説明

張弦梁

【課題】上弦材と下弦材との接合部の設計を容易にするとともに、接合部の破損を抑制できる張弦梁を提供する。
【解決手段】H鋼からなり、鉛直に延在するウェブ11の上下に上フランジ12および下フランジ13が配置された上弦材10と、平鋼からなり、上弦材10の両端部に接合部30をもって接合される下弦材22と、軸方向の中間位置にて上弦材10と下弦材22とを連結する束材25とを有する張弦梁1において、下弦材22の軸端部分24を、接合部30の梁端側の端部30aから1つ目の束材25までの間にて直線状を呈するようにし、接合部30における上弦材10の下面を、軸直角方向からの側面視において下弦材22(軸端部分24)の材軸方向に沿う傾斜面17とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成梁床構造の梁に好適な上弦材と下弦材とを有する張弦梁に関する。
【背景技術】
【0002】
運動施設やホールなど、大スパンの無柱空間を必要とする建築物では、屋根構造に張弦梁を採用するものが多い。張弦梁は、曲げ剛性と圧縮剛性とを持つ梁を上弦材とし、下弦材に引張材を用い、上弦材と下弦材とを束材を介して結合した混合構造の梁である。
【0003】
一方、鉄骨梁とコンクリート床スラブとを一体化した合成梁構造において、従来のH型鋼の梁に代えて張弦梁を用いた合成梁構造が知られている(特許文献1参照)。特許文献1の張弦梁は、図11に示すような構成とされている。すなわち、この張弦梁101では、上弦材110に小断面のH型鋼を用い、下弦材122に平鋼を用い、上弦材110の端部を下弦材122の角度に沿って斜めに切断し、上弦材110のウェブ111と下弦材122とが逆T字状となるように両者を溶接接合することで、使用鋼材量を大幅に削減するとともに、梁にH型鋼を用いた従来構造と同様の単純さを実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−328631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、物流・商業・生産施設などの大スパンの合成梁構造を構成する張弦梁構造においては、上弦材と下弦材とが接合させる端部に非常に大きな力が作用する。そのため、接合部の剛性や部材同士の接合強度を大きくする必要がある。また、2つの部材を溶接するときの必要溶接長さは、溶接部に生じる応力の大きさと、溶接する部材のうち強度の低い方の母材の強度とに応じて決定される。
【0006】
ここで、特許文献1の発明においては、図11に示すように、上弦材110のウェブ111と下弦材122とを溶接接合することに加え、張弦梁101の端部に斜め(張弦梁101の架け渡し方向(以下、軸方向と称する。)に対して)に配置した補剛用の板状鋼板(以下、斜め補剛材127と称する。)を併用することで、上弦材110と下弦材122との接合部の剛性確保および両部材の接合強度を確保するようにしており、この斜め補剛材127が下弦材122の引張力の一部を負担することによって下弦材122に沿う溶接長を短縮させ得るようにしている。そして、支持に供されるべく梁端部に設けられたガセットプレート126と、張弦梁101(小梁)に直交する大梁102に設けられたスチフナ103とが、継手板104により連結されることで、張弦梁101が大梁102に支持される支持構造となっている。なお、ガセットプレート126は、張弦梁101が受ける鉛直荷重のみを支持し、ガセットプレート126と下弦材122との図示しない溶接部は下弦材からの引張力の負担に寄与するものではない。
【0007】
ところが、特許文献1の発明では、白抜き矢印で示す下弦材122の引張方向(材軸方向)に対する斜め補剛材127の角度αが90度よりも小さくなっており、斜め補剛材127には圧縮抵抗力が生じている。そのため、斜め補剛材127の断面設計においては座屈の検討が必要になる。その結果、斜め補剛材127の板厚が十分な許容圧縮応力度を有していても、溶接長を確保するために部材長が長くなると、座屈に耐え得るようにより大きな板厚にせざるを得ないことがあり、このような場合にはコストアップを招く。
【0008】
一方、図12に示すような、上弦材210をなすH型鋼の下フランジ213に、軸直角方向からの側面視でヘ字状に折り曲げ加工した下弦材222をなす平鋼をボルト233により接合する構成が知られている(特開2001−342710号公報参照)。この構成によれば、上弦材210と下弦材222との接合部230の領域やボルト233の本数を増やすことで、接合強度を容易に確保することができる。しかしながらこの構成では、下弦材222の引張力がヘ字状の折曲部222a(接合部30の梁中央側端部)に集中することになり、特に床スラブが輸送トラックの走行路として利用される場合などには振動によって接合部230が梁中央側の折曲部222aから順に疲労破壊を起こす虞がある。
【0009】
本発明は、このような背景に鑑みなされたものであり、上弦材と下弦材との接合部の設計を容易にするとともに、接合部の破損を抑制できる張弦梁を提供することをその主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、鉛直に延在するウェブ(11)の上下に上フランジ(12)および下フランジ(13)が配置された上弦材(10)と、平坦な上面(22u)を有し、前記上弦材の両端部に接合部(30)をもって接合される下弦材(22)と、軸方向の中間位置にて前記上弦材と前記下弦材とを連結する少なくとも1つの束材(25)とを有する張弦梁(1)であって、前記下弦材は、前記接合部の梁端側の端部(30a)から1つ目の前記束材までの間にて直線状を呈し、前記接合部における前記上弦材の下面が、軸直角方向からの側面視において前記下弦材の材軸方向に沿う傾斜面(17)とされた構成とする。
【0011】
このような構成とすることにより、下弦材の上弦材との接合部にはこれと平行に引張力が作用するため、下弦材から上弦材に伝わる引張力が均等に分散される。したがって、引張力の集中によって接合部に破損が生じることを抑制できる。
【0012】
また、本発明の一側面によれば、前記下弦材は、ボルト(33、28)により前記上弦材および前記束材に接合された構成とすることができる。
【0013】
このような構成とすることにより、ボルトの締結を解除することで下弦材を容易に上弦材から分離することができる。そのため、疲労破壊が生じる前に下弦材を新しいものに交換したり、張弦梁の設計荷重の変更に応じて下弦材をより高強度のものに交換したりすることができ、接合部の破損を確実に防止することができる。
【0014】
また、本発明の一側面によれば、前記上弦材における前記接合部の梁端側には、下面が水平に形成され、受台(3)上に載置される水平端部(16)が形成された構成とすることができる。
【0015】
このような構成とすることにより、水平端部を受台上に載置した状態で張弦梁を受台に支持させることができ、張弦梁の支持構造を、受台が鉛直荷重を支持するピン支持或いはピン−ローラ支持に近いものとすることができ、張弦梁に無用な応力が生じることを防止できる。
【0016】
また、本発明の一側面によれば、前記上弦材は、H型鋼からなる一定断面の上弦部材(18)と、当該上弦部材の両端部の下面に接合され、前記傾斜面を有してテーパ状をなす一対の下弦接合部材(19)とを有する構成とすることができる。
【0017】
このような構成とすることにより、上弦部材に傾斜面を設ける加工を行う必要をなくし、小部材である下弦接合部材に傾斜面を加工すればよいため、加工や各部材の取り扱いが容易である。
【発明の効果】
【0018】
このように本発明によれば、上弦材と下弦材との接合部の設計を容易にするとともに、接合部の破損を抑制できる張弦梁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施形態に係る張弦梁の側面図
【図2】図1中のII断面図
【図3】図1に示す張弦梁の要部拡大側面図
【図4】図1に示す張弦梁の要部下面図
【図5】図1に示す張弦梁の作用効果の説明図
【図6】変形例に係る張弦梁の要部下面図
【図7】第2実施形態に係る張弦梁の側面図
【図8】図7に示す張弦梁の要部拡大側面図
【図9】図7に示す張弦梁の分解側面図
【図10】第3実施形態に係る張弦梁の要部側面図
【図11】従来技術に係る張弦梁の要部側面図
【図12】従来技術に係る張弦梁の要部側面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る張弦梁1のいくつかの実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、第2実施形態以降においては、第1実施形態と同様の部材には同一の符号を付し、第1実施形態と重複する説明は省略する。
【0021】
≪第1実施形態≫
まず、図1〜図6を参照して本発明の第1実施形態およびその変形例について説明する。図1および図2に示すように、張弦梁1は、大梁2、2に設けられた受台3に載置され、単純支持形式の支持方法により一対の大梁2、2間に架け渡され、ずれ防止用のボルト・ナット5により小さな軸力で受台3に固定される。受台3は、上面が略水平な水平面とされ、この水平面に図示しないボルト挿通孔が形成されている。張弦梁1は、2本以上が大梁2、2間に架け渡され、その上に配置される床版6を支持することで大スパンの合成梁床構造を構成する。なお、床版6が既設である場合に床版6の下方に張弦梁1を設け、張弦梁1を床版6の補強用として用いることも可能である。
【0022】
張弦梁1は、H型鋼を加工してなり、鉛直に延在するウェブ11の上下に上フランジ12および下フランジ13が配置されてI形断面を呈する上弦材10と、平鋼からなり、その上面22uおよび下面22lが断面視で水平な平坦面をなすとともに、その端部が上弦材10の両端部に接合部30をもって接合される下弦材22と、上弦材10を軸方向に3等分した位置にて上弦材10と下弦材22とを上下方向に連結するH型鋼からなる2つの束材25とを有する。
【0023】
軸直角方向からの側面視(図1)において、直線状の上弦材10は、上面が水平面をなすように水平に配置される。一方、下弦材22は、2つの束材25が接合された位置の梁端側にて屈曲して下方に突となるように形成され、2つの束材25の間にて水平に配置された直線状の中央部分23と、中央部分23の軸方向両側に一対に配置され、梁端へ向けて上向きに傾斜する直線状の軸端部分24とにより構成される。
【0024】
上弦材10および束材25に用いるH型鋼は、JIS規格の一般構造用熱間圧延鋼材(G3101、SS400)からなる。SS400の降伏強度(降伏点または耐力)は、245N/mm2(鋼材の厚さが16mm以下の場合)である。一方、下弦材22に用いる平鋼は、より降伏強度が大きく、溶接にも適するJIS規格の溶接構造用圧延鋼材(G3106、SM490)からなる。SM490の降伏強度は、325N/mm2(鋼材の厚さが16mm以下の場合)である。
【0025】
図3にも示すように、上弦材10は、その端部においてウェブ11の高さが小さくなるように下フランジ13が軸端へ向けて上向きに傾斜して構成されるテーパ部15と、テーパ部15に連続してウェブ11の高さが小さなまま下フランジ13が再度上フランジ12と平行(水平)になって構成される水平端部16とを有している。そして、下フランジ13が水平な上弦材10の水平端部16には、ボルト挿通用の図示しない長孔が下フランジ13に形成されている。
【0026】
一方、下フランジ13が傾斜したテーパ部15の下面は、軸直角方向からの側面視(図1)において下弦材22の軸端部分24の材軸方向に沿う傾斜角を有する傾斜面17とされている。そして下弦材22は、接合部30においてこの傾斜面17に面接触した状態で上弦材10に接合される。つまり、下弦材22は、接合部30の梁端側の端部30aから1つ目の束材25までの間の部分(軸端部分24)が直線状を呈している。
【0027】
図4に示すように、下弦材22は、上弦材10の下フランジ13よりも幅狭とされており、その両側縁および端縁に沿う連続溶接による隅肉溶接により、接合部30を構成する三方に形成された連続する直線状のビード32によって上弦材10に接合されている。一方、束材25も、上弦材10および下弦材22に対して溶接接合されている。
【0028】
図1および図3に示すように、上弦材10におけるテーパ部15の軸方向両端および束材25との2箇所の接合部には、上フランジ12と下フランジ13とを連結するスチフナ14が鉛直に配置された状態でウェブ11にも溶接されている。
【0029】
張弦梁1がこのような構成を有することにより、接合部30の溶接長(ビード32の全長)が十分長く確保されるとともに、下弦材22の引張力が、接合部30の接合面と平行に加わって接合部30の全体に分散しながら上弦材10に伝達される。したがって、引張力の集中によって接合部30に破損が生じることが抑制される。
【0030】
また、張弦梁1は、上弦材10の水平端部16を介して受台3に支持される単純支持形式の支持構造とされたことにより、次のような作用効果を奏する。すなわち、図5を参照して説明すると、まず(C)に示すような、張弦梁101の下端に形成されたガセットプレート126が継手板104を介して大梁102のスチフナ103に支持される従来(特許文献1)の張弦梁101では、白抜き矢印で示す下弦材122の引張力が継手板104の中心から離れた位置に作用するため、継手板104には黒塗り矢印で示すようなモーメントが生じることになり、継手板104だけでなく、ガセットプレート126およびスチフナ103の強度も必要となる。さらに、ガセットプレート126にモーメントが発生するため、張弦梁101の端部の応力条件が煩雑になる。また、大梁102とのレベル合わせが必要となり、張弦梁101の架設に手間がかかる。
【0031】
これに対し、実施形態に係る張弦梁1では、図5(A)に示すように、白抜き矢印で示す下弦材22の引張力によって上弦材10には黒塗り矢印で示すような圧縮抵抗力が生じ、受台3には鉛直方向の圧縮抵抗力が生じることになる。つまり、張弦梁1は、(B)の左側に示すようなピン支持構造となる。また、上弦材10の水平端部16に長孔が形成され、ボルト・ナット5により小さな軸力で受台3に固定されたことにより、(B)の右側に示すようなローラ形式に近い支持構造となる。したがって、下弦材22に生じた引張力は上弦材10の圧縮力と釣り合い、張弦梁1は完全に自閉した応力状態となるため、支承部は、常時の鉛直荷重のみを負担することになる。よって、張弦梁1にはモーメントや水平方向の力が作用することがなく、単純で合理的な設計が可能となる。
【0032】
また、張弦梁1を架設する際には、水平端部16を受台3上に載置してボルト・ナット5を設置するだけでレベル合わせおよび位置合わせが可能となるため、施工手間が大幅に低減される。さらに、張弦梁1の支持形式を受台方式とすることで、張弦梁1の架設時の省力化に加え、従来の継手板104によるボルト接合方式と比べて支承部の鉛直剛性が大きくなるため、床振動に対する使用性の向上が期待できる。また、張弦梁1を支持するためのガセットプレート126が省略されることでこの部分に空間が生じるため、大梁2に沿った配管等が必要な建物への適用にも有効である。
【0033】
また、上弦材10と下弦材22との接合部30には、下弦材22の引張力による材軸方向のせん断力が作用し、上弦材10に圧縮力として伝達される。このため、接合部30直上のウェブ11にはせん断力が集中的に作用し、この部位のせん断強度が不足することが懸念されるが、上記したように上弦材10におけるテーパ部15の軸方向両端にせん断補強用のスチフナ14が設けられたことにより、スチフナ14が上フランジ12および下フランジ13とともに矩形枠を構成してせん断力に対して強固なパネルゾーン11aがウェブ11に形成され、ウェブ11のせん断剛性が高まる。
【0034】
<変形例>
本変形例では、図6に示すように、下弦材22の幅が上弦材10(下フランジ13)の幅よりも大きくされている。したがって、下フランジ13の幅が上記実施形態と同一であるならば、下弦材22の許容引張応力度は上記実施形態よりも大きく、床スラブの耐荷重をより大きくすることができる。この場合、下弦材22と上弦材10との接合は、下弦材22の端縁に沿うビード32aと、下弦材22の上面22uにおいて上弦材10の側縁に沿うビード32bとが形成される連続隅肉溶接により行われる。下弦材22と上弦材10とをこのように溶接することにより、下弦材22の幅が上弦材10の幅よりも大きい場合であっても、両部材の接合部30の溶接長を長くして十分な接合強度を確保することができる。
【0035】
≪第2実施形態≫
次に、図7〜図9を参照して本発明の第2実施形態について説明する。図7に示すように、本実施形態の張弦梁1も第1実施形態と同様に、H型鋼を加工してなり、鉛直に延在するウェブ11の上下に上フランジ12および下フランジ13が配置されてI形断面を呈する上弦材10と、平鋼からなり、その端部が上弦材10の両端部に接合部30をもって接合される下弦材22と、上弦材10を軸方向に3等分した位置にて上弦材10および下弦材22を上下方向に連結するH型鋼からなる2つの束材25とを有する。また、図8に示すように、上弦材10は、下フランジ13が軸端へ向けて上向きに傾斜して構成されるテーパ部15と、テーパ部15に連続して下フランジ13が水平になって構成される水平端部16とを有しており、下弦材22は、テーパ部15の傾斜面17に面接触した状態で上弦材10に接合されている。
【0036】
一方、下弦材22は、ボルト・ナット33によって上弦材10の下フランジ13に締結されている。なお、疲労強度を高める観点から、ボルト・ナット33には高力ボルトを用いるのが好ましい。さらに、図7に示すように、束材25は上弦材10に対して溶接により接合されているが、下弦材22はその上面22uに溶接されたガセットプレート27を介して束材25に対してボルト・ナット28によって締結されている。
【0037】
このような構成とされることにより、この張弦梁1では、ボルト・ナット33、28の締結を解除することで、下弦材22を容易に上弦材10から分離可能となっている。下弦材22と上弦材10とを溶接により接合した場合、特に、張弦梁1が物流・商業・生産施設などの合成梁構造に適用されると、繰り返し応力作用時の疲労により接合部30の強度が低下することが懸念される。そこで、上記のように下弦材22を上弦材10から分離可能とすることにより、疲労破壊が生じる前に下弦材22を新しいものに交換することや、張弦梁1の積載荷重の変更に応じて下弦材22をより高強度のものに交換することができ、接合部30の破損を確実に防止することができる。また、張弦梁1の加工時の省力化と接合部30の品質管理の簡略化によって、コストの低減および安定した品質の供給を実現できる。
【0038】
≪第3実施形態≫
次に、図10を参照して本発明の第3実施形態について説明する。図示するように、本実施形態の張弦梁1は、上弦材10を構成するH型鋼からなる上弦部材18と、平鋼からなる下弦材22と、H型鋼からなる2つの束材25との他に、上弦材10の一部をなし、下弦材22の端部を接合部30をもって上弦材10の両端部に接合させるための一対の下弦接合部材19を有する。上弦部材18は、適所に設けられたスチフナ14を有するものの、上記実施形態の上弦材10と異なり、H型鋼からなる一定断面とされている。また、下弦材22は、上記実施形態と同様に、水平に配置された直線状の中央部分23(図7参照)と、梁端へ向けて上向きに傾斜する一対の直線状の軸端部分24とにより構成される。
【0039】
一方、下弦接合部材19は、上面が上弦部材18の下フランジ13に沿う水平面をなし、下面が下弦材22に沿う傾斜面17をなすテーパ形状となっている。そして、下弦接合部材19は、ボルト・ナット29によって上弦部材18の下フランジ13に締結され、下弦接合部材19の下面(傾斜面17)に下弦材22がボルト・ナット33によって締結されている。
【0040】
このような構成とされることにより、張弦梁1は、上弦部材18に傾斜面17を設けるための加工を行う必要がなく、小部材である下弦接合部材19に傾斜面17を加工すればよいため、加工手間が少なく、各部材の取り扱いも容易である。
【0041】
以上で具体的実施形態についての説明を終えるが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、上弦材10にH型鋼を用いているが、I型鋼を用いてもよい。また、上記実施形態では、下弦材22に平鋼を用いているが、平坦な上面を有する他の断面形状の型鋼を用いてもよい。また、上記実施形態では、束材25が2箇所に配置されているが、1箇所や3箇所以上に配置してもよい。この他、各部材の具体的形状や、配置、数量などは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。また、上記実施形態に示した本発明に係る張弦梁1の各構成要素は、必ずしも全てが必須ではなく、少なくとも本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 張弦梁
3 受台
10 上弦材
11 ウェブ
12 上フランジ
13 下フランジ
15 テーパ部
16 水平端部
17 傾斜面
18 上弦部材
19 下弦接合部材
22 下弦材
22u 上面
23 中央部分
24 軸端部分
25 束材
28 ボルト・ナット
30 接合部
30a 端部
33 ボルト・ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直に延在するウェブの上下に上フランジおよび下フランジが配置された上弦材と、平坦な上面を有し、前記上弦材の両端部に接合部をもって接合される下弦材と、軸方向の中間位置にて前記上弦材と前記下弦材とを連結する少なくとも1つの束材とを有する張弦梁であって、
前記下弦材は、前記接合部の端部から1つ目の前記束材までの間にて直線状を呈し、
前記接合部における前記上弦材の下面が、軸直角方向からの側面視において前記下弦材の材軸方向に沿う傾斜角とされたことを特徴とする張弦梁。
【請求項2】
前記下弦材は、ボルトにより前記上弦材および前記束材に接合されたことを特徴とする、請求項1に記載の張弦梁。
【請求項3】
前記上弦材における前記接合部の梁端側には、下面が水平に形成され、受台上に載置される水平端部が形成されたことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の張弦梁。
【請求項4】
前記上弦材は、H型鋼からなる一定断面の上弦部材と、当該上弦部材の両端部の下面に接合され、前記傾斜面を有してテーパ状をなす一対の下弦接合部材とを有することを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の張弦梁。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate