弦楽器用糸巻装置
【課題】巻取軸を本体に取り付ける位置を変更可能にし、本体を小型化および薄型化して、様々な種類の弦楽器に取り付ける。
【解決手段】弦楽器用糸巻装置1は、弦楽器に取り付けられる本体10と、本体10に回転自在に支持され、一端部に摘み30を有するウォーム20と、ウォーム20と噛み合い、本体10に回転自在に支持されるウォームホイール40と、ウォームホイール40の軸方向の片側に接続されるとともに、弦楽器の弦を巻き取る巻取軸50とを備えている。そして、本体10の少なくとも二つの面には、巻取軸50を回転自在に支持するための軸受孔16a,16bが形成されている。
【解決手段】弦楽器用糸巻装置1は、弦楽器に取り付けられる本体10と、本体10に回転自在に支持され、一端部に摘み30を有するウォーム20と、ウォーム20と噛み合い、本体10に回転自在に支持されるウォームホイール40と、ウォームホイール40の軸方向の片側に接続されるとともに、弦楽器の弦を巻き取る巻取軸50とを備えている。そして、本体10の少なくとも二つの面には、巻取軸50を回転自在に支持するための軸受孔16a,16bが形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギターなどの弦楽器の糸巻装置に係り、特に巻取軸を本体に取り付ける位置を変更可能な糸巻装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ギターなどの弦楽器は、弦のチューニングを行うための糸巻装置を備えている。糸巻装置は、図11に示すように、本体110と、この本体110に回転自在に支持されるウォーム120と、ウォーム120の一端部に固定された摘み130と、本体110に回転自在に支持された巻取軸140と、この巻取軸140の端部に接続されるとともにウォーム120に噛み合うウォームホイール150とを備えている。
【0003】
このような糸巻装置100は、巻取軸140を弦楽器のヘッド200に形成された孔200aに貫通させて、巻取軸140の巻取面141を孔200aから突出させるとともに、本体110をビスによって弦楽器のヘッド200の下面に固定することにより、弦楽器のヘッド200に取り付けられる。そして、巻取軸140に弦を巻き、摘み130を回転させて弦を巻き取ったり、巻き解いたりすることによって、チューニングを行うようになっている。ここで、ヘッド200の上面から孔200aにガイドブッシュ160が嵌合され、ガイドブッシュ160の先端の小径部外周に形成されたネジがガイド筒110aの内周に螺合される。これにより、巻取軸140は、本体110とガイドブッシュによって回転自在に支持されるとともに、本体110はヘッド200に固定される。このような構成の糸巻装置100としては、例えば、特許文献1に開示されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−154435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、糸巻装置が取り付けられる弦楽器は様々な種類があり、弦楽器の形状やスペースに応じて、様々な糸巻装置が製造されている。例えば、上述したような糸巻装置100では、そのサイズの制限から、弦楽器のヘッド200の下面に本体110を固定しなければならない。そして、巻取軸140をヘッド200の上面に突出させるために、巻取軸140を本体110の裏側に取り付け、ヘッド200には孔200aを設ける必要がある。また、これに伴って巻取軸を孔200aへガイドするためのガイドブッシュ160やガイド筒110aといった部材が必要になっている。したがって、このような構成の糸巻装置100を取り付けることができる弦楽器の種類は制限されていた。
【0006】
このような背景を鑑み、本発明は、巻取軸を本体に取り付ける位置を変更可能にし、本体を小型化および薄型化して、様々な種類の弦楽器に取り付けることが可能な弦楽器用糸巻装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の弦楽器用糸巻装置は、弦楽器に取り付けられる本体と、前記本体に回転自在に支持され、一端部に摘みを有するウォームと、前記ウォームと噛み合い、前記本体に回転自在に支持されるウォームホイールと、前記ウォームホイールの軸方向の片側に接続されるとともに、前記弦楽器の弦を巻き取る巻取軸とを備え、前記本体の少なくとも二つの面には、前記巻取軸を回転自在に支持するための軸受孔が形成されていることを特徴としている。
【0008】
本発明の弦楽器用糸巻装置では、本体の少なくとも二つの面に巻取軸を回転自在に支持する同形状の軸受孔が形成されているから、いずれかの面に巻取軸を取り付けることが可能である。特に、本体の表側に巻取軸を取り付けた場合には、弦楽器のヘッドの表側に糸巻装置の本体を取り付けることができる。この態様によれば、弦楽器のヘッドに巻取軸を挿通するための孔を設ける必要がない。また、この孔に嵌合させるガイドブッシュやガイド筒も不要となる。このため、部品点数、製造工数、製造コストを低減することが可能である。
【0009】
ここで、巻取軸を本体に回転自在に支持させるための手段としては種々の構成を採用することができる。例えば、本体の少なくとも二つの面に形成される軸受孔に直接巻取軸を支持する構成を採用することができる。また、これらの軸受孔に接続する軸受をさらに備える構成を採用するとより好ましい。糸巻装置の本体を小型化または薄型化した場合には、これらの軸受によって本体の強度を補うことができる。なお、巻取軸は、本体の少なくとも二つの面に設けられた軸受孔または軸受によって回転自在に支持されるため、弦の張力によって、巻取軸の軸中心が弦楽器のヘッドに対して傾斜しにくい構成となっている。
【0010】
また、本発明の弦楽器用糸巻装置では、前記ウォームホイールの軸方向の片側に、前記巻取軸と一体となって回転するホイール軸をさらに備えることを特徴としている。この態様によれば、ウォームホイールの回転軸は、その軸方向の両側に接続されている巻取軸とホイール軸の二つの部材で構成されているため、ウォームホイールへ巻取軸を容易に着脱することができる。したがって、巻取軸の本体への取り付け位置を容易に変更することができる。また、ホイール軸は、ウォームホイールの内周面に形成された小径孔部の端部に係止されていることを特徴としている。この態様によれば、巻取軸がホイール軸と一体化されているため、巻取軸がウォームホイールから抜け落ちるのを防止することができる。
【0011】
さらに、本発明の弦楽器用糸巻装置では、本体の少なくとも二つの面には、前記ウォームを回転自在に支持するための軸受孔が形成されていることを特徴としている。本体の少なくとも二つの面にウォームを回転自在に支持する軸受孔が形成されているから、いずれかの面にウォームを取り付けることが可能である。したがって、弦楽器の形状やスペースに応じて、ウォームを本体に取り付ける位置を変更することができる。
【0012】
なお、上述した巻取軸の場合と同様に、ウォームを本体に回転自在に支持させるための手段としては種々の構成を採用することができる。軸受孔に直接ウォームを支持する構成を採用してもよいし、これらの軸受孔に接続する軸受をさらに備える構成を採用するとより好ましい。糸巻装置の本体を小型化または薄型化した場合には、これらの軸受によって本体の強度を補うことができる。
【0013】
また、本発明の弦楽器用糸巻装置では、弦楽器への取り付け方法として様々な構成を採用することができる。例えば、上述したように、本体の表側に巻取軸を取り付けた場合には、弦楽器のヘッドの表側に本体を取り付ける構成を採用することができる。この態様によれば、弦楽器のヘッドに巻取軸を挿通するための孔を設ける必要がない。また、この孔に嵌合させるガイドブッシュやガイド筒も不要となる。このため、部品点数、製造工数、製造コストを低減することが可能である。
【0014】
また、本体の裏側に巻取軸を取り付けた場合には、弦楽器のヘッドの裏側に窪みを形成し、この窪みに本体を取り付ける構成を採用することができる。この態様によれば、弦楽器のヘッドの裏側に突起物がなくなるため、演奏がし易くなる。また、この窪みを樹脂等によって蓋をすれば、美観のよい弦楽器を提供することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、巻取軸を本体に取り付ける位置を変更可能にし、本体を小型化および薄型化して、様々な種類の弦楽器に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施形態に係る糸巻装置の上面図である。
【図2】第1の実施形態に係る糸巻装置の側面図である。
【図3】第1の実施形態に係る糸巻装置のA−A線断面図である。
【図4】第1の実施形態に係る糸巻装置のB−B線断面図である。
【図5】第1の実施形態に係る糸巻装置の部材を分解した斜視図である。
【図6】巻取軸を本体の表側に取り付けた糸巻装置の断面図である。
【図7】巻取軸を本体の表側に取り付けた糸巻装置の部材を分解した斜視図である。
【図8】糸巻装置をギターに取り付ける方法を説明する説明図(A)および(B)である。
【図9】糸巻装置をヴァイオリンに取り付ける方法を説明する説明図(A)および(B)である。
【図10】第2の実施形態に係る糸巻装置の断面図である。
【図11】従来の糸巻装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.第1の実施形態
第1の実施形態に係る糸巻装置について、図1〜図5を参照して説明する。図1および図2は、糸巻装置の上面図と側面図である。また、図3および図4は、糸巻装置のA−A線断面図とB−B線断面図である。図5は、糸巻装置の部材を分解した斜視図である。
【0018】
まず、糸巻装置1の構成の概略について説明する。図中符号10は、糸巻装置1の本体である。本体10には、ウォーム20が回転自在に支持されている。ウォーム20には、それを回転させるための摘み30が取り付けられている。また、ウォーム20には、ウォームホイール40が噛み合わされている。ウォームホイール40には、巻取軸50が嵌合されている。
【0019】
次に、糸巻装置1の各部について詳細に説明する。本体10は、基板11およびカバー12で構成されている。基板11は、SUS304等の金属板をプレス成形したもので、例えば、長さL1が21.2mm、幅W1が8.4mmである。基板11の両端部には、基板11を弦楽器のヘッド(図示省略)にネジ等で取り付けるための取付孔13a、13bが形成されている。取付孔13bの内側には、カバー12を基板11に取り付けるためのカバー取付孔14aが形成されている。また、基板11には、カバー12の取り付け位置を位置決めする突起15a〜15cが形成されている。
【0020】
さらに、基板11の中央部には、巻取軸50を回転自在に支持するための軸受孔16aが形成されている。軸受孔16aは、巻取軸50を回転自在に支持する軸受70を嵌合する。軸受孔16aは、六角形状をなしており、基板11に対する軸受70の相対回転を阻止している。軸受70は、黄銅等の金属で形成されており、位置決め部70aとフランジ70bからなる。位置決め部70aは、六角形状をなしており、基板11の軸受孔16aに嵌合する。フランジ70bは、基板11に対する軸受70の抜け止めの役割と、ウォームホイール40を回転自在に支持する役割を担っている。
【0021】
カバー12は、略十字状をなすSUS304等の金属板を折り曲げ加工したもので、例えば、長さL2が11.5mm、幅W2が7.2mmである。カバー12の中央部には、ホイール軸41を回転自在に支持するための軸受孔16bが形成されている。軸受孔16bは、ホイール軸41を回転自在に支持する軸受71を嵌合する。軸受孔16bは、六角形状をなしており、カバー12に対する軸受71の相対回転を阻止している。軸受71は、黄銅等の金属で形成されており、位置決め部71aとフランジ71bからなる。位置決め部71aは、六角形状をなしており、カバー12の軸受孔16bに嵌合する。フランジ71bは、カバー12に対する軸受71の抜け止めの役割と、ウォームホイール40を回転自在に支持する役割を担っている。
【0022】
なお、軸受孔16aと軸受孔16bは、本体10の少なくとも二つの面に形成されていればよく、本体10の側面に形成される構成であってもよい。また、軸受孔16aと軸受孔16bに嵌合する軸受70と軸受71の内径が同じであるため、巻取軸50は、本体10のいずれかの面に取り付けることが可能となっている。
【0023】
また、カバー12の少なくとも二つの側面には、ウォーム20を回転自在に支持するための軸受孔18a,18bが形成されている。軸受孔18a,18bは、U字状に形成されており、ウォーム20を回転自在に支持する軸受80,81を嵌合する。軸受80と軸受81は、円筒状の取付部80a,81aと非円筒状(直方体状)のフランジ80b,81bとから構成されている。円筒状の取付部80a,81aは、カバー12の軸受孔18a,18bに嵌合する。直方体状のフランジ80b,81bは、カバー12の内壁に係止されている。これにより、カバー12に対する軸受80,81の相対回転を阻止している。
【0024】
なお、軸受孔18aと軸受孔18bは、本体10の少なくとも二つの面に形成されていればよく、本体10の表側(カバー12側)と裏側(基板11側)に形成される構成であってもよい。また、軸受孔18aと軸受孔18bに嵌合する軸受80と軸受81の内径が同じであるため、ウォーム20は、本体10のいずれかの面に取り付けることが可能となっている。
【0025】
ウォーム20の両端部には、ウォーム軸21が形成されている。ウォーム軸21は、軸受80と軸受81によって回転自在に支持される。また、ウォーム軸21には、ワッシャー22が嵌合されている。ワッシャー22は、摘みシャフト31のカバー12の側面に対する摩擦を和らげる。
【0026】
また、ウォーム軸21の一端部は、六角形状をなしており、摘みシャフト31が嵌合されている。摘みシャフト31の一端部には、摘み30の相対回転を阻止する切欠31aが形成されており、切欠31aに摘み30が取り付けられている。一方、摘み30は、摘みシャフト31を取り付けるための貫通孔32を有している。貫通孔32からネジが挿入され、このネジは、ウォーム20に螺合されている。これにより、摘み30と摘みシャフト31がウォーム20に一体化される。
【0027】
また、カバー12の側面には、カバー12を基板11に位置決めするための突起17が形成されている。突起17は、基板11の突起15cに嵌合させられる。また、カバー12の上面には、カバー12を基板11にネジ等で取り付けるためのカバー取付孔14bが形成されている。ネジは、カバー12のカバー取付孔14bに挿通され、基板11のカバー取付孔14aに螺合される。
【0028】
巻取軸50の一端部には、弧状に縮径した巻取面51が形成されている。巻取面51には、貫通孔52が形成され、そこに弦の端部を挿通して弦を巻き始めるようになっている。巻取軸50の他端部には、取付軸53が形成されている。取付軸53は、大径軸部53aと小径軸部53bとからなる。大径軸部53aは、本体10と巻取軸50との間の回転抵抗を低減するワッシャー58が嵌合されている。また、小径軸部53bは、円柱部54aと六角部54bを有している。円柱部54aは、軸受70によって回転自在に支持され、六角部54bは、ウォームホイール40に嵌合される。六角部54bは、ウォームホイール40に対する巻取軸50の相対回転を阻止している。
【0029】
ウォームホイール40の内周面は、大径孔部40aと小径孔部40bとからなる。大径孔部40aは、ウォームホイール40の内周面の上下端部に円柱状に形成されている。小径孔部40bは、ウォームホイール40の内周面の中央部に六角形状に形成されている。ウォームホイール40の軸方向の片側には、巻取軸50が取り付けられ、もう一つの軸方向の片側には、巻取軸50と一体となって回転するホイール軸41が取り付けられている。ホイール軸41の外径は、巻取軸50の取付軸53の円柱部54aの外径に等しく、ホイール軸41は、軸受71によって回転自在に支持され、巻取軸50の取付軸53の円柱部54aは、軸受70によって回転自在に支持されている。
【0030】
また、ホイール軸41には、軸止めネジ55が挿通され、巻取軸50に螺合される。軸止めネジ55は、ウォームホイール40と巻取軸50とを一体化している。そして、ホイール軸41は、ウォームホイール40の内周面に形成された小径孔部40bの端部に係止されている。これにより、ホイール軸41と一体化された巻取軸50がウォームホイールからの抜け落ちるのを防止している。
【0031】
(第1の実施形態の優位性)
以上のように構成された糸巻装置の優位性について以下に説明する。図6は、巻取軸を本体の表側に取り付けた糸巻装置の断面図であり、図7は、その糸巻装置の部材を分解した斜視図である。本発明の糸巻装置では、図4および図5に示すように、巻取軸50を本体10の裏側(基板11側)に取り付けることが可能であるとともに、図6および図7に示すように、巻取軸56を本体10の表側(カバー12側)に取り付けることも可能である。
【0032】
このような構成の糸巻装置1および2では、次のような効果を奏する。図8は、糸巻装置をギターに取り付ける方法を説明する説明図(A)および(B)である。図8(A)では、巻取軸56を本体10の表側に取り付けた糸巻装置2をギターのヘッド63に取り付けている。この場合には、糸巻装置2の本体10をギターのヘッド63の前面63aにネジなどにより固定する。このため、ギターのヘッド63に巻取軸56を挿通するための孔やガイドブッシュ等が不要であるため、部品点数、製造工数、製造コストを低減することが可能である。
【0033】
また、図8(B)では、巻取軸50を本体10の裏側に取り付けた糸巻装置1をギターのヘッド64に取り付けている。糸巻装置1の本体10は小型かつ薄型であるため、ギターのヘッド64の背面64aに窪み65を設け、本体10を埋め込むことが可能である。さらに、この窪み65に蓋をすれば、美観も良く、突起物がないので演奏もし易くなる。なお、糸巻装置1の本体10が小型かつ薄型であるため、窪み65を設けたとしても、ヘッド64の強度を維持することが可能である。
【0034】
さらに、糸巻装置のその他の取り付け方法としては、糸巻装置の本体10が小型かつ薄型であるため、クラシックギターのようにヘッドの側面に本体10を取り付けることが可能である。特にエレキギターやフォークギターでは、ヘッドの側面のスペースが少ないため効果的である。
【0035】
また、第1の実施形態に係る糸巻装置1および2は、巻取軸と摘みを異なる形状のものに容易に交換することが可能である。このため、1種類の本体で、ギター、ヴァイオリン、ウクレレ、マンドリン、バンジョー、三味線、およびその他の多くの弦楽器に糸巻装置を取り付けることが可能である。以下では、ヴァイオリンのテールピースへの取り付け方法について説明する。
【0036】
図9は、糸巻装置のヴァイオリンへの取り付け方法を説明する説明図(A)および(B)である。図9(A)と図9(B)には、ヴァイオリンのテールピースの前面66aと背面66bが示されている。図9に示す糸巻装置3では、図1〜図5に示す糸巻装置1と比べ、本体10の部分には同じ部材が用いられており、巻取軸と摘みがより小型の巻取軸57と摘み33に交換されている。この巻取軸57は、ヴァイオリンのテールピース66の背面66bから孔67に挿入され、巻取面をテールピース66の前面66aに突出させる。そして、本体10は、テールピース66の背面66bにネジで固定される。このように1種類の本体10で、様々な弦楽器に糸巻装置を取り付けることができるため、製造コストを低減することが可能である。
【0037】
また、図4に示すように、本発明の糸巻装置では、ウォームホイール40の回転軸が、その軸方向の両端に設けられた二つの軸受70,71によって回転自在に支持されている。このため、弦の張力によって、巻取軸50の軸中心がヘッド60に対して傾斜しにくい構成となっている。したがって、一度チューニングした音質が変化しにくいという効果も得ることができる。
【0038】
2.第2の実施形態
以下、第1の実施形態の変形例について説明する。第2の実施形態は、糸巻装置の本体のみでウォームホイールの回転軸の軸受を構成したものである。第1の実施形態と同様の構成要素には、同符号を付して、その説明を省略する。
【0039】
図10は、第2の実施形態に係る糸巻装置の断面図である。糸巻装置4の本体90は、基板91およびカバー92で構成されている。基板91およびカバー92は、鋼板等の金属板をプレス成形して構成されたもので、その中央部には、軸受孔93aおよび軸受孔93bが折り曲げ加工されており、軸受孔93aには、巻取軸50の取付軸53が回転自在に支持されており、軸受孔93bには、ホイール軸41が回転自在に支持されている。
【0040】
軸受孔93aおよび軸受孔93bは、同径の円形状をなしているため、巻取軸50を本体90の裏側(基板91側)にも、表側(カバー92側)にも取り付けることが可能である。巻取軸50を本体90の表側に取り付ける場合には、巻取軸50をカバー92側からウォームホイール40に嵌合させ、ホイール軸41を基板91側からウォームホイール40に挿入する。そして、軸止めネジ55を基板91側から挿入して、巻取軸50の取付軸53に螺合させる。これにより、巻取軸50の本体90への取り付け位置を変更することができる。
【0041】
また、同様の方法により、図3に示す軸受80,81を本体10のカバー12に一体成形してもよい。さらに、図4に示すホイール軸41と軸止めネジ55を一体成形してもよい。このような態様によれば、さらに部品点数、製造工数を低減することが可能である。
【0042】
(第2の実施形態の優位性)
糸巻装置4の本体90が小型または薄型でない場合には、巻取軸50およびホイール軸41を軸支する軸受を本体90に一体成形することで、部品点数、製造工数を低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、エレキギター、アコースティックギター、クラシックギター、エレキベース、ヴァイオリン、ウクレレ、マンドリン、バンジョー、三味線、およびその他の弦楽器に取り付けられる糸巻装置に用いることができる。
【符号の説明】
【0044】
1〜4…糸巻装置、10…本体、11…基板、12…カバー、13a,13b…取付孔、14a,14b…カバー取付孔、15a〜15c…突起、16a,16b…軸受孔、17…突起、18a,18b…軸受孔、20…ウォーム、21…ウォーム軸、22…ワッシャー、30…摘み、31…摘みシャフト、31a…切欠、32…貫通孔、33…摘み、40…ウォームホイール、41…ホイール軸、50…巻取軸、51…巻取面、52…貫通孔、53…取付軸、53a…大径軸部、53b…小径軸部、54a…円柱部、54b…六角部、55…軸止めネジ、56,57…巻取軸、58…ワッシャー、60…ヘッド、61…孔、62…ガイドブッシュ、63,64…ヘッド、65…窪み、66…テールピース、66a…前面、66b…背面、67…孔、70,71…軸受、70a,71a…位置決め部、70b,71b…フランジ、80,81…軸受、80a,81a…取付部、80b,81b…フランジ、90…本体、91…基板、92…カバー、93a,93b…軸受孔。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギターなどの弦楽器の糸巻装置に係り、特に巻取軸を本体に取り付ける位置を変更可能な糸巻装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ギターなどの弦楽器は、弦のチューニングを行うための糸巻装置を備えている。糸巻装置は、図11に示すように、本体110と、この本体110に回転自在に支持されるウォーム120と、ウォーム120の一端部に固定された摘み130と、本体110に回転自在に支持された巻取軸140と、この巻取軸140の端部に接続されるとともにウォーム120に噛み合うウォームホイール150とを備えている。
【0003】
このような糸巻装置100は、巻取軸140を弦楽器のヘッド200に形成された孔200aに貫通させて、巻取軸140の巻取面141を孔200aから突出させるとともに、本体110をビスによって弦楽器のヘッド200の下面に固定することにより、弦楽器のヘッド200に取り付けられる。そして、巻取軸140に弦を巻き、摘み130を回転させて弦を巻き取ったり、巻き解いたりすることによって、チューニングを行うようになっている。ここで、ヘッド200の上面から孔200aにガイドブッシュ160が嵌合され、ガイドブッシュ160の先端の小径部外周に形成されたネジがガイド筒110aの内周に螺合される。これにより、巻取軸140は、本体110とガイドブッシュによって回転自在に支持されるとともに、本体110はヘッド200に固定される。このような構成の糸巻装置100としては、例えば、特許文献1に開示されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−154435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、糸巻装置が取り付けられる弦楽器は様々な種類があり、弦楽器の形状やスペースに応じて、様々な糸巻装置が製造されている。例えば、上述したような糸巻装置100では、そのサイズの制限から、弦楽器のヘッド200の下面に本体110を固定しなければならない。そして、巻取軸140をヘッド200の上面に突出させるために、巻取軸140を本体110の裏側に取り付け、ヘッド200には孔200aを設ける必要がある。また、これに伴って巻取軸を孔200aへガイドするためのガイドブッシュ160やガイド筒110aといった部材が必要になっている。したがって、このような構成の糸巻装置100を取り付けることができる弦楽器の種類は制限されていた。
【0006】
このような背景を鑑み、本発明は、巻取軸を本体に取り付ける位置を変更可能にし、本体を小型化および薄型化して、様々な種類の弦楽器に取り付けることが可能な弦楽器用糸巻装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の弦楽器用糸巻装置は、弦楽器に取り付けられる本体と、前記本体に回転自在に支持され、一端部に摘みを有するウォームと、前記ウォームと噛み合い、前記本体に回転自在に支持されるウォームホイールと、前記ウォームホイールの軸方向の片側に接続されるとともに、前記弦楽器の弦を巻き取る巻取軸とを備え、前記本体の少なくとも二つの面には、前記巻取軸を回転自在に支持するための軸受孔が形成されていることを特徴としている。
【0008】
本発明の弦楽器用糸巻装置では、本体の少なくとも二つの面に巻取軸を回転自在に支持する同形状の軸受孔が形成されているから、いずれかの面に巻取軸を取り付けることが可能である。特に、本体の表側に巻取軸を取り付けた場合には、弦楽器のヘッドの表側に糸巻装置の本体を取り付けることができる。この態様によれば、弦楽器のヘッドに巻取軸を挿通するための孔を設ける必要がない。また、この孔に嵌合させるガイドブッシュやガイド筒も不要となる。このため、部品点数、製造工数、製造コストを低減することが可能である。
【0009】
ここで、巻取軸を本体に回転自在に支持させるための手段としては種々の構成を採用することができる。例えば、本体の少なくとも二つの面に形成される軸受孔に直接巻取軸を支持する構成を採用することができる。また、これらの軸受孔に接続する軸受をさらに備える構成を採用するとより好ましい。糸巻装置の本体を小型化または薄型化した場合には、これらの軸受によって本体の強度を補うことができる。なお、巻取軸は、本体の少なくとも二つの面に設けられた軸受孔または軸受によって回転自在に支持されるため、弦の張力によって、巻取軸の軸中心が弦楽器のヘッドに対して傾斜しにくい構成となっている。
【0010】
また、本発明の弦楽器用糸巻装置では、前記ウォームホイールの軸方向の片側に、前記巻取軸と一体となって回転するホイール軸をさらに備えることを特徴としている。この態様によれば、ウォームホイールの回転軸は、その軸方向の両側に接続されている巻取軸とホイール軸の二つの部材で構成されているため、ウォームホイールへ巻取軸を容易に着脱することができる。したがって、巻取軸の本体への取り付け位置を容易に変更することができる。また、ホイール軸は、ウォームホイールの内周面に形成された小径孔部の端部に係止されていることを特徴としている。この態様によれば、巻取軸がホイール軸と一体化されているため、巻取軸がウォームホイールから抜け落ちるのを防止することができる。
【0011】
さらに、本発明の弦楽器用糸巻装置では、本体の少なくとも二つの面には、前記ウォームを回転自在に支持するための軸受孔が形成されていることを特徴としている。本体の少なくとも二つの面にウォームを回転自在に支持する軸受孔が形成されているから、いずれかの面にウォームを取り付けることが可能である。したがって、弦楽器の形状やスペースに応じて、ウォームを本体に取り付ける位置を変更することができる。
【0012】
なお、上述した巻取軸の場合と同様に、ウォームを本体に回転自在に支持させるための手段としては種々の構成を採用することができる。軸受孔に直接ウォームを支持する構成を採用してもよいし、これらの軸受孔に接続する軸受をさらに備える構成を採用するとより好ましい。糸巻装置の本体を小型化または薄型化した場合には、これらの軸受によって本体の強度を補うことができる。
【0013】
また、本発明の弦楽器用糸巻装置では、弦楽器への取り付け方法として様々な構成を採用することができる。例えば、上述したように、本体の表側に巻取軸を取り付けた場合には、弦楽器のヘッドの表側に本体を取り付ける構成を採用することができる。この態様によれば、弦楽器のヘッドに巻取軸を挿通するための孔を設ける必要がない。また、この孔に嵌合させるガイドブッシュやガイド筒も不要となる。このため、部品点数、製造工数、製造コストを低減することが可能である。
【0014】
また、本体の裏側に巻取軸を取り付けた場合には、弦楽器のヘッドの裏側に窪みを形成し、この窪みに本体を取り付ける構成を採用することができる。この態様によれば、弦楽器のヘッドの裏側に突起物がなくなるため、演奏がし易くなる。また、この窪みを樹脂等によって蓋をすれば、美観のよい弦楽器を提供することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、巻取軸を本体に取り付ける位置を変更可能にし、本体を小型化および薄型化して、様々な種類の弦楽器に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施形態に係る糸巻装置の上面図である。
【図2】第1の実施形態に係る糸巻装置の側面図である。
【図3】第1の実施形態に係る糸巻装置のA−A線断面図である。
【図4】第1の実施形態に係る糸巻装置のB−B線断面図である。
【図5】第1の実施形態に係る糸巻装置の部材を分解した斜視図である。
【図6】巻取軸を本体の表側に取り付けた糸巻装置の断面図である。
【図7】巻取軸を本体の表側に取り付けた糸巻装置の部材を分解した斜視図である。
【図8】糸巻装置をギターに取り付ける方法を説明する説明図(A)および(B)である。
【図9】糸巻装置をヴァイオリンに取り付ける方法を説明する説明図(A)および(B)である。
【図10】第2の実施形態に係る糸巻装置の断面図である。
【図11】従来の糸巻装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.第1の実施形態
第1の実施形態に係る糸巻装置について、図1〜図5を参照して説明する。図1および図2は、糸巻装置の上面図と側面図である。また、図3および図4は、糸巻装置のA−A線断面図とB−B線断面図である。図5は、糸巻装置の部材を分解した斜視図である。
【0018】
まず、糸巻装置1の構成の概略について説明する。図中符号10は、糸巻装置1の本体である。本体10には、ウォーム20が回転自在に支持されている。ウォーム20には、それを回転させるための摘み30が取り付けられている。また、ウォーム20には、ウォームホイール40が噛み合わされている。ウォームホイール40には、巻取軸50が嵌合されている。
【0019】
次に、糸巻装置1の各部について詳細に説明する。本体10は、基板11およびカバー12で構成されている。基板11は、SUS304等の金属板をプレス成形したもので、例えば、長さL1が21.2mm、幅W1が8.4mmである。基板11の両端部には、基板11を弦楽器のヘッド(図示省略)にネジ等で取り付けるための取付孔13a、13bが形成されている。取付孔13bの内側には、カバー12を基板11に取り付けるためのカバー取付孔14aが形成されている。また、基板11には、カバー12の取り付け位置を位置決めする突起15a〜15cが形成されている。
【0020】
さらに、基板11の中央部には、巻取軸50を回転自在に支持するための軸受孔16aが形成されている。軸受孔16aは、巻取軸50を回転自在に支持する軸受70を嵌合する。軸受孔16aは、六角形状をなしており、基板11に対する軸受70の相対回転を阻止している。軸受70は、黄銅等の金属で形成されており、位置決め部70aとフランジ70bからなる。位置決め部70aは、六角形状をなしており、基板11の軸受孔16aに嵌合する。フランジ70bは、基板11に対する軸受70の抜け止めの役割と、ウォームホイール40を回転自在に支持する役割を担っている。
【0021】
カバー12は、略十字状をなすSUS304等の金属板を折り曲げ加工したもので、例えば、長さL2が11.5mm、幅W2が7.2mmである。カバー12の中央部には、ホイール軸41を回転自在に支持するための軸受孔16bが形成されている。軸受孔16bは、ホイール軸41を回転自在に支持する軸受71を嵌合する。軸受孔16bは、六角形状をなしており、カバー12に対する軸受71の相対回転を阻止している。軸受71は、黄銅等の金属で形成されており、位置決め部71aとフランジ71bからなる。位置決め部71aは、六角形状をなしており、カバー12の軸受孔16bに嵌合する。フランジ71bは、カバー12に対する軸受71の抜け止めの役割と、ウォームホイール40を回転自在に支持する役割を担っている。
【0022】
なお、軸受孔16aと軸受孔16bは、本体10の少なくとも二つの面に形成されていればよく、本体10の側面に形成される構成であってもよい。また、軸受孔16aと軸受孔16bに嵌合する軸受70と軸受71の内径が同じであるため、巻取軸50は、本体10のいずれかの面に取り付けることが可能となっている。
【0023】
また、カバー12の少なくとも二つの側面には、ウォーム20を回転自在に支持するための軸受孔18a,18bが形成されている。軸受孔18a,18bは、U字状に形成されており、ウォーム20を回転自在に支持する軸受80,81を嵌合する。軸受80と軸受81は、円筒状の取付部80a,81aと非円筒状(直方体状)のフランジ80b,81bとから構成されている。円筒状の取付部80a,81aは、カバー12の軸受孔18a,18bに嵌合する。直方体状のフランジ80b,81bは、カバー12の内壁に係止されている。これにより、カバー12に対する軸受80,81の相対回転を阻止している。
【0024】
なお、軸受孔18aと軸受孔18bは、本体10の少なくとも二つの面に形成されていればよく、本体10の表側(カバー12側)と裏側(基板11側)に形成される構成であってもよい。また、軸受孔18aと軸受孔18bに嵌合する軸受80と軸受81の内径が同じであるため、ウォーム20は、本体10のいずれかの面に取り付けることが可能となっている。
【0025】
ウォーム20の両端部には、ウォーム軸21が形成されている。ウォーム軸21は、軸受80と軸受81によって回転自在に支持される。また、ウォーム軸21には、ワッシャー22が嵌合されている。ワッシャー22は、摘みシャフト31のカバー12の側面に対する摩擦を和らげる。
【0026】
また、ウォーム軸21の一端部は、六角形状をなしており、摘みシャフト31が嵌合されている。摘みシャフト31の一端部には、摘み30の相対回転を阻止する切欠31aが形成されており、切欠31aに摘み30が取り付けられている。一方、摘み30は、摘みシャフト31を取り付けるための貫通孔32を有している。貫通孔32からネジが挿入され、このネジは、ウォーム20に螺合されている。これにより、摘み30と摘みシャフト31がウォーム20に一体化される。
【0027】
また、カバー12の側面には、カバー12を基板11に位置決めするための突起17が形成されている。突起17は、基板11の突起15cに嵌合させられる。また、カバー12の上面には、カバー12を基板11にネジ等で取り付けるためのカバー取付孔14bが形成されている。ネジは、カバー12のカバー取付孔14bに挿通され、基板11のカバー取付孔14aに螺合される。
【0028】
巻取軸50の一端部には、弧状に縮径した巻取面51が形成されている。巻取面51には、貫通孔52が形成され、そこに弦の端部を挿通して弦を巻き始めるようになっている。巻取軸50の他端部には、取付軸53が形成されている。取付軸53は、大径軸部53aと小径軸部53bとからなる。大径軸部53aは、本体10と巻取軸50との間の回転抵抗を低減するワッシャー58が嵌合されている。また、小径軸部53bは、円柱部54aと六角部54bを有している。円柱部54aは、軸受70によって回転自在に支持され、六角部54bは、ウォームホイール40に嵌合される。六角部54bは、ウォームホイール40に対する巻取軸50の相対回転を阻止している。
【0029】
ウォームホイール40の内周面は、大径孔部40aと小径孔部40bとからなる。大径孔部40aは、ウォームホイール40の内周面の上下端部に円柱状に形成されている。小径孔部40bは、ウォームホイール40の内周面の中央部に六角形状に形成されている。ウォームホイール40の軸方向の片側には、巻取軸50が取り付けられ、もう一つの軸方向の片側には、巻取軸50と一体となって回転するホイール軸41が取り付けられている。ホイール軸41の外径は、巻取軸50の取付軸53の円柱部54aの外径に等しく、ホイール軸41は、軸受71によって回転自在に支持され、巻取軸50の取付軸53の円柱部54aは、軸受70によって回転自在に支持されている。
【0030】
また、ホイール軸41には、軸止めネジ55が挿通され、巻取軸50に螺合される。軸止めネジ55は、ウォームホイール40と巻取軸50とを一体化している。そして、ホイール軸41は、ウォームホイール40の内周面に形成された小径孔部40bの端部に係止されている。これにより、ホイール軸41と一体化された巻取軸50がウォームホイールからの抜け落ちるのを防止している。
【0031】
(第1の実施形態の優位性)
以上のように構成された糸巻装置の優位性について以下に説明する。図6は、巻取軸を本体の表側に取り付けた糸巻装置の断面図であり、図7は、その糸巻装置の部材を分解した斜視図である。本発明の糸巻装置では、図4および図5に示すように、巻取軸50を本体10の裏側(基板11側)に取り付けることが可能であるとともに、図6および図7に示すように、巻取軸56を本体10の表側(カバー12側)に取り付けることも可能である。
【0032】
このような構成の糸巻装置1および2では、次のような効果を奏する。図8は、糸巻装置をギターに取り付ける方法を説明する説明図(A)および(B)である。図8(A)では、巻取軸56を本体10の表側に取り付けた糸巻装置2をギターのヘッド63に取り付けている。この場合には、糸巻装置2の本体10をギターのヘッド63の前面63aにネジなどにより固定する。このため、ギターのヘッド63に巻取軸56を挿通するための孔やガイドブッシュ等が不要であるため、部品点数、製造工数、製造コストを低減することが可能である。
【0033】
また、図8(B)では、巻取軸50を本体10の裏側に取り付けた糸巻装置1をギターのヘッド64に取り付けている。糸巻装置1の本体10は小型かつ薄型であるため、ギターのヘッド64の背面64aに窪み65を設け、本体10を埋め込むことが可能である。さらに、この窪み65に蓋をすれば、美観も良く、突起物がないので演奏もし易くなる。なお、糸巻装置1の本体10が小型かつ薄型であるため、窪み65を設けたとしても、ヘッド64の強度を維持することが可能である。
【0034】
さらに、糸巻装置のその他の取り付け方法としては、糸巻装置の本体10が小型かつ薄型であるため、クラシックギターのようにヘッドの側面に本体10を取り付けることが可能である。特にエレキギターやフォークギターでは、ヘッドの側面のスペースが少ないため効果的である。
【0035】
また、第1の実施形態に係る糸巻装置1および2は、巻取軸と摘みを異なる形状のものに容易に交換することが可能である。このため、1種類の本体で、ギター、ヴァイオリン、ウクレレ、マンドリン、バンジョー、三味線、およびその他の多くの弦楽器に糸巻装置を取り付けることが可能である。以下では、ヴァイオリンのテールピースへの取り付け方法について説明する。
【0036】
図9は、糸巻装置のヴァイオリンへの取り付け方法を説明する説明図(A)および(B)である。図9(A)と図9(B)には、ヴァイオリンのテールピースの前面66aと背面66bが示されている。図9に示す糸巻装置3では、図1〜図5に示す糸巻装置1と比べ、本体10の部分には同じ部材が用いられており、巻取軸と摘みがより小型の巻取軸57と摘み33に交換されている。この巻取軸57は、ヴァイオリンのテールピース66の背面66bから孔67に挿入され、巻取面をテールピース66の前面66aに突出させる。そして、本体10は、テールピース66の背面66bにネジで固定される。このように1種類の本体10で、様々な弦楽器に糸巻装置を取り付けることができるため、製造コストを低減することが可能である。
【0037】
また、図4に示すように、本発明の糸巻装置では、ウォームホイール40の回転軸が、その軸方向の両端に設けられた二つの軸受70,71によって回転自在に支持されている。このため、弦の張力によって、巻取軸50の軸中心がヘッド60に対して傾斜しにくい構成となっている。したがって、一度チューニングした音質が変化しにくいという効果も得ることができる。
【0038】
2.第2の実施形態
以下、第1の実施形態の変形例について説明する。第2の実施形態は、糸巻装置の本体のみでウォームホイールの回転軸の軸受を構成したものである。第1の実施形態と同様の構成要素には、同符号を付して、その説明を省略する。
【0039】
図10は、第2の実施形態に係る糸巻装置の断面図である。糸巻装置4の本体90は、基板91およびカバー92で構成されている。基板91およびカバー92は、鋼板等の金属板をプレス成形して構成されたもので、その中央部には、軸受孔93aおよび軸受孔93bが折り曲げ加工されており、軸受孔93aには、巻取軸50の取付軸53が回転自在に支持されており、軸受孔93bには、ホイール軸41が回転自在に支持されている。
【0040】
軸受孔93aおよび軸受孔93bは、同径の円形状をなしているため、巻取軸50を本体90の裏側(基板91側)にも、表側(カバー92側)にも取り付けることが可能である。巻取軸50を本体90の表側に取り付ける場合には、巻取軸50をカバー92側からウォームホイール40に嵌合させ、ホイール軸41を基板91側からウォームホイール40に挿入する。そして、軸止めネジ55を基板91側から挿入して、巻取軸50の取付軸53に螺合させる。これにより、巻取軸50の本体90への取り付け位置を変更することができる。
【0041】
また、同様の方法により、図3に示す軸受80,81を本体10のカバー12に一体成形してもよい。さらに、図4に示すホイール軸41と軸止めネジ55を一体成形してもよい。このような態様によれば、さらに部品点数、製造工数を低減することが可能である。
【0042】
(第2の実施形態の優位性)
糸巻装置4の本体90が小型または薄型でない場合には、巻取軸50およびホイール軸41を軸支する軸受を本体90に一体成形することで、部品点数、製造工数を低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、エレキギター、アコースティックギター、クラシックギター、エレキベース、ヴァイオリン、ウクレレ、マンドリン、バンジョー、三味線、およびその他の弦楽器に取り付けられる糸巻装置に用いることができる。
【符号の説明】
【0044】
1〜4…糸巻装置、10…本体、11…基板、12…カバー、13a,13b…取付孔、14a,14b…カバー取付孔、15a〜15c…突起、16a,16b…軸受孔、17…突起、18a,18b…軸受孔、20…ウォーム、21…ウォーム軸、22…ワッシャー、30…摘み、31…摘みシャフト、31a…切欠、32…貫通孔、33…摘み、40…ウォームホイール、41…ホイール軸、50…巻取軸、51…巻取面、52…貫通孔、53…取付軸、53a…大径軸部、53b…小径軸部、54a…円柱部、54b…六角部、55…軸止めネジ、56,57…巻取軸、58…ワッシャー、60…ヘッド、61…孔、62…ガイドブッシュ、63,64…ヘッド、65…窪み、66…テールピース、66a…前面、66b…背面、67…孔、70,71…軸受、70a,71a…位置決め部、70b,71b…フランジ、80,81…軸受、80a,81a…取付部、80b,81b…フランジ、90…本体、91…基板、92…カバー、93a,93b…軸受孔。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弦楽器に取り付けられる本体と、
前記本体に回転自在に支持され、一端部に摘みを有するウォームと、
前記ウォームと噛み合い、前記本体に回転自在に支持されるウォームホイールと、
前記ウォームホイールの軸方向の片側に接続されるとともに、前記弦楽器の弦を巻き取る巻取軸とを備え、
前記本体の少なくとも二つの面には、前記巻取軸を回転自在に支持するための軸受孔が形成されていることを特徴とする弦楽器用糸巻装置。
【請求項2】
前記本体の少なくとも二つの面に形成された軸受孔に接続する軸受をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の弦楽器用糸巻装置。
【請求項3】
前記ウォームホイールの軸方向の片側に、前記巻取軸と一体となって回転するホイール軸をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の弦楽器用糸巻装置。
【請求項4】
前記ホイール軸は、前記ウォームホイールの内周面に形成された小径孔部の端部に係止されていることを特徴とする請求項3に記載の弦楽器用糸巻装置。
【請求項5】
前記本体の少なくとも二つの面には、前記ウォームを回転自在に支持するための軸受孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の弦楽器用糸巻装置。
【請求項6】
前記本体の少なくとも二つの面に形成された軸受孔に接続する軸受をさらに備えることを特徴とする請求項5に記載の弦楽器用糸巻装置。
【請求項7】
前記巻取軸は、前記本体の表側に取り付けられており、前記本体は、前記弦楽器のヘッドの表側に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の弦楽器用糸巻装置。
【請求項8】
前記巻取軸は、前記本体の裏側に取り付けられており、前記本体は、前記弦楽器のヘッドの裏側に形成された窪みに取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の弦楽器用糸巻装置。
【請求項1】
弦楽器に取り付けられる本体と、
前記本体に回転自在に支持され、一端部に摘みを有するウォームと、
前記ウォームと噛み合い、前記本体に回転自在に支持されるウォームホイールと、
前記ウォームホイールの軸方向の片側に接続されるとともに、前記弦楽器の弦を巻き取る巻取軸とを備え、
前記本体の少なくとも二つの面には、前記巻取軸を回転自在に支持するための軸受孔が形成されていることを特徴とする弦楽器用糸巻装置。
【請求項2】
前記本体の少なくとも二つの面に形成された軸受孔に接続する軸受をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の弦楽器用糸巻装置。
【請求項3】
前記ウォームホイールの軸方向の片側に、前記巻取軸と一体となって回転するホイール軸をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の弦楽器用糸巻装置。
【請求項4】
前記ホイール軸は、前記ウォームホイールの内周面に形成された小径孔部の端部に係止されていることを特徴とする請求項3に記載の弦楽器用糸巻装置。
【請求項5】
前記本体の少なくとも二つの面には、前記ウォームを回転自在に支持するための軸受孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の弦楽器用糸巻装置。
【請求項6】
前記本体の少なくとも二つの面に形成された軸受孔に接続する軸受をさらに備えることを特徴とする請求項5に記載の弦楽器用糸巻装置。
【請求項7】
前記巻取軸は、前記本体の表側に取り付けられており、前記本体は、前記弦楽器のヘッドの表側に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の弦楽器用糸巻装置。
【請求項8】
前記巻取軸は、前記本体の裏側に取り付けられており、前記本体は、前記弦楽器のヘッドの裏側に形成された窪みに取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の弦楽器用糸巻装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−231124(P2010−231124A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−80995(P2009−80995)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(592201092)後藤ガット有限会社 (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(592201092)後藤ガット有限会社 (4)
【Fターム(参考)】
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