説明

引戸錠

【課題】部品点数を極力少なくし、組み合わせの容易化を図る。
【解決手段】錠箱に、ラッチ板と、ラッチ板の係合歯と係脱する仮施錠用係爪片を備えかつ操作手段の操作力により上下方向にスライドする係合解除用スライド片と、仮施錠用係爪片がラッチ板の係合歯に係合し得るように該係合解除用スライド片を常に付勢する復帰バネとを設け、係合解除用スライド片が操作手段の操作力により復帰バネのバネ力に抗してスライドすると、仮施錠用係爪片は該係合解除用スライド片に追動して係合歯から離れる引戸錠に於いて、係合解除用スライド片の内端部に仮施錠用係爪片の基端部を軸支する固定枢軸27Aが貫通し、この固定枢軸に復帰バネ56Aを取付け、該復帰バネは仮施錠用係爪片を前記ラッチ板の係合歯に係合する方向へ常に付勢すると同時に係合解除用スライド片を錠箱に直接又は間接的に設けた受け18aに係止される初期位置へと付勢する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラッチング機構を備えた引戸錠に関する。特に本発明は、引戸の閉戸時、トリガーに連動する鎌片を備えた引戸錠に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1にはラッチング機構が開示されている。図9は特許文献1に記載のラッチング機構Zの一例を示す。この特許文献1に記載の符号をそのまま用いてラッチング機構Zの構成を説明する。該ラッチング機構Zは、「トリガー31と、固定軸25に軸支されていると共に外周に係合歯47を有し、かつ該トリガー31の進退動に連動して回転するラッチ板45と、前記係合歯47と係脱すると共に可動ピン27に軸支され、かつ戻しバネ60で付勢された仮施錠用係爪片51及び該仮施錠用係爪片に係合すると共に上下方向にスライド可能に設けられ、かつ錠ケース10内に上下方向に配設された復帰バネ56で付勢された係合解除片50を有する引戸錠のラッチング機構Zであり、図示しない引戸を強く閉めた際に跳ね返りが生じると、前記仮施錠用係止爪片51は、前記係合歯47から受ける係合解除方向への力により、前記戻しバネ60のバネ力に抗して、かつ、前記係合解除片50の内端部に形成した水平案内長孔54に係合する係合ピン55並びに前記錠ケース10に形成した逃し案内長孔26に係合する前記可動枢支ピン27を介して、前記水平案内長孔54の遊び間隙54a側及び逃し案内長孔26の緩衝用間隙26a側へと同時移行する」、ことを特徴とする。
【0003】
したがって、特許文献1には、本願発明の前提要件と成る事項、すなわち、「錠箱10(ケース身10a)に水平動自在に設けられたトリガー31と、該錠箱10に横設された固定軸25に軸支されていると共に外周に係合歯47を有し、かつ該トリガー31の進退動に連動して回転するラッチ板45と、前記係合歯47と係脱する仮施錠用係爪片51を備え、かつ操作手段の操作力により上下方向にスライドするように該錠箱10に設けられた係合解除片50と、前記仮施錠用係爪片が前記ラッチ板45の係合歯47に係合し得るように該係合解除片50を常に付勢する復帰バネ56とから成り、前記係合解除片50が前記操作手段の操作力により前記復帰バネ56のバネ力に抗してスライドすると、前記仮施錠用係爪片は該係合解除片50に追動して前記係合歯47から離れる引戸錠」が開示されている。
【0004】
上記錠前のラッチング機構Zは、本願の出願人が貴庁に提案したものであるが、部品点数が多いので、組み合わせが面倒であるという問題点があった。
【0005】
すなちわ、図示しない操作手段を操作すると、係合解除片50は、錠ケース10の底壁付近に設けた第3固定軸52及び該係合解除片50に形成した垂直案内長孔53を介して下方へスライドし、これに追動する仮施錠用係止爪片51は、前記第3固定軸52とは別個の可動ピン27を支点にして復帰バネ56及び戻しバネ60の各バネ力に抗して反時計方向(係合解除方向)へと回転する構成なので、錠ケース10の隅角部61の側壁に複数個の軸孔、案内長孔26等を形成しなければならないと共に、仮施錠用係止爪片51用の可動ピン27の他に係合解除片50用の第3固定軸52が必要であった。
【0006】
なお、符号37はトリガー31の横長状杆部の下方に延びた連設部34に突設された第2可動軸、46はラッチ板45の上端部に形成されたラッチ長孔、57は係止爪片51の係止端部、61は錠ケースの隅角部、62は戻しバネ60の中央部を支持するバネ用支軸62である。
【特許文献1】特開2002−322850号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の所期の目的は、特許文献1の問題点に鑑み、部品点数を極力少なくし、組み合わせの容易化を図ることである。第2の目的は、一つの復帰バネに複数の機能を持たせることである。第3の目的は、操作手段を操作したとき、上下方向に移動する係合解除用スライド片が左右に揺れないことである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の引戸錠は、錠箱に、トリガーと、該錠箱に横設された固定軸25に軸支されていると共に外周に係合歯を有し、かつ該トリガーの進退動に連動して回転するラッチ板と、前記係合歯と係脱する仮施錠用係爪片を備えかつ操作手段の操作力により上下方向にスライドする係合解除用スライド片と、前記仮施錠用係爪片が前記ラッチ板の係合歯に係合し得るように該係合解除用スライド片を常に付勢する復帰バネとをそれぞれ設け、前記係合解除用スライド片が前記操作手段の操作力により前記復帰バネのバネ力に抗してスライドすると、前記仮施錠用係爪片は該係合解除用スライド片に追動して前記係合歯から離れる引戸錠に於いて、前記係合解除用スライド片50Aを錠箱10の隅角部61に配設し、この係合解除用スライド片の内端部に前記仮施錠用係爪片の基端部を軸支する固定枢軸27Aが貫通し、この固定枢軸に前記復帰バネ56Aを取付け、該復帰バネは、前記仮施錠用係爪片を前記ラッチ板の係合歯に係合する方向へ常に付勢すると同時に、前記係合解除用スライド片を錠箱に直接又は間接的に設けた受け18aに係止される初期位置へと付勢することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の引戸錠は、錠箱に、トリガー31Aと、該錠箱に横設された固定軸23Aに軸支されていると共に後端部の外周に係合歯47Aを有し、かつ該トリガーの進退動に連動して回転する鎌片40Aと、前記係合歯と係脱する仮施錠用係爪片を備えかつ操作手段の操作力により上下方向にスライドする係合解除用スライド片と、前記仮施錠用係爪片が前記鎌片40Aの係合歯に係合し得るように該係合解除用スライド片を常に付勢する復帰バネとをそれぞれ設け、前記係合解除用スライド片が前記操作手段の操作力により前記復帰バネのバネ力に抗してスライドすると、前記仮施錠用係爪片は該係合解除用スライド片に追動して前記係合歯から離れる引戸錠に於いて、前記係合解除用スライド片50Aを錠箱10の隅角部61に配設し、この係合解除用スライド片の内端部に前記仮施錠用係爪片の基端部を軸支する固定枢軸27Aが貫通し、この固定枢軸に前記復帰バネ56Aを取付け、該復帰バネは、前記仮施錠用係爪片を前記鎌片40Aの係合歯に係合する方向へ常に付勢すると同時に、前記係合解除用スライド片を錠箱に直接又は間接的に設けた受け18aに係止される初期位置へと付勢する。
【発明の効果】
【0010】
(a)部品点数を極力少なくし、組み合わせの容易化を図ることができるので、特許文献1の問題点が解消する。
(b)一つの復帰バネに複数の機能を持たせることができる。
(c)請求項3に記載の発明は、操作手段を操作したとき、上下方向に移動する係合解除用スライド片が左右に揺れない。
(d)請求項4に記載の発明は、錠箱のコンパクト化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図1乃至図6に示す本発明を実施するための最良の形態(第1実施例)により説明する。なお、本発明の第1実施例を説明するにあたって、図9の実施例と同一の部分には、対比の便宜上、同一の符号を付すことにする。
【0012】
(1)発明の実施の環境
まず、図2を参照に発明の実施の環境について説明する。Xは引戸1の中に収められる彫り込み型の引戸錠である。一方、Yは戸枠2に固定的に取付けられた受け金具である。受け金具Yは、ボックス部を有するトロヨケ3と、このトロヨケ3の開口に重ね合わせられたストライク(受座)4とから成る。ストライク4は縦長板状に形成され、複数個の固着手段5を介してトロヨケ3の耳状の取り付け部に固定される。
【0013】
6は前記ストライク4の縦長窓7から多少突出するようにトロヨケ3に適宜固定された押し込み兼掛合片で、この押し込み兼掛合片6は、トリガーの先端部と当接可能である。この押し込み兼掛合片6は、「チリ」設定を考慮して設けたものであるが、基本的にはストライク4の一部を構成する。したがって、ストライク4は、引戸1を閉める際に該押し込み兼掛合片6を介して、後述のトリガー31を後退させる。
【0014】
(2)錠ケース10
次に、図2及び図3を参照に錠ケースを説明する。10は引戸1の縦框に内装される錠ケースである。この錠ケース10は、ケース身10aと、このケース身の大きい開口部を閉鎖する幅広板状のケース蓋10bとから成る。
【0015】
11は錠ケース10の前側の開口に固定されたフロントである。このフロント11は、普通一般に錠ケース10の長板状蓋板(或いは前壁)12に固定されている。13は錠ケースを引戸1に固定するための複数個の第2固着手段である。14は縦長状の鎌片用出入り窓、一方、15は矩形状のトリガー用窓である。トリガー用窓15は、鎌片用出入り窓14と連通する。
【0016】
(3)錠箱10の隅角部61と本発明の特徴事項
ここで、図1を参照にして、錠ケース10の軸孔等構成を簡単に説明する。符号20はケース蓋10bの中央部のフロント11寄りに水平方向に形成された横長案内長孔で、該横長案内長孔20は、弧状案内部20aと、これに連続する直線案内部20bとから成る。符号21は前記横長案内長孔20に係合する鎌片用の第1可動軸、22は横長案内長孔20の付近に形成された鎌片用の円形軸孔、23は該円形軸孔22に支持された鎌片用の第1固定軸、24は鎌片用の円形軸孔22よりも斜め下方に設けられたラッチ板用第2固定軸25を支持する円形軸孔である。そして、符号26は錠箱10の隅角部61(本実施例では錠箱の後端部の下方角部及び該下方角部付近)に形成された真円の円形軸孔である。この円形軸孔26は、後述の一つの固定枢軸27Aを支持する。
【0017】
ここで、図3を参照にして、錠箱10の隅角部61と本発明の特徴事項を説明する。隅角部61は、その底壁18の後端部18a及び後壁の下端部が一部切欠16されている。本実施例では、係合解除用スライド片50Aは、その垂直後壁50aの全てがケース身10aの後壁から食み出るように錠箱10の隅角部61に固定枢軸27Aを介して装着されている。これは、前述したラッチ板45の係脱を考慮すると共に、錠箱10の奥行きを可能な限り小さくするためである。
【0018】
また、隅角部61のケース身10aの底壁18の後端部18aには、該後端部18aを内側に略直角に折り曲げ形成することにより、後述の復帰バネ56Aの他端部bを受けるストッパー17が形成されている。さらに、該ストッパー17を有する前記後端部18aは、係合解除用スライド片50Aの内端部に連設する外端部の上端縁を受け止める受け(例えば受け面、ストッパー面、受け片等)となっている。
【0019】
このように、本実施例では、(a)錠箱10の隅角部61には、真円の円形軸孔26を介して固定枢軸27Aが横設軸架されている点、(b)前記固定枢軸27Aに復帰バネ56Aの中央部が巻装され、その一端部aは仮施錠用係止爪片51の係合端部57の内壁面に圧接し、一方、他端部bは底壁18の後端部18aのストッパー17或いは錠箱内に設けたスットパー部材17に圧接している点に特徴がある。(c)また、前記復帰バネ56Aは、仮施錠用係爪片51をラッチ板45の係合歯47に係合する方向へ常に付勢すると同時に、係合解除用スライド片50Aを錠箱10に形成した受け18a或いは錠箱10に設けた受け部材18aに直接又は間接的に係止される初期位置へと付勢する点に特徴がある。(d)また、本発明では、復帰バネ56Aのバネ力により係合方向へ常時付勢された仮施錠用係爪片51を所定位置に止める仮施錠用係爪片51用規制手段として、本実施例では、該仮施錠用係爪片の係合端部57に係合長孔58を形成し、一方、係合解除用スライド片50Aの内端部に前記係合長孔58に係合する可動の規制ピン59を設けている。(e)さらに、図3及び図4で示すように、隅角部61の幅広側壁には、前後に一組の矩形状の垂直案内長孔19が所定間隔離間して段違い状に形成され、これらの垂直案内長孔19には、係合解除用スライド片50Aの揺れを防止することができるように該係合解除用スライド片50Aの内端部に段違い状に形成した平板状の一対の係合突片部分62,62がそれぞれ係合している。(f)加えて、係合解除用スライド片50Aは、その垂直後壁50aの全てがケース身10aの後壁から食み出るように錠箱10の隅角部61に固定枢軸27Aを介して装着されている。
【0020】
(4)トリガー:水平進退動部材
次に図2、図5を参照にトリガーについて説明する。31は錠ケース10内に摺動自在に装着されたトリガーである。このトリガー31は、図2で示すように引戸が開いている時は、錠ケース10のフロント11から突出する短杆状先端部32と、この突出先端部32にやや幅広に連設する横長状杆部33とから成る。
【0021】
前記横長状杆部33の後端面とケース身10aの後壁との間にはトリガーバネ35が横方向に組込まれている。トリガーバネ35は、その先端部が横長状杆部33後端面に適宜に圧接し、一方、後端部は後壁に設けられたバネ支持具(図示しない)に支持されている。したがって、トリガー31は、その先端部32の一部が常時フロント11から突出するように付勢されている。
【0022】
またトリガー31は、錠ケース10を進退動する時、錠ケース10に形成されたトリガーガイド(図示しない)に案内されるが、その際、トリガー31をガタガタさせずにスムースに案内させる必要があるので、トリガー31の横長状杆部33の両側壁に、前記トリガーガイドに係合する突片状係合突起(図示しない)が設けられている。そして、トリガー31には、該トリガーが錠ケース10内へと後退動する際に、鎌片40並びにラッチ板45をそれぞれ係合方向へと回転させる動力変換機構の一部が設けられている。
【0023】
トリガー31側の動力変換機構の一部は、鎌片用第1可動軸21が係合する被係合部部(下向き凹所、切欠部など)36と、トリガー31の横長状杆部33の下方に延びた連設部34に突設された第2可動軸37である。
【0024】
(5)トリガーバネ
トリガーバネ35は、引戸1の閉戸時に、トリガー31の先端部32がストライク4の押し込み兼掛合片6に突き当たると、トリガー31の後退にしたがって収縮し始める。一方、引戸1を開くにつれて先端部32が押し込み兼掛合片6から離れると、トリガー31の進出にしたがって伸長する。
【0025】
(6)鎌片
鎌片40は全体として人差し指を折り曲げた形態をしており、その基部40aには第1可動軸21が突設されている。第1可動軸21は錠ケース10の横長案内長孔20並びにトリガー31の下向き凹所36にそれぞれ係合している。また鎌片40は幅広の基部40a側に形成された鎌片長孔41を介して第1固定軸23に軸支されている。鎌片40側の動力変換機構は、本実施例では少なくとも前記第1可動軸21を構成要件としている。その結果、鎌片40は動力変換機構(鎌片用第1可動軸21、下向き凹所36、第1固定軸23)を介してトリガー31に連動する。
【0026】
(7)ラッチ板
ラッチ板45は第2固定軸25に軸支されている。またラッチ板45は一端部に形成されたラッチ長孔46を介してトリガーの第2可動軸37に連結されている。したがって、ラッチ板45も鎌片40同様にトリガー31の進退動に連動して回転する。47はラッチ板45の幅広他端部の外周に形成されたラチェット歯である。
【0027】
(8)係合解除用スライド片50Aと仮施錠用係止爪片51
引戸錠Xの錠ケース10内の下部には、鎌片40を仮施錠状態にする又は仮施錠状態を解消するための係合解除用スライド片50Aと、該係合解除用スライド片に連動(追動)するように固定支軸27Aを介して該係合解除用スライド片50Aに装着された仮施錠用係止爪片51から成るラッチング機構Z1が組み込まれている。
【0028】
仮施錠用係止爪片51は、前述したように、本実施例ではラッチ板45の外周に形成した係合歯47と係脱する。仮施錠用係止爪片51の基本的構成は、特許文献1と同一である。したがって、その詳細説明は割愛する。仮施錠用係止爪片51は、例えば図4で示すように、その自由端部側に相当する係合端部57は、端面下向きコ字形状に形成され、その基端部には不番の軸孔が形成され、該軸孔に嵌め込まれた固定支軸27Aに軸支されている。
【0029】
ここで、図3及び図4を参照にして、係合解除用スライド片50Aの構成を説明する。前述したように50aは錠箱10の後壁から一部切欠16を介して食み出す垂直後壁である。この垂直後壁50aには、該垂直後壁50aに直交する正面視コ字形状の垂直側壁(図4では手前の側壁)50bが連設している。垂直側壁50bは、図2で示すように、係合解除用スライド片50Aが錠箱10に組み込まれた場合には、ケース蓋10bの内壁面に沿って上下動する。
【0030】
しかして、符号64は垂直側壁50bの上端部(係合解除用スライド片50Aの内端部に相当する)に形成された垂直長孔(逃がし孔)で、この垂直長孔64には固定支軸27Aが貫通する。垂直長孔64は、望ましくは固定支軸27Aを介して係合解除用スライド片50Aを上下方向に案内させる機能を持たせるべきであるが、該垂直長孔は、係合解除用スライド片50Aを上下方向に移動させる機能を有すれば十分であるから、必ずしも、垂直長孔に形成する必要はない。本実施例では、係合解除用スライド片50Aの案内手段は、前述したように、隅角部61の幅広側壁に形成された段違い状の垂直案内長孔19と、垂直後壁50aの上端部に該垂直後壁50aと直交するように互いに段違い状に突出し、かつ前記垂直案内長孔19にそれぞれ係合する平板状の前後一対の係合突片部分62,62とから成る。
【0031】
また、59は垂直後壁50aの上端部の前記垂直長孔(逃がし孔)64よりも先端部の位置に設けられた可動の規制ピンで、この可動の規制ピン59は仮施錠用係止爪片51の係合端部57の係合長孔58に係合する。さらに、50cは垂直後壁50aの垂直他端部に連設しかつ垂直側壁50bの外端部と対向する外端部対向壁で、この外端部対向壁50cと垂直側壁50bの下端部に相当する外端部には、操作手段66の嵌合部66aと嵌合(接続)する矩形状の嵌合孔65がそれぞれ形成されている。
【0032】
(9)復帰バネ56A
復帰バネ56Aは、固定枢軸27Aに取付けられている。そして、本実施例では、図5で示すように、仮施錠用係爪片51をラッチ板45の係合歯47に係合する方向へ常に付勢すると同時に、係合解除用スライド片50Aを錠箱10に形成した受け18a或いは錠箱10に設けた受け部材18aに直接又は間接的に係止される初期位置へと付勢する。付言すると、復帰バネ56Aの中央部は固定枢軸27Aに巻装され、その一端部aは仮施錠用係止爪片51の係合端部57の内壁面に圧接し、一方、他端部bは底壁18の後端部18aのストッパー17に圧接している(図3)。このように、固定支軸27Aに巻装された復帰バネ56Aは、仮施錠用係爪片51を係合方向に常時付勢する第1付勢機能と、仮施錠用係爪片51を介して係合解除用スライド片50Aを初期位置へと戻す共用的付勢機能(第2付勢機能)とを有する。
【0033】
(10)作用
図2は引戸1を開いた一例を示すが、この場合、(イ)トリガー31の短杆状先端部32は、トリガーバネ34のバネ力によりフロント11から僅かに突出し、(ロ)鎌片40は錠ケース10側に回転後退している。(ハ)またラッチ板45はトリガー31の進出に連動して鎌片40と同方向に回転し、仮施錠用係止爪片51の係合端部(係止部)57から離れている。(ニ)さらに、係合解除用スライド片50Aは復帰バネ56Aのバネ力により底壁18の受け(例えば後端部)18aに当る初期位置へと上昇している(非仮施錠状態)。
【0034】
これに対して、図5は引戸1を閉じた状態である。特許文献1に記載のように、引戸1を閉じた場合には、鎌片40及びラッチ板45は、それぞれトリガー31に連動するが、前記ラッチ板45が固定軸25を支点にして反時計方向に回転する際、その係合歯47でもって仮施錠用係爪片51の係合端部75の上面を復帰バネ56Aのバネ力に抗して押し付けながら、前記係合歯47は係合端部75の上面を越えて該係合端部75先端に至る(仮施錠状態)。
【0035】
上記施錠状態に於いて、係合解除用スライド片50Aが操作手段65の操作力により、復帰バネ56のバネ力に抗して下方方向へとスライドすると、仮施錠用係爪片51は、固定枢軸27Aを支点にして時計方向へ所要量回転追動し、ラッチ板45の係合歯47から離れる(図6参照)。
【0036】
なお、操作手段65の操作力が解消すると、係合解除用スライド片50Aは、前述した復帰バネ56Aの共用的付勢機能により、錠箱10に形成した受け18a或いは錠箱10に設けた受け部材18aに直接又は間接的に係止される初期位置へと戻る。
【実施例】
【0037】
この欄では図7及び図9に示す本発明の第2実施例について説明する。なお、第2実施例と第1実施例との構成上の同一部分には、同一又は同様の符号を付して重複する説明を省略する。
【0038】
まず、第2実施例の構成と第1実施例のそれと同一な点は、(1)引戸1を閉める際、トリガー31Aがストライク4Aに当たると、トリガー31Aは錠ケース10の案内部に案内されて水平状態に後退動する点、(2)鎌片40Aは、トリガー31Aが錠ケース10内へと後退動すると、動力変換機構を介してストライク4と掛合する方向へ回転する点、(3)錠ケース10には、閉戸時に鎌片40Aを仮施錠状態にするラッチング機構Z1が組み込まれていることである。
【0039】
次に第2実施例の構成と第1実施例のそれと主に異なる点は、(a)動力変換機構と、(b)鎌片40Aの後端部にラチェット歯47Aが形成されている反面、ラッチ板が存在しないこと、(c)その他トリガー31A、鎌片40Aの形態が異なることである。
【0040】
しかして、動力変換機構について説明すると、70はトリガー31Aの下部側に形成されたラックである。これに対し、71はラック70と噛み合うピニオンで、該ピニオン71は鎌片40Aを軸支する第1固定軸23Aを基準にして鎌片40Aの中央部の外周に形成されている。このような動力変換機構は公知事実であるが、ラック70とピニオン71から成る公知の構成を採用しても、前記第1実施例と同一の目的・作用を得ることができる。なお、第2実施例に適用したラッチング機構Z1は、第1実施例と同一なので、構成及び作用の詳細説明は割愛する。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、主に錠前や建具の業界で利用される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1乃至図6は本発明の第1実施例を示す各説明図である。図7及び図8は本発明の第2実施例を示す各説明図である。図9は従来の一例を示す説明図。
【図1】第1実施例の斜視図。
【図2】引戸を開いた一例の内部構造を示す概略説明図。
【図3】主要部の説明図。
【図4】主要部の分解斜視図。
【図5】引戸を閉じた一例の内部構造を示す概略説明図。
【図6】操作手段を下方方向へ引いた場合の概略説明図。
【図7】第2実施例の図2と同様概略説明図。
【図8】第2実施例の図3と同様の説明図。
【図9】従来の一例を示す説明図。
【符号の説明】
【0043】
X…引戸錠、Z1…ラッチング機構、1…引戸、Y…受け金具、1…戸枠、4,4A…ストライク、10…錠箱、16…一部切欠、17…ストッパー(又はストッパー部材)、19…垂直案内長孔、23,23A…第1固定軸、25…第2固定軸、26…真円の円形軸孔、27A…固定支軸、31,31A…トリガー、40,40A…鎌片、45…ラッチ板、47,47A…係合歯、50A…係合解除用スライド片、51…仮施錠用係止爪片、56A…復帰バネ、57…係合端部、58…係合長孔、59…規制ピン、61…隅角部、62…係合突片部分、65…嵌合孔、66…操作手段、70…ラック、71…ピニオン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
錠箱に、トリガーと、該錠箱に横設された固定軸に軸支されていると共に外周に係合歯を有し、かつ該トリガーの進退動に連動して回転するラッチ板と、前記係合歯と係脱する仮施錠用係爪片を備えかつ操作手段の操作力により上下方向にスライドする係合解除用スライド片と、前記仮施錠用係爪片が前記ラッチ板の係合歯に係合し得るように該係合解除用スライド片を常に付勢する復帰バネとをそれぞれ設け、前記係合解除用スライド片が前記操作手段の操作力により前記復帰バネのバネ力に抗してスライドすると、前記仮施錠用係爪片は該係合解除用スライド片に追動して前記係合歯から離れる引戸錠に於いて、前記係合解除用スライド片50Aを錠箱10の隅角部61に配設し、この係合解除用スライド片の内端部に前記仮施錠用係爪片の基端部を軸支する固定枢軸27Aが貫通し、この固定枢軸に前記復帰バネ56Aを取付け、該復帰バネは、前記仮施錠用係爪片を前記ラッチ板の係合歯に係合する方向へ常に付勢すると同時に、前記係合解除用スライド片を錠箱に直接又は間接的に設けた受け18aに係止される初期位置へと付勢することを特徴とする引戸錠。
【請求項2】
請求項1に於いて、一つの復帰バネ56Aは、その中央部が一つの固定枢軸27Aに巻装され、その一端部は仮施錠用係爪片51の係合端部の内壁面に圧接し、一方、他端部は錠箱の隅角部に設けたストッパー17に圧接していることを特徴とする引戸錠。
【請求項3】
請求項1に於いて、隅角部の幅広側壁には、一組の垂直案内長孔19が形成され、これらの垂直案内長孔には、係合解除用スライド片50Aの揺れを防止することができるように該係合解除用スライド片の内端部に形成した一対の係合突片部分62がそれぞれ係合していることを特徴とする引戸錠。
【請求項4】
請求項1に於いて、係合解除用スライド片50Aは、その垂直後壁50aの全てがケース身10aの後壁から食み出るように錠箱10の隅角部61に固定枢軸27Aを介して装着されていることを特徴とする引戸錠。
【請求項5】
錠箱に、トリガー31Aと、該錠箱に横設された固定軸23Aに軸支されていると共に後端部の外周に係合歯47Aを有し、かつ該トリガーの進退動に連動して回転する鎌片40Aと、前記係合歯と係脱する仮施錠用係爪片を備えかつ操作手段の操作力により上下方向にスライドする係合解除用スライド片と、前記仮施錠用係爪片が前記鎌片40Aの係合歯に係合し得るように該係合解除用スライド片を常に付勢する復帰バネとをそれぞれ設け、前記係合解除用スライド片が前記操作手段の操作力により前記復帰バネのバネ力に抗してスライドすると、前記仮施錠用係爪片は該係合解除用スライド片に追動して前記係合歯から離れる引戸錠に於いて、前記係合解除用スライド片50Aを錠箱10の隅角部61に配設し、この係合解除用スライド片の内端部に前記仮施錠用係爪片の基端部を軸支する固定枢軸27Aが貫通し、この固定枢軸に前記復帰バネ56Aを取付け、該復帰バネは、前記仮施錠用係爪片を前記鎌片40Aの係合歯に係合する方向へ常に付勢すると同時に、前記係合解除用スライド片を錠箱に直接又は間接的に設けた受け18aに係止される初期位置へと付勢することを特徴とする引戸錠。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−133197(P2010−133197A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−312365(P2008−312365)
【出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【出願人】(390037028)美和ロック株式会社 (868)