説明

強化ポリマー電解質膜

スルホネート官能性またはハロゲン化スルホニル官能性ポリマーと、ビスアミジン化合物とを混合し、続いてビスアミジン化合物のアミジン基を三量体化してトリアジン結合を形成することによって、燃料電池などの電解槽中で使用され得るような強化ポリマー電解質膜を製造するための方法が提供される。ハロゲン化スルホニルまたはスルホネート基は、次にスルホン酸基に変換され、ポリトリアジンで強化されたポリマー電解質をもたらすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スルホネート官能性またはハロゲン化スルホニル官能性ポリマーと、ビスアミジン化合物とを混合し、続いてビスアミジン化合物のアミジン基を三量体化してトリアジン結合を形成することによって、燃料電池などの電解槽中で使用され得るような強化ポリマー電解質膜を製造する方法に関する。ハロゲン化スルホニルまたはスルホネート基は、次にスルホン酸基に変換され、ポリトリアジンで強化されたポリマー電解質をもたらすことができる。
【背景技術】
【0002】
国際公開第02/50142A1号パンフレットは、その称するところでは、フッ化ビニリデンに基づく低Tgのフルオロスルホン化ニトリル架橋性エラストマーを開示する。
【0003】
米国特許第5,260,351号明細書は、その称するところでは、硬化剤を存在させずに放射線により硬化されるペルフルオロエラストマーを開示する。参照文献は、その称するところでは、テトラフルオロエチレンと、ペルフルオロアルキルペルフルオロビニルエーテルと、得られるターポリマー中にニトリル、ペルフルオロフェニル、臭素またはヨウ素のうちの少なくとも1つを提供する硬化部位または架橋単位とから調製されるものなどの完全フッ素化ポリマーの硬化に関する。
【0004】
米国特許第5,527,861号明細書は、その称するところでは、ニトリル基を用いて架橋を形成させる、過酸化物、助剤(coagent)、および触媒の組み合わせにより硬化されるニトリル含有ペルフルオロエラストマーを開示する。
【0005】
米国特許第4,334,082号明細書、同第4,414,159号明細書、同第4,440,917号明細書、および同第4,454,247号明細書は、その称するところでは、式
2CFO(CF(CF3)CF2O)nCF=CF2
(式中、Yは、CF2CN、CF2CO2R、CF2CO2H、CF2CO2M、CF2CONH2およびCF2CONRからなる群から選択される)のビニルエーテルモノマーと、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、およびペルフルオロアルキルビニルエーテルから選択される過フッ素化コモノマーと、
CF2=CF(OCF2CF(CF3))nOCF2CF2SO2
(式中、nは、1または2である)とのコポリマーから形成された、クロルアルカリ電解槽において使用するためのイオン交換膜を開示する(4,454,247号特許、請求項1)。これらの参照文献は、その称するところでは、ニトリルを三量体化してトリアジン環を形成することによるフルオロエラストマーの硬化方法を開示する(4,454,247号特許、10欄、60〜68行)。
【0006】
米国特許第4,242,498号明細書は、その称するところでは、架橋エラストマーポリトリアジンを開示する。
【0007】
米国特許第5,693,748号明細書は、その称するところでは、高分子量ポリイミドイルアミジンおよびそれから誘導される高分子量ポリトリアジンを開示する。
【0008】
米国特許第6,277,512号明細書は、アイオノマーポリマーおよび構造フィルム形成ポリマーの混和物を含むポリマー電解質膜を開示する。任意で、一方または両方が架橋される。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
簡潔に言うと、本発明は、a)フッ素化骨格と、ハロゲン化スルホニルおよびスルホネート基から選択される基を含む第1のペンダント基とを含むポリマー、ならびにビスアミジン化合物の混合物を提供するステップと、b)該混合物を膜に形成するステップと、c)アミジン基を反応させてトリアジン基を形成するステップとを含むポリマー電解質膜の製造方法を提供する。該方法は、d)ハロゲン化スルホニルおよびスルホネート基から選択される基をスルホン酸基に変換する更なるステップを含むことができる。ビスアミジン化合物は、一般的に、式
2N(HN=)C−R11−C(=NH)NH2 (I)
に従う化合物であり、式中R11は、1〜15個の炭素原子および0〜4個の酸素原子を含む二価の分枝または非分枝状の部分的または完全にフッ素化されたアルキルまたはエーテル基である。第1のペンダント基は、一般的に式−R1−SO2Xに従い、式中Xは、ハロゲンまたは−O-+であり、ここでA+は適切な有機または無機カチオンであるが、最も一般的にはアンモニウムカチオンであり、R1は、1〜15個の炭素原子および0〜4個の酸素原子を含む分枝または非分枝状のペルフルオロアルキルまたはペルフルオロエーテル基であり、最も一般的には−O−CF2−CF2−CF2−CF2−SO2Xまたは−O−CF2−CF(CF3)−O−CF2−CF2−SO2Xである。ステップb)は、混合物を、一般的には多孔性ポリテトラフルオロエチレンウェブである多孔性支持マトリックス内に吸収することを含み得る。
【0010】
もう1つの態様では、本発明は、本発明の方法のいずれかに従って製造されたポリマー電解質膜を提供する。
【0011】
もう1つの態様では、本発明は、a)フッ素化骨格と、スルホン酸基を含む第1のペンダント基とを含む第1のポリマーと、b)フッ素化ポリトリアジンである第2のポリマーとの混和物を含むポリマー電解質膜を提供する。第1のペンダント基は、一般的に、式−R1−SO3Hに従い、式中R1は、1〜15個の炭素原子および0〜4個の酸素原子を含む分枝または非分枝状のペルフルオロアルキルまたはペルフルオロエーテル基であり、より一般的には、−O−CF2−CF2−CF2−CF2−SO3Hまたは−O−CF2−CF(CF3)−O−CF2−CF2−SO3Hである。第2のポリマーは、一般的に、式
【化1】

に従う三価の基を含み、これらは、二価の基−R11−(式中、R11は、1〜15個の炭素原子および0〜4個の酸素原子を含む分枝または非分枝状の部分的または完全にフッ素化されたアルキルまたはエーテル基である)によって結合されている。R11は、より一般的には、2〜8個の炭素原子を含む過フッ素化アルキル基であり、最も一般的には−C48−である。混和物は、多孔性ポリテトラフルオロエチレンウェブなどの多孔性支持マトリックス内に埋め込むことができる。
【0012】
本出願では、
ポリマーの「当量」(EW)は、1当量の塩基を中和し得るポリマーの重量を意味し、
ポリマーの「水和物(hydration product)」(HP)は、膜中に存在するスルホン酸基1当量につき膜により吸収された水の当量(モル)数にポリマーの当量を乗じたものを意味し、
「高フッ素化」は、40wt%以上、一般的には50wt%以上、そしてより一般的には60wt%以上の量のフッ素を含有することを意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、ポリマー電解質膜を提供する。膜は、まずフッ素化骨格と、式−SO2X(式中、Xはハロゲンまたは−O-+であり、ここでA+は適切な有機または無機カチオンである)に従う基を含む第1のペンダント基とを含むポリマーを、ビスアミジン化合物と混合し、第2にアミジン基を三量体化して、トリアジン基、すなわち式
【化2】

に従う三価の基を含む結合を形成することによって製造される。このような強化ポリマー電解質膜(PEM)は、燃料電池などの電解槽において使用することができる。
【0014】
本発明に従う架橋ポリマーから製造されるPEMは、燃料電池で使用するための膜電極アセンブリ(MEA)の組立において使用することができる。MEAは、水素燃料電池などのプロトン交換膜燃料電池の中心となる要素である。燃料電池は、水素などの燃料と、酸素などの酸化剤の触媒される組み合わせによって使用可能な電気を生成する電気化学セルである。一般的なMEAは、固体電解質としての役割を果たすポリマー電解質膜(PEM)(イオン導電性膜(ICM)としても知られる)を含む。PEMの一方の面はアノード電極層と接触し、反対側の面はカソード電極層と接触する。各電極層は電気化学触媒を含み、一般的には白金金属が含まれる。気体拡散層(GDL)は、アノードおよびカソード電極材料との間の気体の輸送を容易にし、電流を導く。またGDLは、流体輸送層(FTL)またはディフューザ/電流コレクタ(DCC)と呼ばれることもある。アノードおよびカソード電極層は触媒インクの形態でGDLに施され、得られた被覆GDLはPEMと重ね合わせられ、5層MEAを形成することができる。あるいは、アノードおよびカソード電極層は触媒インクの形態でPEMの反対側に施され、得られた触媒被覆膜(CCM)は2つのGDLと重ね合わせられ、5層MEAを形成することができる。5層MEAの5つの層は、順に、アノードGDL、アノード電極層、PEM、カソード電極層、およびカソードGDLである。典型的なPEM燃料電池では、水素酸化によりアノードでプロトンが形成され、PEMを横切ってカソードへ輸送されて酸素と反応し、電極を接続する外部回路に電流を流させる。PEMは、耐久性、非多孔性、非導電性の機械的バリアを反応ガスの間に形成するが、H+イオンを容易に通過させる。
【0015】
スルホネート官能性またはハロゲン化スルホニル官能性ポリマーは、分枝状でも非分枝状でもよいが一般的には非分枝状の骨格を含む。骨格はフッ素化されており、一般的に高フッ素化され、より一般的には過フッ素化されている。骨格は、テトラフルオロエチレン(TFE)から誘導される単位、すなわち一般的には−CF2−CF2−単位と、一般的に式CF2=CY−R(式中、Yは一般的にFであるがCF3でもよく、Rは、ハロゲン化スルホニル(Xはハロゲン)またはスルホネート(Xは−O-+)である式−SO2Xに従う基を含む第1のペンダント基である)に従うものを少なくとも含むコモノマーから誘導される単位とを含むことができる。−SO2Xがハロゲン化スルホニルである場合には、XはFであるのが最も一般的である。−SO2Xがスルホネートである場合には、Li、Na、Kなどの金属イオン、アンモニウムイオン、第4級アンモニウムイオン(環状化合物などを含む)を含む有機または無機対イオンを含む適切な対イオンA+が存在し得る。別の実施形態では、第1のペンダント基Rは、グラフトすることにより骨格に付加することができる。一般的に、第1のペンダント基Rは高フッ素化されており、より一般的には過フッ素化されている。Rは、芳香族でも芳香族でなくてもよい。一般的に、Rは−R1−SO2Xであり、式中R1は、1〜15個の炭素原子および0〜4個の酸素原子を含む分枝または非分枝状のペルフルオロアルキルまたはペルフルオロエーテル基である。R1は一般的には−O−R2−であり、式中R2は、1〜15個の炭素原子および0〜4個の酸素原子を含む分枝または非分枝状のペルフルオロアルキルまたはペルフルオロエーテル基である。R1はより一般的には−O−R3−であり、式中R3は、1〜15個の炭素原子を含むペルフルオロアルキル基である。R1の例としては、
−(CF2n−(式中nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15である)、
(−CF2CF(CF3)−)n(式中nは、1、2、3、4または5である)、
(−CF(CF3)CF2−)n(式中nは、1、2、3、4または5である)、
(−CF2CF(CF3)−)n−CF2−(式中nは、1、2、3または4である)、
(−O−CF2CF2−)n(式中nは、1、2、3、4、5、6または7である)、
(−O−CF2CF2CF2−)n(式中nは、1、2、3、4または5である)、
(−O−CF2CF2CF2CF2−)n(式中nは、1、2または3である)、
(−O−CF2CF(CF3)−)n(式中nは、1、2、3、4または5である)、
(−O−CF2CF(CF2CF3)−)n(式中nは、1、2または3である)、
(−O−CF(CF3)CF2−)n(式中nは、1、2、3、4または5である)、
(−O−CF(CF2CF3)CF2−)n(式中nは、1、2または3である)、
(−O−CF2CF(CF3)−)n−O−CF2CF2−(式中nは、1、2、3または4である)、
(−O−CF2CF(CF2CF3)−)n−O−CF2CF2−(式中nは、1、2または3である)、
(−O−CF(CF3)CF2−)n−O−CF2CF2−(式中nは、1、2、3または4である)、
(−O−CF(CF2CF3)CF2−)n−O−CF2CF2−(式中nは、1、2または3である)、
−O−(CF2n−(式中nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14である)
があげられる。
Rは、一般的に、−O−CF2CF2CF2CF2−SO2Xまたは−O−CF2−CF(CF3)−O−CF2−CF2−SO2Xであり、最も一般的には−O−CF2CF2CF2CF2−SO2Xである。−SO2X基は、重合中は、最も一般的には−SO2Fであり、すなわちXはFである。−SO2X基は、膜形成中は、一般的には−SO2Fまたは−SO2−O-+である。−SO2X基は、一般的には、フルオロポリマーをポリマー電解質として使用する前のある時点で−SO3Hに変換される。
【0016】
第1の側基Rを提供するフルオロモノマーは、米国特許第6,624,328号明細書に開示される方法を含む適切な手段によって合成することができる。
【0017】
ビスアミジン化合物は、一般的に、式
2N(HN=)C−R11−C(=NH)NH2 (I)
に従う化合物であり、式中、R11は、1〜15個の炭素原子および0〜4個の酸素原子を含む二価の分枝または非分枝状の部分的または完全にフッ素化されたアルキルまたはエーテル基である。R11は、一般的に高フッ素化されており、より一般的には過フッ素化されている。R11は一般的には非分枝状である。R11は一般的に、2〜10個の炭素原子および0個の酸素原子を含む。R11はより一般的には、2〜6個の炭素原子および0個の酸素原子を含む。
【0018】
ビスアミジン化合物は市販されているか、あるいは適切な方法で合成することができる。ビスアミジン化合物は、例えばアンモニアの付加によって、式
N≡C−R11−C≡N (III)
に従うニトリル化合物から誘導することができ、式中R11は上記のとおりである。
【0019】
ポリマーは、乳化重合、押出重合、超臨界二酸化炭素中での重合、溶液または懸濁重合などを含む適切な方法によって製造することができる。1つの典型的な重合では、CF2=CF−O−CF2CF2CF2CF2−SO2F(MV4S)は、高せん断(24,000rpm)下で、乳化剤(ペルフルオロオクタン酸アンモニウム、C715COONH4)と共に水中で予備乳化される。インペラ攪拌システムを備えた無酸素の重合釜には、脱イオン水が装入されて50℃に加熱され、次に、予備乳化物が重合釜に装入される。釜には、6〜8バールの絶対反応圧力まで、気体のテトラフルオロエチレン(TFE)が更に装入される。50℃で240rpmの攪拌速度において、二亜硫酸ナトリウムおよびペルオキソ二硫酸アンモニウムの添加により重合が開始される。反応の過程において、反応温度は50℃に保持される。追加のTFEを気相中に供給することによって、反応圧力は6〜8バールの絶対圧力に保持される。反応の過程において、第2のMV4S予備乳化物部分が、連続的に液相中に供給され得る。十分なTFEを供給した後、モノマーの供給は遮断され得る。そして連続する重合によりモノマー気相の圧力は低下される。次に反応容器を通気し、窒素ガスを流すことができる。
【0020】
本発明の1つの実施形態では、ポリマーは、ハロゲン化スルホニルの形態で加工される。別の実施形態では、ポリマーはスルホネートの形態で加工される。
【0021】
ポリマーのハロゲン化スルホニル基は、塩基中での加水分解によってスルホネート形態に変換することができる。1つの典型的な方法では、ポリマーは、上記のような適切な対イオンA+を提供し得る塩基AOHの水溶液と接触される。最も一般的には、AOHはNH4OHである。1つの実施形態では、浸漬された膜は滴定されて中性にされる。もう1つの実施形態では、少し過剰、存在するハロゲン化スルホニル官能基の数よりも例えば1〜50モル%多い塩基が添加される。
【0022】
ポリマーは、溶液または懸濁液中での混合、混練、摩砕などを含む適切な方法によって、ビスアミジンとブレンドすることができる。
【0023】
一般的に、ブレンドは、架橋の前に膜に形成される。適切な膜形成方法が使用され得る。ブレンドは、一般的には、懸濁液から注型される。バーコーティング、スプレーコーティング、スリットコーティング、ブラシコーティングなどを含む適切な注型方法を使用することができる。あるいは、膜は、押出などの溶融方法において、ニートポリマー(neat polymer)から形成されてもよい。形成後、膜は、アニールされ得る。一般に、膜は、90ミクロン以下、より一般的には60ミクロン以下、そして最も一般的には30ミクロン以下の厚さを有する。より薄い膜は、イオンの通過に対してより低い抵抗を提供することができる。燃料電池の使用では、この結果、より低温の動作(cooler operation)が得られ、使用可能なエネルギー出力が大きくなる。より薄い膜は、使用時にその構造の完全性を保持する材料から製造されなければならない。1つの典型的な方法では、膜は、20%固形分を含有する水懸濁液からガラスプレート上に、ナイフコーティングによって注型され、80℃で10分間乾燥されて、約30ミクロンの厚さを有するフィルムを形成する。
【0024】
アミジンの三量体化ステップは、適切な方法によって達成することができる。一般的に、三量体化は、一般的には160℃以上の温度への加熱によって達成される。更に、より低い温度における三量体化を可能にし得る適切な開始剤または触媒が任意で使用されてもよい。適切な開始剤または触媒としては、フッ素化カルボン酸、ルイス酸などの塩を含む1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)の塩などの環状化合物を含むアンモニウム塩および第4級アンモニウム化合物の塩を含むアンモニア、アンモニウム化合物があげられる。ポリマーを架橋するステップは、膜のアニーリング中に全てまたは部分的に生じてもよいし、あるいはアニーリングステップとは別に実行されてもよい。三量体化ステップ中に、アミジン基が三量体化して、トリアジン基、すなわち式
【化3】

に従う三価の基を含む結合を形成する。
【0025】
三量体化の後、第1のペンダント基の硫黄含有官能基は、適切な方法によってスルホン酸の形態に変換され得る。ハロゲン化スルホニル基は、加水分解により変換され得る。1つの典型的な方法では、ポリマーは強塩基の水溶液に浸漬され、続いて酸性にされる。1つの典型的な実施形態では、ポリマー膜は、80℃で1時間、15%のKOH水中に浸漬され、次に80℃において20%の硝酸中で2回洗浄され、次に脱イオン水中で2回沸騰される。スルホネート基は、適切な酸による酸性化によって変換され得る。1つの典型的な実施形態では、膜は、に80℃において20%の硝酸中で2回洗浄され、次に脱イオン水中で2回沸騰される。
【0026】
酸官能性ペンダント基は、一般的には、15,000よりも多い水和物(HP)、より一般的には18,000よりも多く、より一般的には22,000よりも多く、そして最も一般的には25,000よりも多い水和物(HP)をもたらすのに十分な量で存在する。概して、より高いHPは、より高いイオン導電率と相関する。
【0027】
酸官能性ペンダント基は、一般的には、1200よりも小さい当量(EW)、より一般的には1100よりも小さく、より一般的には1000よりも小さく、より一般的には900よりも小さい当量(EW)をもたらすのに十分な量で存在する。
【0028】
更なる実施形態では、フルオロポリマーおよびビスアミジンのブレンドは、アミジン基の反応の前に、一般的には90ミクロン以下、より一般的には60ミクロン以下、そして最も一般的には30ミクロン以下の厚さを有する薄膜の形態である多孔性支持マトリックス内に吸収され得る。過圧、真空、ウィッキング、浸漬などを含む、フルオロポリマーおよびビスアミジンのブレンドを支持マトリックスの細孔内に吸収する適切な方法を使用することができる。ブレンドは、アミジン基の反応時に、マトリックス内に埋め込まれる。適切な支持マトリックスを使用することができる。一般的に、支持マトリックスは非導電性である。一般的に、支持マトリックスはフルオロポリマーで構成され、より一般的には、過フッ素化されている。典型的なマトリックスとしては、2軸延伸PTFEウェブなどの多孔性ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)がある。
【0029】
本発明の方法に従って製造された膜は、架橋の構造、架橋の配置、酸官能基の配置などにおいて、その他の方法で製造されたものとは化学構造が異なり得ることが理解されるであろう。
【0030】
本発明は、燃料電池などの電解槽において使用するための強化ポリマー電解質膜の製造において有用である。
【0031】
本発明の目的および利点は、以下の実施例によって更に説明されるが、これらの実施例において列挙される特定の材料およびその量、ならびにその他の条件および詳細は、本発明を不当に限定すると解釈されてはならない。
【実施例】
【0032】
他に言及されない限り、全ての試薬は、ウィスコンシン州ミルウォーキーのアルドリッチ・ケミカル社(Aldrich Chemical Co.,Milwaukee,Wisconsin)から入手した。または入手可能である。もしくは、既知の方法によって合成することができる。
【0033】
ビスアミジン
ペルフルオロアジポニトリルビスアミジン、H2N(HN=)C−C48−C(=NH)NH2を次のように調製した。
【0034】
磁気的攪拌機を備えた4リットル(L)のプラスチックフラスコに、メタノール(188g、5.9モル)を入れ、フッ化ペルフルオロアジポイル(454g、1.5モル)(ミネソタ州セントポールの3Mカンパニー(3M Company,St.Paul,Minnesota)から入手可能)を1時間にわたって添加した。苛性スクラバー(caustic scrubber)を用いて、フッ化水素酸副産物を処理した。水の添加によりペルフルオロアジペート(446g、1.4モル)を単離した後、低級フルオロケミカル生成物相の蒸留を行った。ペルフルオロアジペート(446g、1.4モル)を、メタノール中で、機械的攪拌機を備えた2リットル(L)のフラスコに入れ、過剰のアンモニア(54g、3.2モル)と反応させ、真空乾燥後にペルフルオロアジポイルアミド(385g、1.3モル)を与えた。ジメチルホルムアミド中のペルフルオロアジポイルアミド(385g、1.3モル)の溶液を、機械的攪拌機を備えた3リットル(L)のフラスコに入れ、−10℃でまずピリジン(508g、6.4モル)と反応させ、次に無水トリフルオロ酢酸(674g、3.2モル)(ウィスコンシン州ミルウォーキーのアルドリッチ・ケミカル社(Aldrich Chemical Co.,Milwaukee,Wisconsin)から入手可能)と反応させた。水の添加によって、64℃の沸点を有するペルフルオロアジポニトリル(235g、0.9モル)を単離した後、低級フルオロケミカル生成物相の蒸留を行った。ペルフルオロアジポニトリル(108g、0.4モル)を、ジエチルエーテル中で、機械的攪拌機を備えた1リットル(L)のフラスコに入れ、−10℃でアンモニア(17g、1.0モル)と反応させ、真空乾燥後に、132℃の融点を有するペルフルオロアジポニトリルビスアミジン(112g、0.9モル)を与えた。構造は、フッ素およびプロトンNMRにより確認した。
【0035】
ポリマー
本発明の実施例において使用されるポリマー電解質は、テトラフルオロエチレン(TFE)と、米国特許第6,624,328号明細書に開示される方法により合成したCF2=CF−O−(CF24−SO2F(MV4S)との乳化共重合によって製造した。
【0036】
ウルトラ−タラックス(ULTRA−TURRAX(登録商標))モデルT25分散器S25KV−25F(独国スタウフェンのイカ−ベルケ社(IKA−Werke GmbH & Co.KG,Staufen,Germany))を用い、高せん断(24,000rpm)下で、MV4SをAPFO乳化剤(ペルフルオロオクタン酸アンモニウム、C715COONH4)と共に水中で2分間予備乳化した。インペラ攪拌システムを備えた重合釜に、脱イオン水を入れた。釜を50℃まで加熱し、次に予備乳化物を無酸素の重合釜に入れた。50℃において、釜に、6バールの絶対反応圧力まで、気体のテトラフルオロエチレン(TFE)を更に入れた。50℃で240rpmの攪拌速度において、二亜硫酸ナトリウムおよびペルオキソ二硫酸アンモニウムの添加によって重合を開始させた。反応の過程において、反応温度を50℃に保持した。追加のTFEを気相中に供給することによって、反応圧力を6バールの絶対圧力に保持した。上記のとおりに第2のMV4S予備乳化物部分を調製した。反応の過程で、第2の予備乳化物部分を液相中に連続的に供給した。
【0037】
追加のTFEを供給した後、モノマーバルブを閉鎖して、モノマーの供給を遮断した。連続する重合によりモノマー気相の圧力は約2バールに低下した。その時点で、反応容器を通気し、窒素ガスを流した。
【0038】
こうして得られたポリマー分散液を、5当量のLiOH(フッ化スルホニル濃度に基づく)および十分な水と混合し、20%ポリマー固形分の混合物を製造した。この混合物を4時間、250℃に加熱した。これらの条件下で、ほとんど(>95%)のポリマーが分散された。分散液をろ過して、LiFおよび分散していないポリマーを除去し、次に、三菱ダイヤイオン(Mitsubishi Diaion)SKT10Lイオン交換樹脂でイオン交換して、アイオノマーの酸形態を与えた。得られたポリマー電解質は、式−O−(CF24−SO3Hに従う酸側鎖を有する過フッ素化ポリマーである。得られた混合物は、18〜19%ポリマー固形分を有する酸分散液であった。この分散液を約38%固形分になるように真空で濃縮し、次にn−プロパノールと混合して、約40%水/60%n−プロパノールの水/n−プロパノール溶媒混合物中、所望の20%固形分の分散液を与えた。
【0039】
注型分散液および膜
NH4OHを、ポリマー中のスルホン酸基に対して1.1当量の量で、上記で得られたポリマー分散液に添加して、スルホン酸基をスルホン酸アンモニウム基に変換した。ペルフルオロアジポニトリルビスアミジン、H2N(HN=)C−C48−C(=NH)NH2を添加して、中和されたポリマー対ビスアミジンの重量比80/20を達成した。
【0040】
この懸濁液をガラスプレート上にナイフコーティングし、80℃で10分間乾燥させ、200℃で30分間アニールすることによって、ポリマー膜を注型および架橋した。得られたフィルムの厚さは、約30ミクロンであった。
【0041】
分析
図1および2は、上記で製造された膜の材料から取られたIRスペクトルを表す。スペクトルは、トリアジンを表す1555cm−1におけるピークを示す。このことは、三量体化が、ポリマーの中和されたスルホネート官能基の存在下で生じ得ることを実証する。
【0042】
本発明の様々な修正および変更は、本発明の範囲および原理から逸脱することなく当業者には明らかになるであろう。そして、本発明が上文に記載された説明的な実施形態に不当に限定されてはならないことは理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に従うポリマー電解質膜サンプルのIRスペクトログラフである。
【図2】2000〜1300波数の範囲を強調する、図1のIRスペクトログラフの詳細である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)フッ素化骨格および第1のペンダント基を含むポリマーと、ビスアミジン化合物との混合物を提供するステップであって、前記第1のペンダント基が、ハロゲン化スルホニルおよびスルホネート基から選択される基を含むステップと、
b)前記混合物を膜に形成するステップと、
c)前記ビスアミジン化合物のアミジン基を反応させてトリアジン基を形成するステップと、
を含むポリマー電解質膜の製造方法。
【請求項2】
前記ステップc)の後に、
d)ハロゲン化スルホニルおよびスルホネート基から選択される前記基をスルホン酸基に変換するステップ
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップb)が、前記混合物を多孔性支持マトリックス内に吸収することを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のペンダント基が、式−R1−SO2X(式中、Xは−O-+であり、ここでA+は有機または無機カチオンであり、R1は、1〜15個の炭素原子および0〜4個の酸素原子を含む分枝または非分枝状のペルフルオロアルキルまたはペルフルオロエーテル基である)に従う、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のペンダント基が、式−R1−SO2X(式中、Xはハロゲンであり、R1は、1〜15個の炭素原子および0〜4個の酸素原子を含む分枝または非分枝状のペルフルオロアルキルまたはペルフルオロエーテル基である)に従う、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ビスアミジン化合物が、式
2N(HN=)C−R11−C(=NH)NH2 (I)
(式中、R11は、1〜15個の炭素原子および0〜4個の酸素原子を含む分枝または非分枝状の部分的または完全にフッ素化された二価のアルキルまたはエーテル基である)に従う化合物から選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法に従って製造されたポリマー電解質膜。
【請求項8】
a)フッ素化骨格と、スルホン酸基を含む第1のペンダント基とを含む第1のポリマーと、
b)フッ素化ポリトリアジンである第2のポリマーと、
の混和物を含むポリマー電解質膜。
【請求項9】
前記第1のペンダント基が、式−R1−SO3H(式中、R1は、1〜15個の炭素原子および0〜4個の酸素原子を含む分枝または非分枝状のペルフルオロアルキルまたはペルフルオロエーテル基である)に従う、請求項8に記載のポリマー電解質膜。
【請求項10】
前記第2のポリマーが、式
【化1】

に従う三価の基を含み、前記三価の基が、二価の基−R11−(式中、R11は、1〜15個の炭素原子および0〜4個の酸素原子を含む分枝または非分枝状の部分的または完全にフッ素化されたアルキルまたはエーテル基である)によって結合されている、請求項8または9に記載のポリマー電解質膜。
【請求項11】
前記混和物が、多孔性支持マトリックス内に埋め込まれている、請求項8〜10のいずれか一項に記載のポリマー電解質膜。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−513471(P2007−513471A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−539504(P2006−539504)
【出願日】平成16年10月13日(2004.10.13)
【国際出願番号】PCT/US2004/033799
【国際公開番号】WO2005/052033
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】