説明

引戸門扉

【課題】 引戸門扉に取付けることのできなかった電気センサの取付を可能とし、フェンスの上部と同じ電気センサを引戸門扉に設けることにより、統一感のある外観を付与すると共に、引戸門扉とフェンスが同じ電気センサを用いるので、防犯装置の制御を簡単な構造とすることのできる引戸門扉を提供する。
【解決手段】 通路部Tの一側位置に立設した戸当り柱3に当接自在な扉体2と、該扉体2の上部に設けられ扉体2の乗り越えを感知するワイヤセンサ7と、ワイヤセンサ7からの信号を受信して警報装置9に信号を送信する制御装置8と、扉体2の戸当り端に設けたワイヤセンサ7に接続する受電端子部51と、戸当り柱3に設けた受電端子部51に電力を供給する送電端子部31とを有し、扉体2の閉成状態において受電端子部51と送電端子部31が接合し、ワイヤセンサ7に通電して扉体2の上方部を警戒状態とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、防犯機能を有する引戸門扉に関するものであり、より詳しくは扉体の上部に乗り越えを感知する電気センサを設けた引戸門扉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、門扉、フェンス等の外構部材を乗り越えて、敷地内に侵入する者を感知し、警報を発する防犯装置として様々な提案が為されている。
特許文献1には、フェンス、塀、門扉等の上部にセンサを設け、侵入者がこれら門扉等を乗り越えようとした際に、前記センサが感知して警報装置に信号を送信する門扉等の外構構成部材が開示されている。
【0003】
特許文献1に記載された外構構成部材によれば、門扉等の上面にセンサを取り付けるだけの簡単な構成により、門扉等に乗り越え感知手段を設けることができる。また、特許文献1の図3に示された門扉は、門柱に水平回動自在に取り付けた門扉である。このような回動中心軸を支点として開閉される門扉であれば、回動中心部分における門扉と門柱との位置関係は殆ど変化しないので、門扉と門柱の間に電線を設けることにより、センサと電力供給装置または警報装置を電気的に容易に接続することができる。
【0004】
しかしながら、通路部を開閉する際に扉体全体が移動する引戸門扉に電気センサを設ける場合、引戸門扉と電力供給装置が設けられる門柱等の固定構造物との位置関係が大きく変化するため、電線により電気センサと電力供給装置または警報装置と接続することが困難なものである。
【0005】
本出願人は、引戸門扉の上方部を警戒する防犯機能を設けた構成として、特願2004−117495の出願を先に行なっている。特許文献2によれば、引戸門扉の上方部を赤外線センサにより警戒するので、引戸門扉に電気センサを設ける必要がなく、電力を供給する電線が不要となる。
しかしながら、赤外線センサによって警戒する場合、門扉の上方部で赤外線を送受信するために支柱等を立設する必要があり、防犯装置の設置作業に多大な労力とコストアップを伴うものである。
【0006】
安価な防犯装置としては、フェンス等の上部にワイヤセンサを設けた防犯装置が知られている。ワイヤセンサは、ループ状の電線ワイヤをフェンスの上部に配設し、電線ワイヤの途中複数箇所に発条により接合する接点を設け、この電線ワイヤに負荷が加わった際に前記接点が外れ、通電しなくなった際の電気抵抗を制御装置が感知して、警報装置に信号を送信するものである。
【0007】
しかしながら、ワイヤセンサを引戸門扉に設ける場合、電力供給装置とワイヤセンサを電気的に接続しておく必要があるため、上記従来技術と同様にワイヤセンサと電力供給装置または警報装置と接続することが困難なものである。そのため、フェンスの上部には安価なワイヤセンサを取り付けることができても、引戸門扉の上部には電気的接続を必要としない赤外線センサを取り付けなければならず、二通りの防犯構造を必要とするものであり、複雑な制御方法が強いられると共に、コストアップを招くものであった。さらに、フェンスの上部をワイヤセンサとしても、門扉の上部は赤外線センサとなるので、統一感のある外観が得られないものであった。
【0008】
【特許文献1】特開2001−073594号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、引戸門扉に取付けることのできなかった電気センサの取付を可能とし、フェンスの上部と同じ電気センサを引戸門扉に設けることにより、統一感のある外観を付与すると共に、引戸門扉とフェンスが同じ電気センサを用いるので、防犯装置の制御を簡単な構造とすることのできる引戸門扉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、このような事情に鑑み鋭意検討を重ねた結果、通路部の一側位置に立設した戸当り柱に当接自在な扉体と、該扉体の上部に設けられ扉体の乗り越えを感知する電気センサと、電気センサからの信号を受信して警報装置に信号を送信する制御装置と、扉体の戸当り端に設けた電気センサに接続する受電端子部と、戸当り柱に設けた受電端子部に電力を供給する送電端子部とを有し、扉体の閉成状態において受電端子部と送電端子部が接合し、電気センサに通電することによって、所期の目的を達成したものである。
【0011】
請求項2の発明に係る引戸門扉は、請求項1に記載の引戸門扉において、扉体に設けた電気センサがループ状となって通電する電線ワイヤを備えたワイヤセンサであり、電線ワイヤが切断されたのを感知して警報装置に信号を送信するものである。
【0012】
請求項3の発明に係る引戸門扉は、請求項2に記載の引戸門扉において、ワイヤセンサによる警戒状態あるいは非警戒状態を選択するセンサスイッチを設けたものである。
【0013】
請求項4の発明に係る引戸門扉は、請求項3に記載の引戸門扉において、センサスイッチが扉体を開閉する駆動装置の操作スイッチと連動したものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の引戸門扉によれば、扉体の上部に乗り越えを感知する電気センサを設け、扉体の戸当り端に設けた電気センサに接続する受電端子と、戸当り柱に設けた電力供給装置に接続され受電端子に電力を供給する送電端子を設け、扉体が閉成状態の際に電気センサの作動電力を供給するので、電線により連結することなく電気センサを扉体の上部に設けることができ、フェンスの上部と同じ電気センサを引戸門扉に設けることにより、統一感のある外観を付与すると共に、引戸門扉とフェンスが同じ電気センサを用いるので、防犯装置の制御を簡単な構造とし、安価に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態を実施例に基づき説明する。
図1乃至図8は本発明引戸門扉の実施例であり、図中1は引戸門扉を表わし、引戸門扉1は、通路部Tを開閉自在とした扉体2と、扉体2の戸当り側で且つ通路部Tの一側に位置する戸当り柱3と、通路部Tに敷設され扉体2が走行する案内レールRと、扉体2の吊元側で且つ通路部Tの他側に設置した電動駆動装置Dと、通路部Tを開成状態とした際に扉体2の吊元側への移動を規制するストッパー部材Sとから構成されている。なお本実施例において、扉体2は路面に敷設されたレールRに沿って移動する構成としているが、レールRを必要としないキャスタータイプの引戸門扉であっても構わない。さらに、電動駆動装置Dを必要としない手動開閉式の引戸門扉に適用しても構わない。
【0016】
扉体2は複数の縦格子4を平行に配置した格子パネル体を有しており、任意箇所の縦格子41が他の箇所の縦格子42よりも上端が高く設定されている。さらに、扉体2の戸当り框5と吊元框6も縦格子41と略同じ高さとなっている。縦格子41、戸当り框5、吊元框6における縦格子42よりも上方に突出した位置には、電気センサであるワイヤセンサ7が設けられており、ワイヤセンサ7を構成する電線ワイヤ72の端部は戸当り框5に形成した受電端子51に接続し、電気回路として一本に繋がったループ状となっている。
【0017】
電線ワイヤ72の途中箇所となる縦格子41、戸当り框5、吊元框6と交差する位置には感知装置71が設けられている。図5に示した感知装置71は、円柱形状を呈し、その中心部には電線ワイヤ72の先端に設けた端子711が位置し、対向する端子711がコイルスプリング712によって接合するよう付勢されている(図5において右半部の正常状態)。従って、ワイヤセンサ7は途中箇所において端子711によって接合されてはいるものの、電気回路としては一本に繋がったものである。感知装置71は、外部からの侵入者が電線ワイヤ72に手をかけるなどして接合している端子711が外れた際(図5において左半部の警報状態)、この電線ワイヤ72に流れる電流が遮断され、瞬間的に抵抗値が異常に増大する。後述の制御装置8によってこの抵抗値異常を感知し、制御装置8が信号を発信する。
【0018】
戸当り框5に形成した受電端子部51は、戸当り框5から突出する突出部511が形成され、突出部511の先端面には二つの端子512が露出して設けられ、該端子512にワイヤセンサ7の端末が夫々取付けられている。一方、戸当り框5と対向する戸当り柱3には、受電端子部51と対向して送電端子部31が設けられている。送電端子部31には凹部311が形成され、凹部311内において送電端子312がコイルスプリング313によって付勢され、送電端子312が凹部311内に突出している。図4に示すとおり、引戸門扉1の閉成状態においては、受電端子部51の突出部511が送電端子部31の凹部311内に嵌め込まれ、送電端子312がコイルスプリング313の付勢力に抗して押込まれるが、結果として送電端子312が受電端子512に押付けられる。送電端子312は一次電源に接続しているので、受電端子512を介してワイヤセンサ7に通電可能となる。
【0019】
送電端子312に接続した配線は、制御装置8と電力供給装置に接続されている。制御装置8は、ワイヤセンサ7に流れる電流が遮断された際、抵抗値が異常に跳ね上がるのを検出し、警報装置9に信号を送信する。なお、電流が遮断されない正常状態におけるワイヤセンサ7の抵抗値は約3KΩであり、ワイヤセンサ7の端子711が外れる等の制御装置8が抵抗値異常と認識する値は約10KΩである。
電力供給装置は、一次電源(商用電源)に接続する整流電源回路によって構成されている。制御装置8の信号を受信する警報装置9は、従来知られている光、音等を発生する威嚇装置の他、管理者の監視装置、携帯電話等への通報装置が挙げられる。
【0020】
図中10は、引戸門扉1によって区画される敷地の内側と外側とに設けられ、ワイヤセンサ7による警戒状態あるいは非警戒状態を選択できるセンサスイッチである。ワイヤセンサ7に通電している状態において引戸門扉1を開成操作すると、ワイヤセンサ7の通電が停止し、制御装置8が抵抗値異常を検出し、警報装置9に信号が送信される。よって、扉体2の上方部が非警戒状態となるよう、センサスイッチ10を操作して制御装置8の動作を停止し、ワイヤセンサ7の通電を停止した後に引戸門扉1の開成操作を行なう。
電動駆動装置Dには、電動モータが設けられ、該電動モータの出力軸にピニオンギヤあるいはスプロケット等を固定し、これらを扉体2の下方部に固定したラックあるいはチェーン等に歯合させ、電動モータを駆動することによって、扉体2の開閉動作を行なう。
【0021】
なお、本実施例のように電動開閉式引戸門扉の場合、上記センサスイッチ10によるワイヤセンサ7の警戒あるいは非警戒状態の選択は、扉体2の開閉スイッチと兼用し、これに連動させている。即ち、全閉状態から扉体2の開動作ボタンを押すと同時に制御装置8の動作が停止する。また、開成状態から閉動作ボタンを押して扉体2を操作し、扉体2の戸当り框5が戸当り柱3に当接すると同時に扉体2の位置を検出する近接スイッチ(不図示)が作動し、この近接スイッチに連動して電動駆動装置Dが停止すると共に制御装置8が作動する。なお、近接スイッチは戸当り框5の戸当り面と、戸当り柱3の戸当り框5が当接する側面に設けられている。
近接スイッチの作動に連動して、電動駆動装置Dが停止し、制御装置8が作動するが、扉体2が戸当り柱3に衝突して停止する際に、戸当り柱3に撓みあるいは振動が発生すると、送電端子312と受電端子512の接合が安定せず、制御装置8により抵抗値異常を検出する虞があるので、制御装置8はタイマーにより時間差をおいて作動するように設定されている。
【0022】
次に、このような引戸門扉の開閉動作について説明する。
(電動引戸門扉の場合)
図7の開動作手順のフローチャートに基づき、全閉状態から開動作する場合について説明する。閉成状態では制御装置8が作動し、扉体2の上方部が警戒状態となっているが、開閉操作リモコン等の開動作ボタンを押すことによって、制御装置8が停止し、扉体2が開動作を開始する。送電端子312と受電端子512が外れてワイヤセンサ7の通電が停止しても、制御装置8が停止しているので、抵抗値異常を検出することはなく、扉体2の開操作が行なわれる。
一方、開閉操作リモコン等の開動作ボタンを押さないで扉体2を開動作した場合、制御装置8が抵抗値異常を検出し、警報装置が作動する。
【0023】
次に図8の閉動作手順のフローチャートに基づき、開成状態から扉体2を閉動作する場合について説明する。開成状態において、制御装置8は停止している。開閉操作リモコンの閉動作ボタンを押すと、電動駆動装置Dが作動し、扉体2が閉動作を始める。扉体2の戸当り框5が戸当り柱3に近づくと、近接スイッチが作動する。近接スイッチの作動に連動して、電動駆動装置Dが停止し閉動作が終了すると共に制御装置8が作動するが、扉体2が戸当り柱3に当接して停止する際に、戸当り柱3に撓みあるいは振動が発生すると、送電端子312と受電端子512の接触が安定せず、制御装置8が抵抗値異常を検出する虞があるので、近接スイッチの作動と同時に制御装置8を作動するのではなく、一旦タイマーを作動させ、一定時間(約5秒)経過した後制御装置8を作動する。この一定時間の間に、戸当り柱3の撓みあるいは振動が収まり、送電端子312と受電端子512の接合が安定し、その後制御装置8が作動し、扉体2の上方部が警戒状態となる。
【0024】
(手動引戸門扉の場合)
全閉状態から開動作する場合、先ず敷地内側あるいは外側のセンサスイッチ10を操作して制御装置8を停止する。操作するセンサスイッチ10は、敷地内側あるいは外側の何れであっても構わない。センサスイッチ10により制御装置8を停止した後、扉体2を開動作する。
次に開成状態から扉体を閉動作する場合、開成状態ではセンサスイッチ10を切って制御装置8は停止している。扉体2を閉動作して戸当り框5を戸当り柱3に当接させると、受電端子部51の突出部511が送電端子部31の凹部311に嵌まり込み、受電端子512と送電端子312が接合する。扉体2の閉動作が完了した後、センサスイッチ10を作動させて制御装置8を作動することにより、ワイヤセンサ7が通電し、扉体2の上方部が警戒状態となる。
【0025】
上記実施例において、扉体2に縦格子を設けたが横格子、鋳物パネル等であっても構わない。またワイヤセンサ7を上下に2本配線したが、4本以上でも構わない。また送電端子部31と受電端子部51の形状も種々のものが考えら、ワイヤセンサ7に通電できるものであれば構わない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明引戸門扉の正面図
【図2】本発明引戸門扉の平面図
【図3】本発明引戸門扉の送電端子部と受電端子部の拡大断面図
【図4】送電端子部と受電端子部の接合状態を表わす拡大断面図
【図5】ワイヤセンサにおける感知装置の拡大断面図
【図6】本発明引戸門扉のブロック図
【図7】本発明引戸門扉の開動作のフローチャート
【図8】本発明引戸門扉の閉動作のフローチャート
【符号の説明】
【0027】
1 引戸門扉
2 扉体
3 戸当り柱
7 ワイヤセンサ
8 制御装置
9 警報装置
10 センサスイッチ
31 送電端子部
51 受電端子部
72 電線ワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通路部の一側位置に立設した戸当り柱に当接自在な扉体と、該扉体の上部に設けられ扉体の乗り越えを感知する電気センサと、電気センサからの信号を受信して警報装置に信号を送信する制御装置と、扉体の戸当り端に設けた電気センサに接続する受電端子部と、戸当り柱に設けた受電端子部に電力を供給する送電端子部とを有し、扉体の閉成状態において受電端子部と送電端子部が接合し、電気センサに通電することを特徴とする引戸門扉。
【請求項2】
扉体に設けた電気センサがループ状となって通電する電線ワイヤを備えたワイヤセンサであり、電線ワイヤが切断されたのを感知して警報装置に信号を送信することを特徴とする請求項1に記載の引戸門扉。
【請求項3】
ワイヤセンサによる警戒状態あるいは非警戒状態を選択するセンサスイッチを設けたことを特徴とする請求項2に記載の引戸門扉。
【請求項4】
センサスイッチが扉体を開閉する駆動装置の操作スイッチと連動したことを特徴とする請求項3に記載の引戸門扉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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