説明

弦楽器の弦端固定具

【課題】一端側に端末子を有する弦が張設される弦楽器において、弦の端末子側で弦のテンションを簡便に調節することができる新規な弦楽器の弦端固定具を提供する。
【解決手段】一端側に端末子3を有する弦2が張設される弦楽器のボディ1に取付けられて前記弦2の前記端末子3側を固定する弦楽器の弦端固定具50であって、弦2の引張方向に穿設された雌ネジ孔11を有する固定具本体10と、弦2の端末子3を係止する弦係止部(収容係止孔21)及び工具が掛けられる移動駒工具掛部23を有し、前記固定具本体10の前記雌ネジ孔11に移動可能に螺合された移動駒20とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弦楽器の弦端固定具に関するものであり、詳しくは、一端側に端末子を有する弦が張設される弦楽器のボディに取付けられて前記弦の前記端末子側を固定する弦楽器の弦端固定具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ギター、バイオリン、ハープ等の種々の弦楽器では、様々な手法によって弦が張設されている。例えばギターに代表されるように、ボディ、ボディから突設されたネック、及び、ネック先端に設けられたヘッドを備えた弦楽器では、弦は、一端側がボディに固定され、他端側がヘッドのペグに巻回されてチューニング可能に張設されている。また、エレキギターやアコースティックフォークギター等では、一端側の端部に端末子を有する弦が用いられている。ここで、弦の端末子は、ボール状、リング状、弾丸状等、適宜形状に形成されて弦の一端側に取着されたものであり、ギター等において、ボディのブリッジに設けられた係止部に係止固定されるものである。
【0003】
以下に、弦楽器における弦の端末子側の固定構造を、特許文献1に示すようなトレモロユニット(弦をビブラートさせる装置であり、ビブラートユニットとも称される)を搭載したエレキギターを例として、図3及び図4に基づいて説明する。
【0004】
トレモロユニット100は、板状に形成されたブリッジプレート110、及び、ブロック状に形成され、ブリッジプレート110の下面に固定ネジ115によって一体化された係止ブロック120を備えており、エレキギターのボディ1に設けられたユニット収容部1aに係止ブロック120が収容されるようにしてエレキギターのボディ1に取付けられるものである。
【0005】
ここで、係止ブロック120は、弦2の端末子3を収容すると共に係止する収容係止孔121を備えたものであり、この収容係止孔121に弦2の他端側を挿通させて一端側の端末子3を係止することで、トレモロユニット100に弦2の端末子3を固定するものである。
【0006】
一方、ブリッジプレート110は、取付けネジ130によってボディ1に取付けられているのであるが、ブリッジプレート110の先端下面とボディ1との間に隙間Sが設けられており、ボディ1に対して傾動可能となっている。また、ブリッジプレート110は、係止ブロック120に一端側が引っ掛けられ、ボディ1のユニット収容部1a内にネジ止めされた掛け具151に他端側が引っ掛けられた複数の引張スプリング150によって、弦2を張る方向に付勢されている。そして、このようなブリッジプレート110では、アーム装着部141に装着されたアーム140の操作によって、上記引張スプリング150の付勢力に抗して弦2が緩む方向にボディ1に対して傾動し、これにより弦2がビブラートされる。
【0007】
また、ブリッジプレート110は、弦2を載せるサドル111aが設けられたサドル部材111を備えており、このサドル部材111は、圧縮スプリング113によってネック方向に付勢されていると共に調節112ネジによって弦2の張設方向に移動可能となっている。さらに、サドル部材111は、調節ネジ114によってサドル111aの高さが調節可能となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
弦楽器においては、弦の張り具合、所謂テンションが、弦の種類(材質や太さ)及び弦の長さ(例えば上述したようなギターでは、ボディに固定された一端側からヘッドのペグに巻回された分を含む他端側までの弦全体の長さ)で決定される。例えば、同じチューニングを行った場合、硬い材質の弦では、柔らかい材質の弦よりもテンションが弱くなり、細い弦では、太い弦よりもテンションが弱くなり、長さが短い弦では、長さが長い弦よりもテンションが弱くなる。
【0009】
ここで、弦楽器では、使用者の個々の好みに応じて弦のテンションを調節したい場合がある。例えば、弦の種類を変えた場合においては、今まで使用していた弦と同様なテンションで演奏したいといった要望が生じる。また、通常のチューニングよりも音を下げたダウンチューニングを行った場合には、テンションが弱くなって良好なサスティーンが得られなくなることから、テンションを強くしたいといった要望が生じる。
【0010】
そして、従来、弦のテンションを調節するには、以下のような種々の手法がとられていたのであるが、これらの手法では夫々に問題があった。
【0011】
まず、ペグで巻回する弦の巻き数を変更することでテンションを調節する手法があるが、ペグに巻回するのに好適な巻き数は3巻き程度であり、この好適な巻き数以外では、チューニングが狂い易くなる。よって、ペグの巻き数で弦のテンションを調節することは、あまり好ましくない。
【0012】
次に、ボディに対するネックの角度や、ネックに対するヘッドの角度を変更することでテンションを調節する手法があるが、この手法では、複数の弦のテンションを個別に調節することが困難である。また、ネックの角度やヘッドの角度を変更するには、弦楽器の大掛かりな改造を必要とする。よって、ネックやヘッドの角度で弦のテンションを調節することは、あまり好ましくない。
【0013】
本発明は、上記実情を鑑みてなされたものであり、一端側に端末子を有する弦が張設される弦楽器において、弦の端末子側で弦のテンションを簡便に調節することができる新規な弦楽器の弦端固定具の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために本発明の採った主要な手段は、
「一端側に端末子を有する弦が張設される弦楽器のボディに取付けられて前記弦の前記端末子側を固定する弦楽器の弦端固定具であって、
弦の引張方向に穿設された雌ネジ孔を有する固定具本体と、
弦の端末子を係止する弦係止部及び工具が掛けられる移動駒工具掛部を有し、前記固定具本体の前記雌ネジ孔に移動可能に螺合された移動駒と
を備えることを特徴とする弦楽器の弦端固定具」
である。
【0015】
ここで、本発明に係る弦端固定具は、複数の弦が張設される弦楽器を対象とする場合において、単一の弦端固定具で全ての弦を固定するものに限らず、個々の弦に個別に対応するものや、全ての弦のうち、2本の弦や3本の弦といったように一部の複数の弦に対応するものであってもよい。
【0016】
また、本発明に係る弦端固定具は、弦楽器のボディに取付けられるものであるが、ボディに直接的に取付けられるものに限らず、後述するように、既製のトレモロユニットの係止ブロックと交換してブリッジプレートを介したり、或いは、別途の台座を介したりする等、弦楽器のボディに間接的に取付けられるものであってもよい。
【0017】
また、固定具本体は、後述するように、雌ネジ孔内に移動駒を収容するブロック状のものであってもよく、また、板状のものであってもよい。固定具本体を板状とする場合には、例えば図4に示したブリッジプレートのように断面L字状に形成し、突出する一辺側が、雌ネジ孔が穿設された突片となり、他辺側が、弦楽器のボディに取付けられる基板となるようにすればよい。
【0018】
さらに、移動駒は、弦の端末子を係止する弦係止部と、工具が掛けられる移動駒工具掛部とを備えたものであればよい。そして、弦係止部としては、端末子を収容して係止する収容係止孔や、端末子を引掛けるフック等を例示することができる。また、移動駒工具掛部としては、六角レンチが掛けられる六角穴、マイナスドライバーが掛けられる一文字状の溝等、内面側に工具が掛けられるものの他、スパナが掛けられる六角頭や平行な2面によって構成された所謂二面幅等、外面側に工具が掛けられるものであってもよい。
【0019】
上記構成の弦端固定具では、弦の端末子を係止する係止部を備えた移動駒が固定具本体の雌ネジ孔に移動可能に螺合されていることから、固定具本体の雌ネジ孔に対して移動駒を螺進または螺退させることで、ボディに対する弦の端末子の固定位置を簡便に変更することができる。そして、これにより、弦全体の長さを変えて、もって、弦のテンションを簡便に調節することができる。
【0020】
また、移動駒は、工具を掛けるための移動駒工具掛部を有していることから、移動駒を工具によって簡単に移動させることができる。
【0021】
上述した手段において、
「前記固定具本体は、ブロック状に形成されており、
前記雌ネジ孔は、前記固定具本体内に前記移動駒を収容するものであり、
前記移動駒の前記弦係止部は、一端側に弦を挿通可能とし端末子を挿通不能とする弦挿通部が設けられ、他端側に端末子を挿通可能とする前記移動駒工具掛部が設けられて、前記移動駒工具掛部側から弦の端末子を収容して該端末子を係止する収容係止孔、によって構成されており、
前記雌ネジ孔に螺合されると共に前記移動駒の前記移動駒工具掛部側に配置され、該移動駒を押圧して固定する固定駒をさらに備え、
該固定駒には、前記移動駒側である一端側に端末子を挿通可能とする端末子挿通部が設けられ、他端側に端末子を挿通可能で工具が掛けられる固定駒工具掛部が設けられている
ことを特徴とする弦楽器の弦端固定具」
とするのが好適である。
【0022】
上記構成の弦端固定具では、移動駒の係止部が、移動駒工具掛部側から弦の端末子を収容して係止する収容係止孔によって構成されていることから、固定具本体の雌ネジ孔に移動駒を装着した状態であっても、移動駒工具掛部側から弦を交換することができる。よって、上記構成の弦端固定具では、使用する弦の種類に応じて好みのテンションが得られるように移動駒の位置を予め決定して固定しておけば、古い弦を新しい弦に交換する都度、移動駒の位置調節を行う必要がなく、利便性に優れるものとなる。
【0023】
ところで、固定具本体の雌ネジ孔に移動駒を螺合しておくだけでは、弦の振動によって移動駒が不用意に移動してしまう虞がある。特に、弦の端末子には引張力が常時加わっていることから、弦が緩む方向に移動駒が移動し易い。また、移動駒は、ブロック状の固定具本体の雌ネジ孔内に収容されているため、移動しても外観上では気が付かない。
【0024】
そこで上記構成の弦端固定具では、移動駒に当接する別途の固定駒を採用している。この固定駒は、移動駒に当接して移動駒を押圧し、これにより移動駒を固定するものであり、所謂ダブルナットのようなネジの緩み止めとして機能するものである。よって、上記構成の弦端固定具では、移動駒の堅固な固定を実現することができ、固定駒が不用意に移動することを抑制することができる。
【0025】
また、固定駒は、一端側に弦の端末子を挿通可能な端末子挿通部を備えており、他端側に弦の端末子を挿通可能で工具が掛けられる固定駒工具掛部を備えている。よって、上記構成の弦端固定具では、固定駒によって移動駒が固定された状態でも、固定駒を取外すことなく固定駒側から弦を交換することができ、利便性に優れるものとなる。
【0026】
なお、固定駒の固定駒工具掛部は、移動駒の移動駒工具掛部とは別形態として、固定駒を移動駒とは異なる工具によって操作するようにしてもよいが、固定駒の固定駒工具掛部を、移動駒の移動駒工具掛部と同様な形態とするのがよい。このようにすることで、移動駒と固定駒とを共通の工具によって操作できることとなり、利便性を向上させることができるからである。
【0027】
上述した手段において、
「前記雌ネジ孔は、前記固定具本体に傾斜状に設けられている
ことを特徴とする弦楽器の弦端固定具」
とするのが好適である。
【0028】
ここで、傾斜状とは、弦楽器のボディに直接的または間接的に取付けられる固定具本体の取付面に対して、垂直または平行ではなく傾斜していることを示す。
【0029】
ブロック状の固定具本体に雌ネジ孔を設ける場合、傾斜状に設けると、傾斜させた分だけ雌ネジ孔を長くすることができる。これにより、移動駒の移動ストロークを長く設定することができ、弦のテンションを広範囲で調節することのできる弦端固定具を実現することができる。
【発明の効果】
【0030】
上述した通り、本発明によれば、一端側に端末子を有する弦が張設される弦楽器において、弦の端末子側で弦のテンションを簡便に調節することができる新規な弦楽器の弦端固定具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る弦端固定具の一例を示す断面側面図である。
【図2】移動駒及び固定駒の一例を示す部分断面側面図である。
【図3】既製のトレモロユニットの一例を示す斜視図である。
【図4】図3に示したトレモロユニットを搭載したギターの要部断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明に係る弦楽器の弦端固定具の実施形態としての一例を、以下、図面に従って詳細に説明する。
【0033】
なお、本発明に係る弦楽器の弦端固定具は、弦楽器のボディのフェイスに取付けたり、ボディに収容凹部を設けてこの収容凹部内に配置したり、そもそもボディに凹部を有する弦楽器であれば、この凹部を用いて凹部内に配置する等、種々の態様で用いることができるものであるが、以下に詳述する例では、エレキギターに搭載された既製のトレモロユニットの係止ブロックと交換することで、トレモロユニットにて弦のテンションを調節できるした弦端固定具を示し、トレモロユニットの細部については、図3及び図4と同一の符号を付すことで、詳細な説明は省略する。
【0034】
図1に、本発明に係る弦楽器の弦端固定具50の一例を示す。
【0035】
弦端固定具50は、ブロック状に形成された鉄鋼製(具体的にはS55C等の炭素鋼製)の固定具本体10を備えている。ここで、固定具本体10は、既製のトレモロユニット100の係止ブロック120と交換してトレモロプレート110に取付けられたものであり、既製のトレモロユニット100の係止ブロック120と同様に、固定ネジ115によってトレモロプレート110に取付けられている。
【0036】
ところで、弦のテンションをペグ側で調節することができる手法としては、前述した手法の他、テンション調節機能付きロックペグを用いた手法を例示することができる。ここで、テンション調節機能付きロックペグは、弦を巻かずに固定することができ、しかも、弦を固定するポストの高さが変更可能であり、ポストの高さを変更することで、弦のテンションを調節することのできるものである。しかしながら、このようなテンション調節機能付きロックペグを用いると、ヘッドの外観が大きく変わってしまう。よって、このようなテンション調節機能付きロックペグは、例えば古いタイプのエレキギターを愛するビンテージファンにとって受け入れ難いのものである。
【0037】
これに対して、本例のように、エレキギターの既製のトレモロユニット100において、係止ブロック120に代えて弦端固定具50を用いれば、外観を気にする使用者に対しても受け入れ易い。トレモロユニット100の係止ブロック120は、そもそもボディ1内に収容されるものであり、この係止ブロック120に代えて弦端固定具50を用いても、エレキギターの外観上では何らの変化もないからである。
【0038】
また、既製のトレモロユニット100の係止ブロック120に代えて弦端固定具50を用いる場合には、ボディ1のユニット収容部1aに収容できる範囲で、固定具本体10を可能な限り大型化させるのが好適である。
【0039】
弦2の端末子3を固定する部材が小さなブロック状であると、弦2の振動により部材自体が大きく振動してしまうことから、弦2の振動が他の弦2やボディ1等に影響を及ぼして音質を低下させてしまう虞がある。これに対して、弦2の端末子3を固定する部材が大きなブロック状であれば、弦2が振動しても部材自体が振動し難い。よって、固定具本体10を従来の係止ブロック120よりも大型のブロック状とすることで、弦2の振動による影響を他の弦2やボディ1等に及ぼし難くすることができ、音質の低下を抑制することができるからである。
【0040】
また、弦2の振動が他に影響を与えないようにするには、弦2の端末子3を固定する部材の重量が大きいことが望ましい。ここで、従来のトレモロユニット100の係止ブロック120が亜鉛製であるの対して、本例の固定具本体50では、その材料として、亜鉛(比重:約7.1)よりも比重の高い鉄鋼(比重:約7.8)を採用している。よって、本例の固定具本体50では、既製のトレモロユニット100の係止ブロック120よりも重量が大きく、この点からも、弦2の振動が他に影響を与え難くすることができる。
【0041】
固定具本体10には、係止ブロック120の収容係止孔121と同様に、エレキギターの弦2の数に対応する数の雌ネジ孔11が所定間隔で穿設されている。ここで、各雌ネジ孔11は、後述する移動駒20及び固定駒30を収容するものとなっている。また、各雌ネジ孔11は、ブリッジプレート110を介してボディ1に取付けられる取付面(ブリッジプレート110に当接する面)である上面に対して直角状ではなく、傾斜状に設けられている。より具体的に、雌ネジ孔11は、トレモロユニット100のサドル111aに向かって傾斜している。さらに、固定具本体10の下面には、引張スプリング150の一端側が引掛けられているのであるが、この引張スプリング150の一端側は、固定具本体10の下面に設けられた凹部12に収容されている。
【0042】
このように本例の弦端固定具50では、固定具本体10の雌ネジ孔11が傾斜していることから、固定具本体10の上面に、固定ネジ115用のネジ孔の形成スペースや、固定具本体10の下面に引張スプリング150の一端側を収容する凹部12の形成スペースを十分に確保することができる。また、固定具本体10の雌ネジ孔11がサドル111aに向かって傾斜していることから、サドル111aから固定具本体10まで張られる弦2の屈曲角度を緩和させることができる。
【0043】
また、本例の弦端固定具50の固定具本体10では、雌ネジ孔11が傾斜しているばかりでなく、既製のトレモロユニット100の係止ブロック120に比して高さが高く設定されている。よって、雌ネジ孔11の十分な有効長さを確保することができる。特に、本例の弦端固定具50では、上述の通り、引張スプリング150の一端側が固定具本体10の下面の凹部12に収容されているため、固定具本体10を、その下面がボディ1の下面に達するまで高くすることができる。
【0044】
固定具本体10の雌ネジ孔11には、移動駒20及び固定駒30が装着されている。ここで、移動駒20は、弦2の端末子3を収容係止するものであり、この移動駒20を固定具本体10の雌ネジ孔11内で移動させることで、弦2のテンションを調節することができる。また、固定駒30は、移動駒20に当接して押圧することで移動駒20を堅固に固定するものである。
【0045】
次に、移動駒20及び固定駒30の詳細を図2に基づいて説明する。
【0046】
移動駒20は、図2に示すように、固定具本体10の雌ネジ孔11に螺合する雄ネジが外周面に刻設された所謂イモネジによって構成されている。また、移動駒20には、弦2の端末子3を係止する弦係止部が設けられている。ここで、本例では、弦係止部が、軸方向に貫通し、弦2の端末子3を収容して係止する収容係止孔21によって構成されている。また、収容係止孔21は、一端側に、弦2は挿通可能であるが端末子3は挿通不能とした弦挿通部22を備え、他端側に、弦2の端末子3を挿通可能であり、工具を掛けることのできる移動駒工具掛部23を備えるものである。具体的に、弦挿通部22は、円形状であり、その内径が弦2の外径より大きく、端末子3の外径よりも小さく設定されている。また、本例では、移動駒工具掛部23として、六角レンチを掛けることのできる六角穴を採用しているのであるが、この六角穴は、端末子3を挿通可能な内面寸法となっている。
【0047】
このような移動駒20では、移動駒工具掛部23を通じて弦2の端末子3を出し入れすることができる。よって、この移動駒20では、固定具本体10の雌ネジ孔11に装着した状態であっても、移動駒工具掛部23側から弦2を交換することができる。
【0048】
固定駒30も移動駒20と同様に、図2に示すように、固定具本体10の雌ネジ孔11に螺合する雄ネジが外周面に刻設された所謂イモネジによって構成されている。また、固定駒30には、一端側に、弦2の端末子3を挿通可能な端末子挿通部31が設けられており、他端側に、弦2の端末子3を挿通可能な固定駒工具掛部32が設けられている。具体的に、端末子挿通部31は、円形状であり、その内径が端末子3の外径よりも大きく設定されている。また、固定駒工具掛部32として、移動駒20を操作する六角レンチを共用できる六角穴を採用しており、この固定駒工具掛部32は、移動駒20の移動駒工具掛部23と同様な形態で、端末子3を挿通可能な内面寸法となっている。
【0049】
このような固定駒30によれば、固定具本体10の雌ネジ孔11に移動駒20及び固定駒30を装着して固定駒30によって移動駒20を堅固に固定した状態であっても、固定駒30側から弦2を交換することができる。
【0050】
また、固定駒30の固定駒工具掛部32は、六角レンチである工具が固定駒30を貫通しないように有底となっている。よって、固定駒30を移動駒20の後方に配置して移動駒20を固定するに際して、固定駒30の固定駒工具掛部32に挿入した工具の先端が移動駒20の移動駒工具掛部23に到達して移動駒20を回してしまうことがなく、工具によって固定駒30のみを操作することができる。
【0051】
以上、本発明に係る弦端固定具の一例を説明したが、本発明に係る弦端固定具は、上述の例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、適宜の変更が可能である。
【0052】
例えば、エレキギターに搭載されている既製のトレモロユニットの係止ブロックに代えて用いるものでなく、ギターのフェイスに直接取付けられるものであってもよい。また、本発明に係る弦端固定具は、エレキギターやアコースティックフォークギターに限らず、端末子を有する弦が張設される種々の弦楽器に適用することができるものである。
【符号の説明】
【0053】
2 弦
3 端末子
10 固定具本体
11 雌ネジ孔
12 凹部
20 移動駒
21 収容係止孔(弦係止部)
22 弦挿通部
23 移動駒工具掛部
30 固定駒
31 端末子挿通部
32 固定駒工具掛部
50 弦端固定具
【先行技術文献】
【特許文献】
【0054】
【特許文献1】特開平7−199909号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側に端末子を有する弦が張設される弦楽器のボディに取付けられて前記弦の前記端末子側を固定する弦楽器の弦端固定具であって、
弦の引張方向に穿設された雌ネジ孔を有する固定具本体と、
弦の端末子を係止する弦係止部及び工具が掛けられる移動駒工具掛部を有し、前記固定具本体の前記雌ネジ孔に移動可能に螺合された移動駒と
を備えることを特徴とする弦楽器の弦端固定具。
【請求項2】
前記固定具本体は、ブロック状に形成されており、
前記雌ネジ孔は、前記固定具本体内に前記移動駒を収容するものであり、
前記移動駒の前記弦係止部は、一端側に弦を挿通可能とし端末子を挿通不能とする弦挿通部が設けられ、他端側に端末子を挿通可能とする前記移動駒工具掛部が設けられて、前記移動駒工具掛部側から弦の端末子を収容して該端末子を係止する収容係止孔、によって構成されており、
前記雌ネジ孔に螺合されると共に前記移動駒の前記移動駒工具掛部側に配置され、該移動駒を押圧して固定する固定駒をさらに備え、
該固定駒には、前記移動駒側である一端側に端末子を挿通可能とする端末子挿通部が設けられ、他端側に端末子を挿通可能で工具が掛けられる固定駒工具掛部が設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の弦楽器の弦端固定具。
【請求項3】
前記雌ネジ孔は、前記固定具本体に傾斜状に設けられている
ことを特徴とする請求項2に記載の弦楽器の弦端固定具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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