説明

弾性波を用いた材料評価装置

【課題】本特許は、材料の強度、疲労の状態、振動現象を高感度に測定することを目的としている。
【解決手段】弾性振動から発生するサブハーモニック、非線形波動などは、非常に微弱な振動であり、高感度に測定する装置が必要である。本特許は、周波数変調された超音波非線形信号を相関器とロックインアンプを用いて高感度に測定する装置を形成することにより、高性能材料評価装置を得るものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料中、或いは材料表面の線形・非線形振動を高感度に検出する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の弾性振動の線形・非線形振動を検出する方法は、線形・非線形振動に感度のある超音波振動子を用いて検出し、その信号を増幅して表示する方法が用いられている。この方法では、微弱な信号である非線形信号を検出できず、大振幅励振を用いる必要がある。
本特許は、これらの欠陥を取り除くために考案されたものである。
【非特許文献】長、「非線形誘電率顕微鏡における最近の進展」、日本学術振興会弾性波素子技術第150委員会第71回研究会資料(平成13年1月)
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
コンデンサーに加えられた印加電界ωpによる容量の変化を高感度に検出する方法として、容量を含む回路を周波数ωsで発振させ、コンデンサーの容量がωpで変化することによる周波数変調されるた信号を周波数復調器を用いてωpの信号を検出し、このωpと印加電界ωpとの相関をとり、ロックイン増幅器により高感度に信号を検出する方法が文献(長、「非線形誘電率顕微鏡における最近の進展」、日本学術振興会弾性波素子技術第150委員会第71回研究会資料(平成13年1月))に示されている。この方法はコンデンサー内部及び表面の非線形容量のみを検出する方法である。
本特許は振動子、超音波変換器を用いて、材料内部の弾性の非線形性で発生するサブハーモニックス、ωp、nωpの振動を超高感度に検出する装置を得ることを目的としている。
【発明が解決するための手段】
【0004】
本特許は、超音波変換器或いは間隙の変化を用いて、材料中を伝搬する弾性波から発生する非線形、サブハーモニックス振動、或いは材料表面の間隙の変化による振動を、周波数変調発振器、信号発生器、ロックイン増幅器を用いて、超高感度に検出する方法に関するものである。
【実施例】
【0005】
【実施例1】
実施例の1は、図1のように、振動子、或いは超音波変換器6からなる超音波変換器5を含む回路で帰還増幅発振器3を周波数ωsで発振させ、更に振動子、超音波変換器に周波数ωpの電界4を印加し、線形、非線形、サブハーモニックス振動で発生した(1/n)ωp、ωp、2ωp、3ωp、・・、nωp(n=1、2、3、4、…)で変調された周波数変調信号を受信し、参照信号、(1/n)ωp、ωp、nωpと周波数変調復調器1からの周波数変調信号の相関をロックインアンプ2を通して、(1/n)ωp、ωp、2ωp、3ωp、・・、nωpの信号を検出することにより、振動子、超音波変換器、及び材料7中を伝搬する超音波の線形波動、非線形波動、サブハーモニック波動を検出する材料評価装置が実施例の1である。
【実施例2】
実施例の2は、請求項1において、振動子として、図2のように、先端の鋭い針状の振動子9を用い、その振動子の上に超音波変換器6を設けた振動子、或いは図3のように、平面構造の超音波変換器、或いは図4のように、一点収束型の超音波変換器、或いは直線収束型の超音波変換器、或いは図5のように、走査型超音波収超音波変換器であり、超音波変換器5は、(1/n)ωp、ωp、nωpの信号を受信する構造の超音波変換器からなる材料評価装置が実施例の2である。
【実施例3】
実施例の3は、請求項1において、振動子及び超音波変換器5として送受の振動子をもつ構造であり、図6のように、平面構造の超音波変換器6、12を送受に設けた超音波変換器5からなる構造、或いは図7のように、一点収束型の送受の超音波変換器、或いは送受の直線収束型の超音波変換器、或いは送受の走査型超音波収超音波変換器を用いた構造であり、受信超音波変換器は周波数(1/n)ωp、ωp、2ωp、・・nωpのいずれかの振動、或いは複数の周波数の振動を受信する超音波変換器からなる構造で、送受の超音波変換器を含む回路で発振する帰還発増幅発振器3からなる構造の材料評価装置が実施例の3である。
【実施例4】
実施例の4は、請求項1及び請求項3において、送受信の超音波変換器6、12を用いた構造において、送信超音波変換器は回路に含まれず、受信超音波変換器のみが回路に含まれた帰還増幅発振器3からなる構造の周波数ωsで発振する周波数変調発振器からなる材料評価装置が実施例の4である。
【実施例5】
実施例の5は、請求項1において、振動子として、先端の鋭い針状の振動子、或いは平面或いは曲面状の振動子からなり、この振動子をωpで振動させることによる容量変化を変換器とした、周波数変調発振器からなる構造の材料評価装置が実施例の5である。
【発明の効果】
【0006】
本特許は、材料の非線形定数の測定、材料の破壊強度の評価、破壊現象の解明、MEMSの振動振幅、非線形振動現象などを解明することを可能にするものである。ωpの信号源として、関数発生器(ファンクションシセサイザー)を用いる方法も本特許に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】材料評価装置のシステムダイアグラム
【図2】針状振動子と超音波変換器からなる検出器
【図3】超音波変換器と試料
【図4】収束型超音波変換器と試料
【図5】走査型超音波変換器と試料
【図6】送受変換器と試料
【図7】収束型送受変換器と試料
【符号の説明】
1−周波数変調復調器、2−ロックインアンプ、3―帰還増幅器(発振器)、4−印加交番電界(関数発生器)、5−振動子、超音波変換器及び試料、6−超音波変換器、7−試料、8−超音波、9−針状プローブ、10−超音波レンズ、11−走査型型超音波変換器、12−受信超音波変換器、13−短冊状超音波変換器、14−参照信号((1/n)ωp、ωp、nωp)、15−周波数変調信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
図1のように、振動子、或いは超音波変換器6からなる超音波変換器5を含む回路で帰還増幅発振器3を周波数ωsで発振させ、更に振動子、超音波変換器に周波数ωpの電界4を印加し、線形、非線形、サブハーモニックス振動で発生した(1/n)ωp、ωp、2ωp、3ωp、・・、nωp(n=1、2、3、4、…)で変調された周波数変調信号を受信し、参照信号、(1/n)ωp、ωp、nωpと周波数変調復調器1からの周波数変調信号の相関をロックインアンプ2を通して、(1/n)ωp、ωp、2ωp、3ωp、・・、nωpの信号を検出することにより、振動子、超音波変換器、及び材料7中を伝搬する超音波の線形波動、非線形波動、サブハーモニック波動を検出する材料評価装置。
【請求項2】
請求項1において、振動子として、図2のように、先端の鋭い針状の振動子9を用い、その振動子の上に超音波変換器6を設けた振動子、或いは図3のように、平面構造の超音波変換器、或いは図4のように、一点収束型の超音波変換器、或いは直線収束型の超音波変換器、或いは図5のように、走査型超音波収超音波変換器であり、超音波変換器5は、(1/n)ωp、ωp、nωpの信号を受信する構造の材料評価装置。
【請求項3】
請求項1において、振動子及び超音波変換器5として送受の振動子をもつ構造であり、図6のように、平面構造の超音波変換器6、12を送受に設けた超音波変換器5からなる構造、或いは図7のように、一点収束型の送受の超音波変換器、或いは送受の直線収束型の超音波変換器、或いは送受の走査型超音波収超音波変換器を用いた構造であり、受信超音波変換器は周波数(1/n)ωp、ωp、2ωp、・・nωpのいずれかの振動、或いは複数の周波数の振動を受信する超音波変換器からなる構造で、送受の超音波変換器を含む回路で発振する帰還発増幅発振器3からなる構造の材料評価装置。
【請求項4】
請求項1及び請求項3において、送受信の超音波変換器6、12を用いた構造において、送信超音波変換器は回路に含まれず、受信超音波変換器のみが回路に含まれた帰還増幅発振器3からなる構造の周波数ωsで発振する周波数変調発振器からなる材料評価装置。
【請求項5】
請求項1において、振動子として、先端の鋭い針状の振動子、或いは平面或いは曲面状の振動子からなり、この振動子をωpで振動させることによる容量変化を変換器とした、周波数変調発振器からなる構造の材料評価装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−133910(P2010−133910A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−335916(P2008−335916)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(000179454)
【Fターム(参考)】