説明

微多孔膜、かかる膜の製造方法、およびバッテリーセパレーターフィルムとしてのかかる膜の使用

本発明は、高いメルトダウン温度、低いシャットダウン温度、および高温における耐熱収縮性を有する微多孔膜に関する。膜は、ポリメチルペンテンと、ポリエチレンと、希釈剤とを含むシートを延伸した後に希釈剤を除去することにより製造することができる。膜は、リチウムイオン電池等におけるバッテリーセパレーターフィルムとして使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2010年6月4日出願の米国特許出願第61/351,380号の優先権を主張し、2010年1月27日出願の米国特許出願第61/298,752号、2010年1月27日出願の米国特許出願第61/298,756号、2009年6月19日出願の米国特許出願第61/218,720号、および2010年5月20日出願の米国特許出願第61/346,675号の利益および優先権を主張し、それらの全てはその全体が参照により組み込まれるものとする。
【0002】
本発明は、高いメルトダウン温度、低いシャットダウン温度、および高温における耐熱収縮性を有する微多孔膜に関する。膜は、ポリメチルペンテンと、ポリエチレンと、希釈剤とを含むシートを延伸した後に希釈剤を除去することにより製造することができる。膜は、リチウムイオン電池等におけるバッテリーセパレーターフィルムとして使用することができる。
【背景技術】
【0003】
微多孔膜は、一次電池および二次電池用のバッテリーセパレーターフィルム(「BSF」)として有用である。このような電池としては、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル亜鉛電池、銀亜鉛電池等が挙げられる。BSFの特性を向上させると、特にリチウムイオン電池における電池故障のリスクを軽減することができる。
【0004】
ある電池の故障モードでは、BSFがBSFのメルトダウン温度より高い温度にさらされた時に見られる軟化および機械的完全性の喪失を伴う。こうした状況は、例えば、内部短絡によって電池の電気エネルギーの一部が熱に変換された時、または電池が外部熱源にさらされた時に起こり得る。軟化したBSFの強度が低下すると負極と正極との接触のリスクが高まり、無制御の電池故障につながる恐れがある。このリスクを軽減させるため、微多孔膜は、メルトダウン温度を高くして製造されてきた。例えば、特許文献1および特許文献2には、電池の安全性の向上のためにポリメチルペンテン(PMP)を用いて膜のメルトダウン温度を高くすることが開示されている。
【0005】
別の電池故障モードは、過充電または急速放電条件中に電池内にて電解活性が続くにつれて電池の温度が上昇することに起因する。このリスクを軽減させるため、微多孔性ポリマー膜は、シャットダウンと呼ばれるフェイルセイフ特性を持ったBSFとして製造されてきた。膜がそのシャットダウン温度よりも高い温度にさらされると、ポリマーの可動性が増すことによって膜の透気度が低下する。このことによって電池の電解質輸送が低下し、それにより電池内で生成される熱の量が減少する。より低いシャットダウン温度を有するBSFが、電池の安全性の向上にとって望ましい。
【0006】
さらに別の電池故障モードでは、BSFのシャットダウン温度とメルトダウン温度の間の温度等の高温におけるBSFの収縮(熱収縮)を伴う。熱収縮がBSFの幅の減少をもたらした場合、負極と正極とセパレーターの間の空間が狭いことによって、BSFのメルトダウン温度未満の温度においても電池内の内部短絡につながる可能性がある。これは特に角柱型および円筒型電池の場合に当てはまり、それらの場合、膜幅が少しでも変化すると、電池の端またはその付近における負極と正極との接触につながる可能性がある。BSFのメルトダウン温度が高くなることによってもたらされる電池の安全域の増大をよりよく利用するため、特にBSFのシャットダウン温度よりも有意に高い温度におけるBSFの熱収縮の量を減少させることが望ましい。特に、透気度や強度等の他の重要なBSFの特性を有意に低下させることなく、BSFのメルトダウン温度を高くすること、BSFのシャットダウン温度を低くすること、およびBSFの熱収縮を減少させることが望ましい。
【0007】
従来技術には、BSFのシャットダウン温度を低くする少なくとも2つの方法が開示されている。第1の方法は、特許文献3に開示されているが、超高分子量ポリエチレンおよび比較的高い末端不飽和基含有量を有する第2のポリエチレンの利用を伴う。
【0008】
シャットダウン温度を低くする第2の方法は、特許文献4に開示されているが、低融点ポリマーを利用して低い膜のシャットダウン温度を達成している。透気度の低下を避けるため、膜の延伸は95℃という比較的低い温度で起こり(熱処理工程は無し)、低融点ポリマーの溶融が回避されている。シャットダウン温度の有意な改善はあるが、低い延伸温度と熱処理工程が無いこととがBSFの熱収縮の増加をもたらしている。
【特許文献1】特開昭59−196706号公報
【特許文献2】特開昭61−227804号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2009/011745号
【特許文献4】特開2008−080536号公報
【0009】
改善はされてきているが、高いメルトダウン温度、低いシャットダウン温度、および高温における耐熱収縮性を有する膜が望まれている。
【発明の概要】
【0010】
ある実施形態においては、本発明は、ポリマー混合物を含む膜であって、ポリマー混合物が、(a)200.0℃以上のTmおよび80.0dg/分以下のMFRを有するポリメチルペンテン、(b)1.0×10未満のMw、15.0以下のMWD、炭素原子1.0×10個当たり0.20以下の末端不飽和基量、および131.0℃以上のTmを有する第1のポリエチレン、ならびに(c)131.0℃未満のTmを有する第2のポリエチレンを含み、膜が、(i)微多孔性であり、(ii)180.0℃以上のメルトダウン温度を有し、(iii)131.0℃以下のシャットダウン温度を有し、かつ(iv)30.0%以下の170℃TD熱収縮を有する、膜に関する。
【0011】
別の実施形態においては、本発明は、微多孔膜の製造方法であって、(1)希釈剤と、Aの量のポリメチルペンテン、Aの量の第1のポリエチレン、およびAの量の第2のポリエチレンを含むポリマーとの混合物であり、Aが5.0質量%〜25.0質量%の範囲であり、Aが30.0質量%〜50.0質量%の範囲であり、Aが5.0質量%〜20.0質量%の範囲である(質量パーセントはポリマー−希釈剤混合物中のポリマーの質量が基準である)混合物を押し出す工程、(2)押出物を少なくとも1つの平面方向に延伸する工程、ならびに(3)希釈剤の少なくとも一部を延伸押出物から除去する工程を含み、(a)ポリメチルペンテンが、200.0℃以上のTmおよび80.0dg/分以下のMFRを有し、(b)第1のポリエチレンが、1.0×10未満のMw、15.0以下のMWD、炭素原子1.0×10個当たり0.20以下の末端不飽和基量、および131.0℃以上のTmを有し、(c)第2のポリエチレンが、131.0℃未満のTmを有する方法に関する。
【0012】
さらに別の実施形態においては、本発明は、負極と、正極と、電解質と、負極と正極の間に位置するバッテリーセパレーターとを含む電池であって、バッテリーセパレーターが、(a)200.0℃以上のTmおよび80.0dg/分以下のMFRを有するポリメチルペンテン、(b)1.0×10未満のMw、15.0以下のMWD、炭素原子1.0×10個当たり0.20以下の末端不飽和基量、および131.0℃以上のTmを有する第1のポリエチレン、ならびに(c)131.0℃未満のTmを有する第2のポリエチレンを含み、バッテリーセパレーターが、(i)微多孔性であり、(ii)180.0℃以上のメルトダウン温度を有し、(iii)131.0℃以下のシャットダウン温度を有し、かつ(iv)30.0%以下の170℃TD熱収縮を有する、電池に関する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、ポリマー混合物を含み、かつ高いメルトダウン温度、低いシャットダウン温度、および高温における耐熱収縮性を有する微多孔膜の発見に一部基づいている。膜は、リチウムイオン電池等におけるBSFとして有用であるのに十分な強度および透気度を有する。以下に詳細に示すように、ポリマー混合物中のポリメチルペンテンとポリエチレンの種類および相対量を選択することにより、110.0℃以上の温度での熱処理を行って比較的高い透気度、高い強度、および高温での小さい熱収縮を有する膜を製造できることがわかっている。膜は、ほぼ均一なポリマー相を有するミクロフィブリルを含み、膜の製造に用いるポリマー種の相分離はほとんどまたは全くない。本発明の膜が示す望ましい特性はこのようなミクロフィブリルの存在に起因していると考えられる。
【0014】
本明細書および添付の特許請求の範囲において、「ポリマー」という用語は、複数の高分子を含む組成物を意味し、これらの高分子は1種または複数のモノマーに由来する繰返し単位を含む。高分子は、大きさ、分子構造、原子含有量等が異なっていてもよい。「ポリマー」という用語は、コポリマー、ターポリマー等の高分子を含む。「ポリエチレン」は、50.0%以上(個数基準)のエチレン由来の繰返し単位、好ましくは、ポリエチレンホモポリマー、および/または繰返し単位の少なくとも85%(個数基準)がエチレン単位であるポリエチレンコポリマーを含有するポリオレフィンを意味する。「ポリプロピレン」は、50.0%超(個数基準)のプロピレン由来の繰返し単位、好ましくは、ポリプロピレンホモポリマー、および/または繰返し単位の少なくとも85%(個数基準)がプロピレン単位であるポリプロピレンコポリマーを含有するポリオレフィンを意味する。「ポリメチルペンテン」は、50.0%以上(個数基準)のメチルペンテン由来の繰返し単位、好ましくは、ポリメチルペンテンホモポリマー、および/または繰返し単位の少なくとも85%(個数基準)がメチルペンテン単位であるポリメチルペンテンコポリマーを含有するポリオレフィンを意味する。「微多孔膜」は、細孔を有する薄膜であって、膜の細孔量の90.0%以上(体積基準)が0.01μm〜10.0μmの範囲の平均直径を有する細孔にある膜である。押出物から製造される膜に関しては、機械方向(「MD」)は、ダイから押出物が製造される方向と定義される。横方向(「TD」)は、押出物のMDおよび厚さ方向の両方に対して垂直な方向と定義される。MDおよびTDは膜の平面方向と呼んでもよく、この文脈において「平面」という語は、膜が平らな場合におけるほぼ膜の平面にある方向を意味する。
微多孔膜の組成
【0015】
ある実施形態においては、本発明は、ポリマー混合物を含む微多孔膜に関し、ポリマー混合物は、(例えば、膜の質量を基準として10.0質量%以上の)200.0℃以上のTmおよび80.0dg/分以下のMFRを有するポリメチルペンテン;(例えば、膜の質量を基準として30.0質量%以上の)1.0×10未満の質量平均分子量(「Mw」)、15.0以下の分子量分布(「MWD」、Mwを数平均分子量で割ったものと定義される)、炭素原子1.0×10個当たり0.20以下の末端不飽和基量、および131.0℃以上のTmを有する第1のポリエチレン;ならびに(例えば、膜の質量を基準として5.0質量%以上の)131.0℃未満の融点を有する第2のポリエチレンを含む。膜は、180.0℃以上のメルトダウン温度、131.0℃以下のシャットダウン温度、および30.0%以下の170℃TD熱収縮を有する。所望により、混合物はポリプロピレンをさらに含む。混合物は、例えば反応器ブレンド、乾燥混合物等であってもよい。ある実施形態においては、膜は、炭素原子1.0×10個当たり0.20超の末端不飽和基量を有するポリエチレンを実質的に含まない。例えば膜は、膜の質量を基準として、例えば5.0質量%以下、例えば1.0質量%以下といった、10.0質量%以下の、炭素原子1.0×10個当たり0.20超の末端不飽和基量を有するポリエチレンを含有する。
【0016】
ある実施形態においては、ポリメチルペンテンの量は、5.0質量%≦ポリメチルペンテン<25.0質量%の範囲であり、ポリプロピレンの量は、0.0質量%≦ポリプロピレン≦25.0質量%の範囲であり、総ポリエチレン量は、50.0質量%<ポリエチレン≦95.0質量%の範囲である(質量パーセントは膜の質量が基準である)。所望により微多孔膜は、10.0質量%≦ポリメチルペンテン≦25.0質量%の範囲のポリメチルペンテン、5.0質量%≦ポリプロピレン≦15.0質量%の範囲のポリプロピレン、および60.0質量%≦ポリエチレン≦85.0質量%の範囲の総ポリエチレン量を含む。ポリエチレンは、第1および第2のポリエチレンの混合物(例えば乾燥混合物または反応器ブレンド)であってもよい。所望によりポリエチレン混合物は、1.0×10以上のMwを有する第3のポリエチレンをさらに含む。
【0017】
ある実施形態においては、第1および第2のポリエチレンを第3のポリエチレンと混合して、45.0質量%≦第1のポリエチレン≦65.0質量%の範囲の量の第1のポリエチレン;例えば7.0質量%≦第2のポリエチレン≦23.0質量%、例えば9.0質量%≦第2のポリエチレン≦21.0質量%といった、5.0質量%≦第2のポリエチレン≦25.0質量%の範囲の量の第2のポリエチレン;および10.0質量%≦第3のポリエチレン≦50.0質量%の範囲の量の第3のポリエチレン(質量パーセントは混合物中のポリエチレンの質量が基準である)を含むポリエチレン混合物を製造する。
【0018】
前述の実施形態のいずれにおいても、膜は、以下の性質の1つまたは複数を有し得る:(i)膜中のポリメチルペンテンの量(質量%)は膜中のポリプロピレンの量(質量%)以上である(質量パーセントは膜の質量が基準である)、(ii)ポリメチルペンテンおよびポリプロピレンは、膜の質量を基準として例えば25.0質量%〜35.0質量%の範囲といった、合わせて25.0質量%以上の量で膜中に存在する、(iii)ポリメチルペンテンは、例えば223.0℃〜230.0℃の範囲といった210℃〜240℃の範囲の融点(「Tm」)、および例えば22.0dg/分〜28.0dg/分の範囲といった10dg/分〜40dg/分の範囲のメルトフローレート(「MFR」)を有する、(iv)ポリプロピレンは、例えば約0.8×10〜約3.0×10の範囲、例えば約0.9×10〜約2.0×10の範囲といった、6.0×10以上のMw、例えば2.0〜約8.5の範囲、例えば2.5〜6.0の範囲といった、20.0以下、または8.5以下、または6.0以下のMWD、および例えば110J/g〜120J/gの範囲といった、90.0J/g以上の融解熱(「ΔHm」)を有するアイソタクチックポリプロピレンである。
【0019】
前述の実施形態のいずれにおいても、膜は以下の特性の1つまたは複数を有する:5.0%以下の105℃TD熱収縮;20.0%未満の130℃TD熱収縮、80.0mN/μm以上の標準化突刺強度;35.0μm以下の厚さ、20%〜80%の範囲の空孔率;および220.0秒/100cm/μm以下の標準化透気度。
【0020】
例えば一実施形態においては、膜は、(i)32.0質量%〜36.0質量%の、約4.0×10〜約6.0×10の範囲のMw、約3.0〜約10.0のMWD、炭素原子1.0×10個当たり0.14以下の末端不飽和基量、および132℃以上のTmを有する第1のポリエチレン、(ii)14.0〜18.0質量%の、115.0℃〜130.0℃の範囲のTm、5.0×10〜4.0×10の範囲のMw、および1.5〜20の範囲のMWDを有する第2のポリエチレン、(iii)19.0質量%〜23.0質量%の、223.0℃〜230.0℃の範囲のTmおよび22.0dg/分〜28.0dg/分の範囲のMFRを有するポリメチルペンテン、(iv)17.0質量%〜21.0質量%の、1.0×10以上のMwおよび50.0以下のMWDを有する第3のポリエチレン、ならびに(v)8.0質量%〜12.0質量%の、5.0×10以上のMw、6.0以下のMWD、および90.0J/g以上のΔHmを有するアイソタクチックポリプロピレンを含む微多孔膜である(質量パーセントは膜の質量が基準である)。かかる微多孔膜は、例えば以下の特性の1つまたは複数(および所望により全て)を有してもよい:15.0μm〜30.0μmの範囲の厚さ;例えば197℃〜205℃といった、190℃〜210℃の範囲のメルトダウン温度;例えば0.01%〜5.0%の範囲といった、5.0%以下の105℃TD熱収縮、例えば1.0%〜18.0%の範囲といった、18.0%以下の130℃TD熱収縮;例えば10秒/100cm/μm〜210秒/100cm/μmの範囲といった、220秒/100cm/μm以下の標準化透気度;30.0%〜60.0%の範囲の空孔率、および例えば80.0mN/μm〜2.5×10mN/μmの範囲といった、80.0mN/μm以上の標準化突刺強度である。
【0021】
ある実施形態においては、膜は、微細孔およびミクロフィブリルを含み、ミクロフィブリルは、ポリメチルペンテン、第1のポリエチレン、および第2のポリエチレンを含む。所望により、膜中の実質的に全てのポリマー、例えば、膜中のポリマーの全質量を基準として、90.0質量%以上、例えば95.0質量%以上、または99.0質量%以上は、ミクロフィブリル内にある。所望により、膜中のポリメチルペンテン、第1のポリエチレン、および/または第2のポリエチレンの10.0質量%以下、例えば5.0質量%以下、または1.0質量%以下は、非ミクロフィブリル形態であり、例えば島状、ラフト状、または球状の形態である(質量パーセントは、ポリメチルペンテン、第1のポリエチレン、および第2のポリエチレンを合わせた質量が基準である)。所望により、ミクロフィブリル中のポリマーは、ミクロフィブリルの質量を基準として、例えば95.0質量%以上、または99.0質量%以上といった、90.0質量%以上の単一ポリマー相を含む。所望により膜は、膜の質量を基準として、例えば5.0質量%以下、または1.0質量%以下といった、10.0質量%以下の相分離ポリマー(連続、共連続、または不連続の、ポリエチレンおよび/またはポリメチルペンテン相等)を含有する。
【0022】
前述の発明の実施形態は、本発明のある特定の態様について詳述する働きをしているが、本発明はそれらに限定されるものではなく、これらの実施形態についてのこの説明は本発明のより広い範囲内にある他の実施形態を除外することを意図するものではない。微多孔膜はポリマーを含むが、以下、これらのポリマーについてさらに詳細に説明する。
ポリメチルペンテン
【0023】
ある実施形態においては、ポリメチルペンテン(「PMP」)は、繰返し単位の少なくとも80.0%(個数基準)がメチルペンテンに由来する単位であるポリマーまたはコポリマーを含む。望ましいPMPは、例えば200.0℃〜250.0℃、例えば210.0℃〜240.0℃、または約220.0℃〜約230.0℃の範囲といった、200.0℃以上の融解温度(Tm)を有する。PEのTmとPMPのTmとの差が比較的大きいとPMPとPEとの均一な混合物を製造することがより困難であるため、PMPは所望により、例えば240.0℃以下、例えば230.0℃以下といった、250.0℃以下のTmを有する。また、PMPが200.0℃未満のTmを有すると、比較的高いメルトダウン温度を有する膜を製造することがより困難であるということも認められている。PMPのTmは、ポリプロピレンについて以下に説明する方法と同様の、示差走査熱量測定法で決定することができる。
【0024】
ある実施形態においては、PMPは、例えば約0.5dg/分〜60.0dg/分、例えば約1dg/分〜約30dg/分、例えば10dg/分〜40dg/分の範囲といった、80.0dg/分以下のメルトフローレート(「MFR」、ASTM D 1238に従って測定;260℃/5.0kg)を有する。PMPのMFRが80.0dg/分超であると、比較的高いメルトダウン温度を有する膜を製造することがより困難となり得る。1つまたは複数の実施形態においては、PMPは、1.0×10〜4.0×10の範囲のMwを有する。PMPのMwおよびMWDは、"Macromolecules, Vol. 38, pp. 7181-7183 (2005)"に例示されている、ポリプロピレンについて以下に説明する方法と同様のゲル浸透クロマトグラフィー法で決定することができるが、この方法はポリプロピレンおよびポリエチレンのMwおよびMWDの測定について以下に説明する方法と同様である。
【0025】
PMPは、例えば、(チタン、またはチタンとマグネシウムを含有する触媒系等の)チーグラー・ナッタ触媒系または「シングルサイト触媒」を用いる重合プロセスで製造することができる。ある実施形態においては、PMPは、4−メチルペンテン−1またはメチルペンテン−1等のメチルペンテン−1モノマーをα−オレフィン等の1つまたは複数のコモノマーとともに用いる配位重合により製造される。所望によりα−オレフィンは、ブテン−1、ペンテン−1、3−メチルブテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、ノネン−1、およびデセン−1の1つまたは複数である。シクロペンテン、4−メチルシクロペンテン、ノルボルネン、トリシクロ−3−デセン等の、環状コモノマー(1つまたは複数)を用いてもよい。ある実施形態においては、コモノマーは、ヘキセン−1、オクテン−1である。他の実施形態においては、コモノマーは、例えばC16〜C18といった、C10〜C18の範囲の炭素原子数を有する。PMP中のコモノマー含有量は、通常は20.0モル%以下である。
【0026】
PMPは、例えば240.0℃以下といった250.0℃以下のTmを有する混合物を製造するために、PMPの混合物(例えば乾燥混合または反応器ブレンド)であってもよい。
ポリエチレン
【0027】
膜は、第1および第2のポリエチレン、ならびに所望により第3のポリエチレンを含む。
PE1
【0028】
ある実施形態においては、第1のポリエチレン(「PE1」)は、例えば、例えば約1.0×10〜約0.90×10の範囲といった、1.0×10未満のMw、約2.0〜約50.0の範囲のMWD、および炭素原子1.0×10個当たり0.20未満の末端不飽和基量を有するものである。所望によりPE1は、約4.0×10〜約6.0×10の範囲のMwおよび約3.0〜約10.0のMWDを有する。所望によりPE1は、炭素原子1.0×10個当たり0.14以下、または炭素原子1.0×10個当たり0.12以下、例えば炭素原子1.0×10個当たり0.05〜0.14の範囲(例えば、測定の検出限界よりも下)の末端不飽和基量を有する。PE1は、例えば、旭化成ケミカルズ株式会社製のSUNFINE SH-800またはSH-810(登録商標)高密度PEであってもよい。
PE2
【0029】
ある実施形態においては、第2のポリエチレン(「PE2」)は、115.0℃〜130.0℃の範囲といった110.0℃以上のTm、および5.0×10〜4.0×10の範囲のMwを有するエチレン系ポリオレフィンホモポリマーまたはコポリマーを含む。Tmが115.0℃以下であると、同時に膜の透気度を低下させることなく熱的に安定な膜(例えば熱収縮が小さいもの)を製造することがより困難である。通常は、熱的に安定な(小さい熱収縮)膜の製造には110.0℃超の熱処理温度(例えば熱処理温度)が用いられ、熱処理温度がポリマーのTm以上であると膜の透気度が低下する。第1のポリエチレンのTmが131.0℃超であると、高い透気度と低いシャットダウン温度の両方を有する微多孔膜を製造することがより困難である。第1のポリエチレンのMwが5.0×10を有意に下回るかまたはMwが4.0×10を有意に上回ると、Tmが例えば125℃〜130℃の範囲またはそれ以上といった比較的高い場合であっても、良好な透気度を有する微多孔膜を製造することがより困難である、ということが分かっている。
【0030】
Tmは、JIS K7122に従って測定する。すなわち、第1のポリエチレン樹脂の試料(210℃にて溶融プレスされた0.5mm厚の成形物)を、周囲温度にて示差走査熱量計(パーキンエルマー社製Pyris Diamond DSC)の試料ホルダーに入れ、窒素雰囲気中にて1分間230℃で熱処理し、10℃/分で30℃に冷却し、30℃で1分間保持し、10℃/分の速度で230℃に加熱する。
【0031】
ある実施形態においては、第1のポリエチレンは、例えば120.0℃〜126.0℃、120.5℃〜124.5℃、または121.0℃〜124.0℃といった、120.0℃〜128.0℃の範囲のTmを有する。別の実施形態においては、第1のポリエチレンは、122.0℃〜126.0℃の範囲のTmを有する。
【0032】
ある実施形態においては、第1のポリエチレンは、8.0×10〜2.0×10の範囲のMwを有する。別の実施形態においては、第1のポリエチレンは、1.0×10〜1.0×10の範囲のMwを有する。所望により第1のポリエチレンは、例えば1.5〜20.0、約1.5〜約5.0、または約1.8〜約3.5の範囲といった、50.0以下のMWDを有する。
【0033】
ある実施形態においては、第1のポリエチレンは、エチレンとα−オレフィン等のコモノマーとのコポリマーを含む。コモノマーは、通常はエチレンの量と比べると比較的少量で存在する。例えばコモノマー量は、コポリマー100モル%を基準として通常は10モル%未満、例えば1.0%〜5.0モル%である。コモノマーは、例えば、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、スチレン、または他のモノマーの1つまたは複数であってもよい。かかるポリマーまたはコポリマーは、シングルサイト触媒を含むいずれかの好適な触媒を用いて製造することができる。例えばポリマーは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,084,534号に開示されている方法(例えば、当該特許の実施例27および41に開示されている方法)に従って製造することができる。
PE3
【0034】
ある実施形態においては、第3のポリエチレン(「PE3」)は、例えば、例えば約1.0×10〜約5.0×10の範囲といった、1.0×10以上のMw、および例えば20.0以下、例えば約1.2〜約20.0の範囲といった、50.0以下のMWDを有するものである。PE3の非限定的な例としては、例えば約2.0×10といった、約1.0×10〜約3.0×10のMw、および例えば約2.0〜約20.0の範囲、好ましくは約4.0〜約15.0といった、20.0以下のMWDを有するものがある。PE3は、例えば、エチレンホモポリマー、またはモル比で100%のコポリマーを基準として5.0モル%以下のα−オレフィン等の1種または複数のコモノマーを含有するエチレン/α−オレフィンコポリマーであってもよい。コモノマーは、例えば、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、またはスチレンの1つまたは複数であってもよい。かかるポリマーまたはコポリマーは、チーグラー・ナッタ触媒またはシングルサイト触媒を用いて製造することができるが、これは必須ではない。かかるPEは、134℃以上の融点を有してもよい。PE3は、超高分子量ポリエチレン(「UHMWPE」)、例えば三井化学株式会社製のHI-ZEX MILLION 240-m(登録商標)ポリエチレンであってもよい。
【0035】
PE1〜PE3の融点は、例えば国際公開第WO2008/140835号に開示されている方法を用いて決定することができる。
ポリプロピレン
【0036】
所望により、膜はポリプロピレンをさらに含む。ある実施形態においては、ポリプロピレン(「PP」)は、例えば、例えば7.5×10以上、例えば約0.80×10〜約2.0×10の範囲、例えば約0.90×10〜約3.0×10の範囲といった、6.0×10以上のMwを有するものである。所望によりPPは、160.0℃以上のTm、および例えば100.0J/g以上、例えば110J/g〜120J/gの範囲といった、90.0J/g以上の融解熱(「ΔHm」)を有する。所望によりPPは、例えば約1.5〜約10.0の範囲、例えば約2.0〜約8.5の範囲、または2.5〜6.0の範囲といった、20.0以下、または6.0以下のMWDを有する。所望によりPPは、プロピレンと5.0モル%以下のコモノマーとのコポリマー(ランダムまたはブロック)であり、コモノマーは、例えば、エチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、およびスチレン等の1つまたは複数のα−オレフィン、またはブタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン等の1つまたは複数のジオレフィンである。
【0037】
ある実施形態においては、PPはアイソタクチックポリプロピレンである。用語「アイソタクチックポリプロピレン」は、(アイソタクチックPPの合計モル数を基準として)約50.0モル%mmmmペンタッド以上、所望により約94.0モル%mmmmペンタッド以上、または好ましくは96.0モル%mmmmペンタッド以上のメソペンタッド分率を有するPPを意味する。ある実施形態においては、PPは、(a)約90.0モル%mmmmペンタッド以上、好ましくは94.0モル%mmmmペンタッド以上のメソペンタッド分率、および(b)例えば炭素原子1.0×10個当たり約20以下といった、炭素原子1.0×10個当たり約50.0以下の立体的欠陥量、または例えば炭素原子1.0×10個当たり約5.0以下といった、炭素原子1.0×10個当たり約10.0以下の立体的欠陥量を有する。所望によりPPは、以下の特性の1つまたは複数を有する:(i)162.0℃以上のTm、(ii)230℃の温度および25秒−1のひずみ速度における、約5.0×10Pa秒以上の伸張粘度、(iii)約230℃の温度および25秒−1のひずみ速度にて測定した場合の、約15以上のトルートン比、(iv)約0.1dg/分以下、所望により約0.01dg/分以下(すなわち、値が低く事実上MFRが測定不能)のメルトフローレート(「MFR」;ASTM D-1238-95 条件L、230℃および2.16kgにて)、または(v)PPの質量を基準として、例えば0.2質量%以下、例えば0.1質量%以下といった、0.5質量%以下の抽出可能な種の量(PPと沸騰キシレンとを接触させることにより抽出可能)。
【0038】
ある実施形態においては、PPは、約0.8×10〜約3.0×10、所望により0.9×10〜約2.0×10の範囲のMw、および例えば約2.0〜約8.5、所望により2.0〜6.0の範囲といった、8.5以下のMWD、および90.0J/g以上のΔHmを有するアイソタクチックPPである。通常は、かかるPPは、94.0モル%mmmmペンタッド以上のメソペンタッド分率、炭素原子1.0×10個当たり約5.0以下の立体的欠陥量、および162.0℃以上のTmを有する。
【0039】
PPの非限定的な例、ならびにPPのTm、メソペンタッド分率、立体規則性、固有粘度、トルートン比、立体的欠陥、および抽出可能な種の量の決定方法は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第WO2008/140835号に記載されている。
【0040】
PPのΔHmは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第WO2007/132942号に開示されている方法で決定する。Tmは、パーキンエルマーインスツルメント社製、model Pyris 1 DSCによって得た示差走査熱量測定(DSC)デ−タから決定することができる。約5.5〜6.5mgの質量の試料をアルミニウム製の試料パンに封入する。温度30℃で開始し、第一融解(デ−タは記録せず)と呼ぶ、試料を10℃/分の速度で230℃に加熱することによりTmを測定する。冷却加熱サイクルを適用する前に、試料を10分間230℃に保持する。次いで、試料を10℃/分の速度で230℃から25℃に冷却(「結晶化」と呼ぶ)した後、10分間25℃に保持し、次いで10℃/分の速度で230℃に加熱(「第二融解」と呼ぶ)する。PMPのTmについては、230℃の代わりに270℃の温度を使用する。結晶化と第二融解の両方における熱事象を記録する。融解温度(T)は第2の融解曲線のピーク温度であり、結晶化温度(T)は結晶化ピークのピーク温度である。
他の種
【0041】
所望により、無機種(ケイ素および/またはアルミニウム原子を含有する種等)、ならびに/または国際公開第WO2007/132942号および同第WO2008/016174号(ともにその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載のポリマー等の耐熱性ポリマーは、第1および/または第2の層中に存在してもよい。
【0042】
微多孔膜が押出しによって製造される場合、最終微多孔膜は、通常は、押出物の製造に用いるポリマーを含む。処理中に導入する少量の希釈剤または他の種もまた、通常は、膜の質量を基準として1質量%未満の量で存在してもよい。処理中にポリマーの分子量が少量低下することがあるが、これは許容可能なものである。ある形態においては、処理中に分子量の低下があったとしても、膜中のポリマーのMWDの値と膜の製造に用いるポリマーのMWD(例えば押出し前)との違いは、例えば、わずか約10%、わずか約1%、またはわずか約0.1%にしかならない。
MwおよびMWDの決定
【0043】
ポリマーのMwおよびMWDは、示差屈折計(DRI)を備えた高温サイズ排除クロマトグラフ、すなわち「SEC」(GPC PL 220、ポリマーラボラトリーズ社製)を用いて決定することができる。測定は、"Macromolecules, Vol. 34, No.19, pp. 6812-6820 (2001)"に開示されている手順に従って行う。MwおよびMWDの決定には、3本のPLgel Mixed-Bカラム(ポリマーラボラトリーズ社製)を用いる。PEに関しては、公称流量は0.5cm/分であり、公称注入量は300μLであり、トランスファーライン、カラム、およびDRI検出器が、145℃に維持されたオーブン内に含まれている。PPおよびPMPに関しては、公称流量は1.0cm/分であり、公称注入量は300μLであり、トランスファーライン、カラム、およびDRI検出器が、160℃に維持されたオーブン内に含まれている。
【0044】
使用するGPC溶媒は、約1000ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有する、濾過済みの、アルドリッチ社製の、試薬グレードの1,2,4−トリクロロベンゼン(TCB)である。TCBを、SECに導入する前にオンライン脱気装置で脱気する。SEC溶離液として同じ溶媒を用いる。乾燥ポリマーをガラス容器に入れ、所望の量のTCB溶媒を加え、次いでこの混合物を160℃で継続的に撹拌しながら約2時間加熱することにより、ポリマー溶液を調製する。ポリマー溶液の濃度は0.25〜0.75mg/mlである。試料溶液は、GPCに注入する前に、モデルSP260 Sample Prep Station(ポリマーラボラトリーズ社製)を用いて2μmフィルターでオフラインろ過する。
【0045】
Mp(「Mp」はMwにおけるピークと定義される)が約580〜約10,000,000の範囲の17種のそれぞれのポリスチレン標準を用いて作成した検量線でカラムセットの分離効率を較正する。ポリスチレン標準はポリマーラボラトリーズ社(マサチューセッツ州アマースト)より入手する。各PS標準についてDRI信号のピークにおける保持容量を記録し、このデータセットを二次多項式に当てはめることによって、検量線(logMp対保持容量)を作成する。ウェーブメトリクス社(Wave Metrics, Inc.)製IGOR Proを用いて試料を分析する。
膜の製造方法
【0046】
1つまたは複数の実施形態においては、微多孔膜は、ポリマー混合物(例えばPMP、PE1、PE2、ならびに所望によりPPおよび/またはPE3)を、希釈剤、および無機充填剤等の随意の構成成分と混合してポリマー−希釈剤混合物を形成し、次いでポリマー−希釈剤混合物を押し出して押出物を形成することにより製造することができる。希釈剤の少なくとも一部を押出物から除去して微多孔膜を形成する。例えば、PMP、PE1、およびPE2のブレンドを流動パラフィン等の希釈剤と混合して混合物を形成してもよく、その混合物を押し出して単層膜を形成する。所望により、追加の層を押出物に施して、例えばシャットダウン機能の低い最終膜としてもよい。言い換えれば、単層押出物または単層微多孔膜を積層または共押出しして多層膜を形成してもよい。
【0047】
膜の製造プロセスは、残留したいずれかの揮発性種の少なくとも一部を希釈剤除去後のいずれかの時点において膜から除去する工程、希釈剤除去の前または後に膜を熱的処理(熱処理またはアニーリング等)にかける工程、希釈剤除去の前に押出物を少なくとも1つの平面方向に延伸する工程、および/または希釈剤除去の後に膜を少なくとも1つの平面方向に延伸する工程等の随意の工程をさらに含んでもよい。国際公開第WO2008/016174号に記載されている、随意の熱溶媒処理工程、随意の熱処理工程、随意の電離放射線による架橋工程、および随意の親水性処理工程等を所望により行ってもよい。これらの随意の工程の数も順序も重要ではない。
ポリマー−希釈剤混合物の製造
【0048】
1つまたは複数の実施形態においては、(上記の)PMP、PE1、PE2、ならびに所望によりPPおよび/またはPE3を混合してポリマー混合物を形成し、この混合物を希釈剤(希釈剤の混合物、例えば溶媒混合物であってもよい)と混合してポリマー−希釈剤混合物を製造する。混合は、例えば反応押出機等の押出機内にて行ってもよい。このような押出機としては、限定するものではないが、二軸スクリュー押出機、リング押出機、および遊星型多軸スクリュー押出機が挙げられる。本発明の実施は使用する反応押出機のタイプに限定されるものではない。充填剤、酸化防止剤、安定剤、および/または耐熱性ポリマー等の随意である種がポリマー−希釈剤混合物に含まれてもよい。このような随意である種の種類および量は、国際公開第WO2007/132942号、同第WO2008/016174号、および同第WO2008/140835号に記載のものと同じであってもよく、それらの全ては全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0049】
希釈剤は、通常は、押出物の製造に用いるポリマーと相溶する。例えば希釈剤は、押出温度にて樹脂と合わさって単相を形成することが可能ないずれの種または種の組合せであってもよい。希釈剤の例としては、ノナン、デカン、デカリン等の脂肪族または環状炭化水素、およびパラフィン油、ならびにフタル酸ジブチルおよびフタル酸ジオクチル等のフタル酸エステルの1つまたは複数が挙げられる。例えば、40℃で20〜200cstの動粘度を有するパラフィン油を用いてもよい。希釈剤は、ともにその全体が参照により組み込まれる、米国特許出願公開第2008/0057388号および同第2008/0057389号に記載のものと同じであってもよい。
【0050】
ある実施形態においては、ポリマー−希釈剤混合物中のブレンドされたポリマーは、Aの量のPMP、Aの量のPE1、Aの量のPE2、Aの量のPE3、およびAの量のPPを含み、ここで、5.0質量%≦A≦25.0質量%、30.0質量%≦A≦50.0質量%、5.0質量%≦A≦20.0質量%、0.0質量%≦A≦40.0質量%、および0.0質量%≦A≦25.0質量%である(質量パーセントはポリマー−希釈剤混合物中のポリマーの質量が基準である)。所望により、Aは10.0質量%≦A≦25.0質量%の範囲であり、Aは30.0質量%≦A≦40.0質量%の範囲であり、Aは10.0質量%<A≦20.0質量%の範囲である。所望により、Aは15.0質量%〜25.0質量%の範囲であり、Aは5.0質量%≦A<15.0質量%の範囲である。所望により、A≧Aおよび/またはA+A≧25.0質量%である。PMP、PE1、PE2、PE3、およびPPは、上記の通りである。
【0051】
ある実施形態においては、ポリマーと希釈剤とは、例えば0.20KWh/kg>混合エネルギー≧0.39KWh/kgの範囲といった、0.50KWh/kg未満の混合エネルギーを用いて混合する。混合エネルギーがこの範囲内であると、押出物を引き裂かれることなくより大きい倍率に延伸することが可能であり、それにより(a)このプロセスからのより高い膜の収率、および(b)最終膜におけるより高い強度の両方につながることがわかっている。混合エネルギーは、キロワット時/キログラムを単位とする。いかなる理論またはモデルにも拘束されることを望まないが、0.50KWh/kg以下の混合エネルギーを用いると混合物内のPMPの分散が改善され、それによってより強い突刺強度を持つ膜が得られると考えられる。例えば、一実施形態においては、膜は実質的に均質なポリマー(例えばポリマー種の相分離が実質的にない)を含み、例えば膜は、10nm以上の直径を有するPE、PP、またはPMPのポリマードメインを実質的に含まない。所望により、膜中のポリマーの全質量を基準として、例えば0.001質量%以下といった0.01質量%以下の膜中のポリマーは、10nm以上の直径を有するドメイン内にある。
【0052】
0.20KWh/kg未満0.39KWh/kg以上の混合エネルギーを用いると、ポリマー分解の量が減少し、かつ有用な透気度等の有利な動作特性が維持されるとも考えられる。より高い混合エネルギーでは、(例えば混合中のずれ揺変により)ポリマーの分子量低下が起こると考えられ、また不十分な透気度が認められる。
【0053】
1つまたは複数の実施形態においては、ポリオレフィンを400rpm以下以下で作動している押出機内で混合するが、他の実施形態においては350rpm以下、他の実施形態においては300rpm以下、他の実施形態においては275rpm以下、他の実施形態においては250rpm以下、また他の実施形態においては225rpmである。ある実施形態においては、押出し中のポリマー−希釈剤混合物を、例えば210℃〜240℃といった140℃〜250℃の範囲の温度にさらす。ある実施形態においては、押出物の製造に用いる希釈剤の量は、ポリマー−希釈剤混合物の質量を基準として例えば約20.0質量%〜約99.0質量%の範囲であり、残りがポリマーとなる。例えば、希釈剤の量は約60.0質量%〜約80.0質量%の範囲であってもよい。
押出物の製造
【0054】
ある形態においては、ポリマー−希釈剤混合物をダイを通して押出機から導き押出物を製造する。押出物は、延伸工程後に望ましい厚さ(通常1.0μm以上)を有する最終膜を製造するのに適切な厚さを有しているべきである。例えば押出物は、約0.1mm〜約10.0mm、または約0.5mm〜5mmの範囲の厚さを有してもよい。押出しは、通常は、溶融状態のポリマー−希釈剤混合物を用いて行う。シート形成ダイを使用する場合、ダイリップを、通常は、例えば140℃〜250℃の範囲の高温に加熱する。押出しを実行するための好適な処理条件は、国際公開第WO2007/132942号および同第WO2008/016174号に開示されている。
【0055】
所望により、押出物を約15℃〜約25℃の範囲の温度にさらして、冷却押出物を形成することができる。冷却速度は特に重要ではない。例えば押出物は、押出物の温度(冷却した温度)が押出物のゲル化温度とほぼ同じ(またはそれ以下)になるまで、最低でも約30℃/分の冷却速度で冷却してもよい。冷却の処理条件は、例えば国際公開第WO2007/132942号、同第WO2008/016174号、および同第WO2008/140835号に開示されているものと同じであってもよい。
押出物の延伸(上流延伸)
【0056】
押出物または冷却押出物を、少なくとも一つの方向、例えばMDまたはTD等の平面方向に延伸してもよい(「上流延伸」または「湿式延伸」と呼ぶ)。このような延伸により、押出物中のポリマーが少なくともいくつかの方向に延伸することになると考えられる。この延伸は「上流」延伸と呼ばれる。押出物は、例えば国際公開第WO2008/016174号に記載されている、例えばテンター法、ロール法、インフレーション法、またはそれらの組合せにより延伸することができる。延伸は、一軸に、または二軸に行ってもよいが、二軸延伸が好ましい。二軸延伸の場合、同時二軸延伸、逐次延伸、または多段階延伸(例えば同時二軸延伸と逐次延伸の組合せ)のいずれを用いてもよいが、同時二軸延伸が好ましい。二軸延伸を用いる場合、倍率の大きさは各延伸方向で同じである必要はない。
【0057】
延伸倍率は、一軸延伸の場合、例えば2倍以上、好ましくは3〜30倍であってもよい。二軸延伸の場合、延伸倍率は、例えばいずれの方向にも3倍以上であってもよく、すなわち面積倍率が、例えば16倍以上、例えば25倍以上といった、9倍以上であってもよい。この延伸工程の例としては、面積倍率が約9倍〜約49倍の延伸が挙げられる。各方向への延伸の量はやはり同じである必要はない。倍率はフィルムの大きさに乗法的に影響する。例えば、TDに4倍の倍率に延伸される、最初の幅(TD)が2.0cmであるフィルムは、最終幅が8.0cmとなる。
【0058】
延伸は、押出物をおよそTcd温度からTmの範囲の温度(上流延伸温度)にさらしながら行ってもよいが、TcdおよびTmは、結晶分散温度、および押出物の製造に用いるポリエチレンの中で最も融点の低いPE(通常は、PE1またはPE3等のPE)の融点と定義される。結晶分散温度は、ASTM D 4065に従って動的粘弾性の温度特性を測定することにより決定する。Tcdが約90℃〜約100℃の範囲である実施形態においては、延伸温度は、例えば約100℃〜125℃、例えば105℃〜125℃といった、約90℃〜125℃であってもよい。
【0059】
試料(例えば押出物、乾燥押出物、膜等)を高温にさらす場合、こうした暴露は、空気を熱し、次いでこの加熱空気を試料の近くに運ぶことにより行うことができる。加熱空気の温度は、通常は所望の温度と等しい設定値に制御され、次いでプレナム等を通して試料に向けて導かれる。試料を加熱面にさらす方法、オーブンでの赤外線加熱等の従来の方法を含む、試料を高温にさらすその他の方法を、加熱空気とともに、または加熱空気の代わりに用いてもよい。
希釈剤除去
【0060】
ある形態においては、希釈剤の少なくとも一部を延伸押出物から除去(または置換)して乾燥膜を形成する。例えば国際開第WO2008/016174号に記載のように、置換(または「洗浄」)溶媒を用いて希釈剤を除去(洗浄、または置換)してもよい。
【0061】
ある実施形態においては、残留したいずれかの揮発性種(例えば洗浄溶媒)の少なくとも一部を、希釈剤除去後に乾燥膜から除去する。加熱乾燥、風乾(空気を動かすこと)等の従来の方法を含む、洗浄溶媒を除去することが可能ないずれの方法を用いてもよい。洗浄溶媒等の揮発性種を除去するための処理条件は、例えば国際公開第WO2008/016174号に開示されているものと同じであってもよい。
膜の延伸(下流延伸)
【0062】
乾燥膜は、少なくとも1つの方向、例えばMDおよび/またはTDに延伸してもよい(希釈剤の少なくとも一部が除去または移動されるため、「下流延伸」または「乾燥延伸」と呼ぶ)。このような延伸により、膜中のポリマーが少なくともいくつかの方向に延伸することになると考えられる。この延伸は下流延伸と呼ばれる。下流延伸の前には、乾燥膜は、MDの最初の大きさ(第1の乾燥長さ)およびTDの最初の大きさ(第1の乾燥幅)を有する。本明細書で用いる用語「第1の乾燥幅」は、乾燥延伸開始前における乾燥膜のTDへの大きさを指す。用語「第1の乾燥長さ」は、乾燥延伸開始前における乾燥膜のMDへの大きさを指す。例えば、国際公開WO2008/016174号に記載の種類のテンター延伸装置を用いることができる。
【0063】
乾燥膜は、第1の乾燥長さから、例えば1.1〜1.5の範囲といった約1.1〜約1.6の範囲の倍率(「MD乾燥延伸倍率」)で第1の乾燥長さより長い第2の乾燥長さへ、MDに延伸してもよい。TD乾燥延伸を用いる場合、乾燥膜は、第1の乾燥幅から、ある倍率(「TD乾燥延伸倍率」)で第1の乾燥幅より広い第2の乾燥幅へ、TDに延伸してもよい。所望により、TD乾燥延伸倍率はMD乾燥延伸倍率以下である。TD乾燥延伸倍率は、約1.1〜約1.6の範囲であってもよい。乾燥延伸(希釈剤を含有した押出物をすでに延伸しているため再延伸とも呼ばれる)は、MDおよびTDに逐次的または同時的であってもよい。TD熱収縮は、通常はMD熱収縮よりも電池の特性に与える影響が大きいため、TD倍率の大きさは、通常はMD倍率の大きさを超えることはない。二軸乾燥延伸を用いる場合、乾燥延伸は、MDおよびTDに同時的、または逐次的であってもよい。乾燥延伸が逐次的の場合、通常はMD延伸を最初に行い、続いてTD延伸を行う。
【0064】
乾燥延伸は、乾燥膜を、例えばおよそTcd−30℃〜Tmの範囲といった、Tm以下の温度(下流延伸温度)にさらしながら行ってもよい。ある形態においては、延伸温度は、例えば約120℃〜約132℃、例えば約128℃〜約132℃といった、約70℃〜約135℃の範囲の温度にさらした膜で行う。
【0065】
ある形態においては、MD延伸倍率は、例えば1.2〜1.4といった、約1.0〜約1.5の範囲であり、TD乾燥延伸倍率は、例えば約1.1〜約1.55、例えば1.15〜1.5、または1.2〜1.4の範囲といった、1.6以下であり、MD乾燥延伸はTD乾燥延伸の前に行い、乾燥延伸は、膜を、例えば約122℃〜約130℃の範囲といった、約80℃〜約132℃の範囲の温度にさらしながら行う。
【0066】
延伸率は、延伸方向(MDまたはTD)に3%/秒以上であることが好ましく、この率は、MDおよびTD延伸について独立して選択してもよい。延伸率は、好ましくは5%/秒以上、より好ましくは10%/秒以上、例えば5%/秒〜25%/秒の範囲である。特に重要ではないが、延伸率の上限は、膜の破裂を防ぐために50%/秒であることが好ましい。
制御された膜幅の縮小
【0067】
乾燥延伸に続き、乾燥膜に、第2の乾燥幅から、第1の乾燥幅から第1の乾燥幅の約1.1倍の範囲である第3の乾燥幅への制御された幅の縮小を施してもよい。通常は幅の縮小は、膜を、Tcd−30℃以上であるがTm以下である温度にさらしながら行う。例えば、幅の縮小中に、膜を、例えば約122℃〜約132℃、例えば約125℃〜約130℃といった、約70℃〜約135℃の範囲の温度にさらしてもよい。温度は下流延伸温度と同じであってもよい。ある形態においては、膜の幅の減少は、膜をTmよりも低い温度にさらしながら行う。ある形態においては、第3の乾燥幅は、第1の乾燥幅の1.0倍〜第1の乾燥幅の約1.4倍の範囲である。
【0068】
制御された幅の縮小中に、TD延伸中に膜がさらされた温度以上の温度に膜をさらすと、最終膜の耐熱収縮性がより高くなると考えられる。
熱処理
【0069】
所望により、例えば乾燥延伸の後、制御された幅の縮小の後、またはその両方の後に、希釈剤の除去に続いて少なくとも1度膜を熱的に処理(熱処理)する。熱処理により結晶が安定化して膜中に均一な薄層が形成されると考えられる。ある形態においては、熱処理は、例えば約100℃〜約135℃の範囲、例えば約120℃〜約132℃、または約122℃〜約130℃といった、TcdからTmの範囲の温度に膜をさらしながら行われる。熱処理温度は下流延伸温度と同じであってもよい。通常は、熱処理は、例えば1000秒以下、例えば1〜600秒の範囲の時間といった、膜中に薄層を形成するのに十分な時間行う。ある形態においては、熱処理は一般的な熱処理「熱固定」条件下で実施する。用語「熱固定」は、例えば熱処理中に膜の外周をテンタークリップで保持すること等によって膜の長さおよび幅を実質的に一定に維持しながら行う熱処理を指す。
【0070】
所望により、熱処理工程の後にアニーリング処理を行ってもよい。アニーリングは、膜には荷重をかけない加熱処理であり、例えばベルトコンベアを備えた加熱室またはエアフローティング型(air-floating-type)加熱室等を用いて行ってもよい。アニーリングは、熱処理の後にテンターを緩めた状態で連続的に行ってもよい。アニーリング中、膜を、例えば約60℃〜およそTm−5℃の範囲といった、Tmまたはそれ以下の範囲の温度にさらしてもよい。アニーリングによって微多孔膜の透気度および強度が向上すると考えられる。
【0071】
随意である、熱ローラー処理、熱溶媒処理、架橋処理、親水性処理、およびコーティング処理を、例えば国際公開第WO2008/016174号に記載されているように、所望により行ってもよい。
膜の構造および特性
【0072】
膜は、常圧で液体(水性および非水性)を透過させる微多孔膜である。したがって、膜は、バッテリーセパレーター、濾過膜等として使用することができる。熱可塑性フィルムは、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル亜鉛電池、銀亜鉛電池、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池等の二次電池用のBSFとして特に有用である。ある実施形態においては、本発明は、熱可塑性フィルムを含むBSFを含有するリチウムイオン二次電池に関する。かかる電池は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第WO2008/016174号に記載されている。かかる電池は、例えば電気自動車およびハイブリッド電気自動車用の電源として用いることができる。所望により、膜は以下の特性の1つまたは複数を有する。
厚さ
【0073】
ある実施形態においては、最終膜の厚さは、例えば約1.0μm〜約1.0×10μmの範囲といった、1.0μm以上である。例えば、単層膜は約1.0μm〜約30.0μmの範囲の厚さを有してもよく、また多層膜は7.0μm〜30.0μmの範囲の厚さを有してもよいが、これらの値は単なる代表的なものである。膜の厚さは、例えば、縦方向に1cm間隔で10cmの幅にわたって接触式厚さ計により測定することができ、次いで平均値を出して膜厚さを得ることができる。〒416-0946静岡県富士市五貫島746-3、明産株式会社製モデルRC-1ロータリーキャリパー、または株式会社ミツトヨ製「ライトマチック」等の厚さ計が好適である。例えば光学的厚さ測定法等の、非接触式厚さ測定方法もまた好適である。ある実施形態においては、膜は、30.0μm以下の厚さを有する。
空孔率≧20.0%
【0074】
膜の空孔率は、膜の実質量と、100%ポリマーの同等の非多孔性膜(同じポリマー組成、長さ、幅、および厚さを有するという意味において同等)の質量とを比較することにより従来法で測定する。次に、以下の式を用いて空孔率を求める:空孔率%=100×(w2−w1)/w2。式中、「w1」は膜の実質量であり、「w2」は、同じ大きさおよび厚さを有する(同じポリマーの)同等の非多孔性膜の質量である。ある形態においては、膜の空孔率は20.0%〜80.0%の範囲である。
標準化透気度≦2.8×10秒/100cm/μm
【0075】
ある実施形態においては、膜は、例えば2.6×10秒/100cm/μm以下、例えば1.0×10秒/100cm/μm以下といった、2.8×10秒/100cm/μm以下の標準化透気度(JIS P8117に従って測定)を有する。所望により膜は、10.0秒/100cm/μm〜2.7×10秒/100cm/μmの範囲の標準化透気度を有する。透気度値は、1.0μmのフィルム厚さを有する同等の膜の値に標準化するため、膜の透気度値は、「秒/100cm/μm」の単位で表す。標準化透気度は、JIS P8117に従って測定し、その結果を、A=1.0μm×(X)/Tの式を用いて、1.0μmの厚さを有する同等の膜の透気度値に標準化する。式中、Xは実厚さTを有する膜の透気度の実測値であり、Aは1.0μmの厚さを有する同等の膜の標準化透気度である。
標準化突刺強度≧80.0mN/1.0μm
【0076】
膜の突刺強度は、1.0μmの厚さおよび50%の空孔率を有する同等の膜の突刺強度として表す[mN/μm]。突刺強度は、厚さTを有する膜を、末端が球面(曲率半径R:0.5mm)である直径1mmの針で2mm/秒の速度で突き刺した時に周囲温度で測定した最大荷重、と定義される。この突刺強度(「S」)を、S=[50%*20μm*(S)]/[T*(100%−P)](式中、Sは突刺強度の実測値であり、Sは標準化突刺強度であり、Pは膜の空孔率の実測値であり、Tは膜の平均厚さである)の式を用いて、1.0μmの厚さおよび50%の空孔率を有する同等の膜の突刺強度値に標準化する。所望により、膜の標準化突刺強度は、例えば2.0×10mN/1.0μm以上、例えば1.0×10mN/1.0μm〜4.0×10mN/1.00μmの範囲といった、1.0×10mN/1.0μm以上である。
シャットダウン温度≦131.0℃
【0077】
微多孔膜のシャットダウン温度は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第WO2007/052663号に開示されている方法によって測定する。この方法に従い、微多孔膜を上昇していく温度(30℃で開始して5℃/分)にさらし、その間に膜の透気度を測定する。微多孔膜のシャットダウン温度は、微多孔膜の透気度(ガーレー値)が最初に1.0×10秒/100cmを超える時の温度と定義される。膜のメルトダウン温度およびシャットダウン温度を測定する目的で、透気度を、例えば透気度計(旭精工株式会社製、EGO-1T)を用いてJIS P8117に従って測定してもよい。ある実施形態においては、シャットダウン温度は、例えば120.0℃〜129.0℃の範囲といった、131.0℃以下または129.0℃以下である。
メルトダウン温度(膜の破裂により測定)≧180.0℃
【0078】
ある実施形態においては、微多孔膜は、例えば190.0℃以上、例えば200.0℃以上といった、180.0℃以上のメルトダウン温度を有する。所望により膜は、例えば197.0℃〜210.0℃の範囲といった、約190.0℃〜約210.0℃の範囲のメルトダウン温度を有する。メルトダウン温度は次のようにして測定することができる。5cm×5cmの微多孔膜の試料を、それぞれが直径12mmの円形の開口部を有する金属ブロックの間に挟むことによってその外周に沿って固定する。次いでこれらのブロックを、膜の平面が水平になるような配置にする。直径10mmの炭化タングステンの球を、上側のブロックの円形の開口部内の微多孔膜上に置く。30℃で開始した後、膜を5℃/分の速度で上昇する温度にさらす。球によって微多孔膜が破れる温度を膜のメルトダウン温度と定義する。
105℃TD熱収縮≦5.0%
【0079】
ある実施形態においては、膜は、例えば2.0%以下、例えば約0.01%〜約0.5%の範囲といった、5.0%以下の105.0℃におけるTD熱収縮を有する。所望により膜は、例えば約0.5%〜約5.0%の範囲といった、5.0%以下の105.0℃におけるMD熱収縮を有する。
【0080】
105.0℃における直交面方向(例えばMDまたはTD)への膜の熱収縮(「105℃熱収縮」)は、次のようにして測定する:(i)23.0℃における微多孔膜の試験片の大きさをMDおよびTDの両方について測定し、(ii)試験片を、荷重をかけずに8時間105.0℃の温度にさらし、次いで(iii)膜の大きさをMDおよびTDの両方について測定する。MDまたはTDのいずれかへの熱(すなわち「熱による」)収縮は、測定結果(i)を測定結果で割り、(ii)得られた商を百分率で表すことによって得ることができる。
130℃TD熱収縮および170℃TD熱収縮
【0081】
ある実施形態においては、膜は、例えば10.0%以下、例えば約1.0%〜約20.0%の範囲といった、20.0%以下の130℃TD熱収縮を有する。ある実施形態においては、膜は、例えば28.0%以下、例えば約15.0%〜約30.0%といった、30.0%以下の170℃TD熱収縮を有する。
【0082】
130℃および170℃の熱収縮の測定値は、105℃における熱収縮の測定値とはわずかに異なるが、これは、横方向と平行である膜の端が、通常は電池内で固定され、特にMDと平行である端の中心付近においてはTDへの拡大または縮小(収縮)を可能にする自由度が限られている、という事実を反映している。したがって、TDに沿って50mm、MDに沿って50mmの正方形の微多孔性フィルムの試料を、TDと平行である端を(例えばテープにより)フレームに固定して、MDに35mmでTDに50mmの開放口を残し、フレームに設置して23.0℃の温度にさらす。次に、試料を取り付けたフレームを30分間130.0℃または170.0℃の温度にさらし、次いで冷却する。通常は、TD熱収縮によって、MDと平行であるフィルムの端が内側に(フレームの開口の中心に向かって)わずかに弓なりに曲がる。TDへの収縮(パーセントで表す)は、加熱前の試料のTDの長さを加熱後の試料のTDの(フレーム内の)最短長さで割り100パーセントを掛けたものと等しい。
【0083】
本発明を、本発明の範囲を制限することを意図することなく、下記実施例を参照してより詳細に説明する。
実施例
実施例1
(1)ポリマー−希釈剤混合物の調製
【0084】
ポリマー−希釈剤混合物を、流動パラフィン希釈剤と、PMP、PP、PE1、PE2、およびPE3のポリマーブレンドとを混合することにより次のようにして調製する。ポリマーブレンドは、(a)21.0質量%の、21dg/分のMFRおよび222℃のTmを有するポリメチルペンテン(三井化学株式会社、TPX:MX002)(PMP)、(b)10.0質量%の、1.1×10のMwおよび114J/gのΔHmを有するアイソタクチックPP(PP1)、(c)34.0質量%の、5.6×10のMw、4.05のMWD、炭素原子1.0×10個当たり0.14以下の末端不飽和基量、および136.0℃のTmを有するポリエチレン(PE1)、(d)16.0質量%の、2.5×10のMwおよび123.0℃のTmを有するポリエチレン(PE2)、ならびに(e)19.0.0質量%の、1.9×10のMwおよび136.0℃のTmを有するポリエチレン(PE3)を含む(質量パーセントは混合したポリマーの質量が基準である)。
【0085】
次に、25.0質量%のポリマーブレンドを、58mmの内径および42のL/Dを有する強混合型二軸スクリュー押出機内に充填し、75.0質量%の流動パラフィン(40℃で50cst)を、サイドフィーダーを介して二軸スクリュー押出機に供給する。220℃および200rpmで混合を行ってポリマー−希釈剤混合物を製造する(質量パーセントはポリマー−希釈剤混合物の質量が基準である)。
(2)膜の製造
【0086】
ポリマー−希釈剤混合物を押出機からシート形成ダイへと導いて(シートの形態の)押出物を形成する。ダイの温度は210℃である。押出物を、20℃に制御された冷却ローラーとの接触により冷却する。冷却押出物を、テンター延伸機で、MDおよびTDの両方に5倍の倍率に、115℃にて同時二軸延伸(上流延伸)する。延伸したゲル状シートを、20cm×20cmのアルミニウムフレームに固定し、25℃に制御された塩化メチレン浴に浸漬して3分間の100rpmの振動で流動パラフィンを除去し、室温の気流で乾燥させる。次いで、膜の大きさをほぼ一定に保ちながら、膜を10分間115.0℃で熱処理して最終微多孔膜を製造する。選択した出発物質、処理条件、および膜特性を表1に示す。
実施例2ならびに比較例1および2
【0087】
表1に記載したことを除き実施例1を繰り返す。出発物質および処理条件は、表に記載したことを除き実施例1で使用したものと同じである。例えば、PE1およびPE2を、7.46×10のMw、11.85のMWD、および炭素原子1.0×10個当たり0.20超の末端不飽和基量を有するポリエチレンPE4(Lupolen(登録商標)、バセル(Basell)社製)に換える。
【表1】

【表1−1】

【0088】
実施例1および2から、180.0℃以上のメルトダウン温度、131.0℃以下のシャットダウン温度、および30.0%以下の170℃TD熱収縮を有する微多孔膜は、PMP、PE1、およびPE2から製造できることがわかる。これらの実施例の膜は、リチウムイオン電池におけるBSFとしての使用に好適な特性を有する。膜の比較的高いメルトダウン温度を考慮すると、比較的低い170℃TD熱収縮値は、膜のシャットダウン温度よりも高い温度におけるBSFの安全域の改善をもたらすため、特に望ましい。比較例1および2から、(比較的高い末端ビニル基含有量を有するポリエチレンを用いることによる)より低いシャットダウン性能を達成する別の方法は、高温での小さい熱収縮値の実現においては有効性はかなり少ないことがわかる。(PE2のTmと比べて)比較的高いTmのPE4、および比較的より高い熱処理温度を使用していても、比較例1および2の膜は、高温での熱収縮値が有意により大きい。さらにより低いTmのPE4およびより低い熱処理温度を用いると、比較例1および2のシャットダウン温度よりもわずかに低いシャットダウン温度を有するだけでなく、さらに劣る高温での熱収縮性能も有する膜が得られるのではないかと予測される。
【0089】
優先権書類を含む、本明細書で引用した全ての特許、試験手順、およびその他の文献は、参照により、かかる開示が本発明に矛盾しない範囲で完全に組み込まれ、またかかる組込みが許容される全ての権限について、完全に組み込まれる。
【0090】
本明細書中に開示した例示的形態は特定のものについて記載しているが、種々の他の変形態様が、当業者にとっては明らかであり、かつ当業者によって本開示の精神および範囲から逸脱することなく容易に行われ得ることが理解されるであろう。したがって、本明細書に添付した特許請求の範囲の範囲は本明細書中に示した実施例および説明に限定されるものではなく、特許請求の範囲は、本開示が属する分野の当業者によってその等価物として扱われる全ての特徴を含む、本明細書に備わる特許可能な新規性のある特徴の全てを包含するものとして解釈されることが意図されている。
【0091】
数値の下限および数値の上限が本明細書中に列挙されている場合、あらゆる下限からあらゆる上限までの範囲が想定されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー混合物を含む膜であって、ポリマー混合物が、(a)200.0℃以上のTmおよび80.0dg/分以下のMFRを有するポリメチルペンテン、(b)1.0×10未満のMw、15.0以下のMWD、炭素原子1.0×10個当たり0.20以下の末端不飽和基量、および131.0℃以上のTmを有する第1のポリエチレン、ならびに(c)131.0℃未満のTmを有する第2のポリエチレンを含み、膜が、(i)微多孔性であり、(ii)180.0℃以上のメルトダウン温度を有し、(iii)131.0℃以下のシャットダウン温度を有し、かつ(iv)30.0%以下の170℃TD熱収縮を有することを特徴とする膜。
【請求項2】
膜が、炭素原子1.0×10個当たり0.20超の末端不飽和基量を有するポリエチレンを実質的に含まないことを特徴とする請求項1に記載の膜。
【請求項3】
膜が、膜の質量を基準として5.0質量%〜15.0質量%の範囲のポリメチルペンテンを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の微多孔膜。
【請求項4】
膜の質量を基準として5.0質量%〜20.0質量%の範囲の量のポリプロピレンをさらに含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の微多孔膜。
【請求項5】
膜が、5.0%以下の105℃TD熱収縮、20.0%以下の130℃TD熱収縮、80.0mN/μm以上の標準化突刺強度、30.0μm以下の厚さ、20%〜80%の範囲の空孔率、および280.0秒/100cm/μm以下の標準化透気度を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の微多孔膜。
【請求項6】
膜が、微細孔およびミクロフィブリルを含み、ミクロフィブリルが、ポリメチルペンテン、第1のポリエチレン、および第2のポリエチレンの実質的に単一な相を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の微多孔膜。
【請求項7】
(i)ポリプロピレンが、6.0×10以上のMw、6.0以下のMWD、および90.0J/g以上のΔHmを有するアイソタクチックポリプロピレンであり、(ii)ポリメチルペンテンが、22.0〜28.0の範囲のMFRおよび223.0℃〜230.0℃の範囲のTmを有することを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の微多孔膜。
【請求項8】
(i)第1のポリエチレンが、炭素原子1.0×10個当たり0.14以下の末端不飽和基量を有し、(ii)第2のポリエチレンが、115.0℃〜130.0℃の範囲のTm、5.0×10〜4.0×10の範囲のMw、および1.5〜約5の範囲のMWDを有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の微多孔膜。
【請求項9】
ミクロフィブリルが、ミクロフィブリルの質量を基準として、90.0質量%以上の、ポリメチルペンテン、第1のポリエチレン、および第2のポリエチレンの単一ポリマー相を含み、膜が、膜の質量を基準として、1.0質量%以下の相分離ポリマーを含有することを特徴とする請求項6に記載の微多孔膜。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の微多孔膜を含むことを特徴とするバッテリーセパレーターフィルム。
【請求項11】
微多孔膜の製造方法であって、
(1)希釈剤と、Aの量のポリメチルペンテン、Aの量の第1のポリエチレン、およびAの量の第2のポリエチレンを含むポリマーとの混合物であり、Aが5.0質量%〜25.0質量%の範囲であり、Aが30.0質量%〜50.0質量%の範囲であり、Aが5.0質量%〜20.0質量%の範囲である(質量パーセントはポリマー−希釈剤混合物中のポリマーの質量が基準である)混合物を押し出す工程、
(2)押出物を少なくとも1つの平面方向に延伸すること工程、ならびに
(3)希釈剤の少なくとも一部を延伸押出物から除去する工程を含み、
(a)ポリメチルペンテンが、200.0℃以上のTmおよび80.0dg/分以下のMFRを有し、(b)第1のポリエチレンが、1.0×10未満のMw、15.0以下のMWD、炭素原子1.0×10個当たり0.20以下の末端不飽和基量、および131.0℃以上のTmを有し、(c)第2のポリエチレンが、131.0℃未満のTmを有することを特徴とする微多孔膜の製造方法。
【請求項12】
が、10.0質量%〜25.0質量%の範囲であり、ポリメチルペンテンが、223.0℃〜230.0℃の範囲のTmおよび22.0dg/分〜28.0dg/分の範囲のMFRを有することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
膜が、Aの量の第3のポリエチレンをさらに含み、Aが、15.0質量%〜25.0質量%の範囲であり、第3のポリエチレンが、1.0×10以上のMwおよび20.0以下のMWDを有することを特徴とする請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
ポリマー−希釈剤混合物が、Aの量のポリプロピレンをさらに含み、(i)Aが、5.0質量%〜15.0質量%の範囲であり、(ii)ポリプロピレンが、6.0×10以上のMw、6.0以下のMWD、および90.0J/g以上のΔHmを有するアイソタクチックポリプロピレンであり、(iii)A≧Aであり、(iv)A+A≧25.0質量%であることを特徴とする請求項11〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
工程(2)の前に押出物を冷却する工程をさらに含むことを特徴とする請求項11〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
工程(3)に続いて膜を少なくとも1つの平面方向に延伸すること、および工程(3)に続いて膜を熱処理にかける工程をさらに含むことを特徴とする請求項11〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
押出しが、0.50KWh/kg以下の混合エネルギーで行われることを特徴とする請求項11〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
工程(2)の延伸が、押出物を90.0℃〜125.0℃の範囲の温度にさらしながら、面積が9倍〜49倍の範囲の倍率になるまで二軸に行われることを特徴とする請求項11〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
工程(3)の後に、残留したいずれかの揮発性種を膜から除去する工程をさらに含むことを特徴とする請求項11〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
請求項11〜19のいずれかに記載の膜生成物。
【請求項21】
負極と、正極と、電解質と、負極と正極の間に位置するバッテリーセパレーターとを含む電池であって、バッテリーセパレーターが、(a)200.0℃以上のTmおよび80.0dg/分以下のMFRを有するポリメチルペンテン、(b)1.0×10未満のMw、15.0以下のMWD、炭素原子1.0×10個当たり0.20以下の末端不飽和基量、および131.0℃以上のTmを有する第1のポリエチレン、ならびに(c)131.0℃未満のTmを有する第2のポリエチレンを含み、バッテリーセパレーターが、(i)微多孔性であり、(ii)180.0℃以上のメルトダウン温度を有し、(iii)131.0℃以下のシャットダウン温度を有し、かつ(iv)30.0%以下の170℃TD熱収縮を有することを特徴とする電池。
【請求項22】
バッテリーセパレーターが、炭素原子1.0×10個当たり0.20超の末端不飽和基量を有するポリエチレンを実質的に含まないことを特徴とする請求項21に記載の電池。
【請求項23】
バッテリーセパレーターが、バッテリーセパレーターの質量を基準として5.0質量%〜15.0質量%の範囲の量のポリメチルペンテンを含み、バッテリーセパレーターが、バッテリーセパレーターの質量を基準として5.0質量%〜20.0質量%の範囲の量のポリプロピレンをさらに含むことを特徴とする請求項21または22に記載の電池。
【請求項24】
ポリメチルペンテンおよびポリプロピレンが、バッテリーセパレーターの質量を基準として、合わせて25.0質量%以上の量でバッテリーセパレーター内に存在することを特徴とする請求項22または23に記載の電池。
【請求項25】
請求項24に記載の電池に電気的に接続された動力手段を含むことを特徴とする電気自動車またはハイブリッド電気自動車。

【公表番号】特表2012−530802(P2012−530802A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516127(P2012−516127)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/037764
【国際公開番号】WO2010/147801
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(510157580)東レバッテリーセパレータフィルム株式会社 (31)
【Fターム(参考)】