張力制御装置、テーピング装置およびステータコイルの製造方法
【課題】テープ張力を調整するための追従性を向上し、テープ張力を一定にすることのできる張力制御装置を提供する。
【解決手段】この張力制御装置は、テープが巻装される被対象物が同心的に挿入される中空の回転リングと、前記回転リングを回転させて、前記テープを前記被対象物に巻回させる回転部と、前記回転リングに回転可能に設けられ、前記テープを保持するテープリールと、前記テープリールから前記被対象物までのテープ搬送経路長を変化させる定張力ばねを有し、前記搬送されるテープの張力に対応して、このテープ搬送経路長を変化させて、このテープの張力を一定に調整する張力調整部と、を具備する。
【解決手段】この張力制御装置は、テープが巻装される被対象物が同心的に挿入される中空の回転リングと、前記回転リングを回転させて、前記テープを前記被対象物に巻回させる回転部と、前記回転リングに回転可能に設けられ、前記テープを保持するテープリールと、前記テープリールから前記被対象物までのテープ搬送経路長を変化させる定張力ばねを有し、前記搬送されるテープの張力に対応して、このテープ搬送経路長を変化させて、このテープの張力を一定に調整する張力調整部と、を具備する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁テープの張力を調整し、例えば発電機のステータコイルに絶縁テープを自動的に巻装する張力制御装置、テーピング装置およびステータコイルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ステータコイルには、大電流が流れるため、長期間の運転で熱、電気、機械および環境的なストレスを受け、劣化が生じる。この劣化の主要因は、運転中にステータコイルに発生するコロナ放電現象がある。そこで、この対策としてステータコイル周囲を複数の絶縁テープで巻装し、その際に生じた空隙を、レジンで含浸処理してコロナ放電現象を防止している。ところで、このステータコイルの絶縁作業においては、空隙を含浸処理するレジンより、マイカテープの方が耐熱性、耐コロナ性に優れているためコロナ放電現象を防止する効果が大きい
そこで、ステータコイルに一定張力で絶縁テープをテーピングすることにより空隙を減少し絶縁性能を向上するテーピング装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
また近年、発電機の製造は増加傾向にあり、テーピング作業を高速で実現することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−306508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、発電機のステータコイルは、鉄心のスロットと呼ばれる矩形断面の溝に挿入されるため、コイル形状が矩形断面であり、このステータコイルに絶縁テープを高速でテーピングすると、この絶縁テープを巻きつける周速度がステータコイルの角部によって急激に変動するため絶縁テープの張力が変動してしまう。上記した先行技術では、この張力変動によりテーピング中に撓みが生じてコイルとの間に空隙が発生してしまい、発電機の絶縁性能が低下するという問題があった。
また、磁気式ブレーキ機構を有するテーピング装置では、急激な張力変動に対しては制御周期が遅いため張力調整することが困難であった。一方、摩擦式ブレーキ機構を有するテーピング装置では、度々発生する張力変動に対し、テープ張力を調整するための追従性が悪いという問題があった。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、度々発生する張力変動に対し、テープ張力を調整するための追従性を向上し、テープ張力を一定にすることのできる張力制御装置、テーピング装置およびステータコイルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために本発明の張力制御装置は、テープが巻装される被対象物が同心的に挿入される中空の回転リングと、前記回転リングを回転させて、前記テープを前記被対象物に巻回させる回転部と、前記回転リングに回転可能に設けられ、前記テープを保持するテープリールと、前記テープリールから前記被対象物までのテープ搬送経路長を変化させる定張力ばねを有し、前記搬送されるテープの張力に対応して、このテープ搬送経路長を変化させて、このテープの張力を一定に調整する張力調整部と、を具備することを特徴とする。
【0007】
また、本発明のテーピング装置は、上記記載の張力制御装置と、前記回転リングの回転可能及び移動可能に支持する支持部と、を具備することを特徴とする。
【0008】
また、本発明のステータコイルの製造方法は、中空の回転リングにテープが巻装される被対象物を同心的に挿入するステップと、前記回転リングを回転させて、搬送される前記テープに張力を加えながら、このテープを前記被対象物に巻回させてステータコイルを製造するステップと、前記搬送されるテープの張力に対応して、前記テープを保持するテープリールから前記被対象物までのテープ搬送経路長を変化させて、このテープの張力を一定に調整するステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、テープ張力を調整するための追従性を向上し、テープ張力を一定にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態のテーピング装置の概略構成を示す概略斜視図である。
【図2】図1のテーピング装置に適用するテーピングヘッドを示す概略拡大図である。
【図3】断面が矩形形状の構造物にテーピングを施した場合の張力変化の一例を示す図である。
【図4】断面が矩形形状の構造物にテーピングを施した場合のテープ張力の基点の転移の状態(a)〜(d)を示す図である。
【図5】図4の状態におけるテープ周速度の変化を示す図である。
【図6】絶縁テープに緩みが発生した場合のテープ張力の関係を示す図で、(a)は張力変動が小さい場合、(b)は張力変動が大きい場合を示す図である。
【図7】実施形態2に係る張力制御装置の要部を拡大した部分拡大図である。
【図8】実施形態2に係る張力調整機構部の構成を示す図で、(a)は断面図、(b)はテープリールの上面図である。
【図9】実施形態3に係るダンパー機構部を示す拡大図である。
【図10】実施形態3に係る張力調整機構部の構成を示す図で、(a)は断面図、(b)はテープリールの上面図である。
【図11】ガイドローラ34aの構成を示す図で、(a)は上面図、(b)は(a)のA−A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態1)
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の一実施形態のテーピング装置の概略構成を示す概略斜視図である。
図1に示すように、このテーピング装置1は、支持クランプ11,12、テーピングヘッド14、移動装置15、制御装置17、入力装置18、ベースプレート19などを備える。
【0012】
支持クランプ11は、ベースプレート19上に載置され、断面が矩形形状のステータコイル10の直線部を支持する。支持クランプ12は、ベースプレート19の長手方向の両端部に載置され、ステータコイル10のエンド部を支持する。
テーピングヘッド14は、ステータコイル10に絶縁テープ13を巻き付ける機能を有する。
【0013】
移動装置15は、テーピングヘッド14を駆動して自在に移動させる。すなわち、移動装置15は、レール20,22、移動板21、テーブル23、コラム24、駆動機構部25を備える。
【0014】
移動板21は、ベースプレート19に敷設されたレール20上を図中X方向に移動する。テーブル23は、この移動板21に敷設されたレール22上を図中Y方向に移動する。コラム24は、このテーブル23上に載置され、テーピングヘッド14を図中Z軸方向に昇降させる。駆動機構部25は、図示しないモータなどを駆動する機能を有し、テーピングヘッド14を、コラム24のX軸を中心にして回転させるとともに、コラム24のY軸を中心にして回転させる。移動装置15は、これらの移動機能を組み合わせることで、テーピングヘッド14を自在に移動させることができる。
【0015】
また、支持クランプ11は、シリンダ内に収容された支持軸と、支持軸に設けた把持部(ともに図示せず)を備え、テーピングヘッド14が近付くと、把持部が開口し、支持軸が下降し、テーピングヘッド14に衝突しないようにしている。
【0016】
制御装置17は、移動装置15の動きを遠隔的に制御するアンテナ16を有する。また、制御装置17は、入力装置18から予め入力したデータ情報に基づいた制御情報を、支持クランプ11、テーピングヘッド14、駆動機構部25などに与えて駆動させ、その動作を制御している。
【0017】
入力装置18は、絶縁テープ13の張力やテーピングヘッド14の動きの軌跡などを予め入力する。
【0018】
図2は、図1のテーピング装置1に適用するテーピングヘッド14を示す概略構成図である。なお、本実施形態では、2本の絶縁テープ13a,13bによってテーピングを施す場合について説明する(以下の実施形態も同様)。
テーピングヘッド14は、筒状のフレーム29、中空の円筒形状に形成され、フレーム29に回転可能に支持される回転リング30を備える。ステータコイル10は、回転リング30に同心的に挿入される。
【0019】
回転リング30の外周部には、リングギア31が配置される。また、フレーム29には、回転駆動モータ26が設けられ、この回転駆動モータ26の回転軸には、歯車27が取り付けられている。このリングギア31と歯車27とは、互いに噛み合い、回転駆動モータ26の駆動に伴い、回転リング30をフレームの周方向に沿って回転駆動させる。
【0020】
また、回転リング30には、テープリール32a,32b、ガイドローラ33a,34a,33b,34b、ガイドローラ35a〜37aを有するダンパー機構部38a、ガイドローラ35b〜37bを有するダンパー機構部38b、油圧シリンダ40a,40bがそれぞれ設けられる。
【0021】
テープリール32a(32b)は、巻装した絶縁テープ13a(13b)を収容する。
テープリール32a(32b)、ガイドローラ33a〜37a(33b〜37b)は、絶縁テープ13a(13b)をガイドしてステータコイル10に搬送するテープ搬送経路をそれぞれ構成する。
【0022】
このテーピング装置1では、回転駆動モータ26を駆動させることにより、リングギア31と噛み合った歯車27が回転することで回転リング30を回転し、絶縁テープ13a(13b)に張力を加えながら、ステータコイル10にテーピングを施す。なお、テープリール32a,32b、ガイドローラ33a〜34a,33b〜34b、ダンパー機構部38a,38b、油圧シリンダ40a,40bは、本実施形態の張力制御装置2を構成する。
【0023】
ここで、断面が矩形形状の構造物(ステータコイル10)にテーピングを施した場合の張力変化について図3を用いて説明する。なお、図3では、テープ張力の最小値から2つ目の最小値までが構造物へのテーピングの1周分を表している。また、図3中の一点鎖線は、予め所定値に設定された設定張力を表している。
この構造物にテーピングを施す場合、図3に示すように、テープの張力変化は、周期的に発生する。このことから、張力の変化とテーピングの被対象物(構造物)の形状には相関関係があることが分かる。
【0024】
図4は、断面が矩形形状の構造物(ステータコイル10)にテーピングを施した場合のテープ張力の基点の転移の状態(a)〜(d)を示す図である。図5は、図4の状態におけるテープ周速度の変化を示す図である。
【0025】
テープ張力の基点の転移は、図4に示す状態(a)〜(d)の順に転移し、断面が矩形形状のステータコイル10においては、4つの角部が基点となり張力が加わる。このため図5に示すように、テープ周速度は、4つのサイン波を組み合せた変化を示し、サイン波同士が干渉する部分で転移が発生する。このテープ周速度は、ステータコイル10の矩形形状の幅、長さ、周長によって変化し、テープ張力も変化する。
【0026】
また、図2の構造物にテーピングを施した場合の張力変化において、発生する周期的なテープ周速度の変化のうち、図5中のA部のテープ周速度が急激に下降する部分では、絶縁テープに緩みが発生している。
【0027】
次に、絶縁テープに緩みが発生した場合のテープ張力の関係について説明する。
図6は、絶縁テープに緩みが発生した場合のテープ張力の関係を示す図で、(a)は張力変動が小さい場合、(b)は張力変動が大きい場合を示す図である。この図6では、絶縁テープに一定張力を与えた状態で絶縁テープが緩んだ場合、絶縁テープの緩みが小さい場合と、絶縁テープの緩みが大きい場合との張力変化を比較する。
【0028】
この図6での比較結果から鑑みると、絶縁テープの緩みが大きい程、テープ張力の上昇が激しくなる。つまり、絶縁テープの緩みをできるだけ小さくする、究極的には絶縁テープの緩みを発生させないことが高速で構造物にテーピングを施すために必要な条件となる。
【0029】
そこで、本実施形態のテーピング装置1では、ガイドレール上にガイドローラ36a(36b)を設置し、このガイドローラ36a(36b)を定張力ばねで一定張力で引張り、常時絶縁テープの緩みを防止するダンパー機構部38a(38b)を用いるものとする。なお、テープリール32aと32b、ガイドローラ33a〜34aと33b〜34b、ダンパー機構部38aと38b、油圧シリンダ40aと40bは、それぞれ同一構成からなるので、以下では代表してテープリール32a、ガイドローラ33a〜34a、ダンパー機構部38a、油圧シリンダ40aについて詳細に説明する。
【0030】
図7は、図2に示した張力制御装置2の要部を拡大した部分拡大図である。
絶縁テープ13aの半径rが小さくなると、テープリール32aから一定速度で絶縁テープ13aが引き出され、テープリール32aの回転速度を大きくする必要があり、これに伴い絶縁テープ13aに加わる張力が上昇する。すなわち、この絶縁テープ13aの半径rと張力とは、反比例関係にある。
【0031】
そこで、絶縁テープ13aの引き出しに対しブレーキ力を調整する機構として、本実施形態の油圧シリンダ40aが必要となる。
油圧シリンダ40aは、内部に圧縮ばね41aを設置し、ピストン42aを付勢する。さらに、油圧シリンダ40aは、ピストンロッド43aの先端に回転自在なガイドローラ44aを備え、このガイドローラ44aを圧縮ばね41aの付勢力によって絶縁テープ13aに押し当てることで、テープリール32aにブレーキをかける。
【0032】
絶縁テープ13aの半径rは、テーピングすることにより減少する。この結果、ピストンロッド43aは絶縁テープ13a側に伸長し、圧縮ばね41aの付勢力は減少するので、テープリール32aへのブレーキ力も減少する。この結果、絶縁テープ13aを一定張力で引き出すことが可能となる。なお、このとき油圧シリンダ40a内の油液は、ピストンロッド43a側から圧縮ばね41a側に移動する。
【0033】
また、テーピングを行うための上述したテープ搬送経路が長ければ長いほど、絶縁テープ13aはゴム状に伸縮し、ガイドローラから絶縁テープ13aが浮き上がってしまい、絶縁テープ13aがガイドローラ上を滑る可能性がある。
【0034】
そこで、ガイドローラ34aへの絶縁テープ13aの接触面積を大きくとるように、このガイドローラ34aによる絶縁テープ13aの出入り口部に、小径のガイドローラ33a,35aを配置する。この絶縁テープ13aは、たとえばガイドローラ34aの円周の半分以上に接触することが好ましい。
【0035】
また、このガイドローラ34aのローラ部材質を摩擦力の高い材料、たとえばシリコーンゴムやウレタンゴムなどで構成し、絶縁テープ13aとガイドローラ34aとの滑りを防止することにより、絶縁テープ13aの張力を安定させることが可能となる。さらに、ガイドローラ33a,35a〜37aも摩擦力の高い材料で構成することが好ましい。
【0036】
ダンパー機構部38aは、ガイドローラ35a〜37a、ガイドレール39a、スライダ46a、ストッパ47a1,47a2、定張力ばね48aを備える。
【0037】
ガイドローラ35a,37aは、回転リング30に回転可能に配設される。
ガイドローラ36aは、スライダ46aに回転可能に配設されてガイドレール39aの長手方向に移動可能なものである。すなわち、このガイドローラ36aは、図7中、ガイドローラ35a,37a間の鉛直方向を上下に移動して、ガイドローラ35a,37aから隔たったり、またはガイドローラ35a,37aに接近する。
ガイドレール39aは、回転リング30に配設される。
【0038】
スライダ46aは、略L字形状からなり、ガイドレール39a上に載置され、このガイドレール39aの長手方向に摺動する。このスライダ46aの摺動に伴い、ガイドローラ36aも移動し、テープ搬送経路長の調整が可能となる。
【0039】
ストッパ47a1,47a2は、ガイドレール39aの長手方向の両端部にそれぞれ設けられ、スライダ46aの摺動を抑制する。たとえば絶縁テープ13aの張力がダンパー機構部38aでの許容範囲外となった場合、このストッパ47a1,47b1によって、スライダ46aがガイドレール39aの端部から脱線するのを防ぐことができる。
【0040】
定張力ばね48aは、一定の力で引いたり戻したりできるバネで、たとえば形状記憶合金で構成される。この定張力ばね48aは、ダンパー機構部38aに2つ配設される。この定張力ばね48aは、一端が回転リング30に、他端がスライダ46aに接続される。この定張力ばね48aは、予め設定された所定荷重までは張力を得て、スライダ46aを摺動させる。また、定張力ばね48aは、この所定荷重以上の張力が加わった場合には、所定張力以上の張力を絶縁テープ13aに与えない特性を持つ。この結果、定張力ばね48aは、弾性エネルギーを貯えずに、絶縁テープ13aの緩みに追従して、この緩みだけを打ち消すことができる。
【0041】
本実施形態では、回転リング30にステータコイル10を同心的に挿入し、この回転リング30を回転させ、絶縁テープ13a,13bに張力を加えながら、絶縁テープ13a,13bをステータコイル10に巻回させる。
【0042】
この時、搬送される絶縁テープ13a,13bの張力に対応して、絶縁テープ13a,13bを保持するテープリール32a,32bからステータコイル10までのテープ搬送経路長を変化させて、この絶縁テープ13a,13bの張力を一定に調整して、ステータコイル10を製造することができる。
【0043】
このように、本実施形態では、度々発生する張力変動に対し、絶縁テープの緩みを打ち消すダンパー機構部を設けるので、テープ張力を調整するための追従性を向上できる。この結果、本実施形態では、テープ張力を一定にすることができる。
【0044】
本実施形態では、ダンパー機構部によってテープ張力を一定にすることができるが、より好ましくは、圧縮ばね41aを用いて絶縁テープの引き出しに対するブレーキ力を調整することで、絶縁テープを一定張力で引き出すことも可能となる。
さらに好ましくは、ガイドローラ34aへの絶縁テープの接触面積を大きくするとともに、ガイドローラ34aのローラ部材質を摩擦力の高い材料で構成することで、絶縁テープの張力をさらに安定させることができる。
【0045】
(実施形態2)
図8は、実施形態2に係る張力調整機構部の構成を示す図で、(a)は断面図、(b)はテープリール32aの上面図である。この張力調整機構部は、油圧シリンダ40a、テープリール32aのブレーキ機構部60aを有する。
【0046】
この油圧シリンダ40a、ガイドローラ44aは、テープ半径rを検知してブレーキ機構部60aのブレーキ力を調整する機能を有する。
テープリール32aのブレーキ機構部60aは、テープリール32aの下方(図中、テープ13aが取り付けられる方向と反対方向)に設けられている。このブレーキ機構部60aは、油圧シリンダ61a、テープリール32aと油圧シリンダ62a間に設けられたブレーキパッド64a、これら部位を収納する収納部65aを備える。
【0047】
油圧シリンダ61aは、内部にピストン66aを配置する。この油圧シリンダ61aのヘッド68a側は、油圧ホース55aを介して、油圧シリンダ40aの圧縮ばね43a側(ヘッド側)と接続されている。また、この油圧シリンダ61aのピストンロッド67a側は、油圧ホース56aを介して、油圧シリンダ40aのピストンロッド50a側と接続されている。ピストンロッド67aの先端には、圧縮ばね62aが取り付けられている。
【0048】
ブレーキパッド64aは、支持部材63a上に載置されている。この支持部材63aには、圧縮ばね62aが当接しており、圧縮ばね62aは、この支持部材63aを介してブレーキパッド64aを接触するテープリール32a側に付勢する。
【0049】
(張力調整機構部の動作)
次に、この張力調整機構部の動作について説明する。
テープ半径rは、テーピングを施すことにより減少する。油圧シリンダ40aでは、圧縮ばね43aによって、ピストン51aが絶縁テープ13aに付勢されているので、テープ半径rの減少に伴い、ピストン51aはテープリール32aの方向に移動する。
【0050】
ピストンロッド50a側に貯えられていた油液は、この移動するピストン51aによって油圧ホース56aに押し出される。油圧ホース56aに押し出された油液は、ブレーキ機構部60aの油圧シリンダ61aのピストンロッド67a側に供給される。また、この時、油圧シリンダ61aのヘッド68a側に貯えられていた油液は、ピストン66aの移動に伴って油圧ホース55aに押し出され、油圧シリンダ40aの圧縮ばね43a側に供給される。
【0051】
この油圧シリンダ61aは、ピストンロッド67aの先端に圧縮ばね62aが取り付けられ、常にブレーキパッド64aをテープリール32aに押し付けるように付勢力が働いている。この状態で、ピストンロッド67a側に油液が流入すると、ピストン66aがテープリール32aから遠ざかる方向に移動する。
【0052】
また、油圧シリンダ61aの圧力は大きいので、ピストンロッド67aを直接支持部材63aに当接させると、テープリール32aとブレーキパッド64aの摩擦力が大きくなり過ぎる。このため、ピストンロッド67aの先端に圧縮ばね62aを取り付けて、油圧シリンダ61aの位置変位を圧縮ばね62aの弾性エネルギーに変換してブレーキパッド64aに伝達させている。したがって、ピストン66aがテープリール32aから遠ざかる方向に移動すると、ブレーキパッド64aとテープリール32aの摩擦力が減少し、この摩擦力と比例関係にあるテープ張力を減少させることが可能となる。
【0053】
このように、本実施形態では、テープリールから供給されるテープの張力を、テープ半径の減少に伴って減少することができるので、実施形態1に示したダンパー機構部と併用することで、絶縁テープの張力をさらに安定させることができる。
【0054】
(実施形態3)
図9は、実施形態3に係るダンパー機構部38aを示す拡大図である。
2つの定張力ばね48aを用いたダンパー機構部38aは、予め設定された張力(以下、「設定張力」という)を常に得ることができる反面、たとえば設定張力が20[Kgf]の定張力ばねを用いたガイドローラ36aに、それよりも小さな張力(荷重)、たとえば張力18[Kgf]が連続して付加される場合がある。この場合、ガイドローラ36aは後退し続けてストッパ47a1に当接すると、このストッパ47a1の干渉を受け、定張力ばね48aはその機能を失う。
【0055】
また、この設定張力より大きな張力(荷重)、たとえば22[Kgf]が連続して付加されると、ガイドローラ36aは前進し続けてストッパ47a2に当接すると、このストッパ47a2の干渉を受け、定張力ばね48aはその機能を失う。
【0056】
このように、定張力ばね48aは、安定した張力を広範囲で出力できる反面、設定張力と連続的にずれが生じた場合には、上述した所定張力以上の張力を絶縁テープ13aに与えないという機能を失ってしまうことがある。
【0057】
本実施形態では、上記に鑑みて、図9に示すようにエアーシリンダ49aをガイドレール39aと平行して回転リング30に配設する。このエアーシリンダ49aは、内部にピストン52aを有し、ピストンロッド53aの先端をスライダ46aに接続する。そして、このエアーシリンダ49aをガイドローラ36aの移動に同調するように動作させる。
【0058】
図10は、実施形態3に係る張力調整機構部の構成を示す図で、(a)は断面図、(b)はテープリール32aの上面図である。この張力調整機構部は、実施形態2に示した油圧シリンダ40a、ブレーキ機構部60aと同様の部位の他に、エアーシリンダ49a、テープリール32aのブレーキ微調整機構部70aを有し、油圧とエアー圧の両方で動作してテープ張力を調整する。
【0059】
テープリール32aの下方(図中、テープ13aが取り付けられる方向と反対方向)には、テープリール32aのブレーキ微調整機構部70aが設けられている。このブレーキ微調整機構部70aは、中空の筒形状に形成されたエアーシリンダ71a、テープリール32aとエアーシリンダ71a間に設けられたブレーキパッド75a、ブレーキ機構部60aとブレーキ微調整機構部70aとを収納する収納部65aを備える。
【0060】
エアーシリンダ71aは、内部に筒形状のピストン72aを配置し、空気圧によってピストン72aをテープリール32aの方向に付勢する。このエアーシリンダ71aのヘッド73a側は、エアーチューブ57aを介してエアーシリンダ49aのヘッド54a側と接続されている。また、このエアーシリンダ71aのピストンロッド74a側は、エアーチューブ58aを介してエアーシリンダ49aのピストンロッド53a側と接続されている。ピストンロッド74aの先端は、ブレーキパッド75aに当接している。このブレーキパッド75aは、中空の円盤形に形成されている。なお、エアーシリンダ49a,71a内には、たとえば窒素を含む気体が充填されている。
【0061】
油圧シリンダ61aは、エアーシリンダ71aの中空内に配置される。ブレーキパッド64aは、ブレーキパッド75aの中空内に配置される。なお、本実施形態における油圧シリンダ61aは、内部に圧縮ばね62aを設置し、ピストン66aを付勢する。この油圧シリンダ61aがブレーキパッド64aに直接圧力を加えてテープリール32aから供給されるテープの張力を調整している。
【0062】
(張力調整機構部の動作)
次に、この張力調整機構部の動作について説明する。
まず、この張力調整機構部では、油圧シリンダ40aでテープ半径を検知し、油圧シリンダ61aによりブレーキパッド64aに圧力を加えてテープ張力を大まかに粗調整する。
【0063】
次に、絶縁テープ13aに張力変動が発生すると、ガイドローラ36aに張力が加わり、定張力ばね48aによってテープに張力が加わる。テープ張力が設定張力より大きい場合、このガイドローラ36aは、ストッパ47a2の方向に移動し、またテープ張力がガイドローラ36aの設定張力より小さい場合、ストッパ47a1の方向に移動する。
【0064】
この移動量を検知する方法として、エアーシリンダ49aを用いる。ここでエアーシリンダにした理由は、油圧では追従が遅いので、追従の早いエアー圧を用いてブレーキパッド75aに圧力を加えてテープ張力を微調整することとした。
【0065】
ここで、設定張力よりも小さい張力がガイドローラ36aに加わった場合、エアーシリンダ49aのヘッド54a側の気体が圧縮され、エアーシリンダ71aのヘッド73a側に気体が流入する。そして、この気体の圧力によってピストン72aがテープリール32a側に上昇し、ブレーキパッド75aをテープリール32aに押し付ける。この結果、テープリール32aとブレーキパッド75aの摩擦力が上昇し、テープ張力も上昇する。
【0066】
これにより、ガイドローラ36aが前進し続けることがなくなり、ストッパ47a2の干渉を受けなくなるので、ダンパー機構部38aは所定張力以上の張力を絶縁テープ13aに与えることがなくなる。
【0067】
また、反対に設定張力よりも大きなテープ張力が加わった場合、エアーシリンダ49aのピストンロッド53a側の気体が圧縮され、エアーシリンダ71aのピストンロッド74a側に気体が流入する。そして、この気体の圧力によってピストン72aがテープリール32aから遠ざかる方向に下降し、ブレーキパッド75aによるテープリール32aへの押し付けが減少する。これにより、テープリール32aとブレーキパッド75aの摩擦力が減少し、テープ張力も減少する。
【0068】
これにより、ガイドローラ36aが上昇し続けることがなくなり、ストッパ47a1の干渉を受けなくなるので、ダンパー機構部38aは所定張力以上の張力を絶縁テープ13aに与えることがなくなる。
【0069】
このように、本実施形態では、ブレーキ機構部60aがテープ半径に基づき、テープリールから供給されるテープの張力を調整するとともに、さらにブレーキ微調整機構部70aによってテープ張力の微調整を行う。この結果、設定張力とテープ張力に差が発生した場合、設定張力とテープ張力とをつり合うように制御し、かつダンパー機構部の特性を持続させることができるので、絶縁テープの張力をさらに安定させることができる。
【0070】
(変形例)
図10に示した張力調整機構部において、エアーシリンダ49aとエアーシリンダ71aの内部圧力を調整するために、この間のエアーチューブ57a,58aにサブタンク76aをそれぞれ配置する。
【0071】
サブタンク76aは、調整ネジ77a、ピストン78aを備えている。この調整ネジ77aによって、内部のピストン78aが可動し、タンク内の圧力を調整する。
これにより、エアーシリンダ71aの内部圧力を微調整することが可能となり、エアーシリンダ49aとエアーシリンダ71aとの内部圧力の関係を安定させて、張力を調整することができる。この結果、絶縁テープの張力をさらに安定させることができる。
【0072】
(実施形態4)
図11は、ガイドローラ34aの構成を示す図で、(a)は上面図、(b)は(a)のA−A断面図である。
ガイドローラ34aは、回転リング30に設けられた軸80に回転可能に挿入されるとともに、中心に軸受81が挿入され、軸80に取り付けたナット82によって着脱できないように固定される。ガイドローラ34aと回転リング30との間には、ブレーキパッド83が取り付けられる。
【0073】
ガイドローラ34aは、スクリュープラグ84、圧縮ばね85、押し駒86を備える。このスクリュープラグ84を回転させて圧縮ばね85を回転リング30側に移動させることで、圧縮ばね85が弾性エネルギーを蓄えて押し駒86を回転リング30の方向に押し下げ、押し駒86とブレーキパッド83とを接触させる。
【0074】
この状態で、テーピングが施されると、押し駒86とブレーキパッド83が摩擦接触してブレーキがかかり、この反力によって絶縁テープ13aに一定の張力を与えることができる。
このように、本実施形態のテーピング装置によれば、ガイドローラを摩擦接触によってブレーキをかけることができるので、絶縁テープの張力をさらに安定させることができる。
【0075】
なお、本願発明は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形してもよい。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより、種々の発明を構成できる。例えば実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1…テーピング装置、2…張力制御装置、10…ステータコイル、13,13a,13b…絶縁テープ、14…テーピングヘッド、15…移動装置、17…制御装置、18…入力装置、25…駆動機構部、26…回転駆動モータ、27…歯車、30…回転リング、32a,32b…テープリール、33a〜37a,33b〜37b,44a…ガイドローラ、38a,38b…ダンパー機構部、40a,40b,61a,62a…油圧シリンダ、41a…圧縮ばね、42a,51a,52a,66a,72a,78a…ピストン、43a,50a,53a,67a,74a…ピストンロッド、48a…定張力ばね、49a,71a…エアーシリンダ、54a,68a,73a…ヘッド、55a,56a…油圧ホース、57a,58a…エアーチューブ、60a…ブレーキ機構部、64a,75a,83…ブレーキパッド、70a…ブレーキ微調整機構部、76a…サブタンク、r…テープ半径。
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁テープの張力を調整し、例えば発電機のステータコイルに絶縁テープを自動的に巻装する張力制御装置、テーピング装置およびステータコイルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ステータコイルには、大電流が流れるため、長期間の運転で熱、電気、機械および環境的なストレスを受け、劣化が生じる。この劣化の主要因は、運転中にステータコイルに発生するコロナ放電現象がある。そこで、この対策としてステータコイル周囲を複数の絶縁テープで巻装し、その際に生じた空隙を、レジンで含浸処理してコロナ放電現象を防止している。ところで、このステータコイルの絶縁作業においては、空隙を含浸処理するレジンより、マイカテープの方が耐熱性、耐コロナ性に優れているためコロナ放電現象を防止する効果が大きい
そこで、ステータコイルに一定張力で絶縁テープをテーピングすることにより空隙を減少し絶縁性能を向上するテーピング装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
また近年、発電機の製造は増加傾向にあり、テーピング作業を高速で実現することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−306508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、発電機のステータコイルは、鉄心のスロットと呼ばれる矩形断面の溝に挿入されるため、コイル形状が矩形断面であり、このステータコイルに絶縁テープを高速でテーピングすると、この絶縁テープを巻きつける周速度がステータコイルの角部によって急激に変動するため絶縁テープの張力が変動してしまう。上記した先行技術では、この張力変動によりテーピング中に撓みが生じてコイルとの間に空隙が発生してしまい、発電機の絶縁性能が低下するという問題があった。
また、磁気式ブレーキ機構を有するテーピング装置では、急激な張力変動に対しては制御周期が遅いため張力調整することが困難であった。一方、摩擦式ブレーキ機構を有するテーピング装置では、度々発生する張力変動に対し、テープ張力を調整するための追従性が悪いという問題があった。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、度々発生する張力変動に対し、テープ張力を調整するための追従性を向上し、テープ張力を一定にすることのできる張力制御装置、テーピング装置およびステータコイルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために本発明の張力制御装置は、テープが巻装される被対象物が同心的に挿入される中空の回転リングと、前記回転リングを回転させて、前記テープを前記被対象物に巻回させる回転部と、前記回転リングに回転可能に設けられ、前記テープを保持するテープリールと、前記テープリールから前記被対象物までのテープ搬送経路長を変化させる定張力ばねを有し、前記搬送されるテープの張力に対応して、このテープ搬送経路長を変化させて、このテープの張力を一定に調整する張力調整部と、を具備することを特徴とする。
【0007】
また、本発明のテーピング装置は、上記記載の張力制御装置と、前記回転リングの回転可能及び移動可能に支持する支持部と、を具備することを特徴とする。
【0008】
また、本発明のステータコイルの製造方法は、中空の回転リングにテープが巻装される被対象物を同心的に挿入するステップと、前記回転リングを回転させて、搬送される前記テープに張力を加えながら、このテープを前記被対象物に巻回させてステータコイルを製造するステップと、前記搬送されるテープの張力に対応して、前記テープを保持するテープリールから前記被対象物までのテープ搬送経路長を変化させて、このテープの張力を一定に調整するステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、テープ張力を調整するための追従性を向上し、テープ張力を一定にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態のテーピング装置の概略構成を示す概略斜視図である。
【図2】図1のテーピング装置に適用するテーピングヘッドを示す概略拡大図である。
【図3】断面が矩形形状の構造物にテーピングを施した場合の張力変化の一例を示す図である。
【図4】断面が矩形形状の構造物にテーピングを施した場合のテープ張力の基点の転移の状態(a)〜(d)を示す図である。
【図5】図4の状態におけるテープ周速度の変化を示す図である。
【図6】絶縁テープに緩みが発生した場合のテープ張力の関係を示す図で、(a)は張力変動が小さい場合、(b)は張力変動が大きい場合を示す図である。
【図7】実施形態2に係る張力制御装置の要部を拡大した部分拡大図である。
【図8】実施形態2に係る張力調整機構部の構成を示す図で、(a)は断面図、(b)はテープリールの上面図である。
【図9】実施形態3に係るダンパー機構部を示す拡大図である。
【図10】実施形態3に係る張力調整機構部の構成を示す図で、(a)は断面図、(b)はテープリールの上面図である。
【図11】ガイドローラ34aの構成を示す図で、(a)は上面図、(b)は(a)のA−A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態1)
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の一実施形態のテーピング装置の概略構成を示す概略斜視図である。
図1に示すように、このテーピング装置1は、支持クランプ11,12、テーピングヘッド14、移動装置15、制御装置17、入力装置18、ベースプレート19などを備える。
【0012】
支持クランプ11は、ベースプレート19上に載置され、断面が矩形形状のステータコイル10の直線部を支持する。支持クランプ12は、ベースプレート19の長手方向の両端部に載置され、ステータコイル10のエンド部を支持する。
テーピングヘッド14は、ステータコイル10に絶縁テープ13を巻き付ける機能を有する。
【0013】
移動装置15は、テーピングヘッド14を駆動して自在に移動させる。すなわち、移動装置15は、レール20,22、移動板21、テーブル23、コラム24、駆動機構部25を備える。
【0014】
移動板21は、ベースプレート19に敷設されたレール20上を図中X方向に移動する。テーブル23は、この移動板21に敷設されたレール22上を図中Y方向に移動する。コラム24は、このテーブル23上に載置され、テーピングヘッド14を図中Z軸方向に昇降させる。駆動機構部25は、図示しないモータなどを駆動する機能を有し、テーピングヘッド14を、コラム24のX軸を中心にして回転させるとともに、コラム24のY軸を中心にして回転させる。移動装置15は、これらの移動機能を組み合わせることで、テーピングヘッド14を自在に移動させることができる。
【0015】
また、支持クランプ11は、シリンダ内に収容された支持軸と、支持軸に設けた把持部(ともに図示せず)を備え、テーピングヘッド14が近付くと、把持部が開口し、支持軸が下降し、テーピングヘッド14に衝突しないようにしている。
【0016】
制御装置17は、移動装置15の動きを遠隔的に制御するアンテナ16を有する。また、制御装置17は、入力装置18から予め入力したデータ情報に基づいた制御情報を、支持クランプ11、テーピングヘッド14、駆動機構部25などに与えて駆動させ、その動作を制御している。
【0017】
入力装置18は、絶縁テープ13の張力やテーピングヘッド14の動きの軌跡などを予め入力する。
【0018】
図2は、図1のテーピング装置1に適用するテーピングヘッド14を示す概略構成図である。なお、本実施形態では、2本の絶縁テープ13a,13bによってテーピングを施す場合について説明する(以下の実施形態も同様)。
テーピングヘッド14は、筒状のフレーム29、中空の円筒形状に形成され、フレーム29に回転可能に支持される回転リング30を備える。ステータコイル10は、回転リング30に同心的に挿入される。
【0019】
回転リング30の外周部には、リングギア31が配置される。また、フレーム29には、回転駆動モータ26が設けられ、この回転駆動モータ26の回転軸には、歯車27が取り付けられている。このリングギア31と歯車27とは、互いに噛み合い、回転駆動モータ26の駆動に伴い、回転リング30をフレームの周方向に沿って回転駆動させる。
【0020】
また、回転リング30には、テープリール32a,32b、ガイドローラ33a,34a,33b,34b、ガイドローラ35a〜37aを有するダンパー機構部38a、ガイドローラ35b〜37bを有するダンパー機構部38b、油圧シリンダ40a,40bがそれぞれ設けられる。
【0021】
テープリール32a(32b)は、巻装した絶縁テープ13a(13b)を収容する。
テープリール32a(32b)、ガイドローラ33a〜37a(33b〜37b)は、絶縁テープ13a(13b)をガイドしてステータコイル10に搬送するテープ搬送経路をそれぞれ構成する。
【0022】
このテーピング装置1では、回転駆動モータ26を駆動させることにより、リングギア31と噛み合った歯車27が回転することで回転リング30を回転し、絶縁テープ13a(13b)に張力を加えながら、ステータコイル10にテーピングを施す。なお、テープリール32a,32b、ガイドローラ33a〜34a,33b〜34b、ダンパー機構部38a,38b、油圧シリンダ40a,40bは、本実施形態の張力制御装置2を構成する。
【0023】
ここで、断面が矩形形状の構造物(ステータコイル10)にテーピングを施した場合の張力変化について図3を用いて説明する。なお、図3では、テープ張力の最小値から2つ目の最小値までが構造物へのテーピングの1周分を表している。また、図3中の一点鎖線は、予め所定値に設定された設定張力を表している。
この構造物にテーピングを施す場合、図3に示すように、テープの張力変化は、周期的に発生する。このことから、張力の変化とテーピングの被対象物(構造物)の形状には相関関係があることが分かる。
【0024】
図4は、断面が矩形形状の構造物(ステータコイル10)にテーピングを施した場合のテープ張力の基点の転移の状態(a)〜(d)を示す図である。図5は、図4の状態におけるテープ周速度の変化を示す図である。
【0025】
テープ張力の基点の転移は、図4に示す状態(a)〜(d)の順に転移し、断面が矩形形状のステータコイル10においては、4つの角部が基点となり張力が加わる。このため図5に示すように、テープ周速度は、4つのサイン波を組み合せた変化を示し、サイン波同士が干渉する部分で転移が発生する。このテープ周速度は、ステータコイル10の矩形形状の幅、長さ、周長によって変化し、テープ張力も変化する。
【0026】
また、図2の構造物にテーピングを施した場合の張力変化において、発生する周期的なテープ周速度の変化のうち、図5中のA部のテープ周速度が急激に下降する部分では、絶縁テープに緩みが発生している。
【0027】
次に、絶縁テープに緩みが発生した場合のテープ張力の関係について説明する。
図6は、絶縁テープに緩みが発生した場合のテープ張力の関係を示す図で、(a)は張力変動が小さい場合、(b)は張力変動が大きい場合を示す図である。この図6では、絶縁テープに一定張力を与えた状態で絶縁テープが緩んだ場合、絶縁テープの緩みが小さい場合と、絶縁テープの緩みが大きい場合との張力変化を比較する。
【0028】
この図6での比較結果から鑑みると、絶縁テープの緩みが大きい程、テープ張力の上昇が激しくなる。つまり、絶縁テープの緩みをできるだけ小さくする、究極的には絶縁テープの緩みを発生させないことが高速で構造物にテーピングを施すために必要な条件となる。
【0029】
そこで、本実施形態のテーピング装置1では、ガイドレール上にガイドローラ36a(36b)を設置し、このガイドローラ36a(36b)を定張力ばねで一定張力で引張り、常時絶縁テープの緩みを防止するダンパー機構部38a(38b)を用いるものとする。なお、テープリール32aと32b、ガイドローラ33a〜34aと33b〜34b、ダンパー機構部38aと38b、油圧シリンダ40aと40bは、それぞれ同一構成からなるので、以下では代表してテープリール32a、ガイドローラ33a〜34a、ダンパー機構部38a、油圧シリンダ40aについて詳細に説明する。
【0030】
図7は、図2に示した張力制御装置2の要部を拡大した部分拡大図である。
絶縁テープ13aの半径rが小さくなると、テープリール32aから一定速度で絶縁テープ13aが引き出され、テープリール32aの回転速度を大きくする必要があり、これに伴い絶縁テープ13aに加わる張力が上昇する。すなわち、この絶縁テープ13aの半径rと張力とは、反比例関係にある。
【0031】
そこで、絶縁テープ13aの引き出しに対しブレーキ力を調整する機構として、本実施形態の油圧シリンダ40aが必要となる。
油圧シリンダ40aは、内部に圧縮ばね41aを設置し、ピストン42aを付勢する。さらに、油圧シリンダ40aは、ピストンロッド43aの先端に回転自在なガイドローラ44aを備え、このガイドローラ44aを圧縮ばね41aの付勢力によって絶縁テープ13aに押し当てることで、テープリール32aにブレーキをかける。
【0032】
絶縁テープ13aの半径rは、テーピングすることにより減少する。この結果、ピストンロッド43aは絶縁テープ13a側に伸長し、圧縮ばね41aの付勢力は減少するので、テープリール32aへのブレーキ力も減少する。この結果、絶縁テープ13aを一定張力で引き出すことが可能となる。なお、このとき油圧シリンダ40a内の油液は、ピストンロッド43a側から圧縮ばね41a側に移動する。
【0033】
また、テーピングを行うための上述したテープ搬送経路が長ければ長いほど、絶縁テープ13aはゴム状に伸縮し、ガイドローラから絶縁テープ13aが浮き上がってしまい、絶縁テープ13aがガイドローラ上を滑る可能性がある。
【0034】
そこで、ガイドローラ34aへの絶縁テープ13aの接触面積を大きくとるように、このガイドローラ34aによる絶縁テープ13aの出入り口部に、小径のガイドローラ33a,35aを配置する。この絶縁テープ13aは、たとえばガイドローラ34aの円周の半分以上に接触することが好ましい。
【0035】
また、このガイドローラ34aのローラ部材質を摩擦力の高い材料、たとえばシリコーンゴムやウレタンゴムなどで構成し、絶縁テープ13aとガイドローラ34aとの滑りを防止することにより、絶縁テープ13aの張力を安定させることが可能となる。さらに、ガイドローラ33a,35a〜37aも摩擦力の高い材料で構成することが好ましい。
【0036】
ダンパー機構部38aは、ガイドローラ35a〜37a、ガイドレール39a、スライダ46a、ストッパ47a1,47a2、定張力ばね48aを備える。
【0037】
ガイドローラ35a,37aは、回転リング30に回転可能に配設される。
ガイドローラ36aは、スライダ46aに回転可能に配設されてガイドレール39aの長手方向に移動可能なものである。すなわち、このガイドローラ36aは、図7中、ガイドローラ35a,37a間の鉛直方向を上下に移動して、ガイドローラ35a,37aから隔たったり、またはガイドローラ35a,37aに接近する。
ガイドレール39aは、回転リング30に配設される。
【0038】
スライダ46aは、略L字形状からなり、ガイドレール39a上に載置され、このガイドレール39aの長手方向に摺動する。このスライダ46aの摺動に伴い、ガイドローラ36aも移動し、テープ搬送経路長の調整が可能となる。
【0039】
ストッパ47a1,47a2は、ガイドレール39aの長手方向の両端部にそれぞれ設けられ、スライダ46aの摺動を抑制する。たとえば絶縁テープ13aの張力がダンパー機構部38aでの許容範囲外となった場合、このストッパ47a1,47b1によって、スライダ46aがガイドレール39aの端部から脱線するのを防ぐことができる。
【0040】
定張力ばね48aは、一定の力で引いたり戻したりできるバネで、たとえば形状記憶合金で構成される。この定張力ばね48aは、ダンパー機構部38aに2つ配設される。この定張力ばね48aは、一端が回転リング30に、他端がスライダ46aに接続される。この定張力ばね48aは、予め設定された所定荷重までは張力を得て、スライダ46aを摺動させる。また、定張力ばね48aは、この所定荷重以上の張力が加わった場合には、所定張力以上の張力を絶縁テープ13aに与えない特性を持つ。この結果、定張力ばね48aは、弾性エネルギーを貯えずに、絶縁テープ13aの緩みに追従して、この緩みだけを打ち消すことができる。
【0041】
本実施形態では、回転リング30にステータコイル10を同心的に挿入し、この回転リング30を回転させ、絶縁テープ13a,13bに張力を加えながら、絶縁テープ13a,13bをステータコイル10に巻回させる。
【0042】
この時、搬送される絶縁テープ13a,13bの張力に対応して、絶縁テープ13a,13bを保持するテープリール32a,32bからステータコイル10までのテープ搬送経路長を変化させて、この絶縁テープ13a,13bの張力を一定に調整して、ステータコイル10を製造することができる。
【0043】
このように、本実施形態では、度々発生する張力変動に対し、絶縁テープの緩みを打ち消すダンパー機構部を設けるので、テープ張力を調整するための追従性を向上できる。この結果、本実施形態では、テープ張力を一定にすることができる。
【0044】
本実施形態では、ダンパー機構部によってテープ張力を一定にすることができるが、より好ましくは、圧縮ばね41aを用いて絶縁テープの引き出しに対するブレーキ力を調整することで、絶縁テープを一定張力で引き出すことも可能となる。
さらに好ましくは、ガイドローラ34aへの絶縁テープの接触面積を大きくするとともに、ガイドローラ34aのローラ部材質を摩擦力の高い材料で構成することで、絶縁テープの張力をさらに安定させることができる。
【0045】
(実施形態2)
図8は、実施形態2に係る張力調整機構部の構成を示す図で、(a)は断面図、(b)はテープリール32aの上面図である。この張力調整機構部は、油圧シリンダ40a、テープリール32aのブレーキ機構部60aを有する。
【0046】
この油圧シリンダ40a、ガイドローラ44aは、テープ半径rを検知してブレーキ機構部60aのブレーキ力を調整する機能を有する。
テープリール32aのブレーキ機構部60aは、テープリール32aの下方(図中、テープ13aが取り付けられる方向と反対方向)に設けられている。このブレーキ機構部60aは、油圧シリンダ61a、テープリール32aと油圧シリンダ62a間に設けられたブレーキパッド64a、これら部位を収納する収納部65aを備える。
【0047】
油圧シリンダ61aは、内部にピストン66aを配置する。この油圧シリンダ61aのヘッド68a側は、油圧ホース55aを介して、油圧シリンダ40aの圧縮ばね43a側(ヘッド側)と接続されている。また、この油圧シリンダ61aのピストンロッド67a側は、油圧ホース56aを介して、油圧シリンダ40aのピストンロッド50a側と接続されている。ピストンロッド67aの先端には、圧縮ばね62aが取り付けられている。
【0048】
ブレーキパッド64aは、支持部材63a上に載置されている。この支持部材63aには、圧縮ばね62aが当接しており、圧縮ばね62aは、この支持部材63aを介してブレーキパッド64aを接触するテープリール32a側に付勢する。
【0049】
(張力調整機構部の動作)
次に、この張力調整機構部の動作について説明する。
テープ半径rは、テーピングを施すことにより減少する。油圧シリンダ40aでは、圧縮ばね43aによって、ピストン51aが絶縁テープ13aに付勢されているので、テープ半径rの減少に伴い、ピストン51aはテープリール32aの方向に移動する。
【0050】
ピストンロッド50a側に貯えられていた油液は、この移動するピストン51aによって油圧ホース56aに押し出される。油圧ホース56aに押し出された油液は、ブレーキ機構部60aの油圧シリンダ61aのピストンロッド67a側に供給される。また、この時、油圧シリンダ61aのヘッド68a側に貯えられていた油液は、ピストン66aの移動に伴って油圧ホース55aに押し出され、油圧シリンダ40aの圧縮ばね43a側に供給される。
【0051】
この油圧シリンダ61aは、ピストンロッド67aの先端に圧縮ばね62aが取り付けられ、常にブレーキパッド64aをテープリール32aに押し付けるように付勢力が働いている。この状態で、ピストンロッド67a側に油液が流入すると、ピストン66aがテープリール32aから遠ざかる方向に移動する。
【0052】
また、油圧シリンダ61aの圧力は大きいので、ピストンロッド67aを直接支持部材63aに当接させると、テープリール32aとブレーキパッド64aの摩擦力が大きくなり過ぎる。このため、ピストンロッド67aの先端に圧縮ばね62aを取り付けて、油圧シリンダ61aの位置変位を圧縮ばね62aの弾性エネルギーに変換してブレーキパッド64aに伝達させている。したがって、ピストン66aがテープリール32aから遠ざかる方向に移動すると、ブレーキパッド64aとテープリール32aの摩擦力が減少し、この摩擦力と比例関係にあるテープ張力を減少させることが可能となる。
【0053】
このように、本実施形態では、テープリールから供給されるテープの張力を、テープ半径の減少に伴って減少することができるので、実施形態1に示したダンパー機構部と併用することで、絶縁テープの張力をさらに安定させることができる。
【0054】
(実施形態3)
図9は、実施形態3に係るダンパー機構部38aを示す拡大図である。
2つの定張力ばね48aを用いたダンパー機構部38aは、予め設定された張力(以下、「設定張力」という)を常に得ることができる反面、たとえば設定張力が20[Kgf]の定張力ばねを用いたガイドローラ36aに、それよりも小さな張力(荷重)、たとえば張力18[Kgf]が連続して付加される場合がある。この場合、ガイドローラ36aは後退し続けてストッパ47a1に当接すると、このストッパ47a1の干渉を受け、定張力ばね48aはその機能を失う。
【0055】
また、この設定張力より大きな張力(荷重)、たとえば22[Kgf]が連続して付加されると、ガイドローラ36aは前進し続けてストッパ47a2に当接すると、このストッパ47a2の干渉を受け、定張力ばね48aはその機能を失う。
【0056】
このように、定張力ばね48aは、安定した張力を広範囲で出力できる反面、設定張力と連続的にずれが生じた場合には、上述した所定張力以上の張力を絶縁テープ13aに与えないという機能を失ってしまうことがある。
【0057】
本実施形態では、上記に鑑みて、図9に示すようにエアーシリンダ49aをガイドレール39aと平行して回転リング30に配設する。このエアーシリンダ49aは、内部にピストン52aを有し、ピストンロッド53aの先端をスライダ46aに接続する。そして、このエアーシリンダ49aをガイドローラ36aの移動に同調するように動作させる。
【0058】
図10は、実施形態3に係る張力調整機構部の構成を示す図で、(a)は断面図、(b)はテープリール32aの上面図である。この張力調整機構部は、実施形態2に示した油圧シリンダ40a、ブレーキ機構部60aと同様の部位の他に、エアーシリンダ49a、テープリール32aのブレーキ微調整機構部70aを有し、油圧とエアー圧の両方で動作してテープ張力を調整する。
【0059】
テープリール32aの下方(図中、テープ13aが取り付けられる方向と反対方向)には、テープリール32aのブレーキ微調整機構部70aが設けられている。このブレーキ微調整機構部70aは、中空の筒形状に形成されたエアーシリンダ71a、テープリール32aとエアーシリンダ71a間に設けられたブレーキパッド75a、ブレーキ機構部60aとブレーキ微調整機構部70aとを収納する収納部65aを備える。
【0060】
エアーシリンダ71aは、内部に筒形状のピストン72aを配置し、空気圧によってピストン72aをテープリール32aの方向に付勢する。このエアーシリンダ71aのヘッド73a側は、エアーチューブ57aを介してエアーシリンダ49aのヘッド54a側と接続されている。また、このエアーシリンダ71aのピストンロッド74a側は、エアーチューブ58aを介してエアーシリンダ49aのピストンロッド53a側と接続されている。ピストンロッド74aの先端は、ブレーキパッド75aに当接している。このブレーキパッド75aは、中空の円盤形に形成されている。なお、エアーシリンダ49a,71a内には、たとえば窒素を含む気体が充填されている。
【0061】
油圧シリンダ61aは、エアーシリンダ71aの中空内に配置される。ブレーキパッド64aは、ブレーキパッド75aの中空内に配置される。なお、本実施形態における油圧シリンダ61aは、内部に圧縮ばね62aを設置し、ピストン66aを付勢する。この油圧シリンダ61aがブレーキパッド64aに直接圧力を加えてテープリール32aから供給されるテープの張力を調整している。
【0062】
(張力調整機構部の動作)
次に、この張力調整機構部の動作について説明する。
まず、この張力調整機構部では、油圧シリンダ40aでテープ半径を検知し、油圧シリンダ61aによりブレーキパッド64aに圧力を加えてテープ張力を大まかに粗調整する。
【0063】
次に、絶縁テープ13aに張力変動が発生すると、ガイドローラ36aに張力が加わり、定張力ばね48aによってテープに張力が加わる。テープ張力が設定張力より大きい場合、このガイドローラ36aは、ストッパ47a2の方向に移動し、またテープ張力がガイドローラ36aの設定張力より小さい場合、ストッパ47a1の方向に移動する。
【0064】
この移動量を検知する方法として、エアーシリンダ49aを用いる。ここでエアーシリンダにした理由は、油圧では追従が遅いので、追従の早いエアー圧を用いてブレーキパッド75aに圧力を加えてテープ張力を微調整することとした。
【0065】
ここで、設定張力よりも小さい張力がガイドローラ36aに加わった場合、エアーシリンダ49aのヘッド54a側の気体が圧縮され、エアーシリンダ71aのヘッド73a側に気体が流入する。そして、この気体の圧力によってピストン72aがテープリール32a側に上昇し、ブレーキパッド75aをテープリール32aに押し付ける。この結果、テープリール32aとブレーキパッド75aの摩擦力が上昇し、テープ張力も上昇する。
【0066】
これにより、ガイドローラ36aが前進し続けることがなくなり、ストッパ47a2の干渉を受けなくなるので、ダンパー機構部38aは所定張力以上の張力を絶縁テープ13aに与えることがなくなる。
【0067】
また、反対に設定張力よりも大きなテープ張力が加わった場合、エアーシリンダ49aのピストンロッド53a側の気体が圧縮され、エアーシリンダ71aのピストンロッド74a側に気体が流入する。そして、この気体の圧力によってピストン72aがテープリール32aから遠ざかる方向に下降し、ブレーキパッド75aによるテープリール32aへの押し付けが減少する。これにより、テープリール32aとブレーキパッド75aの摩擦力が減少し、テープ張力も減少する。
【0068】
これにより、ガイドローラ36aが上昇し続けることがなくなり、ストッパ47a1の干渉を受けなくなるので、ダンパー機構部38aは所定張力以上の張力を絶縁テープ13aに与えることがなくなる。
【0069】
このように、本実施形態では、ブレーキ機構部60aがテープ半径に基づき、テープリールから供給されるテープの張力を調整するとともに、さらにブレーキ微調整機構部70aによってテープ張力の微調整を行う。この結果、設定張力とテープ張力に差が発生した場合、設定張力とテープ張力とをつり合うように制御し、かつダンパー機構部の特性を持続させることができるので、絶縁テープの張力をさらに安定させることができる。
【0070】
(変形例)
図10に示した張力調整機構部において、エアーシリンダ49aとエアーシリンダ71aの内部圧力を調整するために、この間のエアーチューブ57a,58aにサブタンク76aをそれぞれ配置する。
【0071】
サブタンク76aは、調整ネジ77a、ピストン78aを備えている。この調整ネジ77aによって、内部のピストン78aが可動し、タンク内の圧力を調整する。
これにより、エアーシリンダ71aの内部圧力を微調整することが可能となり、エアーシリンダ49aとエアーシリンダ71aとの内部圧力の関係を安定させて、張力を調整することができる。この結果、絶縁テープの張力をさらに安定させることができる。
【0072】
(実施形態4)
図11は、ガイドローラ34aの構成を示す図で、(a)は上面図、(b)は(a)のA−A断面図である。
ガイドローラ34aは、回転リング30に設けられた軸80に回転可能に挿入されるとともに、中心に軸受81が挿入され、軸80に取り付けたナット82によって着脱できないように固定される。ガイドローラ34aと回転リング30との間には、ブレーキパッド83が取り付けられる。
【0073】
ガイドローラ34aは、スクリュープラグ84、圧縮ばね85、押し駒86を備える。このスクリュープラグ84を回転させて圧縮ばね85を回転リング30側に移動させることで、圧縮ばね85が弾性エネルギーを蓄えて押し駒86を回転リング30の方向に押し下げ、押し駒86とブレーキパッド83とを接触させる。
【0074】
この状態で、テーピングが施されると、押し駒86とブレーキパッド83が摩擦接触してブレーキがかかり、この反力によって絶縁テープ13aに一定の張力を与えることができる。
このように、本実施形態のテーピング装置によれば、ガイドローラを摩擦接触によってブレーキをかけることができるので、絶縁テープの張力をさらに安定させることができる。
【0075】
なお、本願発明は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形してもよい。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより、種々の発明を構成できる。例えば実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1…テーピング装置、2…張力制御装置、10…ステータコイル、13,13a,13b…絶縁テープ、14…テーピングヘッド、15…移動装置、17…制御装置、18…入力装置、25…駆動機構部、26…回転駆動モータ、27…歯車、30…回転リング、32a,32b…テープリール、33a〜37a,33b〜37b,44a…ガイドローラ、38a,38b…ダンパー機構部、40a,40b,61a,62a…油圧シリンダ、41a…圧縮ばね、42a,51a,52a,66a,72a,78a…ピストン、43a,50a,53a,67a,74a…ピストンロッド、48a…定張力ばね、49a,71a…エアーシリンダ、54a,68a,73a…ヘッド、55a,56a…油圧ホース、57a,58a…エアーチューブ、60a…ブレーキ機構部、64a,75a,83…ブレーキパッド、70a…ブレーキ微調整機構部、76a…サブタンク、r…テープ半径。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テープが巻装される被対象物が同心的に挿入される中空の回転リングと、
前記回転リングを回転させて、前記テープを前記被対象物に巻回させる回転部と、
前記回転リングに回転可能に設けられ、前記テープを保持するテープリールと、
前記テープリールから前記被対象物までのテープ搬送経路長を変化させる定張力ばねを有し、前記搬送されるテープの張力に対応して、このテープ搬送経路長を変化させて、このテープの張力を一定に調整する張力調整部と、
を具備することを特徴とする張力制御装置。
【請求項2】
前記張力調整部は、
回転可能に設置され、前記テープを搬送する第1および第2のガイドローラと、
前記第1のガイドローラから搬入する前記テープを、前記第2のガイドローラに搬出するとともに、前記定張力ばねの伸縮に応じて、前記第1および第2のガイドローラとの距離が変化する第3のガイドローラと、
を備えることを特徴とする請求項1記載の張力調整装置。
【請求項3】
前記巻装されたテープの径の変化に伴い、液体が流入、流出する液体流入経路と、
前記流入、流出された液体によって、前記テープリールの回転動作を規制して前記テープの張力を調整する張力調整機構部と、
をさらに具備することを特徴とする請求項1または2記載の張力制御装置。
【請求項4】
前記張力調整機構部は、
前記流入、流出された液体によって、ロッドを伸縮させる液圧シリンダと、
前記ロッドの先端に配置され、前記ロッドの伸長に伴って前記テープリールと接触し、このテープリールの回転動作を規制して前記テープの張力を調整する弾性体と、
を備えることを特徴とする請求項3記載の張力調整装置。
【請求項5】
前記テープ搬送経路長の変化に伴い、気体が流入、流出する気体流入経路と、
前記流入、流出された気体によって、前記テープリールの回転動作を規制して前記テープの張力を微調整する張力微調整機構部と、
をさらに具備することを特徴とする請求項2〜4のいずれか1つに記載の張力制御装置。
【請求項6】
前記張力微調整機構部は、
前記流入、流出された気体によって、ロッドを伸縮させる気圧シリンダ
を備え、前記ロッドは、伸長に伴って前記テープリールと接触し、このテープリールの回転動作を規制して前記テープの張力を調整する
ことを特徴とする請求項5記載の張力調整装置。
【請求項7】
前記気体流入経路は、
前記気体の流入、流出を調整する流入調整部
を備えることを特徴とする請求項5記載の張力調整装置。
【請求項8】
前記テープ搬送経路に回転可能に設けられ、前記テープをガイドする第4のガイドローラと、
前記第4のガイドローラの回転動作を規制して前記ガイドするテープの張力を調整するローラ規制部と、
をさらに具備することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の張力制御装置。
【請求項9】
前記第4のガイドローラにおける前記テープの入出力部にそれぞれ回転可能に設けられ、この第4のガイドローラにこのテープを密着させる第5および第6のローラを、
をさらに具備することを特徴とする請求項8記載の張力調整装置。
【請求項10】
前記第4のガイドローラは、摩擦力の高いゴム状の材質で形成される
ことを特徴とする請求項8または9記載の張力調整装置。
【請求項11】
前記請求項1〜10のいずれか1つに記載の張力制御装置と、
前記回転リングを回転可能および移動可能に支持する支持部と、
を具備することを特徴とするテーピング装置。
【請求項12】
中空の回転リングにテープが巻装される被対象物を同心的に挿入するステップと、
前記回転リングを回転させて、搬送される前記テープに張力を加えながら、このテープを前記被対象物に巻回させてステータコイルを製造するステップと、
前記搬送されるテープの張力に対応して、前記テープを保持するテープリールから前記被対象物までのテープ搬送経路長を変化させて、このテープの張力を一定に調整するステップと、
を含むことを特徴とするステータコイルの製造方法。
【請求項1】
テープが巻装される被対象物が同心的に挿入される中空の回転リングと、
前記回転リングを回転させて、前記テープを前記被対象物に巻回させる回転部と、
前記回転リングに回転可能に設けられ、前記テープを保持するテープリールと、
前記テープリールから前記被対象物までのテープ搬送経路長を変化させる定張力ばねを有し、前記搬送されるテープの張力に対応して、このテープ搬送経路長を変化させて、このテープの張力を一定に調整する張力調整部と、
を具備することを特徴とする張力制御装置。
【請求項2】
前記張力調整部は、
回転可能に設置され、前記テープを搬送する第1および第2のガイドローラと、
前記第1のガイドローラから搬入する前記テープを、前記第2のガイドローラに搬出するとともに、前記定張力ばねの伸縮に応じて、前記第1および第2のガイドローラとの距離が変化する第3のガイドローラと、
を備えることを特徴とする請求項1記載の張力調整装置。
【請求項3】
前記巻装されたテープの径の変化に伴い、液体が流入、流出する液体流入経路と、
前記流入、流出された液体によって、前記テープリールの回転動作を規制して前記テープの張力を調整する張力調整機構部と、
をさらに具備することを特徴とする請求項1または2記載の張力制御装置。
【請求項4】
前記張力調整機構部は、
前記流入、流出された液体によって、ロッドを伸縮させる液圧シリンダと、
前記ロッドの先端に配置され、前記ロッドの伸長に伴って前記テープリールと接触し、このテープリールの回転動作を規制して前記テープの張力を調整する弾性体と、
を備えることを特徴とする請求項3記載の張力調整装置。
【請求項5】
前記テープ搬送経路長の変化に伴い、気体が流入、流出する気体流入経路と、
前記流入、流出された気体によって、前記テープリールの回転動作を規制して前記テープの張力を微調整する張力微調整機構部と、
をさらに具備することを特徴とする請求項2〜4のいずれか1つに記載の張力制御装置。
【請求項6】
前記張力微調整機構部は、
前記流入、流出された気体によって、ロッドを伸縮させる気圧シリンダ
を備え、前記ロッドは、伸長に伴って前記テープリールと接触し、このテープリールの回転動作を規制して前記テープの張力を調整する
ことを特徴とする請求項5記載の張力調整装置。
【請求項7】
前記気体流入経路は、
前記気体の流入、流出を調整する流入調整部
を備えることを特徴とする請求項5記載の張力調整装置。
【請求項8】
前記テープ搬送経路に回転可能に設けられ、前記テープをガイドする第4のガイドローラと、
前記第4のガイドローラの回転動作を規制して前記ガイドするテープの張力を調整するローラ規制部と、
をさらに具備することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の張力制御装置。
【請求項9】
前記第4のガイドローラにおける前記テープの入出力部にそれぞれ回転可能に設けられ、この第4のガイドローラにこのテープを密着させる第5および第6のローラを、
をさらに具備することを特徴とする請求項8記載の張力調整装置。
【請求項10】
前記第4のガイドローラは、摩擦力の高いゴム状の材質で形成される
ことを特徴とする請求項8または9記載の張力調整装置。
【請求項11】
前記請求項1〜10のいずれか1つに記載の張力制御装置と、
前記回転リングを回転可能および移動可能に支持する支持部と、
を具備することを特徴とするテーピング装置。
【請求項12】
中空の回転リングにテープが巻装される被対象物を同心的に挿入するステップと、
前記回転リングを回転させて、搬送される前記テープに張力を加えながら、このテープを前記被対象物に巻回させてステータコイルを製造するステップと、
前記搬送されるテープの張力に対応して、前記テープを保持するテープリールから前記被対象物までのテープ搬送経路長を変化させて、このテープの張力を一定に調整するステップと、
を含むことを特徴とするステータコイルの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−46461(P2011−46461A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−194693(P2009−194693)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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