形成する下面形成板57を上下に貫通するように設けられた貫通孔58と、スペーサ部16の上面56の中心より上方に延長する支柱60の外周面61より突出して支柱60の上下方向に所定間隔を隔てて設けられた複数の係合部として上側の係合部62と下側の係合部63とを備える。支柱60は例えば円柱により形成される。上側の係合部62は、円柱の外周面61における互いに180°隔てた位置から外周面61より突出するように形成された2つの係合突出片65;65により形成される。この2つの係合突出片65;65は、支柱60の中心と直交する1つの面上に形成される。下側の係合部63も上側の係合部62と同じ構成である。2つの係合突出片65;65は、スペーサ部16の長手方向に延長するように形成される。貫通孔58は、2つの係合突出片65;65と支柱60とを支柱60の中心線と直交する面で切断した断面形状の異形貫通孔に形成され、その孔の大きさは、支柱60及び2つの係合突出片65;65を中央側下面45の下方から下面形成板57の上方に貫通させることのできる大きさに形成される。また、貫通孔58は、異形貫通孔の長手方向と上レール20の延長方向とが一致するように形成される。
【0021】
以上の構成からなるスペーサ高さ位置変更部18の作用を説明する。図5(a);(b)のように支柱60及び係合部62を中央側下面45の下方から貫通孔58に通して係合部62を下面形成板57の上方に位置させてから、図5(c)のようにスペーサ部16を支柱60の中心を回転中心として水平面上において90°回転させる。これにより、図1に示すように、係合部62を形成する2つの係合突出片65;65の下面66と下面形成板57の上面67とが接触した状態に係合するので、スペーサ部16の下面55の高さ位置が決定される。また、スペーサ部16の長手方向の両方の端面19;19が互いに向かい合う前側の上レール20の内側面53と後側の上レール20の内側面53とに突っ張るように接触して、互いに接触した上レール20の内側面53とスペーサ部16とが互いに押し合う状態に維持されたことで、スペーサ部16を上側レール装置4に確実に取付けることができる。この場合、上側の係合部62を形成する2つの係合突出片65;65の下面66と下面形成板57の上面67とが接触した状態で係合した場合におけるスペーサ部16の下面55の高さ位置は、第1の位置(低位置)に設定される。また、下側の係合部63を形成する2つの係合突出片65;65の下面52と下面形成板57の上面67とが接触した状態で係合した場合におけるスペーサ部16の下面55の高さ位置は、第1の位置よりも高い第2の位置(高位置)に設定される。つまり、貫通孔58を通過させて下面形成板57の上面67と接触させる上下の係合部62;63を選択することによって、スペーサ部16の下面55の高さ位置を、異なる第1の位置と第2の位置とに容易に変更できる。尚、スペーサ部材6の取付作業は、正規の取付状態に取付けられた前後の引き違い戸5;5を左右の竪枠7;7の一方側に寄せた状態で行う。
【0022】
上側の係合部62を形成する係合突出片65と下側の係合部63を形成する係合突出片65との間の長さ、及び、下側の係合部63を形成する係合突出片65とスペーサ部16の上面56との間の長さを、下面形成板57の板厚と同程度にすることによって、上側の係合部62を形成する係合突出片65と下側の係合部63を形成する係合突出片65とで下面形成板57を上下から挟み付けるように構成したり、下側の係合部63を形成する係合突出片65とスペーサ部16の上面56とで下面形成板57を上下から挟み付けるように構成する。このようにすることで、下面形成板57に対するスペーサ部材6の取付力が増すとともに、スペーサ部16の下面55の高さ位置を第1の位置または第2の位置に正確に設定できるようになる。
【0023】
最良の形態1によれば、スペーサ部16の下面55の高さ位置を変更できるので、引き違い戸5の上端面36とスペーサ部16の下面55との間の長さb(隙間b)を調整できる。よって、例えば、スペーサ部16の下面55の高さ位置が第1の位置(低位置)になるようにスペーサ部材6を取付けた際に隙間bが短かすぎる場合には、スペーサ部16の下面55の高さ位置が第2の位置(高位置)になるようにスペーサ部材6を取付け直すことによって、隙間bを適正間隔にすることが可能となる。逆に、例えば、スペーサ部16の下面55の高さ位置が第2の位置(高位置)になるようにスペーサ部材6を取付けた際に隙間bが係合長さaよりも長くなった場合には、スペーサ部16の下面55の高さ位置が第1の位置になるようにスペーサ部材6を取付け直すことによって、隙間bを係合長さaよりも短い適正間隔にすることが可能となる。即ち、引き違い戸5の上端面36とスペーサ部16の下面55との間の長さを適正に調整できる引き違い戸の外止め装置1及びスペーサ部材6を得ることができる。尚、係合突出片65の板厚(上下高さ)の異なる複数種類のスペーサ部材6を用いれば、より多くの高さ位置を設定できるので、高さ位置をより細かく調整できる。また、上側の係合部62を形成する係合突出片65や下側の係合部63を形成する係合突出片65を上下に2つ以上備えたスペーサ部材6を用いれば、より多くの高さ位置を設定できるので、高さ位置をより細かく調整できる。
【0024】
また、スペーサ部材6の取付けは、支柱60及び係合部62;63を中央側下面45の下方から貫通孔58に通してスペーサ部16を90°回転させるだけなので、スペーサ部材6を上側レール装置4の上レール20;20に容易に取付けることができる。
【0025】
最良の形態2.
図7乃至図10に基いて最良の形態2を説明する。図7に示すように、スペーサ部16とねじ82とを備えたスペーサ部材6を用いる。スペーサ部材6は、上枠9の中央側下面45にねじ止めされて取付けられた上スペーサ部70と、上スペーサ部70に対して着脱可能な下スペーサ部71とを備える。スペーサ部材6以外の構成は最良の形態1と同じである。図9(a)乃至(c)に示すように、上スペーサ部70は、中央側下面45の幅yよりも短い幅でかつ上レール20の延長方向に長い長方形の取付基板72と、取付基板72の幅方向(長方形の短手方向)の両方の端部64;64からそれぞれ下方に垂直に立ち下がる立下り部74と、両方の立下り部74の下端部より互いに近づく方向に延長するように設けられた下支持部75とを備える。取付基板72と立下り部74と下支持部75とで囲まれた空間により保持溝76が形成される。取付基板72には、取付基板72の幅方向の中心を通る中心線上に中心が位置するねじ通し孔77が形成される。図9(d)乃至(f)に示すように、下スペーサ部71は、上スペーサ部70の幅方向の両端部に形成された保持溝76に嵌合されることによって取付基板72と下支持部75とで上下から挟まれて保持される着脱部78と、着脱部78の下面79より下方に延長するように設けられて水平な下面84を備えたスペーサ機能部80とを備える。
【0026】
スペーサ部材6の取付けは、まず、上スペーサ部70の取付基板72の上面81と中央側下面45とを接触させた状態で取付基板72の下方からねじ通し孔77にねじ82を通してねじ82を下面形成板57にねじ込むことによって、上スペーサ部70を下面形成板57にねじ止めする。このように、上スペーサ部70が、中央側下面45を形成する下面形成板57にねじ止めされたので、上スペーサ部70を上枠9に確実に取付けることができる。そして、上スペーサ部70の横方向から下スペーサ部71の着脱部78を上スペーサ部70の保持溝76に挿入する。これにより、下スペーサ部71の着脱部78が上スペーサ部70の保持溝76内に嵌合された状態に取付けられる。
【0027】
最良の形態2のスペーサ部材6では、スペーサ部16が、下スペーサ部71と上スペーサ部70とにより形成され、取付部17が、取付基板72とねじ82とにより形成され、スペーサ高さ位置変更部18が、上スペーサ部70に下スペーサ部71を着脱可能とする構成である保持溝76と着脱部78とにより形成される。
【0028】
最良の形態2では、下面形成板57に上スペーサ部70のみが取付けられた状態においては、上スペーサ部70の下支持部75の下面83がスペーサ部16の下面55として機能して当該スペーサ部16の下面55の高さ位置が第2の位置(高位置)となる。下スペーサ部71が上スペーサ部70に取付けられた状態においては、下スペーサ部71の下面84がスペーサ部16の下面として機能して当該スペーサ部16の下面55の高さ位置が第1の位置(低位置)となる。つまり、上スペーサ部70に対する下スペーサ部71の着脱により、最良の形態1と同様に、スペーサ部16の下面55の高さ位置を容易に変更できるので、引き違い戸5の上端面36とスペーサ部16の下面55との間の隙間bの大きさを調整できる。
【0029】
また、最良の形態2においては、スペーサ機能部80の上下厚さの異なる複数種類の下スペーサ部71を用意することによって、スペーサ部16の下面55の高さ位置を3つ以上設定可能となる。
【0030】
最良の形態3.
図11乃至図14に基いて最良の形態3を説明する。図11に示すような、スペーサ部材6と上側レール装置4とを備えた引き違い戸の外止め装置1としてもよい。スペーサ部材6及び上側レール装置4以外の構成は最良の形態1と同じである。スペーサ部材6は、スペーサ部16と回転操作部50とを備える。スペーサ部16は、上スペーサ部70と、上スペーサ部70に対して剥離可能な下スペーサ部71とを備える。上スペーサ部70は、硬質樹脂製の長方形の平板材により形成される。上スペーサ部70の長方形の長手方向の長さ寸法は、互いに向かい合う前側の上レール20の内側面53と後側の上レール20の内側面53との間の長さyよりも長い。スペーサ部16の長方形の短手方向の長さ寸法は、長さyの1/3程度である。回転操作部50は、上スペーサ部70の下面83の中央から下方に延長する板状材又は棒状材により形成される。下スペーサ部71は、上スペーサ部70の下面83における回転操作部50の連結部分以外の部分に接着剤などにより取付けられて上スペーサ部70の下面83より剥離可能に形成される。下スペーサ部71は、上スペーサ部70を形成する硬質樹脂よりも軟質の軟質剛性樹脂製の板材により形成される。スペーサ部16は、最良の形態1と同様に、一対の対角部がRの大きい面取部16aに形成される。
【0031】
上側レール装置4は、上枠の左右に連続して延長する下凸状レールにより形成された上レール20;20を備える。上レール20;20は、上枠9の下面12より垂直に立ち下がる立下り板87と、立下り板87の下端より立下り板87の内側面89に沿って上方に立上る立上り板88とにより形成される。この立上り板88の上端面と中央側下面45との間の長さjと、スペーサ部16の上面56と下面55との間の長さk(即ち、スペーサ部の厚さ寸法)とが同じ長さに形成される。つまり、中央側下面45から長さjだけ下方の位置において、前後の上レール20;20の内側面89;89から互いに近づく方向に突出して水平面を形成する立上り板88の上端面を備え、この上端面が下スペーサ部71の下面55と接触する下面支持面91として機能する。この下面支持面91の位置は、正規の取付状態における引き違い戸5の上端面36よりも上方に位置するように形成される。そして、下面支持面91と中央側下面45とがスペーサ部16を上下から挟み込む挟持部92として機能する。
【0032】
スペーサ部16の長方形の長手方向が上レール20の延長方向と同じになるようにしてかつ上スペーサ部70の上面56と中央側下面45とを接触させた状態で図14(b)に示すように回転操作部50を摘んでスペーサ部16を長方形の中心を回転中心として90°回転させることにより、スペーサ部16の長方形の長手方向の両方の端面19;19と前後の上レール20;20の内側面89;89とが接触して、互いに接触した上レール20;20の内側面89;89とスペーサ部16とが互いに押し合う状態に維持されたことでスペーサ部16が上側レール装置4に取付けられる。
【0033】
下スペーサ部71を備えたスペーサ部16が取付けられた状態においては、下スペーサ部16の下面84がスペーサ部16の下面55として機能して当該スペーサ部16の下面55の高さ位置が第1の位置(低位置)となる。また、下スペーサ部16が剥離されて上スペーサ部70のみとなったスペーサ部16が取付けられた状態においては上スペーサ部70の下面83がスペーサ部16の下面55として機能して当該スペーサ部16の下面55の高さ位置が第2の位置(高位置)となる。
【0034】
最良の形態3によれば、最良の形態1と同様に、スペーサ部16の下面55の高さ位置を変更できるので、引き違い戸5の上端面36とスペーサ部16の下面55との間の隙間bの大きさを調整できる。
【0035】
また、スペーサ部材6の取付けは、回転操作部50を摘んでスペーサ部16を長方形の中心を回転中心として90°回転させるだけなので、スペーサ部材6を上側レール装置4に容易に取付けることができる。
【0036】
また、下スペーサ部71の下面84と接触する規制部材としての下面支持面91を備え、この下面支持面91と中央側下面45とがスペーサ部16を上下から挟み込む挟持部92として機能するので、スペーサ部16の長方形の長手方向の両方の端面19;19と前後の上レール20;20の内側面89;89との接触によって、スペーサ部材6の上レール装置4に対する取付力を挟持部92による挟持力によって強化できるので、スペーサ部16を確実に取付けることができる。
【0037】
最良の形態4.
図15乃至図17に基いて最良の形態4を説明する。図15に示すように、中央側下面45の下方から前後の上レール20;20間に向けて上方に押し込まれることによってスペーサ部16の前後の両方の端面19;19と前後の上レール20;20の内側面53;53とが接触し、互いに接触した上レール20の内側面53とスペーサ部16とが互いに押し合う状態に維持されたことでスペーサ部16が上側レール装置4に取付けられる構成のスペーサ部材6を用いる。このスペーサ部材6は、例えば、図16に示すように、上レール20の延長方向に長い連続形状物であって、その延長方向と直交する平面で切断した断面形状が図17に示すような形状に形成された構成である。断面形状は、前後の中心に位置する中心線oを基準とした線対称形に形成される。
【0038】
スペーサ部16は、下スペーサ部71と上スペーサ部70とにより形成される。下スペーサ部71の下面55は平面に形成され、下スペーサ部16の前側及び後側の上面には上スペーサ部70が剥離構成部としての接着剤などにより取付けられて上スペーサ部70が下スペーサ部16の上面より剥離可能に形成される。剥離可能な上スペーサ部70は、下スペーサ部71の前側及び後側の間の中央側上面71aには設けられておらず、下スペーサ部71の中央側上面71aは前後の上スペーサ部70で挟まれた谷部に形成される。
【0039】
下スペーサ部71の前部95には、上下に間隔を隔てて前方に突出するように設けられた複数の前方張り出し部100;101を備える。上側の前方張り出し部100は、下スペーサ部71の上面97における前縁より前方に傾斜して下る傾斜面98と傾斜面98の下端より後方に延長する後方延長面99とで囲まれた部分である。下側の前方張り出し部101は、後方延長面99の後端部より立ち下がる立下り面99aの下端より前方に傾斜して下る傾斜面102とこの傾斜面102の下端より後方に延長して下スペーサ部71の下面84に連続する後方延長面103とで囲まれた部分である。下スペーサ部71の後部96には、上下に間隔を隔てて後方に突出するように設けられた複数の後方張り出し部107;108を備える。後方張り出し部107;108の構成は、中心線oを基準として前方張り出し部100;101と線対称形であるため、前後が異なる以外は、前方張り出し部100;101の構成と同じである。下スペーサ部71の前後の両方の端面19;19間の長さ寸法は、互いに向かい合う前側の上レール20の内側面53と後側の上レール20の内側面53との間の長さyよりも長い。
【0040】
スペーサ部16の前後の両方の端面19;19を前後の上レール20;20の内側面53;53の真下に位置させ、スペーサ部材6を中央側下面45の下方から前後の上レール20;20間に向けて上方に真っ直ぐに押し込む。この場合、上スペーサ部70の上面56が中央側下面45と接触するまで押し込む。これにより、前方張り出し部100;101が下方に撓みながら前側の上レール20の内側面53と接触し、また、後方張り出し部107;108も下方に撓みながら後側の上レール20の内側面53と接触する。この場合、前方張り出し部100;101及び後方張り出し部107;108は、下方に傾斜する傾斜面98;102と前後方向に延長する延長面99;103とで囲まれた形状なので、内側面53と接触する先端部が下方に撓み易く、撓んだ後に当該前方張り出し部100;101及び後方張り出し部107;108と上レール20の内側面53とが互いに押し合う状態に維持される。よって、スペーサ部材6が当該撓み力によって上レール20の内側面53に強固に取付けられ、かつ、スペーサ部材6が上レール20の内側面53より外れにくくなる。
【0041】
下スペーサ部71を備えたスペーサ部16が取付けられた状態においては、下スペーサ部71の下面84がスペーサ部16の下面55として機能して当該スペーサ部16の下面55の高さ位置が第1の位置(低位置)となる。また、下スペーサ部71が剥離されて上スペーサ部70のみとなったスペーサ部16が取付けられた状態においては上スペーサ部70の下面83がスペーサ部16の下面55として機能して当該スペーサ部16の下面55の高さ位置が第2の位置(高位置)となる。
【0042】
最良の形態4によれば、最良の形態1と同様に、スペーサ部16の下面55の高さ位置を変更できるので、引き違い戸5の上端面36とスペーサ部16の下面55との間の隙間bの大きさを調整できる。
【0043】
また、スペーサ部材6の取付けは、前後の上レール20;20間にスペーサ部材6を押し込むだけなので、スペーサ部材6の取付作業を容易に行える。
【0044】
最良の形態5.
図18乃至図20に示すように、下スペーサ部71や上スペーサ部70を、剥離可能な複数の板層110で構成すれば、スペーサ部16の下面55の高さ位置の設定数を多くできる。
例えば、図18に示すように、最良の形態4の上スペーサ部70を剥離可能な複数の板層110で構成したり、図19に示すように、最良の形態3の下スペーサ部71を剥離可能な複数の板層110で構成したり、図20に示すように、最良の形態1の下スペーサ部71の構成を剥離可能な複数の板層110で構成したり、図示しないが、最良の形態2の下スペーサ部71を剥離可能な複数の板層110で構成したスペーサ部材6を用いる。
尚、図20に示したスペーサ部材6の場合、支柱60に上側の係合部62と下側の係合部63とを設けることなく、支柱60の外周面における互いに180°隔てた位置から外周面61より突出するように形成された2つの係合突出片65;65により形成された1組の係合部62を設けるだけでよいので、支柱60の構成を簡単にできる。
【0045】
最良の形態6.
図21に示すように、最良の形態4の上スペーサ部70と下スペーサ部71との間の剥離構成を、上スペーサ部70と下スペーサ部71との境界部に、スペーサ部16の一端面105(図16参照)と他端面106(図16参照)とに貫通する中空部117を一定間隔で複数個形成することによって、上スペーサ部70を手などで容易に剥離できる構成の剥離構成とした。即ち、上スペーサ部70を形成する板層110と下スペーサ部71を形成する板層110との間に間隔mを隔てて並ぶように設けられてスペーサ部16の一端面105と他端面106とに貫通する複数の中空部117と、隣り合う中空部117間において上下の板層110を繋ぐ連結部118とにより形成された剥離構成部111を備えたスペーサ部材6を用いる。このスペーサ部材6は、例えば、押出し成形により、複数の板層110を積層しつつ、板層110間には押出し方向に延長する複数並びの中空部117を形成して板層110を剥離可能に形成し、この押出し成形品を定尺に切断して形成される。また、最良の形態5で説明した複数の剥離可能な板層110を設ける場合の剥離構成も同様に構成できる。最良の形態6によれば、中空部117と連結部118とが交互に並べられて形成された剥離構成部111を備えるので、板層110を剥離しない場合は、連結部によって板層110同士が連結された状態に維持され、板層110を剥離する場合には、中空部によって板層110を手などで容易に剥離できる。つまり、板層110を意図的に剥離しない限りにおいては、経年によっても板層110が剥がれることはなく、板層110同士が接着剤などで剥離可能に形成された場合のように経年によって板層110が剥がれるようなことを防止できる。
【0046】
最良の形態4乃至最良の形態6で説明した剥離可能な構成のスペーサ部材6は、例えば、ショアA硬度60°〜70°程度のポリ塩化ビニルやアクリル樹脂などの軟質合成樹脂材を用いて形成される。また、スペーサ部材6の中空部117の断面形状は例えば矩形又は円形に形成される。また、スペーサ部材6において互いに隣り合う中空部117と中空部117との間隔mは例えば0.5mm〜1mm程度、中空部117の径寸法は例えば3mm程度に設定される。
尚、上述した二者間の長さa;b;f;g;h;j;k;m;x;yは、二者間の最短長さを言う。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明による引き違い戸の外止め装置は、図23に示すような、上部引き違い戸と下部引き違い戸とを備えた構成の上下引き違い戸装置に適用できる。つまり、上部引き違い戸の下枠及び下レールと下部引き違い戸の上枠及び上レールとを有した無目201を備える上下引き違い戸装置に適用できる。
本発明の引き違い戸の外止め装置は、戸棚のような収納筐体の前側開口に設けられる引き違い戸装置にも適用できる。
下レールを溝により形成し、車輪を当該溝にはめて滑走させる構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】引き違い戸の外止め装置の縦断面図(最良の形態1)。
【図2】外止め装置の分解斜視図(最良の形態1)。
【図3】戸枠に対する引き違い戸の取付手順を示す図(最良の形態1)。
【図4】スペーサ部材を示す図であって、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は右側面図(最良の形態1)。
【図5】上枠に対するスペーサ部材の取付手順を示す図(最良の形態1)。
【図6】上枠に対するスペーサ部材の取付手順を上枠の下方から見て示した図(最良の形態1)。
【図7】引き違い戸の外止め装置の縦断面図(最良の形態2)。
【図8】外止め装置の分解斜視図(最良の形態2)。
【図9】上スペーサ部及び下スペーサ部を示す図であって、(a)は上スペーサ部の正面図、(b)は上スペーサ部の平面図、(c)は上スペーサ部の断面図、(d)は下スペーサ部の正面図、(e)は下スペーサ部の平面図、(f)は下スペーサ部の右側面図(最良の形態2)。
【図10】上スペーサ部に対する下スペーサ部の取付手順を示す図(最良の形態2)。
【図11】引き違い戸の外止め装置の縦断面図(最良の形態3)。
【図12】外止め装置の分解斜視図(最良の形態3)。
【図13】スペーサ部を示す図であって、(a)はスペーサ部の正面図、(b)はスペーサ部の平面図、(c)はスペーサ部の右側面図(最良の形態3)。
【図14】上レール装置に対するスペーサ部材の取付手順を上枠の下方から見て示した図(最良の形態3)。
【図15】引き違い戸の外止め装置の縦断面図(最良の形態4)。
【図16】外止め装置の分解斜視図(最良の形態4)。
【図17】スペーサ部材を示す正面図(最良の形態4)。
【図18】スペーサ部材を示す正面図(最良の形態5)。
【図19】スペーサ部材を示す分解斜視図(最良の形態5)。
【図20】スペーサ部材を示す分解斜視図(最良の形態5)。
【図21】スペーサ部材を示す正面図(最良の形態6)。
【図22】外止め装置の正面図(最良の形態1乃至6)。
【図23】外止め装置の正面図(最良の形態1乃至6)。
【図24】外止め装置の横断面図(最良の形態1乃至6)。
【図25】外止め装置の縦断面図(最良の形態1乃至6)。
【符号の説明】
【0049】
1 引き違い戸の外止め装置、2 戸枠、3 下側レール装置、
4 上側レール装置、5 引き違い戸、6 スペーサ部材、8 下枠、9 上枠、
10 下レール、16 スペーサ部、17 取付部、
18 スペーサ高さ位置変更部、19 スペーサ部の前後の端面、
20 上レール、45 中央側下面(下面)、53 上レールの内側面、
57 下面形成板、58 貫通孔、60 支柱、61 外周面、70 上スペーサ部、
71 下スペーサ部、91 下面支持面、110 板層、111 剥離構成部、
117 中空部、118 連結部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
戸枠と、戸枠の下枠に左右に延長するよう設けられて下枠の前後に互いに平行に位置された前後一対の下レールからなる下側レール装置と、戸枠の上枠に左右に延長するよう設けられて上枠の前後に互いに平行に位置された前後一対の上レールからなる上側レール装置と、下端係合部と下レールとが係合するとともに上端係合部と上レールとが係合してレール上を移動可能なように戸枠に取付けられた前後一対の引き違い戸と、戸枠に取付けられた引き違い戸の上方向への移動を規制して引き違い戸の外れを防止するために引き違い戸の上端面と上枠の下面との間に位置するように上枠又は上側レール装置に取付けられたスペーサ部材とを備え、
上記スペーサ部材は、スペーサ部と、スペーサ部を上枠又は上側レール装置に取付けるための取付部と、スペーサ部の下面の高さ位置を変更するためのスペーサ高さ位置変更部とを備えたことを特徴とする引き違い戸の外止め装置。
【請求項2】
スペーサ高さ位置変更部は、上下に積層された複数の板層が剥離構成部を介して互いに剥離可能に形成されたスペーサ部により構成されたことを特徴とする請求項1に記載の引き違い戸の外止め装置。
【請求項3】
剥離構成部は、上下の板層間に間隔を隔てて並ぶように設けられてスペーサ部の一端面と他端面とに貫通する複数の中空部と、隣り合う中空部間において上下の板層を繋ぐ連結部とにより形成されたことを特徴とする請求項2に記載の引き違い戸の外止め装置。
【請求項4】
スペーサ高さ位置変更部は、前後の上レール間に位置した上枠の下面形成板を上下に貫通する貫通孔と、スペーサ部の上面より延長する支柱の外周面より突出して支柱の上下方向に間隔を隔てて形成された複数の係合部とを備え、貫通孔を通過させて下面形成板の上面と接触させる係合部を選択することによってスペーサ部の下面の高さ位置を変更したことを特徴とする請求項1に記載の引き違い戸の外止め装置。
【請求項5】
スペーサ高さ位置変更部は、上枠に取付けられた上スペーサ部と、上スペーサ部に対して着脱可能な下スペーサ部とを備え、スペーサ部の下面が、上スペーサ部の下面又は上スペーサ部に取付けられた下スペーサ部の下面により形成されたことを特徴とする請求項1に記載の引き違い戸の外止め装置。
【請求項6】
上スペーサ部は、前後の上レール間に位置する上枠の下面形成板にねじ止めされたことを特徴とする請求項5に記載の引き違い戸の外止め装置。
【請求項7】
取付部は、互いに向かい合う前側の上レールの内側面と後側の上レールの内側面とに突っ張るように摩擦接触してスペーサ部を上側レール装置に取付けるスペーサ部の前後の端面により形成されたことを特徴とする請求項1に記載の引き違い戸の外止め装置。
【請求項8】
互いに向かい合う前側の上レールの内側面と後側の上レールの内側面とからそれぞれ突出するように設けられてスペーサ部の下面に接触する下面支持面を備え、スペーサ部が下面支持面と上枠の下面とで挟まれたことを特徴とする請求項1に記載の引き違い戸の外止め装置。
【請求項9】
戸枠に取付けられた引き違い戸の上方向への移動を規制して引き違い戸の外れを防止するために引き違い戸の上端面と戸枠の上枠の下面との間に位置するように設けられるスペーサ部材において、スペーサ部と、スペーサ部を上枠又は上枠に設けられた上側レール装置に取付けるための取付部と、スペーサ部の下面の高さ位置を変更するためのスペーサ高さ位置変更部とを備えたことを特徴とするスペーサ部材。
【請求項1】
戸枠と、戸枠の下枠に左右に延長するよう設けられて下枠の前後に互いに平行に位置された前後一対の下レールからなる下側レール装置と、戸枠の上枠に左右に延長するよう設けられて上枠の前後に互いに平行に位置された前後一対の上レールからなる上側レール装置と、下端係合部と下レールとが係合するとともに上端係合部と上レールとが係合してレール上を移動可能なように戸枠に取付けられた前後一対の引き違い戸と、戸枠に取付けられた引き違い戸の上方向への移動を規制して引き違い戸の外れを防止するために引き違い戸の上端面と上枠の下面との間に位置するように上枠又は上側レール装置に取付けられたスペーサ部材とを備え、
上記スペーサ部材は、スペーサ部と、スペーサ部を上枠又は上側レール装置に取付けるための取付部と、スペーサ部の下面の高さ位置を変更するためのスペーサ高さ位置変更部とを備えたことを特徴とする引き違い戸の外止め装置。
【請求項2】
スペーサ高さ位置変更部は、上下に積層された複数の板層が剥離構成部を介して互いに剥離可能に形成されたスペーサ部により構成されたことを特徴とする請求項1に記載の引き違い戸の外止め装置。
【請求項3】
剥離構成部は、上下の板層間に間隔を隔てて並ぶように設けられてスペーサ部の一端面と他端面とに貫通する複数の中空部と、隣り合う中空部間において上下の板層を繋ぐ連結部とにより形成されたことを特徴とする請求項2に記載の引き違い戸の外止め装置。
【請求項4】
スペーサ高さ位置変更部は、前後の上レール間に位置した上枠の下面形成板を上下に貫通する貫通孔と、スペーサ部の上面より延長する支柱の外周面より突出して支柱の上下方向に間隔を隔てて形成された複数の係合部とを備え、貫通孔を通過させて下面形成板の上面と接触させる係合部を選択することによってスペーサ部の下面の高さ位置を変更したことを特徴とする請求項1に記載の引き違い戸の外止め装置。
【請求項5】
スペーサ高さ位置変更部は、上枠に取付けられた上スペーサ部と、上スペーサ部に対して着脱可能な下スペーサ部とを備え、スペーサ部の下面が、上スペーサ部の下面又は上スペーサ部に取付けられた下スペーサ部の下面により形成されたことを特徴とする請求項1に記載の引き違い戸の外止め装置。
【請求項6】
上スペーサ部は、前後の上レール間に位置する上枠の下面形成板にねじ止めされたことを特徴とする請求項5に記載の引き違い戸の外止め装置。
【請求項7】
取付部は、互いに向かい合う前側の上レールの内側面と後側の上レールの内側面とに突っ張るように摩擦接触してスペーサ部を上側レール装置に取付けるスペーサ部の前後の端面により形成されたことを特徴とする請求項1に記載の引き違い戸の外止め装置。
【請求項8】
互いに向かい合う前側の上レールの内側面と後側の上レールの内側面とからそれぞれ突出するように設けられてスペーサ部の下面に接触する下面支持面を備え、スペーサ部が下面支持面と上枠の下面とで挟まれたことを特徴とする請求項1に記載の引き違い戸の外止め装置。
【請求項9】
戸枠に取付けられた引き違い戸の上方向への移動を規制して引き違い戸の外れを防止するために引き違い戸の上端面と戸枠の上枠の下面との間に位置するように設けられるスペーサ部材において、スペーサ部と、スペーサ部を上枠又は上枠に設けられた上側レール装置に取付けるための取付部と、スペーサ部の下面の高さ位置を変更するためのスペーサ高さ位置変更部とを備えたことを特徴とするスペーサ部材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
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【図7】
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【図11】
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【図13】
【図14】
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【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2010−77630(P2010−77630A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−245498(P2008−245498)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000239714)文化シヤッター株式会社 (657)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000239714)文化シヤッター株式会社 (657)
【Fターム(参考)】
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