説明

引き違い扉の開閉装置

【課題】扉を揺らしたり、扉に衝撃を加えたりしてもフックが係合突片から外れるようなことがない引き違い扉の開閉装置を提供する。
【解決手段】ダンパー5の一端に係合段部29が形成されたフック3を軸支させるとともに、ダンパーのロッド21先端にも該フックを軸支させ、この一対のフック間に引張バネ2を張設する。そして該ダンパーをダンパーケース6に収納して、それを係合突片が設置された移動用レール内で摺動可能に設置したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引き違い扉を確実に、しかも容易に開閉させることができる引き違い扉の開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建具や家具に引き違い扉を設置する場合、二枚の扉を平行に走行させて開閉するようにしている。該引き違い扉は上部の鴨居と下部の敷居に平行な二本ずつの溝を刻設し、それぞれ内側の溝と外側の溝に扉を設置していたものである。かつての日本家屋における引き違い扉を代表する襖は、デザイン的に畳の部屋に適応しており、押入れの出し入れ口や部屋と部屋を分ける間仕切りとして多く使用されてきた。この襖は、細い木製の外枠と、該外枠の中に格子状に組み込まれた桟と、そして桟上に貼り付けられた襖紙からなるものである。襖は、鴨居の溝と敷居の溝間に置かれ、襖の下部が敷居の溝上を摺動することにより襖の開閉が行われる。しかしながら、襖では襖下部の細長い面が敷居の細長い面上を滑って走行するという面接触であるため、襖の開閉時に多少抵抗があった。それでも襖は、細い木製の外枠や桟、それに襖紙から構成された重量が軽いものであることから、比較的弱い力で開閉することができた。
【0003】
ところで今日の家屋では、洋風の間取りを取り入れるようになってきたため、部屋には畳を用いず、木の板や樹脂板を床一面に貼りつめたフローリングが多く用いられるようになってきている。このフローリングの部屋には、襖は適応しないため、襖の代わりに扉全体が木製であったり、木製の枠にガラスやプラスチックを嵌め込んだりした引き違い扉が採用されている。
【0004】
これら木製の引き違い扉は、襖に比べて重量が重くなっており、細長い扉下部と敷居の溝との面接触で走行させるには相当に強い力が必要であり、女性や子供では開閉しにくいものとなる。そこで木製の引き違い扉では、開閉が容易に行えるように、扉下部にローラーを取り付け、敷居に敷設したレール上を走行させたり、扉上部にローラーを取り付け、該ローラーで扉を吊るしながら鴨居に敷設したレール上を走行させたりして引き違い扉の円滑な開閉を行うようにしている。また一般のクローゼットや食器棚に引き違い扉を用いた場合も、やはり円滑な開閉を行うため、扉にローラーを取り付けることが多い。
【0005】
しかしながら、ローラーの設置で開閉が楽に行えるようになった引き違い扉では、扉の走行があまりにも良好すぎて、扉を閉めるときに、少しでも強い力で扉を走行させると、勢いの付いた扉は、引き違い扉を設置した横の外枠に衝突して大きな衝突音を発したり、外枠に跳ね返されて扉が少し戻って開いたりすることがあった。これは扉を閉めるときばかりでなく、扉を開けるときにも同様に大きな衝突音や扉の戻りが生じていた。
【0006】
さらに引き違い扉では、扉を急いで開けたり、閉めたりしたときに、扉の開位置(扉が完全に開いた状態)または閉位置(扉が完全に閉まった状態)の途中で止まってしまうことがある。また引き違い扉では、開閉時に或る程度の強さで扉を走行させれば、扉は完全に開く位置や閉まる位置が分かっている人が、いつもの適当な力で開閉したときに、その強さが少しでも弱いと扉は完全に開いたり閉まったりせずに途中で走行を停止し、少し開いた状態となることがあった。このように引き違い扉において、扉を少し開いた状態にしておくことは、見た目に好ましいものではないばかりでなく、空調設備で温度調節された空気が少し開いた扉から流出してしまうため、冷房や暖房の効果を減縮させてしまうものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
これら引き違い扉における問題点に鑑み、扉を勢いよく開閉しても扉の勢いを緩衝させて、扉の衝突音や扉の戻りをなくすとともに、扉を完全に閉位置や開位置まで走行させなくても、扉を閉位置や開位置に対して或る程度の位置まで走行させれば、その後は扉が自動的に閉位置や開位置まで完全に走行させることができるという引き違い扉の開閉装置が提案されていた。(特許文献1〜3)
【0008】
これら特許文献に記載された引き違い扉の開閉装置は、引張バネ(特許文献1では引張弾性体、特許文献2では付勢手段、特許文献3ではスプリングと称している)、ダンパー(特許文献1では緩衝ダンパー、特許文献2では制動手段、特許文献3では衝撃吸収手段と称している)、フック(特許文献1ではフック部材、特許文献2ではラッチ、特許文献3では係脱部材と称している)等から構成されており、一対のフックが扉の開用と閉用に設置されている。特許文献1、2では、一対のフックがダンパーのシリンダー端部とダンパーのロッド先端に設置されており、該フック間に引張バネがフック同士を引張る方向にバネ付勢している。また特許文献3ではロッドを相反する方向に向けて二組のダンパーが設置されており、それぞれのロッド先端にフックを取り付け、一対のフック間に引張バネが引張る方向にバネ付勢して取り付けられている。
【0009】
この引き違い扉の開閉装置を作動させるのがストライク(特許文献1では固定突起、特許文献2では係合ピン、特許文献3では固定部材と称している)である。特許文献1ではストライクを収納家具の上部又は床上に取り付け、引き違い扉の開閉装置を扉の上部又は下部に取り付けている。特許文献2ではストライクを扉の上部に取り付け、引き違い扉の開閉装置を家具の開口部に取り付けている。そして特許文献3ではストライクを戸枠に取り付け、引き違い扉の開閉装置を扉の上部に取り付けている。
【0010】
上記特許文献の引き違い扉の開閉装置では、引き違い扉の開閉装置を収納するケースに直線状のガイド溝(特許文献1ではケーシング本体の上辺、特許文献2では直線溝、特許文献3ではスライド孔と称している)が形成されており、該ガイド溝の両端に下方または横方に屈曲した係止溝(特許文献1、2では係止溝、特許文献3では湾曲部と称している)が形成されている。
【0011】
引き違い扉の開閉装置では、フックに形成された突起が係止溝内に位置していて、まだフックがストライクと係合していないときは、ダンパーのロッドが最長に突出しており、引張バネも最長で最強のバネ力となっている。このときは扉が完全な開状態でもなく、また閉状態でもないという所謂「待機状態」である。そして扉が閉位置方向、または開位置方向に移動してフックがストライクに当たると、ストライクがフックの突起を係止溝から係合を解除する。するとフックは引張バネに引張られて扉を開または閉方向に走行させる。このとき扉は、引張バネの強いバネ力で勢いよく走行するが、ダンパーがこの勢いを緩衝して、減速しながら扉を完全に開位置又は閉位置に移動させるようになっている。
【0012】
また扉を勢いよく閉めたり開けたりした場合も、ストライクがフックの突起を係止溝から係合を解除するとともに、ダンパーが扉の勢いを緩衝して扉を完全に開位置又は閉位置にするようになっている。
【0013】
【特許文献1】特許第4319687号公報
【特許文献2】特開2008−144567号公報
【特許文献3】特開2008−297861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
引き違い扉の開閉装置では、扉が閉位置や開位置に近づいて引き違い扉の開閉装置が作動しているとき、及び扉が完全に閉位置または開位置にあるときは、一方のフックとストライクは係合していなければならない。つまり扉を閉位置或いは開位置において、係合していなければならないフックがストライクから外れていると、フックが引張バネに引張られて一対のフック同士が近づいた状態となる。一対のフック同士が近づいてしまって、ストライクから外れたフックは突起が係止溝内になく、ストライクと係合していないため、扉を開けた後、再度扉を閉めたり開けたりしても今度はフックがストライクと係合できなくなり、扉をゆっくり走行させることができなくなるばかりでなく、扉を完全に開位置や閉位置に引き戻すこともできなくなる。
【0015】
このように係合していなければならないフックがストライクから外れてしまうと、外れたフックを再度ストライクに係合させるには非常に面倒な手間がかかるものである。つまり係止溝から外れたフックは、ケースよりも大きく突出してしまうため、扉を閉位置や開位置に戻しても大きく突出したフックの一部がストライクに当たってストライクをフックと係合する部分に入れることができなくなるからである。このようにフックがストライクから外れた場合、扉を設置場所、例えば押入れや家具から外し、手でフックを引張りながらフックの突起を係止溝内に戻した後、扉を待機状態の位置、即ちフックがストライクで作動しない位置に設置しなければならなかった。
【0016】
ところで従来の引き違い扉の開閉装置では、待機状態においてフックの突起が係止溝に係止される構造であるが、前述のように閉位置や開位置のところでフックが外れることがあった。その原因は、係止溝内を走行するフックの突起が円柱状であり、係止溝に対して滑りやすいからである。特に係止溝がガイド溝の移動方向に対して鈍角に形成されている場合は、さらに外れやすくなっている。引き違い扉の開閉装置では、扉を静かに開閉する場合は、フックがストライクから外れることはないが、扉が上下方向に揺らされたり、引き違い扉の開閉装置が取り付けられた近傍に衝撃が加えられたりすると、フックがストライクから外れることがあった。つまり扉が上下方向に揺らされると、フックの一部が家具や扉に当たってフックを作動させてしまうからであり、また扉に衝撃が加えられると、その衝撃でフックの突起が係止溝から滑り出てしまうからである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者は、前述のように従来の引き違い扉の開閉装置では、フックに取り付けた突起が円柱状であり、それが係止溝から滑るためにフックがストライクから外れることから、フックとストライクの係合部分を円柱状や傾斜にしなければ、フックとストライクは外れにくくなることに着目して本発明を完成させた。
【0018】
本発明は、扉の走行を弱めるダンパーと、扉を閉位置または開位置まで引き込む引張バネと、ダンパーのシリンダー端部及びロッド先端に回動自在に取り付けられていて扉の閉時または開時にストライクに係合するフックと、フックが摺動する摺動用レールからなる引き違い扉の開閉装置において、フックは端部に近い側面に凹部が形成され、該凹部の中央に近い入口がストライクと当接してフックを回動させる作動部となっているとともに、該作動部と対向する位置にストライクと係合する係合部が形成されており、またフックの他端は軸支部となっていて、フックは該軸支部でシリンダー端部およびロッド先端と回動自在に取り付けられており、さらに凹部が形成された反対側には軸支部側を低くした係合段部が形成されていて、しかも摺動用レールにはフックの係合段部と係合する係合突片が設置されていることを特徴とする引き違い扉の開閉装置である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、フック側面に係合段部が形成されていて、該係合段部の係合部分が面となっており、また係合段部と係合するレールの係合突片も係合部分が面となっていて、フックの係合段部とレールの係合突片の係合が面と面の面接触となるため、滑りにくくなって係合が堅固に行われる。従って、本発明の引き違い扉の開閉装置(以下、単に開閉装置という)は、扉を揺らしたり扉に衝撃を加えたりしてもフックと係合突片とは容易に外れるようなことがない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明開閉装置におけるダンパー、引張バネ、一対のフックの分解斜視図
【図2】本発明開閉装置を摺動用レールに組み込む状態を説明する斜視図
【図3】本発明開閉装置において、一対のフックと引張バネの取付状態を斜め下方から見た斜視図
【図4】(a)本発明開閉装置に用いるダンパーケースの平面図 (b)同正面図 (c)同底面図 (d)同左側面図 (e)同右側面図 (f)図(b)のA−A線断面図
【図5】(a)本発明開閉装置に用いるフックの平面図 (b)同正面図 (c)同底面図 (d)同左側面図
【図6】本発明開閉装置に用いる摺動用レールの右側面図
【図7】本発明開閉装置に用いる摺動用レールの平面図
【図8】図6のB−B線断面図
【図9】扉が移動している途中で開閉装置の作動前を説明する平面図
【図10】フックがストライクによって作動させられた直後を説明する平面図
【図11】フックがストライクによって作動させられた後を説明する平面図
【図12】フックがストライクによって作動させられる直後を説明する斜視図
【図13】フックがストライクによって作動させられた後の状態を説明する斜視図
【図14】本発明開閉装置を扉の上部に取り付ける説明図
【図15】家具を斜め下方からみた斜視図と引き違い扉を上方から見た斜視図
【図16】本発明開閉装置を作動させるストライクの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に基づいて本発明の開閉装置を説明する。
【0022】
本発明の開閉装置は、引張バネ2、一対のフック3、3、摺動用レール4及びダンパー5から構成されている。
【0023】
ダンパー5は、ダンパーケース6内に収納されており、ダンパーとダンパーケースで緩衝部1を構成している。
【0024】
ダンパーケース6には、一端に底壁7、他端に開口壁8が立設しており、その間を二本の連結竿9、10で連結している。底壁7と開口壁8間は、後述ダンパー5のシリンダー18が容易に収納できる長さとなっている。一本の連結竿9は、下方の端(図4(f)の左端)にあり、下部には摺動溝11が長手方向に刻設されていて、摺動溝11の外側が細長の摺動面12となっている。連結竿9の内側はシリンダー18の円周と略同一の凹弧となっている。もう一方の連結竿10は、連結竿9の反対側(図4(f)の右側)にあり、やはり、その内側は後述シリンダーの円周と略同一の凹弧となっている。底壁7の片側(図4(d)の右側)上部は摺動部13となっており、開口壁8の片側(図4(e)の左側)上部も摺動部14となっている。底壁7の外側には軸孔15を有する軸受部16が形成されており、また底壁7の内側には半円形の周り止め17が少し突出して形成されている。
【0025】
ダンパー5は、図1に示すように、円筒状のシリンダー18の一端が底部19、他端がロッド口20となっていて、ロッド口20からロッド21が出入自在に突出している。該ダンパーは、シリンダー18の底部19を前述ダンパーケース6の底壁7の内側に当接し、ロッド口20をダンパーケース6の開口壁8の内側に当接してダンパーケースに収納する。ロッド21は、開口壁8の開口から突出させる。このときシリンダー18の底部19に刻設された図示しない半円形の凹みがダンパーケース6の底壁7に突出して形成された半円形の回り止め17に嵌合してシリンダー18が回るのを防止するようになっている。ロッド21の先端には軸孔22を有する軸受部23が取り付けられている。
【0026】
フック3はロッド21の先端に取り付けるフックとダンパーケース6の底壁7の外側に取り付ける一対のものであるが、両フックとも左右対称の同一形状となっているため、一方のフックについては図5で説明し、もう一方のフックは説明を省略する。
【0027】
一対のフックの一方は、ロッド21の先端に取り付ける。そして、もう一方のフックは本来、ダンパー5の端部に取り付けるものであるが、市販ダンパーを使用する場合、これに取付加工を施さなければならないため、実施例ではダンパーケース6の底壁7を介して取り付けてある。
【0028】
フック3には、図5に示すように、端部に近い側面に中央に膨らみ24を有する凹部25が形成されている。凹部25は、中央に近い入口が中方(図5(a)左方)に入り込んでおり、膨らみ24と半長円形を呈している。この半長円形の入口に近い傾斜した部分が後述ストライクと当接してフックを回動させる作動部26である。
【0029】
そして凹部25には、作動部26と対向する位置に凹弧状となった係合部27が形成されている。係合部27は、ストライクに係合してフックを移動させるものである。
【0030】
フック3の上面他端には、一段と低くなった平らな面が形成されていて、ここに軸支部となる軸28が立設されている。一対のフックのうち、一方のフックの軸28は、前述ダンパーケース6に形成された軸受部16の軸孔15に挿入され、もう一方のフックの軸28は前述ロッド21に取り付けられた軸受部23の軸孔22に挿入される。
【0031】
実施例における軸支部は、フックに軸を立設し、該軸をダンパーケースに形成された軸受部の軸孔に挿入したり、ロッド先端に取り付けた軸受部の軸孔に挿入したりしたもので示したが、フックに軸孔を穿設し、該軸孔にダンパーケースやロッドに立設した軸を挿入してもよい。要は、軸支部とは、フックをフック取付部に対して回動自在にするものである。
【0032】
フック3の凹部25の反対側の側面には、軸28側を低くした段差が形成されており、該段差の部分が係合段部29となっている。該係合段部は細長い面となっていて後述摺動レールの細長い面の係合突片と係合するものである。またフック3の下面で作動部26の近傍には摺動突起30が突設されている。さらにフック3の下面にはバネ係止部31が形成されている。該バネ係止部の形成位置は、図5(d)に示すように軸28よりも係合段部29側となるところである。
【0033】
図3に示すように、引張バネ2は、両端がフック3のバネ係止部31に係止されている。該引張バネは、ダンパーのロッドがシリンダーの最奥まで引っ込んだ状態であっても、まだ引張り力を残す程度のバネ力で張設されている。引張バネ2を係止するフック3のバネ係止部31は、軸28よりも係合段部29側にあるため、引張バネ2をそれぞれのフックのバネ係止部31、31に係止させてフックを引張り状態にすると、図9に示すように、フック3、3は軸28を中心にしてそれぞれ係合段部29方向(矢印X方向)に回転するような付勢がなされている。
【0034】
摺動用レール4は、図6に示すように、断面略「コ」字形を立てた形状であり、一方の側壁32の上部には長手方向に係合突片設置溝33が形成されている。該係合突片設置溝には二個の細長いブロック状の係合突片34、34がネジにより固定されて設置されている。係合突片34の厚さは前述フック3の係合段部29における段差の高さと略同一となっていて、フックの係合段部と係合する部分は細長い面となっている。係合突片34の設置位置は、図9に示すように緩衝部、引張バネ、一対のフックからなる開閉装置本体Dを摺動用レール内に置いてダンパー5のロッド21を略最長に伸ばした状態のときに、一対のフック3、3の係合段部29、29に係合できる位置である。
【0035】
また摺動用レール4のもう一方の側壁35の上部には、長手方向に内方フランジ36が形成されている。該内方フランジの下面と摺動用レール4の底面37間は、前述ダンパーケース6の摺動面12と摺動部13(14)間の高さよりも僅かに広い間隔、即ちダンパーケース6がこの間を容易に摺動できるようになっている。つまりダンパーケースが摺動用レール内で上方に外れようとしても、ダンパーケースの摺動部13(14)が内方フランジ36の下面で抑えられ、上方に外れるのを拘束する。
【0036】
さらに摺動用レール4の底面37には、ガイド突条38が長手方向に形成されている。該ガイド突条の厚さは前述ダンパーケース6の摺動溝11の幅よりも僅かに小さく、またその高さはダンパーケース6の摺動溝11の深さ略同一となっている。従って、ダンパーケースの摺動溝11をガイド突条38に嵌合させたときに、ダンパーケース6がガイド突条38に沿って容易に摺動できるようになっている。また摺動用レール4の側壁35の内側とガイド突条38の間隔は、ガイド溝39となっており、前述フック3の摺動突起30が容易に摺動することができる間隔となっている。
【0037】
ガイド突条38には、部分的に切り欠き40が二箇所に形成されている。該切り欠きの形成箇所は、フック3の係合段部29を係合突片34に係合させたときにフック3の摺動突起30が位置するところであり、切り欠き40の大きさはフック3の摺動突起30が容易に通過できる大きさである。実施例では、切り欠き形成箇所のガイド突条に穴を穿設することにより切り欠きを形成してある。
【0038】
なお実施例では、係合突片を細長いブロック状のもので示したが、フックの係合段部を係合できるものであれば、ブロックに限らず如何なるものでもよい。例えば、摺動用レールの側壁に「コ」字形の切り込みを入れて、その部分を内方に屈曲させて係合突片にすることもできる。
【0039】
本発明では、ストライクが作動部に当接してフックを回動させ、また作動部に係合してフックを移動させるものであるが、ストライクが作動部と係合部に正確に当たらないと開閉装置の機能を十分に発揮できない。そのために摺動用レールにストライクガイド41を設置してある。ストライクガイドの設置位置は、図9に示すように、待機状態にあるフックの凹部25に略一致するところである。ストライクガイド41は図2に示すように、コ字形を立てた形状であり、入口がストライクの幅よりも十分に広く、中程にいくに従って徐々に狭くなっていて、中央がストライクよりも僅かに広い間隔となっている。ストライクガイドでは、ストライクが入口の幅広部で容易に進入し、その後、中央で位置決めされてフックに到達し、フックに対して正確な作動と係合を行わしめる。
【0040】
ここで本発明の開閉装置の組み立てについて説明する。先ず、前述の如く、ダンパー5をダンパーケース6に収納し、ロッド21の先端に軸受部26を取り付ける。そして一対のフック3、3に立設した軸33、33をそれぞれダンパーケース6の軸受部16の軸孔15とロッド21の先端に取り付けた軸受部23の軸孔22に挿入する。その後、それぞれのフック3、3のバネ係止部31、31に引張バネ2の両端部を係止する。
【0041】
そして図2に示すように、摺動用レール4内にストライクガイド41と上記のようにして組み立てられた開閉装置本体Dを摺動用レール4内に挿入する。このとき先ず一個の係合突片34を係合突片設置溝33の所定の設置位置にネジで取り付けておく。そして摺動用レール4の開口した部分からフック3の摺動突起30をガイド溝39に入れるとともに、ダンパーケース6の摺動溝11をガイド突条38に嵌合させて開閉装置本体Dを摺動用レール4内に設置する。その後、もう一つの係合突片34を所定の位置に置いてネジで固定し、さらにもう一個のストライクガイド41を所定の位置に取り付ける。
【0042】
このようにして摺動用レール4内の所定の位置に二個の係合突片34、34と、二個のストライクガイド41、41と、ダンパー5が収納されたダンパーケース6を設置する。その後、一対のフック3、3は引張バネ2のバネ力に抗してロッド21が略最長になるまで相反する方向に引き伸ばし、フック3、3の係合段部29、29を摺動用レール4の係合突片34、34に係合させる。
【0043】
図14に示すように、開閉装置を設置する扉Tには、予め摺動用レールを埋設できる溝Mを刻設しておき、所定の位置に開閉装置本体Dが設置された摺動用レール4を扉Tの溝M内に固定する。また図15に示すように家具Fの鴨居Kに刻設された二本の溝N、Nにフックを作動させるストライクSをそれぞれ二個ずつ取り付けておく。本発明に使用するストライクSは、図16に示すように、円柱を「コ」字形に屈曲させたものであり、左閉じ扉に対しては、基板Gに吊設した扉の中心側がストライクS1となり、これがフック3の作動部26に当たる。そして扉の長手方向外側となるストライクS2がフック3の係合部27と係合するようになっている。このストライクの取付位置は、待機状態から扉を走行させて開位置または閉位置に到達させる途中で、扉の勢いを弱めるに適した位置である。
【0044】
ここで本発明の開閉装置において扉が閉まる状態を説明する。図9〜13は開閉装置の作動の変化を説明するものである。図9〜13は、開閉装置Dが摺動用レール4に設置されており、該摺動用レールが扉に埋め込まれているものであるが、扉は省略してある。図中左方が閉方向である。
【0045】
図9:扉を閉方向に走行させる(矢印Y)。ここでの開閉装置本体Dは、ストライクS1、S2に到達する前の待機状態であり、一対のフック3、3の係合段部29、29が二個の係合突片34、34に係合している。このとき一対のフック3、3のバネ係止部31、31は軸28、28よりも係合段部29、29側にあって、フック同士が引張バネ2で引張られており、フック3、3は係合突片34方向(矢印X方向)に付勢されているため、フック3の係合段部29と係合突片34とは堅固に係合している。このときフック3下部の摺動突起30は摺動用レール4のガイド溝39に形成された切り欠き40内にある。
【0046】
図10:扉の走行が進んで一方のフック3(図10の左側のフック)がストライクに到達すると、内側のストライクS1がフック3の作動部26に当たり、係合段部29側に付勢されていたフック3を反係合段部側に回動(矢印Z)させる。このときフック3の摺動突起30はガイド突状38の切り欠き40に位置しているため、容易に回動し、フックの係合段部29が係合突片34から外れる。
【0047】
図11:フック3(図11の左側のフック)が係合突片34から外れると、外側のストライクS2がフック3の係合部27に係合する。するとフック3の摺動突起30は摺動レール4のガイド溝39内に入り、フック3は引張バネ2により引張られてガイド溝39内を摺動する。このフック3が取り付けられたダンパーケース6は摺動溝11が摺動用レール4のガイド突条38に嵌合しているため、ダンパーケースはガイド突条に沿って矢印W方向に移動し、一対のフック同士が近づくようになる。このときフック3は鴨居に固定されたS2のストライクに係合していることから、開閉装置の移動、即ち摺動用レールを介して設置した扉が閉方向(反W方向)に移動するようになる。
【0048】
図12、13は開閉装置の作動を分かりやすくさせた斜視図である。図12は、フック(図12の左側のフック)がストライクによって作動させられる直前を説明するもので、フック3に到達したストライクS1がフック3を回動させた状態である。
【0049】
図13は、ストライクS2に係合したフック3が引張バネ2に引張られて、フック3が、もう一方のフック3に完全に近づいた状態、即ち扉が完全に閉まった状態である。扉は引張バネ2により勢いよく閉まろうとするが、ダンパー5が勢いを緩衝して扉を徐々に閉めるようになる。また扉を勢いよく閉めた場合も、フックがストライクに到達してストライクによりフックが係合突片から外れると同時に、ダンパーが作用して扉の勢いを緩衝するものである。
【0050】
次に開閉装置を設置した扉を開ける状態について説明する。図11では扉が完全に閉まっており、この扉を図の右方(矢印W)に走行させると、フック3(図11の左側のフック)の係合部27は鴨居に固定されたストライクS2に係合しているため、ダンパー5のロッド21がシリンダー18から伸ばされてくるとともに、ダンパーケース6も係合突片34方向(図11の左方)へ移動する。摺動突起30は摺動レール4のガイド溝39内にあり、引張バネで係合段部方向に付勢されていたフック3は、フックの係合段部29が係合突片34を越えると、摺動突起30が切り欠き40内に入ってフック3が係合突片34方向に回動して、係合突片に係合する。するとフック3の係合段部29がストライクS2から外れ待機状態、即ち自由に走行する状態となる。
【0051】
なお、実施例では、扉の左方への閉めてから開ける状態について説明したが、扉の右方への閉めてから開ける状態は図9〜14の右側のフックとストライクが同様の作用を行うものである。
【産業上の利用分野】
【0052】
本発明は、押入れ、部屋の間仕切り、家具に限らず、二枚の扉が引き違いとなっているものであれば、如何なるところにも採用できることは言うまでもない。また本発明ではフックをロッド先端だけに設置し、引張バネをフックとダンパー端部に張設するようにすれば、肩開き扉や引出しの開閉装置としても使用できるものである。
【符号の説明】
【0053】
1 緩衝部
2 引張バネ
3 フック
4 摺動レール
5 ダンパー
6 ダンパーケース
7 底壁
8 開口壁
11 摺動溝
12 摺動面
13 摺動部
14 摺動部
15 軸孔
16 軸受部
18 シリンダー
19 底部
20 ロッド口
21 ロッド
22 軸孔
23 軸受部
24 凹部
25 凹部
26 作動部
27 係合部
28 軸
29 係合段部
30 摺動突起
31 バネ係止部
32 側壁
33 係合突片設置溝
34 係合突片
35 側壁
36 内方フランジ
37 底面
38 ガイド突条
39 ガイド溝
40 切り欠き
D 開閉装置本体
M 扉の溝
F 家具
T 家具の扉
K 鴨居
N 鴨居の溝
S ストライク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉の走行を弱めるダンパーと、扉を閉位置または開位置まで引き込む引張バネと、ダンパーのシリンダー端部及びロッド先端に回動自在に取り付けられていて扉の閉時または開時にストライクに係合するフックと、フックが摺動する摺動用レールからなる引き違い扉の開閉装置において、フックは端部に近い側面に凹部が形成され、該凹部の中央に近い入口がストライクと当接してフックを回動させる作動部となっているとともに、該作動部と対向する位置にストライクと係合する係合部が形成されており、またフックの他端は軸支部となっていて、フックは該軸支部でシリンダー端部およびロッド先端と回動自在に取り付けられており、さらに凹部が形成された反対側には軸支部側を低くした係合段部が形成されていて、しかも摺動用レールにはフックの係合段部と係合する係合突片が設置されていることを特徴とする引き違い扉の開閉装置。
【請求項2】
前記係合突片は、ブロックを摺動用レールの側壁に固定したものであることを特徴とする請求項1記載の引き違い扉の開閉装置。
【請求項3】
前記係合突片は、摺動用レールの側壁にコ字状の切り欠きを入れて、該切り欠きを内方に屈曲させたものであることを特徴とする請求項1記載の引き違い扉の開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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