説明

引込戸

【課題】壁体に設けられた戸袋内に戸体が収納される片引き式の引込戸において、戸体をレールから簡単に取り外せるようにして、戸袋内の清掃を容易にする。
【解決手段】本発明の引込戸10は、レール14に沿って走行する戸体20が、建物の壁体に設けられた戸袋30内に収納される引込戸10において、戸体20の戸先側の縦框23に垂直方向の分割面が設けられて、この縦框が横幅方向に分割可能となされ、縦框の戸先側半体41を戸体本体から分離することにより、戸体20の全体が戸袋30から引き出されてレール14から取り外し可能となされたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出入口等に設けられて、開扉時には戸袋内に引込み収納される引込戸に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば建物の勝手口など比較的スペースの狭い場所に設けられる開口部用の建具として、片引き式の引込戸がよく利用されている。この種の引込戸は、建物の壁体と一体に設けた戸袋の内側に戸体をスライドさせて収納できるように構成されているので、開口幅を有効に利用することができ、開放時に戸体が邪魔にならないという利点がある。
【0003】
しかし、上記のような引込戸においては、長期間使用するうちに、戸袋内の奥のほうに埃やゴミが溜まってしまうという問題が生じる。また、戸体に取り付けられた戸車を交換する必要が生じることもある。戸体をレールから取り外すことができれば、戸袋内の清掃や戸車のメンテナンスも可能にはなるが、片引き式の引込戸の場合、戸体の横幅が開口幅よりも大きく形成されるのが通常であるから、戸体を戸袋から完全に抜き出してレールから取り外すのは困難である。
【0004】
このような不都合を解決しうる技術として、特許文献1には、戸袋に面する屋内側の壁体の一部を開き戸状に開閉させて、戸体を取り外せるようにした構造が開示されている。しかしながら、かかる構造においては、開口部枠材、造作材、額縁材、気密材等の一部が開き戸状に開閉する壁体部分と一体的に構成されるので、多くの部材にまたがって構造的な納まりが複雑化する。また、それらの部材の上下周辺に配設される壁体や他の固定された類似部材との間に合わせ目が生じることになるので、意匠性や気密性も損なわれてしまうこととなる。
【特許文献1】特開平10−205220号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記のような問題に鑑みてなされたもので、壁体に設けられた戸袋を容易には開閉したり解体したりすることができない片引き式の引込戸において、戸体をレールから簡単に取り外せるようにして、戸袋内の清掃やメンテナンスを容易ならしめることを目的とする。
【0006】
さらに、本発明は、戸体をレールから取り外し可能とするにあたり、意匠性や気密性にも優れた構造を提供することを詳細な解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の引込戸は、レールに沿って走行する戸体が、建物の壁体に設けられた戸袋内に収納される引込戸において、戸体の戸先側の縦框に垂直方向の分割面が設けられて、この縦框が横幅方向に分割可能となされ、縦框の戸先側半体を戸体本体から分離することにより、戸体の全体が戸袋から引き出されてレールから取り外し可能となされたことを特徴とする。
【0008】
上記発明においては、分割面の水平断面が戸体の走行方向に向かって嵌合し合う凹凸形状となるように、戸先側の縦框の片側半体に嵌合凸部、他側半体に嵌合凹部が設けられるのが好ましい。
【0009】
そして、戸先側の縦框は、その片側半体に設けられた嵌合凸部と他側半体に設けられた嵌合凹部とを嵌合させて、ビス止めにより結合されるように形成されるのが好ましい。
【0010】
戸先側の縦框の嵌合凸部と嵌合凹部とを嵌合させてビス止めする箇所は、戸体の表面から没入した溝状に形成されるとともに、この溝状部分にカバー材が嵌装されるように形成されるのが好ましい。
【0011】
これらの構成により、戸体の縦框を容易に分割することができ、横幅が小さくなった戸体を戸袋から完全に引き出してレールから取り外すことが可能になる。さらに、分割面も目立たなくすることができるので、意匠性も良好に保持される。
【0012】
さらに、本発明の引込戸は、戸袋の開口縁部と、戸体の引込側の縦框の縁部に、それぞれ横断面略L字形の気密係合片が設けられて、戸体を閉じたときに上記気密係合片同士が互いに係合し合うとともに、戸袋の開口縁部に設けられた気密係合片は、当該開口縁部に着脱可能となるように形成されたことを特徴とする。このように、着脱可能な気密手段を設けることにより、気密性も良好に保持される。
【0013】
戸袋の開口縁部に設けられる気密係合片は、当該開口縁部に対して着脱可能な気密部材の一部として形成され、この気密部材は、当該開口縁部近傍の開口枠または戸袋の内張り材にビス止めによって結合されるように形成されるのが好ましい。
【0014】
また、気密部材は、開口縁部近傍の開口枠または戸袋の内張り材にビス止めされる箇所が溝状に形成されるとともに、その溝状部分にカバー材が嵌装されるように形成されるのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
上述のように構成される本発明の引込戸は、戸体の縦框の一部を分離して戸体の横幅を小さくし、戸体を戸袋から完全に引き出してレールから取り外すことができるように構成されているので、戸袋内の清掃やメンテナンスがし易くなる。
【0016】
また、本発明において採用する縦框の分割構造は、縦框の見込面に垂直方向の分割ラインが入るだけのものであるから、外観意匠は分割ラインの目立たない美麗なものとなり、分割面の気密性も良好に保持される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【0018】
図1〜図5は本発明の一実施形態に係る引込戸を示す。図1は引込戸の屋外側正面図、図2は引込戸の屋内側正面図であり、図3〜図5は引込戸の横断面図である。
【0019】
例示の引込戸10は、建物の外壁に勝手口として設けられたものである。開口部の屋外側の四周には屋外側開口枠11が取り付けられており、屋内側の四周には屋内側開口枠12や造作枠13が取り付けられている。戸体20は、これら枠材11、12等の内側に建て込まれて開口部を開閉可能とする。
【0020】
上下の開口枠11にはレール14が設けられ、このレール14に沿って戸体20が走行可能に建て込まれている。戸体20を収納する戸袋30は、外壁材31と内壁材32とによって挟まれた壁体内に設けられている。戸袋30の屋外側の内面及び屋内側の内面には、戸袋内張り材33、34がそれぞれ張設されている。
【0021】
戸体20はその四周に、上框21、下框22、戸先側の縦框23及び引込側の縦框24を備え、これらの框材の内側にガラス板等からなる面材25が嵌め込まれている。戸先側の縦框23には開閉操作用の取手26や施錠装置27も取り付けられている。
【0022】
本発明の要部をなす戸先側の縦框23は、図6に示すように、戸先側の半体41と本体側の半体51とが、垂直方向の分割面を介して分離可能となっている。本体側の半体51は、戸先側に向かって中央が凸となる嵌合凸部52を有している。一方、戸先側の半体41は、本体側の半体51に向かって突出する一対の突片42、43を有しており、これら両突片42、43の間に形成された凹部が上記嵌合凸部52を内外両面から挟み込む嵌合凹部44を構成している。
【0023】
上記両突片42、43のうち屋内側に設けられた突片43には、高さ方向に沿って適宜間隔で数個のビス挿通孔45が形成されている。また、嵌合凸部52の屋内側の見付面には、上記ビス挿通孔45と合致するようにビス螺合孔53がタッピングされている。そして、嵌合凸部52と嵌合凹部44とを嵌合させた状態で、嵌合凸部52の屋内側の見付面と嵌合凹部44の突片とが屋内側からビス止めにより結合される。
【0024】
嵌合凸部52に対してビス止めされる屋内側の突片43は、その先端が屋内側に向かって折曲され、屋内側に対しても溝状に開口した断面形状をなしている。この溝状部分46には、ビス61を隠すためのカバー材71が取り付けられる。カバー材71は、溝状部分の内側に嵌装される一対の嵌合片72、72と、平坦な帯板状の表面材73とを有し、溝状部分46に嵌装された状態で、表面材73が、本体側の半体51及び戸先側の半体41の屋内側見付面と面一になるように形成されている。
【0025】
また、本体側の半体51における屋外側の見付け面54と、戸先側の半体41における屋外側の見付け面47は、互いの端縁同士を重合させるようにそれぞれ延長されて、結合時に屋外側から見て面一となるように形成されている。
【0026】
例示の引込戸10においては、気密性を高めるために、戸袋30の屋外側の開口縁部と、戸体20の引込側の縦框24の屋外側縁部に、それぞれ横断面略L字形の気密係合片81、82が設けられて、戸体20を閉じたときに、これらの気密係合片81、82が互いに係合し合うようになっている。これにより、屋外側と屋内側との間で空気の流出入や湿気、煙等の流入を防ぐことができる。
【0027】
戸体20側の気密係合片82は引込側の縦框24と一体に形成されているが、戸袋30側の気密係合片81は、戸袋30の屋外側の内張り材33に対して着脱可能な気密部材80の一部として形成されている。この気密部材80は、図7に示すように、屋外側の内張り材33の端面に当接される取付基部83と、この取付基部83から戸先側に向かって突出する一対の突片84、85とを具備し、気密係合片81は取付基部83から屋内側に向かって延設されている。さらに、両突片84、85のうち屋内側の突片85から屋内側に向かって突設された部分と、気密係合片81との間には、パッキン材を取り付けるための溝部86が形成されている。
【0028】
取付基部83には、高さ方向に沿って適宜間隔で数個のビス挿通孔87が形成され、これに対応して、内張り材33の見込面にはビス螺合孔35がタッピングされている。そして、気密部材80の取付基部83を内張り材33の見込面に当接させた状態で、その重合部分が屋外の戸先側からビス止めにより結合される。
【0029】
気密部材80に形成された一対の突片84、85の間には、上記したビス62を隠すためのカバー材75が取り付けられる。カバー材75は、両突片84、85の内側に嵌装される一対の嵌合片76、76と、平坦な帯板状の表面材77とを有し、気密部材80に嵌装された状態で、表面材77が、屋外側開口枠11の見込面と面一になるように形成されている。
【0030】
また、例示の引込戸10においては、断熱性能を高めるために、各框材や開口枠が屋外側と屋内側とに分割され、断熱性樹脂65を介して連結された断熱構造が採用されている。ただし、この種の断熱構造は、本発明において特に必須の要件ではない。
【0031】
本発明の引込戸10はこのように構成されているので、必要に応じて、戸体20を簡単にレール14から取り外すことができる。その手順は以下の通りである。
【0032】
まず、戸体20を、少なくとも戸先側の縦框23が戸袋30から引き出される位置まで移動する。そして、図4及び図7中に(1)〜(3)で示したように、気密部材80に嵌装されたカバー材75を取り外し、ビス62を抜いて、気密部材80を戸袋30の内張り材33から取り外す。次いで、図4及び図6中に(4)〜(6)で示したように、戸先側の縦框23に嵌装されたカバー材71を取り外し、ビス61を抜いて、戸先側の半体41を戸体20から分離する。なお、(1)〜(3)の手順と、(4)〜(6)の手順は後先入れ替えても差し支えない。
【0033】
上記手順により、戸体20の横幅は、分離された戸先側の半体41の分だけ小さくなるので、図5中に(7)で示すように、戸体20を戸先側一杯まで引き出すと、引込側の縦框24が戸袋30から完全に抜け出す。ここで、(8)に示すように、戸体20を持ち上げるなどしてレール14から取り外す。これにより、戸袋30の開口が完全に開放され、普段は手の届かない戸袋30の奥のほうまで簡単に掃除することが可能になる。
【0034】
なお、本発明の引込戸10における戸先側の縦框23の分割形態は、例示した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で多少の変形は可能である。例えば、嵌合凸部と嵌合凹部の位置関係を反対向きにしたようなものであってもよい。
【0035】
図8に、戸先側の縦框23の他の分割形態を示す。この図は、戸先側の縦框23の横断面図であって、(a)は結合状態、(b)は分離状態を示す。上記実施形態に示した各部材・部位と機能や作用において共通する部位・部材には同一の符号を付している。例示の縦框23も、戸先側(図示左側)の半体41と本体側(図示右側)の半体51とが、垂直方向の分割面を介して分離可能となっている。本体側の半体51は、戸先側に向かって中央が凸となる嵌合凸部52を有している。一方、戸先側の半体41は、本体側の半体51に向かって突出する一対の突片42、43を有しており、これら両突片42、43の間に形成された凹部が上記嵌合凸部52を内外両面から挟み込む嵌合凹部44を構成している。
【0036】
戸先側の半体41における嵌合凹部の底面には、高さ方向に沿って適宜間隔で数個のビス挿通孔45が形成されている。また、本体側の半体51における嵌合凸部52の頂面には、上記ビス挿通孔45と合致するようにビス螺合孔53がタッピングされている。そして、嵌合凸部52と嵌合凹部44とを嵌合させた状態で、両半体45、51が戸先側からビス止めにより結合される。符号48は、戸先側からドライバ等でビス63の着脱操作を行うために、ビス63の頭径よりも大きく形成された操作孔である。この操作孔48には、通常時は適宜のキャップ(図示せず)が嵌装されるようになっているのが好ましい。このような形態によっても、戸体を戸袋から引き出してレールから取り外すという、本発明の目的は好適に達成される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態に係る引込戸の屋外側正面図である。
【図2】上記引込戸の屋内側正面図である。
【図3】上記引込戸の横断面図であって、通常時の戸体を閉じたときの状態を示す。
【図4】上記引込戸の横断面図であって、戸体を取り外す際の中間状態を示す。
【図5】上記引込戸の横断面図であって、戸体を取り外した状態を示す。
【図6】上記引込戸における戸先側の縦框の分解斜視図である。
【図7】上記引込戸における気密部材の分解斜視図である。
【図8】本発明の他の実施形態に係る引込戸の、戸先側の縦框の横断面図であって、(a)は縦框の結合状態、(b)は縦框の分離状態を示す。
【符号の説明】
【0038】
10 引込戸
11 開口枠
14 レール
20 戸体
23 戸先側の縦框
24 引込側の縦框
30 戸袋
33 内張り材
41 戸先側の半体
44 嵌合凹部
46 溝状部分
52 嵌合凸部
61 ビス
62 ビス
63 ビス
71 カバー材
75 カバー材
80 気密部材
81 気密係合片
82 気密係合片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールに沿って走行する戸体が、建物の壁体に設けられた戸袋内に収納される引込戸において、戸体の戸先側の縦框に垂直方向の分割面が設けられて、この縦框が横幅方向に分割可能となされ、縦框の戸先側半体を戸体本体から分離することにより、戸体の全体が戸袋から引き出されてレールから取り外し可能となされたことを特徴とする引込戸。
【請求項2】
分割面の水平断面が戸体の走行方向に向かって嵌合し合う凹凸形状となるように、戸先側の縦框の片側半体に嵌合凸部、他側半体に嵌合凹部が設けられたことを特徴とする請求項1に記載の引込戸。
【請求項3】
戸先側の縦框は、その片側半体に設けられた嵌合凸部と他側半体に設けられた嵌合凹部とを嵌合させて、ビス止めにより結合されるように形成されたことを特徴とする請求項2に記載の引込戸。
【請求項4】
戸先側の縦框の嵌合凸部と嵌合凹部とを嵌合させてビス止めする箇所が、戸体の表面から没入した溝状に形成されるとともに、この溝状部分にカバー材が嵌装されるように形成されたことを特徴とする請求項3に記載の引込戸。
【請求項5】
戸袋の開口縁部と、戸体の引込側の縦框の縁部に、それぞれ横断面略L字形の気密係合片が設けられて、戸体を閉じたときに上記気密係合片同士が互いに係合し合うとともに、戸袋の開口縁部に設けられた気密係合片は、当該開口縁部に着脱可能となるように形成されたことを特徴とする請求項1に記載の引込戸。
【請求項6】
戸袋の開口縁部に設けられる気密係合片は、当該開口縁部に対して着脱可能な気密部材の一部として形成され、この気密部材は、当該開口縁部近傍の開口枠または戸袋の内張り材にビス止めによって結合されるように形成されたことを特徴とする請求項5に記載の引込戸。
【請求項7】
気密部材は、開口縁部近傍の開口枠または戸袋の内張り材にビス止めされる箇所が溝状に形成されるとともに、その溝状部分にカバー材が嵌装されるように形成されたことを特徴とする請求項6に記載の引込戸。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−46242(P2007−46242A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−228698(P2005−228698)
【出願日】平成17年8月5日(2005.8.5)
【出願人】(000101776)アルメタックス株式会社 (22)
【出願人】(000198787)積水ハウス株式会社 (748)
【Fターム(参考)】