引戸用ロック装置
【課題】引戸に取り付けても見苦しくなく、操作が極めて簡単で、簡易な構造の引戸用ロック装置にする。
【解決手段】ケース2内に保持させたロックボルト5と操作部材3の夫々後端部を平面視直角方向に連結させた。この連結は操作部材3の後部の上下箇所から後方に向けて設けたアーム部の対向面に形成した傾斜溝内に、ロックボルト5後部の両端部に設けられた突起を突入係合させて行われている。操作部材3がばねで前方に付勢されて、その前部がケース2の開口部2e外に大きく移動した位置にあるときには、ロックボルト5がケース2の背板部2bに開設されている開口部2fから大きく外方向に突出しており、操作部材3が深く押されると、ロックボルト5がケース2内に没入して、操作部材3がこの位置で一時停止し、操作部材3を更に押操作すると元の位置の復帰するように構成した。
【解決手段】ケース2内に保持させたロックボルト5と操作部材3の夫々後端部を平面視直角方向に連結させた。この連結は操作部材3の後部の上下箇所から後方に向けて設けたアーム部の対向面に形成した傾斜溝内に、ロックボルト5後部の両端部に設けられた突起を突入係合させて行われている。操作部材3がばねで前方に付勢されて、その前部がケース2の開口部2e外に大きく移動した位置にあるときには、ロックボルト5がケース2の背板部2bに開設されている開口部2fから大きく外方向に突出しており、操作部材3が深く押されると、ロックボルト5がケース2内に没入して、操作部材3がこの位置で一時停止し、操作部材3を更に押操作すると元の位置の復帰するように構成した。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引戸を閉止位置でロックさせる、簡易な構造の引戸用ロック装置に関し、とくに、引き違い戸のロックに好適な装置である。
【従来技術】
【0002】
大型の食器棚,収納棚,書籍棚,リビングキャビネット等の家具には、引き違い戸を備えたものが多く見られるが、これらの家具の引き違い戸には、施錠の必要性に乏しいことから施錠器具や施錠装置が備え付けられていないものが多い。また、家具以外に用いられる引き違い戸においても、施錠器具や施錠装置を備えていないものがある。
【0003】
このため、家具や引き違い戸をトラックに搭載して搬送したり、人手で持ち運ぶときに、家具が傾くなどして、引戸がレール上を勢い良く走行したり、引戸がレールから外れて、引戸のガラスが傷付いたり割れることがある。この対策に、戸と戸の間に発泡スチロール製のクサビ材やクッション材を噛ませたり、粘着テープで仮止めするなどして、戸が開かないように固定させる方法があるが、搬送中にクサビ材が脱落したり、家具や引き違い戸に貼り付いた粘着テープの跡処理の問題があった。
【0004】
防犯対策等の目的で窓やベランダの引き違い戸をロックさせる簡易な構造の施錠器具や施錠装置も提案されており、例えば、特許文献1に記載の引戸用戸締金物、特許文献2に記載の引戸の施錠装置、特許文献3に記載の吸盤式補助錠などが公知であり、これらの器具は、上述した搬送時の不具合に対処できる。
【0005】
【特許文献1】特開平7−259409号公報
【特許文献2】実用新案登録第3044290号公報
【特許文献3】実用新案登録第313496号公報
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の引戸用戸締金物は、取手金物を手で90°回して前方に押し付けるという2つの操作が必要なため使い難く、手前側に突出した取手金物は見栄えが悪く、カーテンを開閉するときに引っ掛けるおそれがある。特許文献2に記載の吸盤式補助錠は、吸着に適した円滑な表面を持つ丈夫なガラス面でないと取り付けることができない。特許文献3に記載の引き違い戸用施錠具は、閂(かんぬき)を着脱させる操作が面倒で使い難く、見栄えも悪い。
【0007】
本発明は、引戸に取り付けても見苦しくなく、操作が極めて簡単で、簡易な構造の引戸用ロック装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明の引戸用ロック装置は、
引戸の戸先面から背面に至るコーナー部分に開設した開口内に取り付けられるケースを有し、該ケース内には、前記第1開口部からケース外方向に出没自在に保持されたロックボルトと、前記第2開口部からケース外方向に進退自在に保持された操作部材と、該操作部材を前進方向に付勢するばねと、前記操作部材を後退した位置で一時停止させるロック機構とが実装され、該ケースの前記背面に沿う背板部には前記ロックボルトを挿通させる第1開口部が設けられ、該ケースの前記戸先面に沿う側板部には前記操作部材を挿通させる第2開口部が設けられ、おり、
前記操作部材の後部に該操作部材の移動方向に向けた長い傾斜溝が設けられて、該傾斜溝内に前記ロックボルトの後部に設けられた突起が突入係合して、前記ロックボルトの後端部と前記操作部材の後部とが平面視直角方向に連結されており、
前記傾斜溝の傾斜の向きは、前記操作部材の前進方向の移動により前記ロックボルトを前記ケース外方向に大きく突出させ、該操作部材の後退方向の移動により前記ロックボルトを前記ケース内に略没入させる向きであり、
前記ロック機構は、前記操作部材の押操作を繰り返す毎に、前記操作部材を後退した位置で停止させて前進方向の移動を阻止する係止とこの係止の解除を交互に行なう機構である。
【0009】
この引戸用ロック装置は、前記ケース内において、前記ロックボルトの後端部と前記操作部材の後部とが平面視直角方向に連結されている。操作部材はばねで前方に付勢されてその前部がケースの外方向に突出している。
操作部材が押操作されていないときには、ロックボルトはケースの外方向に大きく突出している。操作部材を指先で押すと、ロックボルトはケース内に没入する後退した方向に移動し、操作部材が所定の後退した位置に達すると、ロック機構による係止が行われて、操作部材がこの位置で一時停止する。このとき、ロックボルトはケース内に略没入している。操作部材を指先で更に深く押すと、ロック機構による係止が解除されて、操作部材がばねの付勢力を受けて前進して、ロックボルトをケース内に没入させる。操作部材の押操作を繰り返す毎に上記の動作を繰り返される。
【0010】
請求項2に係る発明の引戸用ロック装置は、請求項1に記載の引戸用ロック装置において、
前記ロック機構は、前記操作部材の表面に形成された変形変形ハート形溝と、該表面に対向するケース内側面又はケース蓋の内側面に回転自在に保持された突起付きコマとを有し、該突起付きコマの外面に設けられている突起が前記変形ハート形溝内に突入しており、前記操作部材が押操作されて所定の後退した位置まで移動すると、該突起が変形ハート形溝の側壁に押されてこの溝内の係止位置で係止して前記操作部材の前進方向の移動を一時停止させ、前記操作部材が次の押操作をされると、前記突起が変形ハート形溝の側壁に押されて前記係止位置から外れた方向に移動して前記係止が解除されるように構成されている。
【0011】
このロック機構の係止位置は、ハート形状の頭部側壁の凹んだ部分であり、この凹んだ部分に突起付きコマの突起が移動すると、該突起がこの部分で係止されて、操作部材が次の押操作をされるまで、操作部材がばねの付勢力で前進するのを阻止する突起と変形ハート形溝による係止が行われる。操作部材が更に深く押し操作されると、突起が変形ハート形溝の前記係止位置に対向する位置にある側壁で押されて、突起付きコマを回転させながら、突起が前記係止位置から外れて係止解除される。
【0012】
ロック機構は、請求項2に記載のロック機構以外にも、操作部材の表面に形成されている変形ハート形溝と、金属小球とを有し、該金属小球は、操作部材の表面に対向するケース壁面又は該ケースの蓋の内側面に形成されている溝と前記変形ハート形溝の双方に突入係合しており、前記操作部材が押操作されて所定の後退した位置まで移動すると、前記金属小球が変形ハート形溝の側壁に押されてこの溝内の係止位置で係止して前記操作部材の前進方向の移動を一時停止させ、前記操作部材が次の押操作をされると、前記金属小球が変形ハート形溝の側壁に押されて前記係止位置から外れた方向に移動して前記係止が解除されるロック機構を採用してもよい。このロック機構は、請求項2に記載のロック機構と同様の作用効果を発揮する。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明の引戸用ロック装置によれば、前記ロックボルトの後端部と前記操作部材の後部とを平面視直角方向に連結して、前記操作部材の前進方向の移動により前記ロックボルトを前記ケース外方向に大きく突出させ、該操作部材の後退方向の移動により前記ロックボルトを前記ケース内に略没入させることができるようにした結果、引き違い戸を閉じた状態でロックさせるために用いる場合、前記操作部材を戸の手前側から見苦しく見えることがなく、指先による操作がし易い戸先側に設けることができるようになった。そして、ロックボルトをこの引戸の框に重合する向こう側の引戸の框辺りに突出させて、双方の引戸を閉じた位置で係止させることができるようになった。
しかも、本発明の引戸用ロック装置によれば、簡単な構造であり、指先で操作部材を押す操作を繰り返す毎に、ロック(係止)と係止解除が繰り返される、使い易い装置にすることができるようになった。
【0014】
請求項2に係る発明の引戸用ロック装置は、変形ハート形溝と、ケースの内側面に回転自在に保持された突起付きコマの突起とによる簡単な係合によって、操作部材が深く押され、ロックボルトがケース内に没入した状態を維持させることができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を実施するための最良の形態を次の実施例において詳述する。
【実施例】
【0016】
図1に示すリビングキッチン用の収納棚50には、軽金属製又は木製の戸枠61,71に板ガラスG,Gを固定させた2枚の引戸60,70が取り付けられている。互いに相反する直線方向に開閉させる2枚の引戸60,70は、引き違い戸とも呼ばれる。本発明実施形態の引戸用ロック装置(以下、本発明の引戸用ロック装置と略称する。)1は、引き違い戸である2枚の引戸60,70を閉じた状態をロック(係止)させるため、図2の部分拡大図に示すように、手前側の引戸60の戸枠61における戸先側になる框(かまち)62の中段高さの箇所に取り付けられる。このロック装置1は、家具や引き違い戸の製造工程において取り付けられるが、完成品の家具や引き違い戸に若干の加工をして後付けすることも可能である。
【0017】
図3(a)及び(b)に示すように、本発明の引戸用ロック装置1の取り付けにあたり、戸枠61がアルミサッシの場合には、框(かまち)62の戸先面63から背面64に至り平面視L字形状に切欠き加工して、取り付け用の開口65を開設する。木製の戸や戸枠の場合には、戸や戸枠に同様の凹部を開設する。
本発明の引戸用ロック装置1は、この開口65内にケース2を嵌め込み、背板部2bを框61の背面64に沿わせ、側板部2aを戸先面63に沿わせた状態でビス止めして装着する。
【0018】
図4(a)〜(c)に示すように、本発明の引戸用ロック装置1のケース2には、ロックボルト5が出没自在に保持され、操作部材3が進退自在に保持されている。背板部2bには、ロックボルト5を挿通させる第1開口部2fと、取付け用のビス孔2d,2d・・が開設されており、側板部2aには操作部材3を挿通させる第2開口部2eが開設されて、ロックボルト5に対して操作部材3が、平面視直角方向に向けられている。本発明の引戸用ロック装置1は、操作部材3が押操作されていない図4(a)及び(b)に示す状態においてはロックボルト5がケース2から大きく突出しており、操作部材3が深く押操作された図4(c)に示す状態においてはロックボルト5が開口部2f内に没入している。
【0019】
本発明の引戸用ロック装置は、引戸の種類や構造の違いにより、2通りの方法で引戸を閉じた状態でロックさせることができる。
その1つの方法が図5(a)及び(b)に示す方法である。この方法は、図5(a)に示すように2枚の引戸60,70を閉止させた状態において、ロックボルト5を手前側の引戸60側から向こう側の引戸70の戸先面73の前方に向けて突出させて、双方の引戸60,70が開かないようにする方法であり、図5(b)に示すようにはロックが解除された状態を示している。
【0020】
他の1つの方法が図6(a)及び(b)に示す方法であり、図6(a)に示すように前後2枚の引戸60,70の框62,72が前後に重合するタイプの引き違い戸に対応させたロック方法である。このロック方法では、2枚の引戸60,70が閉じた状態で、ロックボルト5を手前側の引戸60側から向こう側の引戸70に設けた凹部9内に突入させるようにする。凹部9は、樹脂製凹状の受具をドリル穴内に埋め込んで設けることが好ましく、1枚引戸をロックさせる場合には、凹部8を壁面等に設ける。
【0021】
図7に示すように、本発明の引戸用ロック装置1は、ケース2と、操作部材3と、ばね4と、ロックボルト5と、ケース蓋6と、突起付きコマ7とを構成部品とする。ばね4は、コイルばねを用いることが好ましい。
【0022】
図7を参照しつつ、図8(a)〜(c)に示すように、ケース2は、横向きU字形状の立設部2cと、背板部2bの一部面と、側板部2aの一部面とによって囲まれた横長のD字形状を有する。背板部2bの対向側は大きく開口されており、この開口には図7に示すケース蓋6が取り付けられる。
図8(b)及び(c)に示すように、ケース2内において、D字形状の第1開口部2fの後縁に沿った箇所には、背板部2bから起立した曲面リブ2hが位置し、第1開口部2fの前端縁に沿った前方箇所には、背板部2bから起立したばね受け座2jが位置している。
【0023】
図9(a)は操作部材を表面側から見た斜視図、(b)は背面側から見た斜視図、(c)は正面図、(d)は(c)におけるA−A断面図、(e)は(c)におけるB−B断面図である。
図9(a)〜(e)に示すように、操作部材3は、略方形ブロック形状を有する本体部3aと、本体部3aの後面上端部と後面下端部から後方に向けたアーム部3b,3bとによる一体形成品である。アーム部3b,3bに代えて、枠部材としてもよい。アーム部3b,3bの対向面には、2本の傾斜溝3g,3gが前後方向に形成されており、傾斜溝3g,3gの上端は開放されている。本体部3aの表面の略中央には、略ハート形状のカム溝3dと、前後方向に向けた2本の平行な溝3c、3cが形成されており、本体部3aの背面には、コイルばねの一端側を突入させて受けるための凹部3eが形成されている。
【0024】
図10に示すように、ロックボルト5は、D形状の断面形状をもつ有底筒形状の本体部5aの後端部の両側に、ピン状の突起5c,5cが中心線を揃えて相反対方向に突出した形状を有する。本体部5aは、図8(a)〜(c)に示すD形状の第1開口部2g内にガタつくことなく円滑に突入する大きさであり、突起5c,5cは、図9(a)〜(c)に示す傾斜溝3g,3g内に突入支持される大きさ間隔がある。
【0025】
図11(a)は突起付きコマを保持させたケース蓋を裏面側から見た斜視図、(b)は突起付きコマを取り外した状態のケース蓋を裏面側から見た斜視図、(c)は突起付きコマを裏面側から見た斜視図、(d)は突起付きコマを保持させたケース蓋の側面断面図である。
図11(b)に示すように、ケース蓋6の裏面の略中央箇所には、円形凹段部よりなるコマ保持部6aが設けられ、コマ保持部6aの中央面には軸孔6bが開設されている。そして、ケース蓋6の裏面前部箇所には、平行な短い凸条6c,6cが設けられている。図11(a)及び(d)に示すように、コマ保持部6a内には、突起付きコマ7が突起7bを外側に向けて保持されている。
図11(a)〜(d)に示すように、突起付きコマ7は円板状のコマ本体7aの一方の片側中央面に短軸7bが突出し、他方の片側外周近傍面に突起7cが突出した形状を有する。突起付きコマ7は、図11(a)及び(b)(d)に示すように、短軸7bをケース蓋6中央の孔6b内に突入させた状態で、コマ保持部6a内に回転自在に保持されている。
【0026】
本発明の引戸ロック装置に組付構造と動作が、図12(a)及び(b)と、図13(a)及び(b)に示されている。
図12(a)及び(b)に示すように、操作部材3は、アーム部3b,3bを後方に向け、カム溝3dが形成されている表面をケース蓋6に対向させた姿勢で、ケース2前面の開口部2fからケース2の外方向の先端部を突出させた状態で、進退自在に保持されている。ロックボルト5は、突起5c,5cを後方に向けて、ケース2の背板部2bに開設されている開口部2fから出没自在に保持されている。ロックボルト5は、一方側の突起5cが一方の傾斜溝3g内に突入され、他方側の突起5cが他方の片側の傾斜溝3g内に突入して、操作部材3と平面視直角方向に連結されている。このため、操作部材3がコイルばね4の付勢力を受けてケース2内から突出する方向に移動すると双方のピン5c,5cが傾斜溝3g,3gの壁面で押されて、ロックボルト5がケース2内から突出する方向に移動する。指先の押操作によって操作部材3が後退方向に移動すると、ロックボルト5がケース2内に没入する方向に移動する。
【0027】
操作部材3は、コイルばね4によって常に前方に付勢されているが、操作部材3の後端部とロックボルト5の後端部とが、傾斜溝3g,3gとピン5c,5cによる係合によって連結されているため、操作部材3の進退方向の移動範囲はロックボルト5によって規制されている。また、操作部材3の表面に形成されている溝3c,3c内にケース蓋6の凸条6c,6cが突入して、操作部材3の移動方向と移動幅が規制されている。
【0028】
更に、操作部材3の表面に形成されているカム溝3d内に、ケース蓋6の裏面に保持されている突起付きコマ7の突起7bが突入して、操作部材3の移動を規制している。ハート形のカム溝3dと突起付きコマ7との組合せによるロック機構は、操作部材3の進退移動に伴って、突起7cが略ハート形のカム溝3dの側壁に押されて、突起付きコマ7を軸回転させながらカム溝3d内を移動する動作を行う。図12(a)(b)に示す操作部材3が最も前進(突出)した状態にあるときには、突起7bは、カム溝3d内後部の非係止位置にある。
【0029】
図12(a)及び(b)に示す操作部材3がケース2突出した状態から、図13(a)及び(b)に示す操作部材3が指先で押されて後退方向に移動すると、突起7cはカム溝3dの壁面で押されながら、カム溝3d内を移動し、このとき、突起7cがカム溝3dの側壁の凹んだ位置である係止位置Pで受け止められて係止する。このため、操作部材3はコイルばね7で付勢されているにもかかわらず、この後退した位置で停止する。ロックボルト5も、ケース2内に没入した位置で停止する。ロックボルト5は、ケース2内に後退しても、D字形状の開口2gの前後に位置するばね受け座2jと曲面リブ2hとによって常に安定した状態で保持されている。
【0030】
操作部材3を図13(a)(b)に示す状態から、更に指先で押し操作すると、突起7bは、カム溝3dの偏心した曲面を持つ側壁Rに沿う方向に押されて、係止位置Pから外れた横方向に移動する。この結果、操作部材3の前方移動を規制させていた、突起7bとカム溝3dの壁面とによる係止が解除された状態になり、操作部材3はコイルばね7の付勢力によって図12(a)及び(b)に示す位置まで自然復帰する。
【0031】
本発明の引戸用ロック装置は、操作部材を指先で押す操作を繰り返すごとに、ケース2内から、ロックボルト5が突出したり、ケース2内に没入する動作を繰り返す。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】引き違い戸を備えたリビングキッチン用収納棚の斜視図。
【図2】その一部を断面視して示した拡大図。
【図3】(a)は本発明の引戸用ロック装置の取り付け方法を引戸の手前側から示した斜視図、(b)は引戸の向こう側から示した斜視図。
【図4】(a)はロックボルトが突出位置にある本発明の引戸用ロック装置の表面側から見た斜視図、(b)は背面側から見た斜視図、(c)はロックボルトを後退させた状態で示した斜視図。
【図5】(a)は本発明の引戸用ロック装置による引き違い戸のロックの1例を示した部分拡大平面断面図、(b)はロック解除状態を示した図。
【図6】(a)は本発明の引戸用ロック装置による引き違い戸のロックの他例を示した部分拡大平面断面図、(b)はロック解除状態を示した図。
【図7】(a)は本発明の引戸用ロック装置の分解斜視図。
【図8】(a)はケースを表面側から見た斜視図、(b)は背面図、(c)は(b)におけるA−A断面図。
【図9】(a)は操作部材を表面側から見た斜視図、(b)は背面側から見た斜視図、(c)は正面図、(d)は(c)におけるA−A断面図、(e)は(c)におけるB−B断面図。
【図10】(a)はロックボルトの斜視図。
【図11】(a)は突起付きコマを保持させたケース蓋を裏面側から見た斜視図、(b)は突起付きコマを取り外した状態のケース蓋を裏面側から見た斜視図、(c)は突起付きコマを裏面側から見た斜視図、(d)は突起付きコマを保持させたケース蓋の側面断面図。
【図12】(a)は本発明の引戸ロック装置を作動部材が押されてロックボルトが突出した状態を背面側から見た部分断面図、(b)は平面側から見た部分断面図。
【図13】(a)は本発明の引戸ロック装置を作動部材が押し戻されてロックボルトが後退した状態を背面側から見た部分断面図、(b)は平面側から見た部分断面図。
【符号の説明】
【0033】
1 本発明の引戸用ロック装置
2 ケース
2a 側板部
2b 背板
2e 開口部
2f 開口部
3 操作部材
3b アーム部
3g 傾斜溝
4 ばね(コイルばね)
5 ロックボルト
6 ケース蓋
7 突起付きコマ
7c 突起
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引戸を閉止位置でロックさせる、簡易な構造の引戸用ロック装置に関し、とくに、引き違い戸のロックに好適な装置である。
【従来技術】
【0002】
大型の食器棚,収納棚,書籍棚,リビングキャビネット等の家具には、引き違い戸を備えたものが多く見られるが、これらの家具の引き違い戸には、施錠の必要性に乏しいことから施錠器具や施錠装置が備え付けられていないものが多い。また、家具以外に用いられる引き違い戸においても、施錠器具や施錠装置を備えていないものがある。
【0003】
このため、家具や引き違い戸をトラックに搭載して搬送したり、人手で持ち運ぶときに、家具が傾くなどして、引戸がレール上を勢い良く走行したり、引戸がレールから外れて、引戸のガラスが傷付いたり割れることがある。この対策に、戸と戸の間に発泡スチロール製のクサビ材やクッション材を噛ませたり、粘着テープで仮止めするなどして、戸が開かないように固定させる方法があるが、搬送中にクサビ材が脱落したり、家具や引き違い戸に貼り付いた粘着テープの跡処理の問題があった。
【0004】
防犯対策等の目的で窓やベランダの引き違い戸をロックさせる簡易な構造の施錠器具や施錠装置も提案されており、例えば、特許文献1に記載の引戸用戸締金物、特許文献2に記載の引戸の施錠装置、特許文献3に記載の吸盤式補助錠などが公知であり、これらの器具は、上述した搬送時の不具合に対処できる。
【0005】
【特許文献1】特開平7−259409号公報
【特許文献2】実用新案登録第3044290号公報
【特許文献3】実用新案登録第313496号公報
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の引戸用戸締金物は、取手金物を手で90°回して前方に押し付けるという2つの操作が必要なため使い難く、手前側に突出した取手金物は見栄えが悪く、カーテンを開閉するときに引っ掛けるおそれがある。特許文献2に記載の吸盤式補助錠は、吸着に適した円滑な表面を持つ丈夫なガラス面でないと取り付けることができない。特許文献3に記載の引き違い戸用施錠具は、閂(かんぬき)を着脱させる操作が面倒で使い難く、見栄えも悪い。
【0007】
本発明は、引戸に取り付けても見苦しくなく、操作が極めて簡単で、簡易な構造の引戸用ロック装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明の引戸用ロック装置は、
引戸の戸先面から背面に至るコーナー部分に開設した開口内に取り付けられるケースを有し、該ケース内には、前記第1開口部からケース外方向に出没自在に保持されたロックボルトと、前記第2開口部からケース外方向に進退自在に保持された操作部材と、該操作部材を前進方向に付勢するばねと、前記操作部材を後退した位置で一時停止させるロック機構とが実装され、該ケースの前記背面に沿う背板部には前記ロックボルトを挿通させる第1開口部が設けられ、該ケースの前記戸先面に沿う側板部には前記操作部材を挿通させる第2開口部が設けられ、おり、
前記操作部材の後部に該操作部材の移動方向に向けた長い傾斜溝が設けられて、該傾斜溝内に前記ロックボルトの後部に設けられた突起が突入係合して、前記ロックボルトの後端部と前記操作部材の後部とが平面視直角方向に連結されており、
前記傾斜溝の傾斜の向きは、前記操作部材の前進方向の移動により前記ロックボルトを前記ケース外方向に大きく突出させ、該操作部材の後退方向の移動により前記ロックボルトを前記ケース内に略没入させる向きであり、
前記ロック機構は、前記操作部材の押操作を繰り返す毎に、前記操作部材を後退した位置で停止させて前進方向の移動を阻止する係止とこの係止の解除を交互に行なう機構である。
【0009】
この引戸用ロック装置は、前記ケース内において、前記ロックボルトの後端部と前記操作部材の後部とが平面視直角方向に連結されている。操作部材はばねで前方に付勢されてその前部がケースの外方向に突出している。
操作部材が押操作されていないときには、ロックボルトはケースの外方向に大きく突出している。操作部材を指先で押すと、ロックボルトはケース内に没入する後退した方向に移動し、操作部材が所定の後退した位置に達すると、ロック機構による係止が行われて、操作部材がこの位置で一時停止する。このとき、ロックボルトはケース内に略没入している。操作部材を指先で更に深く押すと、ロック機構による係止が解除されて、操作部材がばねの付勢力を受けて前進して、ロックボルトをケース内に没入させる。操作部材の押操作を繰り返す毎に上記の動作を繰り返される。
【0010】
請求項2に係る発明の引戸用ロック装置は、請求項1に記載の引戸用ロック装置において、
前記ロック機構は、前記操作部材の表面に形成された変形変形ハート形溝と、該表面に対向するケース内側面又はケース蓋の内側面に回転自在に保持された突起付きコマとを有し、該突起付きコマの外面に設けられている突起が前記変形ハート形溝内に突入しており、前記操作部材が押操作されて所定の後退した位置まで移動すると、該突起が変形ハート形溝の側壁に押されてこの溝内の係止位置で係止して前記操作部材の前進方向の移動を一時停止させ、前記操作部材が次の押操作をされると、前記突起が変形ハート形溝の側壁に押されて前記係止位置から外れた方向に移動して前記係止が解除されるように構成されている。
【0011】
このロック機構の係止位置は、ハート形状の頭部側壁の凹んだ部分であり、この凹んだ部分に突起付きコマの突起が移動すると、該突起がこの部分で係止されて、操作部材が次の押操作をされるまで、操作部材がばねの付勢力で前進するのを阻止する突起と変形ハート形溝による係止が行われる。操作部材が更に深く押し操作されると、突起が変形ハート形溝の前記係止位置に対向する位置にある側壁で押されて、突起付きコマを回転させながら、突起が前記係止位置から外れて係止解除される。
【0012】
ロック機構は、請求項2に記載のロック機構以外にも、操作部材の表面に形成されている変形ハート形溝と、金属小球とを有し、該金属小球は、操作部材の表面に対向するケース壁面又は該ケースの蓋の内側面に形成されている溝と前記変形ハート形溝の双方に突入係合しており、前記操作部材が押操作されて所定の後退した位置まで移動すると、前記金属小球が変形ハート形溝の側壁に押されてこの溝内の係止位置で係止して前記操作部材の前進方向の移動を一時停止させ、前記操作部材が次の押操作をされると、前記金属小球が変形ハート形溝の側壁に押されて前記係止位置から外れた方向に移動して前記係止が解除されるロック機構を採用してもよい。このロック機構は、請求項2に記載のロック機構と同様の作用効果を発揮する。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明の引戸用ロック装置によれば、前記ロックボルトの後端部と前記操作部材の後部とを平面視直角方向に連結して、前記操作部材の前進方向の移動により前記ロックボルトを前記ケース外方向に大きく突出させ、該操作部材の後退方向の移動により前記ロックボルトを前記ケース内に略没入させることができるようにした結果、引き違い戸を閉じた状態でロックさせるために用いる場合、前記操作部材を戸の手前側から見苦しく見えることがなく、指先による操作がし易い戸先側に設けることができるようになった。そして、ロックボルトをこの引戸の框に重合する向こう側の引戸の框辺りに突出させて、双方の引戸を閉じた位置で係止させることができるようになった。
しかも、本発明の引戸用ロック装置によれば、簡単な構造であり、指先で操作部材を押す操作を繰り返す毎に、ロック(係止)と係止解除が繰り返される、使い易い装置にすることができるようになった。
【0014】
請求項2に係る発明の引戸用ロック装置は、変形ハート形溝と、ケースの内側面に回転自在に保持された突起付きコマの突起とによる簡単な係合によって、操作部材が深く押され、ロックボルトがケース内に没入した状態を維持させることができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を実施するための最良の形態を次の実施例において詳述する。
【実施例】
【0016】
図1に示すリビングキッチン用の収納棚50には、軽金属製又は木製の戸枠61,71に板ガラスG,Gを固定させた2枚の引戸60,70が取り付けられている。互いに相反する直線方向に開閉させる2枚の引戸60,70は、引き違い戸とも呼ばれる。本発明実施形態の引戸用ロック装置(以下、本発明の引戸用ロック装置と略称する。)1は、引き違い戸である2枚の引戸60,70を閉じた状態をロック(係止)させるため、図2の部分拡大図に示すように、手前側の引戸60の戸枠61における戸先側になる框(かまち)62の中段高さの箇所に取り付けられる。このロック装置1は、家具や引き違い戸の製造工程において取り付けられるが、完成品の家具や引き違い戸に若干の加工をして後付けすることも可能である。
【0017】
図3(a)及び(b)に示すように、本発明の引戸用ロック装置1の取り付けにあたり、戸枠61がアルミサッシの場合には、框(かまち)62の戸先面63から背面64に至り平面視L字形状に切欠き加工して、取り付け用の開口65を開設する。木製の戸や戸枠の場合には、戸や戸枠に同様の凹部を開設する。
本発明の引戸用ロック装置1は、この開口65内にケース2を嵌め込み、背板部2bを框61の背面64に沿わせ、側板部2aを戸先面63に沿わせた状態でビス止めして装着する。
【0018】
図4(a)〜(c)に示すように、本発明の引戸用ロック装置1のケース2には、ロックボルト5が出没自在に保持され、操作部材3が進退自在に保持されている。背板部2bには、ロックボルト5を挿通させる第1開口部2fと、取付け用のビス孔2d,2d・・が開設されており、側板部2aには操作部材3を挿通させる第2開口部2eが開設されて、ロックボルト5に対して操作部材3が、平面視直角方向に向けられている。本発明の引戸用ロック装置1は、操作部材3が押操作されていない図4(a)及び(b)に示す状態においてはロックボルト5がケース2から大きく突出しており、操作部材3が深く押操作された図4(c)に示す状態においてはロックボルト5が開口部2f内に没入している。
【0019】
本発明の引戸用ロック装置は、引戸の種類や構造の違いにより、2通りの方法で引戸を閉じた状態でロックさせることができる。
その1つの方法が図5(a)及び(b)に示す方法である。この方法は、図5(a)に示すように2枚の引戸60,70を閉止させた状態において、ロックボルト5を手前側の引戸60側から向こう側の引戸70の戸先面73の前方に向けて突出させて、双方の引戸60,70が開かないようにする方法であり、図5(b)に示すようにはロックが解除された状態を示している。
【0020】
他の1つの方法が図6(a)及び(b)に示す方法であり、図6(a)に示すように前後2枚の引戸60,70の框62,72が前後に重合するタイプの引き違い戸に対応させたロック方法である。このロック方法では、2枚の引戸60,70が閉じた状態で、ロックボルト5を手前側の引戸60側から向こう側の引戸70に設けた凹部9内に突入させるようにする。凹部9は、樹脂製凹状の受具をドリル穴内に埋め込んで設けることが好ましく、1枚引戸をロックさせる場合には、凹部8を壁面等に設ける。
【0021】
図7に示すように、本発明の引戸用ロック装置1は、ケース2と、操作部材3と、ばね4と、ロックボルト5と、ケース蓋6と、突起付きコマ7とを構成部品とする。ばね4は、コイルばねを用いることが好ましい。
【0022】
図7を参照しつつ、図8(a)〜(c)に示すように、ケース2は、横向きU字形状の立設部2cと、背板部2bの一部面と、側板部2aの一部面とによって囲まれた横長のD字形状を有する。背板部2bの対向側は大きく開口されており、この開口には図7に示すケース蓋6が取り付けられる。
図8(b)及び(c)に示すように、ケース2内において、D字形状の第1開口部2fの後縁に沿った箇所には、背板部2bから起立した曲面リブ2hが位置し、第1開口部2fの前端縁に沿った前方箇所には、背板部2bから起立したばね受け座2jが位置している。
【0023】
図9(a)は操作部材を表面側から見た斜視図、(b)は背面側から見た斜視図、(c)は正面図、(d)は(c)におけるA−A断面図、(e)は(c)におけるB−B断面図である。
図9(a)〜(e)に示すように、操作部材3は、略方形ブロック形状を有する本体部3aと、本体部3aの後面上端部と後面下端部から後方に向けたアーム部3b,3bとによる一体形成品である。アーム部3b,3bに代えて、枠部材としてもよい。アーム部3b,3bの対向面には、2本の傾斜溝3g,3gが前後方向に形成されており、傾斜溝3g,3gの上端は開放されている。本体部3aの表面の略中央には、略ハート形状のカム溝3dと、前後方向に向けた2本の平行な溝3c、3cが形成されており、本体部3aの背面には、コイルばねの一端側を突入させて受けるための凹部3eが形成されている。
【0024】
図10に示すように、ロックボルト5は、D形状の断面形状をもつ有底筒形状の本体部5aの後端部の両側に、ピン状の突起5c,5cが中心線を揃えて相反対方向に突出した形状を有する。本体部5aは、図8(a)〜(c)に示すD形状の第1開口部2g内にガタつくことなく円滑に突入する大きさであり、突起5c,5cは、図9(a)〜(c)に示す傾斜溝3g,3g内に突入支持される大きさ間隔がある。
【0025】
図11(a)は突起付きコマを保持させたケース蓋を裏面側から見た斜視図、(b)は突起付きコマを取り外した状態のケース蓋を裏面側から見た斜視図、(c)は突起付きコマを裏面側から見た斜視図、(d)は突起付きコマを保持させたケース蓋の側面断面図である。
図11(b)に示すように、ケース蓋6の裏面の略中央箇所には、円形凹段部よりなるコマ保持部6aが設けられ、コマ保持部6aの中央面には軸孔6bが開設されている。そして、ケース蓋6の裏面前部箇所には、平行な短い凸条6c,6cが設けられている。図11(a)及び(d)に示すように、コマ保持部6a内には、突起付きコマ7が突起7bを外側に向けて保持されている。
図11(a)〜(d)に示すように、突起付きコマ7は円板状のコマ本体7aの一方の片側中央面に短軸7bが突出し、他方の片側外周近傍面に突起7cが突出した形状を有する。突起付きコマ7は、図11(a)及び(b)(d)に示すように、短軸7bをケース蓋6中央の孔6b内に突入させた状態で、コマ保持部6a内に回転自在に保持されている。
【0026】
本発明の引戸ロック装置に組付構造と動作が、図12(a)及び(b)と、図13(a)及び(b)に示されている。
図12(a)及び(b)に示すように、操作部材3は、アーム部3b,3bを後方に向け、カム溝3dが形成されている表面をケース蓋6に対向させた姿勢で、ケース2前面の開口部2fからケース2の外方向の先端部を突出させた状態で、進退自在に保持されている。ロックボルト5は、突起5c,5cを後方に向けて、ケース2の背板部2bに開設されている開口部2fから出没自在に保持されている。ロックボルト5は、一方側の突起5cが一方の傾斜溝3g内に突入され、他方側の突起5cが他方の片側の傾斜溝3g内に突入して、操作部材3と平面視直角方向に連結されている。このため、操作部材3がコイルばね4の付勢力を受けてケース2内から突出する方向に移動すると双方のピン5c,5cが傾斜溝3g,3gの壁面で押されて、ロックボルト5がケース2内から突出する方向に移動する。指先の押操作によって操作部材3が後退方向に移動すると、ロックボルト5がケース2内に没入する方向に移動する。
【0027】
操作部材3は、コイルばね4によって常に前方に付勢されているが、操作部材3の後端部とロックボルト5の後端部とが、傾斜溝3g,3gとピン5c,5cによる係合によって連結されているため、操作部材3の進退方向の移動範囲はロックボルト5によって規制されている。また、操作部材3の表面に形成されている溝3c,3c内にケース蓋6の凸条6c,6cが突入して、操作部材3の移動方向と移動幅が規制されている。
【0028】
更に、操作部材3の表面に形成されているカム溝3d内に、ケース蓋6の裏面に保持されている突起付きコマ7の突起7bが突入して、操作部材3の移動を規制している。ハート形のカム溝3dと突起付きコマ7との組合せによるロック機構は、操作部材3の進退移動に伴って、突起7cが略ハート形のカム溝3dの側壁に押されて、突起付きコマ7を軸回転させながらカム溝3d内を移動する動作を行う。図12(a)(b)に示す操作部材3が最も前進(突出)した状態にあるときには、突起7bは、カム溝3d内後部の非係止位置にある。
【0029】
図12(a)及び(b)に示す操作部材3がケース2突出した状態から、図13(a)及び(b)に示す操作部材3が指先で押されて後退方向に移動すると、突起7cはカム溝3dの壁面で押されながら、カム溝3d内を移動し、このとき、突起7cがカム溝3dの側壁の凹んだ位置である係止位置Pで受け止められて係止する。このため、操作部材3はコイルばね7で付勢されているにもかかわらず、この後退した位置で停止する。ロックボルト5も、ケース2内に没入した位置で停止する。ロックボルト5は、ケース2内に後退しても、D字形状の開口2gの前後に位置するばね受け座2jと曲面リブ2hとによって常に安定した状態で保持されている。
【0030】
操作部材3を図13(a)(b)に示す状態から、更に指先で押し操作すると、突起7bは、カム溝3dの偏心した曲面を持つ側壁Rに沿う方向に押されて、係止位置Pから外れた横方向に移動する。この結果、操作部材3の前方移動を規制させていた、突起7bとカム溝3dの壁面とによる係止が解除された状態になり、操作部材3はコイルばね7の付勢力によって図12(a)及び(b)に示す位置まで自然復帰する。
【0031】
本発明の引戸用ロック装置は、操作部材を指先で押す操作を繰り返すごとに、ケース2内から、ロックボルト5が突出したり、ケース2内に没入する動作を繰り返す。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】引き違い戸を備えたリビングキッチン用収納棚の斜視図。
【図2】その一部を断面視して示した拡大図。
【図3】(a)は本発明の引戸用ロック装置の取り付け方法を引戸の手前側から示した斜視図、(b)は引戸の向こう側から示した斜視図。
【図4】(a)はロックボルトが突出位置にある本発明の引戸用ロック装置の表面側から見た斜視図、(b)は背面側から見た斜視図、(c)はロックボルトを後退させた状態で示した斜視図。
【図5】(a)は本発明の引戸用ロック装置による引き違い戸のロックの1例を示した部分拡大平面断面図、(b)はロック解除状態を示した図。
【図6】(a)は本発明の引戸用ロック装置による引き違い戸のロックの他例を示した部分拡大平面断面図、(b)はロック解除状態を示した図。
【図7】(a)は本発明の引戸用ロック装置の分解斜視図。
【図8】(a)はケースを表面側から見た斜視図、(b)は背面図、(c)は(b)におけるA−A断面図。
【図9】(a)は操作部材を表面側から見た斜視図、(b)は背面側から見た斜視図、(c)は正面図、(d)は(c)におけるA−A断面図、(e)は(c)におけるB−B断面図。
【図10】(a)はロックボルトの斜視図。
【図11】(a)は突起付きコマを保持させたケース蓋を裏面側から見た斜視図、(b)は突起付きコマを取り外した状態のケース蓋を裏面側から見た斜視図、(c)は突起付きコマを裏面側から見た斜視図、(d)は突起付きコマを保持させたケース蓋の側面断面図。
【図12】(a)は本発明の引戸ロック装置を作動部材が押されてロックボルトが突出した状態を背面側から見た部分断面図、(b)は平面側から見た部分断面図。
【図13】(a)は本発明の引戸ロック装置を作動部材が押し戻されてロックボルトが後退した状態を背面側から見た部分断面図、(b)は平面側から見た部分断面図。
【符号の説明】
【0033】
1 本発明の引戸用ロック装置
2 ケース
2a 側板部
2b 背板
2e 開口部
2f 開口部
3 操作部材
3b アーム部
3g 傾斜溝
4 ばね(コイルばね)
5 ロックボルト
6 ケース蓋
7 突起付きコマ
7c 突起
【特許請求の範囲】
【請求項1】
引戸の戸先面から背面に至るコーナー部分に開設した開口内に取り付けられるケースを有し、該ケース内には、前記第1開口部からケース外方向に出没自在に保持されたロックボルトと、前記第2開口部からケース外方向に進退自在に保持された操作部材と、該操作部材を前進方向に付勢するばねと、前記操作部材を後退した位置で一時停止させるロック機構とが実装され、該ケースの前記背面に沿う背板部には前記ロックボルトを挿通させる第1開口部が設けられ、該ケースの前記戸先面に沿う側板部には前記操作部材を挿通させる第2開口部が設けられ、おり、
前記操作部材の後部に該操作部材の移動方向に向けた長い傾斜溝が設けられて、該傾斜溝内に前記ロックボルトの後部に設けられた突起が突入係合して、前記ロックボルトの後端部と前記操作部材の後部とが平面視直角方向に連結されており、
前記傾斜溝の傾斜の向きは、前記操作部材の前進方向の移動により前記ロックボルトを前記ケース外方向に大きく突出させ、該操作部材の後退方向の移動により前記ロックボルトを前記ケース内に略没入させる向きであり、
前記ロック機構は、前記操作部材の押操作を繰り返す毎に、前記操作部材を後退した位置で停止させて前進方向の移動を阻止する係止とこの係止の解除を交互に行なう機構であることを特徴とする引戸用ロック装置。
【請求項2】
前記ロック機構は、前記操作部材の表面に形成された変形変形ハート形溝と、該表面に対向するケース内側面又はケース蓋の内側面に回転自在に保持された突起付きコマとを有し、該突起付きコマの外面に設けられている突起が前記変形ハート形溝内に突入しており、前記操作部材が押操作されて所定の後退した位置まで移動すると、該突起が変形ハート形溝の側壁に押されてこの溝内の係止位置で係止して前記操作部材の前進方向の移動を一時停止させ、前記操作部材が次の押操作をされると、前記突起が変形ハート形溝の側壁に押されて前記係止位置から外れた方向に移動して前記係止が解除されるように構成されている、請求項1に記載の引戸用ロック装置。
【請求項1】
引戸の戸先面から背面に至るコーナー部分に開設した開口内に取り付けられるケースを有し、該ケース内には、前記第1開口部からケース外方向に出没自在に保持されたロックボルトと、前記第2開口部からケース外方向に進退自在に保持された操作部材と、該操作部材を前進方向に付勢するばねと、前記操作部材を後退した位置で一時停止させるロック機構とが実装され、該ケースの前記背面に沿う背板部には前記ロックボルトを挿通させる第1開口部が設けられ、該ケースの前記戸先面に沿う側板部には前記操作部材を挿通させる第2開口部が設けられ、おり、
前記操作部材の後部に該操作部材の移動方向に向けた長い傾斜溝が設けられて、該傾斜溝内に前記ロックボルトの後部に設けられた突起が突入係合して、前記ロックボルトの後端部と前記操作部材の後部とが平面視直角方向に連結されており、
前記傾斜溝の傾斜の向きは、前記操作部材の前進方向の移動により前記ロックボルトを前記ケース外方向に大きく突出させ、該操作部材の後退方向の移動により前記ロックボルトを前記ケース内に略没入させる向きであり、
前記ロック機構は、前記操作部材の押操作を繰り返す毎に、前記操作部材を後退した位置で停止させて前進方向の移動を阻止する係止とこの係止の解除を交互に行なう機構であることを特徴とする引戸用ロック装置。
【請求項2】
前記ロック機構は、前記操作部材の表面に形成された変形変形ハート形溝と、該表面に対向するケース内側面又はケース蓋の内側面に回転自在に保持された突起付きコマとを有し、該突起付きコマの外面に設けられている突起が前記変形ハート形溝内に突入しており、前記操作部材が押操作されて所定の後退した位置まで移動すると、該突起が変形ハート形溝の側壁に押されてこの溝内の係止位置で係止して前記操作部材の前進方向の移動を一時停止させ、前記操作部材が次の押操作をされると、前記突起が変形ハート形溝の側壁に押されて前記係止位置から外れた方向に移動して前記係止が解除されるように構成されている、請求項1に記載の引戸用ロック装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−121437(P2010−121437A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−131426(P2009−131426)
【出願日】平成21年5月8日(2009.5.8)
【基礎とした実用新案登録】実用新案登録第3149649号
【原出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(594000413)若間金物株式会社 (3)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月8日(2009.5.8)
【基礎とした実用新案登録】実用新案登録第3149649号
【原出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(594000413)若間金物株式会社 (3)
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