説明

弦楽器のサドル、駒、フレット、ナット

【課題】弦楽器のサドル、駒、フレット、ナットの材質に関するもので、特にアコーステックギター又はクラシックギターに使用するサドルに関するものであり、高音、低音、中音ののび、残響音(サスティーン)を良くする。又、高音、低音、中音が出やすくする。
【解決手段】弦楽器のパーツのサドル3、駒、フレット2、ナット1のうち少なくとも1つが第11族金属、第11族金属の合金又は金属ガラスで造る。更に、サドル3の底部に複数の凸部を設けてスペーサーを挟んでブリッジ5に設けた溝に取付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は弦楽器のサドル、駒、フレット、ナットの材質に関するもので、特にアコーステックギター又はクラシックギターに使用するサドルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
弦楽器で最も普及しているアコーステックギター、クラシックギター、バイオリン、チェロ、三味線等の弦の乗る部分はサドル、駒と言われている。サドル、駒の材質は従来、木、べっこう、象牙、牛骨等の自然界のものが主流であった。しかし、近年べっこう、象牙は入手が困難になると共に、非常に高価なものになったので市場から姿を消していった。現在は、木、牛骨、成形しやすく安価なプラスチックが主流になっている。又、チタンの薄板をサドルのブリッジの間に挟みこむものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−15441
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アコーステックギターで例を上げると、弦の振動をサドルが受け、その振動をアコーステックギターの胴の空間部や共鳴板で増幅し、胴中央部の円形の穴から音が出る仕組みである。サドルの材質に木、牛骨のような内部に微細な空洞を有するもの(コーポーラス)を使用すると振動を吸収するので、音の伝わりが良くない。また、サドルの材質にプラスチックのような振動を減衰しやすいものを使用すると振動の伝わりが良くない。又、プラスチック製のサドル、駒は弦の圧迫による磨耗が激しいので直ぐに劣化する。又、形状も夏など気温が上がると変形して使用不可能となることもある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、弦楽器のサドル、駒、フレット、ナットのうち少なくとも1つが第11族金属、第11族金属の合金又は金属ガラスで造られたことを特徴とするサドル、駒、フレット、ナットである。
【0006】
本発明は、前記サドル、駒、フレット、ナットを使用することを特徴とする弦楽器である。
【0007】
本発明は、サドルの底部に複数の凸部を設けたことを特徴とするサドルである。
【0008】
本発明は、底部に複数の凸部を設けたサドルをスペーサーを挟んでブリッジに取付けることを特徴とするサドルある。
【0009】
本発明は、前記サドルを使用することを特徴とするアコーステックギター又はクラシックギターある。
【発明の効果】
【0010】
弾性歪エネルギが大きく、減衰率が低い第11族金属、第11族金属の合金や金属ガラスをサドル、駒、フレット、ナットに使用すると、高音、低音、中音ののび、残響音(サスティーン)が良くなる。又、高音、低音、中音が出やすくなる。
【0011】
下部にいくつもの凸部をつけることで、音が鮮明で明るい響きとなると共に、音がダイナミックになり、低音、中音、高音のバランスが良くなる。また、スペーサーを使用することでサドルの高さを自由に調節できる。また、夏など気温が上がっても変形することがない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】プラスチックサドル、第11族金属合金サドル、金属ガラスサドルを使用したアコーステックギターのコードCで発音した場合の周波数帯域分布図
【図2】第11族金属合金サドル、金属ガラスサドルの凸部有り、無しを使用したアコーステックギターのコードCで発音した場合の周波数帯域分布図
【図3】弾性歪エネルギδ/Eと減衰率ηの関係図
【図4】本発明の実施例のサドルを取り付けたアコーステックギターの正面図
【図5】図4のアコーステックギターのY−Y断面図
【図6】図4のアコーステックギターのX−X断面図
【図7】本発明の実施例2の底部に凸部を設けたサドルとスペーサーの正面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施例1、実施例2について図1〜図7を用いて説明する。
【実施例】
【0014】
図4に示すようなアコーステックギターにおいては、弦6は糸巻き9からナット1の上部を通ってブリッジ5を介してアコーステックギターの胴部(ボディ)に取付けられる。アコーステックのネックの部分には、図4、図6示すようにフレット2が取付けられている。フレット2の取付け間隔はホール10に近づくほど狭くなっている。弦6の胴部への取付方法は、図5に示すように、胴部(ボディ)の設けたブリッジ5に溝を設け、この溝にサドル3を取付ける。弦6は、図5に示すように、サドル3に弦6を当てて弦止めピン4により固定して張られる。アコーステックギターにおいては張られる弦6は通常一番細い第1弦から一番太い第6弦までの6本である。
【0015】
サドル3の材質は第11族金属の合金である。サドル3の底部に図7に示すように凸部を複数設けて、ブリッジ6にサドル3を取付けるときに図7に示すスペーサー8を挟んで取付ける。
【0016】
次に、従来のプラスチックサドルと実施例1の第11族金属合金サドルと実施例2の金属ガラスサドルの音の結果を図1〜図3を用いて説明する。
【0017】
図1と図2は周波数帯域分布図である。図1はプラスチックサドル使用時と第11族金属合金サドル使用時と金属ガラスサドルの使用時にコードCを弾いた周波数帯域分布図である。プラスチックサドルと比べて第11族金属合金サドルは、低音部の100〜500Hz位の周波数帯域が強調されて、よりダイナミックに聞こえる。
【0018】
第11族金属合金サドル使用時は、125Hzから500Hz間がより鮮明になり、125Hzより下の低域も発音されている。500Hzより上の中域や高域をみてみると、特に500Hzから4KHzの間がプラスチックサドルを使用時より鮮明に発音されている。第11族金属合金サドルを使用することで、サドルと弦の振動や共鳴が増幅し、バランスよく発音されていることがわかる。
【0019】
プラスチックサドルと第11族金属合金サドルと比べると金属ガラスサドルは、100Hz〜1.5kHzの周波数帯域がより強調されて、明るいきらびやかな音の響きを得られる。
【0020】
次にサドルの底部に凸部が有る場合と無い場合について説明する。図2に第11族金属合金サドル、金属ガラスサドルの凸部有り、無しを使用したアコーステックギターのコードCで発音した場合の周波数帯域分布図である。上部は第11族金属合金で、下部は金属ガラスである。左が凸部無し、右が凸部有りである。
【0021】
(第11族金属合金のサドル)
凸部無しのサドルは、全体的によく響いて聞こえるが、100〜500Hzの低い周波数帯域の低音の強調のみでバラスの良い響くが得られない。凸部有りのサドルは、100〜500Hzの低音部がより強調されて、ギターの位音が強調されるため全体的に音の響きが良くかつ、ダイナミックに聞こえるため音がバランス良く出ている。
【0022】
(金属ガラスサドル)
凸部無しのサドルは、全体的によく響いて聞こえるが、100〜500Hzの音成分の帯域の強調のみで、バランスの良い音の響きが得られない。凸部有りの方がより音の鮮明さが顕著である。高域の音の成分1〜4kHzの周波数帯域においては明るい響きの部分がより一層鮮明になる。また、4〜8kHzの可聴領域外の周波数帯域にも音の成分が強調されている。
【0023】
図3に弾性歪エネルギδ/Eと減衰率ηの関係を示す。弾性歪エネルギが高ければ減衰率は小さくなる傾向がみられる。又、減衰率が小さくなるとよく音が響くようになる。従って、弾性歪エネルギが大きくなればなるほどよく音はよく響くことになる。
【0024】
図3において、第11族金属の合金の真鍮は青銅(Bronze)とほぼ同じ位置にある。また、第11族金属の金、銀、銅もほぼ同じ位置にある。それに対して、金属ガラスは非常に弾性歪エネルギが大きいので減衰率は非常に小さい。従って、金属ガラスを使用するのが最もよい。これに対し、プラスチックは図3に記載できないほど、弾性歪エネルギは小さい(第11族金属並びにその合金の約100分の1である。)ので減衰率は大きくなる。
【符号の説明】
【0025】
1 ナット
2 フレット
3 サドル
4 弦止めピン
5 ブリッジ
6 弦
7 ネック
8 スペーサー
9 糸巻き
10 ホール



【特許請求の範囲】
【請求項1】
弦楽器のサドル、駒、フレット、ナットのうち少なくとも1つが第11族金属、第11族金属の合金又は金属ガラスで造られたことを特徴とするサドル、駒、フレット又はナット。
【請求項2】
請求項1に記載のサドル、駒、フレット又はナットを使用することを特徴する弦楽器。
【請求項3】
サドルの底部に複数の凸部を設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のサドル。
【請求項4】
底部に複数の凸部を設けたサドルをスペーサーを挟んでブリッジに取付けることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3に記載のサドル。
【請求項5】
請求項3、請求項4又は請求項5に記載のサドルを使用することを特徴とするアコーステックギター又クラシックギター。


【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−159832(P2012−159832A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−280679(P2011−280679)
【出願日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【出願人】(508048056)
【Fターム(参考)】