説明

形鋼材カッタ

【課題】 構造が簡単で軽量となり切断作業や持ち運び等の取り扱いが容易なうえ、小さなハンドル操作力で切断ができる安価な形鋼材カッタを目的とするものである。
【解決手段】 台フレーム3の一端に立設される刃取付板2に軸ピン4と係止ピン6とを設け、該軸ピン4に操作ハンドル51付の可動刃5を軸支させるとともに、該可動刃5と対を成す固定刃8に刃取付板2の係止ピン6と軸ピン4とに係脱できる係止ピン懸け止め用切欠82と軸ピン懸け止め用切欠83とを形成し、前記刃取付板2にワンタッチで係止させることにより、固定刃8の係止ピン懸け止め用切欠部82と軸ピン懸け止め用切欠部83とを軸ピン4と係止ピン6とに係止させるだけで、固定刃8はワンタッチで刃取付板2に装着でき、損傷した固定刃8や形鋼材のサイズに合せた固定刃8への交換作業は極めて簡単で切断作業を滞らせることなく円滑行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電線保護モールやカーテンレール等の形鋼材を切断する形鋼材カッタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電線保護モールやカーテンレール等の形鋼材を切断する形鋼材カッタとして、ダイス部を固定金具により側壁間に挟持するとともに、リンクを介してハンドルの操作力を増圧用のシリンダに伝えて前記ダイス部の切断歯をスライドさせてレールを切断するものがある(例えば、特許文献1参照)。また、ダイス部を固定金具により側壁間に挟持するとともに、第1リンクと第2リンクを介してハンドルの操作力をダイス部に伝えてダイス部の切断歯をスライドさせてレールを切断するものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
しかし、リンクとシリンダとを組み合わせたり、二つのリンクを組み合わせたりするため構造が複雑になって重くなり、切断作業や持ち運び等の取り扱いが厄介になるうえにコスト高となる問題がある。
【特許文献1】特開平10―235516号公報
【特許文献2】特開平11―129114号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は構造が簡単で軽量となり切断作業や持ち運び等の取り扱いが容易なうえ、小さなハンドル操作力で切断ができる安価な形鋼材カッタを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の形鋼材カッタは、台フレームの一端に立設される刃取付板に軸ピンと係止ピンとを設け、該軸ピンに操作ハンドル付の可動刃を軸支させるとともに、該可動刃と対を成す固定刃に刃取付板の係止ピンと軸ピンとに係脱できる係止ピン懸け止め用切欠と軸ピン懸け止め用切欠とを形成し、前記刃取付板にワンタッチで係止させたことを特徴とするものである。
【0006】
なお、係止ピン懸け止め用切欠部を斜め下向きとし軸ピン懸け止め用切欠部を横向きとしたり、形鋼材の略中央部を最初に切り込む尖り先刃部を可動刃に形成したり、固定刃に形鋼材の切断断面形状と略等しい凹刃部を形成したり、刃取付板に形鋼材介入用の凹段部を形成したり、台フレームに交換用の固定刃を取り付ける装着機構を設けたりしてもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、台フレームの一端に立設される刃取付板に軸ピンと係止ピンとを設け、該軸ピンに操作ハンドル付の可動刃を軸支させるとともに、該可動刃と対を成す固定刃に刃取付板の係止ピンと軸ピンとに係脱できる係止ピン懸け止め用切欠と軸ピン懸け止め用切欠とを形成し、前記刃取付板にワンタッチで係止させたものとしたから、固定刃の係止ピン懸け止め用切欠部と軸ピン懸け止め用切欠部とを軸ピンと係止ピンとに係止させるだけで、固定刃はワンタッチで刃取付板に装着でき、損傷した固定刃や形鋼材のサイズに合せた固定刃への交換作業は極めて簡単なうえ瞬時に交換できるので、切断作業を滞らせることがなく、効率のよい切断作業を行うことができる。しかも、構造が簡単で部品数も少ないので軽量且つ安価なものとすることができる。
【0008】
また、請求項2のように、係止ピン懸け止め用切欠部を斜め下向きとし軸ピン懸け止め用切欠部を横向きとすることにより、固定刃を斜めに差込んで軸ピン懸け止め用切欠部を軸ピンに係止させたうえ、軸ピンを中心にして固定刃を時計回り方向に枢動させれば、係止ピン懸け止め用切欠部に係止ピンは自動的に係止されるので、軸ピンと係止ピンとを軸ピン懸け止め用切欠部と係止ピン懸け止め用切欠部とに同時に係止するより位置合せがより簡便なものとなる。
【0009】
請求項3のように、形鋼材の略中央部を最初に切り込む尖り先刃部を可動刃に形成したことにより、切断は一点から外方に向かって順次行われていくから、形鋼材全面を切り込むのと比較して小さな切断力でよく、複数のリンクを組み合わせたり、シリンダを組み込んだりする必要がないので、構造が簡単で軽量なものとなるうえに安価なものとすることができる。
【0010】
請求項4のように、固定刃に形鋼材の切断断面形状と略等しい凹刃部を形成したから、
切断の際、形鋼材を押圧する可動刃の切断圧は凹刃部により確実に受けるので、形鋼材を切断圧で変形させることなく切断を行うことができるうえに、形鋼材は凹刃部により受けられて切断圧で逃げることがないので円滑な切断ができるうえに、切断面も後加工の必要性がない滑らかさとなる。
【0011】
請求項5のように、刃取付板に形鋼材介入用の凹段部を形成したことにより、固定刃の凹刃部に配置される形鋼材は刃取付板内に配置されるので、切断位置を低くできるので切断操作が安定するうえに、形鋼材カッタの全高を低くすることができる。
【0012】
請求項6のように、台フレームに交換用の固定刃を取り付ける装着機構を設けたこことにより、形鋼材カッタに固定刃は常時付帯されるので、固定刃を紛失することがないので、交換作業を円滑に行えるものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明の好ましい実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1中、1は形鋼材カッタであり、該形鋼材カッタ1は刃取付板2を一側に立設させた台フレーム3と、前記刃取付板2の前方に配設された軸ピン4をもって枢着される操作ハンドル51付の可動刃5と、刃取付板2に設けられた前記軸ピン4と刃取付板2の後方に配設された係止ピン6とにワンタッチで係脱できる固定刃8とからなるものである。
【0014】
前記刃取付板2は断面略L形とするとともに中央部に凹段部20aを形成した側板20、20を固定刃8を嵌合できる間隔下に並設したものである。また、側板20、20には可動刃5を軸支するとともに固定刃8を係止する軸ピン4と係止ピン6とが張架されている。
【0015】
可動刃5は尖り先刃部50を有するもので、可動刃5の基部には可動刃5を枢動させる操作ハンドル51がボルト止めされている。51aは滑り止め溝が形成される操作ハンドル51のグリップである。
【0016】
また、固定刃8は二枚の側刃80、80を可動刃5の刃厚分の間隙80aを持たせて並設したものであり、上面中央部に凹刃部81が形成され 前部に刃取付板2の前方に設けられる軸ピン4と係脱できる横向きの軸ピン懸け止め用切欠部82を形成するとともに、後部に刃取付板2の後方に設けられる係止ピン6と係脱できる斜め下向きの係止ピン懸け止め用切欠部83を形成したものであり、固定刃8の前部を下向きに傾斜させて、横向きの軸ピン懸け止め用切欠部82の開口を斜め下向きとして軸ピン4に差し込んだうえ、軸ピンを4を中心にして固定刃8を時計回り方向に枢動回転させれば、斜め下向きの係止ピン懸け止め用切欠部83は係止ピン6に差し込まれ装着をワンタッチで完了させることができるが、軸ピン懸け止め用切欠部82と係止ピン懸け止め用切欠部83とを下向きに形成し、固定刃8を水平にして下降させ軸ピン懸け止め用切欠部82と係止ピン懸け止め用切欠部83とを軸ピン4と係止ピン6とに係止させるものとしてもよいことは言うまでもない。
【0017】
11は予備の固定刃8を台フレーム3に装着するための装着機構であり、該装着機構11は図5に拡大して示されるように、固定刃8の間隙80aに介入される環状板11aと、固定刃8の上側面を押さえる座金11bと、該環状板11aと座金11bの中心孔を挿通させて台フレーム3の雌ねじ部に螺挿される蝶ねじ11cとからなるもで、実施例においては一つの装着機構11の左右に二つの固定刃8を装着できるものとしているが、一つの装着機構11により一つの固定刃8を固着するものとしてもよく、また、台フレーム3の側面に固定刃8を装着するものとしてもよいことはいうまでもない。
【0018】
12は操作ハンドル51の開きを止める止め輪であり、該止め輪12を操作ハンドル51に掛け止めることにより、操作ハンドル51を把持して形鋼材カッタ1を容易に持ち運びできるものとなる。13は可動刃5の最大開口角を規制するストッパピンであり、該ストッパピン13により操作ハンドル51が必要以上に前方に伏倒されることを防止して、操作ハンドル51が常に作業者の手の届く範囲に配置されるようにしている。14、14は側刃80、80を可動刃5の刃厚に合わせて並設させるスリーブ付の連結具、15は固定刃8の前部に嵌着されるスリーブ付のスプリングピンであり、固定刃8の間隙80aを維持させるものである。16は側刃80、80の対向内壁面中央下部に形成される略M形の浅い凹段部であり、該凹段部16により可動刃5の刃厚で切り落とされる切断片が固定刃8の間隙内から速やかに排出されるようにしている。また、17は固定刃8の下端縁と台フレーム3上面間に形成される空間であり、該空間17を通じて切断片が外部に排出されるようにしている。18は刃取付板2の一方の側板20に取り付けられるプランジャであり、該プランジャ18は可動刃5と固定刃8の摩擦力や切粉等が可動刃5と固定刃8間に噛み込むことにより、操作ハンドル51を引き上げて可動刃5を開放枢動する際、固定刃8が可動刃5と共回り枢動することがないようにするものである。
【0019】
このような形鋼材カッタ1により形鋼材Cを切断する際には、形鋼材Cの切断断面幅と同じ幅の凹刃部81を有する固定刃8を刃取付板2に装着する必要があるため、刃取付板2に形鋼材Cのサイズに適合する固定刃8が取り付けられていなければ、装着機構11の蝶ねじ11cを緩めて、台フレーム3に装着されている所望の固定刃8を取り外して刃取付板2に取り付けられている固定刃8と交換する。このとき取り外した固定刃8は装着機構11により台フレーム3に装着しておく。
【0020】
次に、可動刃5がストッパピン13に当接するまで操作ハンドル51を反時計回り方向に枢動させて引き起こし、固定刃8内に嵌合されている可動刃5を図8、9に示される状態とする。このようにして固定刃8内から可動刃5が抜き出されたなら、固定刃8の後部を把持して軸ピン4を中心にして回動させ斜め下向きの係止ピン懸け止め用切欠部82と係止ピン6との係止を解いたうえ、固定刃8を斜め後方に引き出せば、固定刃8の横向きの軸ピン懸け止め用切欠部83と軸ピン4との係止は解かれることとなり、固定刃8は刃取付板2から取り外されることとなる。
【0021】
次いで、装着機構11から取り外しておいた、固定刃8の前部を斜め下向きにした状態にして差し込めば横向きの軸ピン懸け止め用切欠部82は斜め下向きとなるので軸ピン4に円滑に係止されることとなる。そして、軸ピン4に係止された横向きの軸ピン懸け止め用切欠部82を中心にして固定刃8の後部を降ろせば(時計回り方向)固定刃8の係止ピン懸け止め用切欠部83は係止ピン6に係止されることとなり、固定刃8はワンタッチで刃取付板2に装着されることとなる。
【0022】
このようにして所要の固定刃8が刃取付板2に取り付けられたら、刃取付板2の凹段部20aを介して固定刃8の凹刃部81内に形鋼材Cの切断部位を配置嵌合させる。次いで、操作ハンドル51を図8、9に示されるように時計回り方向に枢動させれば、可動刃5の尖り先刃部50が被切断形鋼材の中央部付近へ刺し込まれて切り込みを開始することとなる。
【0023】
この切り込みは形鋼材Cの中央部か周辺に順次移行してゆく切断のため大きな切断圧力を加えなくとも行われることとなる。しかも、形鋼材Cの外周面は固定刃8の凹刃部81により受けられているので、可動刃5による押圧力が加えられても形鋼材は変形することがなく切断され、滑らかな切断面となるので後加工を必要としない。そして、操作ハンドル51が水平になった時点で可動刃5は固定刃8の凹刃部81内に入り込んで形鋼材Cの切断を完了することとなる。この切断により可動刃5の厚み分の切断片が発生するが、この切断片は固定刃8の側刃80の対向内壁面中央下部に形成される略M形の浅い凹段部16を介して固定刃8と台フレーム3との空間17に排出されることとなるので、切断片が固定刃8に噛み込んで次の切断に支障を生じることはない。
【0024】
また、異なるサイズの形鋼材Cを切断する場合には、前記と同様刃取付板2に装着されている固定刃8を台フレーム3に装着されている所望の固定刃8と交換して前記と同様の操作をすればサイズの異なる形鋼材の切断を直ちに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の好ましい実施の形態を示す斜視図である。
【図2】同じく正面図である。
【図3】同じく側面図である。
【図4】同じく一部切欠平面図である。
【図5】固定刃を装着する装着機構を拡大して示す断面図である。
【図6】本発明の好ましい実施の形態に用いられる固定刃を示す斜視図である。
【図7】同じく断面図である。
【図8】形鋼材の切断状態を示す一部切欠正面図である。
【図9】サイズの異なる形鋼材の切断状態を示す一部切欠正面図である。
【符号の説明】
【0026】
2 刃取付板
3 台フレーム
4 軸ピン
5 可動刃
6 係止ピン
8 固定刃
11 装着機構
20a 凹段部
50 尖り先部
51 操作ハンドル
81 凹刃部
82 係止ピン懸け止め用切欠部
83 軸ピン懸け止め用切欠部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
台フレームの一端に立設される刃取付板に軸ピンと係止ピンとを設け、該軸ピンに操作ハンドル付の可動刃を軸支させるとともに、該可動刃と対を成す固定刃に刃取付板の係止ピンと軸ピンとに係脱できる係止ピン懸け止め用切欠と軸ピン懸け止め用切欠とを形成し、前記刃取付板にワンタッチで係止させたことを特徴とする形鋼材カッタ。
【請求項2】
係止ピン懸け止め用切欠を斜め下向きとし軸ピン懸け止め用切欠部を横向きに形成したことを特徴とする請求項1に記載の形鋼材カッタ。
【請求項3】
形鋼材の略中央部を最初に切り込む尖り先刃部を可動刃に形成したことを特徴する請求項1または2に記載の形鋼材カッタ。
【請求項4】
固定刃に形鋼材の切断断面形状と略等しい凹刃部を形成したことを特徴とする請求項3に記載の形鋼材カッタ。
【請求項5】
刃取付板に形鋼材介入用の凹段部を形成したことを特徴とする請求項1から34記載の形鋼材カッタ。
【請求項6】
台フレームに交換用の固定刃を取り付ける装着機構を設けたことを特徴とする請求項1から5に記載の形鋼材カッタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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