説明

引戸の吊り下げ装置

【課題】引戸のスムーズな開閉動作が得られると共に耐久性に優れた引戸の吊り下げ装置を提供する。
【解決手段】引戸1の上方に位置するレール20と、該レール20に無端循環路のボールを介してスライド可能に取り付けられたスライダ21と、該スライダ21と引戸1とを連結する連結手段を備える。前記連結手段は、引戸1に上方又は厚さ方向の力が作用した際に、該引戸1の上方の移動又は厚さ方向の揺動を許容してその力がスライダ20に伝達されないようにする緩衝機構を備える。引戸側連結具23がスライダ側連結具22に対して上方に所定量移動でき且つ揺動支軸34を中心として揺動できるように構成されて、スライダ側連結具22と引戸側連結具23が緩衝機構を構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引戸が吊り下げられた状態で開閉できるようにするための引戸の吊り下げ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の引戸の吊り下げ装置としては、天井に固定されたレール上を走行するスライダにコの字状の連結部材(連結手段)を介して引戸を吊り下げるようにしたものが公知である(下記特許文献1参照)。このスライダとレールの間には無端循環路が形成されていて複数のボールが介装されており、スライダがレール上を走行する際に無端循環路内をボールが順次移動する。従って、引戸の開閉動作に要する力が小さくて済み、引戸をスムーズに開閉することができるという利点がある。
【0003】
しかしながら、この引戸の吊り下げ装置を使用して引戸を繰り返し開閉動作させると、時として引戸がスムーズに開閉しない現象が起こった。その原因を探求すると、無端循環路のボールの損傷が原因であることが判明した。即ち、引戸はレールに吊り下げられる構造であるため、無端循環路のボールは引戸の自重に耐えうるように配置されている。しかしながら、引戸には上方の力が作用する場合がある。例えば、引戸を強引に開けようとすると引戸の戸尻側が浮き上がろうとして引戸の戸尻側には上方の力が働く場合がある。また、引戸にその厚さ方向の力が作用して横振れ(レールを中心とした揺動動作)が発生する可能性もある。引戸はコの字状の連結部材を介してスライダに直結されているため、このような上方の力や厚さ方向の力が引戸に不用意に作用すると、その力が連結部材を介してスライダに伝達されてボールには想定外の力が働くこととなり、その結果、ボールが損傷するのである。この上方又は厚さ方向の力は引戸を長期に亘って使用している間に偶発的に生じるものであるため、結果として、上記従来の吊り下げ装置は耐久性が低いということになり、耐久性の向上が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−184410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それゆえに本発明は上記従来の問題点に鑑みてなされ、引戸のスムーズな開閉動作が得られると共に耐久性に優れた引戸の吊り下げ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決すべくなされたものであって、本発明に係る引戸の吊り下げ装置は、引戸の上方に位置するレールと、該レールに無端循環路のボールを介してスライド可能に取り付けられたスライダと、該スライダと引戸とを連結する連結手段を備えた引戸の吊り下げ装置であって、前記連結手段は、引戸に上方又は厚さ方向の力が作用した際に、該引戸の上方の移動又は厚さ方向の揺動を許容してその力がスライダに伝達されないようにする緩衝機構を備えていることを特徴とする。
【0007】
該構成の引戸の吊り下げ装置にあっては、スライダが無端循環路のボールを介してレールを走行するので、引戸を軽い力で開閉操作することができる。しかも、スライダと引戸とを連結する連結手段に緩衝機構が備えられているので、万一引戸に不用意に上方あるいは厚さ方向(即ち前後方向)の力が作用しても、引戸が上方に移動したり厚さ方向に揺動したりすることによってその上方あるいは厚さ方向の力が吸収緩和される。従って、引戸に作用する上方あるいは厚さ方向の力がスライダにダイレクトに伝達されるということがなく、無端循環路のボールの損傷が防止される。
【0008】
特に、連結手段は、スライダに一体とされるスライダ側連結具と、引戸に一体とされる引戸側連結具を備え、スライダ側連結具と引戸側連結具のうち一方には上下方向に伸びる凸部が設けられ且つ他方には前記凸部が挿入されると共に該凸部との間に少なくとも引戸の厚さ方向に所定の隙間を有する凹部が形成されて、引戸側連結具はスライダ側連結具に対して上下方向に移動可能に構成され、且つ、引戸側連結具は被支持面を有し、スライダ側連結具は前記被支持面を下側から支持すると共にレールの長手方向の軸線を中心として回動可能に支持する支持面を有して、引戸側連結具は前記軸線を中心としてスライダ側連結具に対して揺動可能に構成されていることが好ましい。該構成によれば、引戸に上方の力が作用した際には引戸側連結具が引戸と共にスライダ側連結具に対して上方に移動するので、スライダへの上方の力の伝達が防止される。また、引戸に厚さ方向の力が作用した際には、引戸側連結具がスライダ側連結具に対してレールの長手方向の軸線を中心として揺動することになり、引戸の下部が横振れしてもスライダには厚さ方向の力あるいは回転トルクが伝達されない。
【0009】
更に、前記隙間には弾性材が介装されていることが好ましい。凸部と凹部の間には少なくとも引戸の厚さ方向に所定の隙間が存在しているので、引戸側連結具がスライダ側連結具に対してレールの長手方向の軸線を中心としてスムースに揺動できるが、その隙間に弾性材を介装することによって凸部と凹部の間のがたつきが抑制されて両者の衝突音も抑制できる。
【0010】
また、引戸側連結具は、引戸に取り付けられる下側構成部材と、該下側構成部材とネジ止めされる上側構成部材を備え、該上側構成部材に前記凸部又は凹部と前記被支持面が形成されていることが好ましい。上側構成部材と下側構成部材に分離した構造とすることで、施工時において、上側構成部材をスライダ側連結具に組み付けておく一方、引戸には下側構成部材を予め取り付けておくことができる。そして、引戸をレールに吊り下げる際に上側構成部材と下側構成部材をネジ止めして一体化する。引戸側連結具はスライダ側連結具に対して上下方向の移動と厚さ方向の揺動が可能な構造であるので、その引戸側連結具を上側構成部材と下側構成部材に上下分離した構造とすることで、上側構成部材を予めスライダ側連結具に組み付けておくことができ、上下分離しない一体構造に比して施工時の作業負担を軽減することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、レールとスライダとの間に無端循環路のボールを介在させる構造とすることによって引戸のスムーズな開閉動作が得られ、しかも、引戸に不用意に上方又は厚さ方向の力が作用しても連結手段の緩衝機構によってボールの損傷を防ぐことができて耐久性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態における引戸の吊り下げ装置の使用状態を示す正面図であって引戸が全閉の状態を示す。
【図2】同吊り下げ装置の使用状態を示す正面図であって引戸が開いた状態を示す。
【図3】同吊り下げ装置の使用状態を示す断面図。
【図4】同吊り下げ装置の要部を示す正面図。
【図5】同吊り下げ装置の要部断面図。
【図6】同吊り下げ装置の施工途中の状態を示す断面図。
【図7】同吊り下げ装置の使用状態において引戸の戸尻側が浮き上がった状態を示す正面図。
【図8】同吊り下げ装置の使用状態を示す断面図であって、引戸が上方に所定量移動した状態を示す。
【図9】本発明の他の実施形態における引戸の吊り下げ装置の施工途中の状態を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態にかかる引戸の吊り下げ装置について図1〜図8を参酌しつつ説明する。本実施形態の引戸の吊り下げ装置は、特に防火用の引戸に適したものであって、引戸1の上方に位置するレール20と、該レール20上をスライドするスライダ21と、該スライダ21と引戸1を連結する連結手段を備えている。
【0014】
図1乃至図3にその使用状態が示されており、上枠2に引戸1の開閉方向に沿って伸びる長尺状のレールベース9が取り付けられている。該レールベース9は、本実施形態では略水平状態に取り付けられており、その形状は具体的には、図3に示すように縦板部9aと横板部9bとからなる断面視略L字状であって、その縦板部9aにおいて上枠2にネジ止めされている。また、横板部9bの上面には、その先端側にレールベース9よりも少し短い長さを有する略角棒状のレール20がネジ止めされ、基端側には上部にラック8を保持するラック保持具10がネジ止めされている。
【0015】
また、本実施形態の引戸1には引戸クローザ3と制動装置が使用されている。即ち、図1及び図2に示すように、レール20の戸先側の端部には引戸クローザ3が取り付けられていて、そのロープ4が引戸1と共に移動する部材(後述する上側ブラケット50)に連結されており、図2のように引戸1を開くと引戸クローザ3からロープ4が引き出されて内部のゼンマイバネ5が蓄勢される。その蓄勢力によって引戸1には閉扉方向の閉じ力が付与されて自動的に引戸1が閉じることになる。更に、制動装置は、引戸1と共に移動する制動装置本体6と前記ラック8とから構成され、制動装置本体6にはラック8と噛み合うピニオンギヤ7(図3に二点鎖線にて示す)と、該ピニオンギヤ7の中心軸(図示省略)に制動力を付与するブレーキ部(図示省略)が設けられている。該ピニオンギヤ7と中心軸との間には一方向クラッチ(図示省略)が介在されていて、引戸1を開く時にはピニオンギヤ7は空転する一方、引戸1が閉じる時にはピニオンギヤ7は中心軸と一体に回転し、ブレーキ部から中心軸を介してピニオンギヤ7に所定の制動力(負荷)が伝達される。従って、引戸1が開く時には制動装置から制動力を受けず、引戸1が閉じる時には制動装置から制動力を受けてゆっくりと閉じていく。
【0016】
一方、レール20には図3に示すように上方から被さるようにしてスライダ21が装着されている。該スライダ21とレール20との間には図示しない無端循環路が形成されていて、該無端循環路には図示しない複数のボールが充填されている。また、レール20の下方には引戸1が位置していて、レール20の幅方向の中心と引戸1の厚さ方向の中心とが略同一面に位置している。そして、引戸1とスライダ21が緩衝機構を有する連結手段によって連結されている。尚、スライダ21は引戸1の戸先側と戸尻側に一対配置され、従って、連結手段も一対設けられている。
【0017】
連結手段の詳細について図3乃至図5を用いて説明すると、連結手段は、引戸1に上方又は厚さ方向の力が作用した際に、該引戸1の上方の移動又は厚さ方向の揺動を許容してその力がスライダ21に伝達されないようにする緩衝機構を備えている。具体的には、連結手段は、スライダ21に取り付けられて一体とされるスライダ側連結具22と引戸1に取り付けられて一体とされる引戸側連結具23を備えている。該引戸側連結具23は、スライダ側連結具22に対して通常の吊り下げ状態から上方に所定量移動でき且つレール20の長手方向の軸線を中心として揺動できるように構成されていて、これらのスライダ側連結具22と引戸側連結具23が緩衝機構を構成している。
【0018】
詳細に説明すると、スライダ側連結具22は、スライダ21の上面にネジ止めされる平板状のベース板30と、該ベース板30の上面にネジ止めされる支持部材31とを備えている。支持部材31は、ベース板30にネジ止めされる平板状の取付部32と、該取付部32の上面中央部から上方に伸びる上下方向の軸線を有する円筒状の支軸部33(凸部)とを備えている。該支軸部33の基端部には水平方向に貫通する横孔が形成されていて、該横孔には揺動支軸34が挿入されている。該揺動支軸34はレール20の長手方向に沿った軸線を有していて、全体として円柱状であってその両端部は横孔から突出していて取付部32の上面に当接している。また、揺動支軸34の軸線方向の中央部には一段小径となった小径部34aが形成され、揺動支軸34の先端部にワッシャー35を介して螺入されたボルト36の下端部(先端部)が小径部34aに当接することにより、揺動支軸34の軸線方向の位置が固定されると共に下方へ押圧されて側方への抜けが防止されている。
【0019】
一方、引戸側連結具23は、引戸1に取り付けられる下側構成部材と、該下側構成部材とは分離独立した構成であってそれにネジ止めされて一体となる上側構成部材とを備えている。下側構成部材は、縦板部40aと横板部40bとからなる断面視略L字状の下側ブラケット40から構成され、その横板部40bが引戸1の上面にボルト41によりネジ止めされる。尚、横板部40bには引戸1の厚さ方向に長い長孔42が一対形成されていて該長孔42にボルト41が挿通される。また、縦板部40aは横板部40bの前端部から略直角に上方に延設されて、その略中央には吊り下げ用孔43が形成されると共にその両側にはボルト44が挿通する挿通孔45(図9参照)が形成されており、該挿通孔45を介してボルト44を前側から挿通することによって上側構成部材にネジ止めされる。
【0020】
また、上側構成部材は、縦板部50aと横板部50bとからなる断面視略L字状の上側ブラケット50を備えている。該上側ブラケット50の縦板部50aは横板部50bの前端部から下方に略直角に延設され、その下部には前方に略水平に突出するように吊り下げピン51が装着されている。該吊り下げピン51が下側ブラケット40の吊り下げ用孔43に挿入されている。また更に、横板部50bの下面には受け座52が取り付け固定されている。該受け座52は、全体として筒状であって、横板部50bの下面にその上面が当接する本体部53と、該本体部53の上面から上方に突設された係合突部54とから構成されている。前記横板部50bには貫通孔が形成されていて、該貫通孔に受け座52の係合突部54が下方から挿入されている。また、受け座52には上下方向の軸線を有する貫通孔55(凹部)が形成されていて、該貫通孔55には前記支持部材31の支軸部33が下方から挿入されている。該支軸部33の先端部は貫通孔55(受け座52の上面)から上方に所定量突出しており、前記ワッシャー35は受け座52の上面から上方に所定距離離間している。従って、受け座52を含む上側構成部材はスライダ21に対して支軸部33に沿って所定量上方に移動可能である。尚、貫通孔55は支軸部33との間に環状の隙間を形成するようにそれより大径に形成されていて、その隙間には円筒状の弾性材56が介装されている。該弾性材56は例えばゴム製であって、径方向に圧縮変形可能である。
【0021】
そして、受け座52の下面(本体部53の下面)にはレール20の長手方向に沿ってV字状の溝57が全長に亘って形成されていて、該V字状の溝57に前記揺動支軸34の外周面が係合している。即ち、V字状の溝57の両壁面が被支持面であり、揺動支軸34の外周面が、被支持面を下側から支持すると共にレール20の長手方向の軸線を中心として回動可能に支持する支持面である。受け座52の貫通孔55と支持部材31の支軸部33との間には所定の隙間が形成されていて該隙間には弾性材56が介装されているので、常時は弾性材56によって両者のがたつきが防止されている一方、弾性材56が径方向(その厚さ方向)に圧縮変形することにより、受け座52を含む上側構成部材が揺動支軸34の軸線を中心として所定角度範囲で揺動可能である。
【0022】
尚、図3に示すように、側面視において、引戸1、レール20、スライダ21、揺動支軸34、V字状の溝57及び支持部材31の支軸部33が上下方向に一直線状に並んでおり、また、図4及び図5に示すように、正面視において、スライダ21の走行方向(レール20の長手方向)の中央に支持部材31の支軸部33が位置すると共に上側ブラケット50の吊り下げピン51も位置している。
【0023】
以上のように構成された引戸の吊り下げ装置の施工手順の一例について説明すると、まず、各スライダ21にそれぞれスライダ側連結具22をネジ止めすると共に該スライダ側連結具22に上側構成部材を組み付ける。そして、図6に示すようにレール20を取り付けたレールベース9を上枠2にネジ止めして取り付け、そのレール20に、予め組み立てておいた一対のスライダ21を装着する。引戸1には一対の下側ブラケット40をネジ止めしておき、上側ブラケット50の吊り下げピン51を下側ブラケット40の吊り下げ用孔43に挿入するようにしながら、両吊り下げピン51に引戸1を下側ブラケット40を介して吊り下げる。その後、ボルト44で上側ブラケット50に下側ブラケット40をネジ止めする。このように、スライダ21に予め上側ブラケット50を含む上側構成部材をセットしておくことができるので、引戸1を容易に吊り下げ設置することができる。尚、図1及び図2のように、戸先側の上側ブラケット50の縦板部50aに制動装置本体6を前側からネジ止めする。
【0024】
上記構成の引戸の吊り下げ装置にあっては、無端循環路のボールを介してレール20にスライダ21が組み付けられているので、重い引戸1を小さな力で楽に開くことができる。そして、引戸1が自閉する際の動きもスムーズであるが、制動装置を備えているので、重い引戸1が勢いよく閉じるということがなく安全であって且つ全閉の際の衝突音も抑制される。
【0025】
また、引戸1を勢いよく開けると、その開け始めに特に引戸1の戸尻側には上方の力が作用する場合があるが、図7のように引戸1の戸尻側が僅かに浮き上がることでその力が吸収緩和される。即ち、引戸1の戸尻側に上方の力が作用した場合には、図8のように戸尻側の引戸側連結具23が引戸1と共に上昇する一方でスライダ21は上昇しない。常時は図3のように引戸1の自重は揺動支軸34によって支えられており、従って、揺動支軸34は受け座52のV字状の溝57に係合してその壁面に当接している。そして、引戸1が上昇すると揺動支軸34から受け座52が上方に離れるので、スライダ21には上方の力が作用せず、無端循環路のボールの損傷を防止することができる。尚、引戸1の戸先側に上方の力が作用した場合も同様のことが言える。
【0026】
また、引戸1の下端部は図示しない振れ止め具によって厚さ方向の横振れが抑制されているが、僅かな横振れが生じることもある。仮に引戸1に厚さ方向の力が作用した場合には、揺動支軸34が受け座52のV字状の溝57に係合してその壁面に当接した状態のままで、揺動支軸34を中心として引戸1並びに引戸側連結具23が揺動してその力を吸収緩和する。従って、引戸1の下部が僅かに横ぶれしたとしてもスライダ21には引戸1の厚さ方向の力や回転トルクが作用せず、無端循環路のボールの損傷を防止することができる。また、受け座52の貫通孔55と支持部材31の支軸部33との間の隙間には弾性材56が介装されているので、引戸1が揺動した場合にも、がたつきや異音の発生を抑制できる。
【0027】
尚、一対のスライダ21を互いに連結してその離間距離を調整できるようにしてもよい。例えば、図9のように、一対のスライダ21の揺動支軸34を延長して両揺動支軸34間に長さ調整具60を介在させるようにしてもよい。該長さ調整具60は、例えば雌ネジ部を有する筒状であって両揺動支軸34の雄ネジ部にそれぞれ螺着している。そして、一方の雄ネジ部を逆ネジとすることで、長さ調整具60を一方向に回転させると両スライダ21を接近させることができ、他方向に回転させると離反させることができる。尚、この長さ調整具60を両上側ブラケット50間に設けるようにしてもよい。何れにしても、両スライダ21間を連結すると共にその離間距離を調整できる長さ調整具60を備えることで、引戸1を吊り下げ設置する際の作業負担を軽減できる。
【0028】
また、上記実施形態では、受け座52の下面にV字状の溝57を形成したが、半円状やU字状の溝としてもよい。また、揺動支軸34の外周面を支持面として構成したが、揺動支軸34に代えて支持部材31の取付部32の上面にレール20の長手方向に沿った断面半円状の突条を形成してその突条の外周面を支持面として構成してもよい。逆に、受け座52側に揺動支軸34を設けたり受け座52の下面に断面半円状の突条を形成したりして被支持面を構成してもよく、支持部材31の取付部32の上面にV字状の溝57などを形成して支持面としもよい。何れにしても、引戸側連結具23の被支持面とスライダ側連結具22の支持面のうち少なくとも一方をレール20の長手方向の軸線を中心とした円弧状面として、スライダ側連結具22の支持面が引戸側連結具23の被支持面をレール20の長手方向の軸線を中心として回動可能に支持することが好ましく、引戸側連結具23のスムーズな揺動動作が得られる。
【0029】
また、スライダ側連結具22に凸部としての支軸部33を形成し、引戸側連結具23に凹部としての貫通孔55を形成したが、逆にスライダ側連結具22に凹部としての貫通孔を形成し、引戸側連結具23に凸部としての支軸部を形成してもよい。尚、凹部として貫通孔を形成したが貫通しない形状であってもよい。更に、凸部と凹部を共に断面円形としたが、断面矩形等にしてもよい。また更に、凸部と凹部との間の隙間を全周に亘って形成したが、凸部と凹部との間には少なくとも引戸1の厚さ方向において隙間が存在していればよい。
【0030】
また更に、上側ブラケット50に吊り下げ突部として吊り下げピン51を設け、下側ブラケット40には吊り下げ用孔43を形成したが、両者を逆にしてもよい。また、吊り下げピン51に代えて例えば上側ブラケット50の下端部を部分的に前方に折り曲げて吊り下げ突部を形成してもよい。
【0031】
尚、引戸1に閉じ力を付与する閉じ力付与手段として引戸クローザ3を使用しているが、引戸クローザ3を用いずにあるいはそれとの併用で、レール20を戸先側が下となるように傾斜させてもよく、閉じ力付与手段の構成は任意である。
【0032】
また、レールベース9とレール20を一体的に形成してもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 引戸
2 上枠
3 引戸クローザ
4 ロープ
5 ゼンマイバネ
6 制動装置本体
7 ピニオンギヤ
8 ラック
9 レールベース
9a 縦板部
9b 横板部
10 ラック保持具
20 レール
21 スライダ
22 スライダ側連結具
23 引戸側連結具
30 ベース板
31 支持部材
32 取付部
33 支軸部(凸部)
34 揺動支軸(支持面)
34a 小径部
35 ワッシャー
36 ボルト
40 下側ブラケット
40a 縦板部
40b 横板部
41 ボルト
42 長孔
43 吊り下げ用孔
44 ボルト
45 挿通孔
50 上側ブラケット
50a 縦板部
50b 横板部
51 吊り下げピン
52 受け座
53 本体部
54 係合突部
55 貫通孔(凹部)
56 弾性材
57 溝(被支持面)
60 長さ調整具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
引戸の上方に位置するレールと、該レールに無端循環路のボールを介してスライド可能に取り付けられたスライダと、該スライダと引戸とを連結する連結手段を備えた引戸の吊り下げ装置であって、
前記連結手段は、引戸に上方又は厚さ方向の力が作用した際に、該引戸の上方の移動又は厚さ方向の揺動を許容してその力がスライダに伝達されないようにする緩衝機構を備えていることを特徴とする引戸の吊り下げ装置。
【請求項2】
連結手段は、緩衝機構として、スライダに一体とされるスライダ側連結具と、引戸に一体とされる引戸側連結具を備え、スライダ側連結具と引戸側連結具のうち一方には上下方向に伸びる凸部が設けられ且つ他方には前記凸部が挿入されると共に該凸部との間に少なくとも引戸の厚さ方向に所定の隙間を有する凹部が形成されて、引戸側連結具はスライダ側連結具に対して上下方向に移動可能に構成され、
且つ、引戸側連結具は被支持面を有し、スライダ側連結具は前記被支持面を下側から支持すると共にレールの長手方向の軸線を中心として回動可能に支持する支持面を有して、引戸側連結具は前記軸線を中心としてスライダ側連結具に対して揺動可能に構成されている請求項1記載の引戸の吊り下げ装置。
【請求項3】
前記隙間に弾性材が介装されている請求項2記載の引戸の吊り下げ装置。
【請求項4】
引戸側連結具は、引戸に取り付けられる下側構成部材と、該下側構成部材とネジ止めされる上側構成部材を備え、該上側構成部材に前記凸部又は凹部と前記被支持面が形成されている請求項2又は3記載の引戸の吊り下げ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−169084(P2011−169084A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−36577(P2010−36577)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(000006943)リョービ株式会社 (471)
【Fターム(参考)】