説明

弾性表面波測定装置

【課題】この発明の目的は、周囲の複数の物質の状況の変化を従来に比べより精密により精度良く測定することが可能な弾性表面波測定装置を提供することである。
【解決手段】弾性表面波測定装置では、複数の基体12の表面の円環状連続弾性表面波周回路12a,12b,12cに弾性表面波・励起/検知手段14a,14b,14cが高周波信号を基に弾性表面波を励起周回させ、周回した弾性表面波を検知し受信信号を発する。高周波信号入力/受信信号取り出し手段56が、複数の励起/検知手段に高周波信号を同時に同位相で入力させるとともに互いに異なる時刻の周回後の弾性表面波から受信信号を取り出す。測定手段46が、複数の受信信号に対応する表面波の所定の特性を互いに異なる時刻で測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、弾性表面波を利用して周囲の物質の状況の変化を測定する弾性表面波測定装置に関係している。
【背景技術】
【0002】
平坦な基体上に配置された平坦な圧電体の上面の相互に離間した2つの位置に弾性表面波励起手段及び弾性表面波検知手段が相互に対向して配置された板状の弾性表面波素子は従来良く知られている。
【0003】
このような従来の板状の弾性表面波素子においては、弾性表面波励起手段及び弾性表面波検知手段の夫々としてすだれ状電極(櫛形電極とも呼ばれている)が使用されている。弾性表面波励起手段に高周波電流が供給されると弾性表面波励起手段は圧電体の上面に弾性表面波を励起し励起された弾性表面波を平坦な圧電体の上面に沿い弾性表面波検知手段に向かい伝搬させ弾性表面波検知手段により検知させる。
【0004】
このような従来の板状の弾性表面波素子は、遅延線,発振器の為の発振素子及び共振素子,周波数選択フィルター,化学センサー,バイオセンサー,そしてリモートタグ等に使用されている。そして、弾性表面波素子を種々のセンサーとして使用する場合には、圧電体の上面の弾性表面波励起手段と弾性表面波検知手段との間の距離を長くとり、弾性表面波励起手段により上記上面に励起された弾性表面波が弾性表面波検知手段により検知されるまでに要する時間を長く出来ればできるほど、上記弾性表面波の励起から検知に至るまでに上記弾性表面波の種々の物理的特性に生じる微小な変化が顕在化し易くなるので、弾性表面波素子を利用した種々のセンサーの精度は高まる。
【0005】
しかしながら、このような従来の板状の弾性表面波素子においては、平坦な基体上に配置された圧電体が平坦である為に、弾性表面波励起手段が圧電体の上面に励起した弾性表面波は平坦な圧電体の上面に沿い弾性表面波検知手段に向かい伝搬される間にその伝搬方向に対し直交する方向に拡散してしまい、そのエネルギーを失う。従って、平坦な圧電体の上面において設定可能な弾性表面波励起手段と弾性表面波検知手段との間の距離は、おのずと限りがある。
【0006】
弾性表面波励起手段に供給する高周波電流のエネルギーを増加させ平坦な基体の表面積を拡大すれば、上記距離を長くすることが出来るが、弾性表面波素子の駆動に要する電力が増大し、また弾性表面波素子の外形寸法が大形化する。
【0007】
国際公開 WO 01/45255 号公報(特許文献1)は、弾性表面波を励起させ伝搬させることが出来る球形状の基体の表面に対し弾性表面波・励起/検知手段としてのすだれ状電極を載置し、基体の半径とすだれ状電極により基体の表面に励起させる弾性表面波の周波数及び幅(基体の表面を弾性表面波が伝搬する方向に対し基体の表面に沿い直交する方向における弾性表面波のビーム幅の寸法)とを所定の条件に設定することにより、所定の半径の基体の表面にすだれ状電極により励起した所定の周波数と所定の幅とを有した弾性表面波を、基体の表面に沿い伝搬する方向に対し基体の表面に沿い直交する方向に無限に拡散させることなく、伝搬させることが出来、ひいては繰り返し周回させることが出来ることが明らかにされている。
【0008】
球形状の基体の表面を弾性表面波が周回する軌跡は、球形状の基体の表面において球形状の基体の最大外周線を含んでいる球の一部が円環状に連続している領域内にあり、この領域を弾性表面波周回路と呼んでいる。そして、球形状の基体を使用したこのような従来の弾性表面波素子は、弾性表面波周回路に沿い弾性表面波周回路の延出方向と交差する方向に拡散することなく弾性表面波を多数回周回させることが出来る(即ち、すだれ状電極が弾性表面波を励起させてから弾性表面波周回路を周回する弾性表面波をすだれ状電極が正確に検知することが出来なくなるまでに弾性表面波が周回する回数が非常に多い)ので、周回数の増大に伴い弾性表面波の伝搬速度の変化や弾性表面波の位相の変化や弾性表面波の強度の変化が顕在化し易くなり、これらの程度をより精密に測定することが出来るようになる。
【0009】
伝搬速度の伝搬速度の変化や弾性表面波の位相の変化や弾性表面波の強度の変化は、球状弾性表面波素子の弾性表面波周回路が接している環境の変化(例えば、ガス濃度の増加)の程度に対応する。従って、上述した種々の変化を測定することは球状弾性表面波素子の弾性表面波周回路が接している環境の変化を測定することを意味する。
【0010】
ここで上述した環境の変化とは環境に含まれる種々の物質の量の変化に他ならず、従って弾性表面波周回路に、量の変化を知りたい所定の物質に対し感応し所定の物質に対する感応の度合いに応じて対応している弾性表面周回路を周回する弾性表面波に所定の影響を与える感応要素を設けることにより、所定の物質の量の変化、即ち環境の変化、をより精密に測定することが出来る。
【0011】
このような感応要素が膜として弾性表面波周回路に設けられている球状弾性表面波素子は、例えば特願2004−108236号公報(特許文献2)により知られていている。特願2004−108236号公報には、水素に対する感応膜としてパラジウムを、アンモニアに対する感応膜としてプラチナを、水素化合物に対する感応膜として酸化タングステンを、そして一酸化炭素,二酸化炭素,二酸化硫黄,そして二酸化窒素等に対する感応膜としてフタロシアニンを例示している。
【0012】
球の一部が円環状に連続している弾性表面波周回路を複数有している弾性表面波素子が、例えば特願2004−104139号公報(特許文献3)により知られている。この公報には、弾性表面波素子の周囲温度の変化により弾性表面波素子の基体の温度が変化すると、基体の材料の物理的性質(例えば、密度や弾性定数)が変化し、ひいては弾性表面波周回路を伝搬する弾性表面波の伝搬速度や強度を変化させ、最終的には、弾性表面波の伝搬速度や強度の測定により得られる弾性表面波周回路が接している環境の変化の測定結果に影響を与えることが記載されている。そして、このような影響を排除する為に、複数の弾性表面波周回路の中の1つを周囲温度変化の影響による弾性表面波の伝搬速度や強度の変化を較正するのに使用することを記載している。
【0013】
なお、高周波信号における位相とは一般に、所定の時刻を定義した際にその時刻における該当信号の時間的な位置を意味する。球状弾性表面波素子の出力計測における位相計測は、弾性表面波の励起される時刻から所定の時間経過した時刻における、球状弾性表面波素子からの高周波信号出力の時間的な位置(位相)をフーリエ解析やクアドラチャ検波やあるいはウエーブレット変換などを用いて計測することを通常指して用いられ、その計測から弾性表面波の伝搬(周回)速度を直接的に計測できる。あるいは、例えば球状弾性表面波素子が所定の回数出力し終わった時刻(所定の周回数周回し終わった時刻)をもとめ、その時刻の周回開始時刻からの時間的な距離を求める事も、“位相を計測する”と呼び、これによって弾性表面波の伝搬(周回)速度の情報を得ることを本発明では除外しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開 WO 01/45255 号公報
【特許文献2】特願2004−108236号公報
【特許文献3】特願2004−104139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
相互に接近して配置された複数の弾性表面波素子を使用して周囲の少なくとも1つの物質の状況の変化を測定したり環境変化を計測する際に、あるいは周囲温度変化の影響による弾性表面波の伝搬速度や強度の誤差を較正する場合、複数の相互に接近して配置された素子の表面に形成された弾性表面波周回路に設けられている弾性表面波・励起/検知手段に相互に異なるタイミングで弾性表面波励起の為に高周波信号を入力させたり、或いは、相互に異なる位相で高周波信号を入力すると、ある一つの弾性表面波素子の弾性表面波周回路に入力した高周波信号が隣接した弾性表面波素子の弾性表面波周回路上に弾性表面波を励起して雑音化することが問題になった。
【0016】
その為、複数の相互に接近して配置された素子の表面に形成された弾性表面波周回路に設けられている弾性表面波・励起/検知手段に相互に同じタイミングで弾性表面波励起の為に高周波信号を入力し、或いは、相互に同じ位相で高周波信号を入力し、複数の弾性表面波・励起/検知手段が対応する複数の弾性表面波周回路を周回する複数の弾性表面波を略同じタイミングで検知する場合、異なる周回経路からの受信信号を同時に並行して解析する必要があり、それらを並行して独立に計測処理する為には、複数の増幅器と複数のアナログデジタル変換手段が必要になり、装置として複雑で高価なものになる弊害があった。
【0017】
あるいは、上記複数の弾性表面波・励起/検出手段を、それぞれ順番に計測を完了してから次の弾性表面波励起/検出手段の計測を行う事は、全ての弾性表面波周回路の計測を完了するために長い時間が掛かる。
【0018】
この発明は上述した事情の下で為され、この発明の目的は、周囲の少なくとも1つの物質の状況の変化を簡易な構造ながら従来に比べより精密により精度良く測定することが可能な弾性表面波測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上述したこの発明の目的を達成する為に、この発明の一つの概念に従った弾性表面波測定装置は:球形状の一部により円環状に連続して延出しており、弾性表面波が励起され励起された弾性表面波が上記延出している方向に周回可能な弾性表面波周回路を単一あるいは複数有した表面を含む複数の基体と;複数の基体の夫々の表面の単一或いは複数の弾性表面波周回路の夫々に設けられ、高周波信号を基に弾性表面波を励起し、励起した弾性表面波を対応する弾性表面波周回路に沿い周回させるとともに周回した弾性表面波を検知して受信信号を発する複数の弾性表面波・励起/検知手段と;複数の弾性表面波・励起/検知手段に対し同時に同位相で高周波信号を入力させるとともに、複数の基体の弾性表面波周回路を周回した複数の弾性表面波から複数の弾性表面波・励起/検知手段により発せられた複数の受信信号を取り出す、高周波信号入力/受信信号取り出し手段と;そして、上記複数の受信信号の夫々から夫々の受信信号に対応する弾性表面波の所定の特性を互いに異なる時刻で測定する測定手段と;を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
前述した如く構成されたことを特徴とするこの発明の一つの概念に従った弾性表面波測定装置では:複数の基体の複数の弾性表面波周回路に対し弾性表面波・励起/検知手段が高周波信号を同時に同じ位相で入力させ、測定手段が、複数の弾性表面波周回路を周回した複数の弾性表面波から発せられた複数の受信信号の夫々から夫々の受信信号に対応する弾性表面波の所定の特性を互いに異なる時刻で測定している。
【0021】
従って、この発明の一つの概念に従った弾性表面波測定装置では、複数の基体の表面の弾性表面波周回路に弾性表面波を励起するために、弾性表面波励起用の一般には大きな振幅を伴っている高周波信号を複数の基体の表面の弾性表面波周回路に印加しても、上記高周波信号は同時に同位相で入力されるので、隣接する別の基体の弾性表面波周回路に雑音として伝わることがなく、隣接する別の基体の弾性表面波周回路に雑音としての弾性表面波を励起してしまうことを防ぐ事が出来る。
【0022】
複数の基体の弾性表面波周回路に同時に弾性表面波励起用の高周波信号を入力しても、夫々の基体の表面の弾性表面波周回路を周回する弾性表面波の所定の特性は互いに異なる時刻で計測する。このことは、単一の、アナログからデジタルへの変換手段(A/D変換手段)によって複数の基体の弾性表面波周回路からの受信信号を互いに異なる時刻で連続的に測定できることを意味している。さらに、複数の基体の複数の弾性表面波・励起/検知手段が検知した複数の弾性表面波から発する複数の受信信号から、測定手段が測定する周囲の少なくとも1つの物質の状況の変化を簡易な構成ながら従来に比べより精密により精度良く測定することが可能になることを意味している。
【0023】
複数の基体の弾性表面波周回路に弾性表面波励起用の高周波信号を同時に入力しても互いに異なる時刻で弾性表面波の所定の特性を得る為の一例は、夫々の基体の表面の弾性表面波周回路を周回する弾性表面波は弾性表面波・励起/検知手段から一定時間に繰り返し受信信号出力を行っていることから、複数の基体の弾性表面波周回路について互いに異なる周回数の弾性表面波からの受信信号出力から弾性表面波の所定の特性を計測することである。
【0024】
複数の基体の弾性表面波周回路に弾性表面波励起用の高周波信号を同時に入力しても互いに異なる時刻で弾性表面波の所定の特性を得る為の別の例は、測定手段が上記複数の受信信号の夫々に対して異なる位相遅延を与える事によって互いに異なる時刻で夫々の受信信号に対応する弾性表面波の所定の特性を測定することである。
【0025】
本明細書に於いて位相遅延を与えるとは、弾性表面波を励起するバースト信号の波形を変えることなく計測までの遅延時間を増加させることを意味するものとする。バースト信号の包絡線が一定の時刻のままで、内部の信号の位相のみが変わる事を意味するのではない。
【0026】
従って、測定手段が、上記複数の受信信号の夫々から測定した夫々の受信信号に対応する弾性表面波の所定の特性、ひいては周囲の少なくとも1つの物質の状況の変化、を従来に比べより精密により精度良く測定することが可能になることを意味している。しかも、そのような測定結果を得ることが出来る構造を簡易にすることができる。
【0027】
尚、本発明において、複数の弾性表面波・励起/検知手段に対して、互いの強度が異なっていても同じ位相で入力信号が入力されるのであれば測定に影響を与えないことは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、この発明の第1実施形態に従った弾性表面波測定装置において使用されている弾性表面波素子を概略的に示す斜視図である。
【図2】図2は、この発明の第1実施形態に従った弾性表面波測定装置の構成を概略的に示す図である。
【図3】図3は、図2中に図示されているスイッチ制御手段による弾性表面波素子の第1乃至第3の弾性表面波・励起/検知手段の為の第1乃至第3のスイッチ手段の切り替え動作のタイミングを概略的に示すタイミングチャートである。
【図4】図4は、この発明の第1実施形態に従った弾性表面波測定装置の夫々の周回経路を周回して、出力される信号について、スイッチ手段によって切り出して解析される信号の箇所について説明する図である。
【図5】図5は、この発明の第2実施形態に従った弾性表面波測定装置の構成を概略的に示す図である。
【図6】図6は、図5中に図示されているスイッチ制御手段による弾性表面波素子の第1乃至第3の弾性表面波・励起/検知手段の為の第1乃至第3のスイッチ手段の切り替え動作のタイミングを概略的に示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[第1実施形態]
最初に、添付の図面中の図1乃至図4を参照しながらこの発明の第1実施形態に従った弾性表面波測定装置について説明する。
【0030】
図1は、この発明の第1実施形態に従った弾性表面波測定装置において使用されている弾性表面波素子を概略的に示す斜視図であり;図2は、この発明の第1実施形態に従った弾性表面波測定装置の構成を概略的に示す図であり;図3は、図2中に図示されているスイッチ制御手段による弾性表面波素子の第1乃至第3の弾性表面波・励起/検知手段の為の第1乃至第3の切り替えスイッチの切り替え動作のタイミングを概略的に示すタイミングチャートであり;そして、図4は、この発明の第1実施形態に従った弾性表面波測定装置の夫々の周回経路を周回して、出力される信号について、スイッチ手段によって切り出して解析される信号の箇所について説明する図である。
【0031】
図1中に図示されている如く、この発明の第1実施形態に従った弾性表面波測定装置において使用されている弾性表面波素子10は:球形状の一部により円環状に連続して延出しており、弾性表面波が励起され励起された弾性表面波が上記延出している方向に周回可能な弾性表面波周回路12を有した表面を含む基体11と;基体11の表面の弾性表面波周回路12に設けられ、高周波信号を基に弾性表面波を励起し励起した弾性表面波を対応する弾性表面波周回路12に沿い周回させるとともに周回した弾性表面波を検知して受信信号を発する弾性表面波・励起/検知手段14と;弾性表面波周回路12に設けられ、所定の物質に感応し、所定の物質に対する感応の度合いに応じて対応している弾性表面波周回路12を周回する弾性表面波に所定の影響を与える感応要素(感応膜)16と、を備えている。このような弾性表面波素子10は公知である。
【0032】
弾性表面波を励起させ伝搬させることが出来る基体11は、所望の形状の支持体の表面に弾性表面波を励起させ伝搬させることが出来る材料(例えば圧電材料)を載置させることにより作成することが出来るし、或いは圧電性を有した材料(例えば圧電性結晶材料)を所望の形状に形作ることにより作成することが出来る。
【0033】
このような圧電性結晶材料としては、例えば水晶,ランガサイト,ニオブ酸リチウム(LiNbO3),そしてタンタル酸リチウム(LiTaO3)が良く知られている。基体11を球形状の圧電性単結晶から作成する場合は、圧電性単結晶の所定の結晶軸を地軸とし、球形状の表面の赤道に相当する最大外周線にそって弾性表面波を励起させれば、上記最大外周線の近傍に沿って弾性表面波を多重周回させる事が出来ることが良く知られている。
【0034】
この実施形態の基体11は、水晶の単結晶を球形状に形作ることにより形成されていて、結晶のZ軸を地軸とした場合の赤道(最大外周線)が弾性表面波周回路12となり、図1においては太い実線で描かれている。
【0035】
すだれ状電極は、高周波信号が入力されることにより、対応する上記円環形状の太い実線に沿い、対応する上記円環形状の太い実線と交差する方向に所定の幅を有した弾性表面波を励起させるとともに、励起させた弾性表面波の進行方向が対応する上記円環形状の太い実線の延出方向に向かわせるよう構成されている。
【0036】
上述した如く励起された弾性表面波の上記所定の幅は、前述した国際公開 WO 01/45255 号公報(特許文献1)から知られているように、基体11の半径(上記円環形状の太い実線の半径)とすだれ状電極により基体11の表面に励起させる弾性表面波の周波数との所定の関係で、基体11の表面の上記円環形状の太い実線上に上述した如く励起させ上記円環形状の太い実線に沿い伝搬させた弾性表面波が上記円環形状の太い実線に対し基体11の表面に沿い直交する方向に拡散することなく理論的には無限に伝搬することが出来、ひいては基体11の表面の上記円環形状の太い実線に沿い繰り返し周回させることが出来るようになる値である。
【0037】
感応要素16は所定の物質に感応し、所定の物質に対する感応の度合いに応じて対応している弾性表面波周回路12を周回する弾性表面波に所定の影響(例えば、伝搬速度の変化や弾性表面波の強度の変化)を与える。
【0038】
尚、本明細書において物質と記載するのは、固体や液体としての物質だけで無くガス(分子)も指すものとする。また、感応要素16は、特定の単一の物質のみに感応したり吸着するものである必要は必ずしもない。様々な物質それぞれに対応して反応や吸着の仕方をするものであれば良く、その反応や吸着が上記物質の存否や量に対応する影響を弾性表面波の伝搬に与えるものであれば、先の物質の情報を得る事が可能である事は明らかである。
【0039】
なお、伝搬速度の変化は、すだれ状電極に高周波信号を入力して所定回数周回した後に再びすだれ状電極で検出するときに、入力の時刻を基準とした検出されるまでの時間によって知る事が可能であることは当該分野の専門家においては良く知られている。特に、入力の時刻を基準として所定の時間経過した時刻に置ける出力信号の波形の位相をもとめることによって微小な変化を高精度に測定されることが多い。
【0040】
次に、添付の図面中の図2及び図3を参照しながらこの発明の第1実施形態に従った弾性表面波測定装置について説明する。
【0041】
図2中に図示されている如く、この発明の第1実施形態に従った弾性表面波測定装置は、図1を参照しながら説明した弾性表面波素子10を3個使用しており、以下、第1の弾性表面波素子を参照符号10Aで、第2の弾性表面波素子を参照符号10Bで、そして第3の弾性表面波素子を参照符号10Cで指摘する。さらに、第1の弾性表面波素子10A,第2の弾性表面波素子10B,そして第3の弾性表面波素子10Cにおいて夫々の弾性表面波周回路を参照符号12a,12b,そして12cで指摘し、弾性表面波・励起/検知手段を参照符号14a,14b,そして14cで指摘する。そして、第1の弾性表面波素子10Aの第1の弾性表面波周回路12a及び第2の弾性表面波素子10Bの第2の弾性表面波周回路12bに相互に異なる所定の物質に感応し、所定の物質に対する感応の度合いに応じて対応している第1及び第2の弾性表面波周回路12a及び12bを周回する弾性表面波に所定の影響(例えば、伝搬速度の変化や弾性表面波の強度の変化)を与える第1及び第2の感応要素16a及び16bが設けられている。
【0042】
この実施形態において第1の弾性表面波・励起/検知手段14aのすだれ状電極の一方の端子は第1の切り替えスイッチK1の切り替え要素Cに接続されていて、第2の弾性表面波・励起/検知手段14bのすだれ状電極の一方の端子は第2の切り替えスイッチK2の切り替え要素Cに接続されていて、そして第3の弾性表面波・励起/検知手段14cのすだれ状電極の一方の端子は第3の切り替えスイッチK3の切り替え要素Cに接続されている。第1の弾性表面波・励起/検知手段14a,第2の弾性表面波・励起/検知手段14b,そして第3の弾性表面波・励起/検知手段14cの夫々のすだれ状電極の他方の端子は接地されている。
【0043】
第1の切り替えスイッチK1,第2の切り替えスイッチK2,そして第3の切り替えスイッチK3の夫々は、夫々の切り替え要素Cにより夫々の切り替え要素Cと選択的に接続される入力端子I及び出力端子Oを含んでいる。
【0044】
第1乃至第3の切り替えスイッチK1,K2,K3の夫々の入力端子Iは高周波バースト信号発生装置42に接続されている。高周波バースト信号発生装置42は、所定の周波数の高周波信号を発生させる高周波信号発生手段と、発生させた高周波信号から所定の長さの高周波信号をバースト状高周波信号として切り出すバースト状高周波信号切り出し手段と、を含む。
【0045】
第1の切り替えスイッチK1,第2の切り替えスイッチK2,そして第3の切り替えスイッチK3の夫々の出力端子Oは、増幅手段44と、A/D変換手段(アナログ―デジタル変換手段)45を介して信号解析手段46に接続されていて、信号解析手段46はさらに加算・平均化・記憶装置48に接続され,そして加算・平均化・記憶装置48には表示装置50が接続されている。
【0046】
第1の切り替えスイッチK1,第2の切り替えスイッチK2,そして第3の切り替えスイッチK3の夫々は、夫々の切り替え要素Cの動作を制御するスイッチ制御手段52に接続されている。
【0047】
さらに、スイッチ制御手段52,表示装置50,そして高周波バースト信号発生装置42は、これらの動作を制御する為の中央制御装置54に接続されている。
【0048】
次に、上述した如く構成されているこの発明の第1実施形態に従った弾性表面波測定装置の動作について説明する。
【0049】
中央制御装置54は、スイッチ制御手段52により第1の切り替えスイッチK1,第2の切り替えスイッチK2,そして第3の切り替えスイッチK3の夫々の切り替え要素Cを夫々の入力端子Iに接続させるとともに、高周波バースト信号発生装置42により所定の周波数のバースト状高周波信号を発生させる。このバースト状高周波信号は、第1の切り替えスイッチK1の入力端子I及び切り替え要素Cを介して第1の弾性表面波素子10Aの第1の弾性表面波・励起/検知手段14aの前述した一方の端子へ、また、第2の切り替えスイッチK2の入力端子I及び切り替え要素Cを介して第2の弾性表面波素子10Bの第2の弾性表面波・励起/検知手段14bの前述した一方の端子へ、さらに、第3の切り替えスイッチK3の入力端子I及び切り替え要素Cを介して第3の弾性表面波素子10Cの第3の弾性表面波・励起/検知手段14cの前述した一方の端子へ、同時に、同位相で、入力される。
【0050】
このようにして、高周波バースト信号発生装置42により発生された所定の周波数のバースト状高周波信号が同時に、同位相で入力された第1乃至第3の弾性表面波素子10A,10B,10Cの第1乃至第3の弾性表面波・励起/検知手段14a,14b,14cは、第1乃至第3の弾性表面波素子10A,10B,10Cの第1乃至第3の弾性表面波周回路12a,12b,12cに同時に、同位相で、弾性表面波を励起し、第1乃至第3の弾性表面波周回路12a,12b,12cに沿い伝搬させる。
【0051】
スイッチ制御手段52は、第1乃至第3の弾性表面波・励起/検知手段14a,14b,14cの夫々が対応する第1乃至第3の弾性表面波周回路12a,12b,12cの夫々に励起させた弾性表面波が、第1乃至第3の弾性表面波周回路12a,12b,12cの夫々を1周する以前に第1乃至第3の切り替えスイッチK1,K2,K3の夫々の切り替え要素Cを夫々の入力端子Iと出力端子Oとの間の中立位置Nに配置させる。
【0052】
第1乃至第3の弾性表面波・励起/検知手段14a,14b,14cは、対応する第1乃至第3の弾性表面波周回路12a,12b,12cを周回している弾性表面波を検知する毎に受信信号を発する。
【0053】
第1乃至第3の弾性表面波・励起/検知手段14a,14b,14cに対し高周波バースト信号発生装置42により発生された所定の周波数のバースト状高周波信号を同時に同じ位相で入力させてから所定の時間が経過する度にスイッチ制御手段52は、第1乃至第3の切り替えスイッチK1,K2,K3の切り替え要素Cを、図3中に図示されている如く、相互に所定の遅延時間を伴って出力端子Oに接続させる。
【0054】
この結果として、図4中に図示されている如く、第1の弾性表面波周回路12aを所定の周回数周回した弾性表面波が第1の弾性表面波・励起/検知手段14aに発生させた受信信号,第2の弾性表面波周回路12bを上記所定の周回数+上記所定の遅延時間に相当する第1の所定の追加の周回数周回した弾性表面波が第2の弾性表面波・励起/検知手段14bに発生させた受信信号,そして、第3の弾性表面波周回路12cを上記所定の周回数+上記所定の遅延時間に相当していて上記第1の所定の追加の周回数よりも多い第2の所定の追加の周回数周回した弾性表面波が第3の弾性表面波・励起/検知手段14cに発生させた受信信号が、順次増幅手段44にて増幅された後にA/D変換手段45を介して信号解析手段46に入力される。
【0055】
信号解析手段46は、このように順次入力された受信信号を基に第1乃至第3の弾性表面波周回路12a,12b,12cを周回している弾性表面波の相互に異なる所定の周回毎の強度の変化及び相互に異なる周回毎の位相の変化及び相互に異なる所定の周回毎の周回速度の変化の少なくともいずれか1つ又は複数(例えば、上記位相の変化及び強度の変化)を測定する。
【0056】
なおここで上記周回速度の変化は、感応要素16を伴わない第3の弾性表面波周回路12cをそこに励起され伝搬された弾性表面波が所定の周回数を周回するのに要する時間を基準として、第1及び第2の感応要素16a,16bを伴なった第1及び第2の弾性表面波周回路12a,12bの夫々をそこに励起され伝搬された弾性表面が、第3の弾性表面波周回路12cを伝搬された弾性表面波と同じ所定の周回数を周回するのに要する時間の増減で測定される。即ち、周囲温度変化の影響による弾性表面波の伝搬速度の変化を較正する。
【0057】
さらに、その測定結果は、測定した順番(即ち、第1の弾性表面波周回路12aを所定の周回数周回した第1の弾性表面波からの第1の弾性表面波・励起/検知手段14aを介した受信信号,第2の弾性表面波周回路12bを所定の周回数+第1の所定の追加の周回数周回した弾性表面波からの第2の弾性表面波・励起/検知手段14bを介した受信信号,そして第3の弾性表面波周回路12cを所定の周回数+第2の所定の追加の周回数周回した弾性表面波からの第3の弾性表面波・励起/検知手段14cを介した受信信号の順番)に応じて、加算・平均化・記憶装置48の図示されていない第1乃至第3の加算・平均化・記憶ユニットに振り分けられる。図示されていない第1乃至第3の加算・平均化・記憶ユニットの夫々は、夫々に振り分けられて来た、対応する第1乃至第3の弾性表面波周回路12a,12b,12cの第1乃至第3の弾性表面波・励起/検知手段14a,14b,14cのいずれかからの受信信号を基にした上述した如き測定結果の所定の数の加算処理、加算後の所定の数の測定結果の合計の平均化処理、そして平均化処理後の測定結果の記憶処理を行ない、平均化処理後の測定結果を表示装置50に表示する。
【0058】
即ち、この実施形態では、中央制御装置54により動作を制御されるスイッチ制御手段52によりさらに動作を制御される第1乃至第3の切り替えスイッチK1,K2,K3の組み合わせが、前述したように第1乃至第3の弾性表面波・励起/検知手段14a,14b,14cに対し高周波バースト信号発生装置42から発生された所定の周波数のバースト状高周波信号を同時に同じ位相で同じ信号を入力させるとともに、第1乃至第3の弾性表面波周回路12a,12b,12cを周回した3つの弾性表面波から相互に異なる周回数で第1乃至第3の弾性表面波・励起/検知手段14a,14b,14cにより発せられた3つの受信信号を取り出す高周波信号入力/受信信号取り出し手段56を構成している。
【0059】
そして、この実施形態では、信号解析手段46が、第1乃至第3の弾性表面波周回路12a,12b,12cを周回した3つの弾性表面波から相互に異なる周回数で第1乃至第3の弾性表面波・励起/検知手段14a,14b,14cにより発せられた3つの受信信号の夫々から、夫々の受信信号に対応する弾性表面波の所定の特性(弾性表面波が所定の周回をする為に必要な時間(即ち、周回速度)や、あるいは所定の周回毎の弾性表面波の強度や位相の少なくともいずれか1つ)を測定する測定手段を構成している。
【0060】
図1乃至図4を参照しながら前述したこの発明の第1実施形態に従った弾性表面波測定装置では、第1乃至第3の弾性表面波周回路12a,12b,12cを周回した3つの弾性表面波から相互に異なる周回数で第1乃至第3の弾性表面波・励起/検知手段14a,14b,14cにより発せられた3つの受信信号の夫々から、信号解析手段46が夫々の受信信号に対応する弾性表面波の所定の特性(弾性表面波が対応する第1乃至第3の弾性表面波周回路12a、12b、12cを所定の周回をする為に必要な時間(即ち、周回速度)や、あるいは所定の周回毎の弾性表面波の強度や位相の少なくともいずれか1つ)を測定する。その結果として、第1乃至第3の弾性表面波・励起/検知手段14a,14b,14cにより相互に異なる周回数で検知された3つの弾性表面波は、信号解析手段46において異なる時間帯に測定されるので単一の増幅手段44やA/D変換手段45で変換できる。特に、第1乃至第3の弾性表面波・励起/検出手段14a,14b,14cに入力される高周波信号は全て同じ位相と継続時間であるので互いが雑音になる事が無い。このことは、第1乃至第3の弾性表面波・励起/検知手段14a,14b,14cが検知した3つの弾性表面波から発する3つの受信信号から、測定手段としての信号解析手段46が測定する上記3つの弾性表面波の所定の特性(弾性表面波が対応する第1乃至第3の弾性表面波周回路12a、12b、12cを所定の周回をする為に必要な時間(即ち、周回速度)や、あるいは所定の周回毎の弾性表面波の強度や位相の少なくともいずれか1つ)の変化を従来に比べより精密により精度良く測定することが出来ることを意味している。
【0061】
この実施形態では、第1の弾性表面波周回路12aに設けられている第1の感応要素16aは水素に感応するので、第1の弾性表面波周回路12aに対応している第1の弾性表面波・励起/検知手段14aが検知した弾性表面波から発する受信信号から、測定手段としての信号解析手段46が測定する上記弾性表面波の所定の特性(弾性表面波が対応する第1の弾性表面波周回路12aを所定の周回をする為に必要な時間(即ち、周回速度)や、あるいは所定の周回毎の弾性表面波の強度や位相の少なくともいずれか1つ)の変化は、第1の弾性表面波素子10Aの周囲の物質の1つである水素の状況の変化(水素ガス濃度の変化)を従来に比べより精密により精度良く測定することが可能になることを意味している。
【0062】
また、第2の弾性表面波周回路12bに設けられている第2の感応要素16bはアンモニアに感応するので、第2の弾性表面波周回路12bに対応している第2の弾性表面波・励起/検知手段14bが検知した弾性表面波から発し出力する受信信号から、測定手段としての信号解析手段46が測定する上記弾性表面波の所定の特性(弾性表面波が対応する第2の弾性表面波周回路12bを所定の周回をする為に必要な時間(即ち、周回速度)や、あるいは所定の周回毎の弾性表面波の強度や位相の少なくともいずれか1つ)の変化は、第2の弾性表面波素子10Bの周囲の物質の1つであるアンモニアの状況の変化(アンモニアガス濃度の変化)を従来に比べより精密により精度良く測定することが可能になることを意味している。
【0063】
さらに第3の弾性表面波周回路12cには第3の弾性表面波素子10Cの周囲の特定の物質に感応する感応要素が設けられていないので、第3の弾性表面波周回路12cに対応している第3の弾性表面波・励起/検知手段14cが検知した弾性表面波から発する受信信号から、測定手段としての信号解析手段46が測定する上記弾性表面波の所定の特性(弾性表面波が対応する第3の弾性表面波周回路12cを所定の周回をする為に必要な時間(即ち、周回速度)や、あるいは所定の周回毎の弾性表面波の強度や位相の少なくともいずれか1つ)の変化は、弾性表面波素子の周囲の温度の変化を示すことになる。
【0064】
このようにして得ることが出来た第3の弾性表面波素子10cの周囲の温度の変化による上記弾性表面波の所定の特性(弾性表面波が対応する第3の弾性表面波周回路12cを所定の周回をする為に必要な時間(即ち、周回速度)や、あるいは所定の周回毎の弾性表面波の強度や位相の少なくともいずれか1つ)の変化を基に、第1の弾性表面波周回路12aに対応している第1の弾性表面波・励起/検知手段14aが検知した弾性表面波から発する受信信号から測定手段としての信号解析手段46が測定する上記弾性表面波の所定の特性(弾性表面波が対応する第1の弾性表面波周回路12aを所定の周回をする為に必要な時間(即ち、周回速度)や、あるいは所定の周回毎の弾性表面波の強度や位相の少なくともいずれか1つ)の変化における第1の弾性表面波素子10Aの周囲の温度の変化の影響を較正することにより、第1の弾性表面波素子10Aの周囲の物質の1つである水素の状況の変化(水素ガス濃度の変化)を従来に比べさらにより精密にさらにより精度良く測定することが可能になる。
【0065】
また、このようにして得ることが出来た第3の弾性表面波素子10cの周囲の温度の変化による上記弾性表面波の所定の特性(弾性表面波が対応する第3の弾性表面波周回路12cを所定の周回をする為に必要な時間(即ち、周回速度)や、あるいは所定の周回毎の弾性表面波の強度や位相の少なくともいずれか1つ)の変化を基に、第2の弾性表面波素子12Bの第2の弾性表面波周回路12bに対応している第2の弾性表面波・励起/検知手段14bが検知した弾性表面波から発する受信信号から測定手段としての信号解析手段46が測定する上記弾性表面波の所定の特性(弾性表面波が対応する第2の弾性表面波周回路12bを所定の周回をする為に必要な時間(即ち、周回速度)や、あるいは所定の周回毎の弾性表面波の強度や位相の少なくともいずれか1つ)の変化における第2の弾性表面波素子10Bの周囲の温度の変化の影響を較正することにより、第2の弾性表面波素子10Bの周囲の物質の1つであるアンモニアの状況の変化(アンモニアガス濃度の変化)を従来に比べさらにより精密にさらにより精度良く測定することが可能になる。
【0066】
さらにこの実施形態においては、第1乃至第3の弾性表面波素子10A,10B,10Cの第1乃至第3の弾性表面波周回路12a,12b,12cを周回した3つの弾性表面波から相互に異なる所定の周回数で第1乃至第3の弾性表面波・励起/検知手段14a,14b,14cが発した3つの受信信号から、測定手段としての信号解析手段46が測定する上記弾性表面波の所定の特性(弾性表面波が対応する第1乃至第3の弾性表面波周回路12a、12b、12cを所定の周回をする為に必要な時間(即ち、周回速度)や、あるいは所定の周回毎の弾性表面波の強度や位相の少なくともいずれか1つ)の変化が、加算・平均化・記憶装置48の図示されていない第1乃至第3の加算・平均化・記憶ユニットにおいて、所定の数の加算処理、加算後の所定の数の測定結果の合計の平均化処理、そして平均化処理後の測定結果の記憶処理がされるので、表示装置50に表示される測定結果はより精度が良くなる。
【0067】
[第2実施形態]
次に、添付の図面中の図5及び図6を参照しながらこの発明の第2実施形態に従った弾性表面波測定装置について説明する。
【0068】
図5は、この発明の第2実施形態に従った弾性表面波測定装置の構成を概略的に示す図であり;そして図6は、図5中に図示されているスイッチ制御手段72による第1乃至第3の弾性表面波素子10A,10B,10Cの第1乃至第3の弾性表面波・励起/検知手段14a,14b,14cの為の第1乃至第3の切り替えスイッチJ1,J2,J3の切り替え動作のタイミングを概略的に示すタイミングチャートである。
【0069】
図5中に図示されている如く、この発明の第2実施形態に従った弾性表面波測定装置は、図1において説明した弾性表面波素子10を3個使用しており、以下、第1の弾性表面波素子を参照符号10Aで、第2の弾性表面波素子を参照符号10Bで、そして第3の弾性表面波素子を参照符号10Cで指摘する。さらに、第1の弾性表面波素子10A,第2の弾性表面波素子10B,そして第3の弾性表面波素子10Cにおいて夫々の弾性表面波周回路を参照符号12a,12b,そして12cで指摘し、弾性表面波・励起/検知手段を参照符号14a,14b,そして14cで指摘する。そして、第1の弾性表面波素子10Aの第1の弾性表面波周回路12a及び第2の弾性表面波素子10Bの第2の弾性表面波周回路12bに相互に異なる所定の物質に感応し、所定の物質に対する感応の度合いに応じて対応している第1及び第2の弾性表面波周回路12a及び12bを周回する弾性表面波に所定の影響(例えば、弾性表面波の伝搬速度の変化や弾性表面波の強度の変化)を与える第1及び第2の感応要素16a及び16bが設けられている。
【0070】
この実施形態において第1の弾性表面波素子10Aの第1の弾性表面波・励起/検知手段14aのすだれ状電極の一方の端子は第1の切り替えスイッチJ1の切り替え要素Cに接続されていて、第2の弾性表面波素子10Bの第2の弾性表面波・励起/検知手段14bのすだれ状電極の一方の端子は第2の切り替えスイッチJ2の切り替え要素Cに接続されていて、そして第3の弾性表面波素子10Cの第3の弾性表面波・励起/検知手段14cのすだれ状電極の一方の端子は第3の切り替えスイッチJ3の切り替え要素Cに接続されている。第1の弾性表面波・励起/検知手段14a,第2の弾性表面波・励起/検知手段14b,そして第3の弾性表面波・励起/検知手段14cの夫々のすだれ状電極の他方の端子は接地されている。
【0071】
第1の切り替えスイッチJ1,第2の切り替えスイッチJ2,そして第3の切り替えスイッチJ3の夫々は、夫々の切り替え要素Cにより夫々の切り替え要素Cと選択的に接続される入力端子I及び出力端子Oを含んでいる。
【0072】
第1乃至第3の切り替えスイッチJ1,J2,J3の夫々の入力端子Iは高周波バースト信号発生装置60に接続されている。高周波バースト信号発生装置60は、所定の周波数の高周波信号を発生させる高周波信号発生手段と、発生させた高周波信号から所定の長さの高周波信号をバースト状高周波信号として切り出すバースト状高周波信号切り出し手段と、を含む。
【0073】
第1の切り替えスイッチJ1の出力端子Oは増幅手段62に接続されていて、第2の切り替えスイッチJ2の出力端子Oは第1遅延器64aを介して増幅手段62に接続されていて、さらに第3の切り替えスイッチJ3の出力端子Oは第2遅延器64bを介して増幅手段62に接続されている。
【0074】
増幅手段62はA/D変換手段63を介して信号解析手段66に接続されていて、信号解析手段66はさらに加算・平均化・記憶装置68に接続され,そして加算・平均化・記憶装置68には表示装置70が接続されている。
【0075】
第1の切り替えスイッチJ1,第2の切り替えスイッチJ2,そして第3の切り替えスイッチJ3の夫々は、夫々の切り替え要素Cの動作を制御するスイッチ制御手段72に接続されている。
【0076】
さらに、スイッチ制御手段72,表示装置70,そして高周波バースト信号発生装置60は、これらの動作を制御する為の中央制御装置74に接続されている。
【0077】
次に、上述した如く構成されているこの発明の第2実施形態に従った弾性表面波測定装置の動作について説明する。
【0078】
中央制御装置74は、スイッチ制御手段72により第1の切り替えスイッチJ1,第2の切り替えスイッチJ2,そして第3の切り替えスイッチJ3の夫々の切り替え要素Cを夫々の入力端子Iに接続させるとともに、高周波バースト信号発生装置60により所定の周波数のバースト状高周波信号を発生させる。このバースト状高周波信号は、第1の切り替えスイッチJ1の入力端子I及び切り替え要素Cを介して第1の弾性表面波素子10Aの第1の弾性表面波・励起/検知手段14aの前述した一方の端子へ、また、第2の切り替えスイッチJ2の入力端子I及び切り替え要素Cを介して第2の弾性表面波素子10Bの第2の弾性表面波・励起/検知手段14bの前述した一方の端子へ、さらに、第3の切り替えスイッチJ3の入力端子I及び切り替え要素Cを介して第3の弾性表面波素子10Cの第3の弾性表面波・励起/検知手段14cの前述した一方の端子へ、同時に、同位相で入力される。
【0079】
このようにして、高周波バースト信号発生装置60により発生された所定の周波数のバースト状高周波信号が同時に、同位相で入力された第1乃至第3の弾性表面波素子10A乃至10Cの第1乃至第3の弾性表面波・励起/検知手段14a乃至14cは、第1乃至第3の弾性表面波素子10A乃至10Cの第1乃至第3の弾性表面波周回路12a,12b,12cに同時に、同位相で弾性表面波を励起し、第1乃至第3の弾性表面波素子10A乃至10C上に設けられた第1乃至第3の弾性表面波周回路12a,12b,12cに沿い伝搬させる。
【0080】
スイッチ制御手段72は、第1乃至第3の弾性表面波・励起/検知手段14a,14b,14cの夫々が対応する第1乃至第3の弾性表面波周回路12a,12b,12cの夫々に励起させた弾性表面波が、第1乃至第3の弾性表面波周回路12a,12b,12cの夫々を1周する以前に第1乃至第3の切り替えスイッチJ1,J2,J3の夫々の切り替え要素Cを夫々の出力端子Oに接続させる。
【0081】
第1乃至第3の弾性表面波・励起/検知手段14a,14b,14cは、対応する第1乃至第3の弾性表面波周回路12a,12b,12cを周回している弾性表面波を検知する毎に受信信号を発する。
【0082】
ここにおいては、第1の弾性表面波素子10Aの第1の弾性表面波周回路12aを所定の周回数周回した弾性表面波が第1の弾性表面波・励起/検知手段14aに発生させた受信信号に引き続き、第2の弾性表面波素子10Bの第2の弾性表面波周回路12bを上記所定の周回数周回した弾性表面波が第2の弾性表面波・励起/検知手段14bに発生させた受信信号は第1遅延器64aにより設定される第1の所定の遅延時間を伴って、また、第3の弾性表面波素子10Cの第3の弾性表面波周回路12cを上記所定の周回数周回した弾性表面波が第3の弾性表面波・励起/検知手段14cに発生させた受信信号は第1遅延器64aにより設定される第1の所定の遅延時間よりも長い第2遅延器64bにより設定される第2の所定の遅延時間を伴って、順次増幅手段64及びA/D変換手段63を介して信号解析手段66に入力される。
【0083】
信号解析手段66は、このように順次入力された受信信号を基に第1乃至第3の弾性表面波素子10A,10B,10Cの第1乃至第3の弾性表面波周回路12a,12b,12cを周回している弾性表面波の相互に同じ所定の周回毎の強度の変化及び相互に同じ所定の周回毎の位相の変化及び相互に同じ所定の周回毎の周回速度の変化の少なくともいずれか1つ又は複数(例えば、上記位相の変化及び強度の変化)を測定する。
【0084】
なおここで上記周回速度の変化は、感応要素16を伴わない第3の弾性表面波素子10Cの第3の弾性表面波周回路12cをそこに励起され伝搬された弾性表面波が所定の周回数を周回するのに要する時間を基準として、第1及び第2の感応要素16a及び16bを伴なった第1及び第2の弾性表面波周回路12a及び12bの夫々をそこに励起され伝搬された弾性表面が、第3の弾性表面波周回路12cを伝搬された弾性表面波と同じ所定の周回数を周回するのに要する時間の増減で測定される。
【0085】
さらに、その測定結果は、測定した順番(即ち、第1乃至第3の弾性表面波周回路12a,12b,12cを相互に同じ所定の周回数周回した弾性表面波からの第1乃至第3の弾性表面波素子10A,10B,10Cの第1乃至第3の弾性表面波・励起/検知手段14a,14b,14c及び第1及び第2遅延器64a,64bを介した受信信号の順番)に応じて、加算・平均化・記憶装置68の図示されていない第1乃至第3の加算・平均化・記憶ユニットに振り分けられる。図示されていない第1乃至第3の加算・平均化・記憶ユニットの夫々は、夫々に振り分けられて来た、対応する第1乃至第3の弾性表面波周回路12a,12b,12cの第1乃至第3の弾性表面波素子10A,10B,10Cの第1乃至第3の弾性表面波・励起/検知手段14a,14b,14cのいずれかからの受信信号を基にした上述した如き測定結果の所定の数の加算処理、加算後の所定の数の測定結果の合計の平均化処理、そして平均化処理後の測定結果の記憶処理を行ない、平均化処理後の測定結果を表示装置70に表示する。
【0086】
即ち、この実施形態では、中央制御装置74により動作を制御されるスイッチ制御手段72によりさらに動作を制御される第1乃至第3の切り替えスイッチJ1,J2,J3が、このように第1乃至第3の弾性表面波素子10A,10B,10Cの第1乃至第3の弾性表面波・励起/検知手段14a,14b,14cに対し高周波バースト信号発生装置60が発生した所定の周波数のバースト状高周波信号を同時に同じ位相で同じ信号を入力させる高周波信号入力手段76を構成している。
【0087】
また、この実施形態では、第1及び第2遅延器64a,64bと組み合わされた信号解析手段66が、第1乃至第3の弾性表面波素子10A,10B,10Cの第1乃至第3の弾性表面波周回路12a,12b,12cを周回した3つの弾性表面波から相互に同じ周回数で第1乃至第3の弾性表面波素子10A,10B,10Cの第1乃至第3の弾性表面波・励起/検知手段14a,14b,14cにより発せられた3つの受信信号の夫々から夫々の受信信号に対応する弾性表面波の所定の特性(弾性表面波の所定の周回毎の信号強度の変化及び所定の周回毎の位相の変化及び所定の周回毎の周回速度の変化の少なくともいずれか1つ)を相互に異なるタイミングで測定する測定手段78を構成している。
【0088】
図5及び図6を参照しながら前述したこの発明の第2実施形態に従った弾性表面波測定装置では、第1乃至第3の弾性表面波素子10A,10B,10C上に設けられた第1乃至第3の弾性表面波周回路12a,12b,12cを周回した3つの弾性表面波から相互に同じ周回数で第1乃至第3の弾性表面波素子10A,10B,10Cの第1乃至第3の弾性表面波・励起/検知手段14a,14b,14cが発した3つの受信信号は、第1及び第2遅延器64a,64bと組み合わされた信号解析手段66が、相互に異なるタイミングで上記3つの弾性表面波の所定の特性(弾性表面波が対応する第1乃至第3の弾性表面波周回路12a、12b、12cを所定の周回をする為に必要な時間(即ち、周回速度)や、あるいは所定の周回毎の弾性表面波の強度や位相の少なくともいずれか1つ)の変化を測定することになるので、単一の増幅手段62やA/D変換手段63で対応できる。
【0089】
このことは、第1乃至第3の弾性表面波・励起/検知手段14a,14b,14cが検知した3つの弾性表面波から発する3つの受信信号から、測定手段としての信号解析手段66が測定する上記3つの弾性表面波の所定の特性(弾性表面波が対応する第1乃至第3の弾性表面波周回路12a,12b,12cを所定の周回をする為に必要な時間(即ち、周回速度)や、あるいは所定の周回毎の弾性表面波の強度や位相の少なくともいずれか1つ)の変化を従来に比べより簡単な構成で測定できると共により精密により精度良く測定することが出来ることを意味している。
【0090】
この実施形態では、第1の弾性表面波素子10Aの第1の弾性表面波周回路12aに設けられている第1の感応要素16aが水素に感応するので、第1の弾性表面波素子10Aの第1の弾性表面波周回路12aに対応している第1の弾性表面波・励起/検知手段14aが検知した弾性表面波から発する受信信号から、測定手段としての信号解析手段66が測定する上記弾性表面波の所定の特性(弾性表面波が対応する第1の弾性表面波周回路12aを所定の周回をする為に必要な時間(即ち、周回速度)や、あるいは所定の周回毎の弾性表面波の強度や位相の少なくともいずれか1つ)の変化は、第1の弾性表面波素子10Aの周囲の物質の1つである水素の状況の変化(水素ガス濃度の変化)を従来に比べより精密により精度良く測定することが可能になることを意味している。
【0091】
また、第2の弾性表面波素子10Bの第2の弾性表面波周回路12bに設けられている第2の感応要素16bがアンモニアに感応するので、第2の弾性表面波素子10Bの第2の弾性表面波周回路12bに対応している第2の弾性表面波・励起/検知手段14bが検知した弾性表面波から発する受信信号から、測定手段としての信号解析手段66が測定する上記弾性表面波の所定の特性(弾性表面波が対応する第2の弾性表面波周回路12bを所定の周回をする為に必要な時間(即ち、周回速度)や、あるいは所定の周回毎の弾性表面波の強度や位相の少なくともいずれか1つ)の変化は、第2の弾性表面波素子10Bの周囲の物質の1つであるアンモニアの状況の変化(アンモニアガス濃度の変化)を従来に比べより精密により精度良く測定することが可能になることを意味している。
【0092】
さらに、第3の弾性表面波素子10Cの第3弾性表面波周回路12cには第3の弾性表面波素子10Cの周囲の特定の物質に感応する感応要素16が設けられていないので、第3の弾性表面波周回路12cに対応している第3の弾性表面波・励起/検知手段14cが検知した弾性表面波から発する受信信号から、測定手段としての信号解析手段66が測定する上記弾性表面波の所定の特性(弾性表面波が対応する第3の弾性表面波周回路12cを所定の周回をする為に必要な時間(即ち、周回速度)や、あるいは所定の周回毎の弾性表面波の強度や位相の少なくともいずれか1つ)の変化は、第3の弾性表面波素子10Cの周囲の温度の変化を示すことになる。
【0093】
このようにして得ることが出来た第3の弾性表面波素子10Cの周囲の温度の変化による上記弾性表面波の所定の特性(弾性表面波が対応する第3の弾性表面波周回路12cを所定の周回をする為に必要な時間(即ち、周回速度)や、あるいは所定の周回毎の弾性表面波の強度や位相の少なくともいずれか1つ)の変化を基に、第1の弾性表面波周回路12aに対応している第1の弾性表面波・励起/検知手段14aが検知した弾性表面波から発する受信信号から測定手段としての信号解析手段66が測定する上記弾性表面波の所定の特性(弾性表面波が対応する第1の弾性表面波周回路12aを所定の周回をする為に必要な時間(即ち、周回速度)や、あるいは所定の周回毎の弾性表面波の強度や位相の少なくともいずれか1つ)の変化における第1の弾性表面波素子10Aの周囲の温度の変化の影響を較正することにより、第1の弾性表面波素子10Aの周囲の物質の1つである水素の状況の変化(水素ガス濃度の変化)を従来に比べさらにより精密にさらにより精度良く測定することが可能になる。
【0094】
また、このようにして得ることが出来た第3の弾性表面波素子10Cの周囲の温度の変化による上記弾性表面波の所定の特性(弾性表面波が対応する第3の弾性表面波周回路12cを所定の周回をする為に必要な時間(即ち、周回速度)や、あるいは所定の周回毎の弾性表面波の強度や位相の少なくともいずれか1つ)の変化を基に、第2の弾性表面波周回路12bに対応している第2の弾性表面波・励起/検知手段14bが検知した弾性表面波から発する受信信号から測定手段としての信号解析手段66が測定する上記弾性表面波の所定の特性(弾性表面波が対応する第2の弾性表面波周回路12bを所定の周回をする為に必要な時間(即ち、周回速度)や、あるいは所定の周回毎の弾性表面波の強度や位相の少なくともいずれか1つ)の変化における第2の弾性表面波素子10Bの周囲の温度の変化の影響を較正することにより、第2の弾性表面波素子10Bの周囲の物質の1つであるアンモニアの状況の変化(アンモニアガス濃度の変化)を従来に比べさらにより精密にさらにより精度良く測定することが可能になる。
【0095】
さらにこの実施形態においては、第1乃至第3の弾性表面波周回路12a,12b,12cを周回した3つの弾性表面波から相互に同じ所定の周回数で第1乃至第3の弾性表面波・励起/検知手段14a,14b,14cが発した3つの受信信号から、測定手段としての信号解析手段66が相互に異なるタイミングで測定する上記弾性表面波の所定の特性(弾性表面波が対応する第1乃至第3の弾性表面波周回路12a,12b,12cを所定の周回をする為に必要な時間(即ち、周回速度)や、あるいは所定の周回毎の弾性表面波の強度や位相の少なくともいずれか1つ)の変化が、加算・平均化・記憶装置68の図示されていない第1乃至第3の加算・平均化・記憶ユニットにおいて、所定の数の加算処理、加算後の所定の数の測定結果の合計の平均化処理、そして平均化処理後の測定結果の記憶処理がされるので、表示装置70に表示される測定結果はより精度が良くなる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の弾性表面波測定装置は、例えば匂いセンサーや多種類のガスを分析するガスセンサー、バイオセンサーとして使用可能である。
【符号の説明】
【0097】
10…弾性表面波素子、10A…第1の弾性表面波素子、10B…第2の弾性表面波素子、10C…第3の弾性表面波素子、11…基体、12…弾性表面波周回路、12a…第1の弾性表面波周回路、12b…第2の弾性表面波周回路、12c…第3の弾性表面波周回路、14…弾性表面波・励起/検知手段、14a…第1の弾性表面波・励起/検知手段、14b…第2の弾性表面波・励起/検知手段、14c…第3の弾性表面波・励起/検知手段、16,16a,16b…感応要素、
42…高周波バースト信号発生装置、K1…第1の切り替えスイッチ、K2…第2の切り替えスイッチ、K3…第3の切り替えスイッチ、C…切り替え要素、I…入力端子、O…出力端子、N…中立位置、44…増幅手段、45…A/D変換手段、46…信号解析手段(測定手段)、48…加算・平均化・記憶装置、50…表示装置、52…スイッチ制御手段、54…中央制御装置、56…高周波信号入力/受信信号取り出し手段、
60…高周波バースト信号発生装置、J1…第1の切り替えスイッチ、J2…第2の切り替えスイッチ、J3…第3の切り替えスイッチ、C…切り替え要素、I…入力端子、O…出力端子、62…増幅手段、63…A/D変換手段、64a…第1遅延器、64b…第2遅延器、66…信号解析手段、68…加算・平均化・記憶装置、70…表示装置、72…スイッチ制御手段、74…中央制御装置、76…高周波信号入力/受信信号取り出し手段、78…測定手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
球形状の一部により円環状に連続して延出しており、弾性表面波が励起され励起された弾性表面波が上記延出している方向に周回可能な弾性表面波周回路を単一あるいは複数有した表面を含む複数の基体と;
複数の基体の夫々の表面の単一或いは複数の弾性表面波周回路の夫々に設けられ、高周波信号を基に弾性表面波を励起し、励起した弾性表面波を対応する弾性表面波周回路に沿い周回させるとともに周回した弾性表面波を検知して受信信号を発する複数の弾性表面波・励起/検知手段と;
複数の弾性表面波・励起/検知手段に対し同時に同位相で高周波信号を入力させるとともに、複数の基体の弾性表面波周回路を周回した複数の弾性表面波から複数の弾性表面波・励起/検知手段により発せられた複数の受信信号を取り出す、高周波信号入力/受信信号取り出し手段と;そして、
上記複数の受信信号の夫々から夫々の受信信号に対応する弾性表面波の所定の特性を互いに異なる時刻で測定する測定手段と;
を備えたことを特徴とする弾性表面波測定装置。
【請求項2】
前記複数の受信信号の夫々は互いに異なる時刻で単一のアナログデジタル変換手段によってデジタルデータ化され、デジタルデータ化された後の前記複数の受信信号の夫々における弾性表面波の夫々の所定の特性が前記測定手段により互いに異なる時刻で測定されることを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波測定装置。
【請求項3】
前記高周波信号入力/受信信号取り出し手段が、各基体の周回経路を周回する弾性表面波の励起する信号について、各基体で互いに異なる周回を行った受信信号を互いに異なる時刻で切り出すことを特徴とする請求項1又は2に記載の弾性表面波測定装置。
【請求項4】
前記測定手段が、前記複数の受信信号の夫々に対して異なる位相遅延を与える事によって互いに異なる時刻で夫々の受信信号に対応する弾性表面波の所定の特性を測定する、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の弾性表面波測定装置。
【請求項5】
前記弾性表面波・励起/検知手段がすだれ状電極を含む、ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の弾性表面波測定装置。
【請求項6】
前記複数の弾性表面波周回路の少なくとも1つに設けられ、物質の量や種類に応じた感応をし、物質の量や種類に対する感応の度合いに応じて対応している弾性表面波周回路を周回する弾性表面波に所定の影響を与える感応要素をさらに備えている、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の弾性表面波測定装置。
【請求項7】
前記感応要素が感応する前記所定の物質は少なくとも1種類の所定のガスである、ことを特徴とする請求項6に記載の弾性表面波測定装置。
【請求項8】
前記測定手段が測定する弾性表面波の所定の特性は弾性表面波の位相である、ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の弾性表面波測定装置。
【請求項9】
前記測定手段が測定する弾性表面波の所定の特性は弾性表面波の強度である、ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の弾性表面波測定装置。
【請求項10】
前記測定手段が測定する弾性表面波の所定の特性は弾性表面波の位相及び強度の両方である、ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の弾性表面波測定装置。
【請求項11】
前記測定手段が測定する弾性表面波の所定の特性は、弾性表面波周回路を周回するために必要な時間或いは周回速度である、ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の弾性表面波測定装置。
【請求項12】
前記複数の弾性表面波・励起/検知手段の全部に対する前記高周波信号の入力に基づき前記複数の弾性表面波・励起/受信手段の夫々から発せられる所定の回数の前記受信信号又は前記所定の回数の前記受信信号に対応する前記所定の回数の前記弾性表面波の前記所定の特性を平均化する平均化手段を備えている、
ことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の弾性表面波測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−169650(P2010−169650A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−97038(P2009−97038)
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】