説明

引出形回路遮断器の引出装置

【課題】 簡単な操作で遮断器本体を引出枠に取り付けたり取り外したりできるとともに、安全を確保できる構造の簡単な引出形回路遮断器の引出装置を提供する。
【解決手段】 遮断器本体のキャッチピン(7,7a)と、引出枠のスライド板(8)と、キャッチピンと係合する切欠き(11a)を有しスライド板上に設けられたキャッチレバー(11)と、奥行方向に延びる操作ねじ(9)と、操作ねじにねじ込まれた引出ナット(10)と、遮断器本体が接続位置と断路位置直前との間にあるときキャッチレバーの回転を阻止するストッパ手段(13)と、引出ナットに取り付けられるとともにスライド板の長孔(8c)に嵌め込まれ、長孔の奥側に位置するときキャッチレバーの回転を阻止するストッパピン(12,12a)とを有し、キャッチレバーの腕に形成された切欠きの手前側の縁(11c)と該キャッチレバーの先端部の縁(11f)とは共同して山形の縁を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引出形回路遮断器の引出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
引出形回路遮断器は、引出枠とこの引出枠内を移動する遮断器本体とからなり、遮断器本体は、引出枠内を奥側に移動することによって引出枠の端子と本体側の端子が接触する接続位置と、手前側に移動することによって両端子が所定の絶縁距離をもって開離した断路位置との間を移動することができる。このような引出形回路遮断器の引出装置の従来の技術が実開平6−68275号公報に開示されている。
【0003】
図6を参照してこの従来技術について説明する。この引出形回路遮断器は側板に固定された一対のレール50を有する取付枠51と、レール50に案内されて移動可能なスライド板52と、スライド板52の溝部に嵌め込まれるフック53を取り付けた遮断器本体54を有する。取付枠51は操作ボルト55、スライダ56、スライダ駆動レバー57、スライド板駆動レバー58及び引込レバー59が設けられており、遮断器本体54には係合ローラ60とスライド板52上のスライド板ローラ61が設けられている。
【0004】
操作ボルト55を遮断器本体54が挿入する方向に回転させると、先端部56aに操作ボルト55がねじ込まれているスライダ56が左右方向に移動し、スライダ56に軸支されているスライダローラ66がU字状溝57aの右縁を押してスライダ駆動レバー57を時計方向に回転させる。そして、スライダ駆動レバー57と共に回転するスライド板駆動レバー58のU字状溝58aの左縁がスライド板ローラ61を押して、スライド板52を右方向へ押して遮断器本体54を挿入させる。さらに操作ボルト55を回転させると、スライド板駆動レバー58のU字状溝58aとスライド板ローラ61との係合が解消するとともに、スライダ56の右端部のU字状溝56bと引込レバーローラ62とが係合して引込レバー59を反時計方向に回転させる。この引込レバー59の回転により、その先端に形成された係合溝59aが係合ローラ60を右方向へ引き込むことによって遮断器本体2を右方向へ移動させる。すなわち、スライド板52の移動はスライド板駆動レバー58の回転動作に代わって引込レバー59の回転動作によって行われる。このように引込レバー59を用いるのは、引出主接触子63が主回路端子64と接触して摺動するときの接圧ばね65の作用力による接触圧力に対抗するためであるが、本願発明には直接関係ないため詳細説明を省略する。
【特許文献1】実開平6−68275号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した従来の引出形回路遮断器は、遮断器本体54を引出枠51に収納するとき又は取り外すとき、遮断器本体54を持ち上げて遮断器本体54に取り付けられているフック53をスライド板52の溝部に嵌め込む必要があった。又は、特許文献1に開示されていないが、嵌め込む代わりに、遮断器本体に孔の明いた固定片を設けるとともにスライド板にねじ孔を設けてねじで固定する必要があった。
したがって、本願発明は、簡単な操作で遮断器本体を引出枠に取り付けたり取り外したりできるとともに、安全を確保できる構造の簡単な引出形回路遮断器の引出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の問題を解決するために、請求項1の発明は、引出枠(6)と引出枠に設けられたガイド手段(5)に沿って水平移動する遮断器本体(3)とを有する引出形回路遮断器の遮断器本体を手前に位置する断路位置と奥に位置する接続位置との間を移動させる引出装置において、遮断器本体の底部に設けられたキャッチピン(7,7a)と、遮断器本体の底部と対向するように引出枠に設けられた遮断器本体の移動方向にスライド可能なスライド板(8)と、キャッチピンと係合する切欠き(11a)が形成された手前方向に延びる腕を有し、復帰ばねによって係合が実現する方向に付勢されるスライド板上に設けられたキャッチレバー(11)と、奥行方向に延びるとともに遮断器本体の移動方向への移動が阻止されるように引出枠に設けられた操作ねじ(9)と、操作ねじにねじ込まれた引出ナット(10)と、遮断器本体が接続位置と断路位置直前との間にあるときキャッチレバーのキャッチピンとの係合が解消する方向への回転を阻止するストッパ手段(13)と、引出ナットに取り付けられるとともにスライド板の奥行方向に長い長孔(8c)に嵌め込まれ、長孔の奥側に位置するときはキャッチレバーの回転を阻止し手前側にあるときは該回転を阻止しないストッパピン(12,12a)とを有し、キャッチレバーの腕に形成された切欠きの手前側の縁(11c)と該キャッチレバーの先端部の縁(11f)とは共同して山形の縁を形成し、キャッチピンが山形の縁を移動するときはキャッチレバーを復帰ばねに抗する方向に付勢させることとしている。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明の引出形回路遮断器の引出装置は、操作ねじを回転したときの引出操作において、ストッパピンがスライド板の長孔の手前側の縁を押してスライド板を断路位置方向に移動させ、スライド板と共に移動するキャッチレバーの切欠きの奥側の縁がキャッチピンを押すことによって遮断器本体が断路位置方向に移動する。一方、操作ねじを回転させるのではなく、遮断器本体を手前方向に付勢したとき、キャッチピンが切欠きの手前側の縁を押してキャッチピンと切欠きとの係合が解消する方向にキャッチレバーを付勢するが、キャッチレバーはストッパ手段と係合することによって係合解消方向に回転しない。すなわち、断路位置に達するまでは、操作ねじを回転しなければ遮断器本体を移動させることができない。そして、断路位置に達するとストッパ手段との係合が解消してキャッチレバーの回転が可能となり、遮断器本体を手前方向に移動させて、引出枠から取り外すことができる。一方、遮断器本体を挿入するときは、キャッチピンがキャッチレバーの腕の先端部の縁を移動してキャッチレバーを復帰ばねに抗して回転させるため、キャッチピンがキャッチレバーの切欠きに嵌まり込む。すなわち遮断器本体が断路位置となる。この状態で操作ねじを回転すると、まずストッパピンが長孔の奥側に移動してキャッチレバーの回転を阻止できる位置になる。さらに、操作ねじを回転すると、切欠きの手前側の縁がキャッチピンを奥側に押す作用の反作用として、キャッチピンと切欠きとの係合が解消する方向に付勢される。しかし、ストッパピンによってキャッチレバーの回転が阻止されているため、切欠きの手前側の縁がキャッチピンを押して遮断器本体を接続位置方向に移動させる。
【0008】
以上のような動作によって、請求項1の発明は、遮断器本体を水平移動させるだけの簡単な操作で断路位置への取付、取外しができ、収納後も遮断器本体をねじなどでスライド板に固定する必要がない。また、遮断器本体が断路位置にあるとき以外は操作ねじを回転しなければ遮断器本体を引出し方向に移動できないため、不用意に遮断器本体に直接力を加えて移動させようとしても移動しない。このように、取扱いが簡単で構造が簡単な上、安全を確保できる引出装置を提供できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施の形態を、図1ないし図5に示されている実施例において説明する。
図2、図3及び図4を参照して、本実施例の引出装置を装着する引出形回路遮断器は、本体端子1と底部に車輪2を有する遮断器本体3及び枠側端子4と車輪2が移動する左右方向のレール5を設けた引出枠6からなる。遮断器本体3は、引出枠6の奥側、図において右側、に位置して本体端子1と枠側端子4が接触する接続位置と、手前側、図において左側、に位置して本体端子1と枠側端子4が所定の絶縁距離をもって開離した断路位置と、の間で図において左右方向に移動できる。
【0010】
遮断器本体3を左右方向に移動させる本実施例の引出装置は、遮断器本体3の底部に取り付けられたキャッチピン7並びにいずれも引出枠6の底部に取り付けられたスライド板8、操作ねじ9、ナット10及びキャッチレバー11を有する。
【0011】
スライド板8は、平面から見たとき略矩形であり、その四辺から垂直方向に壁が形成されている。また、操作ねじ9は左右方向に延び、スライド板8の左右の垂直壁8aに形成された丸孔を挿通して、左右方向に移動しないように取り付けられている。さらに、ナット10は操作ねじ9にねじ込まれており、このナット10には引出枠6の底面と平行にストッパピン12が取り付けられ、ストッパピン12はスライド板8の垂直壁8bに形成された左右方向に長い長孔8cに嵌め込まれている。また、キャッチレバー11は図示されていない復帰ばねによって時計方向に付勢されてスライド板8上に回転自在に支持されており、支持点から左方向に延びる腕の上縁には切欠き11aが形成されている。図4において切欠き11aにはキャッチピン7がはまり込んでいる。
【0012】
図4を参照して、操作ねじ9を利用して遮断器本体3を奥側から断路位置方向に移動させる動作について説明する。操作ねじ9を回転すると、ストッパピン12とスライド板8の長孔8cの上下の内縁とが係合するため、ナット10は回転せず操作ねじ9上を左方向に移動する。この移動により、ストッパピン12が長孔8cの左縁を押してスライド板8と共にキャッチレバー11を左方向へ移動させる。この移動により、キャッチレバー11の切欠き11aの右内縁11bに押されてキャッチピン7が遮断器本体3と共に左方向へ移動する。
【0013】
次に、図4を参照して、操作ねじ9を利用しなければ遮断器本体3を奥側から断路位置方向に移動させることができないという機能について説明する。遮断器本体3に直接左方向へ力を加えると、キャッチピン7が鎖線で示したキャッチピン7aの位置までわずかに移動し、切欠き11aの左上方に向かう左内縁11cを押してキャッチレバー11を反時計方向に付勢する。しかし、キャッチレバー11の下縁に形成された突起11dが引出枠6の底部に設けられているストッパ13と当接するため、キャッチレバー11は回転しない。すなわち、キャッチピン7がキャッチレバー11の左先端の頂部11eを乗り越えることができないため、遮断器本体3を左方向に移動させることができない。ストッパ13は、遮断器本体3が接続位置と断路位置の直前の位置との間にあるときだけキャッチレバー11の反時計方向の回転を阻止して、操作ねじ9を使用しなければ遮断器本体3を取り出せないように連続的に設けられている。
【0014】
さらに、図4を参照して、操作ねじ9を利用して遮断器本体3を奥側に移動させる動作について説明する。操作ねじ9を逆回転すると、ストッパピン12が鎖線で示した12aの位置まで移動して、さらに回転を続けると長孔8cの右縁を押してスライド板8と共にキャッチレバー11が右方向へ移動する。この移動により、切欠き11aの左内縁11cが鎖線で示されている位置にあるキャッチピン7aを押して遮断器本体3を右方向へ移動できる。このとき、キャッチピン7aを押すときの反作用でキャッチレバー11が反時計方向に付勢されるが、キャッチレバー11の下縁が鎖線で示した位置にあるストッパピン12aと係合するためキャッチレバー11は回転しない。
【0015】
図5及び図1を参照して、遮断器本体3を断路位置に移動させて引出枠6から取り外すときの動作について説明する。図5を参照して、操作ねじ9を回転させて遮断器本体3を断路位置まで移動させると、スライド板8は図示されていないストッパによって移動が停止し、操作ねじ9をさらに回転させることができない。この断路位置にあっては、キャッチレバー11はストッパー13によって回転が阻止されない位置にあり、遮断器本体3に直接左方向へ力を加えると、鎖線で示されている位置にあるキャッチピン7aが切欠き11aの左内縁11cを押してキャッチレバー11を反時計方向に回転させる。そして、図1を参照して、相対的に、キャッチピン7が頂部11eを乗り越えるため、遮断器本体3を引出枠6から取り外すことができる。
【0016】
次に、図1及び図5を参照して、取り外した遮断器本体3を引出枠6に取り付けて奥側に移動する動作について説明する。図1を参照して、キャッチレバー11の先端部には切欠き11aの左上方に向かう左内縁11cと共同して山形の縁を形成する右上方へ向かう先端縁11fが形成されている。遮断器本体3を右方向へ移動させると、キャッチピン7がキャッチレバー11の先端縁11fを押してキャッチレバー11を反時計方向へ回転させる。そして、相対的に頂部11eを乗り越えて、図5においてキャッチピン7が鎖線で示したキャッチピン7aの位置となる。この状態で操作ねじ9を回転させるとスライド板8が停止した状態で、ストッパピン12が長孔8cの右縁の鎖線で示されているストッパピン12aの位置まで移動する。そして、さらに操作ねじ9を回転させると、長孔8cの右縁を押してキャッチレバー11を右方向に移動させ、切欠き11aの左内縁11cを介して鎖線で示されている位置にあるキャッチピン7aを押して遮断器本体3を右方向へ移動させる。この移動において、切欠き11aの左内縁11cにおける反作用によって反時計方向に付勢されるキャッチレバー11は、その下縁が鎖線で示されている位置にあるストッパピン12aと係合して回転しないため移動は継続する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本願発明による引出形回路遮断器の引出装置の実施例の、遮断器本体を断路位置で取り出すとき又は取り付けるときの部分側面図である。
【図2】図1の実施例の引出装置を設けた引出枠の(a)平面図及び(b)側面図である。
【図3】図1の実施例の引出装置を設けた遮断器本体の側面図である。
【図4】引出し操作途中における図1相当図である。
【図5】断路位置に達したときの図1相当図である。
【図6】従来の引出形回路遮断器の引出装置を示す側面図である。
【符号の説明】
【0018】
1 本体端子
2 車輪
3 遮断器本体
4 枠側端子
5 レール
6 引出枠
7,7a キャッチピン
8 スライド板
8a 垂直壁
8b 垂直壁
8c 長孔
9 操作ねじ
10 ナット
11 キャッチレバー
11a 切欠き
11b 右内縁
11c 左内縁
11d 突起
11e 頂部
11f 先端縁
12,12a ストッパピン
13 ストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
引出枠(6)と前記引出枠に設けられたガイド手段(5)に沿って水平移動する遮断器本体(3)とを有する引出形回路遮断器の前記遮断器本体を手前に位置する断路位置と奥に位置する接続位置との間を移動させる引出装置において、
前記遮断器本体の底部に設けられたキャッチピン(7,7a)と、
前記遮断器本体の底部と対向するように前記引出枠に設けられた前記遮断器本体の移動方向にスライド可能なスライド板(8)と、
前記キャッチピンと係合する切欠き(11a)が形成された手前方向に延びる腕を有し、復帰ばねによって前記係合が実現する方向に付勢される前記スライド板上に設けられたキャッチレバー(11)と、
奥行方向に延びるとともに遮断器本体の移動方向への移動が阻止されるように前記引出枠に設けられた操作ねじ(9)と、
前記操作ねじにねじ込まれた引出ナット(10)と、
遮断器本体が接続位置と断路位置直前との間にあるとき前記キャッチレバーの前記キャッチピンとの前記係合が解消する方向への回転を阻止するストッパ手段(13)と、
前記引出ナットに取り付けられるとともに前記スライド板の奥行方向に長い長孔(8c)に嵌め込まれ、前記長孔の奥側に位置するときは前記キャッチレバーの回転を阻止し手前側にあるときは該回転を阻止しないストッパピン(12,12a)とを有し、
前記キャッチレバーの腕に形成された前記切欠きの手前側の縁(11c)と該キャッチレバーの先端部の縁(11f)とは共同して山形の縁を形成し、前記キャッチピンが前記山形の縁を移動するときは前記キャッチレバーを前記復帰ばねに抗する方向に付勢させることを特徴とする引出形回路遮断器の引出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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