説明

弾性波装置及びその製造方法

【課題】蓋部のパターンの有効利用を図ることができる弾性波装置を提供する。
【解決手段】SAW装置1は、基板3と、基板3の第1主面3aに設けられたSAW素子11と、カバー5とを有する。カバー5は、SAW素子11を囲む枠部15と、枠部15に積層され、枠部15の開口を塞ぐ蓋部17とを有している。蓋部17には、枠部15の上面を露出させる溝が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)装置や圧電薄膜共振器(FBAR:Film Bulk Acoustic Resonator)等の弾性波装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板と、基板の主面上に設けられた弾性波素子と、弾性波素子を封止するカバーとを有する弾性波装置が知られている(例えば特許文献1)。カバーは、基板上において弾性波素子に被せられた箱状に形成されている。弾性波素子の周囲には、カバーにより、弾性波の伝搬を容易化するための振動空間が形成されている。
【0003】
特許文献1では、カバーは、2層の樹脂層から形成されている。具体的には、まず、基板に1層目の樹脂層を積層し、その樹脂層を枠状にパターニングして枠部を形成する。次に、枠部に2層目の樹脂層を積層し、蓋部を形成する。枠部の開口は蓋部により塞がれ、振動空間が形成される。
【0004】
なお、基板上には、弾性波素子に接続された端子が立てて設けられており、当該端子は、枠部及び蓋部を貫通している。枠部及び蓋部における、端子が貫通する孔部は、1層目及び2層目の樹脂層に対するパターニングにより形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−135971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術は、カバーを弾性波素子に被せられた箱状に形成することに捉われている。すなわち、枠部と蓋部とで別個にパターニングが行われる点を振動空間の形成にしか利用できていない。従って、特許文献1では、例えば、クラックが発生しにくい形状のカバーや防水性の高い形状のカバーについての開示はない。
【0007】
本発明の目的は、蓋部のパターンの有効利用を図ることができる弾性波装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点の弾性波装置は、基板と、前記基板の主面に設けられた弾性波素子と、前記弾性波素子を囲む枠部と、前記枠部に積層され、前記枠部の開口を塞ぐ蓋部とを有するカバーと、を有し、前記蓋部には、溝が形成されている。
【0009】
本発明の第2の観点の弾性波装置は、基板と、前記基板の主面に設けられた弾性波素子と、前記弾性波素子を囲む枠部と、前記主面に立てて設けられ、前記枠部を貫通する端子と、前記枠部に積層され、前記枠部の開口を塞ぐ蓋部と、を有し、前記端子は前記枠部の開口を囲んで複数設けられ、平面視において、前記蓋部の外縁は、前記枠部の開口の外周側、且つ、前記複数の端子の内周側に位置している。
【0010】
本発明の弾性波装置の製造方法は、基板の主面に弾性波素子を設ける工程と、前記弾性波素子を囲む枠部を設ける工程と、前記枠部に積層され、前記枠部の開口を塞ぐ蓋部構成層を設ける工程と、前記蓋部構成層をパターニングして、前記枠部の上面を露出させる溝を形成する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、蓋部のパターンの有効利用を図ることができ、カバーをクラックが発生しにくい形状としたり、防水性の高い形状としたりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るSAW装置の外観斜視図である。
【図2】一部を破断して示す図1のSAW装置の概略斜視図である。
【図3】(a)から図3(d)は、図1のSAW装置の製造方法を説明する、図1のV−V線における断面図である。
【図4】(a)から図4(c)は、図3(d)の続きを示す断面図である。
【図5】(a)から図5(c)は、図4(c)の続きを示す断面図である。
【図6】第2の実施形態に係るSAW装置の外観斜視図である。
【図7】一部を破断して示す図6のSAW装置の概略斜視図である。
【図8】(a)〜図8(c)は、図6のSAW装置の製造方法を説明する、図6のVIII−VIII線における断面図である。
【図9】第3の実施形態のSAW装置の外観斜視図である。
【図10】第4の実施形態のSAW装置の外観斜視図である。
【図11】第5の実施形態のSAW装置の一部を示す外観斜視図である。
【図12】第6の実施形態に係るSAW装置における、図5(c)に対応する断面図である。
【図13】第7の実施形態に係るSAW装置における、図5(c)に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る弾性表面波装置(SAW装置)について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いられる図は模式的なものであり、図面上の寸法比率等は現実のものとは必ずしも一致していない。また、第2の実施形態以降において、既に説明された実施形態と同一又は類似する構成については、既に説明された実施形態と同一の符号を付すことがあり、また、説明を省略することがある。
【0014】
<第1の実施形態>
(SAW装置の構成)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るSAW装置1の外観斜視図である。
【0015】
SAW装置1は、いわゆるウェハレベルパッケージ(WLP)形のSAW装置により構成されている。SAW装置1は、基板3と、基板3に固定されたカバー5と、カバー5から露出する第1端子7A〜第6端子7F(以下、これらを区別せずに、単に「端子7」ということがある。)とを有している。
【0016】
SAW装置1は、複数の端子7のいずれかを介して信号の入力がなされる。入力された信号は、SAW装置1によりフィルタリングされる。そして、SAW装置1は、フィルタリングした信号を複数の端子7のいずれかを介して出力する。SAW装置1は、例えば、カバー5側の面を不図示の回路基板等の実装面に対向させて当該実装面に載置された状態で樹脂封止されることにより、端子7を実装面上の端子に接続した状態で実装される。
【0017】
基板3は、圧電基板により構成されている。具体的には、例えば、基板3は、タンタル酸リチウム単結晶,ニオブ酸リチウム単結晶等の圧電性を有する直方体状の単結晶基板である。基板3は、第1主面3aと、その背面側の第2主面3bとを有している。基板3の平面形状は適宜に設定されてよいが、例えば、Y方向を長手方向とする矩形である。基板3の大きさは適宜に設定されてよいが、例えば、厚さは0.2mm〜0.5mm、1辺の長さは0.5mm〜2mmである。
【0018】
カバー5は、第1主面3aを覆うように設けられている。カバー5の平面形状は、例えば、基板3の平面形状と同様であり、本実施形態では、Y方向を長手方向とする矩形である。カバー5は、例えば、第1主面3aと概ね同等の広さを有し、第1主面3aの概ね全面を覆っている。
【0019】
複数の端子7は、カバー5の上面(基板3とは反対側の面)から露出している。複数の端子7の数及び配置位置は、SAW装置1の内部の電子回路の構成に応じて適宜に設定される。本実施形態では、6つの端子7がカバー5の外周に沿って配列されている。より具体的には、6つの端子7は、カバー5の平面視の長手方向においては一方端、中央及び、他方端の3位置に配置され、カバー5の平面視の短手方向においては両側の2位置に配置されている。
【0020】
カバー5の上面には溝9が形成されている。溝9は、例えば、カバー5の平面視における長手方向の概ね中央において短手方向(X方向)に延び、カバー5の平面視における短手方向の中央位置を横切っている。
【0021】
また、溝9は、カバー5の平面視における長手方向の中央且つ短手方向の両側に配置された第2端子7Bと第5端子7Eとの間において、第2端子7Bと第5端子7Eとを結ぶ方向に延びている。換言すれば、溝9は、第2端子7B又は第5端子7Eを起点とする放射方向において延びている。ただし、溝9は、第2端子7B又は第5端子7Eに到達しておらず、第2端子7B及び第5端子7Eの側面はカバー5によって覆われている。
【0022】
溝9の平面形状は、例えば、長尺の矩形である。ただし、溝9の平面形状は、応力集中を緩和するように角部が面取りされたり、楕円状に形成されたりしていてもよい。溝9の幅は、例えば、端子7の直径以下である。
【0023】
図2は、カバー5の一部を破断して示すSAW装置1の斜視図である。
【0024】
第1主面3aには、SAW素子11が設けられている。SAW素子11は、SAW装置1に入力された信号をフィルタリングするためのものである。SAW素子11は、第1主面3aに形成された一対の櫛歯状電極(IDT電極)12を有している。各櫛歯状電極12は、基板3における弾性表面波の伝搬方向(X方向)に延びるバスバー12aと、バスバー12aから上記伝搬方向に直交する方向(Y方向)に伸びる複数の電極指12bとを有している。櫛歯状電極12同士は、それぞれの電極指12bが互いに噛み合うように設けられている。
【0025】
なお、図2は模式図であることから、数本の電極指12bを有する一対の櫛歯状電極12を示している。実際には、これよりも多数の電極指を有する複数対の櫛歯状電極が設けられてよい。また、複数のSAW素子11が直列接続や並列接続等の方式で接続され、ラダー型SAWフィルタや2重モードSAW共振器フィルタ等が構成されてよい。SAW素子11は、例えばAl−Cu合金等のAl合金によって形成されている。
【0026】
カバー5は、第1主面3aの平面視においてSAW素子11を囲む枠部15と、枠部15の開口を塞ぐ蓋部17とを有している。そして、第1主面3a(厳密には後述する保護層21)、枠部15及び蓋部17により囲まれた空間により、SAW素子11の振動を容易化する振動空間Sが形成されている。
【0027】
振動空間Sは、例えば、基板3の平面視における長手方向において2つ(図2において1つは蓋部17により隠れて不図示)設けられている。より具体的には、第1端子7A、第2端子7B、第5端子7E及び第4端子7Dに囲まれた不図示の振動空間Sと、第2端子7B、第3端子7C、第6端子7F及び第5端子7Eに囲まれた振動空間Sとが設けられている。
【0028】
枠部15は、概ね一定の厚さの層に振動空間Sとなる開口が形成されることにより構成されている。枠部15の厚さ(振動空間Sの高さ)は、例えば、数μm〜30μmである。蓋部17は、枠部15上に積層される、概ね一定の厚さの層により構成されている。蓋部17の厚さは、例えば、数μm〜30μmである。
【0029】
枠部15及び蓋部17は、例えば、感光性の樹脂により形成されている。感光性の樹脂は、例えば、アクリル基やメタクリル基などのラジカル重合により硬化する、ウレタンアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系の樹脂である。
【0030】
枠部15及び蓋部17は、同一の材料により形成されていてもよいし、互いに異なる材料により形成されていてもよい。本願では、説明の便宜上、枠部15と蓋部17との境界線を明示しているが、現実の製品においては、枠部15と蓋部17とが同一材料により形成され、一体的に形成されていてもよい。
【0031】
溝9は、蓋部17において、枠部15の上面が露出する貫通孔が形成されることにより形成されている。すなわち、溝9の底面は枠部15の上面により構成され、溝9の側面は蓋部17により構成されている。
【0032】
端子7は、第1主面3aに立てて設けられており、カバー5に形成された貫通孔5hを介してカバー5の上面に露出している。具体的には、貫通孔5hは、振動空間Sの外側において、枠部15及び蓋部17を第1主面3aの面する方向へ貫通している。端子7は、貫通孔5hに充填された柱状部7aと、貫通孔5hから露出するランド7bとを有している。ランド7bは、カバー5の上面に積層されるフランジを有している。
【0033】
第1主面3aには、SAW素子11に接続された配線13と、配線13に接続された複数のパッド14(対応する端子7の付加符号A〜Fを付すことがある。)とが設けられている。端子7は、パッド14上に設けられることにより、SAW素子11と接続されている。
【0034】
(SAW装置の製造方法)
図3(a)〜図5(c)は、SAW装置1の製造方法を説明する、図1のV−V線における断面図である。なお、図2において蓋部17の破断面はV−V線に対応している。製造工程は、図3(a)から図5(c)まで順に進んでいく。
【0035】
以下に説明する工程は、いわゆるウエハプロセスにおいて実現される。すなわち、分割されることによって基板3となる母基板を対象に、薄膜形成やフォトリソグラフィー法などが行われ、その後、ダイシングされることにより、多数個分のSAW装置1が並行して形成される。ただし、図3(a)〜図5(c)では、1つのSAW装置1に対応する部分のみを図示する。後述する他の実施形態の製造工程を説明する図も同様である。また、導電層や絶縁層などは、プロセスの進行に伴って形状が変化するが、変化の前後で共通の符号を用いる。
【0036】
図3(a)に示すように、まず、基板3の第1主面3a上には、導体層19が形成される。導体層19は、SAW素子11、配線13の少なくとも一部、及び、パッド14を含む層である。導体層19は、例えば、Al−Cu合金等のAl合金により形成されており、その厚さは、例えば、100〜300nmである。
【0037】
具体的には、まず、スパッタリング法、蒸着法またはCVD(Chemical Vapor Deposition)法等の薄膜形成法により、第1主面3a上に導体層19となる金属層が形成される。次に、金属層に対して、縮小投影露光機(ステッパー)とRIE(Reactive Ion Etching)装置とを用いたフォトリソグラフィー法等によりパターニングが行われる。パターニングにより、SAW素子11、配線13及びパッド14が形成される。
【0038】
導体層19が形成されると、図3(b)に示すように、保護層21が形成される。保護層21は、導体層19の酸化防止等に寄与するものである。保護層21は、例えば、絶縁性を有するとともに、SAWの伝搬に影響を与えない程度に質量の軽い材料により形成される。例えば、保護層21は、酸化珪素(SiOなど)、窒化珪素、シリコンなどにより形成されている。保護層21の厚さは、例えば、導体層19の厚さの1/10程度(10〜30nm)、又は、導体層19の厚さと同等以上(100nm〜300nm)である。
【0039】
具体的には、まず、CVD法または蒸着法等の薄膜形成法により保護層21となる薄膜が形成される。次に、導体層19のうちパッド14を構成する部分が露出するように、フォトリソグラフィー法によって薄膜の一部が除去される。これにより、保護層21が形成される。
【0040】
次に、図3(c)に示すように、枠部15となる薄膜が形成される。薄膜は、例えば、感光性樹脂により形成されたフィルムが貼り付けられることにより、又は、保護層21と同様の薄膜形成法により形成される。
【0041】
枠部15となる薄膜が形成されると、図3(d)に示すように、フォトリソグラフィー法等により、薄膜の一部が除去され、枠部15が形成される。これにより、枠部15の開口(振動空間Sとなる部分)、及び、パッド14を露出させる貫通孔5hの一部が形成される。
【0042】
枠部15が形成されると、図4(a)に示すように、蓋部17となる薄膜が形成される。薄膜は、例えば、感光性樹脂のフィルムが貼り付けられることにより形成される。そして、薄膜が形成されることにより、枠部15の開口が塞がれて、振動空間Sが構成される。
【0043】
蓋部17となる薄膜が形成されると、図4(b)に示すように、フォトリソグラフィー法等により、薄膜の一部が除去され、蓋部17が形成される。これにより、溝9、及び、パッド14を露出させる貫通孔5hが形成される。
【0044】
蓋部17が形成されると、図4(c)に示すように、めっき下地層23が形成される。めっき下地層23は、カバー5の上面、溝9の内部及び貫通孔5hの内部に亘って形成される。めっき下地層23は、例えば、TiとCuとを積層したものからなり、スパッタ法により形成される。
【0045】
めっき下地層23が形成されると、図5(a)に示すように、レジスト層25が形成される。レジスト層25は、貫通孔5h及びその周囲において、めっき下地層23が露出するように形成される。なお、レジスト層25は、溝9において、めっき下地層23を覆っている。レジスト層25は、例えば、スピンコート等により感光性樹脂の薄膜が形成され、その薄膜がフォトリソグラフィーによりパターニングされることにより形成される。
【0046】
レジスト層25が形成されると、図5(b)に示すように、電気めっき処理により、めっき下地層23の露出部分に金属27を析出させる。金属27は、例えば、Cuである。金属27はカバー5の上面よりも高く析出される。
【0047】
その後、図5(c)に示すように、めっき下地層23のレジスト層25に被覆されていた部分及びレジスト層25が除去される。これにより、めっき下地層23及び金属27からなる端子7が形成される。なお、めっき下地層23等は、溝9からも除去される。端子7のカバー5からの露出面は、ニッケルや金などにより構成されてもよい。
【0048】
以上の実施形態によれば、SAW装置1は、基板3と、基板3の第1主面3aに設けられたSAW素子11と、カバー5とを有する。カバー5は、SAW素子11を囲む枠部15と、枠部15に積層され、枠部15の開口を塞ぐ蓋部17とを有している。蓋部17には、枠部15の上面を露出させる溝9が形成されている。
【0049】
従って、蓋部のパターンの有効利用を図ることができる。例えば、カバー5をクラックが発生しにくい形状としたり、防水性の高い形状としたりすることができる。具体的には、以下のとおりである。
【0050】
発明者の実験では、SAW装置において過酷な温度変化を生じさせ、SAW装置内の各部の熱膨張差によってクラックを発生させた場合、カバーの上面且つ端子の周囲部分がクラックの起点となり、端子から延びるようにクラックが発生し易いことが確認されている。これは、端子の周囲で応力集中が生じるためと考えられる。なお、各部の熱膨張係数は、例えば、カバー:55ppm/℃、端子:17ppm/℃、基板:3〜7ppm/℃である。
【0051】
一方、本実施形態において、SAW装置1は、第1主面3aに立てて設けられ、カバー5を貫通する端子7を有する。カバー5には、蓋部17のパターンにより、端子7を起点とする放射方向において延びる溝9が形成されている。従って、クラックが生じやすい位置及び方向に予め溝9を形成しておくことにより、応力集中の発生が抑制され、ひいては、クラックの発生が抑制される。
【0052】
また、発明者の実験では、概ね端子間に延びるクラックが発生し易いことも確認されている。これは、端子間では応力集中が特に生じやすいためと考えられる。一方、本実施形態において、端子7は複数設けられ、溝9は、複数の端子(7B、7E)間の方向において延びている。従って、クラックの発生がより効果的に抑制される。
【0053】
また、発明者の実験では、カバーを短手方向に横断するように延びるクラックが発生し易いことも確認されている。これは、長手方向においては、短手方向よりも熱膨張差が累積され、応力が大きくなるためと考えられる。一方、本実施形態において、カバー5は、平面視において所定方向(Y方向)に長く形成されており、蓋部17のパターンにより、当該カバー5を短手方向(X方向)に横切る溝9が形成されている。従って、クラックの発生がより効果的に抑制される。
【0054】
本実施形態のSAW装置1の製造方法は、基板3の第1主面3aにSAW素子11を設ける工程(図3(a))と、SAW素子11を囲む枠部15を設ける工程(図3(b)及び図3(c))と、枠部15に積層され、枠部15の開口を塞ぐ蓋部構成層を設ける工程(図4(a))と、蓋部構成層をパターニングして、枠部15の上面を露出させる工程(図4(b))とを有する。従って、上述の好適な形状を有するSAW装置1を簡便に形成することができる。
【0055】
<第2の実施形態>
図6は、第2の実施形態のSAW装置101の外観斜視図である。図7は、SAW装置101のカバー105の一部を破断して示すSAW装置101の斜視図である。
【0056】
第2の実施形態は、蓋部117(カバー105)の形状、第2端子107B及び第5端子107E(以下、単に「端子107」ということがある。)の形状が、第1の実施形態と相違する。その他の構成については、第2の実施形態は、概ね、第1の実施形態と同様である。
【0057】
蓋部117には、第1の実施形態の蓋部17と同様に、溝109が形成されている。溝109は、溝9と同様に、第2端子107B及び第5端子107E間の方向において延び、また、カバー5をその短手方向に横切っている。
【0058】
しかし、溝109は、蓋部117を完全に横断しており、蓋部117を、基板3の平面視における長手方向(Y方向)において、第1分割蓋部118Aと、第2分割蓋部118Bとに分割している(以下、単に「分割蓋部118」ということがある。)。また、端子107は、溝109により、枠部15よりも上方側の部分が露出している。
【0059】
端子107は、フランジ状部分が形成されていない点が端子7と相違する。なお、図7では、端子107の径が端子7のフランジ状部分の径と同等に設定されている場合を例示している。ただし、端子107の径は、端子7の柱状部7aと同等の径に設定されるなどしてもよい。
【0060】
図8(a)〜図8(c)は、SAW装置1の製造方法を説明する、図6のVIII−VIII線における断面図である。なお、図7において枠部15の破断面はVIII−VIII線に対応している。
【0061】
SAW装置101の製造方法は、めっき下地層23の形成までは、溝109の形状及び大きさが溝9の形状及び大きさとことなる以外は、第1の実施形態(図3(a)〜図4(c))と同様であり、説明を省略する。
【0062】
めっき下地層23が形成されると、図8(a)に示すように、第1の実施形態(図5(a))と同様に、レジスト層25が形成される。ただし、第2の実施形態においては、レジスト層25は、溝109の内部において一部が除去されている。具体的には、レジスト層25は、端子107に対応するパッド14上に貫通孔が形成されている。なお、溝109の側面は、レジスト層25により覆われている。
【0063】
レジスト層25が形成されると、図8(b)に示すように、第1の実施形態(図5(b))と同様に、金属27が析出される。その後、図8(c)に示すように、第1の実施形態(図5(c))と同様に、めっき下地層23のレジスト層25に被覆されていた部分及びレジスト層25が除去される。
【0064】
これにより、端子7及び端子107が形成される。端子107は、溝109内に配置されたレジスト層25の孔内において形成されるから、レジスト層25が除去されると、枠部15よりも上方側の部分の全体が、溝109内において露出する。
【0065】
以上の第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果が得られる。すなわち、カバー5をクラックが発生しにくい形状にするなど、蓋部のパターンの有効利用を図ることができる。
【0066】
また、端子107は、蓋部117のパターンにより、枠部15よりも上方側部分の全体が露出している。従って、端子107の周囲においては、クラックの起点となり易い、蓋部の上面且つ端子の周囲部分が存在しない。その結果、クラックの発生が効果的に抑制される。
【0067】
カバー105は、蓋部117のパターンにより、蓋部117が2以上に分割されている。従って、蓋部117全体に亘って熱膨張差が累積されて大きな応力が生じることが抑制される。また、例えば、溝109を更に深くして、枠部15も分割してしまうような場合には、基板3と枠部15との合せ目(枠部15の外縁の長さ)が増加し、基板3と枠部15との合せ目からの水分の侵入の可能性が高くなるが、そのようなおそれもない。
【0068】
<第3の実施形態>
図9は、第3の実施形態のSAW装置201の外観斜視図である。
【0069】
第3の実施形態は、蓋部217(カバー205)の形状及び端子107の形状が、第1の実施形態と相違する。その他の構成については、第3の実施形態は、概ね、第1の実施形態と同様である。なお、端子107は、第2の実施形態の端子107と同様の構成である。
【0070】
蓋部217は、第2の実施形態と同様に、基板3の長手方向(Y方向)において溝209により分割されており、第1分割蓋部218A及び第2分割蓋部218B(以下、単に「分割蓋部218」ということがある。)を有している。
【0071】
分割蓋部218は、第2の実施形態の分割蓋部118と同様に、それぞれ、枠部15の開口を塞ぎ、振動空間S(図9では不図示)を構成している。換言すれば、分割蓋部218の外縁は、枠部15の開口の外周側に位置している。
【0072】
しかし、分割蓋部218(の外縁)は、複数の端子107の内周側に位置している。具体的には、第1分割蓋部218Aは、第1端子107A、第2端子107B、第5端子107E及び第4端子107Dの内周側に位置している。また、第2分割蓋部218Bは、第2端子107B、第3端子107C、第6端子107F及び第5端子107Eの内周側に位置している。蓋部217全体が第1端子107A〜第6端子107Fの内周側に位置していると捉えることもできる。
【0073】
以上の第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果が得られる。すなわち、カバー5をクラックが発生しにくい形状にするなど、蓋部のパターンの有効利用を図ることができる。また、第2の実施形態と同様に、溝209により、クラック発生抑制や防水性向上の効果が奏される。
【0074】
さらに、SAW装置201において、端子107は、枠部15の開口を囲んで複数設けられ、平面視において、分割蓋部218の外縁は、枠部15の開口の外周側、且つ、複数の端子107の内周側に位置している。
【0075】
換言すれば、第2の実施形態では、概ね、振動空間Sを形成するのに必要最小限の範囲で蓋部217(分割蓋部218)が形成されている。従って、蓋部217における熱膨張差の累積が抑制され、クラックの発生が効果的に抑制される。
【0076】
<第4の実施形態>
図10は、第4の実施形態のSAW装置301の外観斜視図である。
【0077】
第4の実施形態は、蓋部317(カバー305)の形状及び端子107の形状が、第1の実施形態と相違する。その他の構成については、第4の実施形態は、概ね、第1の実施形態と同様である。
【0078】
蓋部317は、第1の実施形態の溝9に代えて、複数の溝309が形成されている。溝309は、端子7から蓋部317の外側に向かって延びている。具体的には、例えば、溝309は、複数の端子7のうち、蓋部317の角部に位置する端子7(7A、7C、7D、7F)に対応して設けられている。そして、溝309は、端子7から蓋部317の外縁の頂点に向かって延びている。
【0079】
なお、端子107は、第2の実施形態の端子107と同様の構成である。ただし、第4の実施形態の端子は、第1の実施形態の端子7と同様の構成とされてもよいし、溝309と接しない位置においてのみフランジを有する構成とされてもよい。
【0080】
以上の第4の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果が得られる。すなわち、カバー5をクラックが発生しにくい形状にするなど、蓋部のパターンの有効利用を図ることができる。また、溝309は、端子107を起点とする放射方向において延びていることから、第1の実施形態と同様に、端子を起点とするクラックの発生を効果的に抑制できる。
【0081】
発明者の実験では、端子からカバーの外側へ延びるクラックが発生し易いことが確認されている。これは、上述のように端子がクラックの起点となり易いことに加え、外縁においては応力の逃げ場がないためと考えられる。一方、本実施形態において、溝309は、端子107側から蓋部の外側への方向において延びている。従って、クラックの発生がより効果的に抑制される。なお、第2及び第3の実施形態の溝109及び209は、端子107から蓋部の外側へ延びる溝を含んでいる。
<第5の実施形態>
図11は、第5の実施形態のSAW装置401の一部を示す外観斜視図である。
【0082】
第5の実施形態は、蓋部417(カバー405)の形状が、第1の実施形態と相違する。その他の構成については、第5の実施形態は、概ね、第1の実施形態と同様である。
【0083】
蓋部417は、第1の実施形態の溝9に代えて、複数の溝409(図11では一つのみ示す。)が形成されている。複数の溝409は、複数の端子7に対応して設けられ、本実施形態では6個設けられている。各溝409は、端子7を囲むように延びている。溝409の平面形状は、例えば、円形である。
【0084】
以上の第4の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果が得られる。すなわち、カバー5をクラックが発生しにくい形状にするなど、蓋部のパターンの有効利用を図ることができる。また、溝409は端子7を囲むように延びていることから、端子を起点とするクラックの発生を効果的に抑制できる。
【0085】
<第6の実施形態>
図12は、第6の実施形態に係るSAW装置501における、図5(c)に対応する断面図である。
【0086】
SAW装置501は、めっき下地層23が溝9において除去されずに残っている点のみが第1の実施形態と相違する。当該実施形態によれば、めっき下地層23により、溝9内における枠部15と蓋部17との合せ目を塞ぎ、防水性を向上させることができる。さらに、第1の実施形態の製造方法において、溝9内のめっき下地層23を残すようにするだけで、防水性の向上が図られる。
【0087】
なお、図5(a)に対応する工程において、溝9内のレジスト層25を除去し、図5(b)に対応する工程において、溝9内において金属27を析出させ、その後、レジスト層25と、レジスト層25に覆われているめっき下地層23を除去してもよい。すなわち、溝9内に、めっき下地層23及び金属27を配置してもよい。この場合にも、第1の実施形態と概ね同様の製造方法により、溝9における防水性の向上を図ることができる。
【0088】
<第7の実施形態>
図13は、第7の実施形態に係るSAW装置601における、図5(c)に対応する断面図である。
【0089】
SAW装置601は、カバー5を覆う絶縁膜629を有している点のみが第1の実施形態と相違する。
【0090】
絶縁膜629は、例えば、カバー5の上面及び側面に亘って設けられている。また、絶縁膜629は、溝9内に設けられるとともに、貫通孔5hの側面に設けられている。なお、貫通孔5hの側面において、絶縁膜629にはめっき下地層23が積層されている。絶縁膜629の厚さは、蓋部17の厚さよりも薄く、例えば、500nm〜2μmである。
【0091】
絶縁膜629は、例えば、カバー5の材料よりも遮水性の高い材料により形成されている。絶縁膜629の材料は、例えば、一般に、有機材料(カバー5を構成する樹脂)よりも遮水性の高い無機材料である。このような材料としては、例えば、酸化珪素(SiOなど)、窒化珪素、シリコンが挙げられる。絶縁膜629の材料は、保護層21の材料と同一材料であることが好ましい。
【0092】
SAW装置601は、例えば、第1の実施形態の製造方法において、めっき下地層23を形成する工程(図4(c))の前に、絶縁膜629を形成する工程を追加することにより、製造される。
【0093】
絶縁膜629は、例えば、CVD法または蒸着法等の薄膜形成法により薄膜が形成され、薄膜のうち、パッド14上の部分がフォトリソグラフィー法によって除去されることにより、形成される。
【0094】
以上の第7の実施形態によれば、絶縁膜629により溝9における防水性を向上させることができる。また、カバー5の側面における枠部15と蓋部17との合せ目における防水性の向上、カバー5の外縁と保護層21との合せ目における防水性の向上などを図ることもできる。
【0095】
本発明は、以上の実施形態及び変形例に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0096】
弾性波装置は、SAW装置に限定されない。例えば、弾性波装置は、圧電薄膜共振器であってもよい。
【0097】
弾性波装置において、保護層(21)は省略されてもよいし、逆に、他の適宜な層などが形成されてもよい。例えば、絶縁層を介して導体層19と立体交差する導体層、パッド14と端子7との間に介在する接続強化層、枠部と蓋部との間に形成される導電層、基板のカバーとは反対側の主面に積層される電極又は保護層が設けられてもよい。
【0098】
振動空間の形状及び数、端子の形状、数、配置位置は、適宜に設定されてよい。端子は、枠部を貫通する柱状のものに限定されない。例えば、基板の主面に設けられた配線(13)がカバーの外側まで延び、当該配線の端部に柱状の端子が立てられてもよい。
【0099】
蓋部のパターンにより露出された枠部の上面(凹部の底面など)には、クラックの発生の抑制の観点からは、樹脂(絶縁体)や金属(導体)が配置(充填など)されず、蓋部の上面よりも低く形成されていることが好ましい。ただし、樹脂や弾性波素子とは非接続の金属が配置されてもよい。
【0100】
また蓋部上に蓋部を補強するための金属層を設けてもよい。蓋部上に金属層を設けることによって外部から大きな圧力が印加された場合であっても蓋部が変形するのを抑制して振動空間が大きく歪むのを防止することができる。このような金属層は例えばCuからなり、端子を形成するのと同じプロセスでめっきにより作製することができる。
【0101】
第1〜第7の実施形態は適宜に組み合わされてよい。例えば、第1の実施形態の溝9と第4の実施形態の溝309とが共に設けられてもよい。
【0102】
第1の実施形態等において例示した端子を起点とする放射方向に延びる溝は、端子に接していてもよいし、接していなくてもよい。また、放射方向は、厳密に端子の中心が起点となる必要はない。
【0103】
第1の実施形態等において例示した、カバーをその短手方向に横切る溝は、短手方向に平行なものに限定されず、短手方向に斜めに延びるものであってもよい。また、溝は、カバー全体を横切る必要はない。例えば、溝は、カバーの短手方向の中央を通過し、カバーの短手方向の1/3程度に亘って延びていれば、カバーを横切っているといえる。
【0104】
第3の実施形態(図9)において例示したように、端子が枠部の開口を囲むように複数設けられ、蓋部の外縁が複数の端子の内周側に位置する場合において、端子は、枠部の開口を挟んで2以上設けられていれば、枠部を囲んで複数設けられているといえる。また、複数の端子が蓋部の外側に位置して蓋部を貫通していなければ、蓋部の外縁が複数の端子の内周側に位置するといえる。換言すれば、複数の端子の内周側に位置する蓋部は、複数の端子を直線で結んだ範囲内に収まるものに限定されない。
【符号の説明】
【0105】
1…弾性表面波装置(弾性波装置)、3…基板、3a…第1主面(主面)、5…カバー、11…SAW素子、15…枠部、17…蓋部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の主面に設けられた弾性波素子と、
前記弾性波素子を囲む枠部と、前記枠部に積層され、前記枠部の開口を塞ぐ蓋部とを有するカバーと、
を有し、
前記蓋部には、溝が設けられている
弾性波装置。
【請求項2】
前記溝は、前記蓋部を厚み方向に貫通している請求項1に記載の弾性波装置。
【請求項3】
前記主面に立てて設けられ、前記枠部を貫通する端子をさらに有し、
前記溝は、前記端子を起点とする放射方向において延びるように設けられている
請求項1または2に記載の弾性波装置。
【請求項4】
前記端子は複数設けられ、
前記溝は、前記複数の端子のうち隣り合う2つの端子を結ぶ方向に延びている
請求項3に記載の弾性波装置。
【請求項5】
前記溝は、前記端子から前記蓋部の外側への方向において延びている
請求項3に記載の弾性波装置。
【請求項6】
前記主面に立てて設けられ、前記枠部を貫通する端子をさらに有し、
前記溝は、前記端子を囲むように形成されている
請求項1または2に記載の弾性波装置。
【請求項7】
前記主面に立てて設けられ、前記枠部を貫通する端子をさらに有し、
前記端子は、前記溝により、前記枠部よりも上方側部分の全体が露出している
請求項1または2に記載の弾性波装置。
【請求項8】
前記カバーは、平面視において所定方向に長く形成されており、前記溝は、当該カバーをその短手方向に横切るように形成されている
請求項1または2に記載の弾性波装置。
【請求項9】
前記カバーは、前記溝により、前記蓋部が2以上に分割されている
請求項2に記載の弾性波装置。
【請求項10】
基板と、
前記基板の主面に設けられた弾性波素子と、
前記弾性波素子を囲む枠部と、
前記主面に立てて設けられ、前記枠部を貫通する端子と、
前記枠部に積層され、前記枠部の開口を塞ぐ蓋部と、
を有し、
前記端子は前記枠部の開口を囲んで複数設けられ、
平面視において、前記蓋部の外縁は、前記枠部の開口の外周側、且つ、前記複数の端子の内周側に位置している
弾性波装置。
【請求項11】
基板の主面に弾性波素子を設ける工程と、
前記弾性波素子を囲む枠部を設ける工程と、
前記枠部に積層され、前記枠部の開口を塞ぐ蓋部構成層を設ける工程と、
前記蓋部構成層をパターニングして、前記枠部の上面を露出させる溝を形成する工程と、
を有する弾性波装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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