説明

弾性構造及び該弾性構造を用いた挟持装置

【課題】本発明は、弾性力の変化が小さい弾性構造及び該弾性構造を用いた挟持装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る弾性構造は、バネと、第一案内溝と、第一案内溝に対して垂直に設けられた第二案内溝と、第一支持板と、第二支持板と、固定板と、第一滑動部材と、第二滑動部材と、連動部材と、を備える。第二支持板は、第一支持板と固定板とに垂直に連接され、第一支持板に設置され、第二案内溝は、第二支持板に設置され、連動部材の一端は第一滑動部材に回転可能に連接され、他端は第二滑動部材に回転可能に連接され、物体が、第一案内溝の案内方向に沿って第一滑動部材に第二案内溝に対面する推力を加えると、バネが弾性変形し、第一滑動部材は、物体に反作用力を加え、第一滑動部材が静止の状態又は等速運動の状態である時、反作用力と推力との大きさは同じであるが、方向は相反する。又、本発明は、挟持装置にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性構造及び該弾性構造を用いた挟持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在の電子装置の電池溝には、バネが設置されており、電池を前記電池溝へ入れる際は、このバネの反作用の力を利用して電池を前記電池溝に固定させる。従来のバネの弾性力は、自身の弾性変形量と正比例する。つまり、弾性変形量が大きければ大きいほど弾性力も大きい。しかし異なるメーカーが生産することによって起こる電池の大きさの差や、使用する過程において発生する熱膨脹等で電池の体積が大きくなることがあり、バネが電池に加わる弾性力が大きくなってしまう。従って、電池が変形し易く、電池の性能にまで影響を及ぼす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、前記課題を解決し、弾性力の変化が小さい弾性構造及び該弾性構造を用いた挟持装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係る弾性構造は、バネと、第一案内溝と、前記第一案内溝に対して垂直に設けられた第二案内溝と、第一支持板と、第二支持板と、固定板と、前記第一案内溝に設置された第一滑動部材と、前記第二案内溝に設置された第二滑動部材と、連動部材と、を備える。前記第二支持板は、前記第一支持板と固定板とに垂直に連接され、前記第一案内溝は、前記第一支持板上に設置され、前記第二案内溝は、前記第二支持板上に設置され、前記第一案内溝の延長線と前記第二案内溝の延長線とは互いに交差し、前記連動部材の一端は、前記第一滑動部材に回転可能に連接され、他端は、前記第二滑動部材に回転可能に連接され、物体が、前記第一案内溝の案内方向に沿って、前記第一滑動部材に対して、前記第二案内溝に対面する推力を加えると、前記バネが弾性変形し、前記第一滑動部材は、前記物体に反作用力を加え、前記第一滑動部材が静止の状態又は等速運動の状態である時、前記反作用力と前記推力との大きさは同じであるが、方向は相反する。
【0005】
本発明に係る挟持装置は、当接板と、挟持部と、弾性構造と、を備える。前記弾性構造は、バネと、第一案内溝と、第一案内溝に対して垂直に設けられた第二案内溝と、第一支持板と、第二支持板と、固定板と、前記第一案内溝に設置された第一滑動部材と、前記第二案内溝に設置された第二滑動部材と、連動部材と、を備える。前記第二支持板は、前記第一支持板と固定板とに垂直に連接され、前記第一案内溝は、前記第一支持板上に設置され、前記第二案内溝は、前記第二支持板上に設置され、前記第一案内溝の延長線と第二案内溝の延長線とは、交差し、前記連動部材の一端は、前記第一滑動部材に回転可能に連接され、他端は、前記第二滑動部材に回転可能に連接され、前記挟持部は、前記第一滑動部材により押し付けられた状態で設けられ且つ前記第二案内溝に対面して設置され、物体が、前記挟持部と当接板との間に挟持されて前記第一案内溝の案内方向に沿って、前記第一滑動部材に前記第二案内溝に対面する推力を加えると、前記バネが弾性変形し、前記第一滑動部材は、前記物体に反作用力を加え、前記第一滑動部材が静止の状態又は等速運動の状態である時、前記反作用力と前記推力との大きさは同じであるが、方向は相反する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の弾性構造及び該弾性構造を用いた挟持装置において、前記第一滑動部材の変位が大きくなり、前記バネの弾性変形量が大きくなると、前記第一滑動部材が物体に加わる反作用力の変化量は小さくなる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施形態に係る挟持装置の組立斜視図である。
【図2】図1に示す本発明の実施形態に係る挟持装置の弾性構造が作動する前の状態を表す図である。
【図3】図1に示す本発明の実施形態に係る挟持装置の弾性構造が力を受けた際の分析図である。
【図4】図1に示す本発明の実施形態に係る挟持装置の弾性構造の弾性力と変位との曲線関係図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0009】
図1を参照すると、本発明の実施形態に係る挟持装置200は、収容溝201と、前記収容溝201に収容された挟持部270と、弾性構造100と、を備える。本実施形態において、前記収容溝201は、電池溝である。
【0010】
前記収容溝201は、第一支持板210と、第二支持板220と、固定板230と、当接板260と、を備える。前記第一支持板210と前記固定板230とは、互いに平行である。前記第二支持板220は、前記第一支持板210と前記固定板230との間に位置し、且つ前記第一支持板210及び前記固定板230に垂直に連接されている。また、前記当接板260と前記第二支持板220とは、対向して設置される。本実施形態において、前記当接板260は、前記第二支持板220に平行である。
【0011】
前記挟持部270は、前記弾性構造100により圧迫されて設けられる。前記挟持部270の前記当接板260に対面する表面には、「V」型の凹溝280が設けられている。物体300は、前記挟持部270の凹溝280と前記当接板260との間に挟持される。本実施形態において、前記物体300は、電池である。
【0012】
前記弾性構造100は、第一案内溝211と、第二案内溝221と、第一滑動部材40と、第二滑動部材50と、連動部材60と、バネ70と、を備える。前記第一案内溝211は、前記第一支持板210上に設けられている。前記第二案内溝221は、前記第二支持板220上に設けられている。前記第一案内溝211の案内方向と第二案内溝221の案内方向とは、互いに垂直であり、前記第一案内溝211の延長線と第二案内溝221の延長線とは、互いに交差する。
【0013】
前記第一滑動部材40は、前記第一案内溝211に滑動可能に設置される。前記第二滑動部材50は、前記第二案内溝221に滑動可能に設置される。前記挟持部270は、前記第一滑動部材40によって押し付け状態で設けられ、前記第一滑動部材40に前記第一案内溝211の案内方向に沿って前記第二支持板220に対面する推力F1を加える(図3を参照)。本実施形態において、前記第一滑動部材40の前記第一支持板210に対面する表面には、2つの第一ローラー41が設置され、前記第二滑動部材50の前記第二支持板220に対面する表面には、2つの第二ローラー51が設置される。これにより、前記第一滑動部材40と前記第一支持板210との間の摩擦力及び前記第二滑動部材50と前記第二支持板220との間の摩擦力を減少させることができる。また、前記第一ローラー41及び前記第二ローラー51の数量は、本実施形態の数量に限定されない。
【0014】
前記バネ70の一端は、前記固定板230に固定され、他端は前記第二滑動部材50に固定される。前記バネ70が弾性的に変位する方向は、前記第二支持板220に平行である。前記連動部材60の一端は、前記第一滑動部材40に回転可能に連接され、他端は、前記第二滑動部材50に回転可能に連接されており、前記連動部材60と前記第二支持板220との間には、夾角が形成される。
【0015】
図2は、前記弾性構造100が作動する前の状態を表している。推力F1を加えない場合、前記連動部材60と前記第二支持板220との間の夾角は、αである。
【0016】
図3を参照すると、前記物体300は、前記第一滑動部材40に、前記第一案内溝211の案内方向に沿って前記第二支持板220に対面する推力F1を加える。これにより、前記推力F1が、前記連動部材60及び前記第二滑動部材50を介して、前記バネ70に伝わり、その後推力F1を得た前記バネ70は、弾性変形し且つ弾性力を発生する。また、該弾性力は、前記第一滑動部材40における前記推力F1に対抗する反作用力Fを発生させる。前記第一滑動部材40が、静止の状態又は等速運動の状態である時、前記反作用力Fと前記推力F1との大きさは同じであるが、方向は相反する。前記第一案内溝211は、自身に垂直な方向に沿って前記第一滑動部材40に対して、第一支持力N1を加える。前記バネ70は、前記第二滑動部材50に対して、前記第二案内溝221の案内方向に沿って前記第一支持板210に向かう推力F2を加える。また、前記第二案内溝221は、自身に垂直な方向に沿って前記第二滑動部材50に対して、第二支持力N2を加える。この時、前記連動部材60と前記第二支持板220との間の夾角は、βである。前記第一滑動部材40が、前記第一案内溝211の案内方向へ且つ前記第二案内溝221へ移動する時のその変位(移動距離)をSとする。前記連動部材60の長さは、Lである。前記バネ70の弾性係数はKである。摩擦力を考慮しない場合、各々の力は、以下の関係を有する。
【0017】
F=F1=N2=F2×tanβ=K×L×[cosβ−cosα]×tanβ
【0018】
S=L×[sinα−sinβ]
【0019】
K及びLは、不変な値であるため、K=10グラム重/ミリメートル(gf/mm)である場合、L=10mmであり、α=80度であり、βは79度から50度まで減少する。表1は、前記反作用力F及び前記第一滑動部材40が前記第一案内溝211の案内方向に沿って移動した時の変位(移動距離)Sを表している。
【0020】
【表1】

【0021】
表1に示したように、βが79度から65度まで狭まると、Sは0.78mmまで大きくなり、前記反作用力Fは、8.79gfから53.27gfまで上がる。また、βが64度から50度まで狭まると、Sは2.18mmまで大きくなり、前記反作用力Fは、54.15gfから57.05gfまで上がった後、55.8gfまで下がる。
【0022】
図4は、表1による前記反作用力Fと変位Sとの曲線関係図である。前記反作用力Fは、変位Sと正比例せず、変位Sの変化量が大きい場合、前記反作用力Fの変化量は小さい。
【0023】
他の実施形態において、人又は物体が、比較的大きい力によって、前記第一滑動部材40に力を与える場合、前記弾性構造100は、緩衝部材として、人又は物体を保護する。
【0024】
他の実施形態において、前記第一ローラー41及び前記第二ローラー51は、省略することができる。
【0025】
他の実施形態において、前記固定板230は、前記第一支持板210に平行でなくてもよい。
【0026】
他の実施形態において、前記第一案内溝211と前記第一滑動部材40との間及び前記第二案内溝221と前記第二滑動部材50との間の摩擦力を減少するために、前記第一案内溝211の前記第一滑動部材40に接触する表面及び前記第二案内溝221の前記第二滑動部材50に接触する表面は、滑らかな表面である。
【0027】
本発明の弾性構造及び該弾性構造を用いた挟持装置は、前記第一滑動部材の変位が大きくなることに伴って、前記バネの弾性変形量が大きくなると、前記第一滑動部材が物体に加える反作用力の変化量が小さくなる。
【0028】
以上、本発明を実施例に基づいて具体的に説明したが、本発明は、上述の実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々の変更が可能であることは勿論であって、本発明の保護範囲は、以下の特許請求の範囲から決まる。
【符号の説明】
【0029】
40 第一滑動部材
41 第一ローラー
50 第二滑動部材
51 第二ローラー
60 連動部材
70 バネ
100 弾性構造
200 挟持装置
201 収容溝
210 第一支持板
211 第一案内溝
220 第二支持板
221 第二案内溝
230 固定板
260 当接板
270 挟持部
280 凹溝
300 物体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バネと、第一案内溝と、前記第一案内溝に対して垂直に設けられた第二案内溝と、第一支持板と、第二支持板と、固定板と、前記第一案内溝に設置された第一滑動部材と、前記第二案内溝に設置された第二滑動部材と、連動部材と、を備えた弾性構造であって、
前記第二支持板は、前記第一支持板と前記固定板とに垂直に連接され、前記第一案内溝は、前記第一支持板上に設置され、前記第二案内溝は、前記第二支持板上に設置され、前記第一案内溝の延長線と前記第二案内溝の延長線とは互いに交差し、前記連動部材の一端は、前記第一滑動部材に回転可能に連接され、他端は、前記第二滑動部材に回転可能に連接され、物体が、前記第一案内溝の案内方向に沿って、前記第一滑動部材に対して、前記第二案内溝に対面する推力を加えると、前記バネが弾性変形し、前記第一滑動部材は、前記物体に反作用力を加え、前記第一滑動部材が静止の状態又は等速運動の状態である時、前記反作用力と前記推力との大きさは同じであるが、方向は相反することを特徴とする弾性構造。
【請求項2】
前記第一滑動部材の前記第一案内溝に対面する表面には、少なくとも1つの第一ローラーが設置され、前記第二滑動部材の前記第二案内溝に対面する表面には、少なくとも1つの第二ローラーが設置されることを特徴とする請求項1に記載の弾性構造。
【請求項3】
前記第一案内溝の前記第一滑動部材に接触する表面及び前記第二案内溝の前記第二滑動部材に接触する表面は、滑らかな表面であることを特徴とする請求項1または2に記載の弾性構造。
【請求項4】
当接板と、挟持部と、弾性構造と、を備える挟持装置であって、
前記弾性構造は、バネと、第一案内溝と、前記第一案内溝に対して垂直に設けられた第二案内溝と、第一支持板と、第二支持板と、固定板と、前記第一案内溝に設置された第一滑動部材と、前記第二案内溝に設置された第二滑動部材と、連動部材と、を備え、前記第二支持板は、前記第一支持板と前記固定板とに垂直に連接され、前記第一案内溝は、前記第一支持板上に設置され、前記第二案内溝は、前記第二支持板上に設置され、前記第一案内溝の延長線と前記第二案内溝の延長線とは、互いに交差し、前記連動部材の一端は、前記第一滑動部材に回転可能に連接され、他端は、前記第二滑動部材に回転可能に連接され、前記挟持部は、前記第一滑動部材により押し付けられた状態で設けられ且つ前記第二案内溝に対面して設置され、物体が、前記挟持部と当接板との間に挟持されて前記第一案内溝の案内方向に沿って、前記第一滑動部材に前記第二案内溝に対面する推力を加えると、前記バネが弾性変形し、前記第一滑動部材は、前記物体に反作用力を加え、前記第一滑動部材が静止の状態又は等速運動の状態である時、前記反作用力と前記推力との大きさは同じであるが、方向は相反することを特徴とする挟持装置。
【請求項5】
前記挟持部の前記当接板に対面する表面には、前記物体を収容するために用いられる凹溝が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の挟持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−238574(P2012−238574A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−33790(P2012−33790)
【出願日】平成24年2月20日(2012.2.20)
【出願人】(508244485)佛山普立華科技有限公司 (14)
【出願人】(500080546)鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司 (1,018)
【Fターム(参考)】