説明

徐放製剤

(a)生物学的に活性な成分を含むコア、(b)前記コアを覆う半透過性膜及び(c)前記半透過性膜を通る少なくとも1つの通路を含んでなる浸透性製剤であって、前記半透過性膜がエチルセルロース、アクリル又はメタクリルポリマー及び水溶性可塑剤を含むが、前記半透過性膜は任意の水溶性可塑剤を除き、水溶性物質を含まないか、又は前記半透過性膜の総乾燥重量に基づき、15重量%以下含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的に活性な成分、コアを覆う半透過性膜及び半透過性膜を通る少なくとも1つの通路(passageway)を含んで成る前記コアを含んで成る浸透性製剤(osmotic dosage form)に関する。
【背景技術】
【0002】
浸透性製剤は、特許文献1;特許文献2;特許文献3;特許文献4;特許文献5;及び特許文献6から公知である。浸透性製剤の開発は、Alzaによる、OROS(商標)、基本経口浸透性システムの開発により開拓された。浸透性製剤は、浸透の原理において働き、且つほぼゼロ次プロファイルにおいて薬物を送達する。浸透性製剤は、生物学的に活性な成分及びコアを覆う半透過性膜を含む前記コアを含んでなる。しばしば半透過性壁とも呼ばれる半透過性膜は、胃及び腸液等の水性外部流体の通過に透過性であり、且つ外部流体に膜を浸透できるようにさせ、そして任意的に生物学的に活性な成分を溶解させる。膜は、外部流体を有する溶液又は分散において、実質的に活性成分の通過に不浸透性である。浸透性通路は、壁を通して提供されて、膜を介する拡散を経由する送達の代わりに、外部流体中の活性成分の溶液又は分散を環境に送達する。浸透性製剤は、活性成分の延長した放出を可能にする。浸透性製剤が外部流体に不溶性の活性成分を含む場合には、浸透性製剤は、しばしば、外部流体との接触から拡大し、そして通路を介して活性成分を押し出すポリマー膨張剤を含む。特許文献7は、薬物層及び押出層、コアを取り囲む半透過性膜並びに半透過性膜中の少なくとも1つの通路を含むコアを本質的に含んでなる浸透性製剤を開示する。
【0003】
上記特許公開は半透過性膜の形成において有用な材料がセルロースエステル、セルロースジエステル、セルローストリエステル、セルロースエーテル、セルロースエステル-エーテル、酢酸セルロース、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース及び酢酸酪酸セルロースであることを開示する。
【0004】
特許文献8は塩酸ベンラファキシン、水溶性薬物の浸透性放出錠剤を開示する。浸透性ポンプ錠と一体となったコントロール放出クラスターアパーチャーは、薄片コア及びコーティングフィルムから構成される。コーティングは、酢酸セルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/又はポリアクリル酸樹脂から選定される1つ又はそれ以上のフィルム形成ポリマーを含み、そして更にコーティングの重量に基づき、20〜45wt%の糖、塩化ナトリウム、ソルビトール、ポリエチレングリコール又はヒドロキシプロピルセルロース等の孔形成剤を含む。更にコーティングは、クエン酸トリエチル、セバシン酸ジブチル、フタル酸エステル及び/又はポリエチレングリコール4000等の可塑剤も含み得る。あいにく、このコーティングは、充分なフィルム強度を有さず、且つ典型的には浸透性放出錠剤中に含められるポリマー膨張剤によって破壊され得る。
【0005】
最適且つ周知の半透過性膜材料は酢酸セルロースである。ALZAで開発されたOROS(商標)Push-Pull(商標)システム等の多くの商業的に使用される浸透性製剤は、半透過性膜のためのフィルム形成材料として、酢酸セルロースを含む。浸透性製剤を生産するためのプロセスにおいて、生物学的に活性な成分を含む成形コアは、典型的には有機溶媒中に溶解した半透過性膜のための出発原料でコーティングされる。浸透性製剤が半透過性膜のためのフィルム形成材料として酢酸セルロースを含む場合、人間等の個体による浸透性製剤の取り込み及び生物学的に活性な成分の放出の開始の間に有意な時間のずれがある。更に、半透過性膜を調製するためには、安全性の理由により、酢酸セルロースを所望されないアセトンに溶解させなければならない。
【0006】
この時間のずれ(lag-time)を克服するために、当業者によっていくつかの試みが成されてきた。最も一般的なやり方は、生物学的に活性な成分を含む外部の即時放出コーティング層により浸透性製剤をコーティングすることである。あいにく、かかる追加の外部の即時放出コーティング層は、浸透性製剤の複雑さ及びコストを増大させる。更に、生物学的に活性な成分を含む外部のコーティング層は、製品の安全性の理由のために、しばしば所望されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第3,845,770号
【特許文献2】米国特許第3,916,899号
【特許文献3】米国特許第4,034,758号
【特許文献4】米国特許第4,077,407号
【特許文献5】米国特許第4,327,725号
【特許文献6】米国特許第4,783,337号
【特許文献7】国際公開第2006/046114号
【特許文献8】中国特許公開第1923184-A号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、半透過性膜のためのフィルム形成物質として、酢酸セルロースを含まない新規の浸透性製剤を提供することが所望されるだろう。半透過性膜のためのフィルム形成性材料として酢酸セルロースを含む浸透性製剤が経験する、浸透性製剤の取り込み及び生物学的に活性な成分の放出の開始の間の有意な時間のずれを有さない、新規の浸透性製剤を提供することがより所望されるだろう。
【0009】
水性液体との接触が開始した後、2〜12時間の期間中に実質的にゼロ次プロファイルを提供する新規の浸透性製剤を提供することが特に所望されるだろう。更に、典型的には浸透性製剤を含むポリマー膨張剤によって破壊されないような、充分なフィルム強度を有する新規の浸透性製剤を提供することが特に所望されるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の概要
本発明の1つの面は、
(a)生物学的に活性な成分(204)を含むコア(102、202、302)、
(b)前記コアを覆う半透過性膜(105、205、305)及び
(c)半透過性膜を通る少なくとも1つの通路(106、206、306)、
を含んでなる浸透性製剤(101、201、301)であって(ここで半透過性膜は、エチルセルロース、アクリル又はメタクリルポリマー及び水溶性可塑剤を含むが、半透過性膜は、任意の水溶性可塑剤を除き、水溶性物質を含まないか、又は半透過性膜の総乾燥重量に基づき、15重量%以下を含んでなる。
【0011】
本発明の別の面は、上記の浸透性製剤を調製するための方法であり、
I)生物学的に活性な成分及び任意的な成分からコアを形成し、
II)エチルセルロース、アクリル又はメタクリルポリマー、水溶性可塑剤及び任意的な成分を含む膜組成物でコアをコーティングして、半透過性膜を提供し、
III)半透過性膜中に少なくとも1つの通路を作り出し、そして任意的に
IV)浸透性製剤に最終加工層を適用する工程を含んで成る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の浸透性製剤の3つの異なる態様を説明する。
【図2】本発明の浸透性製剤の3つの異なる態様を説明する。
【図3】本発明の浸透性製剤の3つの異なる態様を説明する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明の詳細な説明
本発明の主要な観点は、浸透性製剤(osmotic dosage form)の半透過性膜(semi-permeable)(b)に関する。半透過性膜(b)は、胃又は腸液等の外部の水性流体に対して浸透性であるが、生物学的に活性な成分等のコア(a)において選定された製品に対しては本質的に不浸透性である。半透過性膜(b)は、生物学的に活性な成分が放出される間に、一般的にその物理的及び化学的一体性を維持する。
【0014】
驚くべきことに、半透過性膜が、任意の水溶性可塑剤を除き、水溶性物質を含まないか、又は半透過性膜の総乾燥重量に基づき、15重量%以下含むという条件で、エチルセルロース、アクリル又はメタクリルポリマー及び水溶性可塑剤を含んで成る半透過性膜が、浸透性製剤におけるフィルム形成性物質として酢酸セルロースを含む半透過性膜の代わりとなるのに適していることを見出した。本発明の半透過性膜は、水溶性可塑剤に加えて、15重量%超の水溶性物質を含まない。
【0015】
少なくとも本発明の浸透性製剤の好適な態様において、2時間と12時間との間のパーセントにおける累積薬物放出は、ゼロ次放出の式:
フィッティング試験後に、Y=100k(t−Tlag)
に対応する。ここでTlagは、2時間のずれ時間(lagging time)を意味する。Yはパーセントでの累積薬物放出であり、且つKは定数である。一次フィッティング後、R2は、>0.9であり、好適には>0.95である。
【0016】
浸透性製剤、コア、半透過性膜、薬物層及び押出層(push layer)に関連して使用される用語、"総乾燥重量"とは、水又はアルコールなどの液体有機溶媒を除く全ての成分の総重量を意味する。
【0017】
本明細書において使用される用語、「水溶性(water- soluble)」は、可塑剤、ポリマー及び他の物質に適用され、且つ以下に挙げた米国薬局方において定義されるような用語"非常に可溶性(very soluble)"、"制限されずに可溶性(freely soluble)"及び"可溶性(soluble)"を包含する。溶解性は、25℃で測定される。
【0018】
【表1】

【0019】
半透過性膜は、好適にはエチルセルロースが半透過性膜のフィルム形成性ポリマーであるような量で、エチルセルロースを含む。エチルセルロースの使用は、それがアセトン不存在中でコーティング組成物を提供するために溶解され得るので、非常に好都合である。更に、本発明の浸透性製剤が、浸透性製剤の取り込み及び生物学的に活性な成分の放出の開始の間に有意な時間のずれを有さないような方法で設計され得ることが見出された。更に、本発明の浸透性製剤の少なくとも好適な態様で、水性液体との接触が始まった後、2〜12時間の時間中に生物学的に活性な成分について実質的にゼロ次放出プロファイルを提供することが見出された。
【0020】
エチルセルロースは、好適には40〜55%、より好適には43〜53%、最適には45〜52%のエトキシ含有量を有する。パーセントエトキシ置換は、置換産物の重量に基づき、且つASTM D4794−94(2003)に記載されるようなZeiselガスクロマトグラフィー技術によって決定される。これらのエトキシ含有量は1.9〜3.0、好適には2.1〜2.9、より好適には2.3〜2.8のエチルDSに対応する。エチルセルロースの分子量は、80体積%のトルエン及び20体積%のエタノールの混合物中、25℃で測定されたエチルセルロースの5重量%溶液の粘度として表される。エチルセルロース濃度は、トルエン、エタノール及びエチルセルロースの総重量に基づく。粘度は、ASTM D914−00において概説され、且つASTM D914−00において参照されているASTM D446−04において更に記載されているようなUbbelohde管を用いて測定される。エチルセルロースは、好適には2mPasから、より好適には5Pa.sから、最適には10mPa.sから、400mPasまで、好適には100mPasまで、より好適には50mPasまでの粘度を有する。好適にはエチルセルロースの量は、半透過性膜の総乾燥重量に基づき、約10〜約90%、より好適には約20〜約80%、及び最適には約30〜約70%である。
【0021】
半透過性膜は、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル又はその組合せの重合単位を含むホモポリマー又はコポリマー等のアクリル又はメタクリルポリマーを更に含む。好適にはホモポリマー又はコポリマーは、Evonik Industriesから入手可能なポリマーのEudragitファミリーを含むメタクリル酸、アクリル酸エチルエステル(アクリル酸エチル)、アクリル酸メチルエステル(アクリル酸メチル)、メタクリル酸メチルエステル(メタクリル酸メチル)、メタクリル酸ブチルエステル(メタクリル酸ブチル)、メタクリル酸ジメチルアミノエチルエステル(メタクリル酸ジメチルアミノエチル)、アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル(アクリル酸ジメチルアミノエチル)、メタクリル酸トリメチルアンモニウムエチルエステル、アクリル酸トリメチルアンモニウムエチルエステル又はその組合せの重合化単位等のアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸又はメタクリル酸のC1〜C4アルキルエステル、アクリル酸又はメタクリル酸のアミノC1〜C4アルキルエステル、或いはその組合せの重合単位を含む。アクリル又はメタクリルポリマーは、好適には上記モノマーのホモ-又はコポリマーである。アクリル又はメタクリルポリマーは、典型的には水不溶性ポリマーである。Eudragitファミリーのアクリル及びメタクリルポリマーは、当業界において周知であり、且つEudragit L 100−55 (Eudragit L30Dの噴霧乾燥形態)、Eudragit L30D、Eudragit L100、Eudragit S 100、Eudragit 4135F、Eudragit E100、Eudragit EPO(E100の粉末形態)、Eudragit RL30D、Eudragit RL PO、Eudragit RL 100、Eudragit RS 30D、Eudragit RS PO、Eudragit RS 100、Eudragit NE 30 D及びEudragit NE 40 Dに及ぶ多くの異なるポリマーを含む。好適にはアクリル又はメタクリルポリマーの量は、半透過性膜の総乾燥重量に基づき、約2〜約60%、より好適には約5〜約40%及び最適には約10〜約30%である。
【0022】
半透過性膜におけるエチルセルロース及びアクリル又はメタクリルポリマー間の重量比は、好適には約0.1〜15:1、より好適には約0.5〜10:1、最適には約1〜5:1である。
【0023】
半透過性膜は水溶性可塑剤を更に含む。典型的な水溶性可塑剤は、10,000以下の重量平均分子量を有する単量体化合物又はオリゴマー化合物、好適にはクエン酸トリエチル、トリアセチン、ポリエチレングリコール、特に2000〜6000の重量平均分子量を有するポリエチレングリコール(PEG 4000等)、商標Tweenで商業的に入手可能なポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート(Tween 20又はTween 80等)、及び最適にはグリセロールである。好適には水溶性可塑剤の量は、半透過性膜の総乾燥重量に基づき、約2〜約70%、より好適には約5〜約50%、及び最適には約10〜約40%である。
【0024】
半透過性膜におけるエチルセルロース及び水溶性可塑剤の間の重量比は、好適には約0.1〜20:1、より好適には約0.5〜10:1、最適には約0.9〜3.4:1である。
【0025】
一般的にエチルセルロース、アクリル又はメタクリルポリマー及び水溶性可塑剤の総量は、半透過性膜の総乾燥重量に基づき、約85〜100%、好適的には約90〜100%、より好適には約95〜100%、最適には約98〜100%である。
【0026】
半透過性膜は、水溶性可塑剤以外に、半透過性膜の総乾燥重量に基づき、約15%超、好適には約10%以下、より好適には約5%以下、最適には約2%以下の水溶性物質を含まない。詳細には、水溶性可塑剤を除いて、半透過性膜は、水溶性物質を含まないか、又は約15%以下、好適には約10%以下、より好適には約5%以下、最適には約2%以下の孔形成剤として公知の水溶性物質を含む。孔形成剤の公知の例は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、スクロース、ソルビトール、マンニトール、又はヒドロキシプロピルセルロースである。水溶性可塑剤に加えて、半透過性膜が15%超の孔形成剤を含む場合には、過度に高い量の生物学的に活性な成分は、膜を介して放出されるだろう。これは本発明の浸透性製剤には所望されない。
【0027】
半透過性膜は、不水溶性可塑剤等の任意の添加剤を更に含むことができる。不水溶性可塑剤の例はアジピン酸塩、アゼライン酸塩、エンゾエート(enzoate)、クエン酸塩、ステアリン酸塩、イソエブケート(isoebucate)、セバシン酸塩(クエン酸トリ−n−ブチル、クエン酸アセチルトリ−n−ブチル及びクエン酸エステル等)を含む。好適な不水溶性可塑剤はアセチル化モノグリセリド、ブドウ種子油、オリーブ油、ごま油、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸トリブチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル、コハク酸ジブチル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、セバシン酸ジブチル及び三酪酸グリセロールである。最適な不水溶性可塑剤はクエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル及びセバシン酸ジブチルである。
【0028】
半透過性膜が1つ又はそれ以上の任意的な添加剤を含む場合には、それらの総量は、一般的に、半透過性膜の総乾燥重量に基づき、約15%まで、好適には約10%まで、より好適には約5%までである。
【0029】
好適には、コア(a)を囲む半透過性膜(b)は、コア(a)の重量に基づき、約10〜約45%、好適には約15〜35%、最適には約20〜30%である。
【0030】
本発明の浸透性製剤のコア(a)はビタミン、ハーブ及びミネラルサプリメント並びに薬物等の広範囲に及ぶ生物学的に活性な成分を含み得る。生物学的に活性な成分は疎水性、親水性及び両親媒性化合物を含む。薬物は、医薬的に許容され得る塩、溶媒、光学異性体、エステル及びその混合物の形態であり得る。適切な例は中枢神経系刺激剤、オピオイド、抗糖尿病剤、抗腫瘍剤、抗高血圧剤、催眠剤、バルビツレート、精神刺激剤、カンナビノイド、カテコールアミン、心血管作動剤、血小板凝集阻害剤、鎮痛剤、抗微生物剤、利尿剤及び鎮痙剤の分類に属する薬物を含むが、他の分類は、所望される通りに使用することができる。具体例は、メチルフェニデート、アンフェタミン、グリピジド、ドキサゾシン、イスラジピン、ニフェジピン、ニソルジピン、ベンドロフルメタジド、クロルプロパミド、ヒドロコルチゾン、イブプロフェン、ジクロフェナック、オキシコドン、一硝酸イソソルビド、塩酸タムスロシン、塩酸メチルフェニダート、塩酸ベラパミル、塩酸イトプリド、サルブタモールエアロゾル、塩酸ジルチアゼム、塩酸プソイドエフェドリン、塩酸オキシブチニン、塩酸フェニルプロパノールアミン、フェロジピン、ハロペリドール、デスベンラファキシン、カルバマゼピン、イスラジピン、メシル酸ドキサゾシン、メトホルミン及びカルベジロールを含む。水に非常に可溶性である、又は難溶性である他の有用な薬物は米国特許第5,021,053号、段落10、26〜68行、及び段落11、1〜50行に開示されている。薬物は、好適には、コア(a)の総乾燥重量(コーティング重量を含めない)の約1〜約80%、より好適には約4〜約50%を構成する。
【0031】
コアは、図1において説明されるような生物学的に活性な材料を含む1つの層から構成することができる。1つの層からなるコアは、以下に更に記載する。
【0032】
或いはコアは、図2及び3において説明されるような2つの層、又は更に多くの層、典型的に3つの層(図示せず)から成り得る。本発明のかかる態様におけるコア(a)は、(i)通常“薬物層(drug layer)”と呼ばれる生物学的に活性な成分を含む第一の層及び(ii)ポリマー膨張剤を含む第二の層を含んで成る。第二の層は、ポリマー膨張剤が外部流体との接触により拡大し、そして通路を介して活性成分を押出すので、通常"押出層(push layer)"と呼ばれる。好適には薬物層は、コア(a)の総乾燥重量の約5〜約95%、より好適には約50〜約80%を構成する。押出層は、好適にはコア(a)の総乾燥重量の約5〜約95%、より好適には、約20〜約50%を構成する。
【0033】
薬物層は、好適には薬物層の乾燥重量に基づき、約1〜約80重量%、より好適には約4〜50重量%の1つ又はそれ以上の上記のような生物学的に活性な物質を含む。
【0034】
薬物層は、好適には、外部流体が膜に浸透した後に生物学的に活性な材料のためのポリマー懸濁化剤としての役割を果たす、非架橋又は軽度に架橋した親水性ポリマーを含む。好適なポリマー懸濁化剤は、30,000〜1,000,000の分子量を有するポリ(メタクリル酸ヒドロキシアルキル);10,000〜360,000の分子量を有するポリ(ビニルピロリドン);アニオン性及びカチオン性ヒドロゲル;任意的にグリオキサル、ホルムアルデヒド又はグルタルアルデヒドと架橋結合し、且つ、200〜30,000の重合度を有する低酢酸塩残基を有するポリ(ビニルアルコール);メチルセルロース;カルボキシメチルセルロース;又はN−ビニルラクタムの水膨潤性ポリマーを含む。好適なポリマーは、450,000〜1,000,000の分子量を有するCarbopol(商標)酸性カルボキシポリマー;Cyanamer(商標)ポリアクリルアミド;80,000〜200,000の分子量を有する架橋した水膨潤性インデン−無水マレイン酸ポリマー、Goodrite(商標)ポリアクリル酸;約100,000〜1,000,000未満、より好適には約100,000〜約500,000、最適には約100,000〜約300,000の分子量を有するPolyox(商標)ポリエチレンオキサイドポリマー;ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はスターチグラフトコポリマー等のヒドロゲルを形成するものである。ヒドロゲルを形成する代表的なポリマーは、Hartopに特許された米国特許第3,865,108号;Manningに特許された米国特許第4,002,173号;Michaelsに特許された米国特許第4,207,893号;並びにScott及びRoffにより、Chemical Rubber Company, Cleveland, Ohioによって発行されたHandbook of Common Polymersにおける従来技術によって公知である。最適な親水性懸濁化剤は、エチレンオキサイドポリマーであり、より好適にはThe Dow Chemical companyからPolyox(商標)WSRの商標で商業的に入手可能なものである。それは、その分子量MWに応じて多様な等級で入手可能である。ポリエチレンオキサイドの重量分子量MWは、一般的に約100,000〜1,000,000未満、より好適には約100,000〜約500,000、最適には約100,000〜約300,000で変化し得る。ポリエチレンオキサイドの好適な等級の例は、POLYOX(商標)WSR N−10(MW約100,000)、WSR N−80(MW約200,000)、及びWSR N−750(MW約300,000)を含める。ポリマー懸濁化剤は、好適にはコア(a)における薬物層の総乾燥重量の0〜約97パーセント、より好適には約15〜約90パーセント、最適には約50〜約90パーセントを構成する。
【0035】
薬物層は、更に1つ又はそれ以上の医薬的に許容され得る不活性賦形剤を含んで成り得る。本明細書において使用される用語"医薬的に許容され得る不活性賦形剤"とは、浸透制御製剤を製造している当業界において使用され、且つ文献において発表されている全ての賦形剤を含める。具体例は、結合剤、浸透性薬剤、潤滑剤/流動促進剤、希釈剤、界面活性剤、pH調整剤、安定剤及び顔料/着色剤を含める。
【0036】
薬物層は、好適には生物学的に活性な材料のためのポリマー懸濁化剤としての役割を果たす親水性ポリマーとは相違する結合剤(binding agent)を含む。結合剤の好適な例は、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースを、好適には生理的に許容され得る塩、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、アラビアガム、ポリビニルアルコール、プルラン、α化デンプン、寒天、トラガカント、アルギン酸ナトリウム又はプロピレングリコールを含む。結合剤は、好適には水溶性且つ生理的に許容され得るものである。結合剤は、好適にはコア(a)における薬物層の総乾燥重量の0〜約30%、より好適には0〜約10%を構成する。
【0037】
薬物層は、好適には浸透性薬剤を更に含む。本明細書において使用される用語「浸透性薬剤」とは、Pharmacoepias、又は"Hager"及びRemington's Pharmaceutical sciencesにおいて参照されている浸透作用を誘導するために適した全ての医薬的に許容され得る不活性水溶性化合物を含む。浸透性薬剤として適切な化合物の例は、塩化マグネシウム又は硫酸マグネシウム、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸水素リチウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウム、リン酸二水素リチウム、リン酸二水素ナトリウム及びリン酸二水素カリウム等の無機酸の水溶性塩;酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、コハク酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム及びアスコルビン酸ナトリウム等の有機酸の水溶性塩;高い水溶性を有する非イオン性有機化合物、例えばマンニトール、ソルビトール、アラビノース、リボース、キシロース、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、スクロース、マルトース、ラクトース及びラフィノース等の糖質;グリシン、ロイシン、アラニン又はメチオニン等の水溶性アミノ酸;尿素及び尿素誘導体を含む。浸透性薬剤は、好適にはコア(a)における薬物層の総乾燥重量の0〜約30%、より好適には0〜約20%、最適には0〜約10%を構成する。
【0038】
好都合には薬物層は、「流動促進剤」にも指定されている潤滑剤を更に含む。潤滑剤の具体例は、コロイド状二酸化ケイ素、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、水素化ヒマシ油、脂肪酸のスクロースエステル、微結晶性ワックス、黄色蜜蝋又は白色蜜蝋を含む。それらの量は、コア(a)における薬物層の総重量に基づき、好適には0〜約2%、より好適には0〜約1%である。
【0039】
薬物層は、pH調整剤を更に含むことができる。pH調整剤は、薬物の溶解又は懸濁に役立つ値で薬物を取り囲む局所環境のpHを維持することを助ける物質である。pH調整剤の具体例は二塩基性リン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、メグルミン、クエン酸ナトリウム、トリメタノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、アンモニア、第三リン酸ナトリウム、ジエタノールアミン、エチレンジアミン又はL−リシンを含む。
【0040】
希釈剤の具体例は、炭酸カルシウム、二塩基性及び三塩基性リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、微結晶性又は粉末セルロース、デキストレート、デキストリン、デキストロース賦形剤、フルクトース、カオリン、ラクチトール、ラクトース、マンニトール、ソルビトール、デンプン、α化デンプン、スクロース又は糖を含む。
【0041】
好適な顔料又は着色剤は、酸化鉄等の経口用途のためにFDAに承認された任意の色を含む。それらの量は、コア(a)における薬物層の総重量に基づき、好適には0〜約3%、より好適には0〜約2%である。
【0042】
好適な安定剤は、抗酸化剤又は緩衝剤を含める。
【0043】
押出層は、典型的にはポリマー膨張剤を含む。ポリマー膨張剤は、押出層の総乾燥重量に基づき、好適には約5〜約70%、より好適には約15〜約60%、最適には約25〜約60%を構成する。ポリマー膨張剤は、典型的には水又は水性の生物学的流体との接触において膨張又は拡大するように設計される親水性ポリマーである。膨張剤は、ポリマー構造の内部に吸収された水の有意な部分を保持する能力を示す。典型的にポリマー膨張剤は、非常に高度に膨張又は拡大し、通常2〜50倍の体積増大を示す。上記の親水性ポリマーは、それらが所望される膨張特性を有することを条件に、ポリマー膨張剤として有用である。通常ポリマー膨張剤は、懸濁化剤として薬物層において使用される親水性ポリマーよりも高い分子量を有する。最適なポリマー膨張剤は、エチレンオキサイドポリマー、より好適にはPolyox(商標)ポリエチレンオキサイド又はヒドロキシプロピルメチルセルロースである。ポリエチレンオキサイドの重量平均分子量は、一般的に約1,000,000〜約7,000,000、及びより詳細には約4,000,000〜約7,000,000で変化し得る。特に好適には、POLYOX WSR−N750、POLYOX(商標)WSR Coagulant、POLYOX(商標)WSR−301及び/又はWSR−303である。
【0044】
押出層は、結合剤、浸透性薬剤、潤滑剤、pH調整剤、希釈剤、顔料又は安定剤等の1つ又はそれ以上の医薬的に許容され得る不活性賦形剤を更に含むことができる。好適な賦形剤は、薬物層について上記したものである。押出層は、好適には薬物層とは異なる顔料を含む。
【0045】
結合剤は、好適にはコア(a)における押出層の総乾燥重量の0〜約20%、より好適には約1〜約10%を構成する。
【0046】
浸透性薬剤は、好適にはコア(a)における押出層の総乾燥重量の0〜約60%、より好適には約15〜約50%を構成する。
【0047】
或いはコアは、図1において説明されるような生物学的に活性な材料を含む1つの層から構成することができる。好都合には、この層は、薬物層について記載したタイプ及び量の生物学的に活性な材料並びに上記の押出層について記載したタイプ及び量のポリマー膨張剤を含む。押出層は、薬物層について記載したタイプ及び量の結合剤、浸透性薬剤、潤滑剤、pH調整剤、希釈剤又は安定剤等の1つ又はそれ以上の医薬的に許容され得る不活性賦形剤を更に含むことができる。典型的には一層化されたコア中に含められる懸濁化剤はない。
【0048】
本明細書において使用される用語、通路は、浸食されて、生物学的に活性な成分を製剤から放出するための浸透性通路を形成するアパーチャー、オリフィス、孔(bore、hole)、弱められた部分、又はゼラチンプラグ等の浸食され得る要素を含める。通路の詳細な説明は、米国特許第3,845,770号;第3,916,899号;第4,034,758号;第4,077,407号;第4,783,337号及び第5,071,607号において見出され得る。好適には、機械的穴開け等の孔開け、又はより好適には、半透過性膜を貫くレーザーの孔開けが通路を形成するために使用される。
【0049】
より好適には、コア(a)が、
(ai)生物学的に活性な成分、1つ又はそれ以上のエチレンオキサイドポリマー、任意的に1つ又はそれ以上の結合剤、任意的に1つ又はそれ以上の浸透性薬剤、任意的に顔料及び任意的に潤滑剤を含む薬物層;
(aii)1つ又はそれ以上のエチレンオキサイドポリマー、任意的に1つ又はそれ以上の結合剤、任意的に1つ又はそれ以上の浸透性薬剤、任意的に顔料、及び任意的に潤滑剤を含む押出層を含み;そして
半透過性膜(b)がエチルセルロース、アクリル又はメタクリルポリマー並びにクエン酸トリエチル、トリアセチン、ポリエチレングリコール及びグリセロールから成る群から選定される水溶性可塑剤を含む浸透性製剤であるが、半透過性膜は、任意の水溶性可塑剤を除き、水溶性物質を含まないか、半透過性膜の総乾燥重量に基づき、10重量%以下の水溶性物質を含む。
【0050】
最適には、コア(a)が、
(ai)薬物層の総重量に基づき、約1〜約80重量%、より好適には約4〜約50重量%の生物学的に活性な成分、約15〜約90重量%、最適には約50〜約90重量%の1つ又はそれ以上のエチレンオキサイドポリマー、0〜約10重量パーセントのメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びポリビニルピロリドンから成る群から選定される1つ又はそれ以上の結合剤、0〜約30重量%、より好適には0〜約20重量%、最適には0〜約10重量%の浸透性薬剤、0〜約3重量%、より好適には0〜約2重量%の顔料並びに0〜約2%、より好適には0〜約1重量%の潤滑剤を含む薬物層;
(aii)押出層の総重量に基づき、約5〜約70重量%、より好適には約15〜約60重量%、最適には約25〜約60重量%の1つ又はそれ以上のエチレンオキサイドポリマー、0〜20重量%、より好適には約1〜約10重量%のメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチル セルロース及びポリビニルピロリドンから成る群から選定される1つ又はそれ以上の結合剤、0〜約60重量%、より好適には約15〜約50重量%の1つ又はそれ以上の浸透性薬剤、0〜約2重量%の顔料並びに0〜約2重量%、より好適には0〜約1重量%の潤滑剤を含む押出層を含んで成り;且つ
半透過性膜(b)が、半透過性膜(b)の総乾燥重量に基づき、約10〜約90%、より好適には約20〜約80%、及び最適には約30〜約70%のエチルセルロース、約2〜約60%、より好適には約5〜約40%及び最適には約10〜約30%のアクリル又はメタクリルポリマー並びに約2〜約70%、より好適には約5〜約50%及び最適には約10〜約40%のクエン酸トリエチル、トリアセチン及びグリセロールから成る群から選定される水溶性可塑剤を含む浸透性製剤であって、但し半透過性膜は、任意の水溶性可塑剤を除き、水溶性物質を含まないか、又は約10重量%以下、より好適には約5重量%、最適には約2重量%以下の水溶性物質を含む。
【0051】
本発明の浸透性製剤は、半透過性膜上に更に最終加工層を含むことができる。最終加工層は、好適には水溶性であり、且つ商標Opadry及びOpadry Clearにて公知のコーティング等で着色でき又は除去することができる。
【0052】
少なくとも本発明の浸透性製剤の好適な態様では、パーセントでの累積薬物放出は、時間tが1時間と12時間との間である場合に、ゼロ次放出の式:
フィッティング試験後に、Y=100k(t−Tlag)
に対応する。ここでTlagは、2時間のずれ時間を意味する。Yはパーセントでの累積薬物放出であり、且つKは定数である。一次フィッティング後、相関係数R2は、>0.9であり、好適には>0.95である。
【0053】
本発明の浸透性製剤は、標準技術によって製造することができる。製造方法は、
I)生物学的に活性な成分及び任意的な成分からコアを形成し、
II)エチルセルロース、アクリル又はメタクリルポリマー、水溶性可塑剤及び任意的な成分を含む膜組成物でコアをコーティングして、半透過性膜を提供し、
III )半透過性膜中に少なくとも1つの通路を作り出し、そして任意的に
IV)浸透性製剤に最終加工層を適用するステップを含む。
【0054】
好適な観点における製造方法は、
Ia)生物学的に活性な成分をポリマー懸濁化剤及び1つ又はそれ以上の任意的な成分と混合し、そして任意的に混合を造粒し、
Ib)ポリマー膨張剤を1つ又はそれ以上の追加の成分とブレンドし、そして任意的にブレンドを造粒し、
Ic)ステップIa)のブレンド又は顆粒を第一の層に、及び工程Ib)のブレンド又は顆粒を第二の層に組合わせ、そして2つの層を組合わせて、(i)生物学的に活性な成分、親水性懸濁化剤及び任意的な成分を含む第一の層並びに(ii)ポリマー膨張剤及び追加の成分を含む第二の層を含むコア(a)を生成させ、
II)エチルセルロース、アクリル又はメタクリルポリマー、水溶性可塑剤及び任意的な成分を含む膜組成物でコア(a)をコーティングして、半透過性膜を提供し、
III)半透過性膜中に少なくとも1つの通路を作り出し、そして任意的に
IV)浸透性製剤に最終加工層を適用するステップを含んで成る。
【0055】
工程I)、Ia)及びIb)における生物学的に活性な成分及び他の成分は、それぞれ公知の方法においてブレンドすることができる。ブレンドは、好適には、例えば湿式造粒のための水又はエタノール等のアルコールを用いて、その後に顆粒を乾燥させ、必要に応じて任意のふるい工程にかけることによる、公知の湿式造粒技術によって任意的に造粒される。任意的に造粒された混合は、錠剤化工程によってあらかじめ選定された形にプレスすることができる。少なくとも1つの単独の薬物層及び少なくとも1つの単独の押出層が調製されたならば、これらの層は、図2及び3に説明されるような方法において組合せることができる。
【0056】
半透過性膜は、半透過性膜のための出発原料にプレス型を成形、吹付け又は浸漬することによって、或いは米国特許第2,779,241号;J. Am. Pharm. Assoc、第48巻、451〜459頁、1979;及びibid、第49巻、82〜84頁、1960において記載されているような空気懸濁手順によって、プレス型に適用することができる。他の標準製造手順は、Modern Plastics Encyclopedia、第46巻、62〜70頁、1969;及びMack Publishing Company、Easton、Pennaにより刊行された、RemingtoによるPharmaceutical Sciences、第14版、1626〜1678頁、1970において記載されている。半透過性膜のための出発原料は、エチルセルロース、アクリル又はメタクリルポリマー及び1つ又はそれ以上の任意的な添加剤を除き、典型的には1又はそれ以上の溶媒を含む。溶媒は、広く水性溶媒、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、脂肪族炭化水素、ハロゲン化溶媒、脂環式、芳香族、複素環式溶媒及びその混合物から成る群から選定されたメンバーを含む。典型的な溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、酢酸メチル、酢酸エチル、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、メチルイソブチルケトン、メチルプロピルケトン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルアセテート、二塩化メチレン、二塩化エチレン、二塩化プロピレン、四塩化炭素、ニトロエタン、ニトロプロパン、テトラクロロエタン、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、シクロヘキサン、シクロオクタン、ベンゼントルエン、ナフサ、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグリム、水及びその混合物を含む(挙げられた溶媒で、有用でないものは除いて下さい)。最適な溶媒は、エタノール等のアルコールである。アセトンの使用は、エチルセルロース、アクリル又はメタクリルポリマー及び水溶性可塑剤を溶解するために、必要とされない。
【0057】
本発明の好適な態様は、図面を参照して、記載する。
【0058】
図1は、コア102、半透過性膜105及び1つ以上の通路106を含む浸透性製剤101を説明する。
【0059】
図2は、コア202を含む浸透性製剤201の好適な態様を説明する。コアは、押出層203、及び生物学的に活性な成分204を含む薬物層207を含んで成る。コアは半透過性膜205で覆われている。半透過性膜中の通路206は半透過性膜205を通過することができないコアの成分を浸透性製剤201の外側とつなぐ。
【0060】
図3はコア302を含む浸透性製剤301の別の好適な態様を説明する。コアは、押出層303及び生物学的に活性な成分(示していない)を含む薬物層307から成る。コアは半透過性膜305で覆われている。半透過性膜305中の通路306は半透過性膜305を通過することができないコアの成分を浸透性製剤301の外側とつなぐ。
【0061】
浸透性製剤101、202又は301が、水、胃又は腸液等の外部水性流体中に押し出される場合は、水性流体、主に水は、通路106、206、306及び半透過性膜105、205、305を通して、コア102、202、302の中に入り、そして薬物(図2中の204、点で示されている)は、任意的に浸透性薬剤(示されていない)の影響下で、部分的に、又は完全に水性流体中(示されていない)に溶解又は懸濁する。コア102、好適には押出層203、303は、水の吸収で膨張し、そして薬物をコア102、好適には通路106.206、306を介して薬物層207、307に押出すことによって、薬物の持続された、又は制御された放出を提供するポリマー膨張剤(示されていない)を含んで成る。
【0062】
本発明の特に好適な態様を表Iに示す。
【0063】
【表2】

【0064】
薬物層は、好適にはコアの5〜95%、より好適には50〜80%である。
押出層は、好適にはコアの5〜95%、より好適には20〜50%である。
【実施例】
【0065】
本発明は、保護の範囲を制限するとは解釈されない、以下の実施例によって更に説明する。他に示されていない限り、全てのパーセント、部及び割当量は、重量基準である。
【0066】
実施例1〜4及び比較例B
浸透性製剤は、以下の一般手順に従って調製する。成分及びそれらの量は、表IIに載せる。
【0067】
薬物層:グリピジド、Polyox(商標)WSR N−80及びFe23をブレンドし、そして60メッシュのふるいにかける。95%エタノールを用いて、ブレンドを湿式造粒する。顆粒を20メッシュのふるいにかける。40℃のオーブン中で、12時間顆粒を乾燥させ、そしてその後に製粉にかける。顆粒を18メッシュのふるいにかけ、そしてステアリン酸マグネシウムとブレンドする。
【0068】
押出層:Polyox(商標)WSR Coagulant、Polyox(商標)WSR N−750、Methocel E5 セルロースエーテル、NaCl、及びFe34を混合し、そして60メッシュのふるいにかける。Methocel E5 セルロースエーテルは、米国薬局方におけるHypromellose 2910であり、且つ約29%のメトキシ置換、約10%のヒドロキシプロピル置換及び20℃で、Ubbelohde粘度計を用いて、2重量%の水性溶液として測定される4〜6mPa.sの粘度を有する。97.5%エタノールを用いて、混合を湿式造粒する。顆粒を20メッシュのふるいにかける。40℃のオーブン中で、12時間顆粒を乾燥させ、その後に製粉にかける。顆粒を18メッシュのふるいにかけ、そしてステアリン酸マグネシウムとブレンドする。
【0069】
実施例1〜4の半透過性膜:30gのETHOCEL標準20エチルセルロースを400mLの95%エタノールに溶解する。ETHOCEL標準20エチルセルロースは、25℃で、Ubbelohde粘度計において5重量%溶液として測定される18〜22cP(mPa.s)の溶液粘度を有する。溶媒は80%トルエン及び20%エタノールである。エトキシ含有量は、48.0〜49.5%である。ETHOCEL標準20エチルセルロースは、The Dow Chemical Companyから商業的に入手可能である。7.5gのEUDRAGIT(商標)RL100は、100mLの95%エタノールに溶解する。EUDRAGIT(商標)RL100は第4級アンモニウム基において低い含量を有するアクリル及びメタクリル酸メチル及びエチルエステルのコポリマーとしてである。グリセリンは100mLの95%エタノールに溶解する。これらの溶液を混合する。
【0070】
比較例Bの半透過性膜:EUDRAGIT(商標)RL 100を使用しないことを除き、実施例1〜4の半透過性膜と同じ方法で比較例Bの半透過性膜を調製する。
【0071】
錠剤調製:薬物層の成分を第一の層にプレスし、そしてその後に押出層の成分を圧縮し、そして引き続き薬物層にプレスする。2.15mL/分で、コーティング平鍋中の回転錠剤に170mLのコーティング製剤溶液を噴霧する。コーティング条件は、45〜60%の相対湿度で維持する。コーティング工程が完了した後に、半透過性膜を貫くレーザーで孔を開ける。孔の直径は2mm未満であるべきである。
【0072】
比較例A
比較例Aは、半透過性膜が酢酸セルロース及びポリエチレングリコールから成る、商業的に入手可能な浸透性製剤である。
【0073】
【表3】

【0074】
54.4gのKH2PO4及び7.168gのNaOHを8Lの水に溶解して、pH6.8の溶液を生成させることによって調製した緩衝溶液中に、6つの浸透性製剤のサンプルを設置することによって薬物放出を試験する。緩衝溶液の温度は水槽を用いて37℃で維持する。薬物放出は0時間、2時間、4時間、8時間、12時間及び16時間で、276nm及び1cmの路長(キュベット厚)で、UV分光光度法により測定する。人工腸液における薬物濃度は1、2、4、8、10、12及び20Mg/mLの濃度で、メタノールにおける一連のグリピジドの標準溶液のUV吸収とUV吸収を比較することによって決定する。
【0075】
薬物放出試験を3回繰り返して、再現性を試験する。結果は、表IIIに載せる。
【0076】
【表4】

【0077】
表IIIの結果は、本発明の浸透性製剤が、半透過性膜中にフィルム形成性ポリマーとして酢酸セルロースを含む比較例Aと本質的に同一の薬物放出プロファイルを達成するテーラーメイドであり得ることを説明する。実施例1の薬物放出プロファイルは、2〜12時間のゼロ次放出の要求に対応する。一次フィッティング後、実施例1、試験1のR2は、0.999であり、実施例1、試験2のR2は、0.9986であり、且つ実施例1、試験3のR2は、0.9924であり、且つ比較例AのR2は、0.9878である。
【0078】
【表5】

【0079】
実施例4の浸透性製剤は4〜16時間で、比較例Aと同等の薬物放出プロファイルを達成し、且つ比較例Aの浸透性製剤と等しく、浸透性製剤の取り込み及び生物学的に活性な成分の放出の開始の間に有意なずれ時間を有しない。
【0080】
実施例2〜4の薬物放出プロファイルは、2〜12時間のゼロ次放出の要求に対応する。一次フィッティングの後の実施例2のR2は、0.9736であり;実施例3のR2は、0.9988であり、実施例4のR2は、0.9999であり、且つ比較例AのR2は、0.9878である。一次フィッティングの後の比較例BのR2は、0.98である。
【0081】
比較例Bにおける全ての錠剤は、浸透性製剤が緩衝溶液と接触した時に崩壊することが見出された。これは、浸透性製剤に許容され得ない。
【符号の説明】
【0082】
参照符号一覧表
101 浸透性製剤
102 コア
105 半透過性膜
106 通路
201 浸透性製剤
202 コア
203 押出層
204 生物学的に活性な成分
205 半透過性膜
206 通路
207 薬物層
301 浸透性製剤
302 コア
303 押出層
305 半透過性膜
306 通路
307 薬物層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)生物学的に活性な成分を含むコア、
(b)前記コアを覆う半透過性膜及び
(c)前記半透過性膜を通る少なくとも1つの通路、
を含んでなる浸透性製剤であって、前記半透過性膜が、エチルセルロース、アクリル又はメタクリルポリマー及び水溶性可塑剤を含んで前記半透過性膜が、任意的な水溶性可塑剤を除き、水溶性物質を含まないか、又は前記半透過性膜の総乾燥重量に基づき、15重量%以下含む浸透性製剤。
【請求項2】
前記半透過性膜が、半透過性膜の総重量に基づき、10〜90重量%のエチルセルロース及び2〜60重量%のアクリル又はメタクリルポリマーを含む請求項1に記載の浸透性製剤。
【請求項3】
前記半透過性膜中のエチルセルロースとアクリル又はメタクリルポリマーとの重量比が0.1〜15:1である請求項1又は2に記載の浸透性製剤。
【請求項4】
前記半透過性膜が2〜70重量%の前記水溶性可塑剤を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の浸透性製剤。
【請求項5】
前記エチルセルロース、アクリル又はメタクリルポリマー及び水溶性可塑剤の総重量が、前記半透過性膜の総乾燥重量に基づき、85〜100%である請求項1〜4のいずれか1項に記載の浸透性製剤。
【請求項6】
前記コア(a)が(i)前記生物学的に活性な成分を含む第一の層及び(ii)ポリマー膨張剤を含む第二の層を含んでなる請求項1〜5のいずれか1項に記載の浸透性製剤。
【請求項7】
前記コア(a)が、
(ai)生物学的に活性な成分、任意的に1つ又はそれ以上のエチレンオキサイドポリマー、任意的に1つ又はそれ以上の結合剤、1つ又はそれ以上の浸透性薬剤、任意的に顔料及び任意的に潤滑剤を含んでなる薬物層;
(aii)1つ又はそれ以上のエチレンオキサイドポリマー、任意的に1つ又はそれ以上の結合剤、任意的に1つ又はそれ以上の浸透性薬剤、任意的に顔料及び任意的に潤滑剤を含む押出層を含んでなり;且つ
前記半透過性膜(b)がエチルセルロース、アクリル又はメタクリルポリマー並びにクエン酸トリエチル、トリアセチン、ポリエチレングリコール及びグリセロールからなる群から選定される水溶性可塑剤を含んでなるが、前記半透過性膜が、任意の水溶性可塑剤を除き、水溶性物質を含まないか、又は前記半透過性膜の総乾燥重量に基づき、10重量%以下含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の浸透性製剤。
【請求項8】
前記コア(a)が、
(ai)薬物層の総重量に基づき、4〜50重量%の前記生物学的に活性な成分、15〜90重量%の1つ又はそれ以上のエチレンオキサイドポリマー、0〜10重量%のメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びポリビニルピロリドンから成る群から選定される1つ又はそれ以上の結合剤、0〜10重量%の浸透性薬剤、0〜2重量%の顔料並びに0〜1重量%の潤滑剤を含む薬物層;
(aii)押出層の総重量に基づき、15〜60重量%の1つ又はそれ以上のエチレンオキサイドポリマー、1〜10重量%のメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びポリビニルピロリドンからなる群から選定される1つ又はそれ以上の結合剤、15〜50重量%の1つ又はそれ以上の浸透性薬剤、0〜2重量%の顔料並びに0〜1重量%の潤滑剤を含む前記押出層含んでなり;且つ
前記半透過性膜(b)が、前記半透過性膜(b)の総重量に基づき、30〜70重量%のエチルセルロース、5〜40重量%のアクリル又はメタクリルポリマー及び10〜40重量%のクエン酸トリエチル、トリアセチン及びグリセロール形態からなる群から選定される水溶性可塑剤を含むが前記半透過性膜が、任意の水溶性可塑剤を除き、水溶性物質を含まないか、又は5重量%以下を含む請求項7に記載の浸透性製剤。
【請求項9】
前記パーセントでの累積薬物放出が、時間tが2時間と12時間との間である場合に、ゼロ次放出の式:
フィッティング試験後に、Y=100k(t−Tlag)(ここでTlagは、2時間のずれ時間であり、Yはパーセントでの累積薬物放出であり、且つkは定数であり、そして一次フィッティング後の相関係数R2は、>0.9である)を満たす請求項1〜8のいずれか1項に記載の浸透性製剤。
【請求項10】
前記浸透性製剤の取り込みと前記生物学的に活性な成分の放出の開始の間に、ずれ時間を有しないことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の浸透性製剤。
【請求項11】
I)前記生物学的に活性な成分及び任意的な成分からコアを形成し、
II)エチルセルロース、アクリル又はメタクリルポリマー、水溶性可塑剤及び任意的な成分を含んでなる膜組成物で前記コアをコーティングして半透過性膜を提供し、
III)前記半透過性膜中に少なくとも1つの通路を作り出し、そして任意的に
IV)前記浸透性製剤に最終加工層を適用する工程を含んでなる請求項1〜10のいずれか1項に記載の浸透性製剤の調製方法。
【請求項12】
Ia)前記生物学的に活性な成分をポリマー懸濁化剤及び1つ又はそれ以上の任意的な成分とブレンドし、そして任意的に前記ブレンドを造粒し、
Ib)ポリマー膨張剤を1つ又はそれ以上の追加の成分とブレンドし、そして任意的に前記ブレンドを造粒し、
Ic)前記工程Ia)のブレンド又は顆粒を第一の層に、そして前記工程Ib)のブレンド又は顆粒を第二の層に組合わせ、そして前記2つの層を組合せて、(i)前記生物学的に活性な成分、前記親水性懸濁化剤及び任意的な成分を含む第一の層並びに(ii)前記ポリマー膨張剤及び追加の成分を含む第二の層を含んでなるコア(a)を生成させ、
II)エチルセルロース、アクリル又はメタクリルポリマー、水溶性可塑剤及び任意的な成分を含む膜組成物で前記コア(a)をコーティングして、半透過性膜を与え、
III)前記半透過性膜中に少なくとも1つの通路を作り出し、そして任意的に
IV)前記浸透性製剤に最終加工層を適用する工程を含んでなる請求項11に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−528799(P2012−528799A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513438(P2012−513438)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【国際出願番号】PCT/CN2009/072099
【国際公開番号】WO2010/139111
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】