説明

強化用織物インサートのための接着剤およびその使用

【課題】強化ゴム製品を製造するための水分散性で粉末状の強化用織物インサートのための接着剤の提供。
【解決手段】強化用織物インサートのための、粉末状接着剤であって、該接着剤は水分散性であり、そして(A)35〜95質量%の少なくとも1種の少なくとも部分的にキャップされた低分子イソシアネート、(B)0.1〜10質量%の少なくとも1種の潤滑剤、(C)5〜40質量%の少なくとも1種の結合剤、(D)0〜5質量%の少なくとも1種の触媒、および、(E)0〜10質量%の少なくとも1種の添加剤、からなり、ここで成分(A)〜(E)の比率が100質量%になるようにそれぞれが添加される、上記接着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強化ゴム製品を製造するための水分散性粉末状の強化用織物インサートのための接着剤に関する。ここで本接着剤は、少なくとも部分的にキャップされた低分子イソシアネート、潤滑剤、結合剤、および、場合によっては追加の添加剤を含む。
【背景技術】
【0002】
繊維強化ゴム製品の製造において、強化用織物インサートとゴムとの接着強度を改善するために接着剤を用いると有利であることが証明されている。このような接着剤の使用は、特に強化繊維を用いたタイヤコードおよびその他の高い応力を受ける複合材料の分野において重要である。特にこのような用途の分野において、合成または天然繊維をゴム製品に接着するためにレソルシン−ホルムアルデヒド−ラテックス系(RFL)を使用することが当業界において知られている。このような方法に関して、一工程または二工程法のいずれかによって手順を実行することができる。一工程法の場合、強化しようとする要素をRFLと接着剤との混合物に含浸することが行われる。
【0003】
二工程法の場合、まず第一に強化しようとする要素への接着剤の含浸が行われ、第二の工程でRFLの適用が行われる。
また、このような方法に特別に適合させた接着剤もすでに当業界において知られている。
【0004】
DE19913042A1は、水性分散液の形態の強化ゴム製品を製造するための強化インサートを処理するための接着剤を説明している。従ってこの接着剤はイソシアネートをベースとしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、水に分散させることができ、粒度が小さい、流動しやすく粉立ちの少ない粉末の形態で接着剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1に記載の特徴を有する接着剤、および、請求項19に記載の特徴を有する接着剤の製造方法によって達成される。さらにそれらに従属する請求項によって、有利な開発結果が明らかになる。請求項22において、本発明に係る接着剤の使用が示される。
【0007】
本発明は、強化用織物層のための水分散性粉末状の接着剤を提供するものであり、本接着剤は以下の成分からなる:
(A)35〜95質量%の少なくとも1種の少なくとも部分的にキャップされた低分子イソシアネート、
(B)0.1〜10質量%の少なくとも1種の潤滑剤、
(C)5〜40質量%の少なくとも1種の結合剤、
(D)0〜5質量%の少なくとも1種の触媒、および、
(E)0〜10質量%の少なくとも1種の添加剤。
【0008】
ここで成分(A)〜(E)の比率が100質量%になるようにそれぞれが添加される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
少なくとも部分的にキャップされた低分子イソシアネートという用語は、部分的に封鎖された低分子イソシアネートと、完全に封鎖された低分子イソシアネートとの両方を含む。ここで、キャップ、すなわち封鎖された、という用語は同じ意味を有する。
【0010】
このようにして初めて、本発明に従って水分散性粉末状の接着剤を提供することができる。このような流動性粉末において、それらの粒度は加熱乾燥法によって調節でき、具体的には噴霧乾燥、流動床を用いた乾燥、流動床を用いた噴霧乾燥、流動床を用いた噴霧顆粒化、または、流動床乾燥によって調節できる。ここで影響を与える要素は、例えば噴霧塔の高さ、または、停滞時間である。加熱乾燥は、連続的に行ってもよいし、断続的に行ってもよい。このようにして得られた第一の流動性を有し粉立ちの少ない分散性粉末によって、例えばDE19913042A1で説明されているような水性分散液に比べて有意に優れた貯蔵安定性を獲得することが可能になる。また、本発明に係る接着剤の取り扱いやすさに関する有意な利点は、例えば分離の恐れがないこと、必要以上の重量を輸送しなくてもよいこと、輸送する体積がより小さいこと、0℃未満の温度でも凍結しないこと、分散液の状態でも沈降が起こらないためより長い安定性を有することにも関連する。
【0011】
本接着剤の好ましい実施態様によれば、以下の成分からなる接着剤が提供される:
(A)52〜90質量%の少なくとも1種の少なくとも部分的にキャップされた低分子イソシアネート、
(B)0.5〜8質量%の少なくとも1種の潤滑剤、
(C)10〜30質量%の少なくとも1種の結合剤、
(D)0.1〜5質量%の少なくとも1種の触媒、および、
(E)0.1〜5質量%の少なくとも1種の添加剤。
【0012】
本接着剤の特に好ましい実施態様は、以下からなる:
(A)61〜84質量%の少なくとも1種の少なくとも部分的にキャップされた低分子イソシアネート、
(B)1〜6質量%の少なくとも1種の潤滑剤、
(C)15〜25質量%の少なくとも1種の結合剤、
(D)0.5〜4質量%の少なくとも1種の触媒、および、
(E)0.2〜4質量%の少なくとも1種の添加剤。
【0013】
さらに好ましい実施態様によれば、本分散性粉末は、50〜5,000μmの範囲、好ましくは100〜800μmの範囲、特に好ましくは200〜500μmの範囲の平均粒径を有する。
【0014】
さらに好ましくは、少なくとも1種の低分子イソシアネートがキャップされていることであり、すなわち、イソシアネートを少なくとも部分的にキャッピングする前に、イソシアネートが500g/モル未満またはそれに等しいモル質量を有しており、好ましくは90〜400g/モルの範囲、特に好ましくは150〜300g/モルの範囲のモル質量を有する。
【0015】
低分子イソシアネートは、高分子イソシアネートに比べて、より高い反応性、より優れた分散性、より簡単な製造およびより簡単な利用可能性を示す。
本接着剤は、キャップしようとする低分子イソシアネートとして、すなわち少なくとも部分的なキャッピングの前のイソシアネートとして、好ましくは芳香族、脂肪族または脂環式イソシアネートを含む。これは、具体的な選択条件に応じて、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4−MDI)、2,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4−MDI)、3,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(3,4−MDI)、2,2−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,2−MDI)、2,3−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,3−MDI)、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、1−イソシアナト−3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1,4−ナフタレンジイソシアネート(1,4−NDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(1,5−NDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、または、それらの混合物からなる群より選択される。
【0016】
少なくとも1種の少なくとも部分的にキャップされた低分子イソシアネートは、部分的に封鎖されているか、または、完全に封鎖されている。ここで、封鎖剤として、モノフェノール、具体的にはフェノール、レソルシン、クレゾール、トリメチルフェノール、または、tert−ブチルフェノール、ラクタム、具体的にはε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、または、ラウリンラクタム、オキシム、具体的にはメチルエチルケトキシム(ブタノンオキシム)、メチルアミルケトキシム、または、シクロヘキサノンオキシム、容易にエノールを形成する化合物、具体的にはアセト酢酸エステル、アセチルアセトン、または、マロン酸誘導体、第一、第二または第三アルコール、グリコールエーテル、芳香族第二アミン、イミド、メルカプタン、トリアゾール、および、それらの混合物からなる群より選択される特定の化合物が用いられる。
【0017】
好ましくは、少なくとも1種の潤滑剤は、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、ケイ素を含む界面活性剤、過フルオロ界面活性剤、親水性に改変されたポリオレフィン、および、それらの混合物からなる群より選択される。
【0018】
界面活性剤は、好ましくは、石鹸、アルキルベンゼンスルホン酸塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、スルホン酸エステル、メチルスルホン酸エステル、スルホコハク酸誘導体、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキル硫酸、脂肪族アルコール硫酸塩、脂肪族アルコールエーテル硫酸塩、脂肪族アルコールポリグリコールエーテル硫酸塩、脂肪族アルコールポリグリコールエーテル、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、アルキルフェノールポリグリコールエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、エトキシ化されたソルビタン脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド、脂肪酸グルカミド、脂肪酸エトキシレート、脂肪族アミンエトキシレート、エトキシ化されたトリアシルグリセロール、両側でアルキル化されたポリエチレングリコールエーテル、アルコールエトキシレート、ノニルフェノールエトキシレート、ポリグリセロール脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、酸化アミン、アルキルジメチルアミン酸化物、アルキルポリグルコシド、サッカロースエステル、ソルビタンエステル、脂肪酸グルカミド、脂肪酸−N−メチルグルカミド、両性電解質、ベタイン、スルホベタイン、N−(アシルアミド−アルキル)ベタイン、N−アルキル−β−アミノプロピオネート、N−アルキル−β−イミノプロピオネート、長鎖第一アミン塩、第四アンモニウム塩、第四ホスホニウム塩、第三スルホニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、オキサゾリニウム塩、第四エステル(esterquat)、ポリアルキレングリコール、アルコキシル化ポリアルキレングリコール、ポリスルホン、ポリ(2−アクリル酸ヒドロキシアルキル)、ポリ(2−ヒドロキシメタクリル酸アルキル)、エチレンオキシド−プロピレンオキシドブロックコポリマー、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンオキシド樹脂、ポリプロピレンオキシド、オリゴリン酸塩、ポリリン酸塩、および、それらの混合物からなる群より選択される。
【0019】
親水性に改変されたポリオレフィンは、好ましくは、エチレンアクリル酸コポリマー、エチレンメタクリル酸コポリマー、エチレンメタクリル酸アクリル酸コポリマー、エチレンアクリル酸アクリル酸コポリマー、エチレンメタクリル酸コポリマー、エチレンアクリル酸コポリマー、エチレンマレイン酸コポリマー、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリビニルスルホン酸、メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド、酸化ポリエチレン、マレイン酸でグラフト化したエチレンコポリマー、スチレン−アクリル酸コポリマー、および、それらの混合物またはコポリマーからなる群より選択される。
【0020】
従って、親水性に改変されたポリオレフィンは、好ましくは5〜40モル%、好ましくは10〜30モル%、特に好ましくは15〜25モル%の少なくとも1種の親水性基を有する単量体を含む。
【0021】
湿潤剤として塩が用いられる場合、カチオンは、好ましくは、ナトリウムイオン、カリウムイオン、および、アンモニウムイオンからなる群より選択される。
少なくとも1種の結合剤は、その結合能力、水溶性および耐熱性によって特徴付けられる。
【0022】
結合剤は、少なくとも120℃まで、好ましくは少なくとも140℃まで、特に好ましくは少なくとも160℃までの耐熱性を有する。
結合剤を本発明に従って行われるようにして使用することによって、流動性を有する粉立ちの少ない水分散性粉末の形態での接着剤の提供を可能にする。
【0023】
少なくとも1種の結合剤は、好ましくは、ビニルアルコール−酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、ポリアクリル酸塩コポリマー、多糖類、スターチ、セルロース、グアール、トラガカント酸、デキストラン、アルギン酸塩およびそれらのカルボキシメチル誘導体、メチル誘導体、ヒドロキシエチル誘導体、ヒドロキシプロピル誘導体、カゼイン、ダイズタンパク質、ゼラチン、リグニンスルホン酸塩、および、それらの混合物からなる群より選択される。
【0024】
少なくとも1種の結合剤は、具体的には、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、ポリアクリル酸塩コポリマー、および、それらの混合物からなる群より選択される。
ポリビニルアルコールは、75〜90モル%の加水分解度、好ましくは84〜89モル%の加水分解度、具体的には86〜89モル%の加水分解度を有する。加水分解度が90モル%を超える場合、水溶性は低下する。
【0025】
ポリビニルアルコールの重合度は、100〜2,500、好ましくは250〜2,000、特に好ましくは300〜1,400、具体的には400〜1,100である。
ポリビニルアルコールの平均モル質量(重量平均)は、4,000〜100,000g/モル、好ましくは10,000〜80,000g/モル、特に好ましくは12,000〜56,000g/モル、具体的には16,000〜44,000g/モルである。
【0026】
ポリアクリル酸コポリマーの場合において、好ましくは、無水マレイン酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン、ノルボルネン誘導体および/またはオレフィンとのコポリマーである。オレフィンのなかでも、エタン、プロペン、ブテンが好ましい。
【0027】
ポリアクリル酸塩およびポリアクリル酸塩コポリマーの場合において、カチオンは、好ましくは、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、スズイオン、バリウムイオン、リチウムイオン、亜鉛イオン、および、それらの混合物からなる群より選択される。
【0028】
少なくとも1種の触媒は、好ましくは、金属ナトリウム、カリウム、セシウム、ストロンチウム、銀、カドミウム、バリウム、セリウム、ウラン、チタン、クロム、スズ、アンチモン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、鉛、カルシウムおよび/またはジルコニウムの金属化合物からなる群より選択される。特に好ましくは、少なくとも1種の触媒は、酢酸亜鉛、硫酸亜鉛、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、亜鉛アセチルアセトネート、および/または、塩化亜鉛からなる群より選択される。
【0029】
少なくとも1種の接着剤を含む添加剤は、好ましくは、
消泡剤、具体的には長鎖アルコール、高分子のグリコール、脂肪酸エトキシレート、トリアルキルメチルアミン、シリコーン、または、それらの混合物、特に好ましくはシリコーンエマルジョンの形態のシリコーン、
着色剤、具体的にはカーボンブラック、
充填剤、具体的にはケイ酸塩、および、
それらの混合物
からなる群より選択される。
【0030】
本発明によれば、これまでに述べられた接着剤の製造方法も同様に提供される。分散液の製造は、撹拌タンク中で脱イオン水および湿潤剤を供給しながら表2で列挙された成分を混合し、続いてキャップされた低分子イソシアネートの分散液を添加し、これを撹拌することによって行われる。続いて、同様に撹拌しながら残りの添加剤を添加する。その後この分散液を、ミルで、好ましくは撹拌ボールミルで望ましい粒度になるまですりつぶす。
【0031】
流動床を用いた噴霧乾燥は、窒素雰囲気中で行われ、ここで80℃〜230℃の窒素温度、好ましくは120℃〜190℃の窒素温度、特に好ましくは140℃〜180℃の窒素温度が用いられる。分散液を噴霧する圧力は、1bar〜3bar、好ましくは1.2bar〜2barである。分散液は1.5g/分〜35,000g/分の量で供給されるが、この量は、分散液のユニットサイズと固体含量とに応じて計量されることとする。固体含量が高ければ高いほど、供給量も多くなる。生成物の温度は、用いられる窒素温度と供給量とに応じて調節される。生成物の温度は、30℃〜190℃の範囲であると予想され、好ましくは50℃〜120℃の範囲である。流動床は、既存の製品の形態で供給される。それが不可能であれば、乾燥させようとする分散液の乾燥から始めて製造しなければならない。これは、低い供給速度で行われる。流動床が入手できたらすぐに、供給速度を高めながら粒子を形成する。形成された粒子は、例えばタマネギ状またはキイチゴ状の構造を示す。好ましくは、より容易に分散できるためキイチゴ状構造である。
【0032】
本発明によれば、本接着剤は、これまで説明したように、強化ゴム製品を製造するための強化用インサートを処理するために用いられる。本発明に係る接着剤は、特に強化用織物インサートに適しており、例えばポリエステル、ポリエチレン、ポリアミド、レーヨン、綿、靱皮繊維、サイザル、麻、亜麻またはココナツ繊維で製造された強化用織物インサートに適している。このようにして処理された強化用インサートは、具体的にはタイヤコード、コンベヤーベルト、Vベルト、機械的なゴム部品または複合材料を製造するために用いられる。
【0033】
このようにして得られた粉末の分散液の特性は、以下のようにして決定される:
ガラスビーカーに脱イオン水を入れ、これを磁気かきまぜ機で撹拌する。分散させようとするサンプルを添加する。1分後および10分後に外観上の分散性を判断し、0〜100で評価する(ここで、0は分散しないことを意味し、100は完全に分散されたことを意味する)。
【0034】
10分後に得られた分散液の粒度分布(d50値およびd95値)をISO13320に従いレーザー測定を用いることによって決定する。これは30秒の超音波を使用しなかった場合と使用した場合の両方で行われる。
【0035】
優れた接着作用のためには、d50値は、最大で8μm、好ましくは最大で5μm、特に好ましくは最大で2μmであると予想される。
優れた接着作用のためには、d95値は、最大で20μm、好ましくは最大で10μm、特に好ましくは最大で5μmであると予想される。
【0036】
以下の実施例を参照しながら本発明に係る主題をより詳細に説明するが、前記主題はここで示される特定の実施態様に限定されないこととする。
【実施例】
【0037】
表1は、実施例および比較例で用いられる材料を示す。
【0038】
【表1】

【0039】
窒素雰囲気中で、DMRプロツェステクノロジー社(DMR Prozesstechnologie;ドレスデン,ドイツ)製のWPF−Miniタイプの流動床実験ユニットで分散液の流動床を用いた噴霧乾燥を行った。ここで以下の設定を用いた:
窒素温度:160℃
窒素流量:15〜18m/時
噴霧圧力:1.5bar
分散液の供給速度:1.5〜7.5g/分
試験期間:2.5時間。
【0040】
1.5時間の第一のフェーズで流動床を構築した。続いて供給速度を増加させながら分散液を噴霧し、粒子を構築した。試験中、流動床中の生成物の温度を55〜62℃に設定した。キイチゴ状構造を有する粒子が形成された。
粒度:200〜350μm
残留した水分:0.9%。
【0041】
実施例1および2
表2に、本発明に係る2種の接着剤(実施例1および2)の組成を示す。
【0042】
【表2】

【0043】
粒度のd50値またはd95値は、実施例1の分散液を用いた場合、超音波なしで1.0または2.1μmであり、超音波ありで1.0または2.0μmであった。
粒度のd50値またはd95値は、実施例2の分散液を用いた場合、超音波なしで1.0または2.0μmであり、超音波ありで0.8または1.8μmであった。
【0044】
比較例3
表3に、DE19913042A1と類似した比較例の組成を示す。
【0045】
【表3】

【0046】
50における分散液の粒度は0.9であり、d95における分散液の粒度は2.3μmであった。
このようにして得られた生成物の分散液の特性を以下の手順に従って試験した:
100mlのガラスビーカー中に48.25gの脱イオン水を入れた。磁気かきまぜ機で600rpmの速度で撹拌した。分散しようとするサンプル1.75gを添加した。1分および10分後、分散性を評価した。10分撹拌した後、粒度分布(d50値およびd95値)をサイラス(Cilas)1064で測定した。
【0047】
表4に、実施例1および2ならびに比較例3の乾燥物質を用いた分散試験の結果をまとめた。
【0048】
【表4】

【0049】
実施例1および2からの乾燥物質は、95〜99の評価、すなわち優れた分散液であることが示された。
10分後の分散液の粒度の場合において、1.2または1.1μmのd50値(超音波なし、または、超音波あり)を有する実施例1からの乾燥物質はここでも、ほぼ元の分散液の粒度1.0μm(超音波なし、または、超音波あり)に達した。平均粒度4.5または2.8(超音波なし、または、超音波あり)のd95値において、元の分散液からの偏差は実際にはそれよりも大きいが、それでもなお極めて容易に加工できる。
【0050】
分散試験において、実施例2からの乾燥物質は、あらゆる点で実施例1からの乾燥物質よりもかなり優れた値を示した。
比較例3において、2または5の分散性を示したことから、DE11913042A1に係る分散液から製造された乾燥物質は、実際の適用に十分な分散性を有さないことがわかる。従って、10分後の分散液の粒度測定は省略した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化用織物インサートのための、粉末状接着剤であって、該接着剤は水分散性であり、そして
(A)35〜95質量%の少なくとも1種の少なくとも部分的にキャップされた低分子イソシアネート、
(B)0.1〜10質量%の少なくとも1種の潤滑剤、
(C)5〜40質量%の少なくとも1種の結合剤、
(D)0〜5質量%の少なくとも1種の触媒、および、
(E)0〜10質量%の少なくとも1種の添加剤、
からなり、ここで成分(A)〜(E)の比率が100質量%になるようにそれぞれが添加される、上記接着剤。
【請求項2】
前記接着剤が、
(A)52〜90質量%、特に61〜84質量%の少なくとも1種の少なくとも部分的にキャップされた低分子イソシアネート、
(B)0.5〜8質量%、特に1〜6質量%の少なくとも1種の潤滑剤、
(C)10〜30質量%、特に15〜25質量%の少なくとも1種の結合剤、
(D)0.1〜5質量%、特に0.5〜4質量%の少なくとも1種の触媒、および、
(E)0.1〜5質量%、特に0.2〜4質量%の少なくとも1種の添加剤、
からなり、ここで成分(A)〜(E)の比率が100質量%になるようにそれぞれが添加されることを特徴とする、請求項1に記載の接着剤。
【請求項3】
前記分散性粉末が、50〜5,000μmの範囲の平均粒径、好ましくは100〜800μmの範囲の平均粒径、特に好ましくは200〜500μmの範囲の平均粒径を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の接着剤。
【請求項4】
キャップされる前記少なくとも1種の低分子イソシアネートが、500g/モル未満またはそれに等しいモル質量、好ましくは90〜400g/モルの範囲のモル質量、特に好ましくは150〜300g/モルの範囲のモル質量を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の接着剤。
【請求項5】
キャップされる前記少なくとも1種の低分子イソシアネートが、芳香族、脂肪族または脂環式イソシアネートであり、具体的には、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4−MDI)、2,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4−MDI)、3,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(3,4−MDI)、2,2−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,2−MDI)、2,3−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,3−MDI)、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、1−イソシアナト−3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1,4−ナフタレンジイソシアネート(1,4−NDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(1,5−NDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、または、それらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の接着剤。
【請求項6】
前記少なくとも1種の少なくとも部分的にキャップされた低分子イソシアネートが、ブロッキング剤で部分的に封鎖されているか、または、完全に封鎖されており、ここで該ブロッキング剤は、具体的には、
モノフェノール、具体的にはフェノール、レソルシン、クレゾール、トリメチルフェノール、または、tert−ブチルフェノール、
ラクタム、具体的にはε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、または、ラウリンラクタム、
オキシム、具体的にはメチルエチルケトキシム(ブタノンオキシム)、メチルアミルケトキシム、または、シクロヘキサノンオキシム、
容易にエノールを形成する化合物、具体的にはアセト酢酸エステル、アセチルアセトン、または、マロン酸酸誘導体、
第一、第二または第三アルコール、
グリコールエーテル、芳香族第二アミン、イミド、メルカプタン、トリアゾール、および、それらの混合物、
からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の接着剤。
【請求項7】
前記少なくとも1種の潤滑剤が、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、ケイ素を含む界面活性剤、過フルオロ界面活性剤、親水性に改変されたポリオレフィン、および、それらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の接着剤、。
【請求項8】
前記界面活性剤が、石鹸、アルキルベンゼンスルホン酸塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、メチルエステルスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、脂肪族アルコール硫酸塩、脂肪族アルコールエーテル硫酸塩、脂肪族アルコールポリグリコールエーテル硫酸塩、脂肪族アルコールポリグリコールエーテル、アルキルフェノールポリグリコールエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、エトキシ化されたソルビタン脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド、脂肪酸グルカミド、脂肪酸エトキシレート、脂肪族アミンエトキシレート、エトキシ化されたトリアシルグリセロール、両側でアルキル化されたポリエチレングリコールエーテル、アルコールエトキシレート、ノニルフェノールエトキシレート、ポリグリセロール脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、酸化アミン、アルキルジメチル酸化アミン、アルキルポリグルコシド、サッカロースエステル、ソルビタンエステル、脂肪酸グルカミド、脂肪酸−N−メチルグルカミド、両性電解質、ベタイン、スルホベタイン、N−(アシルアミド−アルキル)ベタイン、N−アルキル−β−アミノプロピオネート、N−アルキル−β−イミノプロピオネート、長鎖第一アミン塩、第四アンモニウム塩、第四ホスホニウム塩、第三スルホニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、オキサゾリニウム塩、第四エステル、ポリアルキレングリコール、アルコキシル化ポリアルキレングリコール、ポリスルホン、ポリ(2−アクリル酸ヒドロキシアルキル)、ポリ(2−ヒドロキシメタクリル酸アルキル)、エチレンオキシド−プロピレンオキシドブロックコポリマー、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンオキシド樹脂、ポリプロピレンオキシド、オリゴリン酸塩、ポリリン酸塩、および、それらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項7に記載の接着剤。
【請求項9】
前記少なくとも1種の結合剤が、ビニルアルコール−酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、ポリアクリル酸塩コポリマー、多糖類、スターチ、セルロース、グアール、トラガカント酸、デキストラン、アルギン酸塩およびそれらのカルボキシメチル−、メチル−、ヒドロキシエチル−、ヒドロキシプロピル誘導体、カゼイン、ダイズタンパク質、ゼラチン、リグニンスルホン酸塩、および、それらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の接着剤。
【請求項10】
前記少なくとも1種の結合剤が、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、ポリアクリル酸塩コポリマー、および、それらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の接着剤。
【請求項11】
前記少なくとも1種の触媒が、金属ナトリウム、カリウム、セシウム、ストロンチウム、銀、カドミウム、バリウム、セリウム、ウラン、チタン、クロム、スズ、アンチモン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、鉛、カルシウムおよび/またはジルコニウムの金属化合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の接着剤。
【請求項12】
前記少なくとも1種の添加剤が、好ましくは、
消泡剤、具体的には長鎖アルコール、高分子のグリコール、脂肪酸エトキシレート、トリアルキルメチルアミン、シリコーン、または、それらの混合物、特に好ましくはシリコーンエマルジョンの形態のシリコーン、
着色剤、具体的にはカーボンブラック、
充填剤、具体的にはケイ酸塩、および、
それらの混合物、
からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の接着剤。
【請求項13】
強化用織物インサートのための、粉末状の接着剤の製造方法であって、該接着剤が水分散性であり、そして該方法は以下の工程:
1.(A)35〜95質量%の少なくとも1種の低分子イソシアネート、(B)0.1〜10質量%の少なくとも1種の潤滑剤、(C)5〜40質量%の少なくとも1種の結合剤、(D)0〜5質量%の少なくとも1種の触媒、および、(E)0〜10質量%の少なくとも1種の添加剤で作製された分散液(ここで成分(A)〜(E)の比率が100質量%になるようにそれぞれが添加される)を撹拌しながら製造する工程、
2. 該分散液をすりつぶす工程、および、
3. 該分散液を乾燥させる工程、
を含む、上記方法。
【請求項14】
強化ゴム製品を製造するための強化用インサートを処理するための、請求項1〜13のいずれか一項に記載の接着剤の使用。

【公開番号】特開2012−102328(P2012−102328A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−243095(P2011−243095)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(508375468)エムス−パテント・アクチェンゲゼルシャフト (9)
【Fターム(参考)】