弾性表面波センサ、センシングシステム、及び圧力測定方法
【課題】温度が変化した場合でも、測定対象の状態を精度良く検知することができる弾性表面波センサ、センシングシステム、及び圧力測定方法を提供すること。
【解決手段】第1、第2弾性表面波素子の出力電圧の差(第1の演算値)と、第3、第2弾性表面波素子の出力電圧の差(第2の演算値)を求める。第2の演算値と温度による基板変化量との関係に基づき、第2の演算値から温度による基板変化量を求め、第2の演算値と温度補正量との関係に基づき、第2の演算値から温度補正量を求める。温度補正量に第1の演算値を加算し、この加算値から圧力及び温度による基板変化量を求める。そして、圧力及び温度による基板変化量と温度による基板変化量との差から、圧力による基板変化量を求め、圧力による素子の基板変化量に基づいて、圧力を算出する。
【解決手段】第1、第2弾性表面波素子の出力電圧の差(第1の演算値)と、第3、第2弾性表面波素子の出力電圧の差(第2の演算値)を求める。第2の演算値と温度による基板変化量との関係に基づき、第2の演算値から温度による基板変化量を求め、第2の演算値と温度補正量との関係に基づき、第2の演算値から温度補正量を求める。温度補正量に第1の演算値を加算し、この加算値から圧力及び温度による基板変化量を求める。そして、圧力及び温度による基板変化量と温度による基板変化量との差から、圧力による基板変化量を求め、圧力による素子の基板変化量に基づいて、圧力を算出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性表面波を利用して、測定対象の状態(圧力等)の変化を検出するために、少なくとも3種の弾性表面波素子を備えた弾性表面波センサと、弾性表面波センサからの信号に基づいて圧力を測定するセンシングシステムと、弾性表面波センサからの信号に基づいて圧力を測定する圧力測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、弾性表面波(SAW)の特性を利用して、測定対象の圧力や温度等を検知する弾性表面波センサ(SAWデバイス)が開発されている。
この種の弾性表面波を利用した圧力・温度モニターとしては、下記特許文献1、2に記載の様に、圧力変動を検出する素子として、櫛歯電極(IDT:Inter Digital Transducer)や反射器(リフレクタ)からなる共振型SAW素子を利用し、このSAW素子の共振周波数の変動から圧力変動を検知する手法(共振周波数検知方式)が開示されている。
【0003】
これとは別に、近年では、圧力変動をSAW素子の反射信号の強度(例えば電圧レベル)の変動から検知する手法(電力検知方式)が検討されている。
また、弾性表面波センサを利用した圧力・温度モニターにおいて、温度影響を補償する手段として、下記特許文献3〜5に記載の様に、特性が同じ2個のSAW素子を用い、一方を圧力と温度の両影響を受ける素子、他方を温度の影響のみを受ける素子とし、これらの2素子の差動出力を圧力検知信号することで、温度影響を除去する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4099504号公報
【特許文献2】特許第4320598号公報
【特許文献3】特開2003−14572号公報
【特許文献4】特許第4088921号公報
【特許文献5】特開2009−222589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来技術の様に、両SAW素子の出力電圧値の差の変化から、目的とする測定対象の状態(例えば圧力)を検知する場合でも、好適に測定対象の状態を検知できないことがあった。
【0006】
つまり、弾性表面波センサの特性(特にSAW素子の反射係数と周波数との関係)は温度によって影響を受け、温度によって同じ圧力でも異なった出力電圧値となるので、単にSAW素子の出力電圧値の差を取っただけでは、精度良く測定対象の状態を検出できないことがあった。
【0007】
すなわち、温度と圧力の変化が同時に発生するような状況では、両SAW素子の特性自体が変化する状態となるので、単にSAW素子の出力電圧値の差を取っただけでは、精度良く測定対象の状態を検出できないという問題があった。
【0008】
本発明は、こうした問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、温度が変化した場合でも、例えば圧力等の目的とする測定対象の状態を精度良く検知することができる弾性表面波センサ、センシングシステム、及び圧力測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の弾性表面波センサは、第1態様として、外部からの影響によって素子を伝わる弾性表面波の特性が変化して素子の出力が変化する第1弾性表面波素子及び第2弾性表面波素子及び第3弾性表面波素子を備えた弾性表面波センサであって、前記第1弾性表面波素子と前記第2弾性表面波素子と前記第3弾性表面波素子とは、温度変化に対し素子の出力が異なり、且つ、前記第1弾性表面波素子は、前記温度以外の測定対象の状態の変化によって素子の出力が変化するように構成された素子であることを特徴とする。
【0010】
本発明では、第1〜第3弾性表面波素子は、それぞれ温度変化に対する素子の出力(例えば出力される電圧や電力)が異なり、また、第3弾性表面波素子は、温度以外の測定対象の状態(例えば圧力)の変化によって素子の出力(例えば電圧や電力)が変化するように構成された素子である。
【0011】
従って、これらの各出力を用いて、例えば請求項7〜12に記載の様に、温度の影響を排除して、測定対象の状態(例えば圧力)を精度良く検出することができる。
なお、前記各弾性表面波素子としては、圧電基板上に櫛歯電極、反射器等の電極を備えた素子が挙げられるが、各素子において、例えば材料組成や電極寸法、形状の違いまたは素子作製精度のバラツキによって電極の反射係数の周波数特性が異なる場合には、同じ温度であっても各素子の出力(例えば電圧や電力)が異なる。
【0012】
(2)本発明では、第2態様として、無線によって外部装置との信号の送受信が可能な構成とすることができる。
(3)本発明では、第3態様として、測定対象の状態を圧力とすることができる。
【0013】
(4)本発明では、第4態様として、押圧力印加部によって、第1弾性表面波素子に対して圧力に対応する押圧力を印加することができる。
(5)本発明では、第5態様として、第1弾性表面波素子と第2弾性表面波素子と第3弾性表面波素子とにおける信号の遅延時間が全て異なるように設定することができる。
【0014】
これにより、弾性表面波センサから送信された各素子からの信号を受信した外部装置(送受信機)では、各素子からの信号を時間によって分離することが可能になる。
(6)本発明では、第6態様として、第1弾性表面波素子は、弾性表面波を発生させる電極と、電極にて発生した弾性表面波を反射させる反射器とを備え、この反射器は、外部からの押圧力が印加された場合に弾性変形する構成を有するとともに、反射器に対して押圧力を印加する押圧力印加部を備えた構成とすることができる。
【0015】
これにより、第1弾性表面波素子の押圧力印加部によって反射器に対して応力を印加すると、反射器は弾性変形してたわむことにより、その反射係数が変化する。よって、反射係数の変化によって大きく変動する応答(例えば応答信号の電圧レベル)に基づいて、印加された応力を検出することができる。
【0016】
また、電極を、応力が印加された場合でも変形しないように固定することもできる。これにより、応力が印加された場合でも、電極自体は変形しないので(従って電極の反射係数は変化しないので)、反射器自体の反射係数の変化に基づく応答の変化を精度良く検出することができる。さらに、押圧力印加部を、応力に応じて変形する弾性部材を介して該応力を受けるように構成することで、応力の変化を好適に弾性表面波素子側に伝達することができる。
【0017】
(7)本発明のセンシングシステムは、第7態様として、前記請求項1〜6のいずれか1項に記載の弾性表面波センサを備えた圧力のセンシングシステムであって、前記第1弾性表面波素子に前記圧力に対応する押圧力が加わった場合に、前記第1弾性表面波素子の出力電圧と前記第2弾性表面波素子の出力電圧との電圧差を示す第1の演算値を求める第1演算手段と、前記第3弾性表面波素子の出力電圧と前記第2弾性表面波素子の出力電圧との電圧差を示す第2の演算値を求める第2演算手段と、前記第2の演算値に基づいて、温度による素子の基板変化量を求める第3演算手段と、前記第2の演算値に基づいて、前記第2弾性表面波素子の基準温度における出力電圧と基準温度からの温度変化に対応した出力電圧との電圧差である温度補正量を求める第4演算手段と、前記温度補正量に前記第1の演算値を加算して、加算値を求める第5演算手段と、前記加算値に基づいて、圧力及び温度による素子の基板変化量を求める第6演算手段と、前記圧力及び温度による素子の基板変化量と前記温度による素子の基板変化量との差から、圧力による素子の基板変化量を求める第7演算手段と、前記圧力による素子の基板変化量に基づいて、前記圧力を算出する第8演算出段と、を備えたことを特徴とする。
【0018】
以下に、各弾性表面波素子の出力を用いて、圧力を求めることができる原理を、図1に基づいて説明する。
各弾性表面波素子においては、その弾性表面波を発生する部材(基板)は、温度によってその形状(寸法)が異なるとともに(以下その変化量を基板変化量と称する)、圧力が加わっても基板変化量が異なる。
【0019】
第7態様では、この様に、素子特性は、温度変化及び(印加による)圧力変化に応じて、共に基板変化量として表すことができるという知見に基づいており、この基板変化量を利用して、弾性表面波素子に加わった圧力(又は温度)を検出する。
【0020】
即ち、図1の横軸(X軸)に示す様に、温度及び圧力の変化は、基板変化量として同一軸上にプロットすることができるので、以下に示す手順の様に、この基板変化量に基づいて、温度変化があった場合でも、印加された圧力の変化を検知することができる。
【0021】
ここで、図1の横軸(X軸)は、温度又は圧力による基板変化量を示し、縦軸(Y軸)は、素子間の出力電圧の差(又は電力比)を示している。
また、同図の実線のグラフ(圧力マップ)は、温度を一定として、第1弾性表面波素子(SAW1)に印加する圧力を変化させた場合に、第1弾性表面波素子(SAW1)と第2弾性表面波素子(SAW2)との出力電圧の差(又は電力比:反射電力比)の変化を示すグラフである。
【0022】
同図の点線で示すグラフ(温度マップ)は、(圧力の印加なく)温度を変化させた場合に、第3弾性表面波素子(SAW3)と第2弾性表面波素子(SAW2)との出力電圧の差(又は電力比:反射電力比)の変化を示すグラフである。
【0023】
同図の一点鎖線で示すグラフ(基準極温度マップ)は、(圧力の印加なく)温度を変化させた場合に、第2弾性表面波素子(SAW2)の基準温度からの温度変化に対応する出力電圧の差(又は電力比:反射電力比)である温度補正量(即ち圧力基準値)を示すグラフである。
【0024】
つまり、この基準極温度マップは、後述する圧力を求める際に用いる圧力の基準となる点(圧力基準値)を示すグラフである。なお、基準温度とは、基板変化量を求める際の基準となる温度、例えば基板変化量が初期値(0)の時の温度であり、温度が変化するにつれて基板変化量(従って出力電圧)が変化する。
【0025】
なお、前記マップではなく、演算式で規定してもよいが、以下ではマップで説明する。
具体的には、図1に例示する様に、まず、第1演算手段により、第1弾性表面波素子の出力電圧と第2弾性表面波素子の出力電圧との電圧差(圧力及び温度の影響を含む第1の演算値)を求める。また、第2演算手段により、第3弾性表面波素子の出力電圧と第2弾性表面波素子の出力電圧との電圧差(温度の影響のみを含む第2の演算値)を求める(同図(1)参照)。
【0026】
この第2の演算値である電圧差(VSAW3−VSAW2)は、温度のみによる基板変化量に対応しているので、第3演算手段により、例えばこの電圧差と温度による基板変化量とのマップ(温度マップ)を用い、前記電圧差から温度による基板変化量を求める(同図(2)参照)。
【0027】
また、第2の演算値は、第2弾性表面波素子の基準温度における出力電圧と基準温度からの温度変化に対応した出力電圧との電圧差である温度補正量に対応している。つまり、例えば前記圧力マップに示される様に(温度のみの影響を含む)第2の演算値と温度による基板変化量とは対応しており、また、温度による基板補正量は、例えば基準極温度マップにおける温度補正量(圧力基準値)に対応しているので、第2の演算値と温度補正量とには対応関係がある。従って、第4演算手段では、例えば基準極温度マップを利用して、第2の演算値から温度補正量を求める。なお、ここで、温度補正量を求めることは、温度による基板変化量に応じて圧力基準値を変更することに相当する(同図(3)参照)。
【0028】
この温度補正量は、後述する圧力による基板変化量を求める際の圧力基準値(初期値)とみなすことができる。その理由は、前記圧力マップは温度を一定として、第1弾性表面波素子(SAW1)に印加する圧力を変化させた場合に、第1弾性表面波素子(SAW1)と第2弾性表面波素子(SAW2)との出力電圧の差(又は電力比:反射電力比)の変化を示すグラフであり、言い換えれば、第2弾性表面波素子(SAW2)を基準とした第1弾性表面波素子(SAW1)の変化を示すものであり、したがって、温度を変化させた場合、圧力マップはその基準となる第2弾性表面波素子の温度変化量にしたがって基準値(初期値)が変化するからである。
【0029】
そして、第5演算手段によって、温度補正量に(圧力及び温度の影響を含む)第1の演算値を加算して、加算値を求める。
また、(圧力及び温度の影響を含む)第1の演算値と圧力及び温度による基板変化量とは対応しているので、第6演算手段では、例えば前記圧力マップを用いて、加算値から圧力及び温度による基板変化量を求める(同図(4)参照)。つまり、加算値から圧力及び温度による基板変化量を求めるのは、第1の演算値に温度変化量による基準値の変化を反映させるためである。
【0030】
次に、第7演算手段により、圧力及び温度による基板変化量と温度による基板変化量との差から、圧力による基板変化量を求め(同図(5)参照)、第8演算手段により、圧力による基板変化量に基づいて、圧力を算出する。
【0031】
つまり、本第7態様では、第3弾性表面波素子と第2弾性表面波素子との電圧差である第2の演算値から温度補正量を求め、この温度補正量を圧力基準値として、温度補正量に第1弾性表面波素子と第2弾性表面波素子との電圧差を加算し、この加算値から、圧力及び温度に対応した基板変化量を求める。そして、この圧力及び温度による基板変化量から温度による基板変化量を除くことにより、圧力のみに対応した基板変化量を求めることができるので、この圧力のみに対応した基板変化量から圧力を求めることができる。
【0032】
・ここで、温度によって、素子の特性(特に反射係数:従って出力(例えば電圧))が変化することを説明する。
図2(a)に示す様に、弾性表面波素子に用いられる周知の電極(例えば櫛歯電極:IDT)の反射係数は、櫛歯電極に入力される入力信号の周波数によって異なる。例えば温度が25℃の場合に同図の実線で示す特性が、温度が50℃に上がると同図の破線のように変化する。
【0033】
また、図2(b)に示す様に、弾性表面波素子に用いられる周知の反射器(リフレクタ)の反射係数も、反射器に入力される入力信号の周波数によって異なる。例えば温度が25℃の場合に同図のX1〜X3で示す特性が、温度が50℃に上がると同図のY1〜Y3のように変化する。
【0034】
なお、X1、Y1は、弾性表面波素子に圧力が加わっていない状態の特性を示し、X2、Y2は、200[kPa]の圧力が加わった場合の特性を示し、X3、Y3は、400[kPa]の圧力が加わった場合の特性を示している。
【0035】
このような弾性表面波素子の場合は、その出力(ここでは電圧)は、例えば図3に示す様になる。なお、同図において、P(X1〜X3)が、25℃の場合の信号強度(電圧)を示し、P(Y1〜Y3)が、50℃の場合の信号強度を示す。
【0036】
つまり、前記弾性表面波素子を用いた場合は、図4に示す様に、同じ圧力であっても、温度が異なれば異なる信号強度となる。
従って、本発明では、この様な弾性表面波素子の温度による影響を解消するために、上述した構成としたものである。
【0037】
つまり、従来の様に、例えば温度と圧力を検出する素子の出力と温度のみを検出する素子の出力との差を取る場合を考えると、具体的には、例えば温度25℃にて圧力が200〜400[kPa]に変化したときに所定の出力電圧差ΔTが得られた場合を考えると、圧力や温度が変化した他の条件で同様な出力電圧差ΔTが得られたときには、単純に出力電圧差ΔTから精度良く圧力を検出することは容易ではない。
【0038】
従って、本発明では、上述した様に、3種の弾性表面波素子を設け、この素子出力を利用することにより、圧力と温度が共に変化する状況であっても、温度の影響を好適に排除して、目的とする測定対象の状態(圧力)を精度良く検出することができる。
【0039】
(8)本発明は、第8態様として、前記請求項1〜6のいずれか1項に記載の弾性表面波センサを備えた圧力のセンシングシステムであって、前記第1弾性表面波素子に前記圧力に対応する押圧力が加わった場合に、前記第1弾性表面波素子の出力電力と前記第2弾性表面波素子の出力電力との電力比を示す第1の演算値を求める第1演算手段と、前記第3弾性表面波素子の出力電力と前記第2弾性表面波素子の出力電力との電力比を示す第2の演算値を求める第2演算手段と、前記第2の演算値に基づいて、温度による素子の基板変化量を求める第3演算手段と、前記第2の演算値に基づいて、前記第2弾性表面波素子の基準温度における出力電力と基準温度からの温度変化に対応した出力電力との電力比である温度補正量を求める第4演算手段と、前記温度補正量に前記第1の演算値を加算して、加算値を求める第5演算手段と、前記加算値に基づいて、圧力及び温度による素子の基板変化量を求める第6演算手段と、前記圧力及び温度による素子の基板変化量と前記温度による素子の基板変化量との差から、圧力による素子の基板変化量を求める第7演算手段と、前記圧力による素子の基板変化量に基づいて、前記圧力を算出する第8演算出段と、を備えたことを特徴とする。
【0040】
以下に、本第8態様の電力比を用いて圧力を求めることができる原理を、前記図1に基づいて説明する。なお、本第8態様は、前記第7態様の電圧差を電力比としたものであり、基本的な圧力の測定原理は、前記第7態様と同様であるので簡単に説明する。
【0041】
図1に例示する様に、まず、第1演算手段により、第1弾性表面波素子の出力電圧と第2弾性表面波素子の出力電力との電力比(圧力及び温度の影響を含む第1の演算値)を求める。また、第2演算手段により、第2演算手段にて、第3弾性表面波素子の出力電力と第2弾性表面波素子の出力電力との電力比(温度のみの影響を含む第2の演算値)を求める(同図(1)参照)。
【0042】
この第2の演算値である電力比(PSAW3/PSAW2)は、温度のみによる基板変化量に対応しているので、第3演算手段により、例えばこの電力比と温度による基板変化量とのマップ(温度マップ)を用い、前記電力比から温度による基板変化量を求める(同図(2)参照)。
【0043】
また、上述の様に、第2の演算値と温度補正量とには対応関係があるので、第4演算手段では、例えば基準極温度マップを用いて、前記電力比(PSAW3/PSAW2)である第2の演算値から温度補正量(圧力基準値)を求める(同図(3)参照)。
【0044】
そして、第5演算手段によって、温度補正量に第1の演算値を加算して、加算値を求め、第6演算手段では、例えば圧力マップを用いて、加算値から圧力及び温度による基板変化量を求める(同図(4)参照)。
【0045】
次に、第7演算手段により圧力及び温度による基板変化量と温度による基板変化量との差から、圧力による基板変化量を求め(同図(5)参照)、第8演算手段により、圧力による基板変化量に基づいて、圧力を算出する。
【0046】
つまり、本第8態様では、第3弾性表面波素子と第2弾性表面波素子との電力比である第2の演算値から温度補正量を求め、この温度補正量を圧力基準値として、温度補正量に第1弾性表面波素子と第2弾性表面波素子との電力比を加算し、この加算値から、圧力及び温度に対応した基板変化量を求める。そして、この圧力及び温度による基板変化量から温度による基板変化量を除くことにより、圧力のみに対応した基板変化量を求めることができるので、この圧力のみに対応した基板変化量から圧力を求めることができる。
【0047】
(9)本発明では、第9態様として、外部装置として、無線により弾性表面波センサに対して高周波信号を印加する高周波印加部と、無線により弾性表面波センサからの信号を受信する信号受信部と、信号受信部にて受信した信号(例えば電圧レベル)を検知する信号検知部とを備えた構成とすることができる。
【0048】
無線によって、弾性表面波センサと外部装置との間で信号の送受信を行って、各素子の出力(例えば電圧)の関係を利用して圧力を検出する場合、即ち、無線を利用した電力検知方式で圧力を検出する場合には、無線伝送距離の変動に伴って信号強度(例えば出力電圧)が変化するので、精度良く圧力を検出することが難しい。この対策として、無線伝送距離が一定のタイミングを検知する場合には、そのタイミングでのセンシングが必要となり、システムが複雑化する。
【0049】
それに対して、本発明では、上述した様に、各素子間の出力電圧や電力の演算を行うので、無線伝送距離の影響を排除することができる。
つまり、各素子間の出力電圧の差や電力の比を演算することにより無線通信距離の変動に伴う信号強度の変化をキャンセルすることができる、すなわち、無線伝送距離による影響を排除することができる。
【0050】
(10)本発明では、第10態様として、第1弾性表面波素子と第2弾性表面波素子と第3弾性表面波素子との遅延時間が全て異なり、且つ、第1弾性表面波素子と第2弾性表面波素子と第3弾性表面波素子との遅延時間が、全て外部装置より出力される出力信号時間より長く、且つ、第1弾性表面波素子と第2弾性表面波素子と第3弾性表面波素子との最大遅延時間が、最小遅延時間の2倍より短いように設定することができる。
【0051】
つまり、各素子における入力信号に対する応答信号(反射波)には、図6に例示する様に、各素子における遅延時間によるずれが発生する。電極〜反射器間の複数回の反射を繰り返した応答信号(第1次反射波、第2次反射波・・)は、本発明のように各素子の条件を設定することにより、各素子における応答信号に、例えば外部装置側にて応答信号の時間分離が可能なような十分な時間的なずれを与えることができる。
【0052】
ここで、「(1)第1弾性表面波素子と第2弾性表面波素子と第3弾性表面波素子との遅延時間が全て異なること」は、3素子の信号分離のための必要条件であり、「(2)第1弾性表面波素子と第2弾性表面波素子と第3弾性表面波素子との遅延時間が、全て外部装置より出力される出力信号時間より長いこと」は、素子上での入力波と反射波を分離するための必要条件であり、「(3)第1弾性表面波素子と第2弾性表面波素子と第3弾性表面波
素子との最大遅延時間が、最小遅延時間の2倍より短いこと」は、2次反射波と1次反射波とを分離するための必要条件である。
【0053】
なお、同図において、τA、τB、τCは、それぞれ、第1、第2、第3弾性表面波素子において、電極から送信された信号が例えば反射器に反射して帰って来るまでの時間(電極から反射器までの伝搬路で規定される遅延時間の2倍)を示している。
【0054】
(11)本発明は、第11態様として、前記請求項1〜6のいずれか1項に記載の弾性表面波センサを用いて圧力を測定する圧力測定方法であって、前記第1弾性表面波素子に前記圧力に対応する押圧力が加わった場合に、前記第1弾性表面波素子の出力電圧と前記第2弾性表面波素子の出力電圧との電圧差を示す第1の演算値を求める第1演算工程と、前記第3弾性表面波素子の出力電圧と前記第2弾性表面波素子の出力電圧との電圧差を示す第2の演算値を求める第2演算工程と、前記第2の演算値に基づいて、温度による素子の基板変化量を求める第3演算工程と、前記第2の演算値に基づいて、前記第2弾性表面波素子の基準温度における出力電圧と基準温度からの温度変化に対応した出力電圧との電圧差である温度補正量を求める第4演算工程と、前記温度補正量に前記第1の演算値を加算して、加算値を求める第5演算工程と、前記加算値に基づいて、圧力及び温度による素子の基板変化量を求める第6演算工程と、前記圧力及び温度による素子の基板変化量と前記温度による素子の基板変化量との差から、圧力による素子の基板変化量を求める第7演算工程と、前記圧力による素子の基板変化量に基づいて、前記圧力を算出する第8演算工程と、を備えたことを特徴とする。
【0055】
本第11態様は、前記第7態様と同様な作用効果を奏する。
(12)本発明は、第12態様として、前記請求項1〜6のいずれか1項に記載の弾性表面波センサを用いて圧力を測定する圧力測定方法であって、前記第1弾性表面波素子に前記圧力に対応する押圧力が加わった場合に、前記第1弾性表面波素子の出力電力と前記第2弾性表面波素子の出力電力との電力比を示す第1の演算値を求める第1演算工程と、前記第3弾性表面波素子の出力電力と前記第2弾性表面波素子の出力電力との電力比を示す第2の演算値を求める第2演算工程と、前記第2の演算値に基づいて、温度による素子の基板変化量を求める第3演算工程と、前記第2の演算値に基づいて、前記第2弾性表面波素子の基準温度における出力電力と基準温度からの温度変化に対応した出力電力との電力比である温度補正量を求める第4演算工程と、前記温度補正量に前記第1の演算値を加算して、加算値を求める第5演算工程と、前記加算値に基づいて、圧力及び温度による素子の基板変化量を求める第6演算工程と、前記圧力及び温度による素子の基板変化量と前記温度による素子の基板変化量との差から、圧力による素子の基板変化量を求める第7演算工程と、前記圧力による素子の基板変化量に基づいて、前記圧力を算出する第8演算工程と、を備えたことを特徴とする。
【0056】
本第11態様は、前記第8態様と同様な作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明によって圧力を求めるための手順を示す説明図である。
【図2】(a)は櫛歯電極の反射係数と周波数との関係を示すグラフであり、(b)は反射器の反射係数と周波数との関係を示すグラフである。
【図3】弾性表面波センサの出力電圧値における温度や圧力による影響を示すグラフである。
【図4】弾性表面波センサの出力電圧値における温度による影響を示すグラフである。
【図5】(a)は第1SAW素子の入力波と反射波を示すグラフ、(b)は第2SAW素子の入力波と反射波を示すグラフ、(c)は第3SAW素子の入力波と反射波を示すグラフ、(d)は各素子の入力波と反射波を示すグラフである。
【図6】実施例1の圧力センサが用いられるセンシングシステムの概略構成を示す説明図である。
【図7】実施例1の圧力センサの概略構成を示す説明図である。
【図8】実施例1の圧力センサの構成を詳細に示す説明図である。
【図9】図7のZ−Z断面を示す説明図である。
【図10】実施例1のセンシングシステムの電気的構成を示す説明図である。
【図11】(a)は第1SAW素子の入力波と反射波を示すグラフ、(b)は第2SAW素子の入力波と反射波を示すグラフ、(c)は第3SAW素子の入力波と反射波を示すグラフ、(d)は各素子の入力波と反射波を示すグラフである。
【図12】実施例1のセンシングシステムにおける信号の処理の手順を示す説明図である。
【図13】実施例1の送受信側における処理のための構成を機能的に示す説明図である。
【図14】実施例1の送受信側における処理の手順を示す説明図である。
【図15】(a)は電圧差(VSAW3−VSAW2)と温度による基板変化量との関係(温度マップ)を示すグラフであり、(b)は電圧差(VSAW1−VSAW2)と圧力による基板変化量との関係(圧力マップ)を示すグラフであり、(c)は電圧差(VSAW3−VSAW2)と電圧差(VSAW2−VSAW2*)との関係(オフセットマップ)を示すグラフである。
【図16】実施例2の送受信側における処理のための構成を機能的に示す説明図である。
【図17】実施例2の送受信側における処理の手順を示す説明図である。
【図18】(a)は実施例3の圧力センサの構成を示す説明図、(b)は実施例4の圧力センサの構成を示す説明図、(c)は実施例5の圧力センサの構成を示す説明図である。
【図19】実施例6の送受信側における処理の手順を示す説明図である。
【図20】(a)は実施例6における電力比(PSAW3/PSAW2)と温度による基板変化量との関係(温度マップ)を示すグラフであり、(b)は電力比(PSAW1/PSAW2)と圧力による基板変化量との関係(圧力マップ)を示すグラフであり、(c)は電力比(PSAW3/PSAW2)と電力比(PSAW2/PSAW2*)との関係(オフセットマップ)を示すグラフである。
【図21】実施例7の送受信側における処理の手順を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下、本発明が適用される実施例について図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0059】
本実施例では、弾性表面波センサとして、例えば車両のタイヤ空気圧を検出するタイヤ空気圧センサである圧力センサを例に挙げて説明する。
図6にシステム全体を示す様に、圧力センサ1は、外部装置(計測装置:送受信機)3との間で、無線にて信号の送受信を行うセンシングシステムを構成するものであり、このセンシングシステムでは、圧力センサ1は、外部装置3からの信号(高周波信号)を受けて、その信号に対する応答を外部装置3に送信し、外部装置3は、受信した信号に基づいて演算を行うことにより、タイヤ空気圧を求める。
【0060】
なお、前記圧力センサ1は、例えばタイヤ5内部の内側表面などに取り付けられ、外部装置3は、例えば回転しない箇所(例えばリム7の近傍やタイヤハウジング9の周辺)に取り付けられるものである。以下、詳細に説明する。
【0061】
a)まず、弾性表面波センサである圧力センサ1の構成について説明する。
図7及び図8に示す様に、本実施例の圧力センサ1は、特徴の異なる3種の弾性表面波素子(第1〜第3弾性表面波素子)11、13、15が、例えばコバールからなる平板状の基板17上に並列に配置されて貼り付けられたものである。なお、ここでは、アンテナ及びアンテナに接続された回路は省略してある。
【0062】
以下、各弾性表面波素子11〜15について説明する。
・第1弾性表面波素子11は、圧電基板19の同一表面上に、同一方向(圧電基板19の長手方向)に沿って、弾性表面波(SAW)を励起させる一対の櫛歯電極(IDT)21、23(図7参照)と、櫛歯電極21、23によって励起された弾性表面波を櫛歯電極21、23側に反射させる反射器25と、余分な弾性表面波を吸収する左右一対の吸音材27、29とを備えている。なお、一対の櫛歯電極21、23を櫛歯電極部24と称する。
【0063】
この第1弾性表面波素子11は、433MHz近傍で動作する素子であり、櫛歯電極2
1、23に対して、信号源である外部装置3(図8、図10参照)から、後述するように無線(又は有線)にて、単位時間の一定強度の一周波数(433MHz)の高周波信号が印加されるように構成されている(他の素子13、15も同様である)。なお、ここでは、櫛歯電極21、23は、反射器25からの反射波を受信する電極としても用いられる。
【0064】
以下に、第1弾性表面波素子11の各構成について、更に詳細に説明する。
前記図8に示す様に、前記圧電基板19は、例えば縦2mm×横16mm×厚み0.5mmの例えばST−X水晶基板(単結晶)からなる。
【0065】
前記櫛歯電極21、23は、信号源から433MHzの高周波信号が印加される電極(即ち交互に正負の電圧が印加される電極)であり、それぞれ複数の櫛歯(電極指)31が、前記長手方向と垂直方向に平行に形成されるとともに、対向する櫛歯電極21、23の電極指31が互いに入り込む様に設定されている。
【0066】
ここでは、櫛歯電極21、23は、厚さ0.1μmのアルミニウムからなり、電極幅:1/4λ(1.181μm)、電極間隔:1/4λ(1.81μm)、対数:100.5対に設定されている。なお、λは励起する弾性表面波の波長である。
【0067】
前記反射器(リフレクタ:SMSA)25は、厚さ0.1μmのアルミニウムからなり、電極幅:1/4λ(1.181μm)、電極間隔:1/4λ(1.81μm)、本数:200本に設定されている。なお、反射器25は、自身に印加される応力や周囲の温度に応じて反射係数が変化する特性を有している。
【0068】
前記吸音材27、29は、例えばシリコンからなり、それぞれ、櫛歯電極21、23の外側と反射器25の外側に配置されている。
なお、櫛歯電極21、23と反射器25との間の(弾性表面波の)伝搬路33の伝搬距離dR1は、1500λ(4.735mm)に設定されており、その伝搬時間(従って遅延時間)τ1は、1.5μs相当である。
【0069】
特に、第1弾性表面波素子11については、図9に図7のZ−Z断面を示す様に、第1弾性表面波素子11の先端側(同図右側)に対応して、基板17の先端側(同図右側)の表面に、直方体形状の凹部35が形成されている。
【0070】
つまり、第1弾性表面波素子11は、その櫛歯電極21、23が設けられている側(同図左側)が、基板17の表面に固定され、反射器25が設けられている側(同図右側)が、凹部35の上方に張り出すように配置され、これにより、第1弾性表面波素子11の先端側が同図上下方向に湾曲可能に構成されている。
【0071】
また、同図に示す様に、基板17表面には、各素子11〜13を覆うようなカバー37が配置されている。そして、カバー37の先端側(同図右側)には、開口部39が形成されており、この開口部39を覆うように、例えばゴムからなる弾性部材41が貼り付けられている。この弾性部材41の中心の基板17側には、第1弾性表面波素子11の先端側に当接するように、棒状の押圧部材43が突出して形成されている。なお、弾性部材41と押圧部材43により押圧力印加部が構成されている。
【0072】
これにより、弾性部材41が外部より押圧されると、押圧部材43が第1弾性表面波素子11の先端を押圧して(凹部35の左側端部を支点として)第1弾性表面波素子11の先端部分が湾曲するので、同時に反射器25も湾曲して、その反射係数が変化する。
【0073】
なお、上述した第1弾性表面波素子11を製造する場合には、例えば圧電基板19上に、スパッタリング法にて金属(アルミニウム)膜を成膜し、フォトリソグラフィーにて櫛歯電極21、23や反射器25に対応する形状にマスキングし、エッチングにより櫛歯電極21、23や反射器25をパターンニングする方法を採用できる。
【0074】
・前記図8に示す様に、第2弾性表面波素子13は、前記第1弾性表面波素子11と同様に、圧電基板51の表面に、一対の櫛歯電極53、55と反射器57とが、所定の伝搬距離dR2(>dR1)だけ離れて形成されたものであり、その外側には、同様に吸音材59、61が配置されている。なお、一対の櫛歯電極53、55により櫛歯電極部56が構成されている。
【0075】
この第2弾性表面波素子13は、前記第1弾性表面波素子11と、櫛歯電極53、55及び反射器57の材料が同じであり、圧電基板の材料も同じであるが、反射器57の寸法或いは形状及び圧電基板71の寸法が異なる。具体的には、圧電基板71は、例えば縦2mm×横20mm×厚み0.5mmの例えばST−X水晶基板(単結晶)からなる。
【0076】
従って、第2弾性表面波素子13の温度に対する反射係数−周波数の特性は、反射器57の寸法によって第1弾性表面波素子11と異なっている。但し、この第2弾性表面波素子13は、その裏面全体が基板17上に接合されており、(第1弾性表面波素子11とは異なり)圧力を加えられないように構成されている。
【0077】
なお、上記以外の構成は、基本的に第1弾性表面波素子11と同様であるので、その説明は省略する。
・前記図8に示す様に、第3弾性表面波素子15は、前記第1弾性表面波素子11と同様に、(第1、第2弾性表面波素子11、13より長尺の)圧電基板71の表面に、一対の櫛歯電極73、75と反射器77とが、所定の伝搬距離dR3(>dR2>dR1)だけ離れて形成されたものであり、その外側には、同様に吸音材79、81が配置されている。なお、一対の櫛歯電極73、75により櫛歯電極部76が構成されている。
【0078】
この第3弾性表面波素子15は、前記第1、第2弾性表面波素子11、13と、櫛歯電極73、75及び反射器77の材料が同じであり、圧電基板の材料も同じであるが、反射器77の寸法或いは形状及び圧電基板71の寸法が異なる。具体的には、圧電基板71は、例えば縦2mm×横23mm×厚み0.5mmの例えばST−X水晶基板(単結晶)からなる。また、この第3弾性表面波素子15は、その裏面全体が基板17上に接合されており、(第2弾性表面波素子13と同様に)圧力を加えられないように構成されている。
【0079】
なお、上記以外の構成は、基本的に第1弾性表面波素子11と同様であるので、その説明は省略する。
なお、前記第1〜第3弾性表面波素子11〜15は、同種の圧電基板から構成されているので、仮にこの圧電基板のみを取り出した場合には、例えば同じ条件(圧力や温度)の場合には、同じ基板変化量だけ変化するものである。
【0080】
b)ここで、本実施例の要部である各弾性表面波素子11〜15間の関係について、まとめて説明する。
本実施例では、下記表1に示す様に、第1〜第3弾性表面波素子11〜15は、それぞれ温度変化に対し素子の出力電圧が異なるように設定されている。即ち、温度変化に対する温度特性が異なるように設定されている。
【0081】
具体的には、第1〜第3弾性表面波素子11〜15においては、例えば反射器反射係数の周波数特性が異なるので、温度変化に対し素子の出力電圧が異なる。
更に、第1弾性表面波素子11は、圧力の変化によって素子の出力電圧が変化するように設定されている。即ち、第1弾性表面波素子11のみ、圧力の変化によって素子の出力電圧が変化するように、反射器25側が圧力を受けて撓んで、その反射係数が変化するように構成されている。
【0082】
【表1】
【0083】
しかも、本実施例では、第1弾性表面波素子11と第2弾性表面波素子13と第3弾性表面波素子15との遅延時間τ1、τ2、τ3が全て異なるように、各伝搬路33の長さ、従って各伝搬距離dR1、dR2、dR3(dR1<dR2<dR3)が設定されている。
【0084】
つまり、外部装置3側(送受信機側)にて、第1〜第3弾性表面波素子11〜15おける各応答信号を分離できるように、第1〜第3弾性表面波素子11〜15における伝搬距離dR1〜dR3が十分に異なるように設定されている。
【0085】
また、第1弾性表面波素子11と第2弾性表面波素子13と第3弾性表面波素子15との遅延時間τ1〜τ3は、全て外部装置3より出力される出力信号時間より長く設定されている。
【0086】
更に、第1弾性表面波素子11と第2弾性表面波素子13と第3弾性表面波素子15との最大遅延時間が、最小遅延時間の2倍より短く設定されている。
c)次に、前記圧力センサ1及び外部装置3を用いたセンシングシステムについて、図10に基づいて説明する。
【0087】
ここでは、無線による送受信システムを例に挙げて説明するが、有線にて応力を検出するようにしてもよい。なお、ここでは、同一の信号源(即ち外部装置である送受信機)3からの信号が、第1〜第3弾性表面波素子11〜15の各櫛歯電極21、23、53、55、73、75に入力するように構成されている。同様に、第1〜第3弾性表面波素子11〜15から得られる各反射信号(応答信号)が、1つのアンテナを介して外部装置3側に送信されるように構成されている。
【0088】
図10に示す様に、第1〜第3弾性表面波素子11〜15及びアンテナ91を備えた圧力センサ1は、無線を利用した周知の外部装置3によって駆動される。従って、ここでは、この外部装置3が前記信号源に相当するものである。
【0089】
前記外部装置3は、その主要部として制御回路(コントローラ)93を備えている。
また、外部装置3は、圧力センサ1を駆動させる信号(高周波信号)の送信のための回路として、高周波の発振回路(Osc)95、発信のオン・オフを切り換えるスイッチ(SW)96、バンドパスフィルタ(BPF)97、パワーアンプ(PA)99、送受信を切り換えるスイッチ(SPDT)101、アンテナ103を備えている。よって、スイッチ(SPDT)101が信号の送信が可能に設定されている場合には、制御回路93からの制御信号により、アンテナ103を介して、圧力センサ1に信号を送信する。この送信される信号は、例えば10mWの433MHzの単パルスの高周波信号である。
【0090】
更に、外部装置3は、圧力センサ1からの信号を受信するための回路として、前記アンテナ103、前記スイッチ(SPDT)101に加え、ローノイズアンプ(LNA)105、バンドパスフィルタ(BPF)107、ログアンプあるいはダイオードからなる検波器(DET)109、A/D変換器111等を備えている。よって、スイッチ(SPDT)101が信号の受信が可能に設定されている場合には、アンテナ103を介して、圧力センサ1からの信号を送信して、制御回路93に入力する。
【0091】
d)次に、前記センシングシステムを用いた圧力測定方法について説明する。
(1)最初に、このセンシングシステムにおける基本的な送受信の動作について説明する。
【0092】
まず、圧力センサ1を駆動する場合には、上述した様に、外部装置3からアンテナ103を介して圧力センサ1に対して高周波信号を送信する。この高周波信号を受信した圧力センサ1では、受信した高周波信号を第1〜第3弾性表面波素子11〜15の各櫛歯電極21、23、53、55、73、75に印加することにより、弾性表面波を発生させる。
【0093】
ここでは、例えば図11に示す様な(tINの幅を有する)入力信号が、各第1〜第3弾性表面波素子11〜15の各櫛歯電極21、23、53、55、73、75に印加された場合を考える。
【0094】
この入力信号は、各櫛歯電極21、23、53、55、73、75によって弾性表面波に変換され、弾性表面波は、各櫛歯電極21、23、53、55、73、75と各反射器25、57、77との間の伝搬距離dR1〜dR3によって定まる伝搬時間(即ち遅延時間τ1〜τ3)に各反射器25、57、77に到達する。
【0095】
各反射器25、57、77では、この弾性表面波を反射し、この弾性表面波は、同様に前記伝搬距離dR1〜dR3によって定まる遅延時間τ1〜τ3後に各櫛歯電極21、23、53、55、73、75に到達する。
【0096】
この反射した弾性表面波(反射波)によって、各櫛歯電極21、23、53、55、73、75に生ずる信号が応答信号(反射信号)であり、この応答信号は、前記送信された信号(送信信号)とは逆に、アンテナ91を介して、外部装置3に送信される。
【0097】
従って、外部装置3では、この応答信号の電圧(信号レベル)から、以下に述べる様に、弾性表面波素子1に加わる圧力を検出することができる。
(2)次に、前記圧力測定方法による処理手順ついて、より具体的に説明する。
【0098】
・まず、センシングシステム全体における処理の流れについて、図12等に基づいて、時系列に沿って説明する。
図12に示す様に、外部装置3側において、圧力センサ1側に問い合わせ信号を発生し、その後、送受信回路を受信に切り換える。
【0099】
一方、圧力センサ1側では、外部装置3側から送信された問い合わせ信号を受信する。
次に、圧力センサ1において、問い合わせ信号を第1〜第3弾性表面素子11〜15の各櫛歯電極21、23、53、55、73、75に分配し、櫛歯電極21、23、53、55、73、75から弾性表面波(入力波)を発生させる。そして、各反射器25、57、77にて反射した(遅延時間の2倍分遅延した)反射波を、各櫛歯電極21、23、53、55、73、75にて受信し、その応答信号を、外部装置3側に送信する。
【0100】
外部装置3側では、圧力センサ1から送信された応答信号を受信し、増幅、ノイズ除去等を行った後に、検波を行い、その信号から、後述するように圧力や温度の算出を行って、空気圧や温度の表示を行う。
【0101】
・次に、外部装置3側における処理手順について、図13及び図14に基づいて説明する。
なお、両図に機能的に示すように、ハードによる処理が検知部121にて行われ、ソフトによる処理が(マイコン等による演算処理を行う)演算部123にて行われる。
【0102】
まず、両図に示すように、圧力センサ1の応答信号の検波電圧は、A/D変換器111にてデジタル信号に変換される。
具体的には、第1、第2、第3弾性表面波素子11、13、15からのそれぞれ信号(電圧信号VSAW1、VSAW2、VSAW3)は、それぞれA/D変換器111(図13では便宜的に各信号のA/D変換器を区分して示している)を介して演算部123に入力される。
【0103】
・次に、演算部123における処理について、図14及び図15に基づいて詳細に説明する。
具体的には、例えば図15(a)に示す温度マップと図15(b)に示す圧力マップと図15(c)に示すオフセットマップとを用いる。
【0104】
この温度マップとは、温度による基板変化量と、第3弾性表面波素子15の出力電圧VSAW3と第2弾性表面波素子13の出力電圧VSAW2との差(VSAW3−VSAW2)との関係を示すマップである。
【0105】
また、圧力マップとは、圧力による基板変化量と、第1弾性表面波素子11の出力電圧VSAW1と第2弾性表面波素子13の出力電圧VSAW2との差(VSAW1−VSAW2)との関係を示すマップである。
【0106】
更に、オフセットマップとは、第3弾性表面波素子15の出力電圧VSAW3と第2弾性表面波素子13の出力電圧VSAW2との差(VSAW3−VSAW2)と、第2弾性表面波素子13の出力電圧VSAW2と基準温度における第2弾性表面波素子13の出力電圧VSAW2*との差(VSAW3−VSAW2*)の関係を示すマップである。即ち、このオフセットマップは、前記電圧差(VSAW3−VSAW2)から、圧力基準値を示す温度補正量を求めるための基準極温度マップである。
【0107】
まず、ステップ1では、第1弾性表面波素子11の出力電圧VSAW1と第2弾性表面波素子13の出力電圧VSAW2との電圧差(VSAW1−VSAW2)を求める。この電圧差(VSAW1−VSAW2)には、圧力及び温度の影響が含まれている。
【0108】
また、ステップ2では、第3弾性表面波素子15の出力電圧VSAW3と第2弾性表面波素子13の出力電圧VSAW2との電圧差(VSAW3−VSAW2)を求める。この電圧差(VSAW3−VSAW2)には、(圧力の影響が含まれておらず)温度のみの影響が含まれている。
【0109】
そして、ステップ3では、図15(a)の温度マップから、この電圧差(VSAW3−VSAW2)に対応する温度による基板変化量を求める。例えば前記電圧差が2Vである場合には、前記温度マップから、温度による基板変化量は190ppmとなる。
【0110】
従って、予め温度と温度による基板変化量との関係を調べてマップ等を作製しておき、このマップ等を参照して、温度による基板変化量から温度を求めることができる。
次に、ステップ4では、図15(c)のオフセットマップを用いて、第3弾性表面波素子15の出力電圧VSAW3と第2弾性表面波素子13の出力電圧VSAW2との電圧差(VSAW3−VSAW2)から、前記温度補正量に対応するオフセット電圧を求める。例えば前記電圧差が2Vの場合には、前記オフセットマップから、オフセット電圧は1.7Vとなる。
【0111】
次に、ステップ5では、前記ステップ1で求めた電圧差(VSAW1−VSAW2)に前記温度補正量を加えた値(加算値)を求める。例えば電圧差が0.8Vである場合には、温度補正量の1.7Vを加えた2.5Vが加算値となる。
【0112】
次に、ステップ6では、図15(b)の圧力マップを用い、この加算値に対応した圧力による基板変化量を求める。なお、この加算値には温度補正量が含まれているので、圧力による基板変化量には、圧力だけでなく温度による影響も含まれている。例えば、前記圧力マップから、加算値2.5Vに対応した圧力による基板変化量は500ppmとなる。
【0113】
次に、ステップ7では、前記加算値から求めた(温度の影響も含む)圧力による基板変化量から(温度のみに起因する)温度による基板変化量を引いて、圧力のみによる基板変化量を求める。例えば前記(温度の影響を含む)圧力による基板変化量が500ppmで、温度による基板変化量が190ppmである場合には、その差の310ppmが圧力のみによる基板変化量となる。
【0114】
従って、予め圧力と圧力による基板変化量との関係を調べてマップ等を作製しておき、このマップ等を参照して、圧力のみによる基板変化量から圧力を求めることができる。
e)この様に、本実施例では、3種の弾性表面波素子11〜15を設けた圧力センサ1を用い、これらの素子出力を利用することにより、圧力と温度が共に変化する状況であっても、温度の影響を好適に排除して、目的とする測定対象の状態(圧力)を精度良く検出することができる。
【0115】
つまり、まず、第1弾性表面波素子11と第2弾性表面波素子13との出力電圧の差をとって、(圧力及び温度の影響を含む)第1の演算値を求め、第3弾性表面波素子15と第2弾性表面波素子13との出力電圧の差をとって、(温度のみの影響を含む)第2の演算値を求める。そして、前記オフセットマップを用いて、第2の演算値から(圧力基準値である)温度補正量を示すオフセット電圧を求め、このオフセット電圧に第1の演算値を加算した加算値から、(圧力及び温度の影響を含む)基板変化量を求める。次に、圧力及び温度による基板変化量から温度のみによる基板変化量を引くことにより、圧力のみによる基板変化量を求めることができるので、この圧力のみによる基板変化量から、精度良く圧力を求めることができる。
【0116】
また、本実施例では、無線を利用した電力検知方式で圧力を検出する場合に、上述した圧力測定方法を行うことにより、無線伝送距離の変動に伴って信号強度(出力電圧)が変化しても、簡易な構成で、無線伝送距離の影響を排除することができる。
【実施例2】
【0117】
次に、実施例2について説明するが、前記実施例1と同様な内容の説明は簡略化する。
ここでは、外部装置における圧力等を算出する手法が第1実施例と異なるので、異なる内容について説明する。
【0118】
図16及び図17に示す様に、本実施例では、ハードによる処理が検知部201にて行われ、ソフトによる処理が演算部203にて行われる。
両図に示す様に、圧力センサ1の応答信号の検波電圧は、各ホールド回路205〜209で保持される。具体的には、第1、第2、第3弾性表面波素子からのそれぞれ信号(電圧信号VSAW1、VSAW2、VSAW3)は、それぞれ各ホールド回路205〜209で保持される。
【0119】
そして、例えば図示しない差動演算回路によって、保持された第1、第2弾性表面波素子からの電圧信号VSAW1、VSAW2の差分(VSAW1−VSAW2)を演算する。また、同様に、保持された第3、第2弾性表面波素子からの電圧信号VSAW3、VSAW2の差分(VSAW3−VSAW2)を演算する。
【0120】
これらの差分の演算値は、それぞれA/D変換器211、213を介して、演算部203に入力される。
その後の演算部203における処理は、図17の「ソフトウェアによる処理」に示す様に、前記実施例1と同様である。
【0121】
具体的には、前記図15(c)を用いて、第3弾性表面波素子15の出力電圧VSAW3と第2弾性表面波素子13の出力電圧VSAW2との電圧差(VSAW3−VSAW2)から、前記温度補正量に対応するオフセット電圧を求める。
【0122】
次に、前記電圧差(VSAW1−VSAW2)に前記温度補正量を加えた加算値を求める。
次に、この加算値に対応した圧力及び温度による基板変化量を求める。
次に、前記圧力及び温度による基板変化量から(温度のみに起因する)温度による基板変化量を引いて、圧力のみによる基板変化量を求める。
【0123】
従って、この圧力のみによる基板変化量から圧力を求めることができる。
本実施例によっても、前記実施例1と同様な効果を奏する。
【実施例3】
【0124】
次に、実施例3について説明するが、前記実施例1と同様な内容の説明は簡略化する。
ここでは、弾性表面波素子の構成が第1実施例と異なるので、異なる内容を説明する。
図18(a)に示す様に、本実施例の弾性表面波センサである圧力センサ301では、第1〜第3弾性表面波素子303、305、307の長手方向における長さが異なるように設定されている。
【0125】
なお、各素子303〜307は、前記実施例1と同様に、それぞれ圧電基板309、311、313上に、(一対の櫛歯電極からなる)櫛歯電極部315、317、319と反射器321、323、325が形成されたものである。
【0126】
本実施例においても、第1〜第3弾性表面波素子303〜307は、例えば反射器反射係数の周波数特性が異なることにより、温度変化に対し素子の出力電圧が異なる様に設定されている。
【0127】
また、第1弾性表面波素子303のみは、圧力の変化によって素子の出力電圧が変化するように設定されている。
本実施例においても、前記実施例1と同様な効果を奏する。
【実施例4】
【0128】
次に、実施例4について説明するが、前記実施例1と同様な内容の説明は簡略化する。
ここでは、弾性表面波素子の構成が第1実施例と異なるので、異なる内容を説明する。
図18(b)に示す様に、本実施例の弾性表面波センサである圧力センサ401では、第1、第2弾性表面波素子403、405は、同一の圧電基板407において、長手方向に一列に形成されている。
【0129】
なお、第1、第2弾性表面波素子403、405は、同一の圧電基板407上の中央に(両素子403、405の共有の)櫛歯電極部409が形成されるとともに、圧電基板407の両側に反射器411、413が形成されたものである。
【0130】
また、第3弾性表面波素子414は、他の圧電基板415の上に、櫛歯電極部417と反射器419が形成されたものである。
本実施例においても、第1〜第3弾性表面波素子403、405、414は、例えば反射器反射係数の周波数特性が異なることにより、温度変化に対し素子の出力電圧が異なるように設定されている。
【0131】
更に、第1弾性表面波素子403のみは、圧力の変化によって素子の出力電圧が変化するように設定されている。
本実施例においても、前記実施例1と同様な効果を奏する。
【実施例5】
【0132】
次に、実施例5について説明するが、前記実施例1と同様な内容の説明は簡略化する。
ここでは、弾性表面波素子の構成が第1実施例と異なるので、異なる内容を説明する。
図18(c)に示す様に、本実施例の弾性表面波センサである圧力センサ501では、第1〜第3弾性表面波素子503、505、507の長手方向における長さが異なるように設定されている。
【0133】
なお、各素子503〜507は、前記実施例1と同様に、それぞれ圧電基板509、511、513上に、各素子共有の(一対の櫛歯電極からなる)櫛歯電極部515と各反射器517、519、521が形成されたものである。
【0134】
本実施例においても、第1〜第3弾性表面波素子503〜507は、例えば反射器反射係数の周波数特性が異なることにより、温度変化に対し素子の出力電圧が異なるように設定されている。
【0135】
また、第1弾性表面波素子503のみは、圧力の変化によって素子の出力電圧が変化するように設定されている。
本実施例においても、前記実施例1と同様な効果を奏する。
【実施例6】
【0136】
次に、実施例6について説明するが、前記実施例1と同様な内容の説明は簡略化する。 なお、素子等の各部材は実施例1と同じであるので、実施例1と同じ番号を使用する。
本実施例は、各素子の出力の電力比を用いて、前記実施例1とほぼ同様な手順で圧力を検出するので、図19及び図20に基づいて簡単に説明する。
【0137】
なお、図20(a)は温度マップであり、その縦軸は、前記実施例1と同様な温度による基板変化量を示すが、横軸は、第3、第2弾性表面波素子15、13間の電力比を示している。
【0138】
また、図20(b)は圧力マップであり、その縦軸は、前記実施例1と同様な圧力による基板変化量を示すが、横軸は、第1、第2弾性表面波素子11、13間の電力比を示している。
【0139】
更に、図20(c)はオフセットマップ(基準極温度マップ)であり、その縦軸は、第2弾性表面波素子13の出力電力とその基準温度における出力電力との電力比(温度補正量)を示し、横軸は、第3、第2弾性表面波素子15、13間の電力比を示している。
【0140】
図19及び図20に示す様に、まず、第1〜第3弾性表面波素子11〜15の出力電圧を、図10のログアンプあるいはダイオードからなる検波器(DET)109の検波特性に従い、その入力電力に換算することによって、それぞれ電力PSAW1、PSAW2、PSAW3に換算する。
【0141】
そして、第1弾性表面波素子11の電力PSAW1と第2弾性表面波素子13の電力PSAW2との電力比(PSAW1/PSAW2)を演算する。また、同様に、第3弾性表面波素子15の電力PSAW3と第2弾性表面波素子13の電力PSAW2との電力比(PSAW3/PSAW2)を演算する。
【0142】
なお、後述する様に、電力比と電力差とは等価であり、ここでは、電力をdBmでとっているため、電力比の計算は差動演算となる。
次に、前記図20(a)の様な温度マップを用いて、前記第3、第2弾性表面波素子15、13間の電力比(PSAW3/PSAW2)の値に対応する基板変位量(温度による基板変化量)を算出する。
【0143】
次に、前記図20(c)の様なオフセットマップを用いて、第3、第2弾性表面波素子15、13間の電力比(PSAW3/PSAW2)から、(圧力基準値に対応する)温度補正量(オフセット電圧)を算出する。
【0144】
次に、前記第1、第2弾性表面波素子15、13間の電力比(PSAW1/PSAW2)に前記温度補正量を加算し、前記図20(b)の様な圧力マップを用いて、その加算値から、温度及び圧力による基板変位量を算出する。
【0145】
次に、温度及び圧力による基板変位量から温度による基板変位量を引いて、圧力のみによる基板変位量を算出する。
従って、この圧力のみによる基板変位量から、予め求めておいた圧力と圧力のみによる基板変位量との関係を示すマップ等を用いて、圧力を求めることができる。
【0146】
また、前記温度による基板変化量から、予め求めておいた温度と温度のみによる基板変位量との関係を示すマップ等を用いて、温度を算出することができる。
本実施例においても、前記実施例1と同様な効果を奏する。
【0147】
なお、下記数1に示す様に、式(1)の様に定義される場合、式(2)又は式(3)から明かな様に、dBm単位の電力で差分を計算することは、その真数(電力W)の比を取ることと等価であるので、各マップでは、電力の差で表現してある。
【0148】
【数1】
【実施例7】
【0149】
次に、実施例7について説明するが、前記実施例2と同様な内容の説明は簡略化する。
ここでは、外部装置における圧力等を算出する手法が第1実施例と異なるので、異なる内容について説明する。なお、前記実施例2と同じ部材には同じ番号を付す。
【0150】
図21に示す様に、本実施例では、圧力センサの応答信号の検波電圧は、各ホールド回路205〜209で保持される。具体的には、第1、第2、第3弾性表面波素子からのそれぞれ信号(電圧信号VSAW1、VSAW2、VSAW3)は、それぞれ各ホールド回路205〜209で保持される。
【0151】
そして、例えば図示しない差動演算回路によって、保持された第1、第2弾性表面波素子からの電圧信号VSAW1、VSAW2の差分(VSAW1−VSAW2)を演算する。また、同様に、保持された第3、第2弾性表面波素子からの電圧信号VSAW3、VSAW2の差分(VSAW3−VSAW2)を演算する。
【0152】
これらの差分の演算値は、それぞれA/D変換器211、213を介して、演算部に入力される。
その後の演算部における処理は、図21の「ソフトウェアによる処理」に示す様に、前記実施例2と同様である。
【0153】
具体的には、まず、第1、第2弾性表面波素子11、13間の出力電圧の差(VSAW1−VSAW2)を電力比(VSAW1/VSAW2)に換算するとともに、第3、第2弾性表面波素子115、13間の出力電圧の差(VSAW3−VSAW2)を電力比(VSAW3/VSAW2)に換算する。
【0154】
そして、前記図20(a)の様な温度マップを用いて、前記第3、第2弾性表面波素子15、13間の電力比(PSAW3/PSAW2)の値に対応する基板変位量(温度による基板変化量)を算出する。
【0155】
次に、前記図20(c)の様なオフセットマップ(基準極温度マップ)を用いて、第3、第2弾性表面波素子15、13間の電力比(PSAW3/PSAW2)から、(圧力基準点に対応する)温度補正量(オフセット電圧)を算出する。
【0156】
次に、前記第1、第2弾性表面波素子15、13間の電力比(PSAW1/PSAW2)に前記温度補正量を加算し、前記図20(b)の様な圧力マップを用いて、その加算値から、温度及び圧力による基板変位量を算出する。
【0157】
次に、温度及び圧力による基板変位量から温度による基板変位量を引いて、圧力のみによる基板変位量を算出する。
従って、この圧力のみによる基板変位量から、予め求めておいた圧力と圧力のみによる基板変位量との関係を示すマップ等を用いて、圧力を求めることができる。
【0158】
また、前記温度による基板変化量から、予め求めておいた温度と温度のみによる基板変位量との関係を示すマップ等を用いて、温度を算出することができる。
本実施例においても、前記実施例2と同様な効果を奏する。
【0159】
本発明は、上述した各実施例に限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲内において、各種の態様で実施できることは勿論である。
(1)本発明は、例えばタイヤ空気圧センサのような圧力センサに限らず、応力センサ、変位センサなど、各種の用途に適用できる。
【0160】
(2)本発明では、出力電圧値を用いて圧力等を求めたが、それ以外に、出力電圧値から求めた出力電流値を用いて圧力等を求めてもよい。
【符号の説明】
【0161】
1、301、401、501…圧力センサ(弾性表面波センサ)
3…外部装置(信号源)
11、303、403、503…第1弾性表面波素子
13、305、405、505…第2弾性表面波素子
15、307、414、507…第3弾性表面波素子
19、51、71、309、311、313、407、415、509、511、513…圧電基板
21、23、53、55、73、75…櫛歯電極
24、56、76、315、317、319、409、417、515…櫛歯電極部
33…伝送路
25、57、77、321、323、325、411、413、419、517、519、521…反射器
43…押圧部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性表面波を利用して、測定対象の状態(圧力等)の変化を検出するために、少なくとも3種の弾性表面波素子を備えた弾性表面波センサと、弾性表面波センサからの信号に基づいて圧力を測定するセンシングシステムと、弾性表面波センサからの信号に基づいて圧力を測定する圧力測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、弾性表面波(SAW)の特性を利用して、測定対象の圧力や温度等を検知する弾性表面波センサ(SAWデバイス)が開発されている。
この種の弾性表面波を利用した圧力・温度モニターとしては、下記特許文献1、2に記載の様に、圧力変動を検出する素子として、櫛歯電極(IDT:Inter Digital Transducer)や反射器(リフレクタ)からなる共振型SAW素子を利用し、このSAW素子の共振周波数の変動から圧力変動を検知する手法(共振周波数検知方式)が開示されている。
【0003】
これとは別に、近年では、圧力変動をSAW素子の反射信号の強度(例えば電圧レベル)の変動から検知する手法(電力検知方式)が検討されている。
また、弾性表面波センサを利用した圧力・温度モニターにおいて、温度影響を補償する手段として、下記特許文献3〜5に記載の様に、特性が同じ2個のSAW素子を用い、一方を圧力と温度の両影響を受ける素子、他方を温度の影響のみを受ける素子とし、これらの2素子の差動出力を圧力検知信号することで、温度影響を除去する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4099504号公報
【特許文献2】特許第4320598号公報
【特許文献3】特開2003−14572号公報
【特許文献4】特許第4088921号公報
【特許文献5】特開2009−222589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来技術の様に、両SAW素子の出力電圧値の差の変化から、目的とする測定対象の状態(例えば圧力)を検知する場合でも、好適に測定対象の状態を検知できないことがあった。
【0006】
つまり、弾性表面波センサの特性(特にSAW素子の反射係数と周波数との関係)は温度によって影響を受け、温度によって同じ圧力でも異なった出力電圧値となるので、単にSAW素子の出力電圧値の差を取っただけでは、精度良く測定対象の状態を検出できないことがあった。
【0007】
すなわち、温度と圧力の変化が同時に発生するような状況では、両SAW素子の特性自体が変化する状態となるので、単にSAW素子の出力電圧値の差を取っただけでは、精度良く測定対象の状態を検出できないという問題があった。
【0008】
本発明は、こうした問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、温度が変化した場合でも、例えば圧力等の目的とする測定対象の状態を精度良く検知することができる弾性表面波センサ、センシングシステム、及び圧力測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の弾性表面波センサは、第1態様として、外部からの影響によって素子を伝わる弾性表面波の特性が変化して素子の出力が変化する第1弾性表面波素子及び第2弾性表面波素子及び第3弾性表面波素子を備えた弾性表面波センサであって、前記第1弾性表面波素子と前記第2弾性表面波素子と前記第3弾性表面波素子とは、温度変化に対し素子の出力が異なり、且つ、前記第1弾性表面波素子は、前記温度以外の測定対象の状態の変化によって素子の出力が変化するように構成された素子であることを特徴とする。
【0010】
本発明では、第1〜第3弾性表面波素子は、それぞれ温度変化に対する素子の出力(例えば出力される電圧や電力)が異なり、また、第3弾性表面波素子は、温度以外の測定対象の状態(例えば圧力)の変化によって素子の出力(例えば電圧や電力)が変化するように構成された素子である。
【0011】
従って、これらの各出力を用いて、例えば請求項7〜12に記載の様に、温度の影響を排除して、測定対象の状態(例えば圧力)を精度良く検出することができる。
なお、前記各弾性表面波素子としては、圧電基板上に櫛歯電極、反射器等の電極を備えた素子が挙げられるが、各素子において、例えば材料組成や電極寸法、形状の違いまたは素子作製精度のバラツキによって電極の反射係数の周波数特性が異なる場合には、同じ温度であっても各素子の出力(例えば電圧や電力)が異なる。
【0012】
(2)本発明では、第2態様として、無線によって外部装置との信号の送受信が可能な構成とすることができる。
(3)本発明では、第3態様として、測定対象の状態を圧力とすることができる。
【0013】
(4)本発明では、第4態様として、押圧力印加部によって、第1弾性表面波素子に対して圧力に対応する押圧力を印加することができる。
(5)本発明では、第5態様として、第1弾性表面波素子と第2弾性表面波素子と第3弾性表面波素子とにおける信号の遅延時間が全て異なるように設定することができる。
【0014】
これにより、弾性表面波センサから送信された各素子からの信号を受信した外部装置(送受信機)では、各素子からの信号を時間によって分離することが可能になる。
(6)本発明では、第6態様として、第1弾性表面波素子は、弾性表面波を発生させる電極と、電極にて発生した弾性表面波を反射させる反射器とを備え、この反射器は、外部からの押圧力が印加された場合に弾性変形する構成を有するとともに、反射器に対して押圧力を印加する押圧力印加部を備えた構成とすることができる。
【0015】
これにより、第1弾性表面波素子の押圧力印加部によって反射器に対して応力を印加すると、反射器は弾性変形してたわむことにより、その反射係数が変化する。よって、反射係数の変化によって大きく変動する応答(例えば応答信号の電圧レベル)に基づいて、印加された応力を検出することができる。
【0016】
また、電極を、応力が印加された場合でも変形しないように固定することもできる。これにより、応力が印加された場合でも、電極自体は変形しないので(従って電極の反射係数は変化しないので)、反射器自体の反射係数の変化に基づく応答の変化を精度良く検出することができる。さらに、押圧力印加部を、応力に応じて変形する弾性部材を介して該応力を受けるように構成することで、応力の変化を好適に弾性表面波素子側に伝達することができる。
【0017】
(7)本発明のセンシングシステムは、第7態様として、前記請求項1〜6のいずれか1項に記載の弾性表面波センサを備えた圧力のセンシングシステムであって、前記第1弾性表面波素子に前記圧力に対応する押圧力が加わった場合に、前記第1弾性表面波素子の出力電圧と前記第2弾性表面波素子の出力電圧との電圧差を示す第1の演算値を求める第1演算手段と、前記第3弾性表面波素子の出力電圧と前記第2弾性表面波素子の出力電圧との電圧差を示す第2の演算値を求める第2演算手段と、前記第2の演算値に基づいて、温度による素子の基板変化量を求める第3演算手段と、前記第2の演算値に基づいて、前記第2弾性表面波素子の基準温度における出力電圧と基準温度からの温度変化に対応した出力電圧との電圧差である温度補正量を求める第4演算手段と、前記温度補正量に前記第1の演算値を加算して、加算値を求める第5演算手段と、前記加算値に基づいて、圧力及び温度による素子の基板変化量を求める第6演算手段と、前記圧力及び温度による素子の基板変化量と前記温度による素子の基板変化量との差から、圧力による素子の基板変化量を求める第7演算手段と、前記圧力による素子の基板変化量に基づいて、前記圧力を算出する第8演算出段と、を備えたことを特徴とする。
【0018】
以下に、各弾性表面波素子の出力を用いて、圧力を求めることができる原理を、図1に基づいて説明する。
各弾性表面波素子においては、その弾性表面波を発生する部材(基板)は、温度によってその形状(寸法)が異なるとともに(以下その変化量を基板変化量と称する)、圧力が加わっても基板変化量が異なる。
【0019】
第7態様では、この様に、素子特性は、温度変化及び(印加による)圧力変化に応じて、共に基板変化量として表すことができるという知見に基づいており、この基板変化量を利用して、弾性表面波素子に加わった圧力(又は温度)を検出する。
【0020】
即ち、図1の横軸(X軸)に示す様に、温度及び圧力の変化は、基板変化量として同一軸上にプロットすることができるので、以下に示す手順の様に、この基板変化量に基づいて、温度変化があった場合でも、印加された圧力の変化を検知することができる。
【0021】
ここで、図1の横軸(X軸)は、温度又は圧力による基板変化量を示し、縦軸(Y軸)は、素子間の出力電圧の差(又は電力比)を示している。
また、同図の実線のグラフ(圧力マップ)は、温度を一定として、第1弾性表面波素子(SAW1)に印加する圧力を変化させた場合に、第1弾性表面波素子(SAW1)と第2弾性表面波素子(SAW2)との出力電圧の差(又は電力比:反射電力比)の変化を示すグラフである。
【0022】
同図の点線で示すグラフ(温度マップ)は、(圧力の印加なく)温度を変化させた場合に、第3弾性表面波素子(SAW3)と第2弾性表面波素子(SAW2)との出力電圧の差(又は電力比:反射電力比)の変化を示すグラフである。
【0023】
同図の一点鎖線で示すグラフ(基準極温度マップ)は、(圧力の印加なく)温度を変化させた場合に、第2弾性表面波素子(SAW2)の基準温度からの温度変化に対応する出力電圧の差(又は電力比:反射電力比)である温度補正量(即ち圧力基準値)を示すグラフである。
【0024】
つまり、この基準極温度マップは、後述する圧力を求める際に用いる圧力の基準となる点(圧力基準値)を示すグラフである。なお、基準温度とは、基板変化量を求める際の基準となる温度、例えば基板変化量が初期値(0)の時の温度であり、温度が変化するにつれて基板変化量(従って出力電圧)が変化する。
【0025】
なお、前記マップではなく、演算式で規定してもよいが、以下ではマップで説明する。
具体的には、図1に例示する様に、まず、第1演算手段により、第1弾性表面波素子の出力電圧と第2弾性表面波素子の出力電圧との電圧差(圧力及び温度の影響を含む第1の演算値)を求める。また、第2演算手段により、第3弾性表面波素子の出力電圧と第2弾性表面波素子の出力電圧との電圧差(温度の影響のみを含む第2の演算値)を求める(同図(1)参照)。
【0026】
この第2の演算値である電圧差(VSAW3−VSAW2)は、温度のみによる基板変化量に対応しているので、第3演算手段により、例えばこの電圧差と温度による基板変化量とのマップ(温度マップ)を用い、前記電圧差から温度による基板変化量を求める(同図(2)参照)。
【0027】
また、第2の演算値は、第2弾性表面波素子の基準温度における出力電圧と基準温度からの温度変化に対応した出力電圧との電圧差である温度補正量に対応している。つまり、例えば前記圧力マップに示される様に(温度のみの影響を含む)第2の演算値と温度による基板変化量とは対応しており、また、温度による基板補正量は、例えば基準極温度マップにおける温度補正量(圧力基準値)に対応しているので、第2の演算値と温度補正量とには対応関係がある。従って、第4演算手段では、例えば基準極温度マップを利用して、第2の演算値から温度補正量を求める。なお、ここで、温度補正量を求めることは、温度による基板変化量に応じて圧力基準値を変更することに相当する(同図(3)参照)。
【0028】
この温度補正量は、後述する圧力による基板変化量を求める際の圧力基準値(初期値)とみなすことができる。その理由は、前記圧力マップは温度を一定として、第1弾性表面波素子(SAW1)に印加する圧力を変化させた場合に、第1弾性表面波素子(SAW1)と第2弾性表面波素子(SAW2)との出力電圧の差(又は電力比:反射電力比)の変化を示すグラフであり、言い換えれば、第2弾性表面波素子(SAW2)を基準とした第1弾性表面波素子(SAW1)の変化を示すものであり、したがって、温度を変化させた場合、圧力マップはその基準となる第2弾性表面波素子の温度変化量にしたがって基準値(初期値)が変化するからである。
【0029】
そして、第5演算手段によって、温度補正量に(圧力及び温度の影響を含む)第1の演算値を加算して、加算値を求める。
また、(圧力及び温度の影響を含む)第1の演算値と圧力及び温度による基板変化量とは対応しているので、第6演算手段では、例えば前記圧力マップを用いて、加算値から圧力及び温度による基板変化量を求める(同図(4)参照)。つまり、加算値から圧力及び温度による基板変化量を求めるのは、第1の演算値に温度変化量による基準値の変化を反映させるためである。
【0030】
次に、第7演算手段により、圧力及び温度による基板変化量と温度による基板変化量との差から、圧力による基板変化量を求め(同図(5)参照)、第8演算手段により、圧力による基板変化量に基づいて、圧力を算出する。
【0031】
つまり、本第7態様では、第3弾性表面波素子と第2弾性表面波素子との電圧差である第2の演算値から温度補正量を求め、この温度補正量を圧力基準値として、温度補正量に第1弾性表面波素子と第2弾性表面波素子との電圧差を加算し、この加算値から、圧力及び温度に対応した基板変化量を求める。そして、この圧力及び温度による基板変化量から温度による基板変化量を除くことにより、圧力のみに対応した基板変化量を求めることができるので、この圧力のみに対応した基板変化量から圧力を求めることができる。
【0032】
・ここで、温度によって、素子の特性(特に反射係数:従って出力(例えば電圧))が変化することを説明する。
図2(a)に示す様に、弾性表面波素子に用いられる周知の電極(例えば櫛歯電極:IDT)の反射係数は、櫛歯電極に入力される入力信号の周波数によって異なる。例えば温度が25℃の場合に同図の実線で示す特性が、温度が50℃に上がると同図の破線のように変化する。
【0033】
また、図2(b)に示す様に、弾性表面波素子に用いられる周知の反射器(リフレクタ)の反射係数も、反射器に入力される入力信号の周波数によって異なる。例えば温度が25℃の場合に同図のX1〜X3で示す特性が、温度が50℃に上がると同図のY1〜Y3のように変化する。
【0034】
なお、X1、Y1は、弾性表面波素子に圧力が加わっていない状態の特性を示し、X2、Y2は、200[kPa]の圧力が加わった場合の特性を示し、X3、Y3は、400[kPa]の圧力が加わった場合の特性を示している。
【0035】
このような弾性表面波素子の場合は、その出力(ここでは電圧)は、例えば図3に示す様になる。なお、同図において、P(X1〜X3)が、25℃の場合の信号強度(電圧)を示し、P(Y1〜Y3)が、50℃の場合の信号強度を示す。
【0036】
つまり、前記弾性表面波素子を用いた場合は、図4に示す様に、同じ圧力であっても、温度が異なれば異なる信号強度となる。
従って、本発明では、この様な弾性表面波素子の温度による影響を解消するために、上述した構成としたものである。
【0037】
つまり、従来の様に、例えば温度と圧力を検出する素子の出力と温度のみを検出する素子の出力との差を取る場合を考えると、具体的には、例えば温度25℃にて圧力が200〜400[kPa]に変化したときに所定の出力電圧差ΔTが得られた場合を考えると、圧力や温度が変化した他の条件で同様な出力電圧差ΔTが得られたときには、単純に出力電圧差ΔTから精度良く圧力を検出することは容易ではない。
【0038】
従って、本発明では、上述した様に、3種の弾性表面波素子を設け、この素子出力を利用することにより、圧力と温度が共に変化する状況であっても、温度の影響を好適に排除して、目的とする測定対象の状態(圧力)を精度良く検出することができる。
【0039】
(8)本発明は、第8態様として、前記請求項1〜6のいずれか1項に記載の弾性表面波センサを備えた圧力のセンシングシステムであって、前記第1弾性表面波素子に前記圧力に対応する押圧力が加わった場合に、前記第1弾性表面波素子の出力電力と前記第2弾性表面波素子の出力電力との電力比を示す第1の演算値を求める第1演算手段と、前記第3弾性表面波素子の出力電力と前記第2弾性表面波素子の出力電力との電力比を示す第2の演算値を求める第2演算手段と、前記第2の演算値に基づいて、温度による素子の基板変化量を求める第3演算手段と、前記第2の演算値に基づいて、前記第2弾性表面波素子の基準温度における出力電力と基準温度からの温度変化に対応した出力電力との電力比である温度補正量を求める第4演算手段と、前記温度補正量に前記第1の演算値を加算して、加算値を求める第5演算手段と、前記加算値に基づいて、圧力及び温度による素子の基板変化量を求める第6演算手段と、前記圧力及び温度による素子の基板変化量と前記温度による素子の基板変化量との差から、圧力による素子の基板変化量を求める第7演算手段と、前記圧力による素子の基板変化量に基づいて、前記圧力を算出する第8演算出段と、を備えたことを特徴とする。
【0040】
以下に、本第8態様の電力比を用いて圧力を求めることができる原理を、前記図1に基づいて説明する。なお、本第8態様は、前記第7態様の電圧差を電力比としたものであり、基本的な圧力の測定原理は、前記第7態様と同様であるので簡単に説明する。
【0041】
図1に例示する様に、まず、第1演算手段により、第1弾性表面波素子の出力電圧と第2弾性表面波素子の出力電力との電力比(圧力及び温度の影響を含む第1の演算値)を求める。また、第2演算手段により、第2演算手段にて、第3弾性表面波素子の出力電力と第2弾性表面波素子の出力電力との電力比(温度のみの影響を含む第2の演算値)を求める(同図(1)参照)。
【0042】
この第2の演算値である電力比(PSAW3/PSAW2)は、温度のみによる基板変化量に対応しているので、第3演算手段により、例えばこの電力比と温度による基板変化量とのマップ(温度マップ)を用い、前記電力比から温度による基板変化量を求める(同図(2)参照)。
【0043】
また、上述の様に、第2の演算値と温度補正量とには対応関係があるので、第4演算手段では、例えば基準極温度マップを用いて、前記電力比(PSAW3/PSAW2)である第2の演算値から温度補正量(圧力基準値)を求める(同図(3)参照)。
【0044】
そして、第5演算手段によって、温度補正量に第1の演算値を加算して、加算値を求め、第6演算手段では、例えば圧力マップを用いて、加算値から圧力及び温度による基板変化量を求める(同図(4)参照)。
【0045】
次に、第7演算手段により圧力及び温度による基板変化量と温度による基板変化量との差から、圧力による基板変化量を求め(同図(5)参照)、第8演算手段により、圧力による基板変化量に基づいて、圧力を算出する。
【0046】
つまり、本第8態様では、第3弾性表面波素子と第2弾性表面波素子との電力比である第2の演算値から温度補正量を求め、この温度補正量を圧力基準値として、温度補正量に第1弾性表面波素子と第2弾性表面波素子との電力比を加算し、この加算値から、圧力及び温度に対応した基板変化量を求める。そして、この圧力及び温度による基板変化量から温度による基板変化量を除くことにより、圧力のみに対応した基板変化量を求めることができるので、この圧力のみに対応した基板変化量から圧力を求めることができる。
【0047】
(9)本発明では、第9態様として、外部装置として、無線により弾性表面波センサに対して高周波信号を印加する高周波印加部と、無線により弾性表面波センサからの信号を受信する信号受信部と、信号受信部にて受信した信号(例えば電圧レベル)を検知する信号検知部とを備えた構成とすることができる。
【0048】
無線によって、弾性表面波センサと外部装置との間で信号の送受信を行って、各素子の出力(例えば電圧)の関係を利用して圧力を検出する場合、即ち、無線を利用した電力検知方式で圧力を検出する場合には、無線伝送距離の変動に伴って信号強度(例えば出力電圧)が変化するので、精度良く圧力を検出することが難しい。この対策として、無線伝送距離が一定のタイミングを検知する場合には、そのタイミングでのセンシングが必要となり、システムが複雑化する。
【0049】
それに対して、本発明では、上述した様に、各素子間の出力電圧や電力の演算を行うので、無線伝送距離の影響を排除することができる。
つまり、各素子間の出力電圧の差や電力の比を演算することにより無線通信距離の変動に伴う信号強度の変化をキャンセルすることができる、すなわち、無線伝送距離による影響を排除することができる。
【0050】
(10)本発明では、第10態様として、第1弾性表面波素子と第2弾性表面波素子と第3弾性表面波素子との遅延時間が全て異なり、且つ、第1弾性表面波素子と第2弾性表面波素子と第3弾性表面波素子との遅延時間が、全て外部装置より出力される出力信号時間より長く、且つ、第1弾性表面波素子と第2弾性表面波素子と第3弾性表面波素子との最大遅延時間が、最小遅延時間の2倍より短いように設定することができる。
【0051】
つまり、各素子における入力信号に対する応答信号(反射波)には、図6に例示する様に、各素子における遅延時間によるずれが発生する。電極〜反射器間の複数回の反射を繰り返した応答信号(第1次反射波、第2次反射波・・)は、本発明のように各素子の条件を設定することにより、各素子における応答信号に、例えば外部装置側にて応答信号の時間分離が可能なような十分な時間的なずれを与えることができる。
【0052】
ここで、「(1)第1弾性表面波素子と第2弾性表面波素子と第3弾性表面波素子との遅延時間が全て異なること」は、3素子の信号分離のための必要条件であり、「(2)第1弾性表面波素子と第2弾性表面波素子と第3弾性表面波素子との遅延時間が、全て外部装置より出力される出力信号時間より長いこと」は、素子上での入力波と反射波を分離するための必要条件であり、「(3)第1弾性表面波素子と第2弾性表面波素子と第3弾性表面波
素子との最大遅延時間が、最小遅延時間の2倍より短いこと」は、2次反射波と1次反射波とを分離するための必要条件である。
【0053】
なお、同図において、τA、τB、τCは、それぞれ、第1、第2、第3弾性表面波素子において、電極から送信された信号が例えば反射器に反射して帰って来るまでの時間(電極から反射器までの伝搬路で規定される遅延時間の2倍)を示している。
【0054】
(11)本発明は、第11態様として、前記請求項1〜6のいずれか1項に記載の弾性表面波センサを用いて圧力を測定する圧力測定方法であって、前記第1弾性表面波素子に前記圧力に対応する押圧力が加わった場合に、前記第1弾性表面波素子の出力電圧と前記第2弾性表面波素子の出力電圧との電圧差を示す第1の演算値を求める第1演算工程と、前記第3弾性表面波素子の出力電圧と前記第2弾性表面波素子の出力電圧との電圧差を示す第2の演算値を求める第2演算工程と、前記第2の演算値に基づいて、温度による素子の基板変化量を求める第3演算工程と、前記第2の演算値に基づいて、前記第2弾性表面波素子の基準温度における出力電圧と基準温度からの温度変化に対応した出力電圧との電圧差である温度補正量を求める第4演算工程と、前記温度補正量に前記第1の演算値を加算して、加算値を求める第5演算工程と、前記加算値に基づいて、圧力及び温度による素子の基板変化量を求める第6演算工程と、前記圧力及び温度による素子の基板変化量と前記温度による素子の基板変化量との差から、圧力による素子の基板変化量を求める第7演算工程と、前記圧力による素子の基板変化量に基づいて、前記圧力を算出する第8演算工程と、を備えたことを特徴とする。
【0055】
本第11態様は、前記第7態様と同様な作用効果を奏する。
(12)本発明は、第12態様として、前記請求項1〜6のいずれか1項に記載の弾性表面波センサを用いて圧力を測定する圧力測定方法であって、前記第1弾性表面波素子に前記圧力に対応する押圧力が加わった場合に、前記第1弾性表面波素子の出力電力と前記第2弾性表面波素子の出力電力との電力比を示す第1の演算値を求める第1演算工程と、前記第3弾性表面波素子の出力電力と前記第2弾性表面波素子の出力電力との電力比を示す第2の演算値を求める第2演算工程と、前記第2の演算値に基づいて、温度による素子の基板変化量を求める第3演算工程と、前記第2の演算値に基づいて、前記第2弾性表面波素子の基準温度における出力電力と基準温度からの温度変化に対応した出力電力との電力比である温度補正量を求める第4演算工程と、前記温度補正量に前記第1の演算値を加算して、加算値を求める第5演算工程と、前記加算値に基づいて、圧力及び温度による素子の基板変化量を求める第6演算工程と、前記圧力及び温度による素子の基板変化量と前記温度による素子の基板変化量との差から、圧力による素子の基板変化量を求める第7演算工程と、前記圧力による素子の基板変化量に基づいて、前記圧力を算出する第8演算工程と、を備えたことを特徴とする。
【0056】
本第11態様は、前記第8態様と同様な作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明によって圧力を求めるための手順を示す説明図である。
【図2】(a)は櫛歯電極の反射係数と周波数との関係を示すグラフであり、(b)は反射器の反射係数と周波数との関係を示すグラフである。
【図3】弾性表面波センサの出力電圧値における温度や圧力による影響を示すグラフである。
【図4】弾性表面波センサの出力電圧値における温度による影響を示すグラフである。
【図5】(a)は第1SAW素子の入力波と反射波を示すグラフ、(b)は第2SAW素子の入力波と反射波を示すグラフ、(c)は第3SAW素子の入力波と反射波を示すグラフ、(d)は各素子の入力波と反射波を示すグラフである。
【図6】実施例1の圧力センサが用いられるセンシングシステムの概略構成を示す説明図である。
【図7】実施例1の圧力センサの概略構成を示す説明図である。
【図8】実施例1の圧力センサの構成を詳細に示す説明図である。
【図9】図7のZ−Z断面を示す説明図である。
【図10】実施例1のセンシングシステムの電気的構成を示す説明図である。
【図11】(a)は第1SAW素子の入力波と反射波を示すグラフ、(b)は第2SAW素子の入力波と反射波を示すグラフ、(c)は第3SAW素子の入力波と反射波を示すグラフ、(d)は各素子の入力波と反射波を示すグラフである。
【図12】実施例1のセンシングシステムにおける信号の処理の手順を示す説明図である。
【図13】実施例1の送受信側における処理のための構成を機能的に示す説明図である。
【図14】実施例1の送受信側における処理の手順を示す説明図である。
【図15】(a)は電圧差(VSAW3−VSAW2)と温度による基板変化量との関係(温度マップ)を示すグラフであり、(b)は電圧差(VSAW1−VSAW2)と圧力による基板変化量との関係(圧力マップ)を示すグラフであり、(c)は電圧差(VSAW3−VSAW2)と電圧差(VSAW2−VSAW2*)との関係(オフセットマップ)を示すグラフである。
【図16】実施例2の送受信側における処理のための構成を機能的に示す説明図である。
【図17】実施例2の送受信側における処理の手順を示す説明図である。
【図18】(a)は実施例3の圧力センサの構成を示す説明図、(b)は実施例4の圧力センサの構成を示す説明図、(c)は実施例5の圧力センサの構成を示す説明図である。
【図19】実施例6の送受信側における処理の手順を示す説明図である。
【図20】(a)は実施例6における電力比(PSAW3/PSAW2)と温度による基板変化量との関係(温度マップ)を示すグラフであり、(b)は電力比(PSAW1/PSAW2)と圧力による基板変化量との関係(圧力マップ)を示すグラフであり、(c)は電力比(PSAW3/PSAW2)と電力比(PSAW2/PSAW2*)との関係(オフセットマップ)を示すグラフである。
【図21】実施例7の送受信側における処理の手順を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下、本発明が適用される実施例について図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0059】
本実施例では、弾性表面波センサとして、例えば車両のタイヤ空気圧を検出するタイヤ空気圧センサである圧力センサを例に挙げて説明する。
図6にシステム全体を示す様に、圧力センサ1は、外部装置(計測装置:送受信機)3との間で、無線にて信号の送受信を行うセンシングシステムを構成するものであり、このセンシングシステムでは、圧力センサ1は、外部装置3からの信号(高周波信号)を受けて、その信号に対する応答を外部装置3に送信し、外部装置3は、受信した信号に基づいて演算を行うことにより、タイヤ空気圧を求める。
【0060】
なお、前記圧力センサ1は、例えばタイヤ5内部の内側表面などに取り付けられ、外部装置3は、例えば回転しない箇所(例えばリム7の近傍やタイヤハウジング9の周辺)に取り付けられるものである。以下、詳細に説明する。
【0061】
a)まず、弾性表面波センサである圧力センサ1の構成について説明する。
図7及び図8に示す様に、本実施例の圧力センサ1は、特徴の異なる3種の弾性表面波素子(第1〜第3弾性表面波素子)11、13、15が、例えばコバールからなる平板状の基板17上に並列に配置されて貼り付けられたものである。なお、ここでは、アンテナ及びアンテナに接続された回路は省略してある。
【0062】
以下、各弾性表面波素子11〜15について説明する。
・第1弾性表面波素子11は、圧電基板19の同一表面上に、同一方向(圧電基板19の長手方向)に沿って、弾性表面波(SAW)を励起させる一対の櫛歯電極(IDT)21、23(図7参照)と、櫛歯電極21、23によって励起された弾性表面波を櫛歯電極21、23側に反射させる反射器25と、余分な弾性表面波を吸収する左右一対の吸音材27、29とを備えている。なお、一対の櫛歯電極21、23を櫛歯電極部24と称する。
【0063】
この第1弾性表面波素子11は、433MHz近傍で動作する素子であり、櫛歯電極2
1、23に対して、信号源である外部装置3(図8、図10参照)から、後述するように無線(又は有線)にて、単位時間の一定強度の一周波数(433MHz)の高周波信号が印加されるように構成されている(他の素子13、15も同様である)。なお、ここでは、櫛歯電極21、23は、反射器25からの反射波を受信する電極としても用いられる。
【0064】
以下に、第1弾性表面波素子11の各構成について、更に詳細に説明する。
前記図8に示す様に、前記圧電基板19は、例えば縦2mm×横16mm×厚み0.5mmの例えばST−X水晶基板(単結晶)からなる。
【0065】
前記櫛歯電極21、23は、信号源から433MHzの高周波信号が印加される電極(即ち交互に正負の電圧が印加される電極)であり、それぞれ複数の櫛歯(電極指)31が、前記長手方向と垂直方向に平行に形成されるとともに、対向する櫛歯電極21、23の電極指31が互いに入り込む様に設定されている。
【0066】
ここでは、櫛歯電極21、23は、厚さ0.1μmのアルミニウムからなり、電極幅:1/4λ(1.181μm)、電極間隔:1/4λ(1.81μm)、対数:100.5対に設定されている。なお、λは励起する弾性表面波の波長である。
【0067】
前記反射器(リフレクタ:SMSA)25は、厚さ0.1μmのアルミニウムからなり、電極幅:1/4λ(1.181μm)、電極間隔:1/4λ(1.81μm)、本数:200本に設定されている。なお、反射器25は、自身に印加される応力や周囲の温度に応じて反射係数が変化する特性を有している。
【0068】
前記吸音材27、29は、例えばシリコンからなり、それぞれ、櫛歯電極21、23の外側と反射器25の外側に配置されている。
なお、櫛歯電極21、23と反射器25との間の(弾性表面波の)伝搬路33の伝搬距離dR1は、1500λ(4.735mm)に設定されており、その伝搬時間(従って遅延時間)τ1は、1.5μs相当である。
【0069】
特に、第1弾性表面波素子11については、図9に図7のZ−Z断面を示す様に、第1弾性表面波素子11の先端側(同図右側)に対応して、基板17の先端側(同図右側)の表面に、直方体形状の凹部35が形成されている。
【0070】
つまり、第1弾性表面波素子11は、その櫛歯電極21、23が設けられている側(同図左側)が、基板17の表面に固定され、反射器25が設けられている側(同図右側)が、凹部35の上方に張り出すように配置され、これにより、第1弾性表面波素子11の先端側が同図上下方向に湾曲可能に構成されている。
【0071】
また、同図に示す様に、基板17表面には、各素子11〜13を覆うようなカバー37が配置されている。そして、カバー37の先端側(同図右側)には、開口部39が形成されており、この開口部39を覆うように、例えばゴムからなる弾性部材41が貼り付けられている。この弾性部材41の中心の基板17側には、第1弾性表面波素子11の先端側に当接するように、棒状の押圧部材43が突出して形成されている。なお、弾性部材41と押圧部材43により押圧力印加部が構成されている。
【0072】
これにより、弾性部材41が外部より押圧されると、押圧部材43が第1弾性表面波素子11の先端を押圧して(凹部35の左側端部を支点として)第1弾性表面波素子11の先端部分が湾曲するので、同時に反射器25も湾曲して、その反射係数が変化する。
【0073】
なお、上述した第1弾性表面波素子11を製造する場合には、例えば圧電基板19上に、スパッタリング法にて金属(アルミニウム)膜を成膜し、フォトリソグラフィーにて櫛歯電極21、23や反射器25に対応する形状にマスキングし、エッチングにより櫛歯電極21、23や反射器25をパターンニングする方法を採用できる。
【0074】
・前記図8に示す様に、第2弾性表面波素子13は、前記第1弾性表面波素子11と同様に、圧電基板51の表面に、一対の櫛歯電極53、55と反射器57とが、所定の伝搬距離dR2(>dR1)だけ離れて形成されたものであり、その外側には、同様に吸音材59、61が配置されている。なお、一対の櫛歯電極53、55により櫛歯電極部56が構成されている。
【0075】
この第2弾性表面波素子13は、前記第1弾性表面波素子11と、櫛歯電極53、55及び反射器57の材料が同じであり、圧電基板の材料も同じであるが、反射器57の寸法或いは形状及び圧電基板71の寸法が異なる。具体的には、圧電基板71は、例えば縦2mm×横20mm×厚み0.5mmの例えばST−X水晶基板(単結晶)からなる。
【0076】
従って、第2弾性表面波素子13の温度に対する反射係数−周波数の特性は、反射器57の寸法によって第1弾性表面波素子11と異なっている。但し、この第2弾性表面波素子13は、その裏面全体が基板17上に接合されており、(第1弾性表面波素子11とは異なり)圧力を加えられないように構成されている。
【0077】
なお、上記以外の構成は、基本的に第1弾性表面波素子11と同様であるので、その説明は省略する。
・前記図8に示す様に、第3弾性表面波素子15は、前記第1弾性表面波素子11と同様に、(第1、第2弾性表面波素子11、13より長尺の)圧電基板71の表面に、一対の櫛歯電極73、75と反射器77とが、所定の伝搬距離dR3(>dR2>dR1)だけ離れて形成されたものであり、その外側には、同様に吸音材79、81が配置されている。なお、一対の櫛歯電極73、75により櫛歯電極部76が構成されている。
【0078】
この第3弾性表面波素子15は、前記第1、第2弾性表面波素子11、13と、櫛歯電極73、75及び反射器77の材料が同じであり、圧電基板の材料も同じであるが、反射器77の寸法或いは形状及び圧電基板71の寸法が異なる。具体的には、圧電基板71は、例えば縦2mm×横23mm×厚み0.5mmの例えばST−X水晶基板(単結晶)からなる。また、この第3弾性表面波素子15は、その裏面全体が基板17上に接合されており、(第2弾性表面波素子13と同様に)圧力を加えられないように構成されている。
【0079】
なお、上記以外の構成は、基本的に第1弾性表面波素子11と同様であるので、その説明は省略する。
なお、前記第1〜第3弾性表面波素子11〜15は、同種の圧電基板から構成されているので、仮にこの圧電基板のみを取り出した場合には、例えば同じ条件(圧力や温度)の場合には、同じ基板変化量だけ変化するものである。
【0080】
b)ここで、本実施例の要部である各弾性表面波素子11〜15間の関係について、まとめて説明する。
本実施例では、下記表1に示す様に、第1〜第3弾性表面波素子11〜15は、それぞれ温度変化に対し素子の出力電圧が異なるように設定されている。即ち、温度変化に対する温度特性が異なるように設定されている。
【0081】
具体的には、第1〜第3弾性表面波素子11〜15においては、例えば反射器反射係数の周波数特性が異なるので、温度変化に対し素子の出力電圧が異なる。
更に、第1弾性表面波素子11は、圧力の変化によって素子の出力電圧が変化するように設定されている。即ち、第1弾性表面波素子11のみ、圧力の変化によって素子の出力電圧が変化するように、反射器25側が圧力を受けて撓んで、その反射係数が変化するように構成されている。
【0082】
【表1】
【0083】
しかも、本実施例では、第1弾性表面波素子11と第2弾性表面波素子13と第3弾性表面波素子15との遅延時間τ1、τ2、τ3が全て異なるように、各伝搬路33の長さ、従って各伝搬距離dR1、dR2、dR3(dR1<dR2<dR3)が設定されている。
【0084】
つまり、外部装置3側(送受信機側)にて、第1〜第3弾性表面波素子11〜15おける各応答信号を分離できるように、第1〜第3弾性表面波素子11〜15における伝搬距離dR1〜dR3が十分に異なるように設定されている。
【0085】
また、第1弾性表面波素子11と第2弾性表面波素子13と第3弾性表面波素子15との遅延時間τ1〜τ3は、全て外部装置3より出力される出力信号時間より長く設定されている。
【0086】
更に、第1弾性表面波素子11と第2弾性表面波素子13と第3弾性表面波素子15との最大遅延時間が、最小遅延時間の2倍より短く設定されている。
c)次に、前記圧力センサ1及び外部装置3を用いたセンシングシステムについて、図10に基づいて説明する。
【0087】
ここでは、無線による送受信システムを例に挙げて説明するが、有線にて応力を検出するようにしてもよい。なお、ここでは、同一の信号源(即ち外部装置である送受信機)3からの信号が、第1〜第3弾性表面波素子11〜15の各櫛歯電極21、23、53、55、73、75に入力するように構成されている。同様に、第1〜第3弾性表面波素子11〜15から得られる各反射信号(応答信号)が、1つのアンテナを介して外部装置3側に送信されるように構成されている。
【0088】
図10に示す様に、第1〜第3弾性表面波素子11〜15及びアンテナ91を備えた圧力センサ1は、無線を利用した周知の外部装置3によって駆動される。従って、ここでは、この外部装置3が前記信号源に相当するものである。
【0089】
前記外部装置3は、その主要部として制御回路(コントローラ)93を備えている。
また、外部装置3は、圧力センサ1を駆動させる信号(高周波信号)の送信のための回路として、高周波の発振回路(Osc)95、発信のオン・オフを切り換えるスイッチ(SW)96、バンドパスフィルタ(BPF)97、パワーアンプ(PA)99、送受信を切り換えるスイッチ(SPDT)101、アンテナ103を備えている。よって、スイッチ(SPDT)101が信号の送信が可能に設定されている場合には、制御回路93からの制御信号により、アンテナ103を介して、圧力センサ1に信号を送信する。この送信される信号は、例えば10mWの433MHzの単パルスの高周波信号である。
【0090】
更に、外部装置3は、圧力センサ1からの信号を受信するための回路として、前記アンテナ103、前記スイッチ(SPDT)101に加え、ローノイズアンプ(LNA)105、バンドパスフィルタ(BPF)107、ログアンプあるいはダイオードからなる検波器(DET)109、A/D変換器111等を備えている。よって、スイッチ(SPDT)101が信号の受信が可能に設定されている場合には、アンテナ103を介して、圧力センサ1からの信号を送信して、制御回路93に入力する。
【0091】
d)次に、前記センシングシステムを用いた圧力測定方法について説明する。
(1)最初に、このセンシングシステムにおける基本的な送受信の動作について説明する。
【0092】
まず、圧力センサ1を駆動する場合には、上述した様に、外部装置3からアンテナ103を介して圧力センサ1に対して高周波信号を送信する。この高周波信号を受信した圧力センサ1では、受信した高周波信号を第1〜第3弾性表面波素子11〜15の各櫛歯電極21、23、53、55、73、75に印加することにより、弾性表面波を発生させる。
【0093】
ここでは、例えば図11に示す様な(tINの幅を有する)入力信号が、各第1〜第3弾性表面波素子11〜15の各櫛歯電極21、23、53、55、73、75に印加された場合を考える。
【0094】
この入力信号は、各櫛歯電極21、23、53、55、73、75によって弾性表面波に変換され、弾性表面波は、各櫛歯電極21、23、53、55、73、75と各反射器25、57、77との間の伝搬距離dR1〜dR3によって定まる伝搬時間(即ち遅延時間τ1〜τ3)に各反射器25、57、77に到達する。
【0095】
各反射器25、57、77では、この弾性表面波を反射し、この弾性表面波は、同様に前記伝搬距離dR1〜dR3によって定まる遅延時間τ1〜τ3後に各櫛歯電極21、23、53、55、73、75に到達する。
【0096】
この反射した弾性表面波(反射波)によって、各櫛歯電極21、23、53、55、73、75に生ずる信号が応答信号(反射信号)であり、この応答信号は、前記送信された信号(送信信号)とは逆に、アンテナ91を介して、外部装置3に送信される。
【0097】
従って、外部装置3では、この応答信号の電圧(信号レベル)から、以下に述べる様に、弾性表面波素子1に加わる圧力を検出することができる。
(2)次に、前記圧力測定方法による処理手順ついて、より具体的に説明する。
【0098】
・まず、センシングシステム全体における処理の流れについて、図12等に基づいて、時系列に沿って説明する。
図12に示す様に、外部装置3側において、圧力センサ1側に問い合わせ信号を発生し、その後、送受信回路を受信に切り換える。
【0099】
一方、圧力センサ1側では、外部装置3側から送信された問い合わせ信号を受信する。
次に、圧力センサ1において、問い合わせ信号を第1〜第3弾性表面素子11〜15の各櫛歯電極21、23、53、55、73、75に分配し、櫛歯電極21、23、53、55、73、75から弾性表面波(入力波)を発生させる。そして、各反射器25、57、77にて反射した(遅延時間の2倍分遅延した)反射波を、各櫛歯電極21、23、53、55、73、75にて受信し、その応答信号を、外部装置3側に送信する。
【0100】
外部装置3側では、圧力センサ1から送信された応答信号を受信し、増幅、ノイズ除去等を行った後に、検波を行い、その信号から、後述するように圧力や温度の算出を行って、空気圧や温度の表示を行う。
【0101】
・次に、外部装置3側における処理手順について、図13及び図14に基づいて説明する。
なお、両図に機能的に示すように、ハードによる処理が検知部121にて行われ、ソフトによる処理が(マイコン等による演算処理を行う)演算部123にて行われる。
【0102】
まず、両図に示すように、圧力センサ1の応答信号の検波電圧は、A/D変換器111にてデジタル信号に変換される。
具体的には、第1、第2、第3弾性表面波素子11、13、15からのそれぞれ信号(電圧信号VSAW1、VSAW2、VSAW3)は、それぞれA/D変換器111(図13では便宜的に各信号のA/D変換器を区分して示している)を介して演算部123に入力される。
【0103】
・次に、演算部123における処理について、図14及び図15に基づいて詳細に説明する。
具体的には、例えば図15(a)に示す温度マップと図15(b)に示す圧力マップと図15(c)に示すオフセットマップとを用いる。
【0104】
この温度マップとは、温度による基板変化量と、第3弾性表面波素子15の出力電圧VSAW3と第2弾性表面波素子13の出力電圧VSAW2との差(VSAW3−VSAW2)との関係を示すマップである。
【0105】
また、圧力マップとは、圧力による基板変化量と、第1弾性表面波素子11の出力電圧VSAW1と第2弾性表面波素子13の出力電圧VSAW2との差(VSAW1−VSAW2)との関係を示すマップである。
【0106】
更に、オフセットマップとは、第3弾性表面波素子15の出力電圧VSAW3と第2弾性表面波素子13の出力電圧VSAW2との差(VSAW3−VSAW2)と、第2弾性表面波素子13の出力電圧VSAW2と基準温度における第2弾性表面波素子13の出力電圧VSAW2*との差(VSAW3−VSAW2*)の関係を示すマップである。即ち、このオフセットマップは、前記電圧差(VSAW3−VSAW2)から、圧力基準値を示す温度補正量を求めるための基準極温度マップである。
【0107】
まず、ステップ1では、第1弾性表面波素子11の出力電圧VSAW1と第2弾性表面波素子13の出力電圧VSAW2との電圧差(VSAW1−VSAW2)を求める。この電圧差(VSAW1−VSAW2)には、圧力及び温度の影響が含まれている。
【0108】
また、ステップ2では、第3弾性表面波素子15の出力電圧VSAW3と第2弾性表面波素子13の出力電圧VSAW2との電圧差(VSAW3−VSAW2)を求める。この電圧差(VSAW3−VSAW2)には、(圧力の影響が含まれておらず)温度のみの影響が含まれている。
【0109】
そして、ステップ3では、図15(a)の温度マップから、この電圧差(VSAW3−VSAW2)に対応する温度による基板変化量を求める。例えば前記電圧差が2Vである場合には、前記温度マップから、温度による基板変化量は190ppmとなる。
【0110】
従って、予め温度と温度による基板変化量との関係を調べてマップ等を作製しておき、このマップ等を参照して、温度による基板変化量から温度を求めることができる。
次に、ステップ4では、図15(c)のオフセットマップを用いて、第3弾性表面波素子15の出力電圧VSAW3と第2弾性表面波素子13の出力電圧VSAW2との電圧差(VSAW3−VSAW2)から、前記温度補正量に対応するオフセット電圧を求める。例えば前記電圧差が2Vの場合には、前記オフセットマップから、オフセット電圧は1.7Vとなる。
【0111】
次に、ステップ5では、前記ステップ1で求めた電圧差(VSAW1−VSAW2)に前記温度補正量を加えた値(加算値)を求める。例えば電圧差が0.8Vである場合には、温度補正量の1.7Vを加えた2.5Vが加算値となる。
【0112】
次に、ステップ6では、図15(b)の圧力マップを用い、この加算値に対応した圧力による基板変化量を求める。なお、この加算値には温度補正量が含まれているので、圧力による基板変化量には、圧力だけでなく温度による影響も含まれている。例えば、前記圧力マップから、加算値2.5Vに対応した圧力による基板変化量は500ppmとなる。
【0113】
次に、ステップ7では、前記加算値から求めた(温度の影響も含む)圧力による基板変化量から(温度のみに起因する)温度による基板変化量を引いて、圧力のみによる基板変化量を求める。例えば前記(温度の影響を含む)圧力による基板変化量が500ppmで、温度による基板変化量が190ppmである場合には、その差の310ppmが圧力のみによる基板変化量となる。
【0114】
従って、予め圧力と圧力による基板変化量との関係を調べてマップ等を作製しておき、このマップ等を参照して、圧力のみによる基板変化量から圧力を求めることができる。
e)この様に、本実施例では、3種の弾性表面波素子11〜15を設けた圧力センサ1を用い、これらの素子出力を利用することにより、圧力と温度が共に変化する状況であっても、温度の影響を好適に排除して、目的とする測定対象の状態(圧力)を精度良く検出することができる。
【0115】
つまり、まず、第1弾性表面波素子11と第2弾性表面波素子13との出力電圧の差をとって、(圧力及び温度の影響を含む)第1の演算値を求め、第3弾性表面波素子15と第2弾性表面波素子13との出力電圧の差をとって、(温度のみの影響を含む)第2の演算値を求める。そして、前記オフセットマップを用いて、第2の演算値から(圧力基準値である)温度補正量を示すオフセット電圧を求め、このオフセット電圧に第1の演算値を加算した加算値から、(圧力及び温度の影響を含む)基板変化量を求める。次に、圧力及び温度による基板変化量から温度のみによる基板変化量を引くことにより、圧力のみによる基板変化量を求めることができるので、この圧力のみによる基板変化量から、精度良く圧力を求めることができる。
【0116】
また、本実施例では、無線を利用した電力検知方式で圧力を検出する場合に、上述した圧力測定方法を行うことにより、無線伝送距離の変動に伴って信号強度(出力電圧)が変化しても、簡易な構成で、無線伝送距離の影響を排除することができる。
【実施例2】
【0117】
次に、実施例2について説明するが、前記実施例1と同様な内容の説明は簡略化する。
ここでは、外部装置における圧力等を算出する手法が第1実施例と異なるので、異なる内容について説明する。
【0118】
図16及び図17に示す様に、本実施例では、ハードによる処理が検知部201にて行われ、ソフトによる処理が演算部203にて行われる。
両図に示す様に、圧力センサ1の応答信号の検波電圧は、各ホールド回路205〜209で保持される。具体的には、第1、第2、第3弾性表面波素子からのそれぞれ信号(電圧信号VSAW1、VSAW2、VSAW3)は、それぞれ各ホールド回路205〜209で保持される。
【0119】
そして、例えば図示しない差動演算回路によって、保持された第1、第2弾性表面波素子からの電圧信号VSAW1、VSAW2の差分(VSAW1−VSAW2)を演算する。また、同様に、保持された第3、第2弾性表面波素子からの電圧信号VSAW3、VSAW2の差分(VSAW3−VSAW2)を演算する。
【0120】
これらの差分の演算値は、それぞれA/D変換器211、213を介して、演算部203に入力される。
その後の演算部203における処理は、図17の「ソフトウェアによる処理」に示す様に、前記実施例1と同様である。
【0121】
具体的には、前記図15(c)を用いて、第3弾性表面波素子15の出力電圧VSAW3と第2弾性表面波素子13の出力電圧VSAW2との電圧差(VSAW3−VSAW2)から、前記温度補正量に対応するオフセット電圧を求める。
【0122】
次に、前記電圧差(VSAW1−VSAW2)に前記温度補正量を加えた加算値を求める。
次に、この加算値に対応した圧力及び温度による基板変化量を求める。
次に、前記圧力及び温度による基板変化量から(温度のみに起因する)温度による基板変化量を引いて、圧力のみによる基板変化量を求める。
【0123】
従って、この圧力のみによる基板変化量から圧力を求めることができる。
本実施例によっても、前記実施例1と同様な効果を奏する。
【実施例3】
【0124】
次に、実施例3について説明するが、前記実施例1と同様な内容の説明は簡略化する。
ここでは、弾性表面波素子の構成が第1実施例と異なるので、異なる内容を説明する。
図18(a)に示す様に、本実施例の弾性表面波センサである圧力センサ301では、第1〜第3弾性表面波素子303、305、307の長手方向における長さが異なるように設定されている。
【0125】
なお、各素子303〜307は、前記実施例1と同様に、それぞれ圧電基板309、311、313上に、(一対の櫛歯電極からなる)櫛歯電極部315、317、319と反射器321、323、325が形成されたものである。
【0126】
本実施例においても、第1〜第3弾性表面波素子303〜307は、例えば反射器反射係数の周波数特性が異なることにより、温度変化に対し素子の出力電圧が異なる様に設定されている。
【0127】
また、第1弾性表面波素子303のみは、圧力の変化によって素子の出力電圧が変化するように設定されている。
本実施例においても、前記実施例1と同様な効果を奏する。
【実施例4】
【0128】
次に、実施例4について説明するが、前記実施例1と同様な内容の説明は簡略化する。
ここでは、弾性表面波素子の構成が第1実施例と異なるので、異なる内容を説明する。
図18(b)に示す様に、本実施例の弾性表面波センサである圧力センサ401では、第1、第2弾性表面波素子403、405は、同一の圧電基板407において、長手方向に一列に形成されている。
【0129】
なお、第1、第2弾性表面波素子403、405は、同一の圧電基板407上の中央に(両素子403、405の共有の)櫛歯電極部409が形成されるとともに、圧電基板407の両側に反射器411、413が形成されたものである。
【0130】
また、第3弾性表面波素子414は、他の圧電基板415の上に、櫛歯電極部417と反射器419が形成されたものである。
本実施例においても、第1〜第3弾性表面波素子403、405、414は、例えば反射器反射係数の周波数特性が異なることにより、温度変化に対し素子の出力電圧が異なるように設定されている。
【0131】
更に、第1弾性表面波素子403のみは、圧力の変化によって素子の出力電圧が変化するように設定されている。
本実施例においても、前記実施例1と同様な効果を奏する。
【実施例5】
【0132】
次に、実施例5について説明するが、前記実施例1と同様な内容の説明は簡略化する。
ここでは、弾性表面波素子の構成が第1実施例と異なるので、異なる内容を説明する。
図18(c)に示す様に、本実施例の弾性表面波センサである圧力センサ501では、第1〜第3弾性表面波素子503、505、507の長手方向における長さが異なるように設定されている。
【0133】
なお、各素子503〜507は、前記実施例1と同様に、それぞれ圧電基板509、511、513上に、各素子共有の(一対の櫛歯電極からなる)櫛歯電極部515と各反射器517、519、521が形成されたものである。
【0134】
本実施例においても、第1〜第3弾性表面波素子503〜507は、例えば反射器反射係数の周波数特性が異なることにより、温度変化に対し素子の出力電圧が異なるように設定されている。
【0135】
また、第1弾性表面波素子503のみは、圧力の変化によって素子の出力電圧が変化するように設定されている。
本実施例においても、前記実施例1と同様な効果を奏する。
【実施例6】
【0136】
次に、実施例6について説明するが、前記実施例1と同様な内容の説明は簡略化する。 なお、素子等の各部材は実施例1と同じであるので、実施例1と同じ番号を使用する。
本実施例は、各素子の出力の電力比を用いて、前記実施例1とほぼ同様な手順で圧力を検出するので、図19及び図20に基づいて簡単に説明する。
【0137】
なお、図20(a)は温度マップであり、その縦軸は、前記実施例1と同様な温度による基板変化量を示すが、横軸は、第3、第2弾性表面波素子15、13間の電力比を示している。
【0138】
また、図20(b)は圧力マップであり、その縦軸は、前記実施例1と同様な圧力による基板変化量を示すが、横軸は、第1、第2弾性表面波素子11、13間の電力比を示している。
【0139】
更に、図20(c)はオフセットマップ(基準極温度マップ)であり、その縦軸は、第2弾性表面波素子13の出力電力とその基準温度における出力電力との電力比(温度補正量)を示し、横軸は、第3、第2弾性表面波素子15、13間の電力比を示している。
【0140】
図19及び図20に示す様に、まず、第1〜第3弾性表面波素子11〜15の出力電圧を、図10のログアンプあるいはダイオードからなる検波器(DET)109の検波特性に従い、その入力電力に換算することによって、それぞれ電力PSAW1、PSAW2、PSAW3に換算する。
【0141】
そして、第1弾性表面波素子11の電力PSAW1と第2弾性表面波素子13の電力PSAW2との電力比(PSAW1/PSAW2)を演算する。また、同様に、第3弾性表面波素子15の電力PSAW3と第2弾性表面波素子13の電力PSAW2との電力比(PSAW3/PSAW2)を演算する。
【0142】
なお、後述する様に、電力比と電力差とは等価であり、ここでは、電力をdBmでとっているため、電力比の計算は差動演算となる。
次に、前記図20(a)の様な温度マップを用いて、前記第3、第2弾性表面波素子15、13間の電力比(PSAW3/PSAW2)の値に対応する基板変位量(温度による基板変化量)を算出する。
【0143】
次に、前記図20(c)の様なオフセットマップを用いて、第3、第2弾性表面波素子15、13間の電力比(PSAW3/PSAW2)から、(圧力基準値に対応する)温度補正量(オフセット電圧)を算出する。
【0144】
次に、前記第1、第2弾性表面波素子15、13間の電力比(PSAW1/PSAW2)に前記温度補正量を加算し、前記図20(b)の様な圧力マップを用いて、その加算値から、温度及び圧力による基板変位量を算出する。
【0145】
次に、温度及び圧力による基板変位量から温度による基板変位量を引いて、圧力のみによる基板変位量を算出する。
従って、この圧力のみによる基板変位量から、予め求めておいた圧力と圧力のみによる基板変位量との関係を示すマップ等を用いて、圧力を求めることができる。
【0146】
また、前記温度による基板変化量から、予め求めておいた温度と温度のみによる基板変位量との関係を示すマップ等を用いて、温度を算出することができる。
本実施例においても、前記実施例1と同様な効果を奏する。
【0147】
なお、下記数1に示す様に、式(1)の様に定義される場合、式(2)又は式(3)から明かな様に、dBm単位の電力で差分を計算することは、その真数(電力W)の比を取ることと等価であるので、各マップでは、電力の差で表現してある。
【0148】
【数1】
【実施例7】
【0149】
次に、実施例7について説明するが、前記実施例2と同様な内容の説明は簡略化する。
ここでは、外部装置における圧力等を算出する手法が第1実施例と異なるので、異なる内容について説明する。なお、前記実施例2と同じ部材には同じ番号を付す。
【0150】
図21に示す様に、本実施例では、圧力センサの応答信号の検波電圧は、各ホールド回路205〜209で保持される。具体的には、第1、第2、第3弾性表面波素子からのそれぞれ信号(電圧信号VSAW1、VSAW2、VSAW3)は、それぞれ各ホールド回路205〜209で保持される。
【0151】
そして、例えば図示しない差動演算回路によって、保持された第1、第2弾性表面波素子からの電圧信号VSAW1、VSAW2の差分(VSAW1−VSAW2)を演算する。また、同様に、保持された第3、第2弾性表面波素子からの電圧信号VSAW3、VSAW2の差分(VSAW3−VSAW2)を演算する。
【0152】
これらの差分の演算値は、それぞれA/D変換器211、213を介して、演算部に入力される。
その後の演算部における処理は、図21の「ソフトウェアによる処理」に示す様に、前記実施例2と同様である。
【0153】
具体的には、まず、第1、第2弾性表面波素子11、13間の出力電圧の差(VSAW1−VSAW2)を電力比(VSAW1/VSAW2)に換算するとともに、第3、第2弾性表面波素子115、13間の出力電圧の差(VSAW3−VSAW2)を電力比(VSAW3/VSAW2)に換算する。
【0154】
そして、前記図20(a)の様な温度マップを用いて、前記第3、第2弾性表面波素子15、13間の電力比(PSAW3/PSAW2)の値に対応する基板変位量(温度による基板変化量)を算出する。
【0155】
次に、前記図20(c)の様なオフセットマップ(基準極温度マップ)を用いて、第3、第2弾性表面波素子15、13間の電力比(PSAW3/PSAW2)から、(圧力基準点に対応する)温度補正量(オフセット電圧)を算出する。
【0156】
次に、前記第1、第2弾性表面波素子15、13間の電力比(PSAW1/PSAW2)に前記温度補正量を加算し、前記図20(b)の様な圧力マップを用いて、その加算値から、温度及び圧力による基板変位量を算出する。
【0157】
次に、温度及び圧力による基板変位量から温度による基板変位量を引いて、圧力のみによる基板変位量を算出する。
従って、この圧力のみによる基板変位量から、予め求めておいた圧力と圧力のみによる基板変位量との関係を示すマップ等を用いて、圧力を求めることができる。
【0158】
また、前記温度による基板変化量から、予め求めておいた温度と温度のみによる基板変位量との関係を示すマップ等を用いて、温度を算出することができる。
本実施例においても、前記実施例2と同様な効果を奏する。
【0159】
本発明は、上述した各実施例に限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲内において、各種の態様で実施できることは勿論である。
(1)本発明は、例えばタイヤ空気圧センサのような圧力センサに限らず、応力センサ、変位センサなど、各種の用途に適用できる。
【0160】
(2)本発明では、出力電圧値を用いて圧力等を求めたが、それ以外に、出力電圧値から求めた出力電流値を用いて圧力等を求めてもよい。
【符号の説明】
【0161】
1、301、401、501…圧力センサ(弾性表面波センサ)
3…外部装置(信号源)
11、303、403、503…第1弾性表面波素子
13、305、405、505…第2弾性表面波素子
15、307、414、507…第3弾性表面波素子
19、51、71、309、311、313、407、415、509、511、513…圧電基板
21、23、53、55、73、75…櫛歯電極
24、56、76、315、317、319、409、417、515…櫛歯電極部
33…伝送路
25、57、77、321、323、325、411、413、419、517、519、521…反射器
43…押圧部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からの影響によって素子を伝わる弾性表面波の特性が変化して素子の出力が変化する第1弾性表面波素子及び第2弾性表面波素子及び第3弾性表面波素子を備えた弾性表面波センサであって、
前記第1弾性表面波素子と前記第2弾性表面波素子と前記第3弾性表面波素子とは、温度変化に対し素子の出力が異なり、
且つ、前記第1弾性表面波素子は、前記温度以外の測定対象の状態の変化によって素子の出力が変化するように構成された素子であることを特徴とする弾性表面波センサ。
【請求項2】
無線によって外部装置との信号の送受信が可能な構成を備えたことを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波センサ。
【請求項3】
前記測定対象の状態は、圧力であることを特徴とする請求項1又は2に記載の弾性表面波センサ。
【請求項4】
前記第1弾性表面波素子に対して、前記圧力に対応する押圧力を印加する押圧力印加部を備えたことを特徴とする請求項3に記載の弾性表面波センサ。
【請求項5】
前記第1弾性表面波素子と前記第2弾性表面波素子と前記第3弾性表面波素子とは、それぞれ各素子における信号の遅延時間が全て異なるように設定されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の弾性表面波センサ。
【請求項6】
前記第1弾性表面波素子は、弾性表面波を発生させる電極と、前記電極にて発生した弾性表面波を反射させる反射器とを備え、
前記第1弾性表面波素子の反射器は、外部からの押圧力が印加された場合に弾性変形する構成を有するとともに、前記反射器に対して押圧力を印加する押圧力印加部を備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の弾性表面波センサ。
【請求項7】
前記請求項1〜6のいずれか1項に記載の弾性表面波センサを備えた圧力のセンシングシステムであって、
前記第1弾性表面波素子に前記圧力に対応する押圧力が加わった場合に、前記第1弾性表面波素子の出力電圧と前記第2弾性表面波素子の出力電圧との電圧差を示す第1の演算値を求める第1演算手段と、
前記第3弾性表面波素子の出力電圧と前記第2弾性表面波素子の出力電圧との電圧差を示す第2の演算値を求める第2演算手段と、
前記第2の演算値に基づいて、温度による素子の基板変化量を求める第3演算手段と、
前記第2の演算値に基づいて、前記第2弾性表面波素子の基準温度における出力電圧と基準温度からの温度変化に対応した出力電圧との電圧差である温度補正量を求める第4演算手段と、
前記温度補正量に前記第1の演算値を加算して、加算値を求める第5演算手段と、
前記加算値に基づいて、圧力及び温度による素子の基板変化量を求める第6演算手段と、
前記圧力及び温度による素子の基板変化量と前記温度による素子の基板変化量との差から、圧力による素子の基板変化量を求める第7演算手段と、
前記圧力による素子の基板変化量に基づいて、前記圧力を算出する第8演算出段と、
を備えたことを特徴とするセンシングシステム。
【請求項8】
前記請求項1〜6のいずれか1項に記載の弾性表面波センサを備えた圧力のセンシングシステムであって、
前記第1弾性表面波素子に前記圧力に対応する押圧力が加わった場合に、前記第1弾性表面波素子の出力電力と前記第2弾性表面波素子の出力電力との電力比を示す第1の演算値を求める第1演算手段と、
前記第3弾性表面波素子の出力電力と前記第2弾性表面波素子の出力電力との電力比を示す第2の演算値を求める第2演算手段と、
前記第2の演算値に基づいて、温度による素子の基板変化量を求める第3演算手段と、
前記第2の演算値に基づいて、前記第2弾性表面波素子の基準温度における出力電力と基準温度からの温度変化に対応した出力電力との電力比である温度補正量を求める第4演算手段と、
前記温度補正量に前記第1の演算値を加算して、加算値を求める第5演算手段と、
前記加算値に基づいて、圧力及び温度による素子の基板変化量を求める第6演算手段と、
前記圧力及び温度による素子の基板変化量と前記温度による素子の基板変化量との差から、圧力による素子の基板変化量を求める第7演算手段と、
前記圧力による素子の基板変化量に基づいて、前記圧力を算出する第8演算出段と、
を備えたことを特徴とするセンシングシステム。
【請求項9】
前記外部装置は、無線により前記弾性表面波センサに対して高周波信号を印加する高周波印加部と、無線により前記弾性表面波センサからの信号を受信する信号受信部と、該信号受信部にて受信した信号を検知する信号検知部とを備えたことを特徴とする請求項7又は8に記載のセンシングシステム。
【請求項10】
前記第1弾性表面波素子と前記第2弾性表面波素子と前記第3弾性表面波素子との遅延時間が全て異なり、
且つ、前記第1弾性表面波素子と前記第2弾性表面波素子と前記第3弾性表面波素子との遅延時間が、全て前記外部装置より出力される出力信号時間より長く、
且つ、前記第1弾性表面波素子と前記第2弾性表面波素子と前記第3弾性表面波素子との最大遅延時間が、最小遅延時間の2倍より短いことを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載のセンシングシステム。
【請求項11】
前記請求項1〜6のいずれか1項に記載の弾性表面波センサを用いて圧力を測定する圧力測定方法であって、
前記第1弾性表面波素子に前記圧力に対応する押圧力が加わった場合に、前記第1弾性表面波素子の出力電圧と前記第2弾性表面波素子の出力電圧との電圧差を示す第1の演算値を求める第1演算工程と、
前記第3弾性表面波素子の出力電圧と前記第2弾性表面波素子の出力電圧との電圧差を示す第2の演算値を求める第2演算工程と、
前記第2の演算値に基づいて、温度による素子の基板変化量を求める第3演算工程と、
前記第2の演算値に基づいて、前記第2弾性表面波素子の基準温度における出力電圧と基準温度からの温度変化に対応した出力電圧との電圧差である温度補正量を求める第4演算工程と、
前記温度補正量に前記第1の演算値を加算して、加算値を求める第5演算工程と、
前記加算値に基づいて、圧力及び温度による素子の基板変化量を求める第6演算工程と、
前記圧力及び温度による素子の基板変化量と前記温度による素子の基板変化量との差から、圧力による素子の基板変化量を求める第7演算工程と、
前記圧力による素子の基板変化量に基づいて、前記圧力を算出する第8演算工程と、
を備えたことを特徴とする圧力測定方法。
【請求項12】
前記請求項1〜6のいずれか1項に記載の弾性表面波センサを用いて圧力を測定する圧力測定方法であって、
前記第1弾性表面波素子に前記圧力に対応する押圧力が加わった場合に、前記第1弾性表面波素子の出力電力と前記第2弾性表面波素子の出力電力との電力比を示す第1の演算値を求める第1演算工程と、
前記第3弾性表面波素子の出力電力と前記第2弾性表面波素子の出力電力との電力比を示す第2の演算値を求める第2演算工程と、
前記第2の演算値に基づいて、温度による素子の基板変化量を求める第3演算工程と、
前記第2の演算値に基づいて、前記第2弾性表面波素子の基準温度における出力電力と基準温度からの温度変化に対応した出力電力との電力比である温度補正量を求める第4演算工程と、
前記温度補正量に前記第1の演算値を加算して、加算値を求める第5演算工程と、
前記加算値に基づいて、圧力及び温度による素子の基板変化量を求める第6演算工程と、
前記圧力及び温度による素子の基板変化量と前記温度による素子の基板変化量との差から、圧力による素子の基板変化量を求める第7演算工程と、
前記圧力による素子の基板変化量に基づいて、前記圧力を算出する第8演算工程と、
を備えたことを特徴とする圧力測定方法。
【請求項1】
外部からの影響によって素子を伝わる弾性表面波の特性が変化して素子の出力が変化する第1弾性表面波素子及び第2弾性表面波素子及び第3弾性表面波素子を備えた弾性表面波センサであって、
前記第1弾性表面波素子と前記第2弾性表面波素子と前記第3弾性表面波素子とは、温度変化に対し素子の出力が異なり、
且つ、前記第1弾性表面波素子は、前記温度以外の測定対象の状態の変化によって素子の出力が変化するように構成された素子であることを特徴とする弾性表面波センサ。
【請求項2】
無線によって外部装置との信号の送受信が可能な構成を備えたことを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波センサ。
【請求項3】
前記測定対象の状態は、圧力であることを特徴とする請求項1又は2に記載の弾性表面波センサ。
【請求項4】
前記第1弾性表面波素子に対して、前記圧力に対応する押圧力を印加する押圧力印加部を備えたことを特徴とする請求項3に記載の弾性表面波センサ。
【請求項5】
前記第1弾性表面波素子と前記第2弾性表面波素子と前記第3弾性表面波素子とは、それぞれ各素子における信号の遅延時間が全て異なるように設定されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の弾性表面波センサ。
【請求項6】
前記第1弾性表面波素子は、弾性表面波を発生させる電極と、前記電極にて発生した弾性表面波を反射させる反射器とを備え、
前記第1弾性表面波素子の反射器は、外部からの押圧力が印加された場合に弾性変形する構成を有するとともに、前記反射器に対して押圧力を印加する押圧力印加部を備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の弾性表面波センサ。
【請求項7】
前記請求項1〜6のいずれか1項に記載の弾性表面波センサを備えた圧力のセンシングシステムであって、
前記第1弾性表面波素子に前記圧力に対応する押圧力が加わった場合に、前記第1弾性表面波素子の出力電圧と前記第2弾性表面波素子の出力電圧との電圧差を示す第1の演算値を求める第1演算手段と、
前記第3弾性表面波素子の出力電圧と前記第2弾性表面波素子の出力電圧との電圧差を示す第2の演算値を求める第2演算手段と、
前記第2の演算値に基づいて、温度による素子の基板変化量を求める第3演算手段と、
前記第2の演算値に基づいて、前記第2弾性表面波素子の基準温度における出力電圧と基準温度からの温度変化に対応した出力電圧との電圧差である温度補正量を求める第4演算手段と、
前記温度補正量に前記第1の演算値を加算して、加算値を求める第5演算手段と、
前記加算値に基づいて、圧力及び温度による素子の基板変化量を求める第6演算手段と、
前記圧力及び温度による素子の基板変化量と前記温度による素子の基板変化量との差から、圧力による素子の基板変化量を求める第7演算手段と、
前記圧力による素子の基板変化量に基づいて、前記圧力を算出する第8演算出段と、
を備えたことを特徴とするセンシングシステム。
【請求項8】
前記請求項1〜6のいずれか1項に記載の弾性表面波センサを備えた圧力のセンシングシステムであって、
前記第1弾性表面波素子に前記圧力に対応する押圧力が加わった場合に、前記第1弾性表面波素子の出力電力と前記第2弾性表面波素子の出力電力との電力比を示す第1の演算値を求める第1演算手段と、
前記第3弾性表面波素子の出力電力と前記第2弾性表面波素子の出力電力との電力比を示す第2の演算値を求める第2演算手段と、
前記第2の演算値に基づいて、温度による素子の基板変化量を求める第3演算手段と、
前記第2の演算値に基づいて、前記第2弾性表面波素子の基準温度における出力電力と基準温度からの温度変化に対応した出力電力との電力比である温度補正量を求める第4演算手段と、
前記温度補正量に前記第1の演算値を加算して、加算値を求める第5演算手段と、
前記加算値に基づいて、圧力及び温度による素子の基板変化量を求める第6演算手段と、
前記圧力及び温度による素子の基板変化量と前記温度による素子の基板変化量との差から、圧力による素子の基板変化量を求める第7演算手段と、
前記圧力による素子の基板変化量に基づいて、前記圧力を算出する第8演算出段と、
を備えたことを特徴とするセンシングシステム。
【請求項9】
前記外部装置は、無線により前記弾性表面波センサに対して高周波信号を印加する高周波印加部と、無線により前記弾性表面波センサからの信号を受信する信号受信部と、該信号受信部にて受信した信号を検知する信号検知部とを備えたことを特徴とする請求項7又は8に記載のセンシングシステム。
【請求項10】
前記第1弾性表面波素子と前記第2弾性表面波素子と前記第3弾性表面波素子との遅延時間が全て異なり、
且つ、前記第1弾性表面波素子と前記第2弾性表面波素子と前記第3弾性表面波素子との遅延時間が、全て前記外部装置より出力される出力信号時間より長く、
且つ、前記第1弾性表面波素子と前記第2弾性表面波素子と前記第3弾性表面波素子との最大遅延時間が、最小遅延時間の2倍より短いことを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載のセンシングシステム。
【請求項11】
前記請求項1〜6のいずれか1項に記載の弾性表面波センサを用いて圧力を測定する圧力測定方法であって、
前記第1弾性表面波素子に前記圧力に対応する押圧力が加わった場合に、前記第1弾性表面波素子の出力電圧と前記第2弾性表面波素子の出力電圧との電圧差を示す第1の演算値を求める第1演算工程と、
前記第3弾性表面波素子の出力電圧と前記第2弾性表面波素子の出力電圧との電圧差を示す第2の演算値を求める第2演算工程と、
前記第2の演算値に基づいて、温度による素子の基板変化量を求める第3演算工程と、
前記第2の演算値に基づいて、前記第2弾性表面波素子の基準温度における出力電圧と基準温度からの温度変化に対応した出力電圧との電圧差である温度補正量を求める第4演算工程と、
前記温度補正量に前記第1の演算値を加算して、加算値を求める第5演算工程と、
前記加算値に基づいて、圧力及び温度による素子の基板変化量を求める第6演算工程と、
前記圧力及び温度による素子の基板変化量と前記温度による素子の基板変化量との差から、圧力による素子の基板変化量を求める第7演算工程と、
前記圧力による素子の基板変化量に基づいて、前記圧力を算出する第8演算工程と、
を備えたことを特徴とする圧力測定方法。
【請求項12】
前記請求項1〜6のいずれか1項に記載の弾性表面波センサを用いて圧力を測定する圧力測定方法であって、
前記第1弾性表面波素子に前記圧力に対応する押圧力が加わった場合に、前記第1弾性表面波素子の出力電力と前記第2弾性表面波素子の出力電力との電力比を示す第1の演算値を求める第1演算工程と、
前記第3弾性表面波素子の出力電力と前記第2弾性表面波素子の出力電力との電力比を示す第2の演算値を求める第2演算工程と、
前記第2の演算値に基づいて、温度による素子の基板変化量を求める第3演算工程と、
前記第2の演算値に基づいて、前記第2弾性表面波素子の基準温度における出力電力と基準温度からの温度変化に対応した出力電力との電力比である温度補正量を求める第4演算工程と、
前記温度補正量に前記第1の演算値を加算して、加算値を求める第5演算工程と、
前記加算値に基づいて、圧力及び温度による素子の基板変化量を求める第6演算工程と、
前記圧力及び温度による素子の基板変化量と前記温度による素子の基板変化量との差から、圧力による素子の基板変化量を求める第7演算工程と、
前記圧力による素子の基板変化量に基づいて、前記圧力を算出する第8演算工程と、
を備えたことを特徴とする圧力測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図19】
【図20】
【図21】
【図4】
【図18】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
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【図15】
【図16】
【図17】
【図19】
【図20】
【図21】
【図4】
【図18】
【公開番号】特開2012−247220(P2012−247220A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117176(P2011−117176)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】
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