説明

循環式穀物乾燥機

【課題】清掃作業を必要としない結露対策方法を講じた循環式穀物乾燥機を提供する。
【解決手段】循環式穀物乾燥機1において,排風胴9を構成する外側面10aには,漏斗状の底板11の傾斜上端よりも上方位置に,排風胴9の長手方向に沿って配設した外気導入口17を備える。これにより,前記排風胴9の一側面を構成する外側面10aの内面に露が発生し,該露が外側面10aの内面に沿って流下しても,前記外気導入口17から吸引される外気による噴風によって吹き飛ばされて排風とともに機外排出されるので,取出部4における底板11に露が流れ落ちることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,結露対策を講じた循環式の穀物乾燥機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、循環式穀物乾燥機は上から順に,貯留タンク部,熱風乾燥部及び穀物取出部を重設してなる本体部と,前記穀物取出部から取出された穀物を貯留タンク部に還流する還流装置(昇降機及び上部搬送機)とから構成される。前記熱風乾燥部は,本体部の幅方向中央位置に熱風胴を横設するとともに,該熱風胴の両側方に穀物流下層及び排風胴を順に横設してなる。前記熱風胴は,本体部の一側(前側)に配設した熱風発生装置に接続して熱風の供給を受けるようになっている。前記排風胴は,本体部の他側(後側)に配設した排風ボックス及び排風ファンと連通し,前記穀物流下層を通風した排風を機外に排風するための通路になっている。前記排風胴の一側面を形成する機壁には穀物張込用の開閉扉が形成されおり,原料穀物は該開閉扉を開けて投入し,前記還流装置によって貯留タンク部に貯留される。そして,制御装置による乾燥運転制御により,穀物流下層を流下する際に熱風の通風を受ながら,前記穀物の水分値が所定値になるまで本体部内を循環する。なお,乾燥運転の際に穀物流下層の穀粒間を通風した排風は排風胴に至り,この後,排風ボックスを通過して排風ファンから機外に排風される。
【0003】
ところで,従来の循環式穀物乾燥機においては,外気温度が低いときに,高水分穀物の乾燥を行うと,外気温度と前記排風(高湿)温度との温度差により,前記排風胴の一側面を形成する機壁の内面(以下「側方機壁」という)に露が生じることがある。前記側方機壁に露が生じると,該露は側方機壁面を流下して前記穀物取出部の集穀板(漏斗状底板)に落ち,更に集穀板面を流下して還流される穀物に付着するという不具合や、露によって濡れた前記集穀板面に夾雑物が付着・堆積するという不具合が生じる。このような結露による不具合の対策方法としては特許文献1のものがある。この特許文献1の対策方法は、前記側方機壁の下部に、該側方機壁面を流下した露を受け止めるために,排風胴の長手方向に延設した樋を構成するとともに,該樋の一端に機外排水用のホースを接続し,樋に受けた露をホースから機外排水するものである。
【0004】
【特許文献1】実開昭59−110893号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の手段には以下の問題点があった。すなわち、前記排風胴内には、言うまでもなく,前記穀物流下層から穀粒が穀物取出部に流下(落下)した際に生じる塵埃や藁(わら)、シイナ等のごみが前記排風の通風によって舞い上がって充満しているので、前記樋の中には,該樋中に溜まった露の水分を吸収しながらごみが次第に堆積してしまう。このため,穀物の収穫時期の前後、または,原料に含まれるゴミの量が多いときのシーズン中には,前記樋に溜まったごみを清掃により除去する必要がある。
そこで,本発明はこれらの問題点にかんがみ、清掃作業を必要としない結露対策方法を講じた循環式穀物乾燥機を提供することを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1によれば、
穀物を貯留する貯留タンクと,
横設した熱風胴の両側に穀物流下層と排風胴を順次横設するとともに,熱風胴の一端側に熱風発生装置を接続し,かつ,排風胴の一端側に排風ファンを接続して前記穀物流下層を流下する穀物に熱風を通風する熱風乾燥部と,
漏斗状の底板を有し前記熱風乾燥部の穀物を機外に取出す取出部と,
該取出部から取出した穀物を前記貯留タンクに還流する還流部と,
前記熱風乾燥部,取出部及び還流部等の駆動制御を行う制御部とを備えた循環式穀物乾燥機において,
前記排風胴を構成する外側面には,前記底板の傾斜上端よりも上方位置に,排風胴の長手方向に沿って配設した外気導入口を備えるという技術的手段を講じるものである。
【0007】
これによれば,排風胴の一側面を構成する外側面に露が発生し,該露が外側面の内面に沿って流下しても,該露は前記外気導入口から吸引された噴風(外気)によって吹き飛ばされた後に排風とともに機外排出されるので,取出部における底板に流れ落ちることがない。また,排風は前記噴風と混合されるので外気との温度差が低減する。
【0008】
また,請求項2によれば,前記外気導入口は前記外側面の下端部に形成するという技術的手段を講じるものである。これによれば,前記外側面の下端部よりも上方に生じて流下する露を,下端部にのみに形成した外気導入口からの噴風によって吹き飛ばすことができる。
【0009】
さらに,請求項3によれば,前記外気導入口はスリット孔によって構成するという技術的手段を講じるものである。これによれば,スリット孔からはシャープな噴風がなされるため,露は確実に吹き飛ばされる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、排風胴の一側面を構成する外側面の内面に露が発生し,該露が外側面に沿って流下しても,外気導入口からの噴風により露が吹き飛ばされて排風とともに機外排出されるので,取出部における底板に流れ落ちることがなく,前記底板が濡れてこれにゴミが付着し堆積することがない。したがって,本発明は,従来のような樋を設けないので清掃作業を必要とせず,外側面に外気導入口を形成するという簡単な構成により結露対策を行うものである。また,本発明によれば,排風は噴風と混合されることにより,外気との温度差が低減するので,外側面への露の発生量自体を低減する効果もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は本発明の循環式穀物乾燥機1の前方斜視図,図2は後方斜視図を示す。図3は,循環式穀物乾燥機1の正面縦断面図を示す。循環式穀物乾燥機1は,穀物を貯留する貯留タンク2,熱風を通風して穀物を乾燥する熱風乾燥部3及び穀物を機外に取出す取出部4を上から順に重設してなる本体部1aと,前記取出部4から取出された穀物を前記貯留タンク2に還流する還流部5と,駆動モータ等を制御する制御部6とを備えてなる。前記貯留タンク2は機壁2aと天井板2bによって構成する。
【0012】
前記熱風乾燥部3には,前記本体部1aの長手方向に横設し,本体部1aの一方側に配設した後方機壁10c及び隔壁7aによって囲繞(いにょう)した熱風胴7を有する(図4参照)。該熱風胴7の一方側は開口部を介して熱風発生装置7bと連通し,熱風が供給されるようになっている。前記熱風胴7における長手方向の両側には,前記隔壁7aと対設した隔壁8aとの間による穀物流下層8が横設してあるとともに,該穀物流下層8の更に側方には排風胴9が横設してある。前記隔壁7a及び隔壁8aのそれぞれには,穀物流下層8を流下する穀物に熱風を通風するための多孔部が設けてある。前記排風胴9は,前記隔壁8a,本体部1aの側方に配設した側方機壁(外側面)10a,本体部1aの前方に配設した前方機壁10b,前記後方機壁10c及び後述する漏斗状底板11によって囲繞し形成されている。前記排風胴9における後方機壁10cには開口部9aが形成され,該開口部9aは,排風ボックス12を介して排風ファン13と連通させてある。
【0013】
前記側方機壁(外側面)10aは,周縁部に縁部14を立設した矩形(くけい)状の板により構成する(図5及び図6参照)。図5に示した符号15は補強部である。本体部1aにおいて,一方側の前記側方機壁10aは,その取付け位置に張込用扉16も配設するため,他方側の側方機壁10aよりも長さが短い(図6参照)。本発明の特徴構成であるが,前記側方機壁10aの下部には,長手方向に沿って外気導入口17を配設する。該外気導入口17は,スリット状の孔18を一定間隔ごとに配設して構成する。該スリット孔18は,例えば,長さ11mm,高さ3mmの大きさとし,75mm間隔で配設する。前記外気導入口17の形状は,前記側方機壁10a面を流下してきた露を吹き飛ばすための外気通風(噴風)が得られるものであればよく,例えば,丸形としたり,スリット孔を直線状ではなく千鳥上に配置したり,二列に配設するようにしてもよい。ただし,外気導入口17を設ける数又は面積は,穀物の乾燥効率(能力)を低下させない程度に設ける必要がある。
【0014】
前記取出部4は,各側方機壁10aの下端部近傍にその上端部を接続しかつその他方側を本体部1aの中央部に向かって下方傾斜した前記漏斗状底板11と,該漏斗状底板11の中央下部に横設した下部搬送機11aとを有する。さらに,前記穀物流下層8の下端位置に配設した繰出しバルブ19も含む。前記下部搬送機11aの搬送終端側は前記還流部5を構成する昇降機5aの搬送始端側に接続し,該昇降機5aの搬送終端側は前記貯留タンク2の上部に横設した上部搬送機5bの搬送始端側に接続する。該上部搬送機5bの搬送終端側は貯留タンク2内に臨ませてある。
【0015】
前記制御部6は,前記繰出しバルブ19や昇降機5aなどのモータ駆動制御回路や前記熱風発生装置7bのバーナー制御回路や仕上げ水分値等の設定部,各種の運転操作ボタンなどを有してなっている。また,前記バーナー制御回路等は,前記昇降機5aに設けた穀物水分計(図示せず)からの測定水分値に基づいて乾燥速度などの制御を行うようになっている。
【0016】
以下,本発明における循環式穀物乾燥機1の作用を説明する。オペレータが前記制御部6の張込運転ボタンを選択すると,前記制御部6のモータ駆動制御回路により,前記昇降機5a,上部搬送機5b及び下部搬送機11aが駆動する。この後,前記張込用扉16を開けて原料穀物を張り込むと,該穀物は下部搬送機11a,昇降機5a及び上部搬送機5bを通って貯留タンク2内に供給されて堆積する。張り込む原料穀物が無くなると,停止ボタンを押し,前記昇降機5a,上部搬送機5b及び下部搬送機11aの駆動が停止する。
【0017】
この張込運転終了後,オペレータが,乾燥仕上げ水分値等の設定をして乾燥運転ボタンを選択すると,前記昇降機5a,上部搬送機5b,下部搬送機11a,繰出しバルブ19,排風ファン13及び熱風発生装置7bが駆動する。前記熱風発生装置7bが生成した熱風は前記排風ファン13の吸引作用により,熱風胴7に吸引された後,穀物流下層8,排風胴9,排風ボックス12を通風し,前記排風ファン13から排風として機外排風される。前記貯留タンク2の穀物は穀物流下層8において前記熱風の通風を受け,この後,繰出しバルブ19から繰り出され,還流部5によって貯留タンク2に還流される。乾燥運転は,前記穀物水分計で測定した穀物水分値が乾燥仕上げ水分値になった時点で自動終了(停止)する。
【0018】
本発明の特徴作用を説明する。前記乾燥運転の際,外気温度が低く,かつ,乾燥中の穀物の水分値が高いときには,穀物流下層8を通風した時に高湿化された排風が排風胴9を通過するため,外気との温度差により,前記各側方機壁(外側面)10aの内面に露が生じる。該露は各側方機壁10aの内面に沿って流下し,前記外気導入口17(スリット孔18)に差し掛かかる(図7参照)。このとき,前記スリット孔18からは,排風ファン13の吸引作用によって外気が吸引され,排風胴9内に向かった噴風が生じている。該噴風により,前記スリット孔18に差し掛かった露は吹き飛ばされて排風とともに機外排風されるので,流下した前記露は前記漏斗状底板11に落ちることがない。このため,該漏斗状底板11面を流下して下部搬送機11aにおいて搬送される穀粒に付着することがない。また,排風は前記噴風と混合されるので,排風の温度が低下し,外気との温度差が小さくなる。このため,各側方機壁10aの内面に発生する露の量を低減する効果がある。
【0019】
なお,上記説明では,前記外気導入口17は各側方機壁10aにのみ形成したが,これに限ることなく,張込用扉16や,各排風胴9における前方機壁10bに形成してもよい。また,前記外気導入口17は,各側方機壁10aにおける下端部だけでなく,該各側方機壁10aの上下方向における中間位置などにも形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明における循環式穀物乾燥機の前方斜視図
【図2】同乾燥機の後方斜視図
【図3】同乾燥機の正面縦断面図
【図4】図3におけるA−Aの断面図
【図5】側方機壁の斜視図
【図6】他方の面における側方機壁の斜視図
【図7】本発明の作用を示した要部拡大図
【符号の説明】
【0021】
1 循環式穀物乾燥機
1a 本体部
2 貯留タンク
2a 機壁
2b 天井板
3 熱風乾燥部
4 取出部
5 還流部
5a 昇降機
5b 上部搬送機
6 制御部
7 熱風胴
7a 隔壁
7b 熱風発生装置
8 穀物流下層
8a 隔壁
9 排風胴
9a 開口部
10a 側方機壁(外側面)
10b 前方機壁
10c 後方機壁
11 漏斗状底板
11a 下部搬送機
12 排風ボックス
13 排風ファン
14 縁部
15 補強部
16 張込用扉
17 外気導入口
18 スリット孔
19 繰出しバルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀物を貯留する貯留タンクと,
横設した熱風胴の両側に穀物流下層と排風胴を順次横設するとともに,熱風胴の一端側に熱風発生装置を接続し,かつ,排風胴の一端側に排風ファンを接続して前記穀物流下層を流下する穀物に熱風を通風する熱風乾燥部と,
漏斗状の底板を有し前記熱風乾燥部の穀物を機外に取出す取出部と,
該取出部から取出した穀物を前記貯留タンクに還流する還流部と,
前記熱風乾燥部,取出部及び還流部等の駆動制御を行う制御部とを備えた循環式穀物乾燥機において,
前記排風胴を構成する外側面には,前記底板の傾斜上端よりも上方位置に,排風胴の長手方向に沿って配設した外気導入口を備えたことを特徴とする循環式穀物乾燥機。
【請求項2】
前記外気導入口は前記外側面の下端部に形成したことを特徴とする請求項1に記載の循環式穀物乾燥機。
【請求項3】
前記外気導入口はスリット孔によって構成したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の循環式穀物乾燥機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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