説明

強度解析装置、方法及びプログラム

【課題】多様な固定治具を考慮しつつ、正確かつ高速に物品の強度を解析する。
【解決手段】サスペンションメンバの小規模モデル52を読み取り(300)、負荷加重の付与位置P、締付位置、サスペンションメンバと固定治具との剛性同定点Aを設定し(302,304)、サスペンションメンバに負荷加重付与したときの反力Fを求め(306)、実際の変位量Dを読み取り(314)、バネ定数Kの仮想バネが固定治具に代替できるまで処理を繰り返し(316〜322)、固定治具についてバネ定数Kを有する仮想バネに設定する(324,326)。これにより、解析精度を確保しつつ短時間で詳細な解析が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品の強度を解析する強度解析装置、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
代表的な移動体としての車両には各種物品が具備されており、それらの物品には各種試験が実施される。例えば、部品の強度を把握するために、疲労強度試験装置などを用いて強度試験が実施される。近年、部品開発の効率向上と、開発コスト低減のために、コンピュータによる模擬的な試験が実施されている。例えば、部品の強度試験では、有限要素法(Finite Element Method, FEM)によるCAE(Computer Aided Engineering)解析による性能評価方法が用いられている。
【0003】
特許文献1には、振動源を基体上に弾性支持する弾性支持体の剛性を同定する装置であって弾性支持体をバネ剛性でモデル化し振動源における力の釣り合い式から理論的剛性値を算出し剛性を同定する弾性支持体の剛性同定装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−317394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、実際の車両の部品を試験する場合においては、車両の部品を単体で固定治具に固定して試験する。従って、CAE解析により強度試験を実施する場合には、車両の部品のみならず、その部品を固定する固定治具についても、有限要素法による数値計算のための要素分割が必要になる。
【0006】
一方、CAE解析では、正確かつ高速に解析結果を得ることが望まれている。このために、微小な要素で分割する詳細メッシュによるモデル化をすることが行われている。しかし、固定治具の仕様や形状等が、多種多様であり、実施する試験毎に治具を変更することも頻繁にあるため、固定治具の詳細メッシュによるモデル化すなわち固定治具のメッシュモデル作成は多大な時間を要していた。
【0007】
また、固定治具を詳細メッシュによるモデル化することにより、部品と固定治具の組み合わせによる全体のモデル規模が大きくなり、計算コストが膨大なものになっていた。
【0008】
本発明は上記事実を考慮し、多様な固定治具を考慮しつつ、正確かつ高速に物品の強度を解析する強度解析装置、方法及びプログラムを得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明の強度解析装置は、物品の強度を模擬的に解析するために、物品を、複数の要素に分割する有限要素法を用いた数値計算モデルに対応させて計算する解析モデルを大規模モデルとし、該大規模モデルの要素より大きい要素で前記物品を分割した解析モデルを小規模モデルとする各解析モデルを設定する設定手段と、前記物品を所定負荷により振動させた場合における該物品の変位を予め計測した変位量を読み取る読取手段と、前記物品の固定冶具を仮想バネとすると共に、前記物品の解析モデルを小規模モデルとし、前記小規模モデルを振動させ、固定状態とした仮想バネで発生する反力を求め、求めた反力と前記読み取った変位量とに基づいて前記仮想バネのバネ定数を同定する同定手段と、前記同定したバネ定数の仮想バネを固定治具とし、前記大規模モデルを有限要素法を用いて解析することにより前記物品の強度解析を行う解析手段と、を有する。
【0010】
本発明の強度解析装置では、設定手段によって、物品について大規模モデルとする解析モデルと、大規模モデルの要素より大きい要素で物品を分割した小規模モデルとする解析モデルとが設定される。同定手段は、物品の固定冶具を仮想バネとして物品の小規模モデルを振動させ、仮想バネの反力と予め計測した実際の変位量とから仮想バネのバネ定数を同定する。解析手段は、同定したバネ定数の仮想バネを固定治具とし、大規模モデルを有限要素法を用いて解析することにより物品の強度解析を行う。
【0011】
従って、本発明によれば、複雑な形状の対象部品について、剛性の影響を模擬するための大きい要素でメッシュ分割した小規模モデルを用いて、その対象部品専用の固定治具に代えて仮想バネを同定するため、短時間で同定処理を終了することができる。また、仮想バネにより固定治具剛性による影響を模擬するので、固定治具本体の詳細なモデル化は不要のため、モデル作成工数を削減できる。さらに、固定治具を仮想バネとするので、対象部品を詳細に解析する場合、対象部品の詳細なモデル(大規模モデル)と仮想バネによる固定治具によって解析が可能となり、解析精度を確保しつつ短時間で詳細解析が可能になる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の強度解析装置において、前記同定手段は、反力を変位量で除算してバネ定数を求めることにより前記仮想バネのバネ定数を同定することを特徴とする。
【0013】
同定手段は、反力を実測した変位量で除算してバネ定数を求めるので、同定する仮想バネは実際の固定治具の剛性が反映されたものになり、解析精度が向上する。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の強度解析装置において、前記同定手段は、同定したバネ定数による仮想バネを固定治具とし、前記小規模モデルを振動させたときの変位量を求め、該変位量が許容範囲に収まるまで前記バネ定数の同定を繰り返すことを特徴とする。
【0015】
また、同定手段では、変位量が許容範囲に収まるまでバネ定数の同定を繰り返すことによって、さらに解析精度が向上する。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の強度解析装置において、前記許容範囲は、予め計測した変位量と演算結果の変位量との比率で定めることを特徴とする。
【0017】
バネ定数を同定する場合、予め計測した変位量と演算結果の変位量との比率で定めることにより、バネ定数を同定する演算について無限ループや発散させることがない。このため、短時間で同定処理を完了できる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の強度解析装置において、前記物品は、移動体へ固定する固定部、及び前記物品へ負荷を付与する付与部を有し、前記同定手段は、前記付与部に負荷を付与して前記小規模モデルを振動させ、前記固定部における反力を求めることを特徴とする。
【0019】
本発明の強度解析装置で解析対象とする物品は、移動体へ固定する物品が好ましいものであり、この場合、移動体へ固定する固定部、及び物品へ負荷を付与する付与部を有するものである。そして、同定手段は、付与部に負荷を付与して小規模モデルを振動させ、固定部における反力を求めることによって、実際の物品に合致した解析のための仮想バネの同定が可能となる。
【0020】
請求項6に記載の発明の強度解析方法は、物品の強度を模擬的に解析するために、物品を、複数の要素に分割する有限要素法を用いた数値計算モデルに対応させて計算する解析モデルを大規模モデルとし、該大規模モデルの要素より大きい要素で前記物品を分割した解析モデルを小規模モデルとする各解析モデルを設定する設定工程と、前記物品を所定負荷により振動させた場合における該物品の変位を予め計測した変位量を読み取る読取工程と、前記物品の固定冶具を仮想バネとすると共に、前記物品の解析モデルを小規模モデルとし、前記小規模モデルを振動させ、固定状態とした仮想バネで発生する反力を求め、求めた反力と前記読み取った変位量とに基づいて前記仮想バネのバネ定数を同定する同定工程と、前記同定したバネ定数の仮想バネを固定治具とし、前記大規模モデルを有限要素法を用いて解析することにより前記物品の強度解析を行う解析工程と、を有する。
【0021】
本発明の強度解析方法によれば、短時間で同定工程を終了でき、演算負荷を軽減できる。また、固定治具本体の詳細なモデル化は不要のため、モデル作成工数を削減できる。さらに、対象部品の詳細なモデルと仮想バネによる固定治具によって解析が可能となり、解析精度を確保しつつ短時間で詳細解析が可能になる。
【0022】
請求項7に記載の発明は、コンピュータによって物品の強度を解析する強度解析プログラムであって、物品の強度を模擬的に解析するために、物品を、複数の要素に分割する有限要素法を用いた数値計算モデルに対応させて計算する解析モデルを大規模モデルとし、該大規模モデルの要素より大きい要素で前記物品を分割した解析モデルを小規模モデルとする各解析モデルを設定する設定ステップと、前記物品を所定負荷により振動させた場合における該物品の変位を予め計測した変位量を読み取る読取ステップと、前記物品の固定冶具を仮想バネとすると共に、前記物品の解析モデルを小規模モデルとし、前記小規模モデルを振動させ、固定状態とした仮想バネで発生する反力を求め、求めた反力と前記読み取った変位量とに基づいて前記仮想バネのバネ定数を同定する同定ステップと、前記同定したバネ定数の仮想バネを固定治具とし、前記大規模モデルを有限要素法を用いて解析することにより前記物品の強度解析を行う解析ステップと、の各ステップをコンピュータに実行させる。
【0023】
本発明の強度解析プログラムによれば、コンピュータにおいて短時間で同定工程を終了させ、演算負荷を軽減させることができる。また、固定治具本体の詳細なモデル化は不要のため、コンピュータを用いたモデル作成工数を削減させることができる。さらに、対象部品の詳細なモデルと仮想バネによる固定治具によって解析が可能となり、コンピュータにおいて解析精度を確保させつつ短時間で詳細解析を実行させることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、複雑な形状の対象部品について、小規模モデルを用いて固定治具剛性の影響を模擬して仮想バネを設定するため、解析に当たって固定治具の詳細モデルの作成工数を削減できる。
【0025】
また、物品の変位を予め計測した変位量を用いて固定治具として仮想バネを設定するので、解析精度を確保しつつ短時間で詳細解析が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態にかかる強度解析装置における固定治具剛性同定処理の流れを示すフローチャートである。
【図2】本発明の実施形態にかかる強度解析装置の概略を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態にかかる強度解析装置において実行される疲労強度解析処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態にかかる強度解析装置において実行される疲労強度解析処理の説明図であり、(A)は対象部品と固定治具の模式図、(B)は小規模メッシュモデルのイメージ図、(C)は大規模メッシュモデルのイメージ図である。
【図5】本発明の実施形態にかかる強度解析装置で用いる変位データベースの作成処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態にかかる強度解析装置において解析する部品の一例であるサスペンションメンバの概略構造を示す斜視図である。
【図7】本発明の実施形態にかかる強度解析装置において実行される疲労強度解析処理の説明図であり、(A)は仮想バネと大規模メッシュモデルから解析するときのイメージ図、(B)は実測値と解析結果値とを示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
<強度解析装置>
図2に示すように、本実施の形態の強度解析装置10は、CPU14、RAM16,ROM18を含むコンピュータ本体12を備えている。コンピュータ本体12は、入出力インタフェース20を含んでおり、入出力インタフェース20は、CPU14、RAM16、ROM18とデータやコマンドを授受可能にバス22を介して接続されている。
【0028】
入出力インタフェース20には、入出力装置26として、ポインティングデバイスであるマウスやキーボードが接続されており、また、データやコマンド、その他の各種画像を表示するためのディスプレイ24が接続されている。また、入出力インタフェース20には、同定部30,CAE解析部32、及び記録装置34が接続されている。
【0029】
同定部30は、固定治具剛性同定処理を担当する処理部であり、強度解析の対象部品を固定する固定治具の剛性を同定する処理部である。この同定部30では、強度解析の対象部品について強度解析時の数値計算用に詳細メッシュで分割した解析モデル(大規模メッシュモデル:以下、大規模モデルという。)を用いるのではなく、粗いメッシュで分割した解析モデル(小規模メッシュモデル:以下、小規模モデルという。)を用いて同定処理を行う。
【0030】
また、同定部30では、強度解析するときに固定治具を数値計算用にメッシュモデルによりモデル化するのに代えて、固定治具を仮想バネに置き換えてその仮想バネのバネ定数を同定することによって、固定治具の剛性を同定する。この同定部30は、上述のハードウェア資源と後述するソフトウェア資源との複合的な動作により機能する装置である。すなわち、同定部30は詳細を後述する処理のフローチャートを実行させるためのプログラムを記憶したメモリを具備している。従って、ハードウェア資源とソフトウェア資源との構成及び複合的な処理によって、同定部30を含む強度解析装置10は、固定治具剛性同定装置として機能することになる。
【0031】
CAE解析部32は、CAE解析処理を担当する処理部であり、対象部品について強度解析を含むCAE解析する処理部である。このCAE解析部32では、対象部品について大規模モデルを用いて解析する。また、固定治具として、同定部30で同定したバネ定数の仮想バネを用いて解析する。このCAE解析部32は、上述のハードウェア資源と後述するソフトウェア資源との複合的な動作により機能する装置である。すなわち、CAE解析部32は詳細を後述する処理のフローチャートを実行させるためのプログラムを記憶したメモリを具備している。従って、ハードウェア資源とソフトウェア資源との構成及び複合的な動作によって、CAE解析部32を含む強度解析装置10は、解析装置として機能することになる。
【0032】
記録装置34は、解析モデルを格納した記録領域36、及び変位量を格納した記録領域38を含んでいる。記録装置34の記録領域36には、強度解析の複数の対象部品について強度解析時の数値計算用に詳細メッシュで分割した解析モデル(大規模モデル)と大規模モデルより粗いメッシュで分割した解析モデル(小規模モデル)の解析モデル対が格納されている。これら解析モデルは、各対象部品について節点や辺などから構成される大規模モデル及び小規模モデルを予め求めておき、その節点や辺などの数値計算データが格納される。
【0033】
また、記録装置34の記録領域38には、対象部品を固定する固定治具毎に、対象部品に負荷加重を付与したときの変位量の実測値が格納されている。この実測値は、例えば対象部品について部品強度のベンチ試験等を行う疲労強度測定装置で計測されるものである。計測は、対象部品を固定治具に固定した状態で、対象部品と固定治具の固定位置(取付位置)について、対象部品に負荷加重を付与したときの変位量を計測することで行われる。すなわち、対象部品及び対象部品を固定する固定治具毎に、負荷加重値と変位量のデータセットが計測値として格納される。なお、負荷加重は、対象部品が振動するように付与してもよく、線形的に付与してもよい。また、対象部品の固定治具への固定位置(締付位置)及び対象部品へ付与する負荷加重の付与位置は、対象部品の形状や解析する性能等により変化するので、対象部品と固定治具との組み合わせによって予め設定されている。
【0034】
なお、記録装置34の記録領域38は、記録領域40を備えている。この記録領域40は、同定部30において同定するときに仮想バネ62のバネ定数について適否を判定するための許容範囲を表す判定データが格納されている。この判定データの一例は、実際の変位量と計算による変位量との比率に対する範囲を採用でき、実際の変位量Dについて計算による変位量dが前後10パーセント内(0.9<d/D<1.10)を示すデータがある。
【0035】
図6は、対象部品の一例としてサスペンションメンバ51を示したものである。例えば、このサスペンションメンバ51について、大規模モデルとして強度解析の数値計算用にメッシュモデルを得るためには、約1200万個の要素数を超える多数の要素分割が必要である。一方、詳細は後述するが、小規模モデルは、剛性を再現できれば良いため、粗いメッシュ分割でよく、数万個程度の要素数による要素分割でよい。
【0036】
また、サスペンションメンバ51は、固定治具にネジ等による締め付けによって固定するために、4箇所の締付位置56(図6では、56A〜56D)を有している。また、サスペンションメンバ51は、対象部品に負荷加重を付与するための付与位置58を有している。この付与位置58は一例であり、サスペンションメンバ51の任意の位置に設定することができる。このサスペンションメンバ51については、節点や辺などの数値計算データから構成される大規模モデル及び小規模モデルの解析モデルが、記録領域36に格納される。また、例えば部品強度のベンチ試験等を行う強度試験装置で計測された、サスペンションメンバ51の付与位置58に負荷加重を付与したときの4箇所の締付位置56(56A〜56D)の変位量の実測値と負荷加重値のデータセットが記録領域38に格納される。また、許容範囲を表す判定データとして実際の変位量Dと計算による変位量dとの比率範囲(0.9<d/D<1.10)が、記録領域38に格納される。
【0037】
なお、入出力インタフェース20には、記録媒体としての磁気円盤が挿抜可能な記録装置や記録領域を備えた電子回路を具備する補助記憶装置が接続されるようにしてもよい。なお、後述する処理ルーチン等のプログラムは、記録装置や補助記憶装置を用いて磁気円盤や記録領域に対して読み書き可能である。従って、後述する処理ルーチン等のプログラムは、ROM18に記憶することなく、予め磁気円盤や記憶領域に記録しておき、記録装置や補助記憶装置を介して、予め記録された処理プログラムを実行してもよい。また、コンピュータ本体12には、ハードディスク装置等の大容量記憶装置(図示省略)を接続し、プログラムを大容量記憶装置(図示省略)へ格納(インストール)して実行するようにしてもよい。また、記録媒体としては、CD−ROM,MD,MO,DVD等のディスク、DAT等の磁気テープ、そして記録領域としてはフラッシュメモリ(flash memory)やSSD(Solid State Drive)などの補助記憶装置があり、これらを用いるときには、CD−ROM装置、MD装置、MO装置、DVD装置、DAT装置、補助記憶装置等を用いればよい。
【0038】
<強度解析処理>
図3には強度解析処理の流れを示し、図4には対象部品50と固定治具60についての強度解析処理過程における模式図を示した。これら図3及び図4を参照して、本実施の形態の強度解析装置10の作動を説明する。なお、本実施形態では、強度解析の一例として疲労強度解析処理を行う場合を説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、対象部品を治具に固定した状態を計算機上で再現して演算する、メッシュモデルを用いた解析処理や性能評価処理に適用可能である。
【0039】
強度解析装置10の作動の概要は、次の4つのプロセスからなる。第1プロセスでは、解析モデルを作成する。すなわち、強度解析の対象となる部品(対象部品)の解析モデル(大規模モデルと小規模モデル)を作成し、記録装置34の記録領域36に格納する。第2プロセスでは、変位データベース(変位DB)を作成する。すなわち、実際の対象部品50(サスペンションメンバ51)を図示しない疲労強度測定装置に固定治具と共に固定し(締め付け)、締め付け位置の変位量を測定する。第3プロセスでは、固定治具剛性を同定する。すなわち、第1プロセスで作成した小規模モデル52を用いて仮想バネ62のバネ定数を同定する。第4プロセスでは、対象部品の疲労強度CAE解析する。すなわち、第1プロセスで作成した大規模モデル54に対して第3プロセスで同定したバネ定数による仮想バネ62を固定治具としてCAE解析を実行する。
【0040】
図3に示すように、詳細には、本実施の形態の強度解析装置10では、対象部品50(例えばサスペンションメンバ51)について強度解析を可能とするため、解析処理ルーチンが実行される。ここで、対象部品50は固定治具60に締付点55で固定されている場合を想定する(図4(A)参照)。
【0041】
ステップ100では、大規模モデルと小規模モデルの解析モデルを作成する。詳細には、このステップ100では、解析の対象となる対象部品例えばサスペンションメンバの設計案(形状、構造、材料など)を定める。なお、この設定は設計案に限定されるものではなく、現存する部品を解析する場合を含む。すなわち、現存する対象部品そのものを対象のモデルとして設定してもよい。そして、設計案を数値解析上のモデルに落とし込むための対象部品の解析モデルを作成する。この解析モデルの作成は、用いる数値解析手法により若干異なる。本実施の形態では数値解析手法として有限要素法(FEM)を用いている。従って、作成する解析モデルは、有限要素法(FEM)に対応した要素分割、例えば、メッシュ分割によって3角形等の任意の形状の複数の要素に分割され、部品を数値的・解析的手法に基づいて作成されたコンピュータプログラムヘのインプットデータ形式に数値化したものをいう。この要素分割とは対象部品を小さな幾つかの(有限の)小部分に分割することをいう。この小部分ごとに計算を行い全ての小部分について計算した後、全部の小部分を足し合わせることにより全体の応答を得ることができる。この解析モデルの作成処理は、メッシュ分割によって細かい複数の要素に分割された大規模モデル54(図4(C)参照)と、粗い複数の要素に分割された小規模モデル52(図4(B)参照)とを作成する。
【0042】
ステップ100では、対象部品50の解析モデルとしてを作成する処理を説明するが、解析モデルは、予め他の装置で作成し、これを記録領域36に記憶させておくようにしても良い。
【0043】
なお、実施形態では、解析モデルを作成する処理を説明するが、解析モデルは、予め他の装置で作成し、これを記録領域36に記憶させておくようにしても良い。
【0044】
次のステップ110では、対象部品の固定治具についての変位データベース(変位DB)を作成する。このステップ110では、実際の対象部品50(サスペンションメンバ51)を図示しない疲労強度測定装置に固定治具と共に固定し(締め付け)、締め付け位置の変位量を測定し、その変位量と負荷加重の組み合わせからデータセットを得て、記録領域38に格納する。
【0045】
なお、実施形態では、解析モデルを作成する処理を説明するが、データセットは、予め他の装置で作成し、これを記録領域38に記憶させておくようにしても良い。
【0046】
次のステップ120では、詳細は後述するが(図1参照)、対象部品50(サスペンションメンバ51)の固定治具剛性を同定する。すなわち、ステップ100で作成した解析モデルとして小規模モデル52を用い、固定治具60を仮想バネ62としたときにおける仮想バネ62のバネ定数を同定することにより、固定治具剛性を同定する(図4(B)参照)。
【0047】
次のステップ130では、対象部品の疲労強度CAE解析する。すなわち、ステップ100で作成した大規模モデル54に対してステップ120で同定したバネ定数による仮想バネ62を固定治具としてCAE解析を実行する(図4(C)参照)。
【0048】
以上の処理によって、固定治具60を仮想バネ62とし、仮想バネ62のバネ定数Kを同定し、大規模モデル54に対してバネ定数Kによる仮想バネ62を固定治具として固定した場合について、疲労強度解析処理を行うことができる。これにより、固定治具をメッシュ分割してモデル化することなく、仮想バネによる単純な構成で解析することができ、計算負荷を軽減できる。また、固定治具のモデル化が不要にため、固定治具のモデルを解析するために要した時間が不要となり、疲労強度解析処理に要する処理時間を短縮することができる。
【0049】
上記ステップ100は、設定手段により設定するための解析モデルを作成する処理に対応し、ステップ110は、読取手段により読み取るための変位量を作成する処理に相当する。また、ステップ120は、同定手段の同定処理に対応し、ステップ130は、解析手段の強度解析処理に対応する。
【0050】
<変位データベース>
図5には、図3のステップ110の詳細として、強度解析装置で用いる変位データベース(変位DB)の作成処理の流れの一例を示した。この処理は、強度解析装置10で実施してもよく、他の装置で実施してもよい。
【0051】
ステップ200では、疲労強度測定装置を用いて、対象部品50(実際の対象部品、例えばサスペンションメンバ51)の疲労強度試験(負荷加重付与)を開始する。次のステップ210では、負荷加重を付与したときの対象部品と固定治具の締付位置の変位を測定する。次のステップ220では、負荷加重値と締付位置毎の変位値を記録(データベース保存)する。
【0052】
図6の例では、サスペンションメンバ51の4箇所の締付位置56(締付位置56A,56B,56C,56D)を、図示しない疲労強度測定装置の固定治具に締め付けて固定し、付与位置58に負荷加重を付与する。この測定時の負荷加重値と締付位置毎(締付位置56A,56B,56C,56D)の変位値を記録(データベース保存)する。これら締付位置(締付位置56A〜56D)毎に、負荷加重値との変位値からなるデータセットを、計測値として記録領域38に格納する。
【0053】
なお、このとき、許容範囲を表す判定データとして実際の変位量Dと計算による変位量dとの比率範囲(0.9<d/D<1.10)を、記録領域38に格納する。この許容範囲を表す判定データは、複数の同種の対象部品50を測定した計測値の平均値や、設計上許容できる範囲として予め定めた値を採用することができる。
【0054】
<固定治具剛性同定処理>
図1には、図3のステップ120の詳細として、本発明にかかる固定治具剛性同定処理の流れの一例を示した。この処理は、強度解析装置10で実施してもよく、独立した装置で実施してもよい。本実施形態では、同定部30において実行される。
【0055】
ステップ300では、固定治具剛性同定のための解析モデルを記録領域36から読み取る。ここでは、剛性を求めるのみであるため、剛性を求めるに十分な小規模モデル52を読み取る。次のステップ302では、解析モデルに対する、負荷加重の付与位置P、締付位置を設定する。ここでは、対象部品50としてサスペンションメンバ51を用いるので、固定治具にネジ等による締め付けによって固定する、4箇所の締付位置56A〜56D、及び負荷加重を付与するための付与位置58に対応する小規模モデル52上の位置が設定される(図6参照)。
【0056】
次に、ステップ304において剛性同定点Aを設定する。剛性同定点Aは、数値計算上の固定治具の剛性を同定するための対象部品50(サスペンションメンバ51)と固定治具60との締付点55である(図4(A)参照)。すなわち、4箇所の締付位置56A〜56Dである。なお、本実施形態では、締付位置毎に固定治具の剛性を同定する場合を説明する。従って、このステップ304では、4箇所の締付位置56A〜56Dのうち何れか1箇所の締付位置56が剛性同定点Aとして設定される。この剛性同定点Aの設定は、入出力装置26による入力によって設定してもよく、予め定めた優先順位による順序で設定したり、無作為(ランダム)に設定したりしてもよい。以下の説明では、締付位置56A,56B,56C,56Dの順に設定される場合を説明する。
【0057】
なお、ここでは、締付位置毎に固定治具の剛性を同定(仮想バネのバネ定数を同定)する場合を説明するが、以下の説明において全締付位置を各ステップ内で処理するようにしても良い。つまり、各ステップにおいて締付位置の各々を求める処理に代えてもよい。
【0058】
また、剛性同定点Aは、締付位置56が領域や複数点を有する場合、締付位置56の複数点の何れか、領域内の何れかに設定することができる。例えば、サスペンションメンバ51のフロント側一方の締付位置56Aは、ネジ等を通すため、貫通孔56AHを有しており、その周囲に接触部56ATを有している(図6参照)。従って、接触部56ATが固定治具と接触することになるが、ここでは、接触部56ATの面とその面に連続する貫通孔56AHの面領域からなる締付領域内の1点を剛性同定点Aに設定する。例えば、接触部56ATの内周部分の1点、外周部分の1点、締付領域の重心点、または貫通孔56AHの面領域の中心点を設定する。すなわち、領域からなる締付位置56Aを1点として捉え、その1点を剛性同定点Aとする。また、負荷加重を付与する付与位置P(付与位置58)も同様に設定する。
【0059】
次のステップ306では、反力Fを算出する。このステップ306は、ステップ308〜312の3つの処理が実行される。まず、ステップ308では、解析モデル(小規模モデル52)の全締付位置は固定(完全拘束)に設定する。次のステップ310では、付与位置Pに所定の負荷加重付与を行う。このことは、サスペンションメンバ51の小規模モデル52を固定治具に固定した場合における疲労強度測定を模擬することになる。次に、ステップ312において、剛性同定点Aにおける反力Fを算出する。ここでは、サスペンションメンバ51を粗くメッシュ分割した要素ごとに計算を行い全ての小部分について計算した後、全部の小部分を足し合わせることにより全体の応答を得る。従って、付与位置Pに所定の負荷加重を付与したときの要素毎の計算を行い全体の応答を得たのちに、反力Fを求める。
【0060】
反力Fが求まると、ステップ314へ進み、記録領域38に格納された変位データベース(変位DB)から締付位置56Aについての負荷加重値と実際の変位量Dのデータセットを読み取る。すなわち、強度試験装置で計測された、サスペンションメンバ51の付与位置58に負荷加重を付与したときの締付位置56A〜56Dの変位量の実測値と負荷加重値のデータセットを読み取る。
【0061】
次のステップ316では、求めた反力Fと剛性同定点Aの実際の変位量Dから、バネ定数Kを算出する。ここでは一例としてフックの法則を用い、反力Fを変位量Dで除算した値をバネ定数Kとする(K=F/D)。なお、バネ定数Kの算出はフックの法則に限定されるものではなく、他の方法によりバネ定数Kを算出してもよい。バネ定数Kが求まると、ステップ318において、バネ定数Kを有する仮想バネ62を、締付位置56Aに対する固定治具として剛性同定点Aに取り付ける(図4(B)参照)。
【0062】
次に、ステップ320では、FEMにより剛性同定点Aの変位量dと、その反力(F)を算出する。すなわち、小規模モデル52の締付位置56A以外の締付位置は固定(完全拘束)し、ステップ310と同様に付与位置Pに負荷加重付与を行うことで、サスペンションメンバ51の小規模モデル52を固定治具に固定した場合の疲労強度測定を、再度模擬する。そして、剛性同定点Aにおける反力Fを再度算出すると共に、剛性同定点Aの変位量dを算出する。
【0063】
次のステップ322では、仮想バネ62が固定治具に代替できるか否かを判断する。この判断は、記録領域38に格納された許容範囲を表す判定データから、許容範囲内に収まっているか否かにより判別することにより行う。ここでは一例として、実際の変位量Dと計算による変位量dとの比率(d/D)を採用することができる。すなわち、ステップ322では実際の変位量Dと計算による変位量dとの比率を求めて、求めた比率が許容範囲(0.9<d/D<1.10)内に存在するか否かにより判別する。
【0064】
なお、上記ステップ322では、実際の変位量Dと計算による変位量dとの比率により、仮想バネ62が固定治具に代替できるか否かを判断しているが、この比率に限定されるものではなく、変位量dそのものの範囲であってもよいことは勿論である。また、ステップ322では、変位量のみで判断しているが、反力を考慮してもよい。反力を考慮する場合には、ステップ312で求めた反力とステップ320で求めた反力Fとの比率が許容範囲内かにより判別することを考慮してもよい。
【0065】
ステップ322で否定されると、ステップ316へ戻り、ステップ316〜320を繰り返す。この場合、反力Fをステップ312で求めたものから、直前のステップ320で求めた反力Fに対応するものに代えて再度ステップ316〜320を実行する。すなわち、ステップ312で求めた反力Fが、ステップ320で求めた反力Fより大きいときには、反力Fが小さくなるように、ステップ320で求めた反力Fから微減した反力F(=F−α)を設定する。一方、ステップ312で求めた反力Fが、ステップ320で求めた反力Fより大きいときには、反力Fが大きくなるように、ステップ320で求めた反力Fから微増した反力F(=F+α)を設定する。
【0066】
なお、上記のように、ステップ316から処理を繰り返す場合、実際の変位量Dと計算の変位量dとの比率を用いることもできる。すなわち、比率(d/D)が許容範囲を超える場合、計算の変位量dが大きいため、小さくなるように、ステップ320で求めた反力Fから微減した反力Fを設定する。一方、比率(d/D)が許容範囲未満の場合、計算の変位量dが小さいため、大きくなるように、ステップ320で求めた反力Fから微増した反力Fを設定する。
【0067】
一方、ステップ322で肯定されると、ステップ324へ進み、バネ定数Kを仮想バネ定数Kとして決定する。すなわち、サスペンションメンバ51の締付位置56Aに対する固定治具60を、バネ定数Kを有する仮想バネ62に代替可能に設定する。
【0068】
次に、ステップ326において、全締付位置について上記処理が完了したか否かを判断し、否定された場合にはステップ304に戻り、残存する締付位置(56B〜56D)について上記処理を繰り返す。一方、ステップ326で肯定されると、本処理ルーチンを終了する。
【0069】
なお、上記のように、締付位置毎に仮想バネを決定した場合、全ての締付位置が決定した後に、さらに、許容範囲に収まったかを判断してもよい。例えば、ステップ316〜320の各処理を、4箇所の締付位置56A〜56Dにおける仮想バネ62とした場合について求める。そして4箇所の締付位置56A〜56Dにおける仮想バネ62の各々の上記比率が許容範囲か否かを判断する。このようにすることによって、各締付位置で定めた仮想バネを全て組み入れた固定治具全体としての判断が可能となる。
【0070】
このように、本実施の形態では、複雑な形状の対象部品を、例えばその対象部品専用の固定治具に固定して解析する解析処理を模擬的に行うにあたり、固定治具に対象部品を固定する位置毎に固定治具に代えて仮想バネを設定する。仮想バネを設定するにあたっては、固定治具剛性による影響を模擬すればよいので、固定治具本体の詳細なモデル化をすることなく、固定治具本体及び対象部品共に、より大きい要素によりメッシュ分割した小規模モデルにより同定することが可能になる。このように、小規模モデルにより仮想バネを同定するため、短時間で同定処理を終了することができる。また、この仮想バネにより固定治具剛性による影響を模擬するため、固定治具本体の詳細なモデル化(大規模モデル)は不要になる。このため、モデル作成工数を削減できる。さらに、解析の対象部品を固定する固定治具について、仮想バネに代替するので、対象部品について詳細な解析が必要な場合であっても、対象部品についてのみ詳細なモデル(大規模モデル)を用い、加えて仮想バネによる固定治具を採用することで、解析精度を確保しつつ短時間で詳細な解析をすることが可能になる。
【0071】
<サスペンションメンバの解析例>
図7には、上述した強度解析装置10を用いてサスペンションメンバ51を解析した結果と、サスペンションメンバ51を実際に試験した結果を示した。ここでは、サスペンションメンバ51としてアルミ鋳造サスメンを用いて、強度解析試験による効果検証を実施した。図7(A)に示すように、サスペンションメンバ51は締付位置56A〜56D及び付与位置58を有している。これら締付位置56A〜56D及び付与位置58には、剛性同定点A及び負荷加重の付与位置Pが定められ、締付位置56A〜56Dには、固定治具に代えて仮想バネ62(62A〜62D)が取り付けられる。
【0072】
上述した強度解析装置10により、サスペンションメンバ51について求めた仮想バネ定数Kの結果を次の表に示す。
【表1】



【0073】
図7(B)は、実測値と解析結果値とを示す特性図であり、横軸が実測したひずみ値を示し、縦軸がCAE解析による計算の結果のひずみ値を示す。ひずみ値の単位はμである。図7(B)から理解できるように、実測したひずみ値と、CAE解析による計算結果のひずみ値とは線形関係を有している。
【0074】
効果検証では、まず、固定治具との締付位置毎に仮想バネを設定する。仮想パネのバネ定数は上述の強度解析装置により同定する。今回の場合、バネ定数同定のイタレーション回数は5回で締付位置の変位量をプラスマイナス6パーセント以内に再現できた。小規模のモデルで使用したので、1回のイタレーション計算は約10分間で完了できた。全ての同定作業時間は2時間以内で終了した。通常の複雑な固定治具モデル作成が約3日間必要なので、約2.5日の作業時間を短縮できることを確認した。
【0075】
また、仮想バネによる固定治具本体のモデルを省いたため、解析モデル規模(自由度)を約10パーセント縮小した。1回の解析に費やしたスパコンのCPU時間は約30時間程度であり、約3時間短縮することができることを確認した。
【0076】
さらに、解析精度はひずみ測定値との比較検証結果(図7(B)参照)に示すようひずみ値は実測値をほぼ再現できたので、解析精度が高いことを確認した。
【0077】
このように、検証結果は解析精度を確保した上でモデル作成時間とスパコン(スーパーコンピュータ)の使用時間を短縮したので、計算コスト低減を実現した。
【符号の説明】
【0078】
A 剛性同定点
F 反力
K バネ定数
P 負荷加重の付与位置
10 強度解析装置
12 コンピュータ本体
30 同定部
32 CAE解析部
34 記録装置
50 対象部品
51 サスペンションメンバ
52 小規模モデル
54 大規模モデル
55 締付点
56 締付位置
56A〜56D 締付位置
58 付与位置
60 固定治具
62 仮想バネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品の強度を模擬的に解析するために、物品を、複数の要素に分割する有限要素法を用いた数値計算モデルに対応させて計算する解析モデルを大規模モデルとし、該大規模モデルの要素より大きい要素で前記物品を分割した解析モデルを小規模モデルとする各解析モデルを設定する設定手段と、
前記物品を所定負荷により振動させた場合における該物品の変位を予め計測した変位量を読み取る読取手段と、
前記物品の固定冶具を仮想バネとすると共に、前記物品の解析モデルを小規模モデルとし、前記小規模モデルを振動させ、固定状態とした仮想バネで発生する反力を求め、求めた反力と前記読み取った変位量とに基づいて前記仮想バネのバネ定数を同定する同定手段と、
前記同定したバネ定数の仮想バネを固定治具とし、前記大規模モデルを有限要素法を用いて解析することにより前記物品の強度解析を行う解析手段と、
を有する強度解析装置。
【請求項2】
前記同定手段は、反力を変位量で除算してバネ定数を求めることにより前記仮想バネのバネ定数を同定することを特徴とする請求項1に記載の強度解析装置。
【請求項3】
前記同定手段は、同定したバネ定数による仮想バネを固定治具とし、前記小規模モデルを振動させたときの変位量を求め、該変位量が許容範囲に収まるまで前記バネ定数の同定を繰り返すことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の強度解析装置。
【請求項4】
前記許容範囲は、予め計測した変位量と演算結果の変位量との比率で定めることを特徴とする請求項3に記載の強度解析装置。
【請求項5】
前記物品は、移動体へ固定する固定部、及び前記物品へ負荷を付与する付与部を有し、前記同定手段は、前記付与部に負荷を付与して前記小規模モデルを振動させ、前記固定部における反力を求めることを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の強度解析装置。
【請求項6】
物品の強度を模擬的に解析するために、物品を、複数の要素に分割する有限要素法を用いた数値計算モデルに対応させて計算する解析モデルを大規模モデルとし、該大規模モデルの要素より大きい要素で前記物品を分割した解析モデルを小規模モデルとする各解析モデルを設定する設定工程と、
前記物品を所定負荷により振動させた場合における該物品の変位を予め計測した変位量を読み取る読取工程と、
前記物品の固定冶具を仮想バネとすると共に、前記物品の解析モデルを小規模モデルとし、前記小規模モデルを振動させ、固定状態とした仮想バネで発生する反力を求め、求めた反力と前記読み取った変位量とに基づいて前記仮想バネのバネ定数を同定する同定工程と、
前記同定したバネ定数の仮想バネを固定治具とし、前記大規模モデルを有限要素法を用いて解析することにより前記物品の強度解析を行う解析工程と、
を有する強度解析方法。
【請求項7】
コンピュータによって物品の強度を解析する強度解析プログラムであって、
物品の強度を模擬的に解析するために、物品を、複数の要素に分割する有限要素法を用いた数値計算モデルに対応させて計算する解析モデルを大規模モデルとし、該大規模モデルの要素より大きい要素で前記物品を分割した解析モデルを小規模モデルとする各解析モデルを設定する設定ステップと、
前記物品を所定負荷により振動させた場合における該物品の変位を予め計測した変位量を読み取る読取ステップと、
前記物品の固定冶具を仮想バネとすると共に、前記物品の解析モデルを小規模モデルとし、前記小規模モデルを振動させ、固定状態とした仮想バネで発生する反力を求め、求めた反力と前記読み取った変位量とに基づいて前記仮想バネのバネ定数を同定する同定ステップと、
前記同定したバネ定数の仮想バネを固定治具とし、前記大規模モデルを有限要素法を用いて解析することにより前記物品の強度解析を行う解析ステップと、
の各ステップをコンピュータに実行させる強度解析プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate