弾性ホイール
【課題】 振動吸収性能を備えた弾性ホイールであって、良好な耐久性を維持しつつ乗り心地の改善を可能にした弾性ホイールを提供する。
【解決手段】 リムを形成する円筒体1と、ハブに連結された芯体2とを備えたホイールであって、円筒体1の内縁部に該円筒体1の軸方向に延在する複数本の線材3を全周にわたって張設し、かつ該線材3の集合体からなる弾性支持体4と円筒体1の内面との間に空隙を形成する一方で、弾性支持体4の径方向内側に芯体2を同軸的に嵌合し、芯体2と弾性支持体4との間に芯体2の周方向に自由転動する回転体5を挿入する。
【解決手段】 リムを形成する円筒体1と、ハブに連結された芯体2とを備えたホイールであって、円筒体1の内縁部に該円筒体1の軸方向に延在する複数本の線材3を全周にわたって張設し、かつ該線材3の集合体からなる弾性支持体4と円筒体1の内面との間に空隙を形成する一方で、弾性支持体4の径方向内側に芯体2を同軸的に嵌合し、芯体2と弾性支持体4との間に芯体2の周方向に自由転動する回転体5を挿入する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動吸収性能を備えた弾性ホイールに関し、さらに詳しくは、良好な耐久性を維持しつつ乗り心地の改善を可能にした弾性ホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両は振動や衝撃を吸収するためにサスペンションを搭載し、更に空気入りタイヤを装着することで車室内に伝達される振動を低減している。更に、近年ではホイールに対して振動吸収性能を付与することが試みられている。このような技術として、例えば、ホイールのリムとディスクとの間に防振ゴムを介在させることが提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。上記ホイールでは、ゴムの圧縮弾性を利用しているため振幅が比較的小さい振動を吸収することが可能である。しかしながら、振幅が大きい振動は吸収することができず、乗り心地を改善するには不十分である。また、防振ゴムに対して大きな変形が繰り返し与えられることを想定した場合、耐久性の面で不利である。
【特許文献1】特開平5−338401号公報
【特許文献2】特開2002−331801号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、振動吸収性能を備えた弾性ホイールであって、良好な耐久性を維持しつつ乗り心地の改善を可能にした弾性ホイールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するための本発明の弾性ホイールは、リムを形成する円筒体と、ハブに連結された芯体とを備えたホイールであって、前記円筒体の内縁部に該円筒体の軸方向に延在する複数本の線材を全周にわたって張設し、かつ該線材の集合体からなる弾性支持体と前記円筒体の内面との間に空隙を形成する一方で、前記弾性支持体の径方向内側に前記芯体を同軸的に嵌合し、該芯体と該弾性支持体との間に該芯体の周方向に自由転動する回転体を挿入したことを特徴とするものである。
【0005】
また、上記目的を達成するための本発明の弾性ホイールは、リムを形成する円筒体と、ハブに連結された芯体とを備えたホイールであって、前記芯体の外縁部に該芯体の軸方向に延在する複数本の線材を全周にわたって張設し、かつ該線材の集合体からなる弾性支持体と前記芯体の外面との間に空隙を形成する一方で、前記弾性支持体の径方向外側に前記円筒体を同軸的に嵌合し、該円筒体と該弾性支持体との間に該円筒体の周方向に自由転動する回転体を挿入したことを特徴とするものである。
【0006】
更に、上記目的を達成するための本発明の弾性ホイールは、円筒体の内縁部に該円筒体の軸方向に延在する複数本の線材を全周にわたって張設し、かつ該線材の集合体からなる弾性支持体と前記円筒体の内面との間に空隙を形成する一方で、前記弾性支持体の径方向内側に芯体を同軸的に嵌合し、該芯体と該弾性支持体との間に該芯体の周方向に自由転動する回転体を挿入してなる複数の緩衝装置を備え、これら緩衝装置をリムとハブとの間に介在させたことを特徴とするものである。
【0007】
更に、上記目的を達成するための本発明の弾性ホイールは、芯体の外縁部に該芯体の軸方向に延在する複数本の線材を全周にわたって張設し、かつ該線材の集合体からなる弾性支持体と前記芯体の外面との間に空隙を形成する一方で、前記弾性支持体の径方向外側に円筒体を同軸的に嵌合し、該円筒体と該弾性支持体との間に該円筒体の周方向に自由転動する回転体を挿入してなる複数の緩衝装置を備え、これら緩衝装置をリムとハブとの間に介在させたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、円筒体と、芯体と、線材の集合体からなる弾性支持体と、弾性支持体と円筒体又は芯体との間に介在する回転体とが緩衝装置を構成する。この緩衝装置は、芯体に対して円筒体が軸方向と直交する方向に振動するとき、線材の引張弾性に基づいて円筒体及び芯体の軸芯位置が互いにずれるような弾性的な変位を許容するものである。ここで、線材の集合体からなる弾性支持体は、防振ゴム等の緩衝材料に比べて耐久性に優れるばかりでなく、線材の材質や張り方に基づいて緩衝特性を任意に設定することが可能であって大きな変形にも対応可能である。つまり、上記緩衝装置では、スチールワイヤや有機繊維コードのような線材の少ない伸びを利用して大きな変位を生じることができる。従って、本発明の弾性ホイールは、良好な振動吸収性能を発揮し、かつ良好な耐久性を維持しつつ乗り心地を改善することができる。
【0009】
本発明において、芯体及び円筒体の少なくとも一方に該芯体に対する該円筒体の軸方向の動きを規制するガイド部材を設けることが好ましい。このようなガイド部材を設けることにより、芯体に対する円筒体の軸方向の動きを規制することができる。
【0010】
また、芯体及び円筒体の少なくとも一方に該芯体と該円筒体との相対的な回転を抑止する係止部材を設けることが好ましい。このような係止部材を設けることにより、芯体と円筒体との相対的な回転を抑止し、芯体と円筒体との間のトルクの伝達を可能にする。
【0011】
更に、弾性支持体を構成する線材の両端固定位置を該弾性支持体の周方向にずらし、該弾性支持体を軸方向中央部が径方向内側に窪んだ形状とすることが好ましい。このように線材を斜めに張設した場合、線材の引張弾性が高くても弾性支持体の変形量を大きく設定することが可能である。つまり、線材を芯体及び円筒体の軸方向に対して0°で張設した場合、撓みを生じる線材の長さが最短となるため弾性支持体の変形量が少なくなるが、線材の芯体及び円筒体の軸方向に対する角度を大きくした場合、撓みを生じる線材の長さが大きくなって弾性支持体の変形量が多くなる。また、弾性支持体を構成する線材の両端固定位置を該弾性支持体の周方向にずらした場合、捻じり剛性の面でも有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
図1は本発明の第1実施形態からなる弾性ホイールを示すものである。図1に示すように、この弾性ホイールは、リムを形成する円筒体1と、ハブに連結された円筒状の芯体2とを備えている。これら円筒体1及び芯体2はホイール中心軸の回りに連続的に形成されている。
【0014】
円筒体1の内縁部には、円筒体1の軸方向の両端部に跨がるように複数本の線材3が全周にわたって張設され、これら線材3の集合体が弾性支持体4を形成している。弾性支持体4を構成する線材3の両端固定位置は弾性支持体4の周方向にずれている。つまり、線材3は円筒体1の軸方向に対して所定の角度で傾斜し、編み目状に交差している。これにより、弾性支持体4は軸方向の中央部が径方向内側に窪んだ形状となっている。また、弾性支持体4と円筒体1の内面との間には空隙が形成されている。そのため、弾性支持体4は径方向外側への変形が許容される。
【0015】
芯体2は、弾性支持体4の径方向内側に圧入されて弾性支持体4に対して同軸的に嵌合される。この芯体2の外周面は弾性支持体4と同様に軸方向の中央部が径方向内側に窪んだ形状となっている。そのため、芯体2と弾性支持体4との嵌合状態は線材3の弾性力に基づいて良好に維持される。また、芯体2と弾性支持体4との間には芯体2の周方向に自由転動する円筒状の回転体5が挿入されている。この回転体5はボールベアリング等を介して芯体2の外周面に装着されている。そのため、円筒体1が芯体2に対して相対的に回転しても弾性支持体4と回転体5との間に擦れを生じることはない。
【0016】
上述のように構成される弾性ホイールでは、円筒体1と、芯体2と、線材3の集合体からなる弾性支持体4と、弾性支持体4と芯体2との間に介在する回転体5とが緩衝装置を構成している。この緩衝装置は、芯体2に対して円筒体1が軸方向と直交する方向に振動するとき、線材3の引張弾性に基づいて円筒体1及び芯体2の軸芯位置が互いにずれるような弾性的な変位を許容するものである。線材3としては、耐久性に優れたスチールワイヤや有機繊維コードを使用することができ、その材質や張り方に基づいて緩衝特性を任意に設定することが可能である。そのため、良好な耐久性を維持しつつ乗り心地の改善や騒音の低減が可能となる。
【0017】
図2は円筒体及び芯体の相対的な変位を概略的に示すものである。図2に示すように、芯体2が荷重により最大限に沈んだ状態で円筒体1及び芯体2が回転するとき、芯体2の軸芯の軌跡は円筒体1に対して破線のようになる。このように円筒体1及び芯体2が偏芯した状態での挙動を許容することにより所望の緩衝作用を得るのである。
【0018】
図3は弾性支持体を概略的に示すものである。図3に示すように、弾性支持体4を軸方向中央部が径方向内側に窪んだ形状(鼓状)とする場合、弾性支持体4の軸方向中央部の落ち込み量Hは10〜100mmにすると良い。また、弾性支持体4の軸方向の寸法Wに対する落ち込み量Hの比率(H/W×100%)は25〜150%にすると良い。弾性支持体4の形状を上記の如く規定することにより、線材3の引張弾性が高くても弾性支持体4の変形量を大きく設定することが可能になる。
【0019】
図4は本発明の第2実施形態からなる弾性ホイールを示すものである。図4に示すように、この弾性ホイールは、リムを形成する円筒体11と、ハブに連結された円筒状の芯体12とを備えている。これら円筒体11及び芯体12はホイール中心軸の回りに連続的に形成されている。
【0020】
芯体12の外縁部には、芯体12の軸方向の両端部に跨がるように複数本の線材13が全周にわたって張設され、これら線材13の集合体が弾性支持体14を形成している。弾性支持体14を構成する線材13の両端固定位置は図1の実施形態と同様に弾性支持体14の周方向にずれている。これにより、弾性支持体14は軸方向の中央部が径方向内側に窪んだ形状となっている。また、弾性支持体14と芯体12の外面との間には空隙が形成されている。そのため、弾性支持体14は径方向内側への変形が許容される。
【0021】
円筒体11は、弾性支持体14の径方向外側に圧入されて弾性支持体14に対して同軸的に嵌合される。この円筒体11の内周面は弾性支持体14と同様に軸方向の中央部が径方向内側に窪んだ形状となっている。そのため、円筒体11と弾性支持体14との嵌合状態は線材13の弾性力に基づいて良好に維持される。また、円筒体11と弾性支持体14との間には円筒体11の周方向に自由転動する円筒状の回転体15が挿入されている。この回転体15はボールベアリング等を介して円筒体11の内周面に装着されている。そのため、円筒体11が芯体12に対して相対的に回転しても弾性支持体14と回転体15との間に擦れを生じることはない。
【0022】
上述のように構成される弾性ホイールでは、円筒体11と、芯体12と、線材13の集合体からなる弾性支持体14と、弾性支持体14と円筒体11との間に介在する回転体15とが緩衝装置を構成している。この緩衝装置は、芯体12に対して円筒体11が軸方向と直交する方向に振動するとき、線材13の引張弾性に基づいて円筒体11及び芯体12の軸芯位置が互いにずれるような弾性的な変位を許容するものである。ここで、線材13としては、耐久性に優れたスチールワイヤや有機繊維コードを使用することができ、その材質や張り方に基づいて緩衝特性を任意に設定することが可能である。そのため、良好な耐久性を維持しつつ乗り心地の改善や騒音の低減が可能となる。
【0023】
図5〜図7は本発明の第3実施形態からなる弾性ホイールを示すものである。図5に示すように、この弾性ホイールは、リムを形成する円筒体21と、ハブに連結された円筒状の芯体22とを備えている。これら円筒体21及び芯体22はホイール中心軸の回りに連続的に形成されている。
【0024】
円筒体21の内縁部には、円筒体21の軸方向の両端部に跨がるように複数本の線材23が全周にわたって張設され、これら線材23の集合体が弾性支持体24を形成している。弾性支持体24を構成する線材23は円筒体21の軸方向と平行に延長している。これにより、弾性支持体24は円筒状となっている。また、弾性支持体24と円筒体21の内面との間には空隙が形成されている。そのため、弾性支持体24は径方向外側への変形が許容される。
【0025】
芯体22は、弾性支持体24の径方向内側に圧入されて弾性支持体24に対して同軸的に嵌合される。この芯体22の外周面は軸方向の中央部が径方向外側に膨らんだ形状となっている。そのため、芯体22と弾性支持体24との嵌合状態は線材23の弾性力に基づいて良好に維持される。また、芯体22と弾性支持体24との間には芯体22の周方向に自由転動する円筒状の回転体25が挿入されている。この回転体25はボールベアリング等を介して芯体22の外周面に装着されている。そのため、円筒体21が芯体22に対して相対的に回転しても弾性支持体24と回転体25との間に擦れを生じることはない。なお、芯体22を弾性支持体24の径方向内側に嵌合させる際は、図6に示すように、芯体22を弾性支持体24の内側で旋回させれば良い。
【0026】
図5において、芯体22の軸方向の両端部には芯体22の径方向外側に向かって突出するガイド部材26がそれぞれ取り付けられている。これらガイド部材26は芯体22に対する円筒体21の軸方向の動きを規制するものである。
【0027】
図7は図5のA部を拡大して示すものである。この図7に示すように、ガイド部材26には芯体22の軸方向内側に向かって突出する棒状の係止部材27が設けられている。一方、円筒体21のガイド部材26との当接部分には孔部28が形成されており、この孔部28に係止部材27が挿入されている。孔部28は係止部材27よりも大きく形成されている。これは、円筒体21と芯体22とが偏芯しながら回転する際に係止部材27に籾摺り運動が生じるため、孔部28の寸法が係止部材27の寸法と一致していると円筒体21と芯体22との偏芯が制限されてしまうからである。これら係止部材27及び孔部28は芯体22の周方向の複数箇所に形成され、芯体22と円筒体21との相対的な回転を抑止し、芯体22と円筒体21との間のトルクの伝達を可能にする。
【0028】
また、図7には円筒体21に対する線材23の係止状態が開示されている。つまり、円筒体21の内縁部には線材23の本数に対応する複数の孔部29が形成されており、これら孔部29に線材23の端部が挿入されている。線材23の端部は塊状に加工されて孔部29から脱落しないようになっている。
【0029】
上述のように構成される弾性ホイールでは、円筒体21と、芯体22と、線材23の集合体からなる弾性支持体24と、弾性支持体24と芯体22との間に介在する回転体25とが緩衝装置を構成している。この緩衝装置は、芯体22に対して円筒体21が軸方向と直交する方向に振動するとき、線材23の引張弾性に基づいて円筒体21及び芯体22の軸芯位置が互いにずれるような弾性的な変位を許容するものである。線材23としては、耐久性に優れたスチールワイヤや有機繊維コードを使用することができ、その材質や張り方に基づいて緩衝特性を任意に設定することが可能である。そのため、良好な耐久性を維持しつつ乗り心地の改善や騒音の低減が可能となる。
【0030】
しかも、芯体22にはガイド部材26を設け、これらガイド部材26によって円筒体21を挟み込んでいるので、芯体22に対する円筒体21の軸方向の動きを規制することができる。また、芯体22のガイド部材26には係止部材27を設けているので、芯体22と円筒体21との相対的な回転を抑止し、芯体22と円筒体21との間のトルクの伝達が可能になる。
【0031】
なお、芯体に対する円筒体の軸方向の動きを規制するガイド部材は芯体及び円筒体のいずれに設けても良い。また、芯体と円筒体との相対的な回転を抑止する係止部材は芯体及び円筒体のいずれに設けても良い。勿論、ガイド部材及び係止部材は第1及び第2の実施形態においても採用することができる。
【0032】
図8及び図9は本発明の第4実施形態からなる弾性ホイールを示すものである。図8及び図9に示すように、この弾性ホイールは、リム31に形成された複数本のスポーク32と、リム31から分離したハブ33との間にそれぞれ緩衝装置34を介在させた構成になっている。
【0033】
各緩衝装置34は、以下のように構成されている。即ち、円筒体41の内縁部には、円筒体41の軸方向の両端部に跨がるように複数本の線材43が全周にわたって張設され、これら線材43の集合体が弾性支持体44を形成している。弾性支持体44を構成する線材43の両端固定位置は図1の実施形態と同様に弾性支持体44の周方向にずれている。これにより、弾性支持体44は軸方向の中央部が径方向内側に窪んだ形状となっている。また、弾性支持体44と円筒体41の内面との間には空隙が形成されている。そのため、弾性支持体44は径方向外側への変形が許容される。円筒体41はハブ33に固定されている。
【0034】
円柱状の芯体42は、弾性支持体44の径方向内側に圧入されて弾性支持体44に対して同軸的に嵌合されている。また、芯体42と弾性支持体44との間には芯体42の周方向に自由転動する円筒状の回転体45が挿入されている。この回転体45はボールベアリング等を介して芯体42の外周面に装着されている。そのため、円筒体41が芯体42に対して相対的に回転しても弾性支持体44と回転体45との間に擦れを生じることはない。
【0035】
また、芯体42の軸方向の両端部には芯体42の径方向外側に向かって突出するフランジ状のガイド部材46がそれぞれ設けられている。これらガイド部材46は芯体42に対する円筒体41の軸方向の動きを規制するものである。芯体42はリム31のスポーク32に固定されている。
【0036】
上述のように構成される弾性ホイールでは、円筒体41と、芯体42と、線材43の集合体からなる弾性支持体44と、弾性支持体44と芯体42との間に介在する回転体45とが緩衝装置34を構成している。この緩衝装置34は、芯体42に対して円筒体41が軸方向と直交する方向に振動するとき、線材43の引張弾性に基づいて円筒体41及び芯体42の軸芯位置が互いにずれるような弾性的な変位を許容するものである。線材43としては、耐久性に優れたスチールワイヤや有機繊維コードを使用することができ、その材質や張り方に基づいて緩衝特性を任意に設定することが可能である。そのため、良好な耐久性を維持しつつ乗り心地の改善や騒音の低減が可能となる。
【0037】
図10及び図11は本発明の第5実施形態からなる弾性ホイールを示すものである。図10及び図11に示すように、この弾性ホイールは、リム51と、複数本のスポーク52が形成されたハブ53との間にそれぞれ緩衝装置54を介在させた構成になっている。
【0038】
各緩衝装置54は、以下のように構成されている。即ち、円筒体61の内縁部には、円筒体61の軸方向の両端部に跨がるように複数本の線材63が全周にわたって張設され、これら線材63の集合体が弾性支持体64を形成している。弾性支持体64を構成する線材63の両端固定位置は図1の実施形態と同様に弾性支持体64の周方向にずれている。これにより、弾性支持体64は軸方向の中央部が径方向内側に窪んだ形状となっている。また、弾性支持体64と円筒体61の内面との間には空隙が形成されている。そのため、弾性支持体64は径方向外側への変形が許容される。この円筒体61はリム51に固定されている。
【0039】
芯体62は、弾性支持体64の径方向内側に圧入されて弾性支持体64に対して同軸的に嵌合される。また、芯体62と弾性支持体64との間には芯体62の周方向に自由転動する円筒状の回転体65が挿入されている。この回転体65はボールベアリング等を介して芯体62の外周面に装着されている。そのため、円筒体61が芯体62に対して相対的に回転しても弾性支持体64と回転体65との間に擦れを生じることはない。芯体62はハブ53のスポーク52に固定されている。
【0040】
上述のように構成される弾性ホイールでは、円筒体61と、芯体62と、線材63の集合体からなる弾性支持体64と、弾性支持体64と芯体62との間に介在する回転体65とが緩衝装置54を構成している。この緩衝装置54は、芯体62に対して円筒体61が軸方向と直交する方向に振動するとき、線材63の引張弾性に基づいて円筒体61及び芯体62の軸芯位置が互いにずれるような弾性的な変位を許容するものである。線材63としては、耐久性に優れたスチールワイヤや有機繊維コードを使用することができ、その材質や張り方に基づいて緩衝特性を任意に設定することが可能である。そのため、良好な耐久性を維持しつつ乗り心地の改善や騒音の低減が可能となる。
【0041】
上述した第4及び第5の実施形態では、線材の集合体からなる弾性支持体を円筒体の内縁部に取り付けたものであるが、このような弾性支持体は芯体の外縁部に取り付けるようにしても良い。つまり、芯体の外縁部に該芯体の軸方向に延在する複数本の線材を全周にわたって張設し、かつ該線材の集合体からなる弾性支持体と芯体の外面との間に空隙を形成する一方で、弾性支持体の径方向外側に円筒体を同軸的に嵌合し、円筒体と弾性支持体との間に該円筒体の周方向に自由転動する回転体を挿入してなる複数の緩衝装置を構成し、これら緩衝装置をリムとハブとの間に配設しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1実施形態からなる弾性ホイールを示す子午線断面図である。
【図2】本発明の弾性ホイールにおける円筒体及び芯体の相対的な変位を概略的に示す説明図である。
【図3】本発明の弾性ホイールにおける弾性支持体を概略的に示す説明図である。
【図4】本発明の第2実施形態からなる弾性ホイールを示す子午線断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態からなる弾性ホイールを示す子午線断面図である。
【図6】図6の弾性ホイールの組み立て状態を示す子午線断面図である。
【図7】図6のA部の拡大図である。
【図8】本発明の第4実施形態からなる弾性ホイールを示す正面図である。
【図9】図8のX−X矢視断面図である。
【図10】本発明の第5実施形態からなる弾性ホイールを示す正面図である。
【図11】図10のY−Y矢視断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1,11,21,41,61 円筒体
2,12,22,42,62 芯体
3,13,23,43,63 線材
4,14,24,44,64 弾性支持体
5,15,25,45,65 回転体
26 ガイド部材
27 係止部材
31,51 リム
32,52 スポーク
33,53 ハブ
34,54 緩衝装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動吸収性能を備えた弾性ホイールに関し、さらに詳しくは、良好な耐久性を維持しつつ乗り心地の改善を可能にした弾性ホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両は振動や衝撃を吸収するためにサスペンションを搭載し、更に空気入りタイヤを装着することで車室内に伝達される振動を低減している。更に、近年ではホイールに対して振動吸収性能を付与することが試みられている。このような技術として、例えば、ホイールのリムとディスクとの間に防振ゴムを介在させることが提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。上記ホイールでは、ゴムの圧縮弾性を利用しているため振幅が比較的小さい振動を吸収することが可能である。しかしながら、振幅が大きい振動は吸収することができず、乗り心地を改善するには不十分である。また、防振ゴムに対して大きな変形が繰り返し与えられることを想定した場合、耐久性の面で不利である。
【特許文献1】特開平5−338401号公報
【特許文献2】特開2002−331801号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、振動吸収性能を備えた弾性ホイールであって、良好な耐久性を維持しつつ乗り心地の改善を可能にした弾性ホイールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するための本発明の弾性ホイールは、リムを形成する円筒体と、ハブに連結された芯体とを備えたホイールであって、前記円筒体の内縁部に該円筒体の軸方向に延在する複数本の線材を全周にわたって張設し、かつ該線材の集合体からなる弾性支持体と前記円筒体の内面との間に空隙を形成する一方で、前記弾性支持体の径方向内側に前記芯体を同軸的に嵌合し、該芯体と該弾性支持体との間に該芯体の周方向に自由転動する回転体を挿入したことを特徴とするものである。
【0005】
また、上記目的を達成するための本発明の弾性ホイールは、リムを形成する円筒体と、ハブに連結された芯体とを備えたホイールであって、前記芯体の外縁部に該芯体の軸方向に延在する複数本の線材を全周にわたって張設し、かつ該線材の集合体からなる弾性支持体と前記芯体の外面との間に空隙を形成する一方で、前記弾性支持体の径方向外側に前記円筒体を同軸的に嵌合し、該円筒体と該弾性支持体との間に該円筒体の周方向に自由転動する回転体を挿入したことを特徴とするものである。
【0006】
更に、上記目的を達成するための本発明の弾性ホイールは、円筒体の内縁部に該円筒体の軸方向に延在する複数本の線材を全周にわたって張設し、かつ該線材の集合体からなる弾性支持体と前記円筒体の内面との間に空隙を形成する一方で、前記弾性支持体の径方向内側に芯体を同軸的に嵌合し、該芯体と該弾性支持体との間に該芯体の周方向に自由転動する回転体を挿入してなる複数の緩衝装置を備え、これら緩衝装置をリムとハブとの間に介在させたことを特徴とするものである。
【0007】
更に、上記目的を達成するための本発明の弾性ホイールは、芯体の外縁部に該芯体の軸方向に延在する複数本の線材を全周にわたって張設し、かつ該線材の集合体からなる弾性支持体と前記芯体の外面との間に空隙を形成する一方で、前記弾性支持体の径方向外側に円筒体を同軸的に嵌合し、該円筒体と該弾性支持体との間に該円筒体の周方向に自由転動する回転体を挿入してなる複数の緩衝装置を備え、これら緩衝装置をリムとハブとの間に介在させたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、円筒体と、芯体と、線材の集合体からなる弾性支持体と、弾性支持体と円筒体又は芯体との間に介在する回転体とが緩衝装置を構成する。この緩衝装置は、芯体に対して円筒体が軸方向と直交する方向に振動するとき、線材の引張弾性に基づいて円筒体及び芯体の軸芯位置が互いにずれるような弾性的な変位を許容するものである。ここで、線材の集合体からなる弾性支持体は、防振ゴム等の緩衝材料に比べて耐久性に優れるばかりでなく、線材の材質や張り方に基づいて緩衝特性を任意に設定することが可能であって大きな変形にも対応可能である。つまり、上記緩衝装置では、スチールワイヤや有機繊維コードのような線材の少ない伸びを利用して大きな変位を生じることができる。従って、本発明の弾性ホイールは、良好な振動吸収性能を発揮し、かつ良好な耐久性を維持しつつ乗り心地を改善することができる。
【0009】
本発明において、芯体及び円筒体の少なくとも一方に該芯体に対する該円筒体の軸方向の動きを規制するガイド部材を設けることが好ましい。このようなガイド部材を設けることにより、芯体に対する円筒体の軸方向の動きを規制することができる。
【0010】
また、芯体及び円筒体の少なくとも一方に該芯体と該円筒体との相対的な回転を抑止する係止部材を設けることが好ましい。このような係止部材を設けることにより、芯体と円筒体との相対的な回転を抑止し、芯体と円筒体との間のトルクの伝達を可能にする。
【0011】
更に、弾性支持体を構成する線材の両端固定位置を該弾性支持体の周方向にずらし、該弾性支持体を軸方向中央部が径方向内側に窪んだ形状とすることが好ましい。このように線材を斜めに張設した場合、線材の引張弾性が高くても弾性支持体の変形量を大きく設定することが可能である。つまり、線材を芯体及び円筒体の軸方向に対して0°で張設した場合、撓みを生じる線材の長さが最短となるため弾性支持体の変形量が少なくなるが、線材の芯体及び円筒体の軸方向に対する角度を大きくした場合、撓みを生じる線材の長さが大きくなって弾性支持体の変形量が多くなる。また、弾性支持体を構成する線材の両端固定位置を該弾性支持体の周方向にずらした場合、捻じり剛性の面でも有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
図1は本発明の第1実施形態からなる弾性ホイールを示すものである。図1に示すように、この弾性ホイールは、リムを形成する円筒体1と、ハブに連結された円筒状の芯体2とを備えている。これら円筒体1及び芯体2はホイール中心軸の回りに連続的に形成されている。
【0014】
円筒体1の内縁部には、円筒体1の軸方向の両端部に跨がるように複数本の線材3が全周にわたって張設され、これら線材3の集合体が弾性支持体4を形成している。弾性支持体4を構成する線材3の両端固定位置は弾性支持体4の周方向にずれている。つまり、線材3は円筒体1の軸方向に対して所定の角度で傾斜し、編み目状に交差している。これにより、弾性支持体4は軸方向の中央部が径方向内側に窪んだ形状となっている。また、弾性支持体4と円筒体1の内面との間には空隙が形成されている。そのため、弾性支持体4は径方向外側への変形が許容される。
【0015】
芯体2は、弾性支持体4の径方向内側に圧入されて弾性支持体4に対して同軸的に嵌合される。この芯体2の外周面は弾性支持体4と同様に軸方向の中央部が径方向内側に窪んだ形状となっている。そのため、芯体2と弾性支持体4との嵌合状態は線材3の弾性力に基づいて良好に維持される。また、芯体2と弾性支持体4との間には芯体2の周方向に自由転動する円筒状の回転体5が挿入されている。この回転体5はボールベアリング等を介して芯体2の外周面に装着されている。そのため、円筒体1が芯体2に対して相対的に回転しても弾性支持体4と回転体5との間に擦れを生じることはない。
【0016】
上述のように構成される弾性ホイールでは、円筒体1と、芯体2と、線材3の集合体からなる弾性支持体4と、弾性支持体4と芯体2との間に介在する回転体5とが緩衝装置を構成している。この緩衝装置は、芯体2に対して円筒体1が軸方向と直交する方向に振動するとき、線材3の引張弾性に基づいて円筒体1及び芯体2の軸芯位置が互いにずれるような弾性的な変位を許容するものである。線材3としては、耐久性に優れたスチールワイヤや有機繊維コードを使用することができ、その材質や張り方に基づいて緩衝特性を任意に設定することが可能である。そのため、良好な耐久性を維持しつつ乗り心地の改善や騒音の低減が可能となる。
【0017】
図2は円筒体及び芯体の相対的な変位を概略的に示すものである。図2に示すように、芯体2が荷重により最大限に沈んだ状態で円筒体1及び芯体2が回転するとき、芯体2の軸芯の軌跡は円筒体1に対して破線のようになる。このように円筒体1及び芯体2が偏芯した状態での挙動を許容することにより所望の緩衝作用を得るのである。
【0018】
図3は弾性支持体を概略的に示すものである。図3に示すように、弾性支持体4を軸方向中央部が径方向内側に窪んだ形状(鼓状)とする場合、弾性支持体4の軸方向中央部の落ち込み量Hは10〜100mmにすると良い。また、弾性支持体4の軸方向の寸法Wに対する落ち込み量Hの比率(H/W×100%)は25〜150%にすると良い。弾性支持体4の形状を上記の如く規定することにより、線材3の引張弾性が高くても弾性支持体4の変形量を大きく設定することが可能になる。
【0019】
図4は本発明の第2実施形態からなる弾性ホイールを示すものである。図4に示すように、この弾性ホイールは、リムを形成する円筒体11と、ハブに連結された円筒状の芯体12とを備えている。これら円筒体11及び芯体12はホイール中心軸の回りに連続的に形成されている。
【0020】
芯体12の外縁部には、芯体12の軸方向の両端部に跨がるように複数本の線材13が全周にわたって張設され、これら線材13の集合体が弾性支持体14を形成している。弾性支持体14を構成する線材13の両端固定位置は図1の実施形態と同様に弾性支持体14の周方向にずれている。これにより、弾性支持体14は軸方向の中央部が径方向内側に窪んだ形状となっている。また、弾性支持体14と芯体12の外面との間には空隙が形成されている。そのため、弾性支持体14は径方向内側への変形が許容される。
【0021】
円筒体11は、弾性支持体14の径方向外側に圧入されて弾性支持体14に対して同軸的に嵌合される。この円筒体11の内周面は弾性支持体14と同様に軸方向の中央部が径方向内側に窪んだ形状となっている。そのため、円筒体11と弾性支持体14との嵌合状態は線材13の弾性力に基づいて良好に維持される。また、円筒体11と弾性支持体14との間には円筒体11の周方向に自由転動する円筒状の回転体15が挿入されている。この回転体15はボールベアリング等を介して円筒体11の内周面に装着されている。そのため、円筒体11が芯体12に対して相対的に回転しても弾性支持体14と回転体15との間に擦れを生じることはない。
【0022】
上述のように構成される弾性ホイールでは、円筒体11と、芯体12と、線材13の集合体からなる弾性支持体14と、弾性支持体14と円筒体11との間に介在する回転体15とが緩衝装置を構成している。この緩衝装置は、芯体12に対して円筒体11が軸方向と直交する方向に振動するとき、線材13の引張弾性に基づいて円筒体11及び芯体12の軸芯位置が互いにずれるような弾性的な変位を許容するものである。ここで、線材13としては、耐久性に優れたスチールワイヤや有機繊維コードを使用することができ、その材質や張り方に基づいて緩衝特性を任意に設定することが可能である。そのため、良好な耐久性を維持しつつ乗り心地の改善や騒音の低減が可能となる。
【0023】
図5〜図7は本発明の第3実施形態からなる弾性ホイールを示すものである。図5に示すように、この弾性ホイールは、リムを形成する円筒体21と、ハブに連結された円筒状の芯体22とを備えている。これら円筒体21及び芯体22はホイール中心軸の回りに連続的に形成されている。
【0024】
円筒体21の内縁部には、円筒体21の軸方向の両端部に跨がるように複数本の線材23が全周にわたって張設され、これら線材23の集合体が弾性支持体24を形成している。弾性支持体24を構成する線材23は円筒体21の軸方向と平行に延長している。これにより、弾性支持体24は円筒状となっている。また、弾性支持体24と円筒体21の内面との間には空隙が形成されている。そのため、弾性支持体24は径方向外側への変形が許容される。
【0025】
芯体22は、弾性支持体24の径方向内側に圧入されて弾性支持体24に対して同軸的に嵌合される。この芯体22の外周面は軸方向の中央部が径方向外側に膨らんだ形状となっている。そのため、芯体22と弾性支持体24との嵌合状態は線材23の弾性力に基づいて良好に維持される。また、芯体22と弾性支持体24との間には芯体22の周方向に自由転動する円筒状の回転体25が挿入されている。この回転体25はボールベアリング等を介して芯体22の外周面に装着されている。そのため、円筒体21が芯体22に対して相対的に回転しても弾性支持体24と回転体25との間に擦れを生じることはない。なお、芯体22を弾性支持体24の径方向内側に嵌合させる際は、図6に示すように、芯体22を弾性支持体24の内側で旋回させれば良い。
【0026】
図5において、芯体22の軸方向の両端部には芯体22の径方向外側に向かって突出するガイド部材26がそれぞれ取り付けられている。これらガイド部材26は芯体22に対する円筒体21の軸方向の動きを規制するものである。
【0027】
図7は図5のA部を拡大して示すものである。この図7に示すように、ガイド部材26には芯体22の軸方向内側に向かって突出する棒状の係止部材27が設けられている。一方、円筒体21のガイド部材26との当接部分には孔部28が形成されており、この孔部28に係止部材27が挿入されている。孔部28は係止部材27よりも大きく形成されている。これは、円筒体21と芯体22とが偏芯しながら回転する際に係止部材27に籾摺り運動が生じるため、孔部28の寸法が係止部材27の寸法と一致していると円筒体21と芯体22との偏芯が制限されてしまうからである。これら係止部材27及び孔部28は芯体22の周方向の複数箇所に形成され、芯体22と円筒体21との相対的な回転を抑止し、芯体22と円筒体21との間のトルクの伝達を可能にする。
【0028】
また、図7には円筒体21に対する線材23の係止状態が開示されている。つまり、円筒体21の内縁部には線材23の本数に対応する複数の孔部29が形成されており、これら孔部29に線材23の端部が挿入されている。線材23の端部は塊状に加工されて孔部29から脱落しないようになっている。
【0029】
上述のように構成される弾性ホイールでは、円筒体21と、芯体22と、線材23の集合体からなる弾性支持体24と、弾性支持体24と芯体22との間に介在する回転体25とが緩衝装置を構成している。この緩衝装置は、芯体22に対して円筒体21が軸方向と直交する方向に振動するとき、線材23の引張弾性に基づいて円筒体21及び芯体22の軸芯位置が互いにずれるような弾性的な変位を許容するものである。線材23としては、耐久性に優れたスチールワイヤや有機繊維コードを使用することができ、その材質や張り方に基づいて緩衝特性を任意に設定することが可能である。そのため、良好な耐久性を維持しつつ乗り心地の改善や騒音の低減が可能となる。
【0030】
しかも、芯体22にはガイド部材26を設け、これらガイド部材26によって円筒体21を挟み込んでいるので、芯体22に対する円筒体21の軸方向の動きを規制することができる。また、芯体22のガイド部材26には係止部材27を設けているので、芯体22と円筒体21との相対的な回転を抑止し、芯体22と円筒体21との間のトルクの伝達が可能になる。
【0031】
なお、芯体に対する円筒体の軸方向の動きを規制するガイド部材は芯体及び円筒体のいずれに設けても良い。また、芯体と円筒体との相対的な回転を抑止する係止部材は芯体及び円筒体のいずれに設けても良い。勿論、ガイド部材及び係止部材は第1及び第2の実施形態においても採用することができる。
【0032】
図8及び図9は本発明の第4実施形態からなる弾性ホイールを示すものである。図8及び図9に示すように、この弾性ホイールは、リム31に形成された複数本のスポーク32と、リム31から分離したハブ33との間にそれぞれ緩衝装置34を介在させた構成になっている。
【0033】
各緩衝装置34は、以下のように構成されている。即ち、円筒体41の内縁部には、円筒体41の軸方向の両端部に跨がるように複数本の線材43が全周にわたって張設され、これら線材43の集合体が弾性支持体44を形成している。弾性支持体44を構成する線材43の両端固定位置は図1の実施形態と同様に弾性支持体44の周方向にずれている。これにより、弾性支持体44は軸方向の中央部が径方向内側に窪んだ形状となっている。また、弾性支持体44と円筒体41の内面との間には空隙が形成されている。そのため、弾性支持体44は径方向外側への変形が許容される。円筒体41はハブ33に固定されている。
【0034】
円柱状の芯体42は、弾性支持体44の径方向内側に圧入されて弾性支持体44に対して同軸的に嵌合されている。また、芯体42と弾性支持体44との間には芯体42の周方向に自由転動する円筒状の回転体45が挿入されている。この回転体45はボールベアリング等を介して芯体42の外周面に装着されている。そのため、円筒体41が芯体42に対して相対的に回転しても弾性支持体44と回転体45との間に擦れを生じることはない。
【0035】
また、芯体42の軸方向の両端部には芯体42の径方向外側に向かって突出するフランジ状のガイド部材46がそれぞれ設けられている。これらガイド部材46は芯体42に対する円筒体41の軸方向の動きを規制するものである。芯体42はリム31のスポーク32に固定されている。
【0036】
上述のように構成される弾性ホイールでは、円筒体41と、芯体42と、線材43の集合体からなる弾性支持体44と、弾性支持体44と芯体42との間に介在する回転体45とが緩衝装置34を構成している。この緩衝装置34は、芯体42に対して円筒体41が軸方向と直交する方向に振動するとき、線材43の引張弾性に基づいて円筒体41及び芯体42の軸芯位置が互いにずれるような弾性的な変位を許容するものである。線材43としては、耐久性に優れたスチールワイヤや有機繊維コードを使用することができ、その材質や張り方に基づいて緩衝特性を任意に設定することが可能である。そのため、良好な耐久性を維持しつつ乗り心地の改善や騒音の低減が可能となる。
【0037】
図10及び図11は本発明の第5実施形態からなる弾性ホイールを示すものである。図10及び図11に示すように、この弾性ホイールは、リム51と、複数本のスポーク52が形成されたハブ53との間にそれぞれ緩衝装置54を介在させた構成になっている。
【0038】
各緩衝装置54は、以下のように構成されている。即ち、円筒体61の内縁部には、円筒体61の軸方向の両端部に跨がるように複数本の線材63が全周にわたって張設され、これら線材63の集合体が弾性支持体64を形成している。弾性支持体64を構成する線材63の両端固定位置は図1の実施形態と同様に弾性支持体64の周方向にずれている。これにより、弾性支持体64は軸方向の中央部が径方向内側に窪んだ形状となっている。また、弾性支持体64と円筒体61の内面との間には空隙が形成されている。そのため、弾性支持体64は径方向外側への変形が許容される。この円筒体61はリム51に固定されている。
【0039】
芯体62は、弾性支持体64の径方向内側に圧入されて弾性支持体64に対して同軸的に嵌合される。また、芯体62と弾性支持体64との間には芯体62の周方向に自由転動する円筒状の回転体65が挿入されている。この回転体65はボールベアリング等を介して芯体62の外周面に装着されている。そのため、円筒体61が芯体62に対して相対的に回転しても弾性支持体64と回転体65との間に擦れを生じることはない。芯体62はハブ53のスポーク52に固定されている。
【0040】
上述のように構成される弾性ホイールでは、円筒体61と、芯体62と、線材63の集合体からなる弾性支持体64と、弾性支持体64と芯体62との間に介在する回転体65とが緩衝装置54を構成している。この緩衝装置54は、芯体62に対して円筒体61が軸方向と直交する方向に振動するとき、線材63の引張弾性に基づいて円筒体61及び芯体62の軸芯位置が互いにずれるような弾性的な変位を許容するものである。線材63としては、耐久性に優れたスチールワイヤや有機繊維コードを使用することができ、その材質や張り方に基づいて緩衝特性を任意に設定することが可能である。そのため、良好な耐久性を維持しつつ乗り心地の改善や騒音の低減が可能となる。
【0041】
上述した第4及び第5の実施形態では、線材の集合体からなる弾性支持体を円筒体の内縁部に取り付けたものであるが、このような弾性支持体は芯体の外縁部に取り付けるようにしても良い。つまり、芯体の外縁部に該芯体の軸方向に延在する複数本の線材を全周にわたって張設し、かつ該線材の集合体からなる弾性支持体と芯体の外面との間に空隙を形成する一方で、弾性支持体の径方向外側に円筒体を同軸的に嵌合し、円筒体と弾性支持体との間に該円筒体の周方向に自由転動する回転体を挿入してなる複数の緩衝装置を構成し、これら緩衝装置をリムとハブとの間に配設しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1実施形態からなる弾性ホイールを示す子午線断面図である。
【図2】本発明の弾性ホイールにおける円筒体及び芯体の相対的な変位を概略的に示す説明図である。
【図3】本発明の弾性ホイールにおける弾性支持体を概略的に示す説明図である。
【図4】本発明の第2実施形態からなる弾性ホイールを示す子午線断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態からなる弾性ホイールを示す子午線断面図である。
【図6】図6の弾性ホイールの組み立て状態を示す子午線断面図である。
【図7】図6のA部の拡大図である。
【図8】本発明の第4実施形態からなる弾性ホイールを示す正面図である。
【図9】図8のX−X矢視断面図である。
【図10】本発明の第5実施形態からなる弾性ホイールを示す正面図である。
【図11】図10のY−Y矢視断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1,11,21,41,61 円筒体
2,12,22,42,62 芯体
3,13,23,43,63 線材
4,14,24,44,64 弾性支持体
5,15,25,45,65 回転体
26 ガイド部材
27 係止部材
31,51 リム
32,52 スポーク
33,53 ハブ
34,54 緩衝装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リムを形成する円筒体と、ハブに連結された芯体とを備えたホイールであって、前記円筒体の内縁部に該円筒体の軸方向に延在する複数本の線材を全周にわたって張設し、かつ該線材の集合体からなる弾性支持体と前記円筒体の内面との間に空隙を形成する一方で、前記弾性支持体の径方向内側に前記芯体を同軸的に嵌合し、該芯体と該弾性支持体との間に該芯体の周方向に自由転動する回転体を挿入した弾性ホイール。
【請求項2】
リムを形成する円筒体と、ハブに連結された芯体とを備えたホイールであって、前記芯体の外縁部に該芯体の軸方向に延在する複数本の線材を全周にわたって張設し、かつ該線材の集合体からなる弾性支持体と前記芯体の外面との間に空隙を形成する一方で、前記弾性支持体の径方向外側に前記円筒体を同軸的に嵌合し、該円筒体と該弾性支持体との間に該円筒体の周方向に自由転動する回転体を挿入した弾性ホイール。
【請求項3】
前記芯体及び前記円筒体の少なくとも一方に該芯体に対する該円筒体の軸方向の動きを規制するガイド部材を設けた請求項1又は請求項2に記載の弾性ホイール。
【請求項4】
前記芯体及び前記円筒体の少なくとも一方に該芯体と該円筒体との相対的な回転を抑止する係止部材を設けた請求項1〜3のいずれかに記載の弾性ホイール。
【請求項5】
前記弾性支持体を構成する線材の両端固定位置を該弾性支持体の周方向にずらし、該弾性支持体を軸方向中央部が径方向内側に窪んだ形状とした請求項1〜4のいずれかに記載の弾性ホイール。
【請求項6】
円筒体の内縁部に該円筒体の軸方向に延在する複数本の線材を全周にわたって張設し、かつ該線材の集合体からなる弾性支持体と前記円筒体の内面との間に空隙を形成する一方で、前記弾性支持体の径方向内側に芯体を同軸的に嵌合し、該芯体と該弾性支持体との間に該芯体の周方向に自由転動する回転体を挿入してなる複数の緩衝装置を備え、これら緩衝装置をリムとハブとの間に介在させた弾性ホイール。
【請求項7】
芯体の外縁部に該芯体の軸方向に延在する複数本の線材を全周にわたって張設し、かつ該線材の集合体からなる弾性支持体と前記芯体の外面との間に空隙を形成する一方で、前記弾性支持体の径方向外側に円筒体を同軸的に嵌合し、該円筒体と該弾性支持体との間に該円筒体の周方向に自由転動する回転体を挿入してなる複数の緩衝装置を備え、これら緩衝装置をリムとハブとの間に介在させた弾性ホイール。
【請求項8】
前記芯体及び前記円筒体の少なくとも一方に該芯体に対する該円筒体の軸方向の動きを規制するガイド部材を設けた請求項6又は請求項7に記載の弾性ホイール。
【請求項9】
前記弾性支持体を構成する線材の両端固定位置を該弾性支持体の周方向にずらし、該弾性支持体を軸方向中央部が径方向内側に窪んだ形状とした請求項6〜8のいずれかに記載の弾性ホイール。
【請求項1】
リムを形成する円筒体と、ハブに連結された芯体とを備えたホイールであって、前記円筒体の内縁部に該円筒体の軸方向に延在する複数本の線材を全周にわたって張設し、かつ該線材の集合体からなる弾性支持体と前記円筒体の内面との間に空隙を形成する一方で、前記弾性支持体の径方向内側に前記芯体を同軸的に嵌合し、該芯体と該弾性支持体との間に該芯体の周方向に自由転動する回転体を挿入した弾性ホイール。
【請求項2】
リムを形成する円筒体と、ハブに連結された芯体とを備えたホイールであって、前記芯体の外縁部に該芯体の軸方向に延在する複数本の線材を全周にわたって張設し、かつ該線材の集合体からなる弾性支持体と前記芯体の外面との間に空隙を形成する一方で、前記弾性支持体の径方向外側に前記円筒体を同軸的に嵌合し、該円筒体と該弾性支持体との間に該円筒体の周方向に自由転動する回転体を挿入した弾性ホイール。
【請求項3】
前記芯体及び前記円筒体の少なくとも一方に該芯体に対する該円筒体の軸方向の動きを規制するガイド部材を設けた請求項1又は請求項2に記載の弾性ホイール。
【請求項4】
前記芯体及び前記円筒体の少なくとも一方に該芯体と該円筒体との相対的な回転を抑止する係止部材を設けた請求項1〜3のいずれかに記載の弾性ホイール。
【請求項5】
前記弾性支持体を構成する線材の両端固定位置を該弾性支持体の周方向にずらし、該弾性支持体を軸方向中央部が径方向内側に窪んだ形状とした請求項1〜4のいずれかに記載の弾性ホイール。
【請求項6】
円筒体の内縁部に該円筒体の軸方向に延在する複数本の線材を全周にわたって張設し、かつ該線材の集合体からなる弾性支持体と前記円筒体の内面との間に空隙を形成する一方で、前記弾性支持体の径方向内側に芯体を同軸的に嵌合し、該芯体と該弾性支持体との間に該芯体の周方向に自由転動する回転体を挿入してなる複数の緩衝装置を備え、これら緩衝装置をリムとハブとの間に介在させた弾性ホイール。
【請求項7】
芯体の外縁部に該芯体の軸方向に延在する複数本の線材を全周にわたって張設し、かつ該線材の集合体からなる弾性支持体と前記芯体の外面との間に空隙を形成する一方で、前記弾性支持体の径方向外側に円筒体を同軸的に嵌合し、該円筒体と該弾性支持体との間に該円筒体の周方向に自由転動する回転体を挿入してなる複数の緩衝装置を備え、これら緩衝装置をリムとハブとの間に介在させた弾性ホイール。
【請求項8】
前記芯体及び前記円筒体の少なくとも一方に該芯体に対する該円筒体の軸方向の動きを規制するガイド部材を設けた請求項6又は請求項7に記載の弾性ホイール。
【請求項9】
前記弾性支持体を構成する線材の両端固定位置を該弾性支持体の周方向にずらし、該弾性支持体を軸方向中央部が径方向内側に窪んだ形状とした請求項6〜8のいずれかに記載の弾性ホイール。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−213159(P2006−213159A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−27259(P2005−27259)
【出願日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
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