説明

引戸

【課題】全開時の開口幅を容易に調整することができ、扉の収納スペースを削減することができる引戸を提供する。
【解決手段】水平方向に移動可能な本体扉10と、この本体扉の移動方向における少なくとも一端に折り畳み可能に設けられた小扉11とを有する。小扉11を折り畳むことにより、全開時の開口幅を調節可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば病院内の扉として用いて好適な引戸に関するものである。
【背景技術】
【0002】
病院内の扉には、図7に示すように、車椅子や松葉杖等を使用している身障者が開閉し易いように、一般に引戸が用いられ、また移動式のベッドが通過できるように、その有効開口幅が1100mm以上に設定されている。
【0003】
このため、引戸を閉じた時と開いた時とで、取手の位置が大きく変わってしまい、例えば車椅子利用の身障者にとって、引戸を開けるのは容易であっても、それを閉じるのは、取手の位置が遠くなるため、必ずしも容易ではなかった。また、有効開口幅に合わせて引戸の幅寸法が大きくなるため、それに応じて引戸の収納スペースも増大するという問題点があった。
【0004】
なお、特許文献1には、開口幅を変更可能な引戸が開示されている。この引戸においては、敷居または鴨居に戸を案内する溝を設けて、その溝の中に、予め設定された長さのストッパを挿入することにより、戸の移動範囲を規制するようにしている。
しかしながら、上記特許文献1に記載の引戸においては、戸が上記ストッパに当接して静止する構成としているため、戸を勢い良く開放したときや強く押したときに、上記ストッパに過大な力が作用して、上記ストッパが破損する虞があった。また、小柄な利用者にとって、鴨居側(高い位置)に上記ストッパを取り付けるのは必ずしも容易ではなく、例えば上記ストッパを敷居側のみとした場合には、上記ストッパに戸が当接するときに、ガタつきが生じ易いという問題点があった。
【特許文献1】特開2002−147109号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、全開時の開口幅を容易に調整することができ、しかも破損が生じ難く、扉の収納スペースを削減することができる引戸を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明に係る引戸は、水平方向に移動可能な本体扉と、この本体扉の移動方向における少なくとも一端に折り畳み可能に設けられた小扉とを有し、上記小扉を折り畳むことにより、全開時の開口幅を調節可能になっていることを特徴とするものである。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の引戸において、上記本体扉の移動方向における両端に、それぞれ上記小扉を設けたことを特徴とするものである。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の引戸において、上記小扉は、それぞれ上記本体扉とほぼ同じ幅寸法を有し、上記本体扉の一方の面側に、上記小扉が交互に重なり合う状態で折り畳み可能となっていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の引戸において、各小扉が断面略三角形状に形成されて、両小扉を折り畳んだときに、当該引戸全体が平板状をなすように構成されていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れかに記載の引戸において、折り畳んだ状態のときの幅寸法が、当該引戸の収納スペースの幅寸法とほぼ一致するように設定されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、本体扉の一端または両端に折り畳み可能な小扉を設けて、当該小扉の折り畳み或いは開放により、引戸全体の幅寸法を調節できるようにしたので、引戸を全開したときの開口幅を容易に調整することができる。また、収納時に小扉を折り畳むことで、引戸の収納スペースを削減することもできる。さらに、前述した特許文献1に記載の引戸のように、その開閉に際して特定の部位に力が集中することが無いため、破損も生じ難くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
[第1の実施形態]
図1および図2は、本発明に係る引戸の第1の実施形態を示すもので、図中符号1は引戸、符号2は引戸によって開閉される開口部(出入口)、符号3は開口部を開放したときに引戸が収納される収納スペースである。
引戸1は、矩形状の本体扉10と、この本体扉10の一端に折り畳み可能に設けられた小扉11とにより概略構成されている。本体扉10および小扉11は、例えばポリエステル化粧合板等により形成されている。
【0013】
本体扉10は、開口部2を閉塞する位置から、この開口部2に隣接する収納スペース3に至る範囲に亘って、水平方向に移動自在な状態で支持されている。この本体扉10を水平方向に移動可能な状態で支持する方法としては、例えば、本体扉10を上方から吊り支持する方法や、レール等を用いて下方から支持する方法などが挙げられるが、何れの方法を採用するようにしてもよい。本体扉10の上半部には、図1に示すように、ガラス窓14が設けられ、小扉11と反対側の端部には、取手(引棒)12が取り付けられている。
【0014】
小扉11は、複数の蝶番13を介して、折り畳み可能な状態で本体扉10の一端(収納スペース3側)に取り付けられている。本実施形態では、上部、中央部、下部の3箇所に蝶番13が取り付けられ、それら蝶番13によって、小扉11が、本体扉10に対して180度開いた状態(図2(a)および図2(b))から、本体扉10と相対する閉じた状態(図2(c))に至るまで、可逆的に回動変換可能となっている。
【0015】
また、本実施形態では、小扉11を開いた状態のときの引戸全体の幅寸法が、開口部2の幅寸法W2とほぼ一致するように設定され、小扉11を折り畳んだ状態のときの引戸全体の幅寸法が、収納スペース3の幅寸法W3とほぼ一致するように設定されている。また、本体扉10と小扉11の高さ寸法は、何れも開口部2の高さ寸法とほぼ一致するように設定されている。
【0016】
上記構成からなる引戸1においては、通常時は、小扉11を開いた状態で用いられる。この場合、図2(b)に示すように、引戸1を全開したときの開口幅がW1となり、開口部2の幅寸法W2よりも、小扉11の幅寸法(W2−W3)の分だけ開口幅が狭くなる。このため、引戸1を閉じた時と開いた時とで、取手12の位置が大きく変わることはなく、例えば車椅子利用の身障者であっても、引戸1を容易に開閉することができる。
【0017】
一方、移動式ベッドなどの大型荷物を通過させるときには、小扉11を折り畳んだ状態で引戸1が用いられる。この場合、図2(c)に示すように、引戸1を全開したときの開口幅が、開口部2の幅寸法W2(W2>W1)となり、小扉11を開いた状態のときよりも、小扉11の幅寸法(W2−W3)の分だけ開口幅が広くなる。このため、大型荷物であっても、開口部2の幅寸法W2の範囲内であれば、開口部2を通過させることができる。
また、小扉11を折り畳んだ状態においては、図2(b)および図2(c)に示すように、小扉11の幅寸法(W2−W3)の分だけ全体の幅寸法が小さくなるため、その分、引戸1の収納スペース3も削減することができる。
【0018】
[第2の実施形態]
図3および図4は、本発明に係る引戸の第2の実施形態を示す図である。本実施形態において、第1の実施形態で示した構成要素と共通する要素には同一の符号を付し、その説明を簡略化する。
【0019】
この第2の実施形態においては、本体扉20の移動方向における両端に、それぞれ折り畳み可能な状態で小扉21a,21bが取り付けられている。2枚の小扉のうち、一方の小扉(収納スペース3から遠い方の小扉)21aには取手22が配設され、本体扉20には、この小扉21aを折り畳んだときに、取手22の突出部分を吸収する凹部23が形成されている。また、各小扉21a,21bには、図3に示すように、上下2箇所に被係止金具24がそれぞれ取り付けられ、本体扉20には、各小扉21a,21bを180度開いた状態(図3)のときに各小扉21a,21bの被係止金具24に係合して小扉21a,21bの回動を阻止する係止金具25が取り付けられている。係止金具25は、本体扉20の扉面に沿って揺動自在に設けられ、その先端部25aが被係止金具24の凹部24aに嵌入することにより被係止金具24と係合する一方、この状態から時計方向に回動して被係止金具24の凹部24aから離脱することにより、被係止金具24との係合が解除されるようになっている。
【0020】
また、本実施形態では、各小扉21a,21bの幅寸法W6が本体扉20の幅寸法W5の約1/2となるように設定されている。このため、両小扉21a,21bを折り畳んだ状態(図4(c))のときの引戸全体の幅寸法は、両小扉21a,21bを開いた状態(図4(a))のときの引戸全体の幅寸法の約1/2となる。
【0021】
上記構成からなる引戸においては、通常時は、図4(b)に示すように、一方の小扉21aを開いて他方の小扉21bを閉じた状態で用いられる。この場合、引戸を全開したときの開口幅がW1となり、開口部2の幅寸法W2よりも、小扉21a,21bの幅寸法(W6)の分だけ開口幅が狭くなる。このため、第1の実施形態と同様、引戸を閉じた時と開いた時とで、取手22の位置が大きく変わることはなく、例えば車椅子利用の身障者であっても、引戸を容易に開閉することができる。
【0022】
一方、移動式ベッドなどの大型荷物を通過させるときには、両小扉21a,21bを折り畳んだ状態で引戸が用いられる。この場合、図4(c)に示すように、引戸を全開したときの開口幅が、開口部2の幅寸法W2(W2>W1)となり、一方の小扉21aを開いた状態のときよりも、その幅寸法(W6)の分だけ開口幅が広くなる。このため、大型荷物であっても、開口部2の幅寸法W2の範囲内であれば、開口部2を通過させることができる。
また、両小扉21a,21bを折り畳んだ状態においては、全体の幅寸法が、両小扉21a,21bを開いた状態の約1/2となるので、収納スペース3も従来の約1/2に削減することができる。
【0023】
[第3の実施形態]
図5および図6は、本発明に係る引戸の第3の実施形態を示す図である。
この第3の実施形態においては、本体扉30の移動方向における両端に、それぞれ折り畳み可能な状態で小扉31a,31bが取り付けられ、それら小扉31a,31bの幅寸法が本体扉30の幅寸法W7とほぼ一致するように設定されている。また、各小扉31a,31bの平断面形状は、図6に示すように、略直角三角形とされ、これにより、本体扉30の一方の面側に、両小扉31a,31bが交互に重なり合う状態で平板状に折り畳み可能となっている。このため、両小扉31a,31bを折り畳んだ状態(図6(c))のときの引戸全体の幅寸法は、両小扉31a,31bを開いた状態(図6(a))のときの引戸全体の幅寸法の約1/3となる。
【0024】
上記構成からなる引戸においては、第2の実施形態と同様に、通常時は、図6(b)に示すように、一方の小扉31aを開いて他方の小扉31bを閉じた状態で用いられ、大型荷物を通過させるときには、図6(c)に示すように、両小扉31a,31bを折り畳んだ状態で用いられる。
【0025】
したがって、この第3の実施形態の引戸によれば、前述した第1および第2の実施形態と同様、容易に引戸の開閉を行うことができ、大型荷物であっても、両小扉31a,31bを折り畳むことにより、開口部2を通過させることができる。また、両小扉31a,31bを折り畳んだ状態においては、全体の幅寸法が、両小扉31a,31bを開いた状態の約1/3となるので、収納スペース3も従来の約1/3に削減することができる。
【0026】
なお、以上の各実施形態では、引戸として片引戸を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば両引戸に本発明を適用することも可能である。また、小扉を折り畳んだ状態或いは展開した状態で保持する方法としては、例えば、ロック機能を有する蝶番を使用する方法、蝶番とは別の係止金具を用いる方法などが挙げられるが、何れの方法を採用するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る引戸の第1の実施形態を示す正面図である。
【図2】図1の引戸の平面図である。
【図3】本発明に係る引戸の第2の実施形態を示す正面図である。
【図4】図3の引戸の平面図である。
【図5】本発明に係る引戸の第3の実施形態を示す正面図である。
【図6】図5の引戸の平面図である。
【図7】従来の引戸の一例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 引戸
2 開口部
3 収納スペース
10,20,30 本体扉
11,21a,21b,31a,31b 小扉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に移動可能な本体扉と、この本体扉の移動方向における少なくとも一端に折り畳み可能に設けられた小扉とを有し、
上記小扉を折り畳むことにより、全開時の開口幅を調節可能になっていることを特徴とする引戸。
【請求項2】
上記本体扉の移動方向における両端に、それぞれ上記小扉を設けたことを特徴とする請求項1に記載の引戸。
【請求項3】
上記小扉は、それぞれ上記本体扉とほぼ同じ幅寸法を有し、
上記本体扉の一方の面側に、上記小扉が交互に重なり合う状態で折り畳み可能となっていることを特徴とする請求項2に記載の引戸。
【請求項4】
各小扉が断面略三角形状に形成されて、両小扉を折り畳んだときに、当該引戸全体が平板状をなすように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の引戸。
【請求項5】
折り畳んだ状態のときの幅寸法が、当該引戸の収納スペースの幅寸法とほぼ一致するように設定されていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の引戸。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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