説明

弦楽器二胡の製造

【課題】 本来弦楽器二胡の音域は約2オクターブと狭く、その為演奏する曲目に合わせて音域を、F調、G調、A調、B調に変えるか、F調、G調、A調、B調を、3度、5度、7度と音調を移動して音域の狭さをカバーして演奏を行っており、又、二胡には指板やフラットが無く、唯々二本の弦が棹から離れていて、高齢初心者には指使いがあまりにも自由過ぎて正しい音階指位置が摘み難い楽器と思われている。
【解決手段】 そこで、本来約2オクターブと狭い二胡の音域を3オクターブに拡幅する為、千金の位置を糸倉方向に移動して弦の振幅を拡げたのと、駒と干金との間隔の増加に伴い弦圧上昇が得られた結果、音域が3オクターブと、拡幅が可能となり、煩わしい変調、移調を行わずに低音域の演奏が可能となると共に、棹に着脱可能な演奏支援用具の指板を装着した事と棹の見易い位置に演奏支援用具のステッカーを貼付した結果、永い間音楽から遠ざかっていた高齢初心者が短期間に、正しい音階での演奏が可能となった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、音域の狭い二胡の特に低音域の拡幅を図り、永い間音楽から遠ざかって居た高齢初心者が煩わしい変調、移調せずに演奏を可能にしたと共に、着脱可能な指板とステッカーを棹に装着し、短期間に正しい音階で演奏出来る演奏支援用指板及びステッカーに係るものである。
【背景技術】
【0002】
【非特許文献1】 2005年5月28日、東京文化会館小ホールで開催の、二胡演奏者許可氏のシルクロード・コンサートのパンフレットの見開き左側。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本来二胡は弦の数が2本と少ないが為に、音域が約2オクターブと狭く、その為演奏する曲目に合わせて音域を、F調、G調、A調、B調に変えるか、又はF調、G調、A調、B調の音階を3度、5度、7度と音調を移動して基本調のD調に改め音域の狭さをカバーして演奏を行っており、又、二胡にはバイオリン、三味線にある指板が無く、ギターや琵琶等にあるフラットも無く、唯々二本の弦が棹から離れていて、高齢初心者には指使いがあまりにも自由過ぎて、正しい音階指位置が掴み難く、取り付きにくい楽器と思われている。又、指位置が定まるまでには可成りの月日を要しており、それがために、次のような問題点があった。
【0004】
(イ)二胡は、音域が狭いので調弦して変調するか、音域を移動して演奏出来る楽曲の増加を図っていた。
(ロ)移調すると半音階の移調部分が不調和音と化しリズムがとり難く演奏が続けられなくなる。
(ハ)ひらがな音域のB調、A調の音量が、カタカナ音域のD調、C調の音量が半分以下に減少してしまい実用性が甚だ乏しい。
(二)棹の中木部分が共鳴胴の外周上面から外周下面に貫通していて、共鳴胴内周で起こる共鳴、共振作用の円滑な発生を阻害している。
(ホ)変調すれば、指位置も同時に変わると、頭では解っていても、何時の間にか高齢初心者は、最初に覚えたD調(15弦)の指位置になってしまい演奏が続けられなくなる。
(ヘ)二胡には、バイオリン、三味線にある指板が無く、又ギター、琵琶にあるフラットも無く、唯々2本の弦が棹から離れていて、高齢初心者には音階指位置があまりにも自由すぎて、正しい音階位置が掴み難い。
本発明は、これらの問題点を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決するものであり、以下のような構成となる。 先ず請求項1の発明は、二胡の共鳴胴前面開口部から中木(16)が貫通していた位置に至る内周径をメガホン状(12)の所要径に縮径し、共鳴胴(1)の外周上面の所要位置を穿設し、該孔(8)と同形に加工した所要数値を有する棹(2)の棹下端(9)を嵌合させ、外周下面の所要位置を穿設し、該孔(10)と同形に加工した所要数値の棹小片(11)を該孔(10)に固着した後、糸倉(4)方向の所定位置に千金(5)を移動したを特徴とする。 これにより、従来の約2オクターブの音域を3オクターブと拡幅出来たので煩わしい変調、移調せずに低音域の演奏が可能である。
【0006】
又、棹の中木部分(16)を切除した事と、千金(5)と駒(7)との間隔延長が起因で生ずる駒(7)への弦圧力増加の相乗効果で低音域(B調、A調)の音量の増大が可能となる。
【0007】
又、例えば請求項2のように、丸竹展開平板を所要数値にスライスし、所要形状に任意機材、任意方法に依り、所要厚に積層成形した構成を特長とする、二胡の振動膜(6)に係る。 これにより、構成する素材を基本振動係数の同じ竹材(竹駒、竹スライス振動膜)とした結果、温もりある音響を得る事が可能となる。
【0008】
また、例えば請求項4記載のように、所要形状の指板表面(13)の所要位置に溝を刻み、この溝を弦別(内弦と外弦)に加彩を施して音階指位置を示し、音階に対応して数字符記入のステッカー(14)を棹(2)の見易い個所に貼付すると共に、指板裏面に着脱可能な係合部材(15)を装着して、棹(2)からの指板(13)の着脱を可能な構成にしたを特徴とする、演奏支援用指板(13)及びステッカー(14)に係る。 これにより、指板表面(13′)に刻んだ溝を押さえることで、簡単に正しい音階で演奏が可能となると共に、色分けした数字符を記載した楽譜と連携して、弦別(内弦青、外弦赤)に色分けしてあるステッカー(14)の示す数字符通りの指使いで把位位置の移動回数が大幅な省略が可能である。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、従来的2オクターブの狭い二胡の音域を、3オクターブの音域に拡幅するため、棹丈の調整加工、千金位置の糸倉方向への移動、千金と駒との間隔延長等を図った結果、低音域(B調、A調)の拡幅が可能となる。
【0010】
又、低音域(B調、A調)の音量の拡大を図り、共鳴胴を貫通している中木部分の切除、共鳴胴開口部分のメガホン状縮径、千金と駒との間隔延長が起因で生ずる駒への弦圧力の増加等の相乗効果で、従来実用性が甚だ乏しかった低音域(B調、A調)の音量の増大が可能となる。
【0011】
更に、棹(2)に溝を刻んだ着脱の可能な指板(13)を装着した事と音階指位置に対応した数字符記入のステッカー(14)を、棹(2)の見易い位置に貼付した演奏支援用指板及びステッカーの使用に依り、永い間音楽から遠ざかっている高齢初心者が、煩わしい変調、移調せずに、どんな曲でも短期間に正しい音階で演奏技能が体得出来る着脱可能な演奏支援用具指板(13)を装着しステッカー(14)を貼付した弦楽器二胡を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施するにあたり最良の形態を、図面を参照しながら説明する。
尚、本発明に依って設定した音階指位置図並びに把位位置図は現在中国で出版している、二胡演奏法(上海音楽出版社発行)には記載が無いので公知のD調(15弦)を流用して設定したものであり、又音域名(かたかな音)を仮称、下点15弦と云う。
【0013】
図1は、弦楽器二胡の斜視図、各部の名称を示す。
尚、参考までに二胡の基本型を下記に示す。
全長 ― 75cm〜84cm 内弦の太さ ― 約0.4mm
共鳴胴幅 ― 約 9cm 外弦の太さ ― 約0.25mm
共鳴胴の長さ― 約13cm 駒と千金との間隔― 約40cm
【0014】
図2は、棹と共鳴胴の分解図及び各部の名称を示す。
通常二胡の共鳴胴前面開口部(17)の約76mmある内周径を、約71mmに縮径すると共に中木部分(16)が貫通していた中木孔跡位置(8)の約67mmある共鳴胴内周径を、駒(7)の底面径15mmと同数の、15mmのメガホン状(12)に縮径、共鳴胴(1)の外周上面の前面開口部から約25mmの位置に20mm四角形を穿孔(8)し、既に棹丈を755mm、嵌合部分約35mmの、20mm四角形に加工した棹下部(9)を該孔(8)に嵌合し、共鳴胴外周下面(10)の中木部分(16)が貫通していた位置(10)に14mm四角形を穿孔(10)し該孔と同形に加工した14mm四角形、長さ30mmの棹小片(11)を固着して後、振動膜(6)の中心に在る駒(7)と千金(5)との間隔約40cmあるのを、弦の振幅巾を拡げ、駒(7)に圧力を加えて音量を増大させる為に、千金(5)の位置を糸倉方向(4)に約10cm移動して低音域の音量の増大を可能にする構成である。
【0015】
又、竹スライス膜の構成は下記の通りである。
丸竹展開平板をスライス加工した厚さ約0.25mmの竹膜に任意接着剤を用いて所要数値(通常は3枚、60°違い)の0.75mmに積層して所定時間(約1分間)真空槽内で溌気処理して密着加工を施し、積層工程終了後、自然乾燥、又は任意熱源を用いて乾燥させた竹スライス振動膜を、共鳴胴の形状に合わせて整形後、塗装して全工程を終了する。
【0016】
尚、竹繊維の縦方向の引っ張り強度は、鋼鉄以上の値を有しているが横方向の引っ張り強度がゼロに等しく、脆いが為に、該振動膜(6)の共鳴胴への貼付時の破損防止並びに演奏時、保管中の横割れに備え、丸竹展開平板をスライスし、繊維方向を放射状に積層圧着して全方向に均等な引っ張り強度を付与し、横割れ防止に努めるものである。
【0017】
又、真空処理工程実施の理由は、演奏時積層した竹膜の間に残留している微細気泡が災いして起こる雑音の発生を未然に防ぐものである。 又、簡便な竹スライス膜の密着方法として、ジャッキを用いた加工方法もあるが、長時間加圧を続けなければならず作業効率が甚だ悪い。
【0018】
図4は、棹及び指板、並びにステッカーの平面図及び各部の名称を示す。
二胡の棹径(役16mm)を逸脱しない程度の巾16mm四角形、長さ約41cmの指板表面(15)の長手方向に平行して中央に区分線を描き、区分線の右側を外弦音(溝を青色に加彩)、左側を内弦音(溝を赤色に加彩)と定めて弦音をチューナーで測定しながら所要音階指位置(13′)を示す溝を弦別に刻み、弦別に其々加彩を施し、前記の指板(13)と全く同一寸法の音階記号を数字符に置き換え記入したステッカー(14)を棹(2)の内弦側横面(12′)に貼付すると共に、指板裏面の両端に着脱の可能な係合部材(15,15′)を任意接着剤を用いて棹(2)からの指板(13)の着脱を可能とした。
【0019】
又、弦別(内弦と外弦)に色分けした棹(2)の側面に貼付してある数字符(14)と弦別に色分けした音階指位置(13′)と連係して作成した音符(図面、楽譜その他の掲示を省く)の示す、色分けした数字符通りに音階指位置(13′)を押さえるだけで、簡単に、正しい音階で演奏出来ると共に、把位位置の移動回数を大幅な省略が可能と成ったが為に、高齢初心者には難度が高く、当然不可能と考えられていた曲の演奏が可能である。
【0020】
尚、装着してある指板(13)並びに貼付してあるステッカー(14)は、正しい音階指位置及び把位位置の体得出来た時点で取り除くものとし、高齢初心者は概ね、2ヶ月前後の前記演奏支援用具の使用で充分目的を達する事が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】 弦楽器二胡の斜視図、各部の符号を示す。
【図2】 棹と共鳴胴の断面図及び分解図を示す。
【図3】 共鳴胴の断面図(メガホン状を示す)である。
【図4】 弦楽器二胡及び指板、並びにステッカーの平面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 共鳴胴 2 棹 3 弦
4 糸倉 5 千金 5′ 旧千金位置
6 振動膜 7 駒 8 外周上面孔
9 棹下部 10 外周下面孔 10′ 下面孔内周壁
11 棹小片 12 メガホン状 12′ 棹横面
13 指板 13′ 指板表面 14 ステッカー
15 係合部材 15′ 係合部材 16 中木部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二胡の共鳴胴(1)の外周上面の所要位置を穿設し、該孔(8)と同形に加工した所要数値を有する棹(2)の棹下端(9)を嵌合させ、外周下面の所定位置を穿設、該孔(10)と同形に加工した所要数値の棹小片(1)を該孔(10)に固着して後、糸倉(4)方向の所要位置に千金(5)を移動した構成としたを特徴とする弦楽器二胡の製造。
【請求項2】
丸竹展開平板を所要数値にスライスし、所要形状に任意機材、任意方法に依り積層形成した構成を特徴とする二胡の振動膜(6)に係る、請求項1記載の弦楽器二胡の製造。
【請求項3】
所要形状の指板表面(13)所定位置に溝を刻み、該溝を弦別(内弦、外弦)に加彩して音階指位置を示し、指板に示した音階に対応する数字符記入のステッカー(14)を棹(2)の見易い個所に貼付すると共に、指板裏面に着脱の可能な係合部材(15)を装着して、棹(2)からの指板(13)の着脱を可能な構成としたを特徴とする演奏支援用指板、ステッカーに係る、請求項1記載の弦楽器二胡の製造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−133336(P2007−133336A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−349900(P2005−349900)
【出願日】平成17年11月7日(2005.11.7)
【出願人】(593172496)
【Fターム(参考)】