説明

微動機構

【課題】バースト波状駆動信号による駆動の際に、音の発生を抑えると共にサブミクロンオーダの微動送りを可能にする。
【解決手段】微動機構は、固定台1と、固定台1に対して移動可能に支持された移動体3と、移動体3と固定台1とを相対移動させる超音波モータ6と、超音波モータ6の駆動信号を出力する制御装置9とを有する。ここで、超音波モータ6の駆動信号は、周波数が等しく且つ位相が異なる2種類の駆動信号であって、その2種類の駆動信号の夫々は、微動駆動時の最大振幅と通常駆動時の最大振幅が異なり、且つ、微動駆動時においては、一方の駆動信号の最大振幅と他方の駆動信号の最大振幅が異なる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波モータを備えた微動機構に関する。
【背景技術】
【0002】
微細構造の観察に顕微鏡を用いる際、観察対象を目標位置に移動させるためにXYステージが利用されている。このXYステージには、観察対象の構造と同等以上の送り分解能を有する微小駆動性能や高速動作、及び静止時の安定性が求められている。
【0003】
超音波モータは、小型で高い応答性を示し、停止時には通電を必要としない、などの利点を有することから、超音波モータをXYステージのアクチュエータとして採用する各種装置が提案されている。例えば特許文献1には、顕微鏡用XYステージのアクチュエータとして超音波モータを採用する装置が提案されている。
【0004】
超音波モータの一例として、2種類の電極を有する積層型圧電体で構成された、直方体のリニア駆動型超音波モータがある。この超音波モータは、2種類の電極に位相の異なる交流波信号(屈曲振動信号と縦振動信号)を印加することによって、超音波モータの構成部材である2つの駆動子(いわゆる足)が回転し、それが相手部材を蹴るような作用を生じさせることで、相手部材を超音波モータに対して相対移動させる。
【0005】
図6は、このようなリニア駆動型超音波モータを備えたステージ移動機構の一例を模式的に示す図である。
同図に示した例では、屈曲振動用電極101(101a、101b、101c、101d)と縦振動用電極102とを有する積層型圧電体からなる超音波振動子(以下単に「振動子」という)105と2つの駆動子104(104a,104b)とを有する超音波モータ106において、縦振動用電極102に正弦波信号である縦振動信号が印加され、屈曲振動用電極101に縦振動信号とは位相が90°異なる正弦波信号である屈曲振動信号が印加されると、ガイド107に沿って可動体(ステージ)108が移動する。
【0006】
同図において、屈曲振動用電極101と縦振動用電極102の「+」又は「−」の符号は、圧電体の分極方向を示している。例えば、電極にプラス電圧を印加した場合、「+」符号の電極部分の圧電体は長手方向に伸長するように変形し、「−」符号の電極部分の圧電体は長手方向に縮小するように変形する。このため、屈曲振動用電極101に正弦波的な信号を印加すると図7(a) に模式的に示すような屈曲変形振動が励起され、縦振動用電極102に正弦波的な信号を印加すると同図(b) に模式的に示すような長手方向に伸縮する縦振動が励起される。なお、同図(a),(b) において、点線矢印は圧電体の変形方向を示し、実線矢印は駆動子104の移動方向を示している。このように、2種類の振動の位相を90°ずらして同時に励起させると、駆動子104が図6の矢印に示すような楕円(同図点線参照)の軌跡を描くような振動となる。このとき、駆動子104が可動体108と接触する際に生じる力の垂直方向成分で摩擦力を減らし、水平方向成分の力で可動体108を移動させる。
【0007】
ところで、近年では、半導体の線幅観察や生体分子観察など観察対象の極微細化により観察倍率は高倍率化してきており、観察試料を位置決めさせる微動機構にはサブミクロンオーダの駆動分解能が必要となってきた。
【0008】
これに対して、超音波モータの動作は、駆動周波数、駆動電圧、接触面状態によって大きく左右され、特に微小駆動においての再現性が極めて悪い。そこで、超音波モータの制御信号にバースト波を用いてステップ移動量を規定することで、制御性を良くする試みが多数なされている。例えば特許文献2には、超音波モータの駆動分解能を高めて停止位置精度を高める方法として、バースト波形部を間欠的に有する信号による駆動方法が提案されている。しかしながら、そのような駆動信号を超音波モータに印加した場合、図8に模式的に示すように、そのバースト波形部(同図の111、112参照)の始まり(起動時)と終わり(停止時)に金属音に似た音が発生し、操作者に不快感を与える問題があった。そこで、この音の発生を抑えるために、例えば非特許文献1には、バースト波形の信号を印加する際に、図9に模式的に示すように、波形が最大振幅になるまで若しくは振幅が0になるまで、時間をかけて段階的もしくは連続的に振幅を増加又は減少させる方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−265996号公報
【特許文献2】特開2001−161081号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】精密制御用アクチュエータ便覧,日本工業技術振興協会固体アクチュエータ研究部会/編, p.596-p.602
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このようなバースト波形の信号を用いて微小駆動を行うためには、バースト波形の波形数を少なくする必要があるが、一方で音の発生を防ぐためにはバースト波形の信号をある時間(数ミリ秒オーダ)印加する必要がある。本件特許出願(以下単に「本願」という)の出願人による実験によれば、バースト波形の信号の始まりと終わりにおいて、夫々2ミリ秒以上の時間をかけてバースト波形の信号を徐々に振幅変化させなければ発生音が抑制されなかった。なお、この実験では、バースト波形の信号の周波数を約80kHzとしたが、例えば、この場合に、図10に模式的に示すように、最大振幅時の波形数を1としたとしてもバースト波形の信号の印加時間はトータルで4(2+2)ミリ秒となり、バースト波形の波形数は300以上となってしまう。また、このときの可動体の移動量は約2μmであった。このようなバースト波形の信号では、発生音の抑制はできたとしてもサブミクロンオーダの微動を実現するのは困難であった。
【0012】
本発明は、上記実情に鑑み、バースト波状駆動信号による駆動の際に、音の発生を抑えると共にサブミクロンオーダの微動送りが可能な、超音波モータを備えた微動機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の第1の態様に係る微動機構は、固定台と、前記固定台に対して移動可能に支持された可動体と、前記可動体と前記固定台とを相対移動させる超音波モータと、前記超音波モータの駆動信号を出力する制御装置と、を有し、前記超音波モータの駆動信号は、周波数が等しく且つ位相が異なる2種類の駆動信号であって、前記2種類の駆動信号の夫々は、微動駆動時の最大振幅と通常駆動時の最大振幅が異なり、且つ、微動駆動時においては、一方の駆動信号の最大振幅と他方の駆動信号の最大振幅が異なる、ことを特徴とする。
【0014】
本発明の第2の態様に係る微動機構は、上記第1の態様において、前記超音波モータは、屈曲振動と縦振動を利用して被駆動体との接触位置に楕円振動を生じさせる直方体形状の振動子を有し、前記2種類の駆動信号は、いずれもバースト波状駆動信号であって、且つ、一方の駆動信号が前記屈曲振動を励起させる屈曲振動信号であり、他方の駆動信号が前記縦振動を励起させる縦振動信号である、ことを特徴とする。
【0015】
本発明の第3の態様に係る微動機構は、上記第2の態様において、微動駆動時において、前記縦振動信号の最大振幅は、前記屈曲振動信号の最大振幅よりも大きい、ことを特徴とする。
【0016】
本発明の第4の態様に係る微動機構は、上記第2又は3の態様において、前記縦振動信号と前記屈曲振動信号の夫々は、微動駆動時の最大振幅が通常駆動時の最大振幅よりも小さい、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、超音波モータを備えた微動機構において、バースト波状駆動信号による駆動の際に、音の発生を抑えることができると共に、サブミクロンオーダの微動送りが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施形態に係る微動機構の全体構成を模式的に示す斜視図である。
【図2】(a) は第1の実施形態に係る微動機構の一部上面図、(b) は(a) の側面図である。
【図3】(a) は超音波モータの上面図、(b) は(a) のAA´断面図である。
【図4】(a),(b),(c) は、微動駆動時において制御装置が超音波モータ(振動体)に出力する駆動信号の一例を模式的に示す図である。
【図5】実験データを示す図である。
【図6】リニア駆動型超音波モータを備えたステージ移動機構の一例を模式的に示す図である。
【図7】(a) は屈曲変形振動が励起されたときの様子を模式的に示す図、(b) は縦振動が励起されたときの様子を模式的に示す図である。
【図8】バースト波形部を間欠的に有する信号の一例を模式的に示す図である。
【図9】時間をかけて段階的もしくは連続的に振幅を増加又は減少させる方法を説明する図である。
【図10】最大振幅時の波形数を1としたときのバースト波形の信号の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る微動機構の全体構成を模式的に示す斜視図である。図2(a) は、その微動機構の一部上面図、同図(b) は、同図(a) の側面図である。なお、同図(a) は、その微動機構の一部透視図でもある。
【0020】
図1及び図2(a),(b) に示した本実施形態に係る微動機構において、固定台1上には、ボール循環式のガイドレール2a及びガイドブロック2bからなるガイド2が取付けられている。ガイド2は、図2(a) に示すように2個のガイドブロック2bと1個のガイドレール2aとからなり、固定台1にはガイドレール2aが固定され、ガイドブロック2bには可動体である移動体3が固定されている。移動体3の下方には、側面部材4がガイドレール2aに平行でガイドブロック2bと接し、且つ、ガイドレール2aを間に挟んで対称な位置に2個固定されている。
【0021】
移動体3は、ガイドブロック2b及び側面部材4と一体となって1軸方向に移動可能に支持されている。
側面部材4の一方には、例えばセラミックなどの硬い材料で作られた摺動部材5が設けられている。
【0022】
摺動部材5に接触、押圧するようにして超音波モータ6が固定台1に固定されている。なお、超音波モータ6は、移動体3と固定台1とを相対移動させる超音波アクチュエータの一例であって、屈曲振動と縦振動を利用して被駆動体との接触位置に楕円振動を生じさせる直方体形状の振動子である後述の超音波振動体(以下単に「振動体」という)12を有する。
【0023】
また、移動体3の摺動部材5が設けられた側面のもう一方の側面には、スケール7が設けられていて、スケール7のパターンを検出できる位置にエンコーダ8が配置され、固定台1に固定されている。なお、エンコーダ8は、移動体3と固定台1との相対位置関係を検出する変位センサである。
【0024】
ここで、ガイドブロック2bの配置間隔は、移動体3の最大移動量と同等以上であることが望ましい。このような配置間隔とすることで、移動体3が移動しても超音波モータ6の押圧位置はガイドブロック2bの配置間隔内におさまる。
【0025】
また、エンコーダ8から位置情報を取得し、この位置情報を基に超音波モータ6を駆動する制御装置9が、エンコーダ8及び超音波モータ6と接続されている。
図3(a) は、超音波モータ6の上面図、同図(b) は、同図(a) のAA´断面図である。
【0026】
同図(a),(b) に示した超音波モータ6において、保持部材11は、振動体12を固定台1に対して保持する保持機構であって、例えばアルミニウム等の金属材料で構成されている。また、保持部材11は、ワイヤ放電加工等により切り欠き穴部13を設けることによって形成された薄板ばね部14(同図(a) では斜線で示した部分)を有する。薄板ばね部14の中央にはばねとして作用しない厚肉部14aが形成されていて、厚肉部14aと振動体12とが例えばセラミック接着材等の硬度の高い接着剤で接着されている。このとき、薄板ばね部14と振動体12は平行に近接して設けられるように構成されている。また、振動体12の接着位置は、振動体12の接着面中央付近である。
【0027】
振動体12において、保持部材11の厚肉部14aが接着された面と反対の面には駆動子である突起部15(15a、15b)が2個設けられている。突起部15は、例えば強化繊維を含むポリアセタール等の材料、摩擦係数の比較的小さな樹脂を母材とした材料やセラミック等の材料で形成されている。保持部材11は、突起部15が2個とも摺動部材5に接する状態で、固定用ビス穴16(16a,16b)を通してビスにより固定台1に固定される。このとき、薄板ばね部14のたわみは殆ど無い状態で、移動体3側への押圧力はゼロ近傍であることが望ましい。なお、図1においては、保持部材11を固定台1に固定するための固定用ビス穴16及びビスを省略して示している。
【0028】
また、保持部材11にはメネジが形成されていて、詳しくは図3(b) に示したように、外周にオネジが形成されたプランジャ17をねじ込むことによって厚肉部14aを押圧できるようになっている。なお、不図示ではあるが、プランジャ17の内部にはコイルばねが内蔵されており、先端部材17aが押し込まれることにより押圧力が発生する。このため、プランジャ17の先端部材17aの移動量に応じた押圧力が厚肉部14aに負荷される。このとき、振動体12も突起部15と共に摺動部材5に押圧される。
【0029】
図4(a),(b),(c) は、微動駆動(「微小駆動」ともいう)時において制御装置9が超音波モータ6(振動体12)に出力する駆動信号の一例を模式的に示す図である。
なお、本例では、駆動信号における振幅の増減を、電圧を変化させることによって生じさせるものであるとする。
【0030】
同図(a) に示したように、振動体12は、図6に示した振動子103と同様の構成を有するものであって、屈曲振動用電極21(21a、21b、21c、21d)と縦振動用電極22とを有する積層型圧電体からなる。制御装置9は、その振動体12の2種類の電極21、22に夫々図4(a) に示すような屈曲振動信号及び縦振動信号(詳しくは同図(b),(c) を用いて後述)を印加することによって、移動体3を微動移動させることができる。このとき、突起部15には、図6に示した駆動子104と同様に、図4(a) の矢印に示す楕円(同図点線参照)の軌跡を描くような振動が生じ、突起部15が摺動部材6と接触する際に生じる力の垂直方向成分で摩擦力を減らし、水平方向成分の力で摺動部材6(移動体3)を移動させる。
【0031】
ここで、屈曲振動信号は振動体12に屈曲振動を励起させるバースト波状駆動信号(以下単に「バースト信号」という)であり、縦振動信号は振動体12に縦振動を励起させるバースト信号である。この2種類のバースト信号は、周波数が等しく且つ位相が異なる信号であって、夫々の信号の始まりと終わりは振幅が時間的に変化するように制御される。また、それに加えて、この2種類のバースト信号は、夫々の信号の最大振幅が通常駆動時に比べて小さく、且つ、一方の信号が他方の信号よりも最大振幅が小さくなるように制御される。このような制御により、バースト信号の波形数(1周期分の波形を1としたときの数)が多くても超音波モータ6の振動振幅を小さくすることができるので、移動体3をサブミクロンオーダで微動送りが可能になる。
【0032】
同図(a),(b),(c) に示した例では、屈曲振動信号及び縦振動信号は、いずれも信号の始まり部分において数ミリ秒オーダーの時間をかけて振幅が0から最大振幅に段階的又は連続的に変化し、信号の終わり部分において数ミリ秒オーダーの時間をかけて振幅が最大振幅から0に段階的又は連続的に変化するように制御されている。また、同図(b),(c) に詳細に示したように、屈曲振動信号の最大振幅(Va)及び縦振動信号の最大振幅(Vb)は、いずれも、通常駆動時の最大振幅(Vdef)よりも小さく、且つ、一方の信号である屈曲振動信号の最大振幅(Va)が他方の信号である縦振動信号の最大振幅(Vb)よりも小さくなるように制御されている。すなわち、屈曲振動信号及び縦振動信号の最大振幅は、Vdef>Vb>Vaとなるように、制御されている。なお、通常駆動時の最大振幅(Vdef)は、屈曲振動信号及び縦振動信号共に同じである。
【0033】
また、縦振動信号において、通常駆動時に対する微動駆動時の最大振幅減少量はVdef−Vbであり、屈曲振動信号において、通常駆動時に対する微動駆動時の最大振幅減少量はVdef−Vaであり、同図(a),(b),(c) に示した例では、屈曲振動信号に対する縦振動信号の最大振幅減少量の割合kを50%としている(k=(Vdef−Vb)/(Vdef−Va)*100=50)。この場合、仮に、通常駆動時の最大振幅(Vdef)を100とし、微動駆動時の屈曲振動信号の最大振幅(Va)を50とすると、微動駆動時の縦振動信号の最大振幅(Vb)は75となる。
【0034】
なお、同図(a),(b),(c) に示した例では、屈曲振動信号に対する縦振動信号の最大振幅減少量の割合kを50%としたが、本願の出願人による実験によれば、後述の図5に示す実験データから明らかなように、その最大振幅減少量の割合kを25%以上とするように制御することが望ましいと考えた。
【0035】
図5は、その実験データを示す図である。
同図において、横軸は最大振幅が変化させられるバースト信号の最大振幅に対応する電圧値を示し、縦軸は屈曲振動信号及び縦振動信号の夫々のバースト信号の1回の出力当たりの移動体3の移動量を示している。同図中の印「◆」、「■」、「▲」、「◇」、「□」は、屈曲振動信号に対する縦振動信号の最大振幅減少量の割合kが、それぞれ0%、25%、50%、75%、100%であるときのデータを示している。
【0036】
なお、その割合kが0%である場合とは、微動駆動時における縦振動信号の最大振幅を通常駆動時のままとした場合(Vb=Vdef、但しVdef>Va)を示しており、その割合kが100%の場合とは、微動駆動時における縦振動信号の最大振幅を、微動駆動時における屈曲振動信号の最大振幅と同じとした場合(Vb=Va、但しVdef>Va)を示している。
【0037】
同図に示した実験データから明らかなように、屈曲振動信号に対する縦振動信号の最大振幅減少量の割合kが0%である場合、つまり縦振動信号を通常駆動時に比べて変化させない場合には、屈曲振動信号への印加電圧が0であっても約1.5μmの移動量が得られてしまい、サブミクロンオーダの微動は不可能である(同図中の印「◆」参照)、という実験結果が得られた。但し、屈曲振動信号に対する縦振動信号の最大振幅減少量の割合kを大きくするにつれ、この現象は改善され、その割合kが25%以上で、サブミクロンオーダの微動が可能となる(同図中の印「■」、「▲」、「◇」、「□」参照)、という実験結果が得られた。
【0038】
なお、不図示ではあるが、屈曲振動信号に対する縦振動信号の最大振幅減少量の割合kを100%以上とした場合、つまり縦振動信号の最大振幅を屈曲振動信号の最大振幅と同等以上にした場合には、電圧変化に対する移動量変化が大きくなり、電圧分解能を固定と考えると微動分解能が低くなる、という実験結果も得られている。
【0039】
このようなことから、微動駆動時においては、縦振動信号と屈曲振動信号の最大振幅が共に通常駆動時に比べて小さくなるように制御され、且つ、好ましくは屈曲振動信号に対する縦振動信号の最大振幅減少量の割合kを25%以上100%未満とし、より好ましくは75%とすることが最良の形態である、との実験結果が得られた。
【0040】
これにより、最大振幅が通常駆動時に比べて小さく制御される2種類の駆動用バースト信号において、その一方のバースト信号である屈曲振動信号の最大振幅を0から上昇させることで、移動体3の移動量も0から増加し、且つ、その移動量の増加が緩やかであることから、微小移動量の調整が容易になる(微動分解能が向上する)と共に、微動駆動を安定して得ることができる。
【0041】
なお、本実施形態では、上述のとおり、屈曲振動信号及び縦振動信号の振幅を、その電圧変化により、変化させるようにしている。従って、その電圧変化によって、信号の始まり部分における振幅の増加、信号の終わり部分における振幅の減少、及び最大振幅の値が決定されている。この場合、信号の始まり部分及び終わり部分における振幅の増大及び減少は、電圧を直線的に変化させる方法や正弦波的に変化させる方法など様々な方法により行うことが考えられるが、1ミリ秒当たりの電圧変化が2.5V付近から音の発生を抑制する効果が現れ始め、1ミリ秒当たりの電圧変化が1V以下であれば音の発生が大幅に抑制されることから、信号の始まり部分及び終わり部分における電圧変化量は、好ましくは2.5V/msec以下とすることが望ましく、さらに好ましくは1V/msec以下とすることがさらに望ましい。
【0042】
以上のように、本実施形態に係る微動機構によれば、バースト信号による駆動の際に、音の発生を抑えことができると共に、サブミクロンオーダの微動送りが可能となる。従って、リニア駆動型超音波モータの微小駆動において、騒音を抑制しつつ、モータ接触状況やパラメータによる不安定さを低減し、且つ、安定な微小位置決めを達成することができる。
【0043】
なお、本実施形態に係る微動機構は、例えば顕微鏡用XYステージに適用することも可能である。
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良及び変更を行っても良いのはもちろんである。
【符号の説明】
【0044】
1 固定台
2 ガイド
3 移動体
4 側面部材
5 摺動部材
6 超音波アクチュエータ
7 スケール
8 エンコーダ
9 制御装置
11 保持部材
12 振動体
13 切り欠き穴部
14 薄板ばね部
15 突起部
16 固定用ビス穴
17 プランジャ
101 屈曲振動用電極
102 縦振動用電極
103 積層型圧電体
104 駆動子
105 超音波振動子
106 超音波モータ
107 ガイド
108 可動体
111、112 バースト波形部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定台と、
前記固定台に対して移動可能に支持された可動体と、
前記可動体と前記固定台とを相対移動させる超音波モータと、
前記超音波モータの駆動信号を出力する制御装置と、
を有し、
前記超音波モータの駆動信号は、周波数が等しく且つ位相が異なる2種類の駆動信号であって、前記2種類の駆動信号の夫々は、微動駆動時の最大振幅と通常駆動時の最大振幅が異なり、且つ、微動駆動時においては、一方の駆動信号の最大振幅と他方の駆動信号の最大振幅が異なる、
ことを特徴とする微動機構。
【請求項2】
前記超音波モータは、屈曲振動と縦振動を利用して被駆動体との接触位置に楕円振動を生じさせる直方体形状の振動子を有し、
前記2種類の駆動信号は、いずれもバースト波状駆動信号であって、且つ、一方の駆動信号が前記屈曲振動を励起させる屈曲振動信号であり、他方の駆動信号が前記縦振動を励起させる縦振動信号である、
ことを特徴とする請求項1記載の微動機構。
【請求項3】
微動駆動時において、前記縦振動信号の最大振幅は、前記屈曲振動信号の最大振幅よりも大きい、
ことを特徴とする請求項2記載の微動機構。
【請求項4】
前記縦振動信号と前記屈曲振動信号の夫々は、微動駆動時の最大振幅が通常駆動時の最大振幅よりも小さい、
ことを特徴とする請求項2又は3記載の微動機構。


【図2】
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【図3】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−193633(P2010−193633A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−35833(P2009−35833)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】