説明

循環系に補足的な血流を確立するための装置、方法、及びシステム

患者の心臓(15)の内腔(14)と離れた位置との間に血流導管を設ける、装置、システム、及び方法。血液流入カニューレ(12)が、外面と近位端部分及び遠位端部分(12b、12a)とを有する。遠位端部分(12a)は、心臓(15)の内腔(14)に挿入されるように構成される。第1及び第2のアンカー要素(80、82)が、カニューレ(12)の外面から外側に延びる最大幅寸法をそれぞれ有する。第1のアンカー要素(80)は、第2のアンカー要素(82)より遠位に配置され、組織収容空間をそれらの間に画定する。使用の際には、第1のアンカー要素(80)の最大幅寸法は、第2のアンカー要素(82)の最大幅寸法より大きくてよい。第1のアンカー要素(80)は、心臓の内腔(14)の内側に配置されるように構成され、第2のアンカー要素(82)は、心臓の内腔(14)の外側に配置されるように構成され、心臓組織は、それらの間の組織収容空間に保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[相互参照]
本出願は、2006年8月30日出願の米国仮特許出願第60/823,971号明細書、「Devices, Methods and Systems for Establishing Supplemental Blood Flow in the Circulatory System」の優先権の利益を主張するものであり、参照によりその全体が本明細書に明示的に組み込まれる。
【0002】
本発明は、概して、医療用装置及び方法に関し、より詳細には、患者の血液循環を支援するシステムにおける患者の心臓への流体接続の方法、及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
血液を心臓から案内して患者の血液循環を支援するために、様々な装置及び方法が利用されてきた。これは、患者がうっ血性心不全になっている場合や、臓器を移植したことがないか、または患者が移植に適さない場合に、望ましいかまたは必要であることが多い。血液ポンプは、典型的には、心臓の左心室に直接取り付けられるが、少なくとも1つの血液ポンプシステムでは、ポンプをペースメーカーのようにして皮下などに離して配置する。この点については、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、特許文献1を参照されたい。こうした状況または同様の状況では、カニューレを使用して流入導管を作ることができ、その流入導管は、心臓(胸腔内位置)から、いわゆる「ペースメーカーポケット」でよい、表面近くの(胸腔ではない)位置に配置されたポンプに至る。もちろん、代替形態として他の離れた位置が可能である。ペースメーカーポケットは、通常外科的な切開によってアクセスされる位置であり、その切開は、胸筋上を、鎖骨の下方を鎖骨に対して概して平行に、胸部に向かって下方に延びる。ペースメーカーポケットは筋肉の下に作られることがある。カニューレはポンプに連結され、そのポンプは、胸部のポケットに着座するものであり、好ましくは胸部の右側にあるがそれに限定されない。
【0004】
改良が必要な一領域は、流入導管またはカニューレを心臓に流体連結するアンカー留め機構である。心臓の内腔にカニューレを連結しアンカー留めすることができ、心臓の内腔から血液を案内するかまたは導管中を通すことが望ましい。アンカー留め点の一つは左心房などの左心にある。これは、特許文献1に示されている。こうした連結が可能な限り安全であり漏出がないことを確実にすることが望ましい。さらに、連結を行う手技は、この状況下ではできるだけ単純にすべきである。
【0005】
本発明に関連して知られており使用可能である、一般的なカニューレ植込み方法は、多くの異なる手法を含むことができ、代表的な手法のいくつかを以下でさらに説明する。例えば、胸腔に直接侵襲することによってカニューレを植え込むことができる。他の外科的な方法には、胸骨正中切開を行って胸腔内で心臓を完全に露出する、いわゆる開心術が含まれる。さらに他の外科的な方法には、開胸術、小開胸術、胸腔鏡、または他の低侵襲性手法など、低侵襲性の外科的方法が含まれる。これらの外科的な方法のいずれかを使用して、本明細書で説明するように、カニューレを心臓の所望の位置と流体連絡した状態で植え込むことができる。
【0006】
あるいは、胸腔に直接侵襲するのではなく、もともと心臓に連結されている血管を使用して心臓にアクセスする、カニューレを植え込む経管法を利用することができる。経管法には、カニューレを、右心を経由して左心に送達するいわゆる経静脈送達法が含まれる。右心には、主な血管及びより遠位の末梢静脈が生来の導管を与え、それらの生来の導管を通してカニューレを送達することができる。この手法では、カニューレは、より正確にはカテーテルと称することができる。経管法では、一般に、造影剤強化蛍光透視法及び/または超音波イメージングなどによる間接的な視覚化を利用して、人体の血管中を通る装置の進路を決める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,530,876号明細書
【特許文献2】米国特許第6,176,848号明細書
【特許文献3】米国特許第6,116,862号明細書
【特許文献4】米国特許第6,942,611号明細書
【特許文献5】米国特許第6,623,475号明細書
【特許文献6】独国特許出願公開第10 2004 019 721.0号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、患者の血液循環を支援するシステムにおける患者の心臓への流体接続の方法、及び装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
概して、また多くの代替の態様の一つでは、本発明は、患者の心臓の内腔と、血液ポンプが心臓から離れて存在する位置などの離れた位置との間に血流導管を設ける装置を提供する。この点において、本明細書で使用する「remote(離れた)」という用語は、心臓から離れているという意味であり、心臓からの具体的な距離に限定されない。この装置は流入カニューレを備え、その流入カニューレは外面と(カニューレを植え込んでいる外科医に対して)近位端及び遠位端部分とを有する。遠位端部分は、心臓の内腔に挿入するように構成される。第1及び第2のアンカー要素が、それぞれ最大幅寸法を有し、その最大幅寸法は、遠位端部分で流入カニューレの外面から外側に延びる。第1のアンカー要素は、第2のアンカー要素より遠位に配置され、第1のアンカー要素と第2のアンカー要素との間に組織収容空間が画定される。第1のアンカー要素の最大幅寸法は、本発明のこの態様では第2のアンカー要素の最大幅寸法より大きい。第1のアンカー要素は心臓内腔の内側に配置されるように構成され、第2のアンカー要素は心臓内腔の外側に配置されるように構成され、それらの間の組織収容空間に心臓組織が保持される。本発明の他の装置/システムと同様に、この装置は、任意の適切なタイプの外科的手技によって患者に導入することができる。
【0010】
本発明の他の態様では、直前に概略的に説明したような装置は、カテーテルベースのシステムに実装される。この態様では、流入カニューレはより具体的には血液流入カテーテルであり、その流入カテーテルは、患者の静脈系中に案内されるように構成される。侵襲性が最小になる様式で血液の流入導管を設けるために、流入カテーテルをデリバリーカテーテルで受けることができる。
【0011】
本発明の他の態様では、本発明の装置及びシステムはさらに、入口及び出口を有する血液ポンプ含むことができる。その出口は、流出カニューレまたはカテーテルを介して患者の循環系の離れた位置に連結するように適合され、その入口は、流入カニューレに連結するように適合される。
【0012】
他の態様では、本発明は、心臓から補足的な血流を供給するための、患者の心臓の内腔から離れた位置に血流を確立する方法を提供する。この方法は、流入カニューレの遠位端部分の少なくとも一部分を心臓の内腔中に挿入するステップを含むことができる。遠位端部分は、第1及び第2のアンカー要素を含み、アンカー要素はそれぞれ、流入カニューレの長手方向軸に垂直な方向に最大幅寸法を有する。第1のアンカー要素は最大幅寸法が第2のアンカー要素より大きい。この方法はさらに、第1のアンカー要素を内腔の内側に、内腔を画定する組織の内面に接するように配置するステップと、第2のアンカー要素を内腔の外側に、内腔を画定する組織の外面に接するように配置するステップとを含む。
【0013】
本発明のいくつかの態様に従って実行される他の方法では、流入カニューレの遠位端部分が心臓の内腔に挿入され、第1及び第2のアンカー要素を含み、第1のアンカー要素は第2のアンカー要素より遠位に配置され、組織収容空間が第1のアンカー要素と第2のアンカー要素との間に位置する。この方法はさらに、より近位に位置する第2のアンカー要素を内腔の外側に引き出すステップを含む。組織が組織収容空間内に保持され、カニューレが内腔と流体連絡するように、より近位に位置する第2のアンカー要素は、内腔を画定する組織の外面に接して係合し、第1のアンカー要素は、内腔の内側に残されて内腔の内面に係合する。必要な場合は、さらにアンカー要素間に組織を固定する様々な様式を使用することができる。一様式は、1つまたは複数の巾着縫合タイプの縫合糸による連結の使用であってよい。
【0014】
これらの実施形態の様々な追加の特徴及び態様ならびに本発明の範囲は、添付の図面と併せて例示的な実施形態の以下の詳細な説明を検討する際により簡単に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1A】胸部の解剖学的構造の概略図であり、患者の心臓にアクセスするのに使用される静脈系の通路の一例を示す。
【図1A−1】図1Aと同様の図であるが、他の代表的で例示的なカニューレまたはカテーテルの通路を示す。
【図1B】心臓を含む胸部の解剖学的構造の拡大図であり、心臓の左心房の内腔または左心房までの通路を設ける最初のステップを示す。
【図1C】手技の最初の部分の期間に使用されるカテーテル装置及び心臓の拡大図を示す。
【図1D】図1Cと同様の図であるが、手技の後続の部分を示す。
【図1E】図1Dと同様の図であるが、手技の後続の部分を示す。
【図1F】図1C〜図1Eと同様の図であるが、血液流入カテーテルを左心房の壁にアンカー留めするステップに関連する後続の手技のステップを示す。
【図1G】図1C〜図1Eと同様の図であるが、血液流入カテーテルを左心房の壁にアンカー留めするステップに関連する後続の手技のステップを示す。
【図1H】図1C〜図1Eと同様の図であるが、血液流入カテーテルを左心房の壁にアンカー留めするステップに関連する後続の手技のステップを示す。
【図1I】図1Bと同様の図であるが、流入及び流出カテーテルの近位端に補足的血流ポンプを取り付けるステップを示す。
【図1J】図1Iと同様の図であるが、補足的血流ポンプがペースメーカーポケットの位置に表面近くに植え込まれた状態の、完全に植え込まれたシステムを示す。
【図2】図1Hと同様の図であるが、流入カテーテルを心臓組織にアンカー留めする、アンカー留めシステム及び方法の他の代替の実施形態を示す。
【図3A】胸部の解剖学的構造の概略図であり、患者の心臓にアクセスし、本発明の他の実施形態による循環支援システムを植え込むために用いられる、静脈系の外側の他の通路の一例を示す。
【図3B】切開を行って心臓の内側へのアクセス位置を露出することができる位置を示す心臓の拡大図である。
【図3C】図3Bと同様の図であるが、露出したアクセス位置を示し、流入カニューレがそのアクセス位置に向けられている状態を概略的に示す。
【図3D】流入カニューレの遠位端または先端部分を受ける、2本の巾着縫合糸が小切開部の周りに用いられている状態を示す、心臓のアクセス位置または領域の拡大図である。
【図3E】図3Dと同様の拡大図であるが、流入カニューレの遠位端部分が切開部を通して心臓の左心房に完全に挿入された状態を示す。
【図3F】図3Eと同様の図であるが、流入カニューレの遠位端部分が部分的に引き出され、巾着縫合糸が締め付けられた状態を示す。
【図4A】流入カニューレの遠位部分が適切に配置されたアクセス位置の断面図であり、緩んだ巾着縫合糸を示す。
【図4B】流入カニューレの遠位部分が適切に配置されたアクセス位置の断面図であり、カニューレのアンカー要素間の組織を絞った状態を示す、締め付けた巾着縫合糸を示す。
【図5】流入カニューレの長手方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1Aは、本発明のいくつかの態様に従って植え込まれた血液循環支援システム10の、多くの可能な一般的構成の一つを示す。本明細書の教示に従って構成された装置及びシステムは、本明細書で概略的に考察したものを含むがそれらに限定されない、適切な外科的様式で植え込むことができる。図1Aは、経静脈管腔内様式で植え込まれたシステム10を示し、具体的には、静脈系を通り上大静脈16及び鎖骨下静脈18を介して心臓15の左心房14中に至る流入カニューレ12を示す。カニューレ12は静脈系を通るので、本明細書ではより具体的にカテーテル12と称する。流入カテーテル12は、患者20の鎖骨付近の場所で出る。カテーテル12の遠位端12aは、それが左心房14内に存在するように、概して卵円窩の位置で心房中隔30を貫通して配置される。例えば、左心(例えば、左心房及び/または左心室)内の任意の部分にアクセスして、酸素化した血液にアクセスすることができる。カテーテル12の近位端12bは、血液ポンプ34の入口32に接続される。さらに示すように、任意の適切な血液ポンプ34を使用することができ、その血液ポンプ34は、特許文献2、特許文献3、特許文献4、及び特許文献5、または特許文献6に記載されたものを含む。流出カテーテル36がポンプ34の出口38と表面近くの腋窩動脈40などの動脈との間で連結される。したがって、血流は、矢印42の方向に流れ、左心房14からポンプ34を通り、流出カテーテル36を通して患者の動脈系に至る。
【0017】
図1A−1は、頚静脈50を介して経静脈の管腔内植込みが行われる、代替のシステム構成を示す。流入カテーテル12は、ポンプ34が配置される胸部ポケットから形成された皮下トンネルに沿って、頚静脈出口位置52から運ばれる。図1A及び図1A−1に示すシステムの植込み構成は、代表的であり望ましいが、例えば、特定の患者のニーズまたは外科医の要望に応じて、他の多くの植込み構成及びスキームを実施することができることが理解されよう。
【0018】
図1B〜図1Dは、左心房14中への中核横断の穿刺を行うのに使用される技術及び構成要素を連続した形で示す。この適用例では、その手技を、ペースメーカーの植込みで使用されるのと同様の鎖骨下胸部血管切開部60から開始することができる。より具体的には、図1Bは中隔横断システムを示し、そのシステムは、シースすなわちデリバリーカテーテル62と、そのデリバリーカテーテル62で受けられる拡張装置64とを含む。この方法では、針(図示せず)を最初に使用して、概して卵円窩の位置で心房中隔30を穿刺することができる。次いで、この針をガイドワイヤー66と取り替えることができ、そのガイドワイヤー66は拡張装置64を通して左心房14中に案内される。図1Cは、ガイドワイヤー66上で心房中隔30を貫通して拡張器64を前進させるステップを示す。ガイドワイヤー66は、左心房14内でループ状になっており、それにより、典型的には、ガイドワイヤー66の遠位先端部66aによる心臓組織への損傷を避けるのを助ける。図1Dは、中隔30(すなわち、心房の内腔間の組織構造)を貫通して中核横断シースすなわちデリバリーカテーテル62を前進させ、次いで、矢印70で示すように拡張器64を抜去する、後続のステップを示す。拡張器64は、シースすなわちデリバリーカテーテル62を残して完全に取り出され、流入カテーテル12を送達するために、遠位先端部62aと、手技の次のステップで使用するガイドワイヤー66とが左心房14に位置する。
【0019】
図1Eに示すように、流入カテーテル12は、システムのポンプ流入カテーテルであり、ガイドワイヤー66上を中核横断デリバリーカテーテルすなわちシース62を通して導入することができる。流入カテーテル12は、それに固定された第1及び第2のアンカー要素80、82を含み、第1のアンカー要素80は、流入カテーテル12上で第2のアンカー要素82より遠位に配置される。この構成では、アンカー要素80、82を、デリバリーカテーテルすなわちシース62を通した送達中にコンパクトな状態に保持することができ、後続の1つまたは複数のステップの期間にデリバリーカテーテル62から出るときに選択的または自動的に拡張させることができる。
【0020】
図1Fは、最も遠位のアンカー要素80、すなわち第1のアンカー要素がデリバリーカテーテル62の遠位先端部62aから左心房14内に配置されるまでの、流入カテーテル12の前進を示す。この態様では、第1すなわち遠位のアンカー要素80は、アンカー要素80がデリバリーカテーテル62から出るときに、それに関連する拡張機構によって、またはアンカー要素80自体を形成する材料の特徴によって、自動的に拡張することができる。あるいは、外科医が操作する機構を実装することができ、手技の間に所望に応じてアンカー要素80、82の一方または両方を選択的に拡張する。図1Gに示すように、流入カテーテル12がデリバリーカテーテルすなわちシース62の遠位先端部62aから押し出されるときに、両方のアンカー要素80、82を左心房14内に配置することができる。次いで、第2のアンカー要素82が心房中隔30に作られた開口92中を通して引っ張られ、図1Hに示すように、心房中隔30の(左心房の内腔に対する)外面に接するようになるまで、図1Gの矢印90に示すように、流入カテーテル12が近位に引っ張られる。心房間の壁すなわち中隔30を貫通して第2すなわち近位のアンカー要素82が移動するのを助け、外科医に知覚可能なフィードバックを提供するために、第2のアンカー要素82をその最大幅寸法が第1のアンカー要素80より小さくなるように形成することができる。要素80、82が実質上円形のディスクである場合は、例えば、アンカー要素80は拡張直径が14mmでよく、要素82は拡張直径が12mmである。これにより、小さいほうのアンカー要素82が、心房中隔30の開口92中を通して認識可能に飛び出すことができ、大きいほうのアンカー要素80を、左心房14内の中隔30の反対側に接する安定したストップとして残すことを確実にする。結果として生じる連結は、概して、図1Hに示すようになるが、アンカー要素80、82自体は様々な形状、設計及び構成のものでよい。流入カテーテル12の遠位端12aは、図示のように第1のアンカー要素80から左心房14中に延びても延びなくてもよく、その代わりに、アンカー要素80の心房側と面一でもよく、あるいは、任意の適切な様式で構成され形成されてもよいことが理解されよう。
【0021】
このシステムを完成するには、流出カテーテル36を図示したように患者20の動脈系に連結する。例えば、流出カテーテル36は、適切なグラフト及び縫合糸96の使用を含むことができる適切な外科的切開術及び取付け手技によって、腋窩動脈40に連結することができる。補足的血流ポンプ34は、入口32及び出口38を有し、流入及び流出カテーテル12、36に接続される。流入及び/または流出カテーテル12、36は、最初に適切な滅菌した切断具98によって適切な長さに切断されて、図1Jに示すように、カテーテル12、36がもつれることなしに、このシステムを、例えば、胸部ペースメーカーポケット中により簡単に植え込むことができる。
【0022】
図2に関して、同様の参照番号は上記で説明したのと同様の要素を指す。図2は、代替のアンカー留め方法を示し、その方法では、第1及び第2のアンカー要素80、82が図示のようにコンパクトな状態で組織の両側に存在することができ、次いで、この例では、やはり心房中隔30である組織に接してアンカー留め及びそれに接してシールするように選択的に拡大される。他の代替例としては、第2のアンカー要素82がコンパクトな状態で開口92中を通して引き抜かれるときに、左心房14(または左心の他の位置)に存在する第1のアンカー要素80は、拡張し、心房14の内面に接して着座することができる。次いで、第2のアンカー要素82は、(左心房の内腔14に対して)中隔30の外面に接して拡張することができる。この実施形態では、前述の実施形態と同様に、アンカー要素80、82は寸法が異なっていても異なっていなくてもよい。
【0023】
上述のように、アンカー要素80、82は、任意の適切な構成を備えることができ、任意の適切な配置方法を含むことができる。所望の一形状は、ディスク形の要素であり、これは血液流入カニューレ12の外側の周りを延びるフランジとして働き、心臓組織に接して液密のシールを形成することができる。アンカー要素80、82の材料は、例えば、手術グレードのシリコンなど、柔軟且つ/または弾性の材料でよい。あるいは、任意の他の材料(複数可)を使用することができる。例えば、組織の成長を促進するか、または組織の成長を促進する材料によって被覆された材料を使用することができる。アンカー要素は、デリバリーカテーテル62から取り外すときに自動拡張可能であってもよく、外科医が操作する任意の適切な機構によって拡張してもよい。取付けまたはアンカー留め位置まで送達する間に、また任意選択でアンカー留め手技の最初の部分の期間中に、最初にアンカー要素80、82をコンパクトな状態に保持するために、デリバリーカテーテル62を除く他の拘束部材も同様に使用することができる。
【0024】
図3Aは、他の実施形態に従って完全に植え込まれた循環支援システム100を示す。やはり、以下に示すいくつかの図面の同様の参照番号は、上述のように同様の要素を示す。具体的には、このシステム100は、流入カニューレ102、血液ポンプ104、及び流出カニューレ106を備える。グラフト(図示せず)を使用して、または他の適切な様式で、上述のように腋窩動脈40などの表面近くの動脈に流出カニューレ106を連結することができる。流入カニューレ102は、図示のように、左心房の壁14aなど、心臓15の左心の外壁に直接取り付けられる。流入カニューレ102は、患者の静脈系を通して方向付けられる代わりに、以下に概略的に考察する手法の一つなど、所望の外科的手法で心臓15の外側領域に向けられる。一旦植え込まれると、システム100の動作は、酸素化した血液を心臓15の左心からポンプ104を通して流入カニューレ102中に引き込まれ、流出カニューレ106を介して動脈系に出すという観点から、上述のものと同様である。
【0025】
図3B〜図3Fをより詳細に参照すると、流入カニューレ102を連結する例示的な手技の一つが示されている。この点で、いわゆるWatersonの溝(Waterson’s groove)などのアクセス位置110が露出されているか、あるいは外科的手技中にアクセスされる。解剖刀112で切開を行って、アクセス位置をさらに露出させることができる。図3Cに示すように、流入カニューレ102の遠位端部分102aの挿入を可能にするように、左心房14の内側にアクセスするために小切開120を行う。流入カニューレ102の遠位端部分102aは、上記で説明したものと同様の遠位及び近位のアンカー要素122、124を含むが、他の設計及び構成をその代わりに使用することができる。図3Dに示すように、カニューレ102の挿入に備えて、またはカニューレ102の挿入後に、1つまたは複数の巾着縫合糸130、132を切開部120の周りに固定することができる。遠位及び近位のアンカー要素122、124両方が図3Eに示すように左心房14内に存在するように、切開部120を通して流入カニューレ102を挿入することができる。次いで、図3Fに示すように、流入カニューレ102は、(外科医に向かって)少し近位に引き抜かれて、近位のアンカー要素124を左心房14の外側に配置するが、遠位のアンカー要素122を左心房14内に残す。そのときに、1つまたは複数の巾着縫合糸130、132を締め付け、縛って、遠位のアンカー要素122と近位のアンカー要素124との間に組織140を完全に固定して、液密または少なくとも実質上液密のシールを設けることができる。組織成長材料を含んでも含まなくても、流入カニューレ102及びアンカー要素122、124のための手術グレードのシリコンを含む様々な材料の使用など、上記で説明した実施形態の任意の他の態様をこの実施形態でも同様に利用して、左心房の内腔に漏出防止の連結を設けるのをさらに助けることができることが理解されよう。
【0026】
図4A及び図4Bにさらに示すように、漏出防止シールを設けるのに適切な程度まで、1つまたは複数の巾着縫合糸130、132を締め付けることができる。この点において、締め付けられた組織140は、図4Bに概略的に示すように、遠位のアンカー要素122と近位のアンカー要素124との間の隙間の中を、少なくとも実質上満たすかまたはその中で絞るべきである。組織140をさらに絞ることが必要な場合は、1つまたは複数の追加の巾着縫合糸で組織140をさらに絞ることができる。
【0027】
図5は、流入カニューレ102をさらに詳細に示す。この実施形態では、カニューレ102は直径約10mmでよく、近位のアンカー要素124が直径12mm、遠位のアンカー要素122が直径14mmである。遠位のアンカー要素122から外側に延びる先端寸法d1は約2mmであり、アンカー要素122、124のカニューレ102の長手方向軸に沿った厚さt1、t2は、それぞれ約2.5mmである。遠位のアンカー要素122と近位のアンカー要素124との間の距離d2は約4mmである。これらの寸法は本質的に代表的で例示的なものであり、所与の場合または患者のニーズに従って変更可能であることが理解されよう。流入カニューレ102は、手術グレードのシリコンから構成されてよく、ステンレス鋼またはニチノールコイル150の形の補強材を含むこともできる。できるだけ可撓性のある流入カニューレ102を有するが、やはりねじれを防止する設計のものが望ましい。カニューレ102の可撓性を考えると、心臓の壁を通した挿入の間にアクセス位置110(または任意の他の所望の位置)において少なくとも遠位端部分102aに剛性を与えることが必要なことがある。この剛性は、挿入手技中に一時的にのみ与えられてよい。本明細書で説明したようにカニューレ102を心臓15に挿入したままで、例えば、カニューレ102の近位端102bを通して遠位端部分102aに、トロカール(図示せず)を一時的に挿入することができる。トロカールの遠位端をカニューレ102の遠位端102aに保持するためには、カニューレ挿入プロセス中に遠位端102aの内側に係合するトロカールに関連した風船様のまたは他の拡張可能な要素が存在してよい。本明細書で説明したようにカニューレ102が適切に配置された後で、トロカールを取り出すことができ、ポンプ104と流出カニューレ106の連結など、植込みプロセスの残りを行うことができる。本明細書で説明したようにカテーテル法の手技の間に同様のプロセスを使用することができる。
【0028】
以下に、代表的で非限定的な例として、様々な外科的手法をさらに十分に説明する。
【0029】
外科的胸骨切開術−この手法は、心臓、特に左心房に全体的にアクセスすることを可能にし、血液流入カニューレを心臓に取り付けることができるいくつかの異なる位置へのアクセスを可能にする。しかし、この手法は侵襲性が高い性質であるので、低侵襲性の植込み手法が外科医にとってはより望ましいかもしれない。
【0030】
外科的開胸術−この外科的手法では、比較的上方及び尾方の開胸によるアクセスを使用して、血液流入カニューレを左心房に送達する。左心房では、その頂部(roof)のある位置で血液流入カニューレがアンカー留めされる。この心房上の位置には、この位置の心房の壁は滑らかで比較的大きく、それによりカニューレの先端部が心房内の他の構造から孤立するので、固有の利点がある。
【0031】
他の適切な外科的方法では、比較的側方の開胸によるアクセスを使用して、血液流入カニューレを左心房に送達する。左心房では、心房中隔近傍の後内側壁のある位置で血液流入カニューレがアンカー留めされる。この位置は、上述のように「Watersonの溝」と呼ばれることが多く、僧帽弁修復術のときに左心房切開を行う一般的な位置である。Watersonの溝は、こうした後方の面で上大静脈と左肺静脈との間で左心房を解剖して右心房から離すことによって外科的にアクセスされる。
【0032】
胸腔鏡下手術−この外科的な方法では、管状トロカールを使用して、カニューレが心臓の壁を通してアンカー留めされることになる胸腔内の位置(例えば、Watersonの溝)にアクセスすることができるという点で、血液流入カニューレを上述と同様の位置に植え込むことができる。このような侵襲性が最小限の手術すなわち低侵襲性手術法では、手術全体が比較的小さい管状トロカールを通して行われ、それにより患者の胸部を切開する寸法が最小限に抑えられる。典型的には、主デリバリートロカールと共に使用されるデリバリートロカールに追加の小さな穴を作って、組織に把持、切開、縫合、焼灼、または他の手術を行うための内視鏡カメラ及び専用の手術道具の配置を可能にする。カニューレは、主トロカール中を通して胸壁を越える低侵襲性のアクセスで、外科的切開術の場合と同じ位置(すなわち、Watersonの溝)に送達することができる。
【0033】
経管法-この植込み方法は、例えば、血液流入カニューレを、心臓から経管ルートを介して表面近くの離れたポンプの位置まで案内することを含むことができる。この経管ルートは、カニューレを腋窩静脈及び/または鎖骨下静脈を介して通し、上大静脈を通り左心房に至り、次いで、卵円窩などを通して心房中隔を貫通させることによってカニューレを左心房中にアンカー留めすることを含むことができる。あるいは、カニューレは、頚静脈で静脈管構造に入る/そこから出ることができる。カニューレの近位端を、皮膚または胸筋組織の下を通り抜けることによって表面近くの胸部ポンプ位置に送ることができる。
【0034】
オーバー・ザ・ワイヤー(Seldinger)法-カニューレを植え込む方法は、外科的手法でも経管手法でも、Seldinger技法と呼ばれることが多い、低プロフィルであり単純な「オーバー・ザ・ワイヤー」手法を用いることができる。カテーテルを経皮的に血管の管腔中に配置するSeldinger技法は、血管壁を通して血管中に針を挿入し、次いで、その針を通してガイドワイヤーを追従させることを含む。一旦ガイドワイヤーが皮膚を貫通して血管の管腔に配置されたら、針を取り出し、次いで、適切なカテーテルを、ワイヤー上で血管の管腔中に配置することができる。この技法は、カテーテルを導入することによって血管壁を貫通する穴が徐々に拡張するかまたは広げられることが多いので、血管壁の損傷が最小限に抑えられる。この技法の他の重要な利点は、挿入されているものが何であれ穴の寸法の制御が維持されるので、血液の損失が最小限に抑えられることである。一例として、カニューレがガイドワイヤー上を通って血管中に導入されるように適合された、経皮的なSeldinger技法を用いて、血管へのアクセスが得られた後に、経管カニューレを頚静脈または鎖骨下静脈に導入することができる。こうした適合により、カニューレの内腔中に閉鎖具または拡張器を含み、それにより、穿刺位置を通る血液の維持及び拡張を容易にするように、支持し管腔の寸法を合わせる。一旦カニューレが経皮的な穿刺位置を介して導入されると、胸部のポンプポケット位置からの外科的なトンネルを、皮下の静脈切開の位置に作ることができ、その際カニューレの露出した端部が固定され、トンネルを通ってポンプポケットまで引かれる。
【0035】
あるいは、Seldinger技法の変形形態を、上記で説明したような様々な外科的な植込み手法で使用することができ、その際、カニューレシステムはこうした植込み技法を簡単にするように特別に適合されることになる。Seldinger技法が血管への経皮的なアクセスと最も一般的に関連付けられるが、特別に適合したカニューレ導入システムを用いるこの技法の適合バージョンは、心臓自体への直接のアクセスを利用する外科的植込み術に非常に好ましい手法である。ここで、例えば、心臓の壁を貫通して針を挿入し、次いでその針を通してガイドワイヤーを配置することによって心房切開を行うことができる。出血を最小限に制御しながら針を取り出した後で、その中に専用の導入閉鎖具を備えるカニューレシステムを、ワイヤー上で導入し、それにより、外科的な手法でもいわゆるSeldinger技法の多くの利点を維持することができる。
【0036】
様々な例示的な実施形態の説明によって本発明を示し、それらの実施形態をある程度詳細に説明してきたが、本出願人は、添付の特許請求の範囲をこうした詳細に制限するかまたはどんな形であれ限定することを意図していない。さらなる利点及び修正形態は当業者に簡単に明らかになるであろう。本発明の様々な特徴をユーザの要望及び選択に応じて単独または組合せで利用することができる。しかし、本発明自体は、添付の特許請求の範囲によってのみ定義されるべきである。
【符号の説明】
【0037】
10 血液循環支援システム
12 流入カニューレ、流入カテーテル
12a 遠位端
12b 近位端
14 左心房
14a 左心房の壁
15 心臓
16 上大静脈
18 鎖骨下静脈
20 患者
30 心房中隔
32 入口
34 補足的血流ポンプ
36 流出カテーテル
38 出口
40 腋窩動脈
42 矢印
50 頚静脈
52 出口位置
60 血管切開部
62 デリバリーカテーテル、シース
62a 遠位先端部
64 拡張装置
66 ガイドワイヤー
66a 遠位先端部
70 矢印
80 第1のアンカー要素
82 第2のアンカー要素
90 矢印
92 開口
96 縫合糸
98 切断具
100 循環支援システム
102 流入カニューレ
102a 遠位端部分
104 血液ポンプ
106 流出カニューレ
110 アクセス位置
112 解剖刀
120 切開部
122 遠位アンカー要素
124 近位アンカー要素
130、132 巾着縫合糸
140 心臓組織
150 ステンレス鋼またはニチノールコイル
d1 先端寸法
d2 遠位のアンカー要素122と近位のアンカー要素124との間の距離
t1、t2 長手方向軸に沿った厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の心臓の内腔と離れた位置との間に血流導管を設ける装置であって、
外面と近位端部分及び遠位端部分とを有するカニューレであって、前記遠位端部分が、前記心臓の内腔に挿入されるように構成された、カニューレと、
前記カニューレの外面から外側に延びる最大幅寸法をそれぞれ有する第1及び第2のアンカー要素と、
を備え、
前記第1のアンカー要素が、前記第2のアンカー要素より遠位に配置され、前記第1のアンカー要素と前記第2のアンカー要素との間に組織収容空間を画定し、前記第1のアンカー要素の最大幅寸法が、前記第2のアンカー要素の最大幅寸法より大きく、それにより、前記第1のアンカー要素が、前記心臓の内腔の内側に配置されるように構成され、前記第2のアンカー要素が、前記心臓の内腔の外側に配置されるように構成され、心臓組織が、前記第1のアンカー要素と前記第2のアンカー要素との間の前記組織収容空間中に保持されることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記第1または第2のアンカー要素の少なくとも1つがさらに、環状でディスク形の要素を備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1または第2のアンカー要素の少なくとも1つが、柔軟な弾性材料から形成されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記カニューレがさらに、前記遠位端部分を心臓の内腔に案内するために、患者の静脈系に挿入されるように構成された血流カテーテルを備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記第1及び第2のアンカー要素が、静脈系を介して導入する間の第1のコンパクトな状態と、心臓組織の両側に配置するための第2の拡張状態との間を動くことが可能であることを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記第1及び第2のアンカー要素が、第2の拡張状態に自動拡張可能であることを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記第1及び第2のアンカー要素が、組織の成長を可能にするように形成されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項8】
患者の心臓の内腔と離れた位置との間に血流導管を設けるカテーテルシステムであって、
デリバリーカテーテルと、
前記デリバリーカテーテルを介して患者の静脈系に案内されるように構成された血液流入カテーテルであって、外面と近位端部分及び遠位端部分とを有し、前記遠位端部分が、前記心臓の内腔に挿入されるように構成された、血液流入カテーテルと、
前記遠位端部分上で運ばれ、前記血液流入カテーテルの外面から外側に延びる幅寸法をそれぞれ有する、第1及び第2のアンカー要素と、
を備え、
前記第1のアンカー要素が、前記第2のアンカー要素より遠位に配置され、前記第1のアンカー要素と前記第2のアンカー要素との間に組織収容空間を画定し、前記第1のアンカー要素の幅寸法が、前記第2のアンカー要素の幅寸法より大きく、それにより、前記第1のアンカー要素が、前記心臓の内腔の内側に配置されるように構成され、前記第2のアンカー要素が、前記心臓の内腔の外側に配置されるように構成され、心臓組織が、前記第1のアンカー要素と前記第2のアンカー要素との間の前記組織収容空間中に保持されることを特徴とするカテーテルシステム。
【請求項9】
前記第1または第2のアンカー要素の少なくとも1つがさらに、環状でディスク形の要素を備えることを特徴とする請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記第1または第2のアンカー要素の少なくとも1つが、柔軟な弾性材料から形成されることを特徴とする請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記第1及び第2のアンカー要素が、静脈系を介して導入する間の第1のコンパクトな状態と、心臓組織の両側に配置するための第2の拡張状態との間を動くことが可能であることを特徴とする請求項8に記載のシステム。
【請求項12】
前記第1及び第2のアンカー要素が、第2の拡張状態に自動拡張可能であることを特徴とする請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記デリバリーカテーテルが、第1及び第2のアンカー要素を第1のコンパクトな状態に維持する拘束部材になるように構成されることを特徴とする請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記第1及び第2のアンカー要素が、組織の成長を可能にするように形成されることを特徴とする請求項8に記載のシステム。
【請求項15】
患者の循環系において患者の心臓の内腔と離れた位置との間の血流を増加させる補足的血流支援装置であって、
入口及び出口を有する血液ポンプであって、前記出口が、患者の循環系の前記離れた位置に連結するように適合された、血液ポンプと、
外面と近位端部分及び遠位端部分とを有するカニューレであって、前記近位端部分が、前記血液ポンプの入口に接続するように構成され、前記遠位端部分が、心臓の内腔に挿入されるように構成された、カニューレと、
前記遠位端部分上で運ばれ、前記カニューレの外面から外側に延びる幅寸法をそれぞれ有する、第1及び第2のアンカー要素と、
を備え、
前記第1のアンカー要素が、前記第2のアンカー要素より遠位に配置され、前記第1のアンカー要素と前記第2のアンカー要素との間に組織収容空間を画定し、前記第1のアンカー要素の幅寸法が、前記第2のアンカー要素の幅寸法より大きく、それにより、前記第1のアンカー要素が、前記心臓の内腔の内側に配置されるように構成され、前記第2のアンカー要素が、前記心臓の内腔の外側に配置されるように構成され、心臓組織が、前記第1のアンカー要素と前記第2のアンカー要素との間の前記組織収容空間中に保持されることを特徴とする補足的血流支援装置。
【請求項16】
前記第1または第2のアンカー要素の少なくとも1つがさらに、環状でディスク形の要素を備えることを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記第1または第2のアンカー要素の少なくとも1つが、柔軟な弾性材料から形成されることを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項18】
前記カニューレがさらに、前記遠位端部分を心臓の内腔に案内するために、患者の静脈系に挿入されるように構成された血流カテーテルを備えることを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項19】
前記血流カテーテルの遠位端部分が心臓に送達可能になるように、前記血流カテーテルを受けるように構成されたデリバリーカテーテルをさらに備えることを特徴とする請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記第1及び第2のアンカー要素が、静脈系を介して導入する間の第1のコンパクトな状態と、心臓組織の両側に配置するための第2の拡張状態との間を動くことが可能であることを特徴とする請求項18に記載の装置。
【請求項21】
前記第1及び第2のアンカー要素が、第2の拡張状態に自動拡張可能であることを特徴とする請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記第1及び第2のアンカー要素が、組織の成長を可能にするように形成されることを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項23】
心臓から補足的な血流を供給するための、患者の心臓の内腔と離れた位置との間に血流を確立する方法であって、
カニューレの遠位端部分の少なくとも一部分を心臓の内腔に挿入するステップであって、前記遠位端部分が、第1及び第2のアンカー要素を有し、前記アンカー要素それぞれが前記カニューレの長手方向軸に垂直な方向に最大幅寸法を有し、前記第1のアンカー要素の最大幅寸法が、前記第2のアンカー要素より大きい、挿入ステップと、
前記第1のアンカー要素を、前記内腔の内側に、前記内腔を画定する組織の内面に接するように配置するステップと、
前記第2のアンカー要素を、前記内腔の外側に、前記内腔を画定する組織の外面に接するように配置するステップと、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項24】
前記第1及び第2のアンカー要素を配置するステップがさらに、
前記第1及び第2のアンカー要素を前記内腔中に押し出すステップと、
前記第2のアンカー要素のみを前記内腔の外側に引き出し、それにより、前記第1のアンカー要素を前記内腔の内側に残すステップと、
を備えることを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記カニューレがさらにカテーテルを備え、前記カテーテルの遠位端部分の少なくとも一部分を挿入するステップがさらに、前記カテーテルを、患者の静脈系を通して心臓から離れた位置から案内するステップを備えることを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記カニューレの近位端を、患者の心臓から離れた位置に配置された血液ポンプと流体連絡するように連結するステップをさらに備えることを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記第1のアンカー要素と第2のアンカー要素との間の組織を締め付けるステップをさらに備えることを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記組織を締め付けるステップがさらに、前記組織に少なくとも1つの巾着縫合糸を用いるステップを備えることを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項29】
心臓から補足的な血流を供給するための、患者の心臓の内腔と離れた位置との間に血流を確立する方法であって、
カニューレの遠位端部分を心臓の内腔に挿入するステップであって、前記遠位端部分が、第1及び第2のアンカー要素を有し、前記第1のアンカー要素が、前記第2のアンカー要素より遠位に配置され、組織収容空間が、前記第1のアンカー要素と第2のアンカー要素との間に位置する、挿入ステップと、
より近位に配置された前記第2のアンカー要素を前記内腔の外に引き出すステップと、
より近位に配置された前記第2のアンカー要素を、前記内腔を画定する組織の外面に接した状態に係合するステップと、
前記組織が前記組織収容空間に保持されると共に前記カニューレが前記内腔と流体連絡するように、前記第1のアンカー要素を前記内腔の内面に接した状態に係合するステップと、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項30】
前記カニューレがさらにカテーテルを備え、前記遠位端部分を挿入するステップがさらに、前記遠位端部分を、患者の静脈系を通して心臓から離れた位置から案内するステップを備えることを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項31】
少なくとも前記第2のアンカー要素が弾性で柔軟であり、前記第2のアンカー要素を前記内腔の外に引き出すステップがさらに、前記第2のアンカー要素が前記内腔の外側の位置に前記開口から出るまで、前記アンカー要素がよりコンパクトな状態を呈するように、前記第2のアンカー要素を、組織中の開口を通して押しやるステップを備えることを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記内腔がさらに心臓の左心房を備えることを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記第1及び第2のアンカー要素が、前記カニューレの外面から外側に延びる最大幅寸法をそれぞれ有し、前記第1のアンカー要素の最大幅寸法が、前記第2のアンカー要素の最大幅寸法より大きいことを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項34】
前記カニューレの近位端部分を、患者の心臓から離れた位置に配置された血液ポンプと流体連絡させるステップをさらに備えることを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項35】
前記第1のアンカー要素と第2のアンカー要素との間の組織を締め付けるステップをさらに備えることを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項36】
前記組織を締め付けるステップがさらに、前記組織に少なくとも1つの巾着縫合糸を用いるステップを備えることを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項37】
心臓の内腔と離れた位置との間に血流を確立するカニューレシステムであって、
トロカールと、
前記トロカールをその中に受けるように構成された遠位端を含むカニューレと、
前記トロカールと関連し、前記心臓の内腔に前記遠位端を挿入するプロセス中に前記カニューレの内側と一時的に係合するように構成された拡張可能な要素と、
を備えることを特徴とするカニューレシステム。
【請求項38】
前記拡張可能な要素がさらに風船様の要素を備えることを特徴とする請求項37に記載のカニューレシステム。
【請求項39】
心臓の内腔と離れた位置との間に血流を確立する方法であって、
トロカールと関連した拡張可能な要素をカニューレの内側で一時的に拡張させて、前記カニューレと係合させるステップと、
前記カニューレの遠位端を、心臓組織を通して挿入して、前記心臓の内腔と前記カニューレとの間に流体連絡を設けるステップと、
前記トロカールを取り出すステップと
を備えることを特徴とする方法。

【図1A】
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【図1A−1】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図1G】
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【図1H】
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【図1I】
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【図1J】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−502304(P2010−502304A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526860(P2009−526860)
【出願日】平成19年8月28日(2007.8.28)
【国際出願番号】PCT/US2007/076956
【国際公開番号】WO2008/027869
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(508226322)サーキュライト・インコーポレーテッド (17)
【Fターム(参考)】