説明

強力ポリエチレン糸

改良された引張特性を有する超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)マルチフィラメント糸の調製方法、並びにそれにより製造された糸及び製品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良された引張特性を有する超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)マルチフィラメント糸の調製方法、並びにそれにより製造された糸及び製品に関する。
【背景技術】
【0002】
靭性、引張弾性率及び破断までのエネルギー(energy-to-break)のような高い引張特性を有するUHMWPEマルチフィラメント糸が製造されてきた。この糸は、防弾衣、ヘルメット、胸当て、ヘリコプターシート、スポールシールド;カヤック、カヌー、自転車及びボート等の複合スポーツ用品(composite sports equipment)のような衝撃吸収性及び防弾性が要求される用途、並びに釣り糸、帆、ロープ、縫合糸及び布地において有用である。
【0003】
マルチフィラメントである「ゲル紡糸された」超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)は、ハネウェル・インターナショナル社、DSM N.V.社、東洋紡績株式会社、及びTongyizhongSpecialty Fibre Technology and Development Co., Ltd.により製造されている。ゲル紡糸プロセスは、折りたたみ鎖分子構造の形成を阻止し、引張荷重をより効率的に伝達する伸びきり鎖構造の形成を促進する。
【0004】
ゲル状態の単一UHMWPEフィラメントの調製及び延伸に関する最初の記載は、P. Smith, P. J. Lemstra, B. Kalb and A. J. Pennings, PoIy. Bull., 1, 731 (1979)によるものである。UHMWPEの単一フィラメントは、溶液から紡糸され、溶媒を蒸発させる間に延伸される。より最近の方法(例えば、米国特許(USP)第4,551,296号、同第4,663,101号、同第6,448,659号及び同第6,969,553号を参照)には、溶液フィラメント、ゲルフィラメント及び無溶媒フィラメントの3種すべてを延伸することが記載されている。米国特許第4,551,296号、同第4,663,101号、同第5,741,451号、同第6,448,659号及び同第6,969,553号、並びに米国特許出願第20050093200号の開示は、本明細書と矛盾しない範囲内において参照により本明細書中に組み入れられる。
【0005】
ポリエチレン分子の理論的強度は、その分子量に直接関連する(D. C. Prevorsek, Handbook of Fiber Science and Technology, Vol.3, Section 3.2, P.48-59, Marcel Dekker, Inc., New York 1996; Y. Tremonia et al., Macromolecules, 18, 2246 (1985))。ポリエチレン繊維の実験的に実現可能な強度は、繊維が紡糸されるポリエチレンの分子量に直接関連し、その原料ポリマーの分子量分布の幅にも関連することが判明した(P. Smith et al., J. Poly. Sci Poly. Phys. Ed., 20 2229 (1982))。数平均分子量に対する重量平均分子量の比(M/M)が7未満のポリマーを紡糸することにより、より強度の高い繊維を有利に得ることができた。しかしながら、7〜15.6の間でのM/Mの変化は引張強度には影響を与えないと考えられた。
【0006】
米国特許第4,436,659号には、より広い分子量分布を有するポリマーの分別によるか、又は特定の触媒系及び/又は特定の反応条件を用いた重合により得られたポリマーである、5より小さいM/Mを有するUHMWPEの紡糸が教示された。
【0007】
米国特許第5,547,626号には、ポリマーから繊維にかけて、ポリマーの初期IVよりも10%〜30%低い最終IVに固有粘度(IV)を意図的に低下させることが教示された。平均分子量が過剰に低下すると繊維の靭性が低下することから、低下には上限が必要であると考えられた。この特許には、例えば溶液を紡糸し、押し出された繊維を空冷する際に酸化防止剤を使用しないような酸化条件下で、ポリエチレン溶液を紡糸することが教示された。重要なプロセス要因のうち、米国特許第5,547,626号に特定されていないものは、押出物温度、単一のスクリュー押出機内での滞留時間、押出物中のポリマーの固有粘度、並びにスクリューの直径、回転速度及びスクリューの形状であった。
【0008】
J. Poly. Sci., Symposium, No 37, 1-15 (1976)の「The Thermal-Mechanical Degradation of High Density polyethylene」と題するG. R. Ridealらの研究によれば、酸素の存在により剪断により誘発される鎖の切断が促進されるが、290℃より低い温度での窒素存在下では、長鎖の枝分かれと粘度の増加が優勢となることが判明した。
【0009】
Poly. Eng. & Sci, 33 No. 5, 271-278 (1993)の「A Study of Degradation of High Density Polyethylene in a Corotating Intermeshing Twin Screw Extruder」と題するN. Dontulaらの研究によれば、加工条件と粘度との間に同様の複雑な関係あることが判明した。押出機温度、スクリュー速度及び滞留時間の間の相互作用は、粘度に対する影響に直接的な変化をもたらした。
【0010】
これら各文献は従来技術として先行するものであるが、いずれも本発明の方法又は繊維は示唆しておらず、いずれも本発明が満たす要件のすべてを満たしていなかった。本発明の方法では、熱機械的な鎖の切断が酸化的な鎖の切断と同程度に活性であると考えられる。結果として得られるものは、従来得ることができたものよりも小さい固有粘度(小さい分子量)でより高い強度を有する繊維、及び改良された防弾特性を有する複合材料(composite)である。このような特性を組み合わせて有するマルチフィラメント強化ポリエチレン糸及びその製造方法に対する需要が以前から存在していた。
【発明の概要】
【0011】
一実施形態において、本発明は、強化ポリエチレンマルチフィラメント糸を製造する方法であって、
a)超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)が溶媒に溶解する温度よりも低い温度において、少なくとも約180℃の大気圧沸点を有するUHMWPEのための溶媒中で、少なくとも約10dl/gの初期固有粘度(IV)を有するUHMWPE、及び酸化防止剤のスラリーを形成する工程であり、前記溶媒に対する前記UHMWPEの重量比が約5:95〜約95:5であり、前記溶媒に対する前記酸化防止剤の重量比が約10ppm〜約1000ppmである工程、
b)前記スラリーを噛合型同方向回転二軸スクリュー押出機に供給し、ここで前記二軸スクリュー押出機のスクリューは、谷径がDミリメートル、外径がDミリメートル、D/D比がR、スクリューの回転速度がω回転/分である複数のセグメントから構成され、以下の関係を満たす工程、
【0012】
【数1】

【0013】
c)前記押出機内で、約140℃〜約320℃の温度にて、前記溶媒中の前記UHMWPE及び前記酸化防止剤の液体混合物を形成し、前記押出機を通過する際に、前記混合物中の前記UHMWPEの固有粘度が約0.2IV〜約0.7IVの値まで低下する工程、
d)前記液体混合物を少なくとも約140℃の温度に加熱した容器を通過させ、前記容器は前記容器中の平均滞留時間が約2〜約120分となるような体積を有し、これにより前記UHMWPEの溶液が形成される工程、
e)このように形成した前記溶液を紡糸口金に通過させて溶液フィラメントを形成する工程、
f)前記溶液フィラメントを短いガス空間(short gaseous space)を通して約35℃未満の温度の液体急冷槽に通し、ここで前記溶液フィラメントが迅速に冷却されてゲルフィラメントを形成する工程、
g)前記ゲルフィラメントから溶媒を除去して固体フィラメントを形成する工程、及び
h)1以上の段階において、溶液フィラメント、ゲルフィラメント及び固体フィラメントの少なくとも1種を少なくとも約10:1の合同した延伸比(combined stretch ratio)まで延伸させる工程であり、ここで少なくとも約2:1の延伸が前記固体フィラメントに適用され強化マルチフィラメントUHMWPE糸を形成し、前記UHMWPE糸が少なくとも約40g/dの靭性を有し、及び0.2IV〜0.65IVの固有粘度を有する工程、
を含む方法、である。
【0014】
別の態様において、本発明は、少なくとも40g/dの靭性及び16dl/g以下の固有粘度を有する少なくとも約100のフィラメントを含む強化UHMWPEマルチフィラメント糸、である。
【0015】
更に別の態様において、本発明は、少なくとも約45g/dの靭性及び約16dl/g以下の固有粘度を有する少なくとも約100のフィラメントを含む強化UHMWPEマルチフィラメント糸、である。
【0016】
本発明は、本発明の糸を含む製品も包含する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の繊維と従来技術の繊維について、相対分子量の対数に対して相対濃度をプロットしたものである。
【図2】図2〜5は、従来技術の4種類のUHMWPE繊維と比較した本発明の繊維の赤外線吸光度比を示す。図2は、カルボニル及びポリエチレン−CH−伸縮部分に相当する波数1720cm−1及び2017cm−1における赤外線吸光度の比を示す。
【図3】図3は、ビニル及びポリエチレン−CH−伸縮部分に相当する波数910cm−1及び2017cm−1における赤外線吸光度の比を示す。
【図4】図4は、トランスビニレン及びポリエチレン−CH−伸縮部分に相当する波数965cm−1及び2017cm−1における赤外線吸光度の比を示す。
【図5】図5は、ビニリデン及びポリエチレン−CH−伸縮部分に相当する波数890cm−1及び2017cm−1における赤外線吸光度の比を示す。
【図6】図6は、カルボニル及びビニル部分に相当する波数1720cm−1及び910cm−1における赤外線吸光度の比を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書全体を通して使用されるように、固有粘度(IV)は135℃のデカリン中で測定されることが理解されるであろう。the Polymer Handbook, Second Ed., J. Brandrupand E. H. Immergut, Ed., John Wiley and Sons, New York, 1975, P. IV-7により推奨される重量平均分子量(M)とIVとの間の関係は次の通りと考えられる:
IV,デシリットル/g(dl/g)=0.00062M
本発明の目的のためには、繊維は細長の形態(elongate body)であり、その長さ寸法は幅と厚さの横断寸法よりもはるかに大きい。従って、繊維という用語には、規則的又は不規則な断面を有するフィラメント、リボン、細長片(strip)等が含まれる。糸は多くの繊維又はフィラメントから構成される連続的な束(strand)である。
【0019】
第一の態様において、本発明は、強化ポリエチレンマルチフィラメント糸を製造する方法であって、
a)超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)が溶媒に溶解する温度よりも低い温度において、少なくとも約180℃の大気圧沸点を有するUHMWPEのための溶媒中で、少なくとも約10dl/gの初期固有粘度(IV)を有するUHMWPE、及び酸化防止剤のスラリーを形成する工程であり、前記溶媒に対する前記UHMWPEの重量比が約5:95〜約95:5であり、前記溶媒に対する前記酸化防止剤の重量比が約10ppm〜約1000ppmである工程、
b)前記スラリーを噛合型同方向回転二軸スクリュー押出機に供給し、ここで前記二軸スクリュー押出機のスクリューは、谷径がDミリメートル、外径がDミリメートル、D/D比がR、スクリューの回転速度がω回転/分である複数のセグメントから構成され、以下の関係を満たす工程、
【0020】
【数2】

【0021】
c)前記押出機内で、140℃〜300℃の温度にて、前記溶媒中の前記UHMWPE及び前記酸化防止剤の液体混合物を形成し、前記押出機を通過する際に、前記混合物中の前記UHMWPEの固有粘度が約0.2IV〜約0.7IVの値まで低下する工程、
d)前記液体混合物を少なくとも約140℃の温度に加熱した容器に通過させ、前記容器は前記容器中の平均滞留時間が約2〜約120分となるような体積を有し、これにより前記UHMWPEの溶液が形成される工程、
e)このように形成した前記溶液を紡糸口金に通過させて溶液フィラメントを形成する工程、
f)前記溶液フィラメントを短いガス空間を通して約35℃未満の温度の液体急冷槽に通し、ここで前記溶液フィラメントが迅速に冷却されてゲルフィラメントを形成する工程、
g)前記ゲルフィラメントから溶媒を除去して固体フィラメントを形成する工程、及び
h)1以上の段階において、溶液フィラメント、ゲルフィラメント及び固体フィラメントの少なくとも1種を少なくとも約10:1の合同した延伸比まで延伸させる工程であり、ここで少なくとも約2:1の延伸が前記固体フィラメントに適用され強化マルチフィラメントUHMWPE糸を形成し、前記UHMWPE糸が少なくとも約40g/dの靭性を有し、及び0.2IV〜0.65IVの固有粘度を有する工程、
を含む方法、である。
【0022】
加工されるUHMWPEは、少なくとも約10、好ましくは少なくとも約15dl/g、より好ましくは少なくとも約20dl/g、更により好ましくは少なくとも約25dl/g、最も好ましくは少なくとも約30dl/gのIVを有する。
【0023】
UHMWPEは、好ましくは1000炭素原子当たり約5より少ない側鎖を有し、より好ましくは1000炭素原子当たり約2より少ない側鎖、更により好ましくは1000炭素原子当たり約1より少ない側鎖、最も好ましくは1000炭素原子当たり約0.5より少ない側鎖を有する。側鎖には、C〜C10アルキル基、ビニル末端アルキル基、ノルボルネン、ハロゲン原子、カルボニル、ヒドロキシル、エポキシド及びカルボキシルが含まれていてもよいがこれらに限定されない。UHMWPEには、酸化防止剤、熱安定剤、着色剤、流れ促進剤(flow promoter)、溶媒等のような添加剤が少量、通常は約5wt.%未満、好ましくは約3wt.%未満含有されていてもよい。
【0024】
溶媒は、好ましくは脂肪族化合物、脂環式化合物及び芳香族化合物、ジクロロベンゼンのようなハロゲン化炭化水素並びにこれらの混合物からなる群から選択される。溶媒は少なくとも約180℃の大気圧沸点を有する。溶媒は、好ましくはシス−デカヒドロナフタレン、トランス−デカヒドロナフタレン、デカリン、鉱油及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0025】
酸化防止剤は、好ましくはヒンダードフェノール、芳香族ホスファイト、アミン及びこれらの混合物からなる群から選択される。より好ましくは、酸化防止剤は、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチル−フェノール、テトラキス[メチレン(3,5−ジ−tert−ブチルヒドロキシヒドロシンナメート)]メタン、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、オクタデシル 3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、2,5,7,8−テトラメチル−2(4’,8’,12’−トリメチルトリデシル)クロマン−6−オール及びこれらの混合物からなる群から選択される。酸化防止剤は、より好ましくはビタミンE又はα−トコフェロールとして一般に公知の2,5,7,8−テトラメチル−2(4’,8’,12’−トリメチルトリデシル)クロマン−6−オールである。
【0026】
酸化防止剤の濃度は外来酸素の影響を最小限とするのに十分であるべきであるが、ポリマーと反応する程高くすべきではない。溶媒に対する酸化防止剤の重量比は、約10ppm〜約1000ppmである。溶媒に対する酸化防止剤の重量比は、好ましくは約10ppm〜約100ppmである。
【0027】
スラリーは、溶媒中のUHMWPE及び酸化防止剤から形成され、溶媒に対するUHMWPEの重量比は約5:95〜約95:5である。好ましくは、溶媒に対するUHMWPEの重量比は、好ましくは、約6:94〜約50:50であり、より好ましくは約8:92〜約30:70である。
【0028】
本発明の方法で使用する噛合型同方向回転二軸スクリュー押出機は、2つの機能を有する:まず第一に、ポリマースラリーを、理想的には顕微鏡的寸法のドメインサイズを有する溶融ポリマーと溶媒との均質な液体混合物へと変換する。第二に、溶融ポリエチレンの熱機械的な鎖の切断が酸化的な鎖の切断に優先して起こると考えられる環境が押出機により提供される。
【0029】
R及びωD((1+R)/(1−R))の値は、噛合型同方向回転二軸スクリュー押出機及びその操作速度を選択する際に重要であることが判明し、ここで、Dはミリメートルで測定されるスクリューの谷径であり、Dはミリメートルで測定される押出機スクリューの外径であり、RはD/Dの比であり、スクリューの回転速度はω回転/分である。Rは0.55〜0.84であり、ωD((1+R)/(1−R))の値は70,000ミリメートル/分以上であり、好ましくは、Rは0.65〜0.82であり、ωD((1+R)/(1−R))は90,000ミリメートル/分以上であり、最も好ましくは、ωD((1+R)/(1−R))は110,000ミリメートル/分以上である。
【0030】
溶融ポリエチレンと溶媒との液体混合物は、押出機内で約140℃〜約320℃の温度にて形成される。液体混合物は、好ましくは押出機内で約220℃〜約320℃の温度にて形成される。より好ましくは、液体混合物は、押出機内で約220℃〜約280℃の温度にて形成される。
【0031】
前記二軸スクリュー押出機は、好ましくは押出機供給ゾーンを不活性ガスブランケットの下でスラリー供給物で浸漬させて満液で運転する。
UHMWPE繊維を製造する実際の方法では、二軸スクリュー押出機のような高い資本コストの装置を効率的に使用する必要がある。押出機を通過する体積押出量(volumetric throughput)は押出機内での滞留時間に反比例する。押出機内での平均滞留時間は、体積押出量の速度に対する押出機内の自由体積の比として定義されるが、約1.5分以下、好ましくは約1.2分以下、より好ましくは約1.0分以下である。好ましくは、二軸スクリュー押出機内の実質的に全てのスクリューセグメントが、コンベア式フライトセグメント(conveying flight segment)を送り出している。より好ましくは、逆混合セグメント又は混練セグメントは存在しない。
【0032】
本発明の方法においては、液体混合物中のポリエチレンの固有粘度は、二軸スクリュー押出機を通過する際に30%〜80%低下し、即ち、初期固有粘度IVから約0.2IV〜約0.7IVに低下する。
【0033】
押出機を出た液体混合物は、メルトポンプにより、十分な滞留時間で少なくとも約140℃の温度に加熱された容器を通過し、それによりUHMWPEの溶液が形成される。加熱された容器の温度は、好ましくは、約220℃〜約320℃である。加熱された容器の温度は、より好ましくは約220℃〜約280℃である。
【0034】
加熱された容器は、容器内での平均滞留時間が約2〜約120分となるような体積を有する。加熱された容器は、好ましくは容器内での滞留時間が約6〜約60分となるような体積を有する。
【0035】
UHMWPEの溶液は紡糸口金を通過し、溶液糸(solution yarn)を構成する複数の溶液フィラメントを形成する。紡糸口金は、好ましくは、少なくとも約100のフィラメント、より好ましくは少なくとも約200のフィラメント、更により好ましくは少なくとも約400のフィラメント、最も好ましくは少なくとも約800のフィラメントの溶液糸を形成する。
【0036】
この溶液糸は、短いガス空間を液体急冷槽へと通過し、ここでゲル糸(gel yarn)へと熱的に急冷される。このガス空間は、好ましくは約0.3〜約10センチメートル、より好ましくは約0.4〜約5センチメートルの寸法を有する。ガス空間は、窒素のような不活性ガスで充満されていてもよい。ガス空間内の溶液糸の滞留時間が約1秒未満の場合には、ガス空間は空気で充満されていてもよい。
【0037】
急冷槽内の液体は、好ましくは水、エチレングリコール、エタノール、イソプロパノール、水溶性不凍剤及びこれらの混合物からなる群から選択される。液体急冷槽の温度は、好ましくは約−35℃〜約35℃である。
【0038】
溶媒がゲル糸から除去されて固体フィラメントが形成する。溶媒は、好ましくは蒸発により又はより低沸点の溶媒での抽出とそれに続く蒸発によりゲル糸から除去される。溶媒は、好ましくは回収され再利用される。
【0039】
1以上の段階において、溶液フィラメント、ゲルフィラメント及び固体フィラメントのうちの少なくとも1種について、少なくとも約10:1の合同した延伸比(combined stretch ratio)となるまで延伸を実施し、ここで少なくとも約2:1の延伸が固体フィラメントに適用されて強化マルチフィラメントUHMWPE糸が形成される。延伸は、好ましくは溶液フィラメント、ゲルフィラメント及び固体フィラメントの3種すべてについて実施される。
【0040】
本発明の方法により製造されたUHMWPE糸は、好ましくは約18dl/g以下の固有粘度を有する。
別の態様では、本発明は、少なくとも40g/dの靭性と約16dl/g以下の固有粘度を有する少なくとも100のフィラメントを含むUHMWPE強化マルチフィラメント糸である。強化マルチフィラメント糸は、好ましくは約14dl/g以下、より好ましくは約12dl/g以下の固有粘度を有する。
【0041】
更に別の態様では、本発明は、少なくとも約45g/dの靭性と約16dl/g以下の固有粘度を有する少なくとも100のフィラメントを含むUHMWPE強化マルチフィラメント糸である。強化マルチフィラメント糸は、好ましくは約14dl/g以下、より好ましくは約12dl/g以下の固有粘度を有する。
【0042】
平均分子量の比
10dl/g以上のIVを有するUHMWPEの数平均分子量を正確に測定することは極めて困難である。しかしながら、重量平均分子量とZ平均分子量は粘度法と光散乱法を組み合わせることにより測定できる。数平均分子量、重量平均分子量及びZ平均分子量は以下の関係により定義される:
【0043】
【数3】

【0044】
ここで、Miはi番目の分子種の分子量であり、Niは分子量Miを有する分子の数であり、濃度ciはNiMiに比例するものである。
数平均から重量平均及びZ平均へと進むにつれ、最も大きな分子がより重み付けられることが分かるであろう。従って、異なる材料についての重量平均分子量に対するZ平均分子量の比の差異は、最も大きな分子の群の差を示している。
【0045】
重量平均分子量に対するZ平均分子量の比は、光散乱と溶液粘度を同時に測定することにより決定した。特性を決定すべきポリエチレン繊維を、170℃においてトリクロロベンゼン中に約0.05wt.%の濃度で溶解させた。この溶液を、ビルトイン粘度検出器、及び入射ビームから9.8°に設定したプレシジョンディテクター2040光散乱検出器を備えた、ウォーターズ2000GPCVシステムの3つのPLGel20μm混合Aカラム列(a bank of three PLGel 20-μm mixed A colums)によるゲル浸透クロマトグラフィーにより分析した。分子量分布は以下から求めた:
【0046】
【数4】

【0047】
ここで、Vはユニバーサルキャリブレーションにより測定された体積であり、ΔI及びΔHは光散乱検出器及び粘度検出器のベースライン上の信号強度である。重量平均分子量に対するZ平均分子量の比M/Mは、分子量分布から算出した。
【0048】
好ましくは、本発明のUHMWPEの重量平均分子量に対するZ平均分子量の比(M/M)は、約3.5以下、より好ましくは約2.0〜約3.5である。
赤外線吸光度
赤外線吸光度は、解像度を0.964cm−1に設定したNicolet Magna−IR560分光計を使用して測定した。4000〜400cm−1の間で0.964cm−1間隔でデータを取得した。それぞれカルボニル、ビニル、トランスビニレン及びビニリデン部分に相当する波数1720cm−1、910cm−1、965cm−1及び890cm−1における吸光度を、ポリエチレンの−CH−延伸モードに相当する2017cm−1における吸光度に対して測定した。
【0049】
本発明のUHMWPE糸は、好ましくは以下の関係のうちの少なくとも2つを満たす赤外線吸光度比を有する:
【0050】
【数5】

【0051】
ここで、Aはxcm−1における赤外線吸光度である。
本発明のUHMWPE糸は、より好ましくは以下の関係を満たす赤外線吸光度比を有する:
【0052】
【数6】

【0053】
ここで、Aはxcm−1における赤外線吸光度である。0.77≧A910/A2017≧0.71
本発明のUHMWPE糸は、好ましくは1.07以下の赤外線吸光度比A1720/A910を有する。
【0054】
本発明は、本発明の糸を含む製品も包含する。
【実施例】
【0055】
実施例1
チーグラー・ナッタ触媒系を使用して製造し、固有粘度21dl/gを有するUHMWPEを選択した。このUHMWPEは炭素原子1000個当たり0.5未満のメチルを有し、融点が138℃であった。白色鉱油からなる溶媒を選択した。この白色鉱油は、パラフィン系炭素約70%及びナフテン系炭素約30%からなるクロンプトン社(Crompton Corporation)製の低揮発性油であるHYDROBRITE(登録商標)550POであった。25ppmのα−トコフェロールからなる酸化防止剤を鉱油に添加した。
【0056】
鉱油92重量部中のUHMWPE8重量部からなるスラリーを、35〜38℃の撹拌混合槽中で調製した。このスラリーを、噛合型同方向回転二軸スクリュー押出機の供給ホッパー中に112.5lbs/hrの速度で連続的に供給した。この供給ホッパーとスラリー供給物を窒素ブランケット下に保持した。供給ホッパーは、押出機バレルを満液に保つ浸漬状態(flooded condition)に維持した。押出機スクリューの外径Dは40mmであった。スクリューエレメントは、すべてが谷径D32.52mmを有するコンベア式エレメント(conveying element)を送り出していた。スクリューの回転速度は250RPMであり、D/D比であるRは0.813であった。ωD((1+R)/(1−R))の値は96,956ミリメートル/分であった。
【0057】
この押出機内の自由体積(バレル体積−スクリュー体積)は、1400cmであった。押出機バレルの温度は260℃であった。UHMWPE/鉱油のスラリーは、平均滞留時間1.15分で押出機を通過する際に260℃で液体混合物に変化した。押出機を出た液体混合物は、ギアポンプから容器へと通過した。
【0058】
オフライン分析のために、押出機から出た液体混合物のサイドストリームサンプルを採取した。サンプル中のUHMWPEの固有粘度は12.6dl/gであることが判明した。UHMWPEのIVは、押出機を通過する際に初期IVの60%の値まで低下した。
【0059】
押出機とギアポンプを出た液体混合物は、282℃の温度に外部加熱され、長さ46.5フィート(14.17メートル)、内部体積29,212cmのパイプと数個の曲折部分と直径の変化部分からなる容器を通過した。容器内の空間にはスタティックミキサーが存在した。液体混合物は、平均滞留時間24分で容器を通過する際に溶液に変化した。
【0060】
容器を出たUHMWPE溶液はギアポンプを通過し、その後スピンブロックと、直径0.036インチ(0.914mm)の孔を有する紡糸口金を通過して181のフィラメントの溶液糸を形成した。この溶液糸は3cmのエアギャップから9.5℃の水槽へと通過する際に1.8:1に延伸され、この水層でゲル糸へと急冷された。このゲル糸は、室温にて最初の延伸比4.6:1で延伸され、鉱油を抽出するためにシクロヘキサン流に対し向流で通過し、シクロヘキサンを実質的に蒸発させるために乾燥機を通過した。ゲル糸は、抽出及び乾燥の過程において延伸比2.1:1で追加的に延伸した。約10wt.%未満の溶媒を含有する本質的に乾燥した糸を、142℃の温度で2段階で延伸比1.32:1まで延伸し、部分配向した糸(POY)を形成した。最終的なインライン延伸比は、1.1:1未満であった。
【0061】
POYは約18g/d(約16g/dtex)の靭性と約8%の破断点伸びを有していた。このPOYをフィラメント当たり0.376g/分の速度で撚り無しで巻き取った。上記の方法は連続的であり、溶液の形成からPOYの巻き取りまで中断することはなかった。
【0062】
POYはオフライン延伸装置に移送され、ここで150℃の温度にて延伸比4.2:1で延伸され、本発明の高配向の糸(HOY)が形成した。HOYは張力下で冷却され巻き上げられた。これはデニールが679、靭性が44.9g/d(40.1g/dtex)、引張弾性率が1391g/d(1252g/dtex)及び破断点伸びが3.4%であった。本発明の糸の固有粘度は11.7dl/gであった。この糸のIVは、この糸が紡糸されたUHMWPEのIVの56%であった。本発明の糸が紡糸されたUHMWPEの固有粘度(IV)に関連して、HOYのIVは0.44IVであった。
【0063】
本発明の糸と、従来技術の方法により同一の原料ポリマーから調製したUHMWPE糸の重量平均分子量に対するZ平均分子量の比を、上述した溶液粘度と光散乱の同時測定により決定した。図1は、本発明の糸10と従来技術であるUHMWPE糸20について、相対分子量の対数に対して相対濃度をプロットしたものである。M/Mの比は、本発明の糸の場合は3.0であり、従来技術の糸の場合は3.6であった。従来技術の糸と比較して、本発明の糸はより大きな分子量部分の割合が低いことが分かる。
【0064】
実施例2
チーグラー・ナッタ触媒系を使用して製造し、固有粘度33dl/gを有するUHMWPEを選択した。溶媒及び酸化防止剤は実施例1におけるものと同一であり、同様にPOYの製造の終点に至るまでのすべてのプロセス条件も実施例1と同一であった。押出機を出る液体混合物中のUHMWPEのIVは15.8dl/gであった。UHMWPEのIVは、押出機を通過する際に初期IVの48%の値まで低下した。
【0065】
POYはオフライン延伸装置に移送され、ここで150℃の温度にて延伸比6.3:1で延伸され本発明の高配向の糸(HOY)を形成した。HOYは張力下で冷却され巻き上げられた。これはデニールが460、靭性が49.3g/d(44.4g/dtex)、引張弾性率が1632g/d(1468g/dtex)及び破断点伸びが3.3%であった。本発明の糸の固有粘度は15.1dl/gであった。本発明の糸のIVは、この糸が紡糸されたUHMWPEのIVの46%であった。
【0066】
本発明の糸と従来技術の4種のUHMWPE繊維について、赤外線吸光度比を測定した。結果を表1及び図2〜5に示す。本発明の糸は以下の各々の関係を満たすことが分かるであろう:
【0067】
【数7】

【0068】
カルボニルとビニルの吸光度比A1720/A910は、本発明の糸の場合は1.07未満であり、従来技術の材料に相当する比よりも小さいことも分かるであろう。特定の理論に拘束されるわけではないが、本発明の方法は従来技術の方法に比べて、酸化的な鎖の切断とは対照的に熱機械的な鎖の切断が起こる程度が大きいと考えられる。
【0069】
【表1】

【0070】
実施例3
上記の実施例1において記載した本発明の糸を使用して、クロスプライした繊維強化ラミネートを含む本発明の製品を作成した。実施例1の本発明の糸の複数のロールをクリールから供給し、コーミングステーション(combing station)を通過させて一方向の網織物(network)を形成した。この繊維の網織物はステーショナリーバー(stationary bar)の上下を通過し、糸は薄層へと引き伸ばされた。この繊維の網織物は、次いでKRATON(登録商標)D1107 スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体マトリックスのシクロヘキサン溶液浴中に浸漬させたロールの下に移送され、各フィラメントを完全にコートした。
【0071】
コートされた繊維の網織物を、前記浴の出口においてスクイズロールを通過させ過剰のシーラント分散液を除去した。コートされた繊維の網織物は、0.35ミル(0.00089cm)のポリエチレンフィルムのキャリヤウェブ上に置き、加熱したオーブンを通過させてシクロヘキサンを蒸発させ、20wt.%のKRATON(登録商標)マトリックスを含有する密着した繊維シートを形成した。次いで、キャリヤウェブと一方向繊維シートを、ラミネートの作製に備えてローラー上に巻き上げた。
【0072】
上記において調製したロールから2種類の異なるラミネートを作製した。PCRタイプと称する本発明の2層のラミネートを、米国特許第5,173,138号に記載されたクロスプライ装置(cross-plying machine)上に上述したシート材料の2つのロールを設置することにより形成した。キャリヤウェブを取り除き、2枚の一方向繊維シートを0°/90°にクロスプライし、500psi(3.5MPa)の圧力下、115℃の温度にて圧密化(consolidate)しラミネートを作製した。
【0073】
外表面にポリエチレンフィルムを有する2枚のクロスプライ繊維シートからなるLCRタイプと称する本発明の4層のラミネートを同様に作製した。ポリエチレンフィルムのキャリヤウェブを含む上述したシート材料の2つのロールを、クロスプライ装置上に設置し、外側のポリエチレンキャリヤウェブと共に、繊維と繊維を0°/90°にクロスプライし、次いで500psi(3.5MPa)の圧力下、115℃の温度にて圧密化しラミネートを作製した。
【0074】
弾道試験用の複合材料ターゲット(composite target)を上記のラミネートから作製した。PCRラミネートの複数層を所望の面密度まで積み重ねてクロスプライし、次いで500psi(3.5MPa)の圧力下、115℃の温度にて再成形することにより強固なターゲットを作成した。LCRラミネートの複数層を所望の面密度までクロスプライし、ゆるく積み重ねることにより柔軟なターゲットを作製した。
【0075】
本発明の糸を用いて作製したラミネートの弾道試験を、SPECTRA(登録商標)1000の糸から調製した同様のPCR及びLCRタイプである市販のSPECTRA SHIELD(登録商標)ラミネートと比較して実施した。この弾道試験はMIL−STD 662 Fに従って行なった。
【0076】
結果を表2に示す。
速度V50とは、弾丸が貫通する可能性が50%である速度である。
本発明の糸を用いて作製した本発明の製品は、すべての弾丸について従来技術であるSPECTRA(登録商標)1000の糸を用いて調製したターゲットよりも大きいV50を有することが分かるであろう。
【0077】
以上、本発明を十分詳細に記述してきたが、このような詳細に厳密に固執する必要はなく、更なる変更及び改良のすべてが添付の特許請求の範囲により規定される本発明の範囲内となることは当業者に理解されるであろう。
【0078】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化ポリエチレンマルチフィラメント糸を製造する方法であって、
a)超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)が溶媒に溶解する温度よりも低い温度において、少なくとも約180℃の大気圧沸点を有するUHMWPEのための溶媒中で、少なくとも約10dl/gの初期固有粘度(IV)を有するUHMWPE及び酸化防止剤のスラリーを形成する工程であり、前記溶媒に対する前記UHMWPEの重量比が約5:95〜約95:5であり、前記溶媒に対する前記酸化防止剤の重量比が約10ppm〜約1000ppmである工程、
b)前記スラリーを噛合型同方向回転二軸スクリュー押出機に供給し、ここで前記二軸スクリュー押出機のスクリューは、谷径がDミリメートル、外径がDミリメートル、D/D比がR、スクリューの回転速度がω回転/分である複数のセグメントから構成され、以下の関係を満たす工程、
【数1】

c)前記押出機内で、約140℃〜約320℃の温度にて、前記溶媒中の前記UHMWPE及び前記酸化防止剤の液体混合物を形成し、前記押出機を通過する際に、前記混合物中の前記UHMWPEの固有粘度が約0.2IV〜約0.7IVの値まで低下する工程、
d)前記液体混合物を少なくとも約140℃の温度に加熱した容器に通過させ、前記容器は前記容器中の平均滞留時間が約2〜約120分となるような体積を有し、これにより前記UHMWPEの溶液が形成される工程、
e)このように形成した前記溶液を紡糸口金に通過させて溶液フィラメントを形成する工程、
f)前記溶液フィラメントを前記紡糸口金から短いガス空間を通して約35℃未満の温度の液体急冷槽に通し、ここで前記溶液フィラメントが迅速に冷却されてゲルフィラメントを形成する工程、
g)前記ゲルフィラメントから溶媒を除去して固体フィラメントを形成する工程、及び
h)1以上の段階において、溶液フィラメント、ゲルフィラメント及び固体フィラメントの少なくとも1種を少なくとも約10:1の合同した延伸比まで延伸させる工程であり、ここで少なくとも約2:1の延伸が前記固体フィラメントに適用され強化マルチフィラメントUHMWPE糸を形成し、前記UHMWPE糸が少なくとも約40g/dの靭性を有し、及び0.2IV〜0.65IVの固有粘度を有する工程、
を含む方法。
【請求項2】
前記酸化防止剤が、テトラキス[メチレン(3,5−ジ−tert−ブチルヒドロキシヒドロシンナメート)]メタン、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、オクタデシル 3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、2,5,7,8−テトラメチル−2(4’,8’,12’−トリメチルトリデシル)クロマン−6−オール、α−トコフェロール及びこれらの混合物からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶媒に対する前記酸化防止剤の重量比が約10ppm〜約100ppmである請求項1に記載の方法。
【請求項4】
押出機供給ゾーンを不活性ガスブランケット下で前記スラリーで浸漬させて、前記二軸スクリュー押出機を満液で運転する請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記二軸スクリュー押出機内の前記液体混合物の平均滞留時間が約1.5分以下である請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記二軸スクリュー押出機内の実質的にすべての前記スクリューセグメントが、コンベア式フライトセグメントを送り出している請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記二軸スクリュー押出機から流出する前記混合物の温度が約220℃〜約320℃である請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記液体急冷槽内の前記液体が、水、エチレングリコール、エタノール、イソプロパノール、水溶性不凍剤及びこれらの混合物からなる群から選択され、前記液体急冷槽の温度が約−35℃〜約35℃である請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記強化マルチフィラメント糸が少なくとも約100のフィラメントを含む請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記強化マルチフィラメント糸が約18dl/g以下の固有粘度を有する請求項9に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも40g/dの靭性及び約16dl/g以下の固有粘度を有する少なくとも約100のフィラメントを含む強化UHMWPEマルチフィラメント糸。
【請求項12】
約12dl/g以下の固有粘度を有する請求項11に記載の強化UHMWPEマルチフィラメント糸。
【請求項13】
重量平均分子量に対するZ平均分子量の比(M/M)が約3.5以下である請求項11に記載の強化UHMWPEマルチフィラメント糸。
【請求項14】
以下の関係:
【数2】

を満たす(式中Aはxcm−1における赤外線吸光度である)赤外線吸光度比を有する請求項11に記載の強化UHMWPEマルチフィラメント糸。
【請求項15】
前記糸が約1.07以下の赤外線吸光度比A1720/A910(ここでAはxcm−1における赤外線吸光度である)を有する、請求項11に記載の強化UHMWPEマルチフィラメント糸。
【請求項16】
少なくとも約45g/dの靭性及び約16dl/g以下の固有粘度を有する少なくとも約100のフィラメントを含む強化UHMWPEマルチフィラメント糸。
【請求項17】
前記糸が約14dl/g以下の固有粘度を有する請求項16に記載の強化UHMWPEマルチフィラメント糸。
【請求項18】
前記糸の重量平均分子量に対するZ平均分子量の比(M/M)が約3.5以下である請求項16に記載の強化UHMWPEマルチフィラメント糸。
【請求項19】
以下の関係:
【数3】

を満たす(式中Aはxcm−1における赤外線吸光度である)赤外線吸光度比を有する請求項16に記載の強化UHMWPEマルチフィラメント糸。
【請求項20】
約1.07以下の赤外線吸光度比A1720/A910(ここでAはxcm−1における赤外線吸光度である)を有する、請求項16に記載の強化UHMWPEマルチフィラメント糸。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−529319(P2010−529319A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−511329(P2010−511329)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際出願番号】PCT/US2008/065945
【国際公開番号】WO2008/154304
【国際公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】