説明

引戸ユニット及び引戸ユニットセット

【課題】従来よりも容易に引戸を設けることが可能な引戸ユニット及び引戸ユニットセットの提供を目的とする。
【解決手段】本発明の引戸ユニット100は、建物内に起立状態にして設置される扁平箱形構造の引戸収納ボックス10と、引戸収納ボックス10に形成されたメイン引出口12を通して、引戸収納ボックス10に収納可能な引戸20とを備え、引戸収納ボックス10のうち幅狭の側面と直交する方向に延びた上部ガイドレール45を引戸収納ボックス10の内側上部に設けると共に、上部ガイドレール45にスライド可能に係合した上部スライダ41を引戸20の戸尻側端部の上端部に取り付けて、引戸20の戸尻側端部を吊り上げると共に、引戸20の戸先側端部の下部に引戸支持キャスター30を取り付けて建物の床面F1上で転動可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引戸を有した引戸ユニット及引戸ユニットセットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の引戸としては、引戸の上端部に備えた複数の上部スライダ(例えば、吊車)を建物天井面に固定された上部ガイドレールにスライド可能に係合させた上吊式の引戸が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−63764号公報(段落[0018]、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上述した従来の引戸は、建物天井面に上部ガイドレールを設ける必要があり、設置作業に手間がかかるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、従来よりも容易に引戸を設けることが可能な引戸ユニット及び引戸ユニットセットの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係る引戸ユニットは、建物内に起立状態にして設置される扁平箱形構造の引戸収納ボックスと、引戸収納ボックスのうち幅狭の一側面に形成されたメイン引出口を通して、引戸収納ボックスに収納可能な引戸とを備えて、引戸の戸先側端部以外の全体を引戸収納ボックス内に収納した収納完了位置と、引戸の戸尻側端部以外の全体を引戸収納ボックス外に引き出した引出完了位置との間で引戸をスライド操作可能とした引戸ユニットであって、引戸収納ボックスの内側上部に設けられ、引戸収納ボックスのうち幅狭の側面と直交する方向に延びた上部ガイドレールと、引戸の戸尻側端部の上端部に取り付けられ、上部ガイドレールにスライド可能に係合した上部スライダとからなる上部スライド機構によって引戸の戸尻側端部を吊り上げると共に、引戸の戸先側端部の下部に引戸支持キャスターを取り付けて建物の床面上で転動可能としたところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の引戸ユニットにおいて、引戸支持キャスターは、引戸のスライド方向と直交した回転軸を中心に回転可能としたところに特徴を有する。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の引戸ユニットにおいて、引戸収納ボックス内のうちメイン引出口の両側部分に回転可能に支持され、引戸を厚さ方向で挟んだ状態で引戸のスライドに伴って回動する1対の支持ローラを備えたところに特徴を有する。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れか1の請求項に記載の引戸ユニットにおいて、引戸収納ボックスの内側下部に設けられ、引戸収納ボックスのうち幅狭の側面と直交する方向に延びた下部ガイドレールと、引戸の下端部に設けられて下部ガイドレールと平行に延びた引戸側ガイドレールと、下部ガイドレールと引戸側ガイドレールとの間に設けられ、下部ガイドレール及び引戸側ガイドレールにスライド可能に係合した中間ガイドレールとからなる下部スライド機構を備えたところに特徴を有する。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1乃至4の何れか1の請求項に記載の引戸ユニットにおいて、引戸として、扁平箱形構造をなしかつメイン引出口と同じ方向を向いた第1引出口を有する第1引戸を備えると共に、その第1引出口を通して、第1引戸の内部に収納可能な第2引戸を備え、第2引戸の戸先側端部以外の全体を第1引戸の内部に収納した収納完了位置と、第2引戸の戸尻側端部以外の全体を第1引戸の外部に引き出した引出完了位置との間で第2引戸をスライド操作可能とし、第1引戸と第2引戸との間に上部スライド機構を設けると共に第2引戸の下部に第2引戸支持キャスターを取り付けて建物の床面上で転動可能としたところに特徴を有する。
【0011】
請求項6の発明は、請求項5に記載の引戸ユニットにおいて、第2引戸支持キャスターは、第2引戸のスライド方向と直交した回転軸を中心に回転可能としたところに特徴を有する。
【0012】
請求項7の発明は、請求項5又は6に記載の引戸ユニットにおいて、第1引戸のうち戸尻側端部に配置され、第1引戸のスライド方向と直交した回転軸を中心に回転可能な第1滑車と、第1引戸のうち戸先側端部の内部に配置され、第1引戸のスライド方向と直交した回転軸を中心に回転可能な第2滑車と、引戸収納ボックスの奥壁に一端部を固定されたワイヤーを、第1引戸の戸尻側端部に備えた戸尻側貫通孔を通して第2滑車で第1引戸の戸尻側に折り返してから第1滑車で第1引戸の戸先側にさらに折り返して、戸尻側貫通孔を通して引戸収納ボックスのメイン引出口側の端部内面にワイヤーの他端部を固定し、さらに、ワイヤーのうち第1滑車と第2滑車との間部分を第2引戸の戸尻側の端部に固定したことにより、第1引戸と第2引戸とが連動しかつ同時に収納完了位置及び引出完了位置に到達するように構成したところに特徴を有する。
【0013】
請求項8の発明は、請求項1乃至7の何れか1の請求項に記載の引戸ユニットにおいて、引戸収納ボックスのうちメイン引出口と反対側の端部を建物に備えた固定対象物に回動可能に連結するメインヒンジと、引戸収納ボックスのうちメイン引出口側の端部の下面壁に上下動可能に支持された可動ベースと、可動ベースに取り付けられて、メインヒンジを中心として引戸収納ボックスが回動したときに建物の床面上で転動可能なボックス支持キャスターと、可動ベースと引戸とに設けられ、引戸が収納完了位置からずれているときに、可動ベースの上方への移動を許容し、引戸が収納完了位置に移動したときに、可動ベースを可動範囲の下端位置に向けて押し下げ、ボックス支持キャスターを床面に当接させることで引戸支持キャスターを床面から上方に離間させた状態に保持するベース位置切替機構とを備えたところに特徴を有する。
【0014】
請求項9の発明に係る引戸ユニットセットは、請求項1乃至7の何れか1の請求項に記載の引戸ユニットの引戸収納ボックスに、請求項8に記載の引戸ユニットの引戸収納ボックスをメインヒンジにて回動可能に連結してなるところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0015】
[請求項1の発明]
請求項1の発明によれば、引戸の戸先側端部の下部には引戸支持キャスターが設けられ、引戸のうち引戸支持キャスターと対角の位置である戸尻側端部の上端部には、上部ガイドレールにスライド可能に係合した上部スライダが設けられているから、これら引戸支持キャスターと上部スライダとによって引戸を安定してスライド移動させることが可能になる。そして、上部スライダは、引戸の戸尻側端部の上端部に設けられているから、上部スライダと係合する上部ガイドレールは、引戸収納ボックスの内側上部だけに設けておけばよい。即ち、本発明によれば、引戸収納ボックスを建物内の任意の場所に置くだけで、そこに引戸を設けることができ、建物天井面に上部ガイドレールを設ける手間が省けるから、従来よりも容易に引戸を設けることが可能になる。
【0016】
[請求項2の発明]
請求項2の発明によれば、引戸支持キャスターの転動方向は、上部スライド機構が案内するスライド方向と一致するので引戸の直進性が向上し、引戸をより安定してスライド移動させることが可能になる。
【0017】
[請求項3の発明]
請求項3の発明によれば、引戸を厚さ方向で挟んだ状態で引戸のスライドに伴って回動する1対の支持ローラを備えたので、引戸の横振れを防止してスムーズに出し入れすることができる。
【0018】
[請求項4の発明]
請求項4の発明によれば、下部スライド機構を備えたことで、引戸の出し入れを、よりスムーズに行うことが可能になる。また、下部ガイドレールと引戸側ガイドレールとの間に中間ガイドレールが設けられ、引戸を引出完了位置にしたときに、中間ガイドレールの一端側の所定長さ分を下部ガイドレールに係合させ、他端側の所定長さ分を引戸側ガイドレールに係合させることができるから、引出完了位置における引戸の横振れをより確実に抑えることができ、安定性が向上する。
【0019】
[請求項5の発明]
請求項5の発明によれば、引戸としての第1引戸から、その第1引戸と同じスライド方向に第2引戸を引き出すことが可能であるから、より幅広な開口部の開閉を行うことが可能になる。
【0020】
[請求項6の発明]
請求項6の発明によれば、第2引戸支持キャスターの転動方向は、第1引戸と第2引戸との間に設けられた上部スライド機構が案内するスライド方向と一致するので、第2引戸をより安定してスライド移動させることが可能になる。
【0021】
[請求項7の発明]
請求項7の発明によれば、引戸収納ボックスに対する第1引戸のスライドに連動して、第2引戸が第1引戸に対して第1引戸と同一方向に同一距離だけスライドして、収納完了位置及び引出完了位置に同時に到達する。従って、第1引戸をスライド操作した場合に、は、第2引戸をスライド操作した場合の半分の操作量で、第1引戸及び第2引戸を引出完了位置と収納完了位置との間でスライド移動させることが可能となる。
【0022】
[請求項8の発明]
請求項8の発明によれば、建物に備えた固定対象物に引戸収納ボックスをメインヒンジによって回動可能に連結すると、引戸収納ボックス自体が「開き戸」となって開口部の一部を引戸収納ボックスで開閉することが可能となり、開口部の残りを引戸収納ボックスから引き出し可能な引戸によって開閉することが可能になる。
【0023】
また、引戸が収納完了位置に位置するときに、可動ベースがベース位置切替機構によって押し下げられてボックス支持キャスターが床面に押し付けられ、この状態で引戸収納ボックスを回動操作すると、ボックス支持キャスターが床面を転動するので、引戸収納ボックスの回動操作を比較的容易に行うことができる。しかも、このとき引戸支持キャスターは床面から離間しているから、引戸収納ボックスの回動操作時に、引戸支持キャスターが床面と擦れて回動の妨げとなることを防止することができる。
【0024】
[請求項9の発明]
請求項9の発明によれば、請求項1乃至7の何れか1の請求項に記載の引戸ユニットに対して請求項8に記載の引戸ユニットを回動させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態に係る引戸ユニットの斜視図
【図2】引戸を収納完了位置にした状態の引戸ユニットの正面図
【図3】引戸を引出完了位置にした状態の引戸ユニットの正面図
【図4】引戸ユニットにおける引戸収納ボックスの側断面図
【図5】上部スライド機構の部分断面図
【図6】(A)収納完了位置のときの下部スライド機構の斜視図、(B)収納完了位置からずらされたときの下部スライド機構の斜視図
【図7】引出完了位置のときの下部スライド機構の斜視図
【図8】(A)引出完了位置にした引戸ユニットの平面図、(B)収納完了位置にした引戸ユニットの平面図、(C)引戸収納ボックスを回動させた状態の引戸ユニットの平面図
【図9】引戸が収納完了位置からずれているときの引戸ユニットの下端部の部分断面図
【図10】引戸を収納完了位置にして引戸収納ボックスを回動操作したときの引戸ユニットの下端部の部分断面図
【図11】第2実施形態に係る引戸ユニットの斜視図
【図12】引戸ユニットを戸先側から見た側面図
【図13】引戸ユニットの部分断面図
【図14】下部スライド機構を戸尻側から見た側断面図
【図15】引戸連動機構の概念図
【図16】引戸を収納完了位置にしたときの引戸連動機構のスケルトンモデル
【図17】引戸が収納完了位置と引出完了位置との中間に位置したときの引戸連動機構のスケルトンモデル
【図18】引戸を引出完了位置にしたときの引戸連動機構のスケルトンモデル
【発明を実施するための形態】
【0026】
[第1実施形態]
以下、本発明に係る引戸ユニット100の第1実施形態を図1〜図10に基づいて説明する。図1に示すように引戸ユニット100は、引戸20と、その引戸20を収納可能な引戸収納ボックス10とを備えている。引戸収納ボックス10は、扁平箱形構造をなしており、建物内に起立状態にして設置可能となっている。なお、本実施形態の引戸収納ボックス10は、長板をコの字形に連結してなる枠体を、矩形状をなした1対のパネル材で挟んで接合した構造であるが、引戸収納ボックスの材質や組み立て構造は特に限定するものでない。
【0027】
引戸収納ボックス10の内部には、扁平矩形状のボックス内空間11(図2参照)が形成されており、引戸収納ボックス10のうち、幅狭の一側面10Aには、ボックス内空間11を側方に開放した縦長のメイン引出口12が形成されている。このメイン引出口12を通して引戸20を引戸収納ボックス10内に収納及び引き出すことが可能となっている。以下、説明の便宜のため、引戸収納ボックス10のメイン引出口12が開放した方を「前方」といい、その反対側を「後方」といい、引戸収納ボックス10における幅狭の一側面10Aと直交する方向を「前後方向」という。
【0028】
図1に示すように、引戸20は扁平矩形状をなしており、例えば、1枚のパネル材或いは、複数枚のパネル材を重ねて構成されている。引戸20は、図2に示すように、戸先側端部以外の全体を引戸収納ボックス10内に収納した収納完了位置と、図3に示すように、戸尻側端部以外の全体を引戸収納ボックス10の外に引き出した引出完了位置との間でスライド移動可能となっている。引戸20は、戸尻側端部が引戸収納ボックス10の後端壁13に備えた図示しない戸当たりに当接することで収納完了位置に位置決めされ、引戸20と引戸収納ボックス10との間に設けられた図示しない引抜規制部により、引出完了位置に位置決めされる。また、収納完了位置にしたときの引戸20の引き残し部分(戸先側端部)の両面には、引戸20をスライド操作する際に手を掛けるための引き手21,21が設けられている(図1〜図3には、一方の引き手21のみが図示されている)。なお、本実施形態の引き手21は堀込み形であるが、所謂、「バーハンドル」でもよい。
【0029】
図3に示すように、引戸20のうち、戸先側端部の下部には引戸支持キャスター30が設けられている。引戸支持キャスター30は、引戸20の下端面から突出しており、引戸収納ボックス10が設置された建物の床面F1上で転動可能となっている。引戸支持キャスター30は、床面F1を転動する転動体として、トレッド面が平坦な車輪30Rを備えており、その車輪30Rは、引戸20の厚さ方向と平行な(引戸20のスライド方向と直交した)回転軸で回転可能となっている(図4参照)。即ち、引戸支持キャスター30の転動方向は、次述する上部スライド機構40が案内する引戸20のスライド方向と一致するように構成されている。
【0030】
図2に示すように、引戸20のうち、引戸支持キャスター30に対して対角の位置、即ち、引戸20の戸尻側端部の上端部には、上部スライダ41が取り付けられている。上部スライダ41は、吊り車(より詳細には、四輪の複車)である。即ち、上部スライダ41は、図5に示すように、スライド方向の前後に間隔を開けて2つずつ、合計4つの走行輪43,43をスライダ本体42の両側面に備え、そのスライダ本体42から垂下した連結軸44の下端部が引戸20の上端部に固定されている。
【0031】
この上部スライダ41を介して引戸20の戸尻側端部をスライド可能に吊り上げるために、引戸収納ボックス10には上部ガイドレール45が備えられている。上部ガイドレール45は、引戸収納ボックス10の内側(ボックス内空間11)の上端面11Aに固定され、引戸収納ボックス10の前後方向に延びている。上部ガイドレール45は、引戸20が収納完了位置と引出完了位置との間で移動したときの上部スライダ41の移動範囲に合わせて設けられており、上部スライダ41の移動範囲の全域で上部スライダ41とのスライド係合が維持されるように構成されている。上部ガイドレール45は、その長手方向と直交する水平方向で隙間を空けて平行配置された1対のレール溝部46,46を有し、それら1対のレール溝部46,46の上面を、上部スライダ41の両側面に備えた各走行輪43,43が走行可能となっている。そして、上部スライダ41と上部ガイドレール45とによって上部スライド機構40が構成されている。
【0032】
上記したように、上部スライダ41と引戸支持キャスター30は、引戸20の対角の位置に配置されているので、これらだけでも安定して引戸20をスライド移動させることが可能であるが、より安定性を高めるために、引戸収納ボックス10内には、引戸20を厚さ方向で挟んだ1対の支持ローラ50,50が備えられている。1対の支持ローラ50,50は、引戸20が引出完了位置まで引き出された状態(図3に示す状態)でも、引戸収納ボックス10内に残された引戸20の戸尻側端部を挟むことが可能な位置に配置されている。具体的には、メイン引出口12の両側部分でかつ、上下方向の中間部より上側に配置されている。これら支持ローラ50,50は、ボックス内空間11で鉛直方向に延びた支持シャフト51,51に回転可能に軸支されている。支持シャフト51は、その上端部のみが引戸収納ボックス10に固定された片持ち構造となっており、支持シャフト51の下端部に備えた鍔部52で支持ローラ50を抜け止めしている。また。支持ローラ50は、軸方向(上下方向)の両端部から中間部に向かうに従って拡径した紡錘形をなしている。そして、引戸20が引戸収納ボックス10に出し入れされるときに、引戸20のスライドに連動してこれら1対の支持ローラ50,50が回転するように構成されている。これら1対の支持ローラ50,50によって引戸20の横揺れを抑えることができ、引戸20をスムーズに出し入れすることができる。
【0033】
引戸収納ボックス10と引戸20との間には、上記した上部スライド機構40と協働して引戸20のスライド移動をガイドする下部スライド機構60が備えられている。図6に示すように、下部スライド機構60は、ボックス内空間11の下端面に固定された下部ガイドレール61と、引戸20の下端面に設けられた引戸側ガイドレール22と、それら下部ガイドレール61と引戸側ガイドレール22との双方にスライド可能に係合した中間ガイドレール62とから構成されている。
【0034】
下部ガイドレール61は、上部ガイドレール45と同様に引戸収納ボックス10の前後方向に延びている。図6(B)に示すように、下部ガイドレール61は、例えば、断面矩形の角パイプ構造をなしており、その幅方向の一側面に側面長孔61Aが貫通形成されている。側面長孔61Aは、下部ガイドレール61の戸尻側の端部から軸方向の中間部まで連続して延びている。
【0035】
中間ガイドレール62は、例えば、断面門形(下方に開放したコの字形)をなしており、その内側に下部ガイドレール61をスライド可能に受容している。中間ガイドレール62の戸尻側端部にはスライドピン62Pが設けられ、これが下部ガイドレール61の側面長孔61A内にスライド可能に挿入されている。また、中間ガイドレール62の上面には上面長孔62Aが貫通形成されている。上面長孔62Aは、戸尻側の端部から軸方向の中間部まで連続して延びている。なお、下部ガイドレール61及び中間ガイドレール62は共に金属製であって、例えば、アルミ型材で構成されている。
【0036】
引戸側ガイドレール22は、引戸20の下端面における幅方向の中央部をコの字形に陥没させた下面開放の溝形構造をなしている。引戸側ガイドレール22は、引戸20の戸尻側の端面から戸先側に向かって延びており、その内側に中間ガイドレール62がスライド可能に受容されている。引戸側ガイドレール22における戸尻側の端部上面からは、スライドピン22P(図6(A)参照)が垂下しており、これが中間ガイドレール62の上面長孔62A内にスライド可能に挿入されている。
【0037】
引戸20を収納完了位置(図6(A)に示す位置)から引き出した場合、途中までは、引戸20のみが単独でスライドする。この間、引戸20に備えたスライドピン22Pが中間ガイドレール62の上面長孔62A内を移動する。引戸20が約半分程引き出されると、スライドピン22Pが上面長孔62Aの戸先側端部に当接する。これより先は、引戸20と中間ガイドレール62とが一体にスライドし、中間ガイドレール62が下部ガイドレール61に対してスライドする(図6(B)に示す状態)。この間、中間ガイドレール62に備えたスライドピン62Pが下部ガイドレール61の側面長孔61A内を移動する。そして、スライドピン62Pが側面長孔61Aの戸先側端部に当接すると、それ以上のスライドが禁止されて引戸20は、図7に示す引出完了位置になる。この引出完了位置において、下部ガイドレール61には、中間ガイドレール62の全長の約半分が係合し、中間ガイドレール62の残り約半分が下部ガイドレール61よりも前方に延びた状態となる。そして、下部ガイドレール61より前方に延びた中間ガイドレール62の残り約半分が、引戸側ガイドレール22と係合した状態になる。つまり、中間ガイドレール62が、下部ガイドレール61と引戸側ガイドレール22との双方にそれぞれ全長の約半分ずつ係合した状態になるから、引出完了位置にしたときの引戸20の横振れをより確実に抑えることができ、安定性が向上する。
【0038】
なお、引出完了位置から収納完了位置に向けて引戸20を移動させた場合の下部スライド機構60の動作も、上記した動作と同様であり、途中までは引戸20のみが単独でスライドし、途中から収納完了位置に至るまで引戸20と中間ガイドレール62とが一体になってスライドする。
【0039】
さて、本実施形態の引戸ユニット100は、単に引戸としてだけでなく、「開き戸」としても使用可能である。即ち、引戸収納ボックス10のうち、メイン引出口12とは反対の後端部には、複数のメインヒンジ19,19が取り付けられている。これらメインヒンジ19,19は、建物に備えた固定対象物、具体的には、建物の壁体に形成された開口部W1の一側縁部に固定されて、引戸収納ボックス10を開口部W1に対して回動可能に連結している。
【0040】
つまり、本実施形態の引戸ユニット100は、図8(A)から同図(C)への変化に示すように、引戸収納ボックス10自体が「開き戸」となって開口部W1の一側縁部側を開閉することが可能であり、開口部W1の残りを引戸収納ボックス10から引き出すことが可能な引戸20によって開閉することが可能になっている。これにより、開口部W1の開口幅を必要に応じて全閉、半開、全開の3段階に調節することが可能になる。
【0041】
ここで、本実施形態のメインヒンジ19,19は、「グレビティヒンジ」と称されるものであって、その回動方向の一端から他端(例えば、図8(B)に示す位置から同図(C)に示す位置)に向けて引戸収納ボックス10を回動させる過程で、カム機構によって引戸収納ボックス10を徐々に上に移動させて床面F1から離間させることが可能となっている。
【0042】
さらに、本実施形態の引戸ユニット100は、引戸収納ボックス10をメインヒンジ19,19を中心にして回動操作する際の操作性を向上させるために、以下のような回動アシスト機構を備えている。即ち、図9に示すように、引戸収納ボックス10のうち、メイン引出口12に近い前端部近傍には、引戸収納ボックス10の下面壁14を貫通したキャスター出没孔14Aが設けられている。キャスター出没孔14Aは、引戸収納ボックス10の下面(床面F1に対する設置面)に開放すると共に、ボックス内空間11に連通している。
【0043】
そのキャスター出没孔14Aの内側には可動ベース15が備えられている。可動ベース15は、例えば、ヒンジ15Hを介して下面壁14に支持されており、キャスター出没孔14A内で上下動可能となっている。可動ベース15は、メイン引出口12から奥側に向かって上り傾斜となった干渉突部15Tを備えており、図9に示すように、引戸20が収納完了位置からずれているときには、干渉突部15Tが引戸20の引戸側ガイドレール22内に突出するように構成されている。
【0044】
可動ベース15のうち干渉突部15Tとは反対側には、ボックス支持キャスター16が取り付けられている。ボックス支持キャスター16は、転動体としてボール16Bを備えたボールキャスターであり、そのボール16Bが、引戸収納ボックス10を設置した床面F1に当接可能となっている。
【0045】
一方、引戸20の下端部のうち、引戸20が収納完了位置に位置したときの干渉突部15Tの直上位置、具体的には、引戸支持キャスター30よりも少し戸尻側の位置には、可動ベース押下体24とその可動ベース押下体24を収納した下面開放の押下体収納部23とが備えられている。
【0046】
押下体収納部23は、引戸20の下端部に形成された引戸側ガイドレール22の前端部よりも戸先側に形成されて引戸側ガイドレール22と連続している。可動ベース押下体24は、押下体収納部23の上面に固定された支持金具24Aでローラ24Rを軸支した構成となっており、ローラ24Rは、引戸20のスライド方向と直交した回転軸を中心にして回転可能となっている。
【0047】
図9に示すように、引戸20が収納完了位置からずれているとき、可動ベース押下体24のローラ24Rと、可動ベース15の干渉突部15Tとが離間しており、可動ベース15は上方への移動を許容される。即ち、引戸収納ボックス10の下面全体が床面F1に接するので、その床面F1に押されて可動ベース15のボックス支持キャスター16がキャスター出没孔14A内に没入し、干渉突部15Tが引戸20の引戸側ガイドレール22内に突出する。
【0048】
これに対し、図10に示すように、引戸20がスライドして収納完了位置になると、可動ベース押下体24のローラ24Rが可動ベース15の干渉突部15Tに乗り上げて、ボックス支持キャスター16を床面F1に押し付けると共に、引戸20の戸先側端部に備えた引戸支持キャスター30(車輪30R)が床面F1から僅かに離間する。
【0049】
そして、この状態でメインヒンジ19,19を中心にして引戸収納ボックス10の回動操作(例えば、図8(B)に示す位置から同図(C)に示す位置への回動操作)を行うと、メインヒンジ19,19であるグレビティヒンジの作用によって、図10に示すように、引戸収納ボックス10の全体が上方にせり上がって床面F1から離間する一方、引戸20の自重で下方に押されたボックス支持キャスター16が引戸収納ボックス10の下面から突出して床面F1上を転動するので、引戸収納ボックス10を容易に回動操作することができる。ここで、干渉突部15Tと可動ベース押下体24とが本発明の「ベース位置切替機構」に相当する。
【0050】
このように、本実施形態によれば、引戸20の戸先側端部の下部には引戸支持キャスター30が設けられ、引戸20のうち引戸支持キャスター30と対角の位置である戸尻側端部の上端部には、上部ガイドレール45にスライド可能に係合した上部スライダ41が設けられているから、これら引戸支持キャスター30と上部スライダ41とによって引戸20を安定してスライド移動させることができる。そして、上部スライダ41は、引戸20の戸尻側端部の上端部に設けられているから、上部スライダ41と係合する上部ガイドレール45は、引戸収納ボックス10の内側上部(ボックス内空間11の上端面11A)だけに設けておけばよい。即ち、本発明によれば、引戸収納ボックス10を建物内の任意の場所に置くだけで、そこに引戸20を設けることができ、建物天井面に上部ガイドレールを設ける手間が省けるから、従来よりも容易に引戸20を設けることが可能になる。
【0051】
また、引戸20に備えた引戸支持キャスター30(車輪30R)の転動方向が、上部スライド機構40が案内する引戸20のスライド方向と一致するように構成されているから、そのスライド方向への引戸20の直進性が向上し、引戸20をより安定してスライド移動させることができる。
【0052】
また、本実施形態の引戸ユニット100は、引戸収納ボックス10をメインヒンジ19,19を中心にして回動可能な「開き戸」としても使用することができる。そして、引戸20を収納完了位置にして引戸収納ボックス10をメインヒンジ19,19を中心にして回動操作すると、引戸収納ボックス10に備えたボックス支持キャスター16が引戸20の自重で床面F1に押し付けられて床面F1を転動するから、引戸収納ボックス10の回動操作を比較的容易に行うことができる。また、引戸支持キャスター30の車輪30Rは、メインヒンジ19,19を中心とした引戸収納ボックス10の回動方向に転動不可能であるが、引戸20を収納完了位置にすると、引戸支持キャスター30の車輪30Rは床面F1から離間するから、引戸収納ボックス10の回動操作時に、引戸支持キャスター30が床面F1と擦れて回動の妨げになったり、引戸支持キャスター30が破損することを防止することができる。
【0053】
また、本実施形態によれば、引戸20は、戸尻側端部の上端に備えた上部スライダ41と戸先側端部の下端に備えた引戸支持キャスター30のみで支持されているから、引戸20を戸先側に傾けた前下がり姿勢や、戸尻側に傾けた前上がり姿勢にすることが可能である。従って、引戸20のスライド方向で床面F1に多少の起伏があったとしても、その起伏を引戸20の傾きで吸収することができ、安定してスライドさせることが可能となる。
【0054】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態は図11〜図18に示されており、引戸を2枚備えている点、メインヒンジ19,19を備えていない点が主として異なる。以下、第1実施形態との共通部分の説明は同一符号を付して省略し、第1実施形態との相違点のみを説明する。
【0055】
図11に示すように、本実施形態の引戸ユニット200は、第1引戸20と第2引戸70とを備えている。第1引戸20は、床面F1上に自立設置可能な引戸収納ボックス10のメイン引出口12を通して引戸収納ボックス10内(ボックス内空間11)に収納可能となっている。第1引戸20は、戸先側端部以外の全体を引戸収納ボックス10内に収納した収納完了位置と(図16参照)、戸尻側端部以外の全体を引戸収納ボックス10から外側に引き出した引出完了位置(図18参照)との間でスライド移動可能となっている。
【0056】
第1引戸20は、引戸収納ボックス10を一回り小さくしたような扁平箱形構造をなしている。具体的には、例えば、長板をコの字形に連結してなる枠体を、矩形状をなした1対のパネル材で挟んで接合した構造となっているが、第1引戸20の材質や組み立て構造は、特に限定するものではない。
【0057】
第1引戸20の内部には、扁平矩形状の引戸内空間211(図13参照)が形成されており、第1引戸20の幅狭の一側面210Aには、メイン引出口12と同じ方向を向いた縦長の第1引出口212が形成されている(図11参照)。この第1引出口212を通して第2引戸70を第1引戸20内に収納及び引き出すことが可能となっている。
【0058】
第2引戸70は、扁平矩形状をなしており、例えば、1枚のパネル材或いは、複数枚のパネル材を重ねて構成されている。第2引戸70は、その戸先側端部以外の全体を第1引戸20内に収納した収納完了位置(図16参照)と、戸尻側端部以外の全体を第1引戸20から外側に引き出した引出完了位置(図18参照)との間でスライド移動可能となっている。なお、収納完了位置にしたときの第2引戸70の引き残し部分(戸先側端部)の両面には、第2引戸70を操作する際に手を掛けるための引き手71,71が設けられている(図11及び図13には、一方の引き手71のみが図示されている)。なお、本実施形態の引き手71は堀込み形であるが、所謂、「バーハンドル」でもよい。
【0059】
引戸収納ボックス10と第1引戸20との間には、上記第1実施形態の引戸ユニット100に備えられたものと同様な上部スライド機構40(図13参照)、下部スライド機構60(図14参照)及び1対の支持ローラ50,50(図12参照)が備えられている。詳細には、下部スライド機構60が、第1引戸20の厚さ方向の一方に片寄って配置され、引戸側ガイドレール22が第1引戸20の下面と一側面とに開放している点を除けば、上記第1実施形態の引戸ユニット100に備えられたものと同一の構成である。なお、引戸側ガイドレール22の側面の開放部分を図示しないカバー体で覆ってもよい。
【0060】
第1引戸20の戸先側端部の下部には、上記第1実施形態の引戸ユニット100に備えられたものと同一の引戸支持キャスター30,30が、第1引戸20の厚さ方向で対をなして設けられている。
【0061】
第1引戸20と第2引戸70との間には、上記第1実施形態の引戸ユニット100に備えられたものと同一の上部スライド機構240(図13参照)、下部スライド機構260(図14参照)及び1対の支持ローラ250,250(図12参照)が備えられている。
【0062】
第2引戸70の戸先側端部の下部には、転動体として車輪230Rを備えた第2引戸支持キャスター230が取り付けられている。第2引戸支持キャスター230は、第2引戸70の下端面から突出しており、引戸収納ボックス10が設置された建物の床面F1を転動可能となっている。第2引戸支持キャスター230は、第1引戸20に備えた引戸支持キャスター30と同一構造であり、車輪230Rが第2引戸70の厚さ方向と平行な(第2引戸70のスライド方向と直交した)回転軸で回転可能となっている。即ち、第2引戸支持キャスター230の転動方向は、次述する上部スライド機構240が案内する第2引戸70のスライド方向と一致するように構成されている。
【0063】
上部スライド機構240は、第2引戸70の戸尻側端部をスライド可能に吊り上げている。図13に示すように、上部スライド機構240は、上部スライダ241と、その上部スライダ241がスライド可能に係合した上部ガイドレール245とから構成されている。上部スライダ241は、第2引戸70のうち、第2引戸支持キャスター230に対して対角の位置である戸尻側端部の上端部に設けられている。これに対し、上部ガイドレール245は、第1引戸20内の引戸内空間211内の上端面211A(図12及び図13参照)に固定され、第1引戸20の前後方向に延びている。
【0064】
第1引戸20内には、第2引戸70を厚さ方向で挟んだ1対の支持ローラ250,250が備えられている(図12参照)。1対の支持ローラ250,250は、第2引戸70が引出完了位置まで引き出されたときでも、第1引戸20内に残された第2引戸70の戸尻側端部を挟むことが可能な位置、詳細には、第1引出口212の両側部分でかつ、上下方向の中間部より上側に配置されている。そして、第2引戸70が第1引戸20内に出し入れされるときに、第2引戸70のスライドに連動してこれら1対の支持ローラ250,250が回転する。なお、図示しないが、第2引戸70を支持する支持ローラ250は、支持ローラ50と同様に、引戸内空間211で鉛直方向に延びた片持ちの支持シャフトに回動可能に軸支されている。
【0065】
第1引戸20と第2引戸70との間に設けられた下部スライド機構260は、図14に示すように、第1引戸20の引戸内空間211の下端面に設けられた下部ガイドレール261と、第2引戸70の下端面に設けられた引戸側ガイドレール72と、それら下部ガイドレール261と引戸側ガイドレール72との双方にスライド可能に係合した中間ガイドレール262とから構成されている。この下部スライド機構260と、前記した1対の支持ローラ250,250とにより、第2引戸70の横振れが抑えられて安定性が向上し、第2引戸70を第1引戸10に対してスムーズに出し入れすることが可能になる。
【0066】
さて、本実施形態の引戸ユニット200には、第1引戸20のスライド移動と第2引戸70のスライド移動とを連動させる引戸連動機構が備えられている。引戸連動機構は、後述するようにワイヤー83と複数の滑車81,82とを有し、引戸収納ボックス10に対する第1引戸20のスライドに連動して、第2引戸70が第1引戸20に対して第1引戸20と同一方向に同一距離だけ移動して、第1引戸20と第2引戸70とが収納完了位置及び引出完了位置に同時に到達するようにしたものである。
【0067】
具体的には、図15及び図16に示すように、第1引戸20のうち戸尻側端部には第1滑車81が設けられ、戸先側端部の内部には第2滑車82が設けられている。第1滑車81は、鉛直方向を向いた回転軸81Jを中心に回転可能となっており、第2滑車82はスライド方向と直交した水平方向を向いた回転軸82Jを中心に回転可能となっている。なお、図16〜図18では、説明の便宜のため、第1滑車81の回転軸81Jを水平にして示してある。
【0068】
ワイヤー83の一端部は引戸収納ボックス10の後端壁13内面に固定されており、第1引戸20の戸尻側端部に備えた戸尻側貫通孔25を通して第1引戸20の戸先側に向かって延び、第2滑車82で第1引戸20の戸尻側に折り返してから第1滑車81で第1引戸20の戸先側にさらに折り返して、第1引戸20の戸尻側貫通孔25を通して引戸収納ボックス10の前端壁18内面にワイヤー83の他端部が固定されている。なお、ワイヤー83の一端部はスプリング(図示せず)を内蔵した取付金具84を介して引戸収納ボックス10に固定されており、スプリングによってワイヤー83が常に張った状態になるように構成されている。そして、ワイヤー83のうち第1滑車81と第2滑車82との間で延びた部分に、第2引戸70の戸尻側端部がワイヤー挟持具85を介して固定されている。
【0069】
引戸ユニット200の構成は以上であって、次に引戸ユニット200の動作を説明する。図16に示すように、第1引戸20及び第2引戸70が収納完了位置に位置する場合に、第1引戸20を引き出すと、第1滑車81及び第2滑車82とが引戸収納ボックス10に対して前方に移動するので、第1滑車81と第2滑車82との間でワイヤー83は、第1引戸20の収納完了位置からの移動距離と同じ距離だけ第1引戸20の戸先側に向かって移動する。従って、図16から図17への変化に示すように、ワイヤー83のうち第1滑車81と第2滑車82との間部分に連結された第2引戸70も、第1引戸20の移動距離と同じ距離だけ収納完了位置から移動する。そして、図18に示すように、第1引戸20が引出完了位置に到達するのと同時に、第2引戸70が引出完了位置に到達する。
【0070】
図16に示すように、第1引戸20及び第2引戸70が収納完了位置に位置する場合に、第2引戸70を引き出すと、ワイヤー挟持具85が第1引戸20の戸先側に移動するので、第1滑車81と第2滑車82との間でワイヤー83は、第2引戸70の収納完了位置からの移動距離と同じ距離だけ第1引戸20の戸先側に移動する。すると、図16から図17への変化に示すように、第1引戸20の戸尻側の第1滑車81が引っ張られて第1引戸20が収納完了位置から引き出され、第1引戸20に対する第2引戸70の移動距離と同じ距離だけ第1引戸20が引戸収納ボックス10に対して移動する。そして、図18に示すように、第2引戸70が引出完了位置に到達するのと同時に、第1引戸20が引出完了位置に到達する。
【0071】
ここで、第1引戸20を操作した場合と、第2引戸70を操作した場合とを比べると、第1引戸20を操作した場合には、第2引戸70を操作した場合の半分の操作量で、第1引戸20及び第2引戸70を引出完了位置まで移動させることができる。
【0072】
図18に示すように、第1引戸20及び第2引戸70が引出完了位置に位置する場合に、第1引戸20を引戸収納ボックス10側に移動させると、第1滑車81及び第2滑車82が引戸収納ボックス10側に移動するので、それら第1滑車81と第2滑車82との間でワイヤー83は、第1引戸20の引出完了位置からの移動距離と同じ距離だけ、第1引戸20の戸尻側に向かって移動する。従って、図18から図17への変化に示すように、ワイヤー83のうち第1滑車81と第2滑車82との間部分に連結された第2引戸70も、第1引戸20の移動距離と同じ距離だけ引出完了位置から移動する。そして、図16に示すように、第1引戸20が収納完了位置に到達するのと同時に、第2引戸70が収納完了位置に到達する。
【0073】
図18に示すように、第1引戸20及び第2引戸70が引出収完了位置に位置する場合に、第2引戸70を引戸収納ボックス10側に移動させると、ワイヤー挟持具85が第1引戸20の戸尻側に移動するので、第1滑車81と第2滑車82との間でワイヤー83は、第2引戸70の引出完了位置からの移動距離と同じ距離だけ第1引戸20の戸尻側に移動する。すると、図18から図17への変化に示すように、第1引戸20の戸先側の第2滑車82が引っ張られて第1引戸20が引戸収納ボックス10側に引き込まれ、第2引戸70の移動距離と同じ距離だけ第1引戸20が引出完了位置から移動する。そして、図16に示すように、第2引戸70が引出完了位置に到達するのと同時に、第1引戸20が引出完了位置に到達する。
【0074】
ここで、第1引戸20を操作した場合と、第2引戸70を操作した場合とを比べると、第1引戸20を操作した場合には、第2引戸70を操作した場合の半分の操作量で、第1引戸20及び第2引戸70を収納完了位置まで移動させることができる。
【0075】
このように本実施形態によれば、上記第1実施形態と同様に、従来よりも容易に第1引戸20及び第2引戸70を設けることが可能になると共に、以下のような効果を奏する。即ち、第1引戸20から、その第1引戸20と同じスライド方向に第2引戸70を引き出すことが可能なので、より幅広な開口部W1を開閉することが可能になる。また、第2引戸支持キャスター230(車輪230R)の転動方向は、上部スライド機構240が案内する第2引戸70のスライド方向と一致するので、そのスライド方向への第2引戸70の直進性が向上し、第2引戸70をより安定してスライド移動させることが可能になる。さらに、引戸収納ボックス10に対する第1引戸20のスライド移動に連動して、第2引戸70が第1引戸20に対して第1引戸20と同一方向に同一距離だけスライド移動して、収納完了位置及び引出完了位置に同時に到達するから、第1引戸20を操作した場合には、第2引戸70を操作した場合の半分の操作量で、第1引戸20及び第2引戸70を収納完了位置と引出完了位置との間で移動させることができる。即ち、第1引戸20をスライド操作することで開口部W1の開閉を速やかに行うことが可能になる。
【0076】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0077】
(1)上記第1実施形態では、引戸ユニット100を、建物に備えた固定対象物に回動可能に連結していたが、上記第1実施形態の引戸ユニット100の引戸収納ボックス10に、上記第2実施形態の引戸ユニット200の引戸収納ボックス10をメインヒンジ19,19によって回動可能に連結してもよい(本発明の「引戸ユニットセット」に相当する)。
【0078】
(2)上記第1及び第2実施形態では、引戸支持キャスター30が転動体として車輪30Rを備えていたが、転動体としてボールを備えていてもよい。
【0079】
(3)上記第1及び第2実施形態では、上部スライダ41,241としての吊り車が片側二輪の複車であったが、片側一輪の単車でもよい。また、上部スライダ41,241のスライド方向と直交した両側面に走行輪43,43を有していたが、一側面だけに走行輪43を有した構成としてもよい。
【0080】
(4)上記第1実施形態における引戸20及び、上記第2実施形態における第2引戸70は、引戸支持キャスター30及び第2引戸支持キャスター230がそれぞれ1つだけであったが、スライド方向と直交した水平方向で対をなすようにそれぞれ2つずつ設けてもよい。
【0081】
(5)上記第2実施形態において、引戸収納ボックス10にメインヒンジ19,19を設けると共に、引戸収納ボックス10と第1引戸20とに回動アシスト機構(可動ベース15、ボックス支持キャスター16、可動ベース押下体24等)を設けて、第1実施形態の引戸ユニット100と同様な作用で、引戸収納ボックス10(引戸ユニット200)の回動操作が可能な構成としてもよい。
【0082】
(6)上記第2実施形態では、2枚の引戸20,70を備えていたが、3枚以上の引戸を入れ子式に備えた構成でもよい。
【0083】
(7)上記第1及び第2実施形態において、引戸収納ボックス10からの引戸20,70の飛び出しを防止するために、収納完了位置で引戸20,70の移動を禁止するロック部材(例えば、引戸収納ボックス10及び引戸20,70を貫通可能な閂)を設けてもよい。
【符号の説明】
【0084】
10 引戸収納ボックス
12 メイン引出口
15 可動ベース
15T 干渉突部
16 ボックス支持キャスター
19 メインヒンジ
20 引戸、第1引戸
22 引戸側ガイドレール
24 可動ベース押下体
25 戸尻側貫通孔
30 引戸支持キャスター
40 上部スライド機構
41 上部スライダ
45 上部ガイドレール
50 支持ローラ
60 下部スライド機構
61 下部ガイドレール
62 中間ガイドレール
70 第2引戸
72 引戸側ガイドレール
81 第1滑車
82 第2滑車
83 ワイヤー
100 引戸ユニット
200 引戸ユニット
212 第1引出口
230 第2引戸支持キャスター
240 上部スライド機構
241 上部スライダ
245 上部ガイドレール
250 支持ローラ
260 下部スライド機構
261 下部ガイドレール
262 中間ガイドレール
F1 床面
W1 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内に起立状態にして設置される扁平箱形構造の引戸収納ボックスと、前記引戸収納ボックスのうち幅狭の一側面に形成されたメイン引出口を通して、前記引戸収納ボックスに収納可能な引戸とを備えて、前記引戸の戸先側端部以外の全体を前記引戸収納ボックス内に収納した収納完了位置と、前記引戸の戸尻側端部以外の全体を前記引戸収納ボックス外に引き出した引出完了位置との間で前記引戸をスライド操作可能とした引戸ユニットであって、
前記引戸収納ボックスの内側上部に設けられ、前記引戸収納ボックスのうち幅狭の側面と直交する方向に延びた上部ガイドレールと、前記引戸の戸尻側端部の上端部に取り付けられ、前記上部ガイドレールにスライド可能に係合した上部スライダとからなる上部スライド機構によって前記引戸の戸尻側端部を吊り上げると共に、前記引戸の戸先側端部の下部に引戸支持キャスターを取り付けて建物の床面上で転動可能としたことを特徴とする引戸ユニット。
【請求項2】
前記引戸支持キャスターは、前記引戸のスライド方向と直交した回転軸を中心に回転可能としたことを特徴とする請求項1に記載の引戸ユニット。
【請求項3】
前記引戸収納ボックス内のうち前記メイン引出口の両側部分に回転可能に支持され、前記引戸を厚さ方向で挟んだ状態で前記引戸のスライドに伴って回動する1対の支持ローラを備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の引戸ユニット。
【請求項4】
前記引戸収納ボックスの内側下部に設けられ、前記引戸収納ボックスのうち幅狭の側面と直交する方向に延びた下部ガイドレールと、前記引戸の下端部に設けられて前記下部ガイドレールと平行に延びた引戸側ガイドレールと、前記下部ガイドレールと前記引戸側ガイドレールとの間に設けられ、前記下部ガイドレール及び前記引戸側ガイドレールにスライド可能に係合した中間ガイドレールとからなる下部スライド機構を備えたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1の請求項に記載の引戸ユニット。
【請求項5】
前記引戸として、扁平箱形構造をなしかつ前記メイン引出口と同じ方向を向いた第1引出口を有する第1引戸を備えると共に、その第1引出口を通して、前記第1引戸の内部に収納可能な第2引戸を備え、
前記第2引戸の戸先側端部以外の全体を前記第1引戸の内部に収納した収納完了位置と、前記第2引戸の戸尻側端部以外の全体を前記第1引戸の外部に引き出した引出完了位置との間で前記第2引戸をスライド操作可能とし、前記第1引戸と前記第2引戸との間に前記上部スライド機構を設けると共に前記第2引戸の下部に第2引戸支持キャスターを取り付けて建物の床面上で転動可能としたことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1の請求項に記載の引戸ユニット。
【請求項6】
前記第2引戸支持キャスターは、前記第2引戸のスライド方向と直交した回転軸を中心に回転可能としたことを特徴とする請求項5に記載の引戸ユニット。
【請求項7】
前記第1引戸のうち戸尻側端部に配置され、前記第1引戸のスライド方向と直交した回転軸を中心に回転可能な第1滑車と、前記第1引戸のうち戸先側端部の内部に配置され、前記第1引戸のスライド方向と直交した回転軸を中心に回転可能な第2滑車と、
前記引戸収納ボックスの奥壁に一端部を固定されたワイヤーを、前記第1引戸の戸尻側端部に備えた戸尻側貫通孔を通して前記第2滑車で前記第1引戸の戸尻側に折り返してから前記第1滑車で前記第1引戸の戸先側にさらに折り返して、前記戸尻側貫通孔を通して前記引戸収納ボックスの前記メイン引出口側の端部内面に前記ワイヤーの他端部を固定し、さらに、前記ワイヤーのうち前記第1滑車と第2滑車との間部分を前記第2引戸の戸尻側の端部に固定したことにより、前記第1引戸と前記第2引戸とが連動しかつ同時に前記収納完了位置及び前記引出完了位置に到達するように構成したことを特徴とする請求項5又は6に記載の引戸ユニット。
【請求項8】
前記引戸収納ボックスのうち前記メイン引出口と反対側の端部を建物に備えた固定対象物に回動可能に連結するメインヒンジと、
前記引戸収納ボックスのうち前記メイン引出口側の端部の下面壁に上下動可能に支持された可動ベースと、
前記可動ベースに取り付けられて、前記メインヒンジを中心として前記引戸収納ボックスが回動したときに前記建物の床面上で転動可能なボックス支持キャスターと、
前記可動ベースと前記引戸とに設けられ、前記引戸が前記収納完了位置からずれているときに、前記可動ベースの上方への移動を許容し、前記引戸が前記収納完了位置に移動したときに、前記可動ベースを可動範囲の下端位置に向けて押し下げ、前記ボックス支持キャスターを床面に当接させることで前記引戸支持キャスターを床面から上方に離間させた状態に保持するベース位置切替機構とを備えたことを特徴とする請求項1乃至7の何れか1の請求項に記載の引戸ユニット。
【請求項9】
前記請求項1乃至7の何れか1の請求項に記載の引戸ユニットの前記引戸収納ボックスに、前記請求項8に記載の引戸ユニットの前記引戸収納ボックスを前記メインヒンジにて回動可能に連結してなることを特徴とする引戸ユニットセット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−108214(P2013−108214A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251468(P2011−251468)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【特許番号】特許第4963137号(P4963137)
【特許公報発行日】平成24年6月27日(2012.6.27)
【出願人】(502354834)有限会社衣川木工所 (7)
【Fターム(参考)】