説明

弾性繊維用処理剤および弾性繊維

【課題】 本発明の目的は、後加工工程の高速化に伴う、静電気のトラブルおよび解舒性のトラブルを解消した弾性繊維用処理剤および該処理剤を付与した弾性繊維を提供することにある。
【解決手段】 本発明は、ベース成分としてシリコーン油、鉱物油およびエステル油から選ばれる少なくとも1種を含有し、第4級アンモニウムホスフェート塩を0.01〜10重量%含有する、弾性繊維用処理剤である。また、本発明は該処理剤が0.1〜15重量%付与されている、弾性繊維である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は制電性および解舒性に優れる弾性繊維用処理剤、および該処理剤を用いて処理された弾性繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シリコーン樹脂、および/または有機リン酸エステル塩を含有する、解舒性、平滑性、および制電性に優れた弾性繊維用処理剤が記載されている。
特許文献2には、アミノ変性シリコーンとリン酸エステルの混合物を含有し、高級脂肪酸の金属塩を分散させた、解舒性、制電性、チーズ捲形状、平滑性、編織加工時の風綿防止性に優れる弾性繊維用処理剤が記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−162187号公報
【特許文献2】特開2006−161253号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
弾性繊維用油剤には、ベース成分として、シリコーン油、鉱物油およびエステル油などを用いているが、最近、弾性繊維の後加工工程の高速化および使用繊度の細dtex化が進んできたため、後加工工程において静電気によるトラブルが増加する傾向にある。さらに、Cheeseの外層と内層で解舒性の差が問題となる傾向にある。そして、特許文献1や特許文献2に記載された弾性繊維用処理剤ではこれらトラブルの傾向に対して不十分である。
本発明の目的は、後加工工程の高速化に伴う、静電気のトラブルおよび解舒性のトラブルを解消した弾性繊維用処理剤および該処理剤を付与した弾性繊維を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、ベース成分および第4級アンモニウムホスフェート塩を含む処理剤が制電性および解舒性に一層優れることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、ベース成分としてシリコーン油、鉱物油およびエステル油から選ばれる少なくとも1種を含有し、第4級アンモニウムホスフェート塩を0.01〜10重量%含有する、弾性繊維用処理剤である。
処理剤に占める前記ベース成分の割合は50重量%以上であることが好ましい。また、シリコーンレジンを0.01〜10重量%さらに含有することが好ましい。また、アミノ変性シリコーンおよび/またはポリエーテル変性シリコーンを0.01〜10重量%さらに含有することが好ましい。
【0006】
また、前記第4級アンモニウムホスフェート塩が下記化学式(1)で示される化合物であることが好ましい。
【化1】

(R、R、RおよびRは、炭素数1〜30の炭化水素基を示す。AおよびA’は、炭素数2〜4のアルキレン基を示す。nおよびmは、0〜20の整数を示す。RおよびRは、炭素数1〜30の炭化水素基またはいずれか一方が水素原子を示す。)
また、本発明は、前記処理剤が0.1〜15重量%付与されている、弾性繊維に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の処理剤は制電性および解舒性に優れる。また、本発明の処理剤を用いることにより、制電性および解舒性に優れた弾性繊維を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、ベース成分としてシリコーン油、鉱物油およびエステル油から選ばれる少なくとも1種を含有し、第4級アンモニウムホスフェート塩を0.01〜10重量%含有する、弾性繊維用処理剤である。以下詳細に説明する。
【0009】
本発明の処理剤において、第4級アンモニウムホスフェート塩を必須に含有する必要があり、第4級アンモニウムホスフェート塩は化学式(1)で示される化合物であることが好ましい。R、R、RおよびRは、それぞれ炭素数1〜30の炭化水素基を示す。R、R、RおよびRに他の親水性の置換基が入るとベース成分との相溶性が悪くなる場合がある。R、R、RおよびRは、これらのうち一つの炭化化水素基の炭素数が8〜24で、他の3つの炭化水素基の炭素数が1〜8であることが好ましい。炭化水素基は、脂肪族炭化水素基が好ましく、飽和の脂肪族炭化水素基がより好ましい。炭化水素基は直鎖状であっても分岐を有していてもよい。
【0010】
AおよびA’は、それぞれ炭素数2〜4のアルキレン基を示し、具体的にはエチレン基、プロピレン基、ブチレン基を示す。(OA)n、(OA’)は、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基の単独、ブロックまたはランダム共重合体を示す。
nおよびmは、それぞれ単独に0〜20の整数、より好ましくは0〜5の整数である。最も好ましくは、0の場合である。
およびRは、炭素数1〜30の炭化水素基またはいずれか一方が水素原子であることを示す。すなわち、RおよびRがそれぞれ炭素数1〜30の炭化水素基であるか、RとRのうち、いずれか一方が水素原子であり、他方が炭素数1〜30の炭化水素基であることを示す。RおよびRに他の親水性の置換基が入るとベース成分との相溶性が悪くなる場合がある。炭化水素基の炭素数は1〜10がさらに好ましい。炭化水素基は、脂肪族炭化水素基が好ましく、飽和の脂肪族炭化水素基がより好ましい。炭化水素基は直鎖状であっても分岐を有していてもよい。
【0011】
本発明に用いられる第4級アンモニウムホスフェート塩を形成する第4級アンモニウムカチオンとしては、トリメチルオクチルアンモニウムカチオン、トリエチルステアリルアンモニウムカチオン、トリオクチルプロピルアンモニウムカチオンなどが挙げられる。
同様に第4級アンモニウムホスフェート塩を形成するホスフェートアニオンとしては、ジラウリルリン酸アニオン、ステアリルリン酸アニオン、ジポリオキシエチレンラウリルリン酸エステルアニオン、ジポリオキシプロピレンステアリルリン酸エステルアニオンなどが挙げられる。具体的な化合物としては、トリメチルオクチルアンモニウムオクチルリン酸塩、トリメチルオクチルアンモニウムジエチルリン酸塩、トリメチルオクチルアンモニウムステアリルリン酸塩、トリメチルステアリルアンモニウムジステアリルリン酸塩、トリメチルステアリルアンモニウムジエチルリン酸塩、トリメチルステアリルアンモニウムジメチルリン酸塩、トリオクチルメチルアンモニウムジオクチルリン酸塩、トリメチルオクチルアンモニウムポリオキシエチレン(3)オクチルリン酸塩、トリメチルステアリルアンモニウムポリオキシプロピレン(6)ステアリルリン酸塩、トリエチルステアリルアンモニウムポリオキシエチレン(2)ポリオキシプロピレン(2)ランダムジオクチルリン酸塩などが挙げられる。
【0012】
処理剤に占める第4級アンモニウムホスフェート塩の割合は0.01〜10重量%であり、0.1〜5重量%が好ましく、0.5〜3重量%がより好ましい。0.01重量%より少なくなると本発明の効果が発揮されなくなり、10重量%より多くなるとベース成分との相溶性が悪くなり、低温で析出するため、後加工工程でスカムの原因となることがある。
【0013】
本発明の処理剤は、ベース成分としてシリコーンオイル、鉱物油およびエステル油から選ばれる少なくとも1種からなる成分を必須に含有する。処理剤に占めるベース成分の割合は、50重量%以上が好ましく、50〜99.99重量%、60〜99.97重量%、60〜99.9重量%、60〜99.5重量%、60〜80重量%の順に好ましい。50重量%未満では、平滑性および解舒性が不足する場合がある。
【0014】
シリコーンオイルとしては特に限定はないが、たとえば、ポリジメチルシロキサン、ポリアルキルシロキサン、ポリアルキルフェニルシロキサン(いずれのシリコーンオイルも25℃における粘度:2〜100mm/s)等を挙げることができ、1種または2種以上を併用してもよい。これらのシリコーンオイルのうちでも、処理剤のオイリング時に扱いやすく、粘度が高すぎると糸がローラーに取られて切れてしまう等の理由から、弾性繊維用処理剤の30℃における粘度が、好ましくは3〜100mm/s、さらに好ましくは5〜50mm/sに調整することができるようなシリコーンオイルを選択することが好ましい。
【0015】
鉱物油としては特に限定はないが、たとえば、30℃における粘度が30〜150秒、好ましくは60〜100秒のスピンドル油や流動パラフィン等を挙げることができ、1種または2種以上を併用してもよい。鉱物油の粘度が30秒よりも低いと、得られる弾性繊維の品質が低下することがある。一方、鉱物油の粘度が150秒超であると、弾性繊維用処理剤全体の粘度が高くなり、得られる弾性繊維がローラーに取られ、糸が切れてしまうことがある。
【0016】
エステル油としては特に限定はないが、脂肪酸とアルコールとから製造されるエステルを挙げることができる。エステル油としては、たとえば、下記から選ばれる脂肪酸とアルコールとから製造されるエステルを例示できるが、下記脂肪酸やアルコールを原料としないエステルであってもよい。エステル油は、1種または2種以上を併用してもよい。エステル油の粘度としては、特に限定は無いが、たとえば、30℃における粘度が30〜150秒、好ましくは60〜100秒が好ましい。
【0017】
脂肪酸は、その炭素数、分岐の有無、価数等について特に制限はなく、高級脂肪酸であってもよく、環状の脂肪酸であってもよく、芳香族環を含有する脂肪酸であっても良い。前記脂肪酸としては、たとえば、カプリル酸、2−エチルヘキシル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、アラキン酸、ベヘニン酸、リグノセレン酸、アジピン酸、セバチン酸、安息香酸等が挙げられる。
【0018】
アルコールは、その炭素数、分岐の有無、価数等について特に制限はなく、高級アルコールであっても、環状のアルコールであっても、芳香族環を含有するアルコールであっても良い。前記アルコールとしては、たとえば、オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、エチレングリコール、ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリストール、ソルビトール、ソルビタン等が挙げられる。
【0019】
ベース成分は、シリコーンオイル、鉱物油およびエステル油から選ばれた少なくとも1種からなる成分であれば特に限定はないが、低粘度の鉱物油およびエステル油は、弾性繊維を膨潤させる場合があり、シリコーンオイルを必須成分とすると好ましい。
シリコーンオイルの含有率については、特に限定はないが、好ましくはベース成分全体の30重量%以上であり、さらに好ましくは50重量%以上である。シリコーンオイルの含有率が30重量%以上であると、平滑性および解舒性の点で有利である。
【0020】
また、本発明の弾性繊維用処理剤は、制電性や解舒性を向上させるために、変性シリコーンをさらに含有してもよい。変性シリコーンとは、一般には、ジメチルシリコーン(ポリジメチルシロキサン)等のポリシロキサンの両末端、片末端、側鎖、側鎖両末端の少なくとも1ヶ所において、反応性(官能)基または非反応性(官能)基が少なくとも1つ結合した構造を有するものをいう。
【0021】
変性シリコーンとしては、たとえば、長鎖アルキル基(炭素数6以上のアルキル基や2−フェニルプロピル基等)を有する変性シリコーン等のアルキル変性シリコーン;エステル結合を有する変性シリコーンであるエステル変性シリコーン;アルコール性水酸基を有する変性シリコーンであるカルビノール変性シリコーン;酸無水物基またはカルボキシル基を有する変性シリコーンであるカルボキシ変性シリコーン;メルカプト基を有する変性シリコーンであるメルカプト変性シリコーン;グリシジル基または脂環式エポキシ基等のエポキシ基を有する変性シリコーン等のエポキシ変性シリコーン;アミノプロピル基やN−(2−アミノエチル)アミノプロピル基等のアミノ基を有する変性シリコーン等のアミノ変性シリコーン;ポリオキシアルキレン基(たとえば、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシエチレンオキシプロピレン基等)を有する変性シリコーン等のポリエーテル変性シリコーン等を挙げることができる。本発明の弾性繊維用処理剤は、これらから選ばれる少なくとも1種の変性シリコーンをさらに含有するのが好ましい。制電性効果を高めることができる点から、アミノ変性シリコーンおよび/またはポリエーテル変性シリコーンを含有することこがより好ましい。
【0022】
本発明の処理剤に占める変性シリコーンの割合は、0.01〜10重量%が好ましく、0.05〜7重量%がより好ましく、0.1〜5重量%がさらに好ましい。0.01重量%未満であると、少なすぎて添加による効果が見られないことがある。一方、10重量%超であると、処理剤の適正な性能とならないことがある。
【0023】
また、本発明の弾性繊維用処理剤は、制電性や解舒性を向上させるために、シリコーンレジンをさらに含有していてもよい。シリコーンレジンとは、3次元架橋構造を有するシリコーンを意味し、その他の変性シリコーン等をさらに含有してもよい。シリコーンレジンは、一般に、1官能性構成単位(M)、2官能性構成単位(D)、3官能性構成単位(T)および4官能性構成単位(Q)から選ばれた少なくとも1種の構成単位からなっている。
シリコーンレジンとしては、たとえば、MQシリコーンレジン、MQTシリコーンレジン、Tシリコーンレジン、DTシリコーンレジン等のシリコーンレジン等を挙げることができる。
【0024】
MQシリコーンレジンとしては、たとえば、1官能性構成単位であるRSiO1/2(但し、R、RおよびRはいずれも炭化水素基である。)と、4官能性構成単位であるSiO4/2と含むシリコーンレジン等を挙げることができる。
MQTシリコーンレジンとしては、たとえば、1官能性構成単位であるRSiO1/2(但し、R、RおよびRはいずれも炭化水素基である。)と、4官能性構成単位であるSiO4/2と、3官能性構成単位であるRSiO3/2(但し、Rは炭化水素基である。)と含むシリコーンレジン等を挙げることができる。
Tシリコーンレジンとしては、たとえば、3官能性構成単位であるRSiO3/2(但し、Rは炭化水素基である。)を含むシリコーンレジン(その末端は炭化水素基のほか、シラノール基やアルコキシ基となっていても良い。)等を挙げることができる。
DTシリコーンレジンとしては、たとえば、2官能性構成単位であるRSiO2/2(但し、R、およびRはいずれも炭化水素基である。)と、3官能性構成単位であるRSiO3/2(但し、Rは炭化水素基である。)等を挙げることができる。
【0025】
本発明の処理剤に占めるシリコーンレジンの割合は、0.01〜10重量%が好ましく、0.05〜7重量%より好ましく、0.1〜5重量%がさらに好ましい。シリコーンレジンの割合が0.01重量%未満であると、添加による効果が見られないことがある。一方、シリコーンレジンの割合が10重量%超であると、油剤性能の適正なバランスを維持できないことがある。
【0026】
本発明の弾性繊維用処理剤は、平滑性および制電性の効果を高めるために、高級脂肪酸の金属塩(金属石鹸)をさらに含有していても良い。本発明の弾性繊維用処理剤に占める高級脂肪酸の金属塩の割合は、0.01〜10重量%が好ましく、0.2〜5重量%がさらに好ましく、0.5〜3重量%が特に好ましい。0.01重量%未満であると、少なすぎて添加による効果が見られないことがある。一方、10重量%超であると、多量の添加に見合う効果が得られず、経済的に不利なことがある。
【0027】
高級脂肪酸の金属塩としては、従来弾性繊維に用いられている公知のものを用いることができ、たとえば、ジステアリン酸カルシウム、ジステアリン酸マグネシウム、トリステアリン酸アルミニウム、ジステアリン酸バリウム、ジステアリン酸亜鉛等が挙げられる。これらの高級脂肪酸の金属塩のうちでも、ジステアリン酸カルシウム、ジステアリン酸マグネシウム等が好ましい。
【0028】
高級脂肪酸の金属塩の平均粒子径については、特に限定はないが、好ましくは0.01〜5μm、さらに好ましくは0.02〜3μm、特に好ましくは0.05〜2μmである。高級脂肪酸の金属塩の平均粒子径が0.01μm未満であると、添加による効果が見られないことがある。一方、高級脂肪酸の金属塩の平均粒子径が5μm超であると、繊維表面から脱落しやすく、紡糸後の工程でスカムの原因となる場合がある。
高級脂肪酸の金属塩の形状については、球状、塊状、リンペン状、短冊状、針状など、特に限定はないが、針状が好ましい。高級脂肪酸の金属塩の形状が針状の場合、その縦方向と横方向との比は、解舒性の観点からは、好ましくは10:1〜2:1、さらに好ましくは8:1〜3:1である。
【0029】
本発明の弾性繊維用処理剤は、平滑性、制電性および解舒性の付与のために、カチオン界面活性剤および/またはアニオン界面活性剤(以下、カチオン界面活性剤および/またはアニオン界面活性剤を界面活性剤aということがある。)をさらに含有していてもよい。
【0030】
カチオン界面活性剤としては、たとえば、ジエタノールアミンモノステアレート、トリエタノールアミンモノオレート、オレイルジメチルエチルアンモニウムエトサルフェート、ら売り入るジメチルヒドロキシエチルアンモニウムナイトレート、ラウリルジメチルエチルアンモニウムエトサルフェート、オレイルモルホリウムエトサルフェート、ラウリルヒドロキシエチルイミダゾリュウムエトサルフェート、ジステアリルアミドジエチルアミンエトサルフェート等が挙げられる。
【0031】
アニオン界面活性剤としては、たとえば、ポタシウムラウレート、ソジュームラウレート、トリエタノールアミンラウレート、モルホリンラウレート、ドデシルベンゾールスルホネート、ソジュームジイソオクチルスルホサクシネート、ソジュームポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテルプロパンスルホネート、ソジュームポリオキシエチレン(7)ノニルフェノールエーテルプロパンスルホネート、ソジュームオクチルサルフェート、ポタシウムオクチルサルフェート、ソジュームポリオキシエチレン(5)オレイルエーテルサルフェート、ポタシウムポリオキシエチレン(5)ステアリルエーテルサルフェート、ジエタノールアミンモノオクチルホスフェート、ポタシウムモノポリオキシエチレン(3)ステアリルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレン(4)セチルホフフォエーテル等が挙げられる。
【0032】
本発明の弾性繊維用処理剤に占める界面活性剤aの割合は、0.01〜10重量%が好ましく、0.05〜7重量%がさらに好ましく、0.1〜5重量%が特に好ましい。界面活性剤aの割合が0.01重量%未満であると、少なすぎて添加による効果が見られないことがある。一方、界面活性剤aの割合が10重量%超であると、油剤性能の適正なバランスを維持できないことがある。
【0033】
本発明の弾性繊維用処理剤は、つなぎ剤、制電剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の通常弾性繊維の処理剤に用いられる成分をさらに含有することができる。
【0034】
本発明の弾性繊維用処理剤は、30℃における粘度が2〜100mm/sの範囲にあることが好ましく、5〜15mm/sの範囲がより好ましい。粘度が2mm/s未満では、油剤の揮発が問題となる事があり、50mm/sより大きいと弾性繊維への表面への濡れ性が悪くなる事がある。
【0035】
本発明の弾性繊維用処理剤を製造する方法については、特に限定はなく、公知の方法を適用することができる。弾性繊維用処理剤は、構成する上記の各成分を任意の順番で添加混合することによって製造される。
【0036】
本発明の弾性繊維は、上記弾性繊維用処理剤が0.1〜15重量%(好ましくは1〜10重量%)付与されている弾性繊維である。0.1重量%より少ないと本発明の効果が充分でなく、15重量%を越えると不経済である。
【0037】
本発明の弾性繊維は、ポリエーテル系ポリウレタンウレア、ポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテルエステルエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリエチレンエラストマー、ポリアミドエラストマー等を使用した弾性を有する繊維であり、その伸度は通常300%以上である。
【0038】
本発明の弾性繊維本体として、たとえば、ポリウレタンウレア弾性繊維は、分子量1000〜3000のポリテトラメチレングリコール(PTMG)とジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)とを用意し、PTMG/MDI=1/2〜1/1.5(モル比)でジメチルアセトアミドやジメチルホルムアミド等の溶媒中で反応させ、エチレンジアミン、プロパンジアミン等のジアミンで鎖延長して得られるポリウレタンウレアポリマーの20〜40%溶液を乾式紡糸で、紡糸速度400〜800m/minで紡糸することにより製造できる。弾性繊維本体の適応繊度は特に制限はない。
【0039】
本発明の弾性繊維は、その糸上静電気が−1KV〜+1KVであり、好ましくは−0.7KV〜+0.7KV、さらに好ましくは−0.5KV〜+0.5KVである。糸上静電気が−1KVより小さいまたは1KVより大きいと、ほこり等を糸に引き付け、糸品位を低下させることがある。
【0040】
本発明の弾性繊維の用途として、CSY、シングルカバリング、PLY、エアーカバリング等のカバリング糸等の加工糸や、丸編み、トリコット等により、布帛として使用することができる。また、これらの加工糸、布帛を使用してストッキング、靴下、下着、水着等の伸縮性が必要とされる製品や、ジーンズ、スーツ等のアウターウェア等に快適性のために伸縮性を付与させる目的でも使用される。さらに最近では、紙おむつにも適用される。
【実施例】
【0041】
以下の実施例および比較例で本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、各実施例および比較例における評価項目と評価方法は以下の通りである。また、文中および表中の「%」は「重量%」を意味する。
【0042】
[油剤の作用効果の評価法]
(処理剤粘度)
キャノンフェンスケ粘度計を用い、30℃における試料液の動粘度を求めた。
(編成張力、静電気発生量)
図2において、チーズ(3)から縦取りした弾性糸(4)をコンペンセーター(5)を経てローラー(6)、編み針(7)を介して、Uゲージ(8)に付したローラー(9)を経て速度計(10)、巻き取りローラー(11)に連結する。速度計(10)での走行速度が定速(例えば、10m/分、100m/分)になるように巻き取りローラーの回転速度を調整して、巻き取りローラーに巻き取り、そのときの編成張力をUゲージ(8)で測定し、繊維/編み針間の摩擦(g)を計測する。走行糸条より1cmのところで春日式電位差測定装置(12)で静電気発生量(kV)を測定する。
(繊維間摩擦係数(F/Fμs))
図3において、処理剤が付与された弾性繊維のモノフィラメントを50〜60cm程取り、一方の端に荷重T1(13)を吊り、ローラー(14)を介して、Uゲージ(15)にもう一方の端を掛けて定速(例えば、3cm/分)で引っ張り、そのときの2次張力T2をUゲージ(15)で測定し、式1により、繊維間摩擦係数を求める。
摩擦係数(F/Fμs=1/θ・ln(T2/T1) (式1)
(式1において、θ=2π、ln=自然対数、T1は22dtex当り1g)
【0043】
(解舒速度比)
図4において、解舒速度比測定機の解舒側に処理剤を付与した繊維のチーズ(16)をセットし、巻き取り側に紙管(17)をセットする。巻き取り速度を一定速度にセットした後、ローラー(18)および(19)を同時に起動させる。この状態では糸(20)に張力はほとんどかからないため、糸はチーズ上で膠着して離れないので、解舒点(21)は図4に示す状態にある。解舒速度を変えることによって、チーズからの糸(20)の解舒点(21)が変わるので、この点がチーズとローラーとの接点(22)と一致するように解舒速度を設定する。解舒速度比は式2によって求める。この値が小さいほど、解舒性が良いことを示す。
解舒速度比(%)=(巻取速度−解舒速度)÷解舒速度×100 (式2)
(ローラー静電気、糸上静電気)
図1において、解舒速度比測定機の解舒側にチーズ(1)をセットし、50m/分の周速で回転させ、巻き取り側を100m/分とし、チーズ上2cmのところにおいて、春日式電位差測定装置(2)で、回転を始めて1時間後のローラー静電気(チーズ上静電気)を測定する。ローラー静電気を測定している時の走行糸上2mmでの発生静電気(糸上静電気)を測定する。
【0044】
[紡糸原液の調製]
数平均分子量1800のポリテトラメチレンエーテルグリコールと4,4’―ジフェニルメタンジイソシアネートをモル比率1:2で反応させ、次いで1,2−ジアミノプロパンのジメチルホルムアミド溶液を用いて鎖延長し、ポリマー濃度27%のジメチルホルムアミド溶液を得た。30℃での濃度は1700mPaSであった。
[処理剤の調製]
表1および表2に記載の各処理剤(表中の配合量は重量部)の成分を混合し、30〜40℃で1時間撹拌して各処理剤A〜Mを得た。
【0045】
(実施例1〜10および比較例1〜3)
ポリウレタン紡糸原液を230℃のN気流中に吐出して乾式紡糸した。紡糸中走行糸に調製した処理剤を繊維に対して6重量%付与した後、毎分600mの速度でボビンに巻き取り44dtexモノフィラメントチーズ(巻き量400g)を得た。得られたチーズを35℃、50%RHの雰囲気中に48時間放置して評価に供した。これらの結果を表1および表2に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】ローラー静電気発生量の測定方法を説明する模式図。
【図2】編成張力の測定方法および静電気発生量の測定方法を説明する模式図。
【図3】繊維間摩擦係数の測定方法を説明する模式図。
【図4】解舒速度比の測定方法を説明する模式図。
【符号の説明】
【0049】
1 弾性繊維のチーズ
2 春日式電位差測定装置
3 弾性繊維のチーズ
4 弾性糸
5 コンペンセーター
6 ローラー
7 編み針
8 Uゲージ
9 ローラー
10 速度計
11 巻き取りローラー
12 春日式電位差測定装置
13 荷重
14 ローラー
15 Uゲージ
16 チーズ
17 巻き取り用紙管
18 ローラー
19 ローラー
20 走行糸条
21 解舒点
22 チーズとローラーの接点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース成分としてシリコーン油、鉱物油およびエステル油から選ばれる少なくとも1種を含有し、第4級アンモニウムホスフェート塩を0.01〜10重量%含有する、弾性繊維用処理剤。
【請求項2】
処理剤に占める前記ベース成分の割合が50重量%以上である、請求項1に記載の弾性繊維用処理剤。
【請求項3】
シリコーンレジンを0.01〜10重量%さらに含有する、請求項1または2に記載の弾性繊維用処理剤。
【請求項4】
アミノ変性シリコーンおよび/またはポリエーテル変性シリコーンを0.01〜10重量%さらに含有する、請求項1〜3のいずれかに記載の弾性繊維用処理剤。
【請求項5】
前記第4級アンモニウムホスフェート塩が下記化学式(1)で示される化合物である、請求項1〜4のいずれかに記載の弾性繊維用処理剤。
【化1】

(R、R、RおよびRは、炭素数1〜30の炭化水素基を示す。AおよびA’は、炭素数2〜4のアルキレン基を示す。nおよびmは、0〜20の整数を示す。RおよびRは、炭素数1〜30の炭化水素基またはいずれか一方が水素原子を示す。)
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の処理剤が0.1〜15重量%付与されている、弾性繊維。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−138282(P2009−138282A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−312476(P2007−312476)
【出願日】平成19年12月3日(2007.12.3)
【出願人】(000188951)松本油脂製薬株式会社 (137)
【Fターム(参考)】