説明

引戸用取手および引戸

【課題】使用者が引く方向を間違えて引戸を引こうとしたときにも、引戸が破損することを防止して、適正な方向に開閉することができる引戸用取手と引戸を提供する。
【解決手段】取手13は柱状体であって、この柱状体の横方向の幅は、取付面13b側が広く、取付面13bから遠くなるに伴って狭くなるように形成されている。使用者から見ると、使用者に近い側の方が狭くなる構造となっている。そのため、引戸を開こうとして使用者が取手13に手を掛けたときに、使用者が誤って引戸を自分が位置する側に引こうとしても、取手13は力を入れにくい形状となっているため、大きな力で引戸を自分の側に引くことができない。そのため、引戸の留め具やレールを破損することがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引戸を開閉する際に使用される引戸用取手と、この取手が設けられた引戸に関する。
【背景技術】
【0002】
引戸は様々な場所に設置されて使用されている。一般的に使用されている引戸の例を図4に示す。
図4において、引戸50はレール51に吊された上吊引戸であり、戸板52の一端に取手53が取付けられている。戸板52の上方には車輪固定部54が設けられ、この車輪固定部54内に、レール51と接するように車輪55が配置されている。引戸50を開けようとするものは、取手53に手を掛けて、矢印で示す方向に引戸50をレール51に沿って移動させる。
【0003】
ところが、取手53が図示したもののようにコの字型のものであると、矢印で示す方向ではなく、自分が立っている側に誤って引っ張ることも可能であるため、このような方向に引戸50が引っ張られると、引戸50の留め具やレール51を破損してしまう。引戸50はこのような状況を想定せずに作られているのが通常であるため、誤って使用されることにより容易に破損するという事態が生じている。また、使用者側から見ると、何度か立ち寄った場所であれば引く方向を間違えることは少ないものの、初めての場所である場合や、急用があって慌てている場合などには、案外引く方向を間違えることがある。
【0004】
引戸に関しては様々な改良がなされており、その一つとして、収納を効率良く行うことを目的とした技術の一例が、特許文献1に記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2006−219866号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述したような、引く方向を間違えたときを想定した対策が採られた例はまだない。
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、使用者が引く方向を間違えて引戸を引こうとしたときにも、引戸が破損することを防止して、適正な方向に開閉することができる引戸用取手と、この引戸用取手が設けられた引戸を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するために、本発明の引戸用取手は、引戸に取付られる柱状体の引戸用取手であって、前記柱状体の幅は引戸への取付面が最も広く、前記取付面から遠くなるに伴って狭くなるように形成されていることを特徴とする。
【0008】
引戸用取手がこのような柱状体となっていることにより、引戸を開こうとして使用者が取手に手を掛けたときに、使用者が誤って引戸を自分が位置する側に引こうとしても、取手は力を入れにくい形状となっているため、大きな力で引戸を自分の側に引くことができない。そのため、引戸の留め具やレールを破損することがない。その一方で、引戸をレール方向に沿って正常に引くためには、取手を手で保持すればよく、正常な方向への移動には支障がない構造となっている。
また、取手の取付面は最も広くなるように形成されているため、戸板に取付けるために必要な面積は十分に確保されており、取手の戸板への固定は強固である。
【0009】
このような柱状体を形成することは、柱状体の上面または横面を三角形状、台形状、または先端部が円弧状のいずれかとすることによって可能である。
これらの形状の柱状体は作製が簡単であり、また、引戸をレール方向に沿って正常な方向に引く際に、柱状体に形成される側面を手で押せばよく、操作性がよい。
【0010】
また本発明は、上記の構成の引戸用取手が取付けられた引戸であり、誤った方向に引かれることを防止することができるので、破損しにくい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、使用者が引く方向を間違えて引戸を引こうとしたときにも、引戸が破損することを防止することができる引戸用取手と引戸とを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明をその実施形態に基づいて説明する。
図1に、本発明の実施形態に係る引戸を示す。
図1において、引戸10はレール11に吊された上吊引戸であり、戸板12の一端に柱状体をなす取手13が取付けられている。戸板12の上方には車輪固定部21が設けられ、この車輪固定部21内に、レール11と接するように車輪22が配置されている。引戸10を開けようとする者は、取手13に手を掛けて、矢印で示す方向に引戸10をレール11に沿って移動させる。なお、上吊引戸は、人の手によって開放されると、引き込みばねの機能によって戸板12がもとの位置にもどって閉まる半自動式のものが普及しており、本発明もこのような半自動式のものを主たる適用対象としているが、これに限定されるものではなく、半自動式以外の上吊引戸、あるいは上吊引戸以外の引戸に対しても広く適用できるものである。
なお、図1においては、柱状体の取手13の長手方向が戸板12の上下方向となるように配置しているが、柱状体の取手13の長手方向が戸板12の左右方向となるように配置してもよい。
【0013】
図2に、取手13の詳細の一例を示す。図2(a)に示すものは、取手13の上面13aが三角形である柱状のものであり、取付面13bで取手13は戸板12に取付けられる。使用者が取手13に手を掛ける際には、側面13cが手で保持する面となる。
【0014】
図2(b)に示すものは、取手13の上面13aの先端部が円弧状である柱状のものであり、取付面13bで取手13は戸板12に取付けられる。使用者が取手13に手を掛ける際には、側面13cが手で保持する面となる。
【0015】
図2(c)に示すものは、取手13の上面13aが台形である柱状のものであり、取付面13bで取手13は戸板12に取付けられる。使用者が取手13に手を掛ける際には、側面13cが手で保持する面となる。
【0016】
本発明における取手13はいずれの場合も、取手13の横方向の幅は、取付面13b側が広く、取付面13bから遠くなるに伴って狭くなるように形成された柱状体である点に大きな特徴がある。つまり、使用者から見ると、使用者に近い側の方が狭くなる構造となっている。そのため、引戸10を開こうとして使用者が取手13に手を掛けたときに、使用者が誤って引戸10を自分が位置する側に引こうとしても、取手13は力を入れにくい形状となっているため、大きな力で引戸10を自分の側に引くことができない。そのため、引戸の留め具やレール11を破損することがない。また、引戸10を矢印に示す方向に正常に引くためには、側面13cを手で保持すればよく、正常な方向への移動には支障がない構造となっている。
なお、以上の説明は、柱状体の取手13の長手方向が戸板12の上下方向となるように配置した場合についてのものであり、柱状体の取手13の長手方向が戸板12の左右方向となるように配置したときには、上面13aは横面となり、取手13の横方向の幅は上下方向の幅となる。
【0017】
また、取手13は戸板12に強固に取付けられていることが必要であるが、取手13の取付面13bは広く形成されているため、戸板12に取付けるために必要な面積は十分に確保されている。
【0018】
図3に基づいて、戸板への取手の取付の一例を説明する。
図3(a)に、戸板12への取手13の取付のために、各部材を配置した一例を示す。戸板12を挟んでその両側に取手13が配置されてネジ止め等により固定されるが、ここでは、戸板12と取手13との間に、金属製の板材14を介して固定している。この図では、板材14は戸板12の片側のみに配置しているが、戸板12の両側に配置してもよい。
【0019】
図3(b)に板材14の構造を示し、図3(c)に取手13の取付面13bを示す。板材14は折り曲げ線14cでほぼ直角に折り曲げられてなる固定面14aと差し込み面14bとからなる。取手13の取付面13bには、板材14の差し込み面14bを差し込むための深い溝15が設けられるとともに、板材14の固定面14をはめ込むための凹部16が設けられている。板材14の差し込み面14bが溝15に差し込まれ、板材14の固定面14aが凹部16にはめ込まれることによって、取手13を戸板12に取付けたときの締め付け力が強まり、固定が強固になる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、使用者が引く方向を間違えて引戸を引こうとしたときにも、引戸が破損することを防止して、適正な方向に開閉することができる引戸用取手と引戸として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る引戸を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る取手の詳細の一例を示す図である。
【図3】戸板への取手の取付の一例を説明するための図である。
【図4】一般的に使用されている引戸の例を示す図である。
【符号の説明】
【0022】
10 引戸
11 レール
12 戸板
13 取手
13a 上面
13b 取付面
13c 側面
14 板材
14a 固定面
14b 差し込み面
14c 折り曲げ線
15 溝
16 凹部
21 車輪固定部
22 車輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
引戸に取付られる柱状体の引戸用取手であって、前記柱状体の幅は引戸への取付面が最も広く、前記取付面から遠くなるに伴って狭くなるように形成されていることを特徴とする引戸用取手。
【請求項2】
前記柱状体の上面または横面は三角形状、台形状、または先端部が円弧状のいずれかであることを特徴とする請求項1記載の引戸用取手。
【請求項3】
請求項1または請求項2のいずれかに記載の引戸用取手が取付けられた引戸。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−190211(P2008−190211A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−25521(P2007−25521)
【出願日】平成19年2月5日(2007.2.5)
【出願人】(501338716)
【出願人】(504287860)
【Fターム(参考)】