説明

後処理装置、画像形成装置および画像形成システム

【課題】複数箇所綴じ処理が可能な後処理装置において、良好な綴じ位置精度を得る。
【解決手段】シート搬送方向のシートの整合を行う後端基準フェンス51a,51bと、シート幅方向Yのシートの整合を行う規制位置と、該規制位置から離間した非規制位置との間で移動可能なジョガーフェンス53a,53bと、ジョガーフェンス53a,53bを往復移動させるジョガーフェンス移動機構と、後端基準フェンス51およびジョガーフェンス53により整合されたシート束PAの複数箇所に綴じ処理を行うことが可能なスティプラS1とを備え、スティプラS1によりシート束PAの複数箇所に綴じ処理を行う際には、一箇所目の綴じ動作後、ジョガーフェンス移動機構によって、ジョガーフェンス53a,53bのシート幅方向Yの間隔を規制位置よりも開き、その後再び、シート束PAを規制位置の間隔となるまで閉じるように移動させた後、二箇所目綴じ動作を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後処理装置、画像形成装置および画像形成システムに関し、さらに詳しくは、搬送されてくるシートを仕分け、スタック、綴じ、折り、穴明けなどの後処理を行う後処理装置、この後処理装置を一体または別体に備えた画像形成装置およびこの画像形成装置を有する画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、画像形成装置から排出されたシートを綴じ処理用のスティプルトレイ(積載手段)に積載し、スティプルトレイ上のシートをシート搬送方向に揃える整合手段(後端部整合手段)と、スティプルトレイ上のシートの側端部をシート搬送方向と直交するシート幅方向に揃える整合手段(側端部整合手段)とにより、シートの整合を行ってからシート束の綴じ処理を行うシート処理装置(後処理装置)が開発されている。このようなシート束の複数箇所に綴じ処理を行うために、一箇所目の綴じ動作の後に、スティプラ(綴じ手段)を二箇所目の綴じ位置まで移動させて綴じ動作を行う技術が既に知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、シート束のシート端部に沿った位置をスティプラが移動して二箇所綴じ処理した場合、一箇所目の綴じ位置と二箇所目の綴じ位置との間で生じるシートの撓みを解除することを目的として、一箇所目の綴じ動作の後、スティプラの二箇所目の綴じ位置への移動中に、幅方向の整合を行う前及び奥整合板の間隔を広げ、二箇所目綴じ時は、一箇所目綴じ時より前及び奥整合板の間隔を広げたまま綴じ処理を行う技術が開示されている。以下、前及び奥整合板等のシートの幅方向の整合を行う整合部材・側端部整合手段をジョガー(ジョガーフェンス)で代表して説明する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1を含む従来技術では、シートの幅方向を規制しながらジョガーを閉じたまま一箇所目の綴じ処理を行うが、ここでスティプラ(綴じ手段)の振動によりシート束が動いてしまい、シート束が傾く可能性がある。そこで、ジョガーを開く(特許文献1)ことで、このシート束の傾きは解消される。
【0005】
しかしながら、特許文献1では、二箇所目綴じ時もジョガーを開いたままのため、シートの位置(主にシート幅方向)が安定しないため、二箇所目の綴じ位置が安定しない。そのため、良好な綴じ精度を得ることが困難となる問題があった。
【0006】
特に多数枚の綴じ処理を行うことが可能なスティプラのクリンチ動作時には、非常に大きな荷重が加えられる。その際のクリンチ時の衝撃により、スティプラ自身および機械全体が振動することとなる。
クリンチ状態(シート束PAを噛んだ状態)でスティプラが振動すると、スティプラの動きに合わせてシート束も振動する。その結果、図15に一例を示すようにシート束PAがシートの面方向に動いてしまうと、二箇所目の綴じ位置が浅くなるため、スティプラS1により狙いの綴じ位置に綴じ処理ができなくなり、綴じ位置精度(以下、単に「綴じ精度」ともいう)が安定しなくなってしまう。
【0007】
そこで、本発明は、上述した事情に鑑みて上記課題を解決すべくなされたものであり、複数箇所綴じ処理が可能な後処理装置において、良好な綴じ位置精度を得ることを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するとともに上述した目的を達成するために、本発明では、以下のような特徴ある手段・発明特定事項(以下、「構成」という)を採っている。
本発明は、搬送されてくるシートを積載する積載手段と、前記積載手段に積載されるシートにおけるシート搬送方向の後端部を突き当てて前記シート搬送方向のシートの整合を行う後端部整合手段と、前記積載手段に積載されるシートを前記シート搬送方向と直交する幅方向に規制する前記幅方向の規制位置と、該規制位置から離間した非規制位置との間で移動可能な側端部整合手段と、前記側端部整合手段を移動させる移動手段と、前記後端部整合手段および前記側端部整合手段により整合されたシート束の複数箇所に綴じ処理を行うことが可能な綴じ手段と、を備えた後処理装置において、前記綴じ手段によりシート束の複数箇所に綴じ処理を行う際には、一箇所目の綴じ動作後、前記移動手段によって、前記側端部整合手段の前記幅方向の間隔を前記規制位置よりも開き、その後再び、シート束を前記規制位置の間隔となるまで閉じるように移動させた後、二箇所目綴じ動作を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、上記構成により、上記課題を解決して新規な後処理装置、画像形成装置および画像形成システムを実現し提供することができる。すなわち、本発明によれば、上記構成により、良好な綴じ位置精度を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態を示すシート後処理装置と画像形成装置とからなる画像形成システム全体の構成を示す構成図である。
【図2】スティプル処理を施す端面綴じ処理トレイの構成を示す平面図である。
【図3】端面綴じ処理トレイの構成を示す斜視図である。
【図4】シート束を押し上げる放出ベルトと放出爪の駆動機構の斜視図である。
【図5】ジョガーフェンスの移動機構を透視して示す模式的な平面図である。
【図6】ジョガーフェンスの移動機構を端面綴じ処理トレイの裏側から見た斜視図である。
【図7】端面綴じスティプラの構成を示す平面図である。
【図8】端面綴じ処理トレイにスタックされたシートの状態を示す平面図である。
【図9】押圧手段を説明する断面図である。
【図10】ジョガーフェンス、端面綴じスティプラ、後端基準フェンス等の位置関係を示す斜視図である。
【図11】シート搬送方向整合部材およびその移動機構の斜視図である。
【図12】シート処理装置と画像形成装置とからなる画像形成システムの制御構成を示すブロック図である。
【図13】(a)〜(d)は、従来の比較例における二箇所綴じ処理時の動作の概要を説明する斜視図である。
【図14】(a)〜(d)は、第1の実施形態における二箇所綴じ処理時の動作の概要を説明する平面図である。
【図15】一箇所目の綴じ処理時において、スティプラのクリンチ動作時の振動、衝撃によりシート束が強制的に動く状態を説明する平面図である。
【図16】第1の実施形態における複数箇所綴じ処理時の動作順序を示すフローチャートである。
【図17】第1の実施形態における二箇所綴じ処理時の動作において懸念されるシート撓みを説明する斜視図である。
【図18】(a)、(b)は、変形例1における二箇所綴じ処理時の動作の概要を説明する平面図である。
【図19】(a)、(b)は、変形例2における二箇所綴じ処理時の動作の概要を説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図を参照して実施例を含む本発明の実施の形態(以下、「実施形態」という)を説明する。各実施形態等に亘り、同一の機能および形状等を有する構成要素(部材や構成部品)等については、混同の虞がない限り同一符号を付すこととする。図および説明の簡明化を図るため、図に表されるべき構成要素であっても、その図において特別に説明する必要がない構成要素は適宜断わりなく省略することがある。
【0012】
(第1の実施形態)
図1を参照して、本発明の第1の実施形態(請求項1、2、5、7、8)として、画像形成装置PRに装着された後処理装置の一例としてのシート後処理装置PDの全体構成を説明する。図1は、本発明の第1の実施形態を示すシート後処理装置と画像形成装置とからなる画像形成システム全体の構成を示す構成図である。
画像形成装置PRとしては、複写機、プリンタ、インクジェット記録装置、孔版印刷機を含む印刷機等およびこれら少なくとも2つの機能を備えた複合機が挙げられるが、本願発明の主な構成の特徴が後処理装置であるシート後処理装置PD側にあるため、画像形成装置PR側の詳細な構成および動作を省略する。画像形成装置PRの一例としては、特開2011−057313号公報の図6等に示されている、シートに画像を形成する画像形成手段等を備えた複写機(1)が挙げられる。
本実施形態において、シート状記録媒体(以下、単に「シート」ともいう)としては、使用可能な薄紙から厚紙、用紙、はがき、封筒、あるいはOHPシート等まで画像形成可能な全ての記録媒体・シートを含むものである。
【0013】
図1において、PRFは画像形成装置PRの装置本体を、PDFはシート後処理装置PDの装置本体を、500は画像形成装置PRに配置して設けられた(以下、「配設」という)シート排出手段としての排紙ローラを、それぞれ示す。
シート後処理装置PDは、画像形成装置PRの側部に取り付け・装着されており、画像形成装置PRの排紙ローラ500より排出された図示しない画像形成済みのシート(以下、単に「シート」ともいう)はシート後処理装置PDに導かれる。シート後処理装置PDが画像形成装置PRの装置本体PRFのシート排出口に装着される場合には、装置本体PRFの外側に配置される図示しない排紙トレイが取り外されることにより、シート後処理装置PDの装着・連結に支障が出ないようになっている。
【0014】
シート後処理装置PDは、二点鎖線で囲んで示す領域内に配設された搬送路A、搬送路B、搬送路C、搬送路Dおよび搬送路Hを備え、前記図示しないシートは、1枚のシートに後処理を施す後処理手段(この実施形態例では穿孔手段としてのパンチユニット100)を有する搬送路Aへ先ず搬送される。
搬送路Bは、搬送路Aを通り、上トレイ201へシートを導く搬送路であり、搬送路Cは、搬送路Aを通り、シフトトレイ202へシート導く搬送路Cである。搬送路Dは、搬送路Aを通り、整合およびスティプル綴じ等を行う端面綴じ処理トレイF(以下、単に「処理トレイF」ともいう)にシートを導く搬送路である。搬送路Aから搬送路B,C,Dへ導かれるシートは、それぞれ第1の分岐爪15および第2の分岐爪16によって振り分けられるように構成されている。
【0015】
このシート後処理装置PDでは、シートに対して、穴明け(パンチユニット100)、シート揃え+端部綴じ(ジョガーフェンス53、端面綴じスティプラS1)、シート揃え+中綴じ(中綴じ上ジョガーフェンス250a、中綴じ下ジョガーフェンス250b、中綴じスティプラS2)、シートの仕分け(シフトトレイ202)、中折り(折りプレート74、折りローラ81)などの各処理を行うことができる。そのため、搬送路Aと、これに続く搬送路B、搬送路Cおよび搬送路Dの何れか一つの搬送路が選択される。また、搬送路Dは、シート収容部Eを含んでいる。搬送路Dの下流側には、端面綴じ処理部としての端面綴じ綴じ処理トレイF、中綴じ中折り処理部としての中綴じ中折り処理トレイG、排紙搬送路Hが設けられている。
【0016】
搬送路B、搬送路Cおよび搬送路Dの上流で各々に対し共通な搬送路Aには、画像形成装置PRから受け入れるシートを検出する入口センサ301、その下流に入口ローラ1、パンチユニット100、パンチかすホッパ101、搬送ローラ2、第1の分岐爪15、第2の分岐爪16が順次配置されている。第1および第2の分岐爪15,16は、図示しないばねにより図1の状態に保持されており(初期状態)、図示しない第1および第2のソレノイドをオン(以下、「ON」と略記する)することにより、分岐爪15、16をそれぞれ駆動し、第1および第2のソレノイドのオン・オフ(以下、「ON/OFF」と略記する)を選択することにより、第1および第2の分岐爪15,16の分岐方向の組み合わせを変えることによって、搬送路B、搬送路C、搬送路Dへシートを振り分ける。
搬送路Bへシートを導く場合は図1の状態、すなわち、第1のソレノイドをオフ(OFF)(第1の分岐爪15は下向きが初期状態)状態のままとする。これにより、シートは搬送ローラ3から排紙ローラ4を経て上トレイ201に排出される。
【0017】
搬送路Cへシートを導く場合は、図1の状態から第1および第2のソレノイドをON(第2の分岐爪16は上向きが初期状態)とすることにより、分岐爪15は上方に、分岐爪16は下方にそれぞれ支軸を中心として揺動・変位した状態となる。これにより、シートは搬送ローラ5および排紙ローラ対6(6a,6b)を経てシフトトレイ202側に搬送される。この場合には、シートの仕分けが行われる。シート後処理装置PDの最下流部に位置するシフトトレイ排紙部で、シートの仕分けが行われる。このシートの仕分けは、シフト排紙ローラ対6(6a,6b)と、戻しコロ13と、紙面検知センサ330と、シフトトレイ202と、シフトトレイ202をシート搬送方向と直交する方向に往復動させる図示しないシフト機構と、シフトトレイ202を昇降させるシフトトレイ昇降機構とにより行われる。
【0018】
搬送路Dへシートを導く場合は、第1の分岐爪15を駆動する第1のソレノイドをON、第2の分岐爪を駆動する第2のソレノイドをOFFとすることにより、分岐爪15は時計回り上方に、分岐爪16は反時計回り下方に揺動した状態となり、シートは搬送ローラ2から搬送ローラ7を経て搬送路D側に導かれる。搬送路Dに導かれたシートは、端面綴じ綴じ処理部Fへ導かれ、この端面綴じ綴じ処理部Fで整合およびスティプル等を施されたシートは、ガイド部材44により、シフトトレイ202へ導く搬送路C、折り等を施す中綴じ・中折り処理トレイG(以下、単に「中綴じ処理トレイ」ともいう)へ振り分けられる。シフトトレイ202に導かれる場合には、シート束は排紙ローラ対6からシフトトレイ202に排紙される。また、中綴じ処理トレイG側に導かれたシート束は、中綴じ処理トレイGで折りおよび綴じを施され、排紙搬送路Hを通り排紙ローラ83から下トレイ203へ排紙される。
【0019】
他方、搬送路D内には分岐爪17が配置され、図示しない低荷重ばねにより図の状態に保持されており、搬送ローラ7によって搬送されるシートの後端が前記分岐爪17を通過した後、搬送ローラ9,10およびスティプル排紙ローラ11のうちの少なくとも搬送ローラ9を逆転させ、シートをターンガイド8に沿って逆行させることができる。これにより、シート後端からシートをシート収容部Eへ導いて滞留(プレスタック)させ、次シートと重ね合せて搬送することが可能なように構成されている。この動作を繰り返すことによって2枚以上のシートを重ね合せて搬送することも可能である。なお、符号304はシートをプレスタックさせる際の逆送タイミングを設定するためのプレスタックセンサである。
【0020】
搬送路Dに導かれ、シート揃えと端部綴じを行う場合、スティプル排紙ローラ11によって端面綴じ処理トレイFへ導かれたシートは、端面綴じ処理トレイFの後述する積載手段上に順次積載される。この場合、シート毎に叩きコロ12で縦方向(シート搬送方向)の整合が行われ、ジョガーフェンス53によって横方向(シート搬送方向と直交する幅方向、以下、「シート幅方向」ともいう)の整合が行われる。ジョブの切れ目、すなわち、シート束の最終紙から次のシート束先頭紙までの間で、図12に示すシート後処理装置PD側の制御装置350からのスティプル信号により端面綴じスティプラS1が駆動され、綴じ処理が行われる。綴じ処理が行われたシート束は、直ちに、放出爪52aが突き出すように設けられた放出ベルト52(図4参照)によりシフト排紙ローラ6へ送られ、受け取り位置にセットされているシフトトレイ202に排紙される。端面綴じ処理トレイFのさらに具体的な構成は、後述する。
【0021】
なお、図1において、符号110は押圧部材(後端押さえレバー)であり、シート幅方向Yに渡り3箇所に配置されており(図1では紙面手前側のみ示されている)、後端基準フェンス51に収容されたシート束の後端を押さえることができるように後端基準フェンス51の下端部に位置し、図1に示すように、端面綴じ処理トレイFに対してほぼ垂直な方向である矢印Y1,Y2方向に往復動する。
【0022】
図1において、符号302,303,304,305,310はそれぞれシート検知センサであり、設けられた位置におけるシートの通過の有無、もしくはシートの積載の有無を検知する。
また、図1において、処理トレイFの細部構成として符号35〜37,40,42などで示す構成部品(構成要素)は、特開2008−13341号公報の図6、図20、図21に記載されているものと同様のシート束偏向機構を構成するが、本発明の要部構成に余り関係ないため、その説明を省略する。同様に、中綴じ・中処理トレイG、排紙搬送路Hなどに記載されている構成部品(構成要素)に関して、本発明の要部構成に関係ないものは、適宜その説明を省略するが、細部構成およびその機能は上記特開2008−13341号公報の図6等に示されているものと同様である。
【0023】
図2〜図11を参照して、スティプル処理を施す処理トレイFの構成をさらに具体的に説明する。図2は、端面綴じ処理トレイの構成を示す平面図、図3は、端面綴じ処理トレイの構成を示す斜視図、図4は、シート束を押し上げる放出ベルトと放出爪の駆動機構の斜視図である。図5は、ジョガーフェンスの移動機構を透視して示す模式的な平面図、図6は、ジョガーフェンスの移動機構を端面綴じ処理トレイの裏側から見た斜視図、図7は、端面綴じスティプラの構成を示す平面図である。図8は、処理トレイFにスタックされたシートPの状態を示す平面図、図9は、押圧手段を説明する断面図、図10は、ジョガーフェンス、端面綴じスティプラ、後端基準フェンス等の位置関係を示す斜視図、図11は、シート搬送方向整合部材およびその移動機構の斜視図である。
【0024】
図2〜図11において、スティプル処理を施す処理トレイFには、搬送されてくるシートを積載する後述する積載手段と、前記積載手段に積載されるシートにおけるシート搬送方向Xの後端部を突き当ててシート搬送方向Xのシートの整合を行う後端部整合手段としての後端基準フェンス51と、前記積載手段に積載されるシートをシート幅方向Yに規制するシート幅方向Yの規制位置と、該規制位置から離間した非規制位置との間で移動可能な側端部整合手段としての一対のジョガーフェンス53a,53b(以下、総括的に「ジョガーフェンス53」ともいう)と、ジョガーフェンス53a,53bをシート幅方向Yに往復移動させる移動手段としての後述する移動機構と、後端基準フェンス51およびジョガーフェンス53により整合されたシート束の複数箇所に綴じ処理を行うことが可能な綴じ手段としての端面綴じスティプラS1と、一箇所目の綴じ処理と二箇所目の綴じ処理との間に、シート束のシート搬送方向の後端部を、後端基準フェンス51に突き当てる向きに移動可能なシート搬送方向整合手段としてのシート搬送方向整合部材57a,57bとが配設されている。
【0025】
前記側端部整合手段は、第1の整合部材としてのジョガーフェンス53a(またはジョガーフェンス53b)と、第2の整合部材としてのジョガーフェンス53b(またはジョガーフェンス53a)との二つから構成されている。本実施形態では、後述する図14に示すように、ジョガーフェンス53aおよびジョガーフェンス53bは、シート束における幅方向の中心(またはシート中心)に関して線対称的に移動しながら、互いの間隔を開き、その後、線対称的に規制位置となる間隔まで閉じるように動作する(請求項5)。
【0026】
積載手段は、狭義には図10に示すように、上記した放出ベルト52と、放出ベルト52の左右に配置された積載トレイ63a,63bとから主に構成され、以下、スティプルトレイ70という。積載トレイ63a,63bは、薄板状の部材で形成されていて、装置本体PDFに固着された図6に示すベース部材153〜155に固設されている。
また、積載手段は、広義には上述したように端面綴じ処理トレイFを指す。
【0027】
図3に示すように、スティプル排紙ローラ11により処理トレイFへ導かれたシートは、上記積載手段上に順次積載される。この場合、シートPごとに叩きコロ12で縦方向(シート搬送方向X)の整合が行われるとともに、一対のジョガーフェンス53a,53b(総括的に「ジョガーフェンス53」ともいう)にて横方向(シート搬送方向Xと直交するシート幅方向Y)の整合が行われる。ジョブの切れ目、すなわち、シート束の最終紙から次のシート束先頭紙までの間で、図12に示す制御装置350からのスティプル信号により端面綴じスティプラS1が駆動され、綴じ処理が行われる。図4に示すように、綴じ処理が行われたシート束PAは、直ちに放出爪52aを有する放出ベルト52によりシフト排紙ローラ6へ送られ、受取り位置にセットされているシフトトレイ202に排出される。
【0028】
図2および図4に示すように、放出ベルト52は、シート幅方向Yの整合中心に配置され、シート搬送方向Xの上流および下流において回転可能に設けられたプーリ62a,62b間に張力をもって巻き掛けられている。放出ベルト52は、駆動軸52bおよびプーリ52cを介して連結された放出ベルト駆動モータ157により駆動される。
図2に示すように、複数の放出ローラ56が放出ベルト52におけるシート幅方向Yの中心に関して線対称に配置されている。これらの放出ローラ56は、装置本体PDFに固設された左右一対の側板64a,64bに駆動軸を介して回転可能に支持・配置されており、放出ローラ56の周速は放出ベルト52の周速より速くなるように設定されている。
【0029】
放出爪52aは、図4に示すように、放出ベルト52に固着した状態で設置(以下、「固設」という)されている。放出爪52aのホームポジションは、放出ベルトホームポジション(以下、「HP」と略記する)センサ311により検知されるようになっている。この放出ベルトHPセンサ311は、放出ベルト52に固設された放出爪52aとの接触によりオン・オフする。図1に示すように、放出ベルト52の外周上には対向する位置に2つの放出爪52aが配置され、端面綴じ処理トレイFに収容されたシート束を交互に移動搬送する。
また、必要に応じて放出ベルト52を逆回転させるように構成し、これからシート束を移動するように待機している放出爪52aと対向側の放出爪52aの背面とで、端面綴じ処理トレイFに収容されたシート束の搬送方向先端を揃えるようにすることもできる。
【0030】
図3に示すように、叩きコロ12は、支点12aを中心に叩きソレノイド170に連結されている。叩きコロ12は、叩きソレノイド170の駆動によって振り子運動を与えられ、処理トレイFへ送り込まれたシートPに間欠的に作用してシートPを後端基準フェンス51に突き当てる。なお、叩きコロ12は、反時計回りに回転する。
【0031】
図5および図6に示すように、ジョガーフェンス53a,53bをシート幅方向Yに移動させる移動機構は、ジョガーフェンス53a,53bごとに独立して設けられている。すなわち、一方のジョガーフェンス53aは、タイミングベルト150aに固定され同タイミングベルト150aを介して、駆動手段としての正逆転可能なジョガーモータ158aに連結され、同ジョガーモータ158aによってシート幅方向Yに往復移動をすべく駆動される。同様に、他方のジョガーフェンス53bは、タイミングベルト150bに固定され同タイミングベルト150bを介して、駆動手段としての正逆転可能なジョガーモータ158bに連結され、同ジョガーモータ158bによってシート幅方向Yに往復移動をすべく駆動される。
【0032】
タイミングベルト150a,150bは、図6に詳しく示すように、各ジョガーモータ158a、158bの出力軸に固定された歯付きの駆動プーリと、トレイベース部材155に時計回りおよび反時計回りの両方向に回転可能(以下、「回動」ともいう)に支持された複数の歯付きのプーリに巻き掛けられているとともに、トレイベース部材155に回動可能に支持されたテンションプーリによって張力を付与されている。
【0033】
ジョガーフェンス53a,53bの所定の位置には、各ジョガーフェンス53a,53bのシート幅方向Yにおけるホームポジションを検知するジョガーフェンスHPセンサ54a,54bが配置されている。ジョガーフェンスHPセンサ54a,54bは、各ジョガーフェンス53a,53bから下部に突き出すように設けられた遮光板55a,55bと係わり合う(以下、「係合」という)ことでオン検知する遮光型のフォトセンサからなる。シート幅方向Yのジョガーフェンス53a,53bの位置は、前記各ホームポジションからの各ジョガーフェンス53a,53bの移動量により制御される。
【0034】
端面綴じスティプラS1は、図7に示すように、正逆転可能なスティプラ移動モータ159によりタイミングベルトを介して駆動され、シート端部の所定位置を綴じるためにシート幅方向Yに移動する。その移動範囲の一側端には、端面綴じスティプラS1のホームポジションを検出するスティプラ移動HPセンサ312が設けられている。シート幅方向Yの綴じ位置は、前記ホームポジションからの端面綴じスティプラS1移動量により制御される。
【0035】
図8は、処理トレイFにスタックされたシートPの状態を示している。端面綴じスティプラS1は図8の丸で囲んだ拡大図のようにスタックされたシートPを端面綴じスティプラS1の固定側に移動させながら綴じ処理を行う。シートPは、その後端部が後端基準フェンス51a、51bの2箇所に接触してスタックされる。
端面綴じスティプラS1は、図8の拡大図に示したように、一箇所だけの綴じ処理の場合等にはシートPの綴じ処理をすべきコーナ端部に所定の角度でスティプル針21で綴じることができるように、斜めに回転させる斜めモータ(図示せず)を備えた駆動機構によって所定の角度回転可能に構成されている。このような端面綴じスティプラS1の斜め綴じ機構としては、特開2008−13341号公報の図19に示されているものと同様の機構を採用している。
【0036】
図9を参照して、通常の押圧手段を説明する。押圧手段としての押圧部材110によりシート束PA(シート搬送方向後端側)を押し付け圧力を加え(以下、「押圧」という)、シート束PAの座屈等によるシート束PAの整合不良・それに伴う綴じ精度不良を防止している。押圧部材110は、次シートが積載される瞬間は図7の位置に待機しており、次シートが積載され終わると、図7の矢印Y1側に移動し、シート束PAを押圧する動作をする。
【0037】
端面綴じ処理トレイFに排出されたシートは、シート毎に叩きコロ12で縦方向(シート搬送方向)の整合が行われるが、端面綴じ処理トレイFに積載されたシート後端がカールしていたり、腰が弱かったりするとシート自身の重量によって後端が座屈し膨らむ傾向にある。さらに、その積載枚数が増えることによって、後端基準フェンス51内の次のシートが入る隙間が小さくなり、縦方向の揃えが悪くなる傾向にある。そこで、シート後端の膨らみを少なくしてシートが後端基準フェンス51に入りやすくするようにしたのが、シート後端を押さえる押圧機構であり、シート束PAを直接押さえるのが上記3箇所に配置された押圧部材110である。
【0038】
図10に、上述したジョガーフェンス53a,53b、端面綴じスティプラS1、後端基準フェンス51a,51b等の位置関係を示す。
【0039】
図11および図14を参照して、シート搬送方向整合部材およびその移動機構を説明する。図11に示すように、シート搬送方向整合部材57a,57bは、タイミングベルト58a、58bに嵌り合うことで固定(以下、「嵌合」ともいう)されている。シート方向整合部材57a,57bは、タイミングベルト58a、58b、駆動軸59a、プーリ59b,59cを介し、モータ60により駆動され、シート束を整合する動作を行う。
【0040】
シート搬送方向整合部材57a,57bは、シート搬送方向整合部材HPセンサ313により、そのホームポジションを検知するようになっており、シート搬送方向整合部材57a,57bとの接触によりON/OFFする。各タイミングベルト58a、58bの外周上には、対向する位置に2組のシート搬送方向整合部材57a,57bが備えられており、シート束毎に交互にそれぞれの整合部材57a,57bがシート搬送方向の整合処理を行うように構成されている。
【0041】
シート搬送方向整合部材57a,57bは、図14(b)に示すように、付勢手段としてのスプリング(圧縮ばね)61により弾性付勢されている。シート搬送方向整合部材57a,57bは、スプリング61の付勢力を介してシート束PAの先端部を叩くことにより、シート束PAの後端部を後端基準フェンス51a,51bに突き当てる際に適切な荷重でのシートの整合が可能となっている。
【0042】
図12を参照して、本実施形態に係る画像形成システム全体の制御構成を説明する。同図は、シート後処理装置PDと画像形成装置PRとからなる画像形成システムの制御構成を示すブロック図である。
図12に示すように、シート後処理装置PDの制御装置350は、制御手段としてのCPU101、I/Oインターフェイス102等を有するマイクロコンピュータを搭載した制御回路を備えている。CPU101には、画像形成装置PR側の制御装置のCPUあるいは操作部としての操作パネル105の各スイッチ等、および図示しない各センサからの信号が通信インターフェイス103を介して入力され、CPU101は入力された信号に基づいて所定の制御を実行する。なお、同図において、符号106は、画像形成装置PR側の制御装置と操作パネル105とを送受信可能に電気的に接続するケーブルを示す。
【0043】
さらに、CPU101は、ドライバ、モータドライバを介してソレノイドおよびモータを駆動制御し、インターフェイスから装置内のセンサ情報を取得する。また、CPU101は、制御対象やセンサに応じてI/Oインターフェイス102を介してモータドライバによってモータの駆動制御を行い、センサからセンサ情報を取得する。なお、前記制御は、図示しないROMに格納されたプログラムコードをCPU101が読み込んで図示しないRAMに展開し、当該RAMをワークエリアおよびデータバッファとして使用しながら前記プログラムコードで定義されたプログラムに基づいて実行される。
【0044】
後述する図16に示す本実施形態のスティプルジョブにおいて、CPU101により駆動制御される主なソレノイドおよびモータとしては、叩きSOL170、放出ベルト52を駆動する放出ベルト駆動モータ157、端面綴じスティプラS1(以下、単に「スティプラS1」ともいう)を移動させるスティプラ移動モータ159、端面綴じスティプラS1を斜めに回転させる斜めモータ(図示せず)、ジョガーフェンス53a,53bをシート幅方向に独立して移動させるジョガーモータ158a,158b、シート搬送方向整合部材57a,57bを移動させるモータ60等が挙げられる。
【0045】
その他、特開2008−13341号公報の段落「0097」に示されているものと同様のものを含む、シフトトレイ202用のトレイ昇降モータ、シフトトレイ202を移動するシフトモータ、叩きコロ12を駆動する叩きコロモータ、ガイド部材44を回動させる束分岐駆動モータ、シート束を搬送する搬送ローラ56を駆動する束搬送モータ、分岐爪15,16を駆動する第1、第2のソレノイド(図示せず)等の各ソレノイド、各搬送ローラを駆動する搬送モータ、各排紙ローラを駆動する排紙モータ、折りプレート74を移動させる折りプレート駆動モータ、折りローラ81を駆動する折りローラ駆動モータ等が挙げられる。
上記各モータとしては、図12に示した各DCモータまたは各ステッピングモータの何れのモータとすることが可能である。
【0046】
(比較例の二箇所綴じ処理時の動作)
まず、図13を参照して、従来の比較例における二箇所綴じ処理時の動作の概要を説明する。なお、比較例の構成は、本実施形態の構成と比較して、ジョガーフェンス53a,53bをシート幅方向に移動させる移動機構が、特開2008−13341号公報の段落「0097」、図11に示されているものと同様で、単一のジョガーモータで駆動される点、図11および図14(b)に示す本実施形態のようなシート搬送方向整合部材57a,57bおよびその移動機構を有していない点(但し、類似のシート搬送方向整合部材およびその移動機構は有する)が主に相違する。
【0047】
シートPがスティプルトレイ70にスタックされた後、図示しないシート搬送方向整合部材によってシートPの搬送方向先端側をシート後端方向側に押し込むとともに、叩きコロ12によってシートPの後端は後端基準フェンス51a,51bにより整合される。また、ジョガーフェンス53a,53bがシート両側端面に沿う位置へと移動することにより、ジョガーフェンス53a,53bは共に規制位置を占めることで、シートPはシート幅方向Yに整合される。
n部目の二箇所綴じ動作時は、図13(a)に示すように、シートの機械手前側(図の左側)をスティプラS1により一箇所目の綴じ処理を行い、その後、図13(a)に示す矢印方向にスティプラS1を移動させる。次いで、図13(b)に示すような所定の位置(機械奥側である図の右側)までスティプラS1を移動させた後、シート束PAに二箇所目の綴じ処理を行う。
【0048】
n+1部目の二箇所綴じ動作時には、n部目の二箇所目の綴じ処理を行った位置(機械奥側)で一箇所目の綴じ動作を行う。その後、図13(c)に示す矢印方向にスティプラS1を移動させる。次いで、図13(d)に示すような所定の位置(機械手前側)までスティプラS1を移動させた後、二箇所目の綴じ動作を行っていた。
【0049】
上述した比較例では、一箇所目の綴じ処理時において、シート束PAがジョガーフェンス53a,53bによってシート束PAの両側端面に沿うように規制されたままのクリンチ状態(シート束PAを噛んだ状態)でスティプラS1が振動すると、このスティプラS1の動きに合わせてシート束PAも振動する。しかしながら、ジョガーフェンス53a,53bを規制位置から広げることによりシート束PAの振動による動きを逃がしておらず、すなわち振動とジョガーフェンス53a,53bの規制により発生したシート束PAの傾きを、シート束PAを規制していたジョガーフェンス53a,53bを広げることにより、傾きを元に戻す(シート束PAの後端側を整合する)ことをしていないため、シート束PAの姿勢が傾いたままで二箇所目の綴じ処理が行われる。これにより、狙いの綴じ位置に綴じ処理ができなくなり、綴じ精度が安定しないものとなってしまう。そのため、良好な綴じ精度を得ることが困難であった。
【0050】
(本実施形態の複数箇所綴じ処理時の動作)
図14〜図16を参照して、本実施形態の複数箇所綴じ処理時の動作について説明する。図14は、本実施形態における複数箇所綴じ処理時の動作の概要を説明する平面図、図15は、一箇所目の綴じ処理時において、スティプラのクリンチ動作時の振動、衝撃によりシート束が強制的に動く状態を説明する平面図、図16は、本実施形態における複数箇所綴じの一例として二箇所綴じ処理時の動作順序を示すフローチャートである。同フローチャートにおいて、例えばジョガーフェンスのことを「ジョガー」と簡略化して記載している。
【0051】
まず、n部目の綴じ動作について説明する。図16のステップS1において、シート後処理装置PDのCPU101は、画像形成装置PRの制御装置から送られてくる通紙モード(本例ではスティプルモード)、シートサイズ等の情報・データを受け取り、以下、CPU101の制御指令下でのスティプルジョブ動作が実行される。すなわち、上述したようにシートPが処理トレイFにおけるスティプルトレイ70にスタックされた後、シート搬送方向整合部材57a,57bによってシートPの搬送方向先端側をシート後端方向側に押し込むとともに、叩きコロ12によってシートPの後端は後端基準フェンス51a,51bにより整合される。このように、シート搬送方向整合部材57a,57bおよび叩きコロ12によってスティプルトレイ70上のシートPは搬送方向に整合される。
また、各ジョガーフェンス53a,53bがシートPの両側端面に沿う位置へと移動することにより、ジョガーフェンス53a,53bは共に規制位置を占めることで、シートPはシート幅方向Yに整合される(ステップS2〜ステップ3)。
【0052】
そして、ステップS4において、最終シートがスティプルトレイ70内に排出・スタックされたか否かがチェックされる。最終シートがスティプルトレイ70に排出された場合(ステップS4でイエスの場合)、ステップS5に進んで、二箇所綴じを行うか否かがチェックされる。二箇所綴じを行う場合、ステップS6の一箇所目の綴じ動作へ進む。
【0053】
一方、最終シートがスティプルトレイ70内に排出されていない場合(ステップS4でノーの場合)には、ステップS2〜ステップS4までの動作が繰り返される。また、二箇所綴じを行わない場合(ステップS5でノーの場合)には、ステップS14に進んで、一箇所綴じ動作が実行される。一箇所綴じ動作終了後、ステップS12に進んで、一箇所綴じ処理されたシート束PAの放出動作が実行される。
【0054】
ステップS6の一箇所目の綴じ動作では、図14(a)の位置(機械手前側)にて、スティプラS1により一箇所目の綴じ処理を行う。このとき、スティプラS1のクリンチ動作時の振動、衝撃によりシート束PAは強制的に動いてしまうが、ジョガーフェンス53a,53bによりシート束PAの両側端面が規制されているため、シート束PAは強制的に動いた位置のままジョガーフェンス53a,53bにより規制され、傾いた姿勢となってしまう。
すなわち、図15に一例を示すように、クリンチ状態(シート束PAを噛んだ状態)でスティプラS1が振動すると、スティプラS1の動きに合わせてシート束PAも振動する。その結果、シート束PAが図中矢印で示すシートの面方向に動いてしまうと、二箇所目の綴じ位置が浅くなるため、狙いの綴じ位置に綴じ処理ができなくなり、綴じ精度が安定しなくなってしまう。この不具合は、ステップS7〜ステップS10までの本発明に特有の動作によって解消される。
【0055】
ステップS6の一箇所目の綴じ動作後、スティプラS1は、二箇所目の綴じ動作位置(図14(a)の矢印方向)に、ジョガーフェンス53a,53bは互いの間隔を規制位置よりも開く方向(図14(a)の矢印方向)、つまり非規制位置に移動する(図16のステップS7)。このときのジョガーフェンス53a,53bの開き量は、適切な値を実験等により求め決定することが好ましい。
この際、ジョガーフェンス53a,53bの間隔が開いたことにより、シート束PAの姿勢の傾きは元に戻り、シート後端側は後端基準フェンス51a,51bにより整合される。
【0056】
スティプラS1の二箇所目の綴じ動作位置への移動およびジョガーフェンス53a,53bの非規制位置への移動が完了した(図16のステップS7、ステップS8)後、図14(b)および図16のステップステップS9に示すように、シート搬送方向整合部材57a,57bによりシート束PAのシート搬送方向先端側を後端基準フェンス51a,51bに向けて押し込む。
これにより、シート束PAをさらに確実に後端基準フェンス51a,51bにより整合する(シート後端側に整合する)ことが可能となる。シート搬送方向整合部材57a,57bによる押し込み動作時は、スプリング61の付勢力を介してシート束PAの先端部を叩くことにより、シート束PAの後端部が後端基準フェンス51a,51bに適切な荷重で突き当たることでシートPないしシート束PAの整合が確実かつ良好に行われる。
【0057】
次いで、ジョガーフェンス53a,53bは互いの間隔を閉じる方向(図14(c)に示す矢印方向)に移動する。ジョガーフェンス53a,53bが図14(d)に示すシート束PAのシート幅方向Yを規制する規制位置まで移動した(図16のステップS10)後、スティプラS1により図14(d)に示す位置(機械奥側)にて二箇所目の綴じ動作を行う(図16のステップS11)。
次いで、図16のステップS13に進んで、設定された最終のシート束か否かがチェックされる。最終のシート束である場合は設定された所定のスティプルジョブが終了する(スティプルジョブエンド)。最終のシート束でない場合はステップS2〜ステップS13までの動作が繰り返される。
【0058】
図示を省略しているが、n+1部目の綴じ処理動作時の説明をする。機械奥側でスティプラS1により一箇所目の綴じ処理を行った後、ジョガーフェンス53a,53bの互いの間隔を開き、スティプラS1は機械手前側に移動する。その後、シート搬送方向整合部材57a,57bによりシート後端側を整合した後、ジョガーフェンス53a,53bがシート束PAを規制する規制位置になるまで移動し、機械手前の位置にて、スティプラS1により二箇所目の綴じ動作を行う。
【0059】
本実施形態では、図14に示したように、ジョガーフェンス53aおよびジョガーフェンス53bは、シート束PAにおける幅方向の中心(またはシート中心)に関して線対称的に移動しながら、互いの間隔を開き、その後、線対称的に規制位置となる間隔まで閉じるように動作するものであった(請求項5)。
【0060】
上述したとおり、本実施形態によれば、一箇所目の綴じ処理後にジョガーフェンス53a,53bの間隔を一旦広げ、ジョガーフェンス53a,53bによるシート束PAのシート幅方向Yの規制を解除することにより、一箇所目の綴じ処理時に傾いたシート束PAの姿勢を戻すことができる。これにより、シート束PAの後端を整合した状態とすることができる。この状態で二箇所目の綴じ処理を行うと、シート束PAのシート幅方向Yの規制がされていないため、シート幅方向Y(主走査方向)のスティプル針位置が安定しない。そこで、ジョガー53a,53bを再び閉じて、シート束PAの両側端面を規制することにより、シート束PAのシート幅方向Yも整合した状態で二箇所目の綴じ動作を行うことが可能となるので、良好な綴じ位置精度を得ることができる。
さらに、一箇所目の綴じ処理と二箇所目の綴じ処理との間に、シート搬送方向整合部材57a,57bによりシート束PAのシート搬送方向先端側を後端基準フェンス51a,51bに向けて押し込むことにより、シート束PAの後端を確実に整合した状態にすることができる。
【0061】
ところで、第1の実施形態の図14に示した動作では、図17に示すような二箇所綴じ時のシート束PAのシート撓みPZ(シート束PAの上面側のシートPがスティプル針21による二箇所綴じの影響で撓む現象)が形成される懸念が払拭されない。そこで、シート撓みPZの形成を抑制可能な動作を図18(a)、図18(b)に示す(以下、「第1の実施形態の変形例1」という)。
【0062】
(第1の実施形態の変形例1)
図18(a)、図18(b)を参照して、第1の実施形態の変形例1(請求項3、7、8)の動作を説明する。変形例1の動作は、上述した第1の実施形態の構成および動作を参考にすれば、図18(a)、図18(b)に示す動作図に基づいて当業者であれば理解して実施できるので、フローチャートを省略している(後述する図19(a)、図19(b)に示す変形例2でも同じ)。
【0063】
まず、n部目の綴じ処理動作について説明する。機械手前側をスティプラS1にて一箇所目の綴じ処理動作後、ジョガーフェンス53a,53bの互いの間隔を開く(ジョガーフェンス53a,53bが非規制位置を占める)。その後、図19(a)に示す矢印方向にスティプラS1と綴じ処理した側のジョガーフェンス、この場合はジョガーフェンス53aを移動する。この際、綴じ処理されてない側のジョガーフェンス、この場合ジョガーフェンス53bはその位置(非規制位置)のまま動作せずに待機・停止している。
【0064】
その後、シートは図18(b)に示すようにシート中心Pc(もしくはシート束中心)が搬送中心Xcに対して奥側(図において右側)になる位置まで移動し、結果的にジョガーフェンス53a,53bが互いに規制位置を占めることにより、シート束PAのシート幅方向Yが整合される。その後、所定の二箇所目の綴じ位置(機械奥側)まで移動したスティプラS1により二箇所目の綴じ処理を行う。
【0065】
図示していないが、n+1部目の動作時を説明する。スティプラS1はn部目の二箇所目の綴じ処理をしたシート中心Pcと搬送中心Xcがずれた位置関係における狙いの位置に居るが、n+1部目の一箇所目の綴じ処理は、シート束PAはシート中心Pcと搬送中心Xcとが合う位置関係にて綴じ処理を行う。そのため、所定の位置までスティプラS1を移動させる。その後、一箇所目の綴じ処理を行い、ジョガーフェンス53a,53bの互いの間隔を開く(ジョガーフェンス53a,53bが非規制位置を占める)。次いで、綴じ処理をした側のジョガーフェンス、この場合はジョガーフェンス53bをシート束PAの側端面に押し当て移動することにより、綴じ処理をしていない側のジョガー、この場合は移動せずに待機・停止しているジョガーフェンス53aと共に規制位置を占める。その後、所定の二箇所目の綴じ位置(機械手前側)まで移動したスティプラS1により二箇所目の綴じ処理を行う。
【0066】
この際、綴じ処理をした側のジョガーフェンス53bを動かすことにより、ジョガーフェンス53bが当接するのはシート束PAの綴じ処理側となるため、図17に示すようなシート撓みPZが形成されにくくなるため、図17に示すような冊子状態になることを抑制できる。
すなわち、本変形例1によれば、ある程度の綴じ位置精度を得ることができるとともに、シート束PAのシート幅方向Yの撓みを解除する効果を奏する。
【0067】
ところで、図18(a)、図18(b)に示す綴じ処理側のジョガーフェンスを移動動作させる方法では、図17に示したようなシート撓みPZの形成は抑制されるが、一箇所目の綴じ処理時の揃え精度により、二箇所目の綴じ位置が安定しないという懸念があり、シート束PAのシート幅方向Yの綴じ位置精度に関して良好な綴じ位置精度を得られない可能性がある。このことを解決するために、綴じ処理されていない側のジョガーフェンスを動作させる方法を図19(a)、図19(b)に示す(以下、「第1の実施形態の変形例2」という)。
【0068】
(第1の実施形態の変形例2)
図19(a)、図19(b)を参照して、第1の実施形態の変形例2(請求項4、7、8)の動作を説明する。
n部目の綴じ処理動作に関して説明する。機械手前側をスティプラS1にて一箇所目の綴じ処理動作後、ジョガーフェンス53a,53bの間隔を開く(ジョガーフェンス53a,53bが非規制位置を占める)。その後、図19(a)に示す矢印方向にスティプラS1と綴じ処理されてない側のジョガー、この場合はジョガーフェンス53bを移動する。この際、綴じ処理した側のジョガー、この場合ジョガーフェンス53aはその非規制位置のまま動作せず待機停止している。その後、ジョガーフェンス53bの移動により、シート束PAは図19(b)に示すようにシート中心Pc(もしくはシート束中心)が搬送中心Xcに対して手前側(図において左側)になる位置まで移動し、結果的にジョガーフェンス53a,53bが互いに規制位置を占めることにより、シート束PAのシート幅方向Yが整合される。その後、所定の二箇所目の綴じ位置(機械奥側)まで移動したスティプラS1により二箇所目の綴じ処理を行う。
【0069】
図示していないが、n+1部目の動作時を説明する。スティプラS1はn部目の二箇所目の綴じ処理をしたシート中心Pcと搬送中心Xcとがずれた位置関係における狙いの位置に居るが、n+1部目の一箇所目の綴じ処理は、シート束PAはシート中心Pcと搬送中心Xcとが合う位置関係にて綴じ処理を行う。そのため、所定の位置までスティプラS1を移動させる。その後、一箇所目の綴じ処理を行い、ジョガーフェンス53a,53bの間隔を開く(ジョガーフェンス53a,53bが非規制位置を占める)。そして綴じ処理をしていない側のジョガー、この場合はジョガーフェンス53aをシート束PAの側端面に押し当て移動することにより、綴じ処理をした側のジョガー、この場合は移動せずに待機・停止しているジョガーフェンス53bと共に規制位置を占める。その後、所定の二箇所目の綴じ位置(機械手前側)まで移動したスティプラS1により二箇所目の綴じ処理を行う。
【0070】
この変形例2の動作の場合、ジョガーが当接するのは、シート束PAの綴じ処理をされていない側であるため、一箇所目の綴じ処理精度に拠らずシート束PAを整合するためシート幅方向Yに関して良好な綴じ位置精度が得られる。但し、この動作では、図17に示したシート撓みPZが形成される可能性がある。また、この動作はスティプラS1の移動量が少なくなるため、生産性の向上が想定される。
【0071】
図18(a)、図18(b)に示す綴じ処理側のジョガーを動作させる方法と、図19(a)、図19(b)に示す綴じ処理されていない側のジョガーを動作させる方法とは一長一短があるため、市場ニーズにより設計者が選択するか、ユーザーが希望する冊子状態により、例えばユーザーインターフェイス等の入力により選択できる状態にすることが望ましい。具体例を挙げれば、図12に示した操作パネル105の各種キー(テンキー、タッチパネル式のキーを含む)の組み合わせや、専用キーを設けることによって、すなわち選択手段によって選択する方法である。
【0072】
また、シートサイズ、シート厚さ、シート種類等の少なくとも一つのパラメータ・情報により、第1の実施形態や変形例1あるいは2におけるジョガーフェンス53a,53bの移動動作の何れか一つ、もしくはその有無、またはシート搬送方向整合部材57a,57bの動作を選択できるようにしてもよい(請求項6)。
【0073】
第1の実施形態、変形例1、2では、二箇所綴じ処理に限定して説明したが、三箇所綴じ以上の複数綴じに関しても同様のジョガー移動動作を行うことにより、良好な綴じ精度を得ることができることは無論である。
【0074】
以上述べたとおり、本発明を特定の実施形態等について説明したが、本発明が開示する技術内容は、上述した実施形態等に例示されているものに限定されるものではなく、それらを適宜組み合わせて構成してもよく、本発明の範囲内において、その必要性および目的・用途等に応じて種々の実施形態や変形例を構成し得ることは当業者ならば明らかである。
【符号の説明】
【0075】
51a,51b 後端基準フェンス(後端部整合手段)
52 放出ベルト(積載手段)
53 ジョガーフェンス(側端部整合手段)
53a ジョガーフェンス(第1または第2の整合手段)
53b ジョガーフェンス(第2または第1の整合手段)
54a,54b ジョガーフェンスHPセンサ(側端部整合手段ホームポジション検知手段)
57a,57b シート搬送方向整合部材(シート搬送方向整合手段)
63a,63b 積載トレイ(積載手段)
70 スティプルトレイ(積載手段)
158a,158b ジョガーモータ(移動手段の駆動手段)
159 スティプラ移動モータ(綴じ手段移動手段)
101 CPU(制御手段)
310 シート検知センサ(シート検知手段)
312 スティプラ移動HPセンサ(スティプラホームポジション検知手段)
313 シート搬送方向整合部材HPセンサ(シート搬送方向整合手段ホームポジション検知手段)
350 制御装置
A〜D 搬送路
F 端面綴じ処理トレイ(広義の積載手段)
P シート(シート状記録媒体)
PA シート束
PR 画像形成装置
PRF 画像形成装置の装置本体
PD シート後処理装置(後処理装置)
S1 端面綴じスティプラ(綴じ手段)
X シート搬送方向
Y シート幅方向
【先行技術文献】
【特許文献】
【0076】
【特許文献1】特開2010−150012号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送されてくるシートを積載する積載手段と、
前記積載手段に積載されるシートにおけるシート搬送方向の後端部を突き当てて前記シート搬送方向のシートの整合を行う後端部整合手段と、
前記積載手段に積載されるシートを前記シート搬送方向と直交する幅方向に規制する前記幅方向の規制位置と、該規制位置から離間した非規制位置との間で移動可能な側端部整合手段と、
前記側端部整合手段を移動させる移動手段と、
前記後端部整合手段および前記側端部整合手段により整合されたシート束の複数箇所に綴じ処理を行うことが可能な綴じ手段と、
を備えた後処理装置において、
前記綴じ手段によりシート束の複数箇所に綴じ処理を行う際には、一箇所目の綴じ動作後、前記移動手段によって、前記側端部整合手段の前記幅方向の間隔を前記規制位置よりも開き、その後再び、シート束を前記規制位置の間隔となるまで閉じるように移動させた後、二箇所目綴じ動作を行うことを特徴とする後処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の後処理装置において、
一箇所目の綴じ処理と二箇所目の綴じ処理との間に、シート束の前記シート搬送方向の後端部を、前記後端部整合手段に突き当てる向きに移動可能なシート搬送方向整合手段を備え、該シート搬送方向整合手段により、シート束の後端部を整合することを特徴とする後処理装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の後処理装置において、
前記側端部整合手段は、二つの整合部材から構成されており、
前記間隔を開いた後、綴じ処理を施された近傍の一方の前記整合部材は他方の前記整合部材側へ移動し、綴じ処理を施されていない近傍の他方の前記整合部材は前記非規制位置に待機し、シート束を前記幅方向に整合することを特徴とする後処理装置。
【請求項4】
請求項1または2記載の後処理装置において、
前記側端部整合手段は、二つの整合部材から構成されており、
前記間隔を開いた後、綴じ処理を施された近傍の一方の前記整合部材は前記非規制位置に待機し、綴じ処理を施されていない近傍の他方の前記整合部材は前記一方の前記整合部材側へ移動し、シート束を前記幅方向に整合することを特徴とする後処理装置。
【請求項5】
請求項1または2記載の後処理装置において、
前記側端部整合手段は、二つの第1の整合部材と第2の整合部材とから構成されており、
第1の整合部材および第2の整合部材は、シート束における前記幅方向の中心に関して線対称的に移動しながら、前記間隔を開き、その後、線対称的に前記規制位置となる間隔まで閉じることを特徴とする後処理装置。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか一つに記載の後処理装置において、
シートサイズ、シート厚さおよびシート種類の少なくとも一つのパラメータにより、前記側端部整合手段における前記移動動作の何れか一つまたはその有無を選択可能とする選択手段を備えていることを特徴とする後処理装置。
【請求項7】
シートに画像を形成する画像形成手段と、該画像形成手段によって画像形成され搬送されてくるシートに対して後処理を施す後処理装置とを有する画像形成装置において、
前記後処理装置が、請求項1ないし6の何れか一つに記載の後処理装置であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
シートに画像を形成する画像形成手段と、該画像形成手段によって画像形成され搬送されてくるシートに対して後処理を施す後処理装置とを有する画像形成システムにおいて、
前記後処理装置が、請求項1ないし6の何れか一つに記載の後処理装置であることを特徴とする画像形成システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2013−95552(P2013−95552A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239621(P2011−239621)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】