説明

弾性率が改善されたリチウムを含まないガラス

【課題】Rガラス組成物を提供する。
【解決手段】SiO2を59.0〜64.5質量%の量で、Al2O3を14.5〜20.5質量%の量で、CaOを11.0〜16.0質量%の量で、MgOを5.5〜11.5質量%の量で、Na2Oを0.0〜4.0質量%の量で、TiO2を0.0〜2.0質量%の量で、Fe2O3を0.0〜1.0質量%の量で、B2O3を0.0〜約3.0質量%の量で含み、K2O、Fe2O3、ZrO2、およびフッ素の各々が、0.0〜約1.0質量%の量で存在し、さらにSrOおよびZnOの各々が0.0〜約2.0質量%の量で存在する。例示的実施態様において、ガラス組成物は、リチウムまたはホウ素を含有しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年8月4日に出願された“Improved Modulus, Lithium Free Glass”と称する米国仮特許出願第61/231,203号および2009年8月5日に出願された“Improved Modulus, Lithium Free Glass”と称する米国仮特許出願第61/231,482号に関しかつそのすべての優先権の利益を主張し、各々の明細書の全内容は、全体として本願明細書に組み込まれるものとする。
発明の技術分野および産業上の利用可能性
本発明は、一般的には、ガラス組成物、より詳しくは、リチウムを添加または包含させずに許容され得る成形特性と機械的性質を達成しかつ成分が耐火性溶融炉内で融解する高性能ガラス組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス繊維は、種々の原材料が所望の化学組成を得る特定の割合で組み合わせられたものから製造される。この材料の収集物は、一般に“ガラスバッチ”と呼ばれる。ガラス繊維を形成するために、典型的には、ガラスバッチを溶融炉または溶融装置内で融解させ、溶融ガラスをブッシングまたはオリフィスプレートによってフィラメントに引き伸ばし、潤滑剤、カップリング剤およびフィルム形成性バインダー樹脂を含有する水性サイジング組成物をフィラメントに適用する。サイジングを適用した後、繊維を1つ以上のストランドに集め、パッケージに巻き付けるか、あるいは繊維を湿ったまま細断し、収集してもよい。次に、収集したチョップトストランドを乾燥し、硬化して、乾燥チョップトファイバーを形成してもよく、あるいは湿潤チョップトファイバーとしてその湿潤状態で包装されることもあり得る。
ガラスバッチおよびそれから製造されるガラスの組成は、典型的には、成分のパーセントについて表され、主に酸化物として表される。SiO2、Al2O3、CaO、MgO、B2O3、Na2O、K2O、Fe2O3および少量の他の化合物、例えば、TiO2、Li2O、BaO、SrO、ZnO、ZrO2、P2O5、フッ素、およびSO3が、ガラスバッチの一般成分である。これらの酸化物の量を変化させるか、またはガラスバッチ内の酸化物の一部を取り除くことから、多くのタイプのガラスを生産することができる。生産することができるこのようなガラスの例としては、Rガラス、Eガラス、Sガラス、Aガラス、Cガラス、およびECRガラスが挙げられる。ガラス組成は、ガラスの成形特性と製品特性を制御する。ガラス組成の他の特徴としては、原材料コストおよび環境影響が挙げられる。
従来は、ガラス繊維組成物にリチウムをスポジュミン(アルミノケイ酸リチウム原材料)の形で添加して、溶融を促進させるとともに望ましい機械的性質と成形特性を得ている。例えば、リチウムは、ガラス配合物の粘度を低下させるのに非常に効果的である。リチウム含有ガラス組成物は機械的性質と成形特性について望ましい特性を有し得るが、ガラス組成物中のリチウムの存在はガラス繊維製造のコストを上げる。このコストは、リチウムを含むことによりRガラスのような高性能ガラスを白金溶融炉よりもむしろ耐火性タンク内で融解させることが充分可能になるように粘度が低下する場合には相殺され得る。Rガラスは、一般に白金溶融炉内で融解する。
【0003】
ガラスが従来の耐火性タンクとガラス分配システムにおいて融解され分配させることができる特性を形成する特有の組み合わせがある。第一に、ガラスが保持される温度は、それが耐火物を攻撃的に作用しないように充分低くなければならない。耐火物に対する攻撃は、例えば、耐火物の最高使用温度を超えることによってまたはガラスが耐火物を許容し得ないほど高レベルまで腐食かつ侵食する速度を上げることによって、起こり得る。ガラスがガラス粘度の低下によってより流動性になるので、耐火物腐食速度が非常に増加する。それ故、ガラスが耐火物タンク内で溶融されるように、耐火物タンクの温度がある温度より低く保たれなければならず、粘度(例えば、流れ抵抗)がある粘度より高く維持されなければならない。また、溶融ユニット内のガラスの温度だけでなく、全体分布と繊維化プロセスの全体にガラスの結晶化を防止するのに充分高くなければならない(すなわち、液相温度より高い温度に保たれなければならない)。
ファイバライザーで、繊維化に選ばれる温度(すなわち、成形温度)とガラスの液相温度の間に最低温度差を必要とすることは共通している。この温度差、ΔTは、繊維の生産が失透から生じる破壊によって妨害されることなく連続繊維がどれくらい容易に形成され得るかの測定である。従って、連続するかつ分断されていないガラス繊維形成を達成するためにできるだけ大きいΔTを有することが望ましい。
最終性能がより高いガラス繊維の探求において、ΔTは、時々、所望の最終特性を達成するために犠牲にされてきた。温度が従来の耐火材料の最高最終使用温度を超えたことからまたはガラスの粘度が耐火物腐食を許容し得るレベルに保つのに充分高いガラス粘度を生じつつガラス本体の温度が液相温度より高く保持することができないような粘度であったことから、この犠牲の結果によってガラスが白金または白金合金被覆炉において融解されることが要求されている。Sガラスは、これらの現象の双方が起こる良好な例である。Sガラスの溶融温度は一般の耐火材料には高過ぎ、ΔTは非常に小さく(あるいは負であり)、ガラスを従来の耐火物に対して非常に流動性かつ非常に腐食性であるようにさせる。従来のRガラスは、また、非常に小さいΔTを有するので、白金または白金合金被覆溶融炉内で融解される。リチウムを配合物に添加するとRガラスのΔTが充分に増大し、標準耐火性溶融炉内で融解させることが可能になる。しかしながら、リチウム原料は、非常に高価であり、ガラス繊維のための製造コストを非常に増加させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、好ましい機械的性質と物理的性質(例えば、比弾性率、引張強さ)および成形温度が充分に低くかつ成形温度と液相温度の間の差がガラス組成物の成分を従来の耐火タンク内で融解することを可能にするのに充分大きい成形特性(例えば、液相温度、成形温度)を保持する高性能のリチウムを含まないガラス組成物が当該技術において求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施態様において、SiO2を59.0〜64.5質量%の量で、Al2O3を14.5〜20.5質量%の量で、CaOを11.0〜16.0質量%の量で、MgOを5.5〜11.5質量%の量で、Na2Oを0.0〜4.0質量%の量で、TiO2を0.0〜2.0質量%の量で、B2O3を0.0〜約3.0質量%の量で、K2O、Fe2O3、ZrO2およびフッ素を各々0.0〜約1.0質量%の量で、SrOおよびZnOを各々0.0〜約2.0質量%の量で含むRガラス組成物が提供される。本明細書に用いられる語句“質量%”は、全組成物の質量パーセントとして定義されることを意味する。さらに、組成物は、必要により、微量の他の成分または不純物を含有してもよい。例示的実施態様において、ガラス組成物は、リチウムおよびホウ素を含まないかまたは実質的に含まない。さらに、ガラス組成物は、ガラス繊維の形成において従来の高コスト白金合金被覆溶融炉の代わりに低コスト耐火性溶融炉を用いるのに充分低い成形粘度を有する。
本発明の他の実施態様において、上記の組成物から形成される連続Rガラス繊維が耐火性タンク溶融炉を用いて得られる。耐火性ブロックから形成される耐火性タンクを用いることによって、本発明の組成物によって得られるガラス繊維の生産に関連した製造コストが削減されることになる。Rガラス組成物は、テキスタイルに用いられる連続ガラスストランドを形成するために、また、ウィンドブレードや航空宇宙構造を形成するのに用いられる補強として用いることができる。
本発明のさらに他の実施態様において、Rガラス繊維を形成する方法が提供される。繊維は、原料成分を入手し、成分を適切な量で混合して、所望の質量パーセントの最終組成物を得ることによって形成され得る。次に、混合したバッチを従来の耐火性溶融炉内で融解し、白金合金ベースブッシングのオリフィスによって引き伸ばして、ガラス繊維を形成する。個々のフィラメントを一緒に集めることによってガラス繊維のストランドを形成する。ストランドを巻き付け、意図された用途に適している慣用の方法でさらに処理することができる。
【0006】
本発明の他の実施態様において、本発明の組成物から形成されるガラス繊維は、液相温度が約1330℃以下、log3温度が約1405℃未満、ΔTが約135℃まで、かつ比弾性率が少なくとも3.24×106メートルである。
本発明のさらに他の実施態様において、本発明の組成物から形成されるガラス繊維は、強度が約4187Mpa〜約4357Mpaである。
本発明の実施態様において、さらに、ガラス組成物は、ガラス繊維の形成において従来の高コスト白金合金被覆溶融炉の代わりに低コスト耐火性溶融炉を用いるのに、充分に低い成形粘度と、充分に大きいΔTを有する。
本発明の他の実施態様において、本発明のRガラス組成物から形成される繊維は、ガラス組成物を融解させるのに必要なエネルギー入力が少ないために低コストで形成される。
本発明の他の実施態様において、さらに、本発明のガラスは、リチウムを含有する従来のRガラス組成物と同様の比弾性率強度とΔTを有する。したがって、本発明の組成物は、商業的に許容され得るRガラス繊維およびそのRガラス繊維から得られる繊維製品を製造する能力を保持する。
本発明の実施態様において、さらに、ガラス組成物は、組成物からリチウムを除外しかつ組成物の成分を融解するために従来の耐火性溶融操作を用いることによって生産コストを削減する。
本発明の上記や他の目的、特徴、および利点は、以下の詳細な説明を考慮することから以下でより完全に明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0007】
特に定義されない限り、本明細書に用いられるすべての技術的および科学的な用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様なまたは等価ないかなる方法および材料も本発明の実施または試験に使用し得るが、好適な方法および材料は本明細書に記載されている。公開されたまたは対応する米国または外国の特許出願を含む、本明細書におけるすべての引例、および他の参考文献は、引例に示されるすべてのデータ、表、図、および本文を含む、全体として各々組み込まれるものとする。用語“組成物”および“配合物”は、本明細書に同じ意味で用いることができる。その上、語句“本発明のガラス組成物”および“ガラス組成物”は、同じ意味で用いることができる。
本発明は、リチウムを含まずかつRガラス組成物に等価であるかまたは実質的に等価である比弾性率、引張強さ、および密度を有する高性能Rガラス組成物に関する。ガラス組成物は、従来のRガラスより低い成形温度と高いΔTを有し、それによって、白金から形成される従来の高コストの擬似溶融炉の代わりにガラス繊維の形成のための低コスト耐火性タンク溶融炉を用いることが可能になる。耐火性ブロックから形成される耐火性タンクを用いることによって、本発明の組成物によって得られるガラス繊維の生産に関連した製造コストが削減される。その上、組成物から高価なリチウム原料を除外することにより、ガラス繊維の製造コストが削減される。さらに、ガラス組成物の成分を融解するのに必要なエネルギーは、市販のRガラス配合物を融解するのに必要なエネルギーより少ない。このようなより少ないエネルギーの要求によって、本発明のガラスに関連した製造コスト全体が削減されることにもなる。本発明の組成物が商業的に許容され得る高性能ガラス繊維およびそのガラス繊維から得られるガラス繊維製品を製造する能力を保持することを発見した。
少なくとも1つの例示的実施態様において、本発明のガラス組成物は、表1に示される下記の成分を質量パーセントの範囲で含む。本明細書に用いられる用語“質量パーセント”および“質量によるパーセント”は、同じ意味で用いることができ、全組成物に基づいて質量パーセント(または質量によるパーセント)を示すことを意味する。例示的実施態様において、本発明のガラス組成物はリチウムを含まないかまたは実質的に含まず、ある例示的実施態様において、ガラス組成物はリチウムとホウ素を実質的に含まない。本明細書に用いられる語句“実質的に含まない”は、組成物がその成分(1つ以上)を含まないかまたはほとんど含まないことを示すことを意味する。例えば、リチウムがガラス組成物中に存在する場合には、微量、例えば、1パーセントの数百分の一でのみ存在することが理解されるべきである。同様に、ホウ素を除外することを意味するガラス組成物は、1パーセントの数百分の一の範囲にあるような微量のホウ素を含有することができる。このような量を含有する組成物は、“リチウムを含まない”“ホウ素を含まない”とみなされる。
【0008】
表1


【0009】
本発明の他の実施態様において、ガラス組成物は、表2に示される成分を含む。
【0010】
表2


【0011】
さらに他の実施態様において、ガラス組成物は、表3および表4に示される成分を含む。
【0012】
表3


【0013】
表4


【0014】
さらに、不純物または混入物は、ガラスまたは繊維に悪影響を与えることなくガラス組成物に存在してもよい。これらの不純物は、原料不純物としてガラスに入り得るかまたは溶融ガラスと炉成分との化学反応によって形成される生成物であり得る。混入物の限定されない例としては、カリウム、鉄、亜鉛、ストロンチウムおよびバリウム、これらの全てが酸化物の形で存在し、さらにフッ素および塩素が挙げられる。
ガラス組成物の成形粘度は、一般にlog3温度によって定義される。log3温度は、溶融ガラス組成物が1,000ポアズの粘度(すなわち、ほぼ繊維化する粘度)を有する温度であり、ここで、粘度は、ASTM C965に従い溶融ガラス材料に浸漬したシリンダを回転させるのに必要とされるトルクを測定することによって求められる。繊維化温度を低下させることにより、より長いブッシング寿命、スループットの増加、およびエネルギー使用量の減少を可能にすることから、ガラス繊維の生産コストが削減されることになる。log3温度を低下させることによって、ブッシングは、より低温で作動させ、急速な“たわみ”がない。たわみは、高温で長時間保持されるブッシングで生じる。log3温度を低下させることにより、たわみ速度が低下し、結果として、ブッシング寿命が延長することになる。したがって、繊維を生成するコストが削減され得る。本発明において、ガラス組成物は、約1405℃未満のlog3温度を有する。例示的実施態様において、log3温度は、約1285℃〜約1405℃、または約1285℃〜約1320℃である。
ガラス組成物の液相温度は、ASTM C829に従い、その温度で16時間保持されるときに第1の結晶が溶融ガラス材料に現れる温度より低い温度である。その上、液相温度は、ガラス溶融物を冷却する際に失透が起こり得る最高温度である。液相温度より高いすべての温度で、ガラスは完全に融解している。本発明の組成物の液相温度は、望ましくは約1330℃以下であり、約1190℃〜約1330℃または1190℃〜約1235℃の範囲にあり得る。
【0015】
log3温度と液相温度の差を“ΔT”と呼ぶ。ΔTが小さすぎる場合には、溶融ガラスが繊維化装置内で結晶化し、製造工程において破断が生じることになる。望ましく、ΔTは、所定の成形粘度に対してできるだけ高い温度である。より高いΔTは、繊維化の間、より大きな柔軟度を与え、ガラス分配システムおよび繊維化装置双方における失透を回避するのを援助する。その上、高いΔTは、より長いブッシング寿命やより感受性のない成形プロセスを可能にすることによってガラス繊維の生産コストを削減する。本発明の組成物は、約135℃までのΔT、例示的実施態様において、約60℃〜約135℃または約75〜105℃を有し得る。ある例示的実施態様において、ΔTは、約60℃より高い。
他の重要な特性は、比弾性率である。最終的な製品に剛性を加える軽量複合材料を達成するのにできるだけ高い比弾性率を有することが望ましい。比弾性率は、製品の剛性が重要なパラメータである用途に、例えば、風力エネルギーや航空宇宙用途に重要である。本発明の組成物において、ガラスは、少なくとも3.24×106メートル、または約3.24×106メートル〜約3.43×106メートルの比弾性率を有する。例示的実施態様において、ガラスは、約3.39×106メートル〜約3.43×106メートルの比弾性率を有する。
本発明のガラスは、リチウムを含有する従来のRガラス組成物と同様の比弾性率、強度、およびΔTを有する。従って、本発明の組成物は、Rガラス繊維から得られる商業的に許容され得るRガラス繊維および繊維製品を作成する能力を保持し、組成物から高コストリチウムを除外するとともに組成物の成分を融解するために従来の耐火物を用いることによって生産コストを削減することができる。
【0016】
一般に、本発明の繊維は、原料成分を入手し、成分を適切な量の慣用の方法で混合またはブレンドして、所望の質量パーセントの最終組成物を得ることによって、形成され得る。例えば、成分は、適切な成分または原材料から入手することができ、SiO2については砂またはパイロフィライト、CaOについては石灰石、生石灰、ウォラストナイト、またはドロマイト、Al2O3についてはカオリン、アルミナまたはパイロフィライト、およびMgOについてはドロマイト、ドロマイト石灰、ブルーサイト、エンスタタイト、タルク、焼成マグネサイト、またはマグネサイトが挙げられるがこれらに限定されない。ガラスカレットもまた、必要とされた酸化物の1つ以上を供給するために使用し得る。次に、混合バッチを従来の耐火性炉または溶融炉内で融解させ、得られた溶融ガラスを前炉に沿って前炉の底部に沿って位置するブッシング(例えば、白金合金ベースのブッシング)へ送る。炉、前炉、およびブッシングにおけるガラスの動作温度は、ガラスの粘度を適切に調整するように選ばれ、制御装置のような適切な方法を用いて維持し得る。好ましくは、溶融炉の前端の温度は自動制御されて、失透が減少または排除される。次に、溶融ガラスをブッシングの底部または先端プレートの穴またはオリフィスに通過させて(引き伸ばして)、ガラス繊維を形成させる。ブッシングオリフィスに流し込む溶融ガラス流れが、巻取機の回転コレット上に載置されるフォーミングチューブ上に複数の個々のフィラメントから形成されるストランドを巻き付けることによってフィラメントに繊細化する。
繊維は、意図した用途に適している慣用の方法でさらに加工することができる。例えば、ガラス繊維は、当業者に既知のサイジング組成物によってサイジング処理され得る。サイジング組成物は、決して制限されず、ガラス繊維に対する用途に適しているいかなるサイジング組成物であってもよい。サイジング処理された繊維は、製品の最終使用が従来のRガラス製品に等しいか優れている強度や剛性を必要とする種々のプラスチックのような補強基質のために用いることができる。このような用途としては、フォーミングウィンドブレード、アーマープレート、航空宇宙構造に用いられる織物が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明を一般的に記載してきたが、説明のためにだけ示されかつ特に明記しない限りすべてを含むことも限定することも意図しない以下に示される個々の特定の実施例によってさらに理解を得ることができる。
【実施例】
【0017】
実施例1: リチウムを含まないガラス組成物
試薬グレードの薬品を表5−8に示される酸化物質量パーセントを有する最終ガラス組成を得るために配合された量で混合することによって本発明のガラス組成物を製造した。原材料を電気加熱炉内の白金るつぼにおいて1620℃の温度で3時間融解させた。回転シリンダ方法(ASTM C965)を用いて成形粘度(すなわち、log3温度)を測定した。ガラスを白金合金ボート内で温度勾配に16時間さらすことによって液相温度を測定した(ASTM C829)。ガラスの粘度が1000ポアズである温度と液相温度の差としてΔTを算出した。音波が繊維の長さの下に伝えられることによるソニックファイバー法を用いて音の速さを測定した。弾性率は、音の速さ、密度、およびヤング率の関係に基づいて算出した。密度は、アルキメデスの方法によって測定した。最後に、ヤング率と測定した密度から比弾性率を算出した。
表5に示される実施例1は、従来のリチウム含有Rガラスである。このリチウム含有Rガラスのための組成および特性を比較のために含めた。
【0018】
表5


【0019】
表6


【0020】
表7


【0021】
表8


【0022】
表5−表8を見ると、実施例2−実施例33のガラス組成物が組成物中にリチウムを含むことなく耐火性溶融炉内で得ることを可能にする成形粘度および液相温度を有すると結論され得る。さらに、ガラス組成物からリチウムを除外することにより、非常に高価であるスポジュメンと炭酸リチウムがバッチ配合物用の材料として必要とされないのでガラスの生産コストが大幅に削減される。また、表5−表8に挙げられた組成物の多くが、組成物中にリチウムを含む市販のRガラス(例えば、実施例1)の比弾性率を満たすかまたは超えた。本発明のガラスは、従来のリチウム含有Rガラス組成物に等しいか改善されている強度を有する。
【0023】
実施例2: リチウムを含有するガラス配合物
リチウムを含むガラスを本発明のガラス組成物と比較するために調べた。表9と表10は、リチウム含有ガラス組成物の各々についてlog3温度、液相温度、ΔT、モジュラス、密度、および比弾性率に関して得られたデータを示している。
【0024】
表9


【0025】
表10


【0026】
表9と表10から、Li2Oのレベルが1パーセントより大きいと、一般的には、従来の耐火性溶融炉内の溶融に望ましくないΔTレベルになったと結論され得る。Li2O含量が0.5%に近い少しのガラスは許容され得る成形特性と製品特性を有することがわかった; しかしながら、それらのガラスの生産コストは、高価なリチウム原材料が必要なために、本発明のリチウムを含まないガラス組成物の生産コストよりはるかに大きいものである。
本出願の発明を、上で一般的と個々の実施態様双方に関して記載してきた。本発明が好ましい実施態様であると考えられるものを記載してきたが、当業者に既知の種々の変形例は一般的開示の範囲内に選ばれ得る。本発明は、以下に示される請求項の説明を除き制限されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Rガラス繊維を調製するための組成物であって、以下、
SiO2を全組成物の59.0〜64.5質量%の量で;
Al2O3を全組成物の14.5〜20.5質量%の量で;
CaOを全組成物の11.0〜16.0質量%の量で;
MgOを全組成物の5.5〜11.5質量%の量で;
Na2Oを全組成物の0.0〜4.0質量%の量で; および
TiO2を全組成物の0.0〜2.0質量%の量で
含み、前記組成物のΔTが少なくとも60℃であることを特徴とする組成物。
【請求項2】
Fe2O3を全組成物の0.0〜約1.0質量%の量でおよびB2O3を全組成物の0.0〜約3.0質量%の量でこれらの少なくとも1つをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
K2Oを全組成物の0.0〜約1.0質量%の量で;
SrOを全組成物の0.0〜約2.0質量%の量で;
ZnOを全組成物の0.0〜約2.0質量%の量で;
ZrOを全組成物の0.0〜約1.0質量%の量で; および
フッ素を全組成物の0.0〜約1.0質量%の量で
さらに含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が、リチウムを実質的に含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物のΔTが約135℃までである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物のΔTが約75℃〜約105℃である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物のlog3温度が約1285℃〜約1405℃である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物の液相温度が約1330℃以下である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物の成分が耐火性タンク溶融炉内で溶融される、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物の比弾性率が少なくとも3.24×106メートルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物の比弾性率が少なくとも約3.24×106メートル〜約3.43×106メートルである、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
SiO2を全組成物の59.0〜64.5質量%の量で;
Al2O3を全組成物の14.5〜20.5質量%の量で;
CaOを全組成物の11.0〜16.0質量%の量で;
MgOを全組成物の5.5〜11.5質量%の量で;
Na2Oを全組成物の0.0〜4.0質量%の量で; および
TiO2を全組成物の0.0〜2.0質量%の量で
含む組成物から得られる連続Rガラス繊維であって、前記組成物のΔTが少なくとも60℃であることを特徴とするガラス繊維。
【請求項13】
Fe2O3を全組成物の0.0〜約1.0質量%の量で;
B2O3を全組成物の0.0〜約3.0質量%の量で;
K2Oを全組成物の0.0〜約1.0質量%の量で;
SrOを全組成物の0.0〜約2.0質量%の量で;
ZnOを全組成物の0.0〜約2.0質量%の量で;
ZrOを全組成物の0.0〜約1.0質量%の量で; および
フッ素を全組成物の0.0〜約1.0質量%の量で
これらの少なくとも1つをさらに含む、請求項12に記載のガラス繊維。
【請求項14】
前記組成物がリチウムを実質的に含まない、請求項12に記載のガラス繊維。
【請求項15】
Rガラス繊維を形成する方法であって:
SiO2を全組成物の59.0〜64.5質量%の量で;
Al2O3を全組成物の14.5〜20.5質量%の量で;
CaOを全組成物の11.0〜16.0質量%の量で;
MgOを全組成物の5.5〜11.5質量%の量で;
Na2Oを全組成物の0.0〜4.0質量%の量で; および
TiO2を全組成物の0.0〜2.0質量%の量で
含む溶融ガラス組成物であって、前記組成物のΔTが少なくとも60℃である、前記溶融ガラス組成物を準備する工程; および
前記溶融ガラス組成物をブッシングにおけるオリフィスによって引き伸ばして、Rガラス繊維を形成する工程
を含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
Fe2O3を全組成物の0.0〜約1.0質量%の量でおよびB2O3を全組成物の0.0〜約3.0質量%の量でこれらの少なくとも1つをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
K2Oを全組成物の0.0〜約1.0質量%の量で;
SrOを全組成物の0.0〜約1.0質量%の量で;
ZnOを全組成物の0.0〜約1.0質量%の量で;
ZrOを全組成物の0.0〜約1.0質量%の量で; および
フッ素を全組成物の0.0〜約1.0質量%の量で
さらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記ガラス組成物がリチウムを実質的に含まない、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記組成物のΔTが約135℃までである、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記組成物の比弾性率が少なくとも3.24×106メートルである、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記組成物のlog3温度が約1285℃〜約1405℃である、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記ガラス組成物の成分を耐火性溶融炉内で融解させる工程
をさらに含む、請求項15に記載の方法。

【公表番号】特表2013−500939(P2013−500939A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523726(P2012−523726)
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【国際出願番号】PCT/US2010/044359
【国際公開番号】WO2011/017405
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(508076428)オーシーヴィー インテレクチュアル キャピタル リミテッド ライアビリティ カンパニー (43)
【Fターム(参考)】