説明

微多孔膜、かかる膜の製造方法、および電池用セパレータフィルムとしてのかかる膜の使用

本発明は、ポリオレフィンを含み、かつ透気度、シャットダウン温度、およびシャットダウン速度の良好なバランスを有する微多孔膜に関する。本発明は、かかる膜の作製方法、およびリチウムイオン二次電池等における電池用セパレータフィルムとしてのかかる膜の使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2009年5月11日出願の米国特許仮出願第61/177,060号および2009年6月25日出願の欧州特許出願公開第091636985号;2009年3月30日出願の米国特許仮出願第61/164,824号および2009年5月25日出願の欧州特許出願公開第091609644号;2009年3月30日出願の米国特許仮出願第61/164,817号および2009年5月25日出願の欧州特許出願公開第091609651号;2009年3月30日出願の米国特許仮出願第61/164,833号および2009年5月25日出願の欧州特許出願公開第091609669号;2009年3月30日出願の米国特許仮出願第61/164,827号および2009年5月25日出願の欧州特許出願公開第091609677号;2009年6月24日出願の米国特許仮出願第61/220,094号および2009年8月19日出願の欧州特許出願公開第091681940号の優先権を主張し、それぞれの内容を全体として参照により組み入れるものとする。
【0002】
本発明は、ポリオレフィンを含み、かつ透気度、シャットダウン温度、およびシャットダウン速度の良好なバランスを有する微多孔膜に関する。本発明は、かかる膜の製造方法、およびリチウムイオン二次電池等における電池用セパレータフィルムとしてのかかる膜の使用にも関する。
【背景技術】
【0003】
微多孔膜は、例えば、リチウム一次電池および二次電池、リチウムポリマー電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル亜鉛電池、銀亜鉛二次電池等における電池用セパレータとして使用することができる。微多孔膜を電池用セパレータ、特にリチウムイオン電池用セパレータに用いる場合、膜の性質が電池の特性、生産性、および性能に大きく影響する。したがって、微多孔膜は、適切な透過度、機械的特性、耐熱性、寸法安定性、シャットダウン特性、メルトダウン特性等を有するべきである。かかる電池は、電池の安全性の向上のため、比較的低いシャットダウン温度、速いシャットダウン速度、および比較的高いメルトダウン温度を有することが望ましいが、動作条件下において高温にさらされる電池に関しては特にそうである。
【0004】
比較的低いシャットダウン温度を有する微多孔膜は、低分子量および/または低い融解温度を有するポリエチレンを用いて製造されてきた。膜のシャットダウン特性は向上するが、このようなポリエチレンを使用すると、透気度の低下および熱収縮の増大が起こる可能性がある。
【0005】
例えば、特開2002−128943号には、130℃のシャットダウン温度および8.0%以上の熱収縮値を有する微多孔膜が開示されている。他の文献には、比較的速いシャットダウン速度を有する微多孔膜が開示されている。例えば、国際公開第96−027633号および特開平11−269289号には、膜のシャットダウン速度を評価するための、温度とインピーダンス(または透過度)との関係の使用方法が開示されている。
【0006】
改善はされてきているが、比較的低いシャットダウン温度および比較的速いシャットダウン速度を有する微多孔膜が望まれている。
【発明の概要】
【0007】
ある実施形態においては、本発明は、ポリオレフィンコポリマーを含む微多孔膜であって、膜が130.5℃以下のシャットダウン温度および3.50×10J/mol以上のシャットダウン活性化エネルギーE2(以下で定義)を有する微多孔膜に関する。
【0008】
別の実施形態においては、本発明は、130.0℃以下の融解ピーク(「Tm」)、9.0×10以下の重量平均分子量(「Mw」)(例えば5.0×10以下のMw)、10.0以下の分子量分布(MWD:Mw/Mnと定義)、および約1.0〜5.0モル%の範囲のコモノマー含有量を有するポリオレフィンコポリマー(エチレン/α−オレフィンコポリマー等)を含む微多孔膜に関する。
【0009】
別の実施形態においては、本発明は、微多孔膜の製造方法であって、
(1)希釈剤と、130.0℃以下のTm、9.0×10以下のMw、10.0以下のMWD、および1.0モル%〜5.0モル%の範囲のコモノマー含有量を有するポリオレフィンコポリマーを含むポリマーとの混合物を押し出す工程、
(2)押出物を少なくとも1つの平面方向に延伸する工程、および
(3)希釈剤の少なくとも一部を延伸押出物から除去して微多孔膜を形成する工程
を含む微多孔膜の製造方法に関する。
【0010】
別の実施形態においては、本発明は、前述のプロセスで製造される微多孔膜に関する。
【0011】
さらに別の実施形態においては、本発明は、負極と、正極と、電解質と、負極と正極の間に位置し、前述のいずれかの実施形態の微多孔膜を含む少なくとも1つの電池用セパレータとを含む電池に関する。電池は、例えば、リチウムイオン一次電池または二次電池であってもよい。電池は、例えば、電動ノコギリもしくは電動ドリル等の電動工具、電気自動車、またはハイブリッド電気自動車等用の電源として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ポリエチレンを含む微多孔膜であって、膜が130.67℃のシャットダウン温度および148.89℃のメルトダウン温度を有する微多孔膜について、温度を関数とした透気度をプロットしたものである。
【0013】
【図2】(図2A)ポリオレフィンコポリマーを含む2つの微多孔膜について、温度の逆数(ケルビンの逆数)を関数とした透気度(ガーレー値)の変化の自然対数をプロットしたものである(濃い長方形の点および濃いひし形の点)。
【0014】
(図2B)それぞれの膜についての初めの7個のデータ点を当てはめたものが含まれた、図2Aの拡大図である。これらのデータ点を、式:
【数1】

に当てはめてE2の値を得る。
【0015】
【図3】5重量%〜20重量%の範囲のポリオレフィンコポリマー含有量を有する微多孔膜について、E2の値がほぼ一定であることを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、微多孔膜が望ましい範囲のTm、Mw、およびコモノマー含有量を有するポリオレフィンコポリマーを含むと膜のシャットダウン特性(シャットダウン温度およびシャットダウン速度)が向上する、という発見に基づいている。膜のシャットダウン速度は、微多孔膜中のポリオレフィンの少なくとも一部が膜の細孔内に移動することにより膜透過度が低下する反応としてモデル化されている。シャットダウン反応は、速度定数kが膜透過度の変化であり、E2がシャットダウン活性化エネルギーであり、Rが気体定数であり、Tが絶対温度であり、Aが頻度因子である、アレニウス式:k=AeE2/RT、によって熱力学的に説明することができる。図1および2を参照されたい。
【0017】
膜のシャットダウン特性は、膜が130.0℃以下のTm、9×10以下のMw、10以下のMWD、および約1.0〜5.0モル%の範囲のコモノマー含有量を有するポリオレフィンコポリマーを含むと向上する、ということがわかっている。図3から、膜の重量を基準として約3重量%の最小値よりも大きいこのようなポリオレフィンコポリマーの量については、E2の値は選択したポリオレフィンコポリマー種に依存しており使用した量とは比較的無関係である(アレニウス型の関係を満たす反応に関してこのように予測される)、ということがわかる。さらに図2および3から、選択したポリオレフィンコポリマーの量とE2/RT勾配の値との関係は、選択したポリオレフィンコポリマーに特異的であり膜中の存在量とは比較的無関係である、ということがわかる。
【0018】
いかなる理論またはモデルにも拘束されることを望まないが、膜のシャットダウン速度の上昇は、少なくとも一部は、コポリマーが溶融状態になると発生するコポリマーの膨張が原因であると考えられる。130.0℃以下のTmを有するコポリマーについては、コモノマー含有量が5.0モル%以下の場合にコポリマー濃度の最大の変化(最大量の膨張)が見られる。
[1]微多孔膜の組成および構造
【0019】
ある実施形態においては、本発明は、低いシャットダウン温度、向上したシャットダウン速度、および良好な透気度を有し、これらの特性のバランスが向上した微多孔膜、特に単層膜に関する。別の実施形態においては、本発明は、かかる膜の製造方法に関する。この製造方法において、最初の方法工程においては、ポリマー樹脂、例えば、ポリエチレン樹脂等のポリオレフィン樹脂と希釈剤とを混合した後、ポリマーと希釈剤とを押し出して押出物を作製すること、を行う。この最初の工程における処理条件は、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、PCT公開WO2007/132942および同WO2008/016174に記載のものと同じであってもよい。
【0020】
ある実施形態においては、微多孔膜は、押出物の製造に用いるポリマーを含み、ポリマー樹脂は、例えば(a)9.0×10以下のMw、10以下のMWD、130.0℃以下のTm、および1.0重量%〜3.0モル%の範囲のコモノマー含有量を有するポリオレフィンコポリマーを含む第1のポリオレフィン、(b)130℃超のTmおよび1×10以下のMwを有する第2のポリオレフィン、ならびに(c)1×10超のMwを有する第3のポリオレフィンを含んでもよい。ある実施形態においては、微多孔膜は単層膜であり、すなわち、追加の層が積層されていたり、追加の層と共押出しされたりしていない。押出物から製造される膜は、本質的に、または正に、ポリエチレンを含む単層からなっていてもよい。
【0021】
ある実施形態においては、微多孔膜は、例えば約1.0重量%〜約20.0重量%の範囲といった、1.0重量%以上の量のポリオレフィンコポリマー;99.0重量%以下の量の第2のポリオレフィン;および99.0重量%以下の量の第3のポリオレフィンを含む(重量パーセントは微多孔膜の重量が基準)。例えば、一実施形態においては、微多孔膜は、(a)例えば約4.0重量%〜約17.0重量%、例えば約8.0重量%〜約13.0重量%といった、約1.0重量%〜約20.0重量%の第1のポリオレフィン(すなわちポリオレフィンコポリマー);(b)例えば約50.0重量%〜約95.0重量%、例えば約60.0重量%〜約85.0重量%といった、約25.0重量%〜約99.0重量%の第2のポリオレフィン;および(c)例えば約1.0重量%〜約46.0重量%、例えば約7.0重量%〜約32.0重量%といった、約0重量%〜約74.0重量%の第3のポリオレフィンを含む。
【0022】
ある実施形態においては、本発明は、単層微多孔膜の製造方法に関する。ある実施形態においては、微多孔膜は、第2の膜をさらに含む。第2の膜は、例えば微多孔膜であってもよく、また例えば第1の微多孔膜中の層の形態であってもよい。
[2]微多孔膜の製造に用いる材料
【0023】
ある実施形態においては、微多孔膜は、ポリマーと希釈剤との混合物を押し出すことにより作製される。希釈剤は、ポリマー用の溶媒であってもよい。ポリマーが希釈剤に可溶であるか、または希釈剤と混和する場合、このポリマー−希釈剤混合物はポリマー溶液と呼ぶことができる。ポリマーがポリオレフィンであり希釈剤が流動パラフィンである場合、この混合物はポリオレフィン溶液と呼ぶことができる。ポリマーがポリマーの混合物、例えばポリオレフィンの組合せである場合、ポリマー組成物、例えばポリオレフィン組成物と呼ぶことができる。ポリマーは、例えば個々のポリマー成分の混合物または反応器ブレンドであってもよい。ある実施形態においては、膜は、希釈剤およびポリオレフィンの混合物から製造され、ここでの希釈剤は、流動パラフィン等のポリオレフィン混合物用の溶媒である。以下、この実施形態において有用なポリオレフィンの例についてさらに詳細に説明する。
【0024】
ある実施形態においては、微多孔膜は、ポリエチレンの混合物等の、ポリオレフィンの組合せ(例えば混合物、反応器ブレンド等)を含む。ポリエチレンは、エチレン繰り返し単位を含有するポリオレフィン(ホモポリマーまたはコポリマー)を含んでもよい。所望によりポリエチレンは、ポリエチレンホモポリマー、または少なくとも85%の繰返し単位がエチレン単位であるポリエチレンコポリマーを含む。
【0025】
本発明をこれらの実施形態に関して説明するが、本発明はそれらに限定されるものではなく、これらの実施形態についての説明は、本発明のより広い範囲内の他の実施形態を除外することを意図するものではない。
(1)第1のポリオレフィン
【0026】
ある実施形態においては、第1のポリオレフィンは、ポリエチレンコポリマーを含み、ポリエチレンコポリマーは、例えば約1×10〜約5×10、例えば約3.0×10〜約3.0×10、例えば1.0×10〜1.0×10の範囲といった、9.0×10以下のMwを有する。所望により第1のポリエチレンコポリマーは、例えば約2.0〜約10.0、例えば約2.5〜約4.5といった、10.0以下のMWDを有する。ポリエチレンは、エチレンとα−オレフィン等のコモノマーとのコポリマーである。α−オレフィンは、例えば、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、スチレン、他のコモノマー、またはそれらの組合せであってもよい。ある実施形態においては、α−オレフィンは、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、およびそれらの組合せである。別の実施形態においては、コモノマーは、ヘキセン−1および/またはオクテン−1である。コモノマー中のコモノマーの量は、例えば1.0モル%〜5.0モル%、例えば1.25モル%〜4.50モル%の範囲といった、5.0モル%以下である。
【0027】
ポリマーは、チーグラー・ナッタ重合触媒またはシングルサイト重合触媒を用いるプロセス等の、いずれかの都合のよいプロセスで製造することができる。所望により第1のポリエチレンは、メタロセン触媒で製造するポリエチレン等の、低密度ポリエチレン(「LDPE」)、中密度ポリエチレン、分岐状低密度ポリエチレン、または直鎖状低密度ポリエチレンの1つまたは複数である。例えば、ポリマーは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,084,534号に開示されている方法(例えば、当該特許の実施例27および41に開示されている方法)に従って製造することができる。
【0028】
Tmは、JIS K7122に従って次のようにして測定する。第1のポリエチレンの試料を、210℃で溶融プレスされる厚さ0.5mmの成形物として調製し、次いで約25℃の温度にさらしながら約24時間保存する。次いで試料を、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製Pyris Diamond DSC)の試料ホルダーに入れ、窒素雰囲気中にて25℃の温度にさらす。次いで試料を、230℃の温度に達するまで10℃/分の速度で上昇する温度にさらす(第1の加熱サイクル)。試料を230℃の温度に1分間さらし、次いで30℃の温度に達するまで10℃/分の速度で低下する温度にさらす。試料を30℃の温度に1分間さらし、次いで230℃の温度に達するまで10℃/分の速度で上昇する温度にさらす(第2の加熱サイクル)。DSCによって、第2の加熱サイクル中に試料へと流れる熱の量が記録される。Tmは、30℃〜200℃の温度範囲内の、DSCによって記録される試料への熱流量が最大の時の温度である。ポリエチレンは、主ピークに隣接する副融解ピーク、および/または溶融終点転移(end-of-melt transition)を示すことがあるが、本明細書においては、そのような副融解ピークはまとめて一つのの融点と見なし、これらのピークの中で最も高いものをTmと見なす。
【0029】
ある実施形態においては、第1のポリエチレンは、例えば120.0℃〜128.0℃、例えば120.0℃〜126.0℃、または121.0℃〜124.0℃の範囲といった、130.0℃以下のTmを有する。別の実施形態においては、第1のポリエチレンは、122.0℃〜126.0℃の範囲のTmを有する。
(2)第2のポリオレフィン
【0030】
ある実施形態においては、第2のポリオレフィンは、例えば131℃以上のTmといった、130.0℃超のTm、および例えば1.0×10〜9.0×10、例えば約4×10〜約8×10の範囲といった、1.0×10以下のMwを有するエチレン系ホモポリマーまたはコポリマー(第2のポリエチレン)を含む。所望により第2のポリエチレンは、例えば約1〜約100、例えば約3.0〜20.0の範囲といった、100以下の分子量分布(「MWD」)を有する。例えば第2のポリエチレンは、高密度ポリエチレン(「HPDE」)、中密度ポリエチレン、分岐状低密度ポリエチレン、または直鎖状低密度ポリエチレンの1つまたは複数であってもよい。所望により、第2のポリエチレンはHDPEである。所望により、第2のポリエチレンは末端不飽和を有する。例えば第2のポリエチレンは、例えば炭素原子10,000個当たり5以上、例えば炭素原子10,000個当たり10以上といった、炭素原子10,000個当たり0.20以上の末端不飽和量を有してもよい。末端不飽和量は、例えばPCT公開WO1997/23554に記載の手順に従って測定することができる。別の実施形態においては、第2のポリエチレンは、炭素原子10,000個当たり0.20未満の末端不飽和量を有する。所望により第2のポリエチレンの量は、膜の製造に用いるポリマーの総量を基準として、25.0重量%〜99.0重量%、または50.0重量%〜95.0重量%の範囲である。
【0031】
ある実施形態においては、第2のポリエチレンは、(i)エチレンホモポリマーまたは(ii)エチレンと、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、スチレン、他のコモノマー、およびそれらの組合せ等の10.0モル%以下のコモノマーとのコポリマー、の少なくとも1つである。
【0032】
第2のポリエチレンは、チーグラー・ナッタ重合触媒またはシングルサイト重合触媒を用いるプロセス等のいずれかの好適な重合プロセスで製造することができる。
(3)第3のポリオレフィン
【0033】
ある実施形態においては、第3のポリオレフィンは、例えば1.1×10〜約5×10の範囲、例えば約1.2×10〜約3×10、例えば約2×10といった、1.0×10超のMwを有するエチレン系ホモポリマーまたはコポリマー(第3のポリエチレン)を含む。所望により第3のポリエチレンは、例えば約2〜約100、例えば約4〜約20または4.5〜10.0といった、100以下のMWDを有する。例えば、第3のポリエチレンは超高分子量ポリエチレン(「UHMWPE」)であってもよい。所望により第3のポリエチレンの量は、膜の製造に用いるポリマーの全重量を基準として、0重量%〜74.0重量%、1.0重量%〜46.0重量%、または7.0重量%〜32.0重量%の範囲である。ある実施形態においては、第3のポリエチレンは、(i)エチレンホモポリマーまたは(ii)エチレンと、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、スチレン、他のコモノマー、およびそれらの組合せ等の10.0モル%以下のコモノマーとのコポリマー、の少なくとも1つである。
(4)ポリエチレン樹脂の分析方法
【0034】
第1、第2、および第3のポリエチレンのMwは、示差屈折計(DRI)を備えた高温サイズ排除クロマトグラフ、すなわち「SEC」(GPC PL 220、ポリマーラボラトリーズ社製)を用いて決定する。3本のPLgel Mixed-Bカラム(ポリマーラボラトリーズ社製)を用いる。公称流量は0.5cm/分であり、公称注入量は300μLであった。トランスファーライン、カラム、およびDRI検出器が、145℃に維持されたオーブン内に含まれている。測定は、"Macromolecules, Vol. 34, No. 19, pp. 6812-6820 (2001)"に開示されている手順に従って行う。
【0035】
使用するGPC溶媒は、約1000ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有する、濾過済みの、アルドリッチ社製の、試薬グレードの1,2,4−トリクロロベンゼン(TCB)である。TCBを、SECに導入する前にオンライン脱気装置で脱気する。ポリマー溶液を、乾燥ポリマーをガラス容器に入れ、所望の量の上記TCB溶媒を加え、次いでこの混合物を160℃で継続的に撹拌しながら約2時間加熱することにより調製する。ポリマー溶液中のポリマーの濃度は0.25〜0.75mg/mlである。試料溶液は、GPC内に注入する前に、モデルSP260 Sample Prep Station(ポリマーラボラトリーズ社製)を用いて2μmフィルターでオフラインろ過する。
【0036】
Mp(「Mp」はMwにおけるピークと定義する)が約580〜約10,000,000の範囲の17種のそれぞれのポリスチレン標準を用いて作成した検量線でカラムセットの分離効率を較正し、これを検量線の作成に用いる。ポリスチレン標準はポリマーラボラトリーズ社(マサチューセッツ州アマースト)より入手する。各PS標準についてDRI信号のピークにおける保持容量を記録し、このデータセットを二次多項式に当てはめることによって、検量線(logMp対保持容量)を作成する。ウェーブメトリクス社(Wave Metrics, Inc.)製IGOR Proを用いて試料を分析する。
【0037】
第1のポリエチレン中のコモノマーの含有量は、コポリマー中のメチル基含有量の測定によって決定する。使用する機器は、120℃で作動する可変温度プロトン検出プローブを備えた、400MHzのVarianパルスフーリエ変換NMR分光計である。ポリマー試料を1,1,2,2-テトラクロロエタン-dに溶解させ、5mmガラスNMR管内に移す。取得パラメータは、SW=10KHz、パルス幅=30°、取得時間=2秒、取得遅延=5秒、およびスキャン回数=120、である。0.85から1.05ppmまでのメチル領域(MRA)を、0から2.1ppmまで積分した脂肪族領域(IA)とは別に積分する。1000C’s当たりのメチル基の数を、式:(MRA×1000/3)/(IA/2×MIS/IS)、より求める。MISは、0.85ppmと1.05ppmの間のメチル積分スケールであり、ISは、0ppmと2.1ppmの間の脂肪族積分スケールである。
さらなるポリマー
【0038】
ポリエチレン樹脂(1種または複数)に加え、ポリオレフィン混合物は、所望により第4のポリオレフィン等のさらなるポリマーを含有してもよい。第4のポリオレフィンは、ホモポリマー、または例えばポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリペンテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリヘキセン−1、ポリオクテン−1、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン等のコポリマー、の1つまたは複数であってもよい。所望により、第4のポリオレフィンは約1×10〜約4×10の範囲のMwを有する。第4のポリオレフィンを使用する場合、一般的にその量は、微多孔膜の製造に用いるポリマーの重量を基準として20.0重量%未満の範囲であり、例えば0.5重量%〜10.0重量%の範囲である。ポリオレフィン組成物はまた、ポリエチレンワックス、例えば約1×10〜約1×10のMwを有するものを含有してもよい。ポリエチレンワックスを使用する場合、一般的にその量は、微多孔膜の製造に用いる第1、第2、および第3のポリマーとポリエチレンワックスとを合わせた重量の約20.0%重量%未満である。ある実施形態においては、ポリエチレンワックスの量は、例えば0.5重量%〜10重量%の範囲といった、10.0重量%未満である。第4のポリマーおよび/またはポリエチレンワックスを使用する場合、微多孔性ポリオレフィン膜の特性の有意な劣化を引き起こす量で使用されない限り、その量は重要ではない。ある実施形態においては、第4のポリマーは、1.0×10以上のMwおよび90J/g以上の融解熱(第二融解)を有するポリプロピレンである。好適なポリプロピレンは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、PCT特許公開第WO2007/132942号に記載されている。
[3]微多孔膜の製造方法
【0039】
ある実施形態においては、微多孔膜は、押出物から製造される単層(すなわち、一層)膜である。押出物は、ポリオレフィンおよび希釈剤から次のようにして製造することができる。
【0040】
ある実施形態においては、微多孔膜は、(1)希釈剤(例えば膜形成溶媒)とポリオレフィンとを混合する工程、(2)混合した希釈剤とポリオレフィンとをダイを通して押し出して、押出物を形成する工程、(3)所望により押出物を冷却してゲル状シート等の冷却押出物を形成する工程、(4)冷却押出物を少なくとも1つの平面方向に延伸する工程、例えば、横方向(TD)、機械方向(MD)、または両方に延伸する工程、および(5)希釈剤の少なくとも一部を押出物または冷却押出物から除去して膜を形成する工程を含むプロセスにより製造される。
【0041】
所望によりこのプロセスは、(6)工程(5)の後のいずれかの時点において、残留したいずれかの揮発性種の少なくとも一部を膜から除去する工程、をさらに含む。
【0042】
所望によりこのプロセスは、(7)工程(5)の後のいずれかの時点において膜を熱処理(熱セットまたはアニーリング等)にかける工程、をさらに含む。
【0043】
所望によりこのプロセスは、工程(5)の後のいずれかの時点、例えば工程(6)と(7)の間において膜を少なくとも1つの平面方向に延伸する工程、をさらに含む。例えばこのプロセスは、(8)工程(6)の乾燥膜を、第1の乾燥長さから、約1.1〜約1.5の範囲の倍率で第1の乾燥長さよりも長い第2の乾燥長さへMDに延伸する工程、および膜を、第1の乾燥幅から、約1.1〜約1.3の範囲の倍率で第1の乾燥幅よりも広い第2の幅へTDに延伸する工程、ならびに、その後(9)第2の乾燥幅から、第1の乾燥幅〜第1の乾燥幅の約1.1倍の範囲である第3の乾燥幅へと減少させる工程、をさらに含んでもよい。
【0044】
PCT公開WO2008/016174に記載されている、任意の熱溶媒処理工程、任意の熱セット工程、任意の電離放射線による架橋工程、および任意の親水性処理工程等を所望により行ってもよい。これらの任意の工程の数も順序も重要ではない。
(1)ポリオレフィンと希釈剤との混合
【0045】
上記のポリオレフィン混合物は、例えば乾燥混合または溶融ブレンドにより混合することができ、次いでポリオレフィン混合物を少なくとも1種の希釈剤と混合してポリオレフィン溶液等のポリオレフィン−希釈剤混合物を製造することができる。あるいは、ポリオレフィン混合物と希釈剤は単一の工程で混合することができる。樹脂および溶媒を、連続して、平行して、またはそれらの組合せで加えてもよい。あるいは、ポリオレフィン混合物は、まず初めに樹脂の少なくとも一部を混合してポリオレフィン組成物を作製し、次いでポリオレフィン組成物と少なくとも1種の膜形成溶媒(ならびに、所望により樹脂のさらなる一部および/または新たな樹脂)とを混合してポリオレフィン溶液を製造することによって製造することができる。所望によりポリオレフィン溶液は、酸化防止剤、ケイ酸塩微粉末(細孔形成材料)等の1種または複数等の添加剤を含有する。かかる添加剤の量は、膜の特性に悪影響を及ぼすほど大量に存在しない限り重要ではない。一般的にかかる添加剤の量は、合計で、ポリオレフィン溶液の重量を基準として1重量%を超えることはない。
【0046】
液体膜形成溶媒を含む希釈剤を使用することにより、比較的高い倍率で延伸を行うことをさほど困難ではないものにすることができる。液状溶媒は、例えば、ノナン、デカン、デカリン、p−キシレン、ウンデカン、ドデセン等の脂肪族、脂環式、または芳香族炭化水素;流動パラフィン;上記の炭化水素と同程度の沸点を有する鉱油蒸留物;およびフタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル等の室温で液体のフタル酸エステル等であってもよい。流動パラフィン等の不揮発性溶媒を使用することにより、溶媒含有量が安定しているゲル状成形物(またはゲル状シート)を得ることをより容易にすることができる。ある実施形態においては、溶融ブレンド中にポリオレフィン溶液またはポリオレフィン組成物と混和するが室温では固体である1種または複数の固体状溶媒を、液状溶媒に加えてもよい。かかる固体状溶媒は、例えばステアリルアルコール、セリルアルコール、パラフィンワックス等であってもよい。固体状溶媒は液状溶媒なしで使用してもよいが、その場合は工程(4)中にゲル状シートを均一に延伸することがより困難になり得る。
【0047】
ある実施形態においては、液状溶媒の粘度は、25℃の温度で測定した場合、約30cSt〜約500cSt、または約30cSt〜約200cStの範囲である。粘度の選択は特に重要なことではないが、25℃における粘度が約30cSt未満である場合は、ポリオレフィン溶液が泡立つことがあり、その結果配合が困難になる。一方で、粘度が約500cStを超えた場合は、工程(5)中に溶媒を除去することがより困難になり得る。ポリオレフィン溶液は、1種または複数の酸化防止剤等の添加剤を含有してもよい。ある実施形態においては、かかる添加剤の量は、ポリオレフィン溶液の重量を基準として1重量%を超えることはない。
【0048】
押出物の製造に用いる膜形成溶媒の量は重要ではなく、膜形成溶媒とポリオレフィン組成物とを合わせた重量を基準として、例えば約25重量%〜約99重量%の範囲であってもよく、残りがポリマーであって、例えば第1、第2、および第3のポリエチレンの混合物等が例として挙げられる。
(2)押出し
【0049】
ある実施形態においては、混合したポリオレフィン組成物と希釈剤(この場合は膜形成溶媒)とを押出機からダイへと導く。
【0050】
押出物または冷却押出物は、延伸工程後に、望ましい厚さ(一般的に3μm以上)を有する最終膜を製造するのに適切な厚さを有するべきである。例えば押出物は、約0.1mm〜約10mm、または約0.5mm〜5mmの範囲の厚さを有してもよい。押出しは一般には、溶融状態の、ポリオレフィン組成物と膜形成溶媒との混合物を用いて行う。シート形成ダイを使用する場合、一般的にはダイリップを例えば140℃〜250℃の範囲の高温に加熱する。押出しを実行するための好適な処理条件は、PCT公開WO2007/132942および同WO2008/016174に開示されている。機械方向(「MD」)は、押出物がダイから製造される方向と定義される。横方向(「TD」)は、MDおよび押出物の厚さ方向の両方に対して垂直な方向と定義される。押出物はダイから連続的に製造することもできるし、または、例えば(バッチ処理の場合のように)ダイから少量ずつ製造することもできる。TDおよびMDの定義は、バッチ処理および連続処理のどちらにおいても同じである。
(3)任意の押出物の冷却
【0051】
所望により、押出物を5℃〜40℃の範囲の温度にさらして冷却押出物を形成することができる。冷却速度は特に重要ではない。例えば押出物は、押出物の温度(冷却した温度)が押出物のゲル化温度とほぼ同じ(またはそれ以下)になるまで、最低でも約30℃/分の冷却速度で冷却してもよい。冷却の処理条件は、例えばPCT公開第WO2008/016174号および同第WO2007/132942号に開示されているものと同じであってもよい。
(4)押出物の延伸
【0052】
押出物または冷却押出物を、少なくとも一つの方向に延伸する。押出物は、例えばPCT公開第WO2008/016174号に記載されている、例えばテンター法、ロール法、インフレーション法、またはそれらの組合せにより延伸することができる。延伸は、一軸に、または二軸に行ってもよいが、二軸延伸が好ましい。二軸延伸の場合、同時二軸延伸、順次延伸、または多段階延伸(例えば同時二軸延伸と順次延伸の組合せ)のいずれを用いてもよいが、同時二軸延伸が好ましい。二軸延伸を用いる場合、倍率の大きさは各延伸方向で同じである必要はない。
【0053】
延伸倍率は、一軸延伸の場合、例えば2倍以上、好ましくは3〜30倍であってもよい。二軸延伸の場合、延伸倍率は、例えばいずれの方向にも3倍以上(例えば3倍〜30倍の範囲)であってもよく、面積倍率では、例えば16倍以上、例えば25倍以上であってもよい。この延伸工程の例としては、面積倍率が約9倍〜約49倍の延伸が挙げられる。各方向への延伸の量は、やはり同じである必要はない。倍率はフィルムの大きさに乗法的に影響する。例えば、TDに4倍の倍率に延伸される、最初の幅(TD)が2.0cmであるフィルムは、最終幅が8.0cmとなる。機械方向(「MD」)は、フィルムが形成される時の進行方向、すなわち製造中におけるフィルムの最長軸、にほぼ沿った方向である、フィルム(この場合は押出物)の平面の方向である。横方向(「TD」)もまたフィルムの平面にあり、機械方向とフィルムの厚さにほぼ平行である第3の軸との両方にほぼ垂直である。
【0054】
必須ではないが、延伸は押出物をおよそTcdからTmの範囲の温度(延伸温度)にさらしながら行ってもよく、この場合TcdおよびTmは、結晶分散温度、および押出物の製造に用いるポリエチレンの中で最も融解ピークの低いポリエチレン(一般的には第1のポリエチレン)の融解ピークである。結晶分散温度は、ASTM D 4065に従って動的粘弾性の温度特性を測定することにより決定する。Tcdが約90℃〜100℃の範囲である実施形態においては、延伸温度は、例えば約100℃〜125.0℃、例えば105℃〜125.0℃といった、90.0℃〜125.0℃であってもよい。所望により、延伸温度は(Tm−10.0℃)以下である。
【0055】
ある実施形態においては、延伸押出物は、希釈剤除去の前に所望により熱処理にかけられる。熱処理では、延伸押出物は、押出物が延伸中にさらされる温度より高い(温かい)温度にさらされる。延伸押出物がそのより高い温度にさらされている間、延伸押出物の平面寸法(MDの長さおよびTDの幅)は一定に保つことができる。押出物はポリオレフィンおよび希釈剤を含有しているため、その長さおよび幅は、「湿潤」長さおよび「湿潤」幅と呼ばれる。ある実施形態においては、延伸押出物は、押出物を熱処理するのに十分な時間、例えば1秒〜100秒の範囲の時間、120.0℃〜125.0℃の範囲の温度にさらされるが、その間は、例えば、テンタークリップを用いて延伸押出物をその外周に沿って保持することにより、湿潤長さおよび湿潤幅は一定に保たれる。言い換えれば、熱処理の間、MDまたはTDへの延伸押出物の拡大または縮小(すなわち寸法変化)はない。
【0056】
この工程、および試料(例えば、押出物、乾燥押出物、膜等)を高温にさらすドライ延伸および熱セット等のその他の工程において、こうした暴露は、空気を熱し、次いでこの加熱空気を試料の近くに運ぶことにより行うことができる。加熱空気の温度は、一般的には所望の温度と等しい設定値に制御され、次いでプレナム等を通して試料に向けて導かれる。試料を加熱面にさらす方法、オーブンでの赤外線加熱等の従来の方法を含む、試料を高温にさらすその他の方法を、加熱空気とともに、または加熱空気の代わりに用いてもよい。
(5)希釈剤の除去
【0057】
ある実施形態においては、希釈剤の少なくとも一部を延伸押出物から除去(または置換)し、乾燥膜を形成する。例えばPCT公開第WO2008/016174号に記載のように、置換(または「洗浄」)溶媒を用いて希釈剤を除去(洗浄、または置換)してもよい。
(6)膜の乾燥
【0058】
ある実施形態においては、残留したいずれかの揮発性種(例えば洗浄溶媒)の少なくとも一部を、希釈剤除去後に乾燥膜から除去する。加熱乾燥、風乾(空気を動かすこと)等の従来の方法を含む、洗浄溶媒を除去することが可能ないずれの方法を用いてもよい。洗浄溶媒等の揮発性種を除去するための処理条件は、例えばPCT公開第WO2008/016174号に開示されているものと同じであってもよい。
(7)熱処理
【0059】
ある実施形態においては、膜を熱セット等の熱処理にかける。熱セットの間、例えば膜は、例えば90.0℃〜130.0℃、約100℃〜128℃、または105℃〜125℃といった、およそTcd〜およそTmの範囲の温度にさらされる。この場合Tmは、膜の製造に用いるポリマーの中で融解ピークが最も低いポリマー、例えば第1のポリエチレン、の融解ピークである。
(8)膜の延伸(ドライ延伸)
【0060】
所望により工程(6)の乾燥膜を、工程(6)と(7)の間に少なくとも1つの方向に延伸(希釈剤の少なくとも一部が除去または置換されているため「ドライ延伸」と呼ばれる)してもよい。ドライ延伸した乾燥膜は「延伸」膜と呼ばれる。ドライ延伸の前には、乾燥膜はMDの最初の大きさ(第1の乾燥長さ)およびTDの最初の大きさ(第1の乾燥幅)を有する。本明細書で用いる用語「第1の乾燥幅」は、ドライ延伸開始前における乾燥膜のTDへの大きさを指す。用語「第1の乾燥長さ」は、ドライ延伸開始前における乾燥膜のMDへの大きさを指す。例えば、国際公開第2008/016174号に記載の種類のテンター延伸装置を用いることができる。
【0061】
乾燥膜は、第1の乾燥長さから、約1.1〜約1.5の範囲の倍率(「MDドライ延伸倍率」)で第1の乾燥長さより長い第2の乾燥長さへ、MDに延伸してもよい。TDドライ延伸を用いる場合、乾燥膜は、第1の乾燥幅から、ある倍率(「TDドライ延伸倍率」)で第1の乾燥幅より広い第2の乾燥幅へ、TDに延伸してもよい。所望により、TDドライ延伸倍率はMDドライ延伸倍率以下である。TDドライ延伸倍率は、約1.1〜約1.3の範囲であってもよい。ドライ延伸(膜形成溶媒を含有した押出物をすでに延伸しているため再延伸とも呼ばれる)は、MDおよびTDに逐次的または同時的であってもよい。一般的にはTD熱収縮はMD熱収縮よりも電池の特性に与える影響が大きいため、一般的にはTD倍率の大きさはMD倍率の大きさを超えることはない。TDドライ延伸を用いる場合、ドライ延伸は、MDおよびTDに同時的、または逐次的であってもよい。ドライ延伸が逐次的の場合、一般的にはMD延伸を最初に行い、続いてTD延伸を行う。
【0062】
ドライ延伸は、乾燥膜を例えばおよそTcd−30℃〜Tmの範囲といった、Tm以下の温度にさらしながら行ってもよい。この場合Tmは、膜の製造に用いるポリマーの中で融解ピークが最も低いポリマー、例えば第1のポリエチレンの融解ピークである。ある実施形態においては、延伸温度は、例えば約80℃〜約129.0℃といった、約70.0〜約130.0℃の範囲の温度にさらした膜で行う。ある実施形態においては、MD延伸はTD延伸の前に行い、
(i)MD延伸は、膜を、例えば70.0℃〜129.0℃、または約80℃〜約125℃といった、Tcd−30℃〜およそTm−10℃の範囲の第1の温度にさらしながら行い、
(ii)TD延伸は、膜を、例えば70.0℃〜129.0℃、または約105℃〜約125℃、または約110℃〜約120℃といった、第1の温度より高いがTmよりは低い第2の温度にさらしながら行う。
【0063】
ある実施形態においては、MDドライ延伸倍率の合計は、例えば1.2〜1.4といった、約1.1〜約1.5の範囲であり、TDドライ延伸倍率の合計は、例えば1.15〜1.25といった、約1.1〜約1.3の範囲であり、MDドライ延伸はTDドライ延伸の前に行い、MDドライ延伸は、膜を80.0℃〜約120.0℃の範囲の温度にさらしながら行い、TDドライ延伸は、膜を115.0℃〜約130.0℃の範囲であるがTmよりは低い温度にさらしながら行う。
【0064】
延伸率は、延伸方向(MDまたはTD)に3%/秒以上であることが好ましく、この率は、MDおよびTD延伸について独立して選択してもよい。延伸率は、好ましくは5%/秒以上、より好ましくは10%/秒以上、例えば5%/秒〜25%/秒の範囲である。特に重要ではないが、延伸率の上限は、膜の破裂を防ぐために50%/秒であることが好ましい。
(9)制御された膜幅の縮小(膜の熱緩和)
【0065】
ドライ延伸に続き、所望により、乾燥膜に、第2の乾燥幅から第3の乾燥幅への制御された幅の縮小を施すが、第3の乾燥幅は、第1の乾燥幅から第1の乾燥幅の約1.1倍の範囲である。一般的には幅の縮小は、膜を、Tcd−30℃以上であるが第1のポリエチレンのTm以下である温度にさらしながら行う。例えば、幅の縮小中に、膜を、例えば約115℃〜約130.0℃、例えば約120℃〜約128℃といった、70.0℃〜約130.0℃の範囲の温度にさらしてもよい。ある実施形態においては、膜幅の減少は、膜を、第1のポリエチレンのTmよりも低い温度にさらしながら行う。ある実施形態においては、第3の乾燥幅は、第1の乾燥幅の1.0倍〜第1の乾燥幅の約1.1倍の範囲である。
【0066】
制御された幅の縮小(縮幅)中に、TD延伸中に膜がさらされた温度以上の温度に膜をさらすと、最終膜の耐熱収縮性がより高くなると考えられる。
[4]微多孔膜の特性
【0067】
一般に最終微多孔膜は押出物の製造に用いるポリマーを含む。処理中に導入する少量の希釈剤または他の種もまた、一般的には微多孔性ポリオレフィン膜の重量を基準として1重量%未満の量で存在してもよい。処理中にポリマーの分子量が少量低下することがあるが、これは許容可能なものである。ある実施形態においては、処理中に分子量の低下があったとしても、膜中のポリマーのMWDの値と押出し前の第1または第2のポリエチレンのMWDとの違いは、例えばわずか約10%、わずか約1%、またはわずか約0.1%にしかならない。
【0068】
押出物および微多孔膜は、コポリマー、無機種(ケイ素および/またはアルミニウム原子を含有する種等)、および/またはPCT公開WO2007/132942および同WO2008/016174に記載のポリマー等の耐熱性ポリマーを含有してもよいが、これらは必須ではない。ある実施形態においては、押出物および膜は、かかる物質を実質的に含まない。この文脈における実質的に含まないとは、微多孔膜中のかかる物質の量が、押出物の製造に用いるポリマーの全重量を基準として1重量%未満であることを意味する。
(1)構造、特性、および組成
【0069】
以下の実施形態にて本発明をさらに例証する。これらの実施形態は、本発明の態様の説明であり、本発明のより広い範囲内にある他の実施形態を除外することを意図するものではない。
【0070】
一実施形態においては、微多孔膜は、膜の重量を基準として、約4.0重量%〜約17.0重量%の(例えばエチレン−ヘキセンコポリマーおよび/またはエチレン−オクテンコポリマーを含む)ポリオレフィンコポリマーを含み、ポリオレフィンコポリマーは、3.0×10〜3.0×10の範囲のMw、2〜10の範囲のMWD、および1.0モル%〜5.0モル%の範囲のコモノマー含有量を有する。所望により、ポリオレフィンコポリマーは120.0℃〜128.0℃の範囲のTmを有する。所望により膜は、50.0重量%〜95.0重量%の、1.0×10以下のMwおよび131.0℃以上のTmを有する(例えばポリエチレンホモポリマーまたはコポリマーを含む)第2のポリオレフィン、ならびに1.0重量%〜46.0重量%の、1.0×10超のMwを有する(例えばポリエチレンホモポリマーまたはコポリマーを含む)第3のポリオレフィンをさらに含む。重量パーセントは膜の重量が基準である。
【0071】
別の実施形態においては、微多孔膜は、約8.0重量%〜約13.0重量%のポリエチレン−ヘキセンコポリマーおよび/またはポリエチレン−オクテンコポリマーを含み、これらのコポリマーは、1.0×10〜1.0×10の範囲のMw、2.5〜4.5の範囲のMWD、および1.25モル%〜4.50モル%の範囲のコモノマー量を有する。所望によりコポリマーは、例えば約123.0℃〜125.0℃といった、122.0℃〜126.0℃の範囲のTmを有する。所望により膜は、60.0重量%〜85.0重量%の、ポリエチレンホモポリマーまたはコポリマーを含む、1.0×10〜9.0×10の範囲のMwおよび131.0℃以上のTmを有する第2のポリエチレン、ならびに約7.0重量%〜約32.0重量%の、1.1×10〜5.0×10の範囲のMwを有するポリエチレンホモポリマーまたはコポリマーを含む第3のポリエチレンをさらに含む。重量パーセントは膜の重量が基準である。
【0072】
膜は、膜透過度、シャットダウン温度、およびシャットダウン速度の良好なバランスを提供する。コモノマー含有量が1.0モル%未満の場合、好適な透過度を有する膜を製造することがより困難である。コモノマー含有量が5.0モル%超の場合、低いシャットダウン温度および速いシャットダウン速度を有する微多孔膜を製造することがより困難である。
【0073】
ある実施形態においては、膜の厚さは、一般的には例えば約5μm〜約30μmといった、約1μm〜約100μmの範囲である。微多孔膜の厚さは、縦方向に1cm間隔で20cmの幅にわたって接触式厚さ計により測定することができ、次いで平均値を出して膜厚さを得ることができる。株式会社ミツトヨ製ライトマチック等の厚さ計が好適である。この方法は、後述の通り、熱圧縮後の厚さの変化を測定するのにも好適である。光学的厚さ測定法等の、非接触式厚さ測定もまた好適である。
【0074】
所望により、微多孔膜は以下の特性の1つまたは複数を有する。
A.約25%〜約80%の多孔度
【0075】
膜の多孔度は、膜の実重量と、100%ポリエチレンの同等の非多孔膜(同じ長さ、幅、および厚さを有するという意味において同等)の重量とを比較することにより、従来法で測定する。次に、以下の式を用いて多孔度を求める:多孔度%=100×(w2−w1)/w2。式中、「w1」は微多孔膜の実重量であり、「w2」は、同じ大きさおよび厚さを有する、100%ポリエチレンの同等の非多孔膜の重量である。
【0076】
ある実施形態においては、膜は、例えば約25%〜約80%、または30%〜60%の範囲といった、25%以上の多孔度を有する。膜の多孔度は、膜の実重量と、同じ組成の同等の非多孔膜(同じ長さ、幅、および厚さを有するという意味において同等)の重量とを比較することにより、従来法で測定する。
B.正規化透気度≦8.0×10秒/100cm/20μm
【0077】
膜の透気度値を、フィルムの厚さが20μmである同等の膜の値に正規化する。したがって膜の透気度値は、「秒/100cm/20μm」の単位で表す。正規化透気度は、JIS P8117に従って測定し、その結果を、A=20μm*(X)/T(式中、Xは、実厚さTを有する膜の透気度の測定値であり、Aは、厚さ20μmの同等の膜の正規化透気度である)の式を用いて厚さ20μmの同等の膜の透気度値に正規化する。
【0078】
ある実施形態においては、正規化透気度は、例えば1.0×10秒/100cm/20μm〜8.0×10秒/100cm/20μmの範囲といった、8.0×10秒/100cm/20μm以下である。別の実施形態においては、正規化透気度は、およそ、1.0×10秒/100cm/20μm〜7.0×10秒/100cm/20μm、1.0×10秒/100cm/20μm〜約6.5×10秒/100cm/20μm、または約1.5×10秒/100cm/20μm〜約5.0×10秒/100cm/20μmの範囲の範囲である。
C.約3,000mN/20μm以上の正規化突刺強度
【0079】
突刺強度は、厚さTを有する微多孔膜を、末端が球面(曲率半径R:0.5mm)である直径1mmの針で2mm/秒の速度で突き刺した時に(グラム重すなわち「gF」で)測定した最大荷重、と定義される。突刺強度は、L=(L)/T(式中、Lは突刺強度の実測値であり、Lは正規化突刺強度であり、Tは膜の平均厚さである)の式を用いて、膜の厚さ1.0μmにおける値に正規化する。
【0080】
ある実施形態においては、膜の突刺強度(20μmの厚さに正規化)は、3.0×10mN/20μm以上、もしくは3.5×10mN/20μm以上、または3.0×10mN/20μm〜5.0×10mN/20μmの範囲である。
D.10%以下の少なくとも1つの平面方向への105℃熱収縮率
【0081】
微多孔膜の直交面方向(例えば機械方向または横方向)の収縮率は、次にようにして測定する:
(i)周囲温度における微多孔膜の試験片の大きさを機械方向および横方向の両方について測定し、(ii)微多孔膜の試験片を、105℃の温度にて8時間、負荷をかけずに平衡化させ、次いで(iii)膜の大きさを機械方向および横方向について測定する。MDまたはTDのいずれへの105℃熱収縮率も、測定結果(i)を測定結果(ii)で割り、得られた商を百分率で表すことによって得ることができる。
【0082】
ある実施形態においては、105℃にて測定した少なくとも1つの平面方向への熱収縮率は、10%以下、あるいは9.0%以下、あるいは8.5%以下、あるいは8%以下である。別の実施形態においては、膜のTDへの105℃熱収縮率は、10%以下、あるいは9.0%以下、あるいは8.5%以下、あるいは8.0%以下、あるいは2.0%〜8.0%の範囲である。さらに別の実施形態においては、膜のMD熱収縮率は10%以下であり、膜の横方向熱収縮率は、10%以下、または9.0以下である。
E.シャットダウン温度
【0083】
微多孔膜のシャットダウン温度は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、PCT公開WO2007/052663に開示されている方法によって測定する。この方法に従い、微多孔膜を上昇していく温度(30℃で開始して5℃/分)にさらし、その間に膜の透気度を測定する。微多孔膜のシャットダウン温度は、微多孔膜の透気度(ガーレー値)が最初に100,000秒/100cmを超える時の温度と定義される。微多孔膜の透気度は、透気度計(旭精工株式会社製、EGO-1T)を用いてJIS P8117に従って測定する。
【0084】
ある実施形態においては、膜のシャットダウン温度は、例えば126℃〜129℃の範囲といった、125℃〜130℃の範囲である。
F.破膜温度≧150℃
【0085】
破膜温度は、次のようにして測定する。5cm×5cmの微多孔膜を、それぞれが直径12mmの円形の開口部を有するブロックで挟み、直径10mmの炭化タングステンの球を、円形の開口部内の微多孔膜上に置いた。次いで、膜を5℃/分の速度で上昇する温度にさらす。膜の破膜温度は、球が最初に膜を突き破る時の温度と定義される。膜のメルトダウン温度は、球が試料を完全に貫通する温度、すなわち試料が破壊する温度と定義され、一般的には約140℃〜約200℃の範囲の温度である。
【0086】
ある実施形態においては、メルトダウン温度は150.0℃〜200.0℃の範囲である。
G.シャットダウン活性化エネルギーE2≧3,500
【0087】
膜のシャットダウン活性化エネルギーE2は、膜透過度が膜のシャットダウン温度(シャットダウン速度)付近に低下する速度と直接関連している。シャットダウン活性化エネルギーは、1/T<0.00248(Tはケルビン)の範囲の絶対温度の逆数を関数とした、膜の正規化透気度(秒/100cm/20μmを単位として測定したガーレー値)の変化率から求める。
【0088】
具体的には、E2は以下の式より求める:
LnΔG=A−E2/RT
ΔG:正規化透気度の変化(秒/100cm/20μmを単位としたガーレー値
T:絶対温度(K)
E2:シャットダウン活性化エネルギー(J/mol)
=加算定数、および
R=8.31(J/mol K)。
【0089】
図1は、膜温度と透気度の関係を示す図である。温度−透過度曲線は2つの異なる領域を示しており、第1の領域は、シャットダウン開始時の透過度の変化を示しており、第2の領域は、ポリマーが膜の微細孔内に移動することによって微細孔が閉じられた結果シャットダウンが完了するときの透過度の変化を示している。透過度の自然対数の変化を絶対温度の逆数を関数としてプロットした場合、得られる曲線の勾配は透過度の変化率を示しており、シャットダウン速度と一致している。図2を参照されたい。E2の値は、9.0×10秒/100cm/20μm〜10.0×10秒/100cm/20μmの透過度の範囲の少なくとも5つのデータ点を用いて、勾配E2/RTから算出する。
【0090】
ある実施形態においては、膜のシャットダウン活性化エネルギーは、例えば4.00×10J/mol以上といった、3.50×10J/mol以上である。所望により、膜のシャットダウン活性化エネルギーは、3.60×10J/mol〜5.50×10J/molの範囲である。
電池用セパレータおよび電池
【0091】
本発明の微多孔膜は、シャットダウン温度、透気度、および突刺強度のバランスの良い特性を有する。微多孔膜は、常圧において液体(水性および非水性)に対して透過性である。したがって微多孔膜は、電池用セパレータ、濾過膜等として有用である。微多孔膜は、特に、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル亜鉛電池、銀亜鉛電池、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池のセパレータ等の、二次電池のセパレータに適用することができる。ある実施形態においては、膜は、リチウムイオン二次電池中の電池用セパレータフィルムとして用いられる。
【0092】
かかる電池はPCT公開WO2008/016174に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0093】
本発明を、本発明の範囲を制限することを意図することなく、下記実施例を参照してより詳細に説明する。
[7]実施例
実施例1
(1)第1のポリオレフィン溶液の調製
【0094】
ポリオレフィンブレンドを、(a)8.2重量%の、3.8×10の重量平均分子量(「Mw」)、3.0の分子量分布(「MDW」)を有する第1のポリエチレン(ポリエチレンコポリマー)と、(b)73.8重量%の、5.6×10のMw、4.1のMWDを有する第2のポリエチレンと、(c)18重量%の、2.0×10のMwおよび5のMWDを有する第3のポリエチレンとを混合することにより調製する(第1のポリエチレン)。
【0095】
25重量部の得られた第1のポリオレフィンブレンドを、58mmの内径および42のL/Dを有する強混合型二軸スクリュー押出機内に充填し、65質量部の流動パラフィン(40℃で50cst)を、サイドフィーダーを介して二軸スクリュー押出機に供給して、ポリオレフィン溶液を作成する。
(2)膜の製造
【0096】
ポリオレフィン溶液を、二軸スクリュー押出機から一層押出Tダイに供給し、そこから押し出して押出物を形成する。押出物を20℃に制御された冷却ローラーに通しながら冷却し、ゲル状シートを形成し、これを、テンター延伸機で、MDおよびTDの両方に5倍の倍率に、115.0℃にて同時二軸延伸する。延伸したゲル状シートを、20cm×20cmのアルミニウムフレームに固定し、25℃に制御された塩化メチレン浴に浸漬して3分間の100rpmの振動で流動パラフィンを除去し、室温の気流で乾燥させる。乾燥膜を、115.0℃の温度にさらしながら、バッチ延伸機で横方向(TD)に1.4倍の倍率に再延伸した後、同じ温度で1.2倍のTD倍率に緩和する(テンタークリップはより狭い幅に再調整)(倍率は、ドライ延伸前の膜の幅(TD)が基準)。再延伸した膜はバッチ延伸機に固定されたままであるが、これを115.0℃で10分間熱セットして単層微多孔膜を製造する。膜の特性を表1に示す。
実施例2
【0097】
第1のポリエチレンの量が12.3重量%であること以外は、実施例1を繰り返す。膜の特性を表1に示す。
実施例3
【0098】
第1のポリエチレンの量が16.4重量%であること以外は、実施例1を繰り返す。膜の特性を表1に示す。
実施例4
【0099】
第1のポリエチレンがエチレンとヘキセンとのコポリマーであること以外は、実施例1を繰り返す。コポリマーは、8.5×10のMwおよび1.9モル%のコモノマー含有量を有する。膜の特性を表1に示す。
実施例5
【0100】
第1のポリエチレンの量が16.4重量%であること以外は、実施例4を繰り返す。膜の特性を表1に示す。
実施例6
【0101】
第1のポリエチレンのコモノマー含有量が1.4モル%でありMwが1.2×10であること以外は、実施例3を繰り返す。膜の特性を表1に示す。
実施例7
【0102】
第1のポリエチレンのコモノマー含有量が1.4モル%でありMwが1.7×10であること以外は、実施例4を繰り返す。膜の特性を表1に示す。
実施例8
【0103】
第1のポリエチレンの量が16.4重量%であること以外は、実施例7を繰り返す。膜の特性を表1に示す。
実施例9
【0104】
第1のポリエチレンのコモノマー含有量が1.3モル%でありMwが2.6×10であること以外は、実施例5を繰り返す。膜の特性を表1に示す。
実施例10
【0105】
第1のポリエチレンが、2.7モル%のコモノマー含有量および7.5×10のMwを有する、エチレンとプロピレンとのコポリマーであること以外は、実施例3を繰り返す。膜の特性を表1に示す。
比較例1
【0106】
第1のポリエチレンが1.7×10のMwを有するエチレンホモポリマーであること以外は、実施例3を繰り返す。膜の特性を表1に示す。
特性
【0107】
実施例1〜8および比較例1の多層微多孔膜の特性を、セクション4に記載の手順で測定する。結果を表1に示す。
【0108】
実施例1〜10の膜は、比較例1の膜よりも向上したシャットダウン温度および/または向上したシャットダウン速度を示している。実施例1〜3から、望ましい低いシャットダウン温度および速いシャットダウン速度を有する微多孔膜は、比較的低いMw、狭いMWD、および比較的低いコモノマー含有量を有するポリオレフィンコポリマーを用いることによって製造できることがわかる。低いシャットダウン温度および高速のシャットダウン速度は、比較的大量のコポリマーを用いても達成される。実施例1〜3と実施例4〜6との比較から、より低いコモノマー含有量が使用される限り、比較的広いMWDにおいても比較的速いシャットダウン速度が達成できることがわかる。実施例7〜10は望ましい結果を示しているが、シャットダウン速度は、より低いMwを有するコポリマーを含有する膜の場合ほどは速くない。比較的高いコポリマーMw(Mw≧1×10)において、鎖の運動性を低下させるのに十分であるポリマー鎖中における重要なセグメント長の発生の確率がわずかに上昇すると考えられる。
【0109】
本発明を以下の実施形態でさらに説明する。本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
1.膜の重量を基準として1.0重量%〜20.0重量%のポリオレフィンコポリマーを含む微多孔膜であって、コポリマーが、9.0×10以下のMwおよび1.0モル%〜5.0モル%の範囲のコモノマー含有量を有する、微多孔膜。
2.コポリマーが、2.0〜10.0の範囲のMWDおよび120.0℃〜128.0℃の範囲のTmを有するエチレン−ヘキセンコポリマーならびに/またはエチレン−オクテンコポリマーを含む、実施形態1の微多孔膜。
3.コポリマーが、1.0〜10〜1.0×10の範囲のMw、2.5〜4.5の範囲のMWD、1.25モル%〜4.50モル%の範囲のコモノマー含有量、および123.0℃〜125.0℃の範囲のTmを有する、実施形態1または2の微多孔膜。
4.実施形態1〜3のいずれかの微多孔膜を含む電池用セパレータフィルム。
【0110】
優先権書類を含む、本明細書で引用した全ての特許、試験手順、およびその他の文献は、参照により、かかる開示が本発明に矛盾しない範囲で完全に組み込まれ、またかかる組込みが許容される全ての権限について、完全に組み込まれる。
【0111】
本明細書中に開示した例示的形態は特定のものについて記載しているが、種々の他の変形態様が、当業者にとっては明らかであり、かつ当業者によって本開示の精神および範囲から逸脱することなく容易に行われ得ることが理解されるであろう。したがって、本明細書に添付した特許請求の範囲の範囲は本明細書中に示した実施例および説明に限定されるものではなく、特許請求の範囲は、本開示が属する分野の当業者によってその等価物として扱われる全ての特徴を含む、本明細書に備わる特許可能な新規性のある特徴の全てを包含するものとして解釈されることが意図されている。
【0112】
数値の下限および数値の上限が本明細書中に列挙されている場合、あらゆる下限からあらゆる上限までの範囲が想定されている。
【表1】

【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィンコポリマーを含む微多孔膜であって、膜が、130.5℃以下のシャットダウン温度および3.5×10J/mol以上のシャットダウン活性化エネルギーE2を有することを特徴とする微多孔膜。
【請求項2】
ポリオレフィンコポリマーが、130.0℃以下のTm、9.0×10以下のMw、10.0以下のMWD、および1.0〜5.0モル%の範囲のコモノマー含有量を有するエチレン−αオレフィンコポリマーであることを特徴とする請求項1に記載の微多孔膜。
【請求項3】
コポリマーが、シングルサイト触媒を用いるプロセスにより製造されることを特徴とする請求項1に記載の微多孔膜。
【請求項4】
膜が、膜の重量を基準として8.0〜13.0重量%の範囲の量のポリオレフィンコポリマーを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の微多孔膜。
【請求項5】
膜が、131.0℃以上のTmおよび1.0×10〜9.0×10の範囲のMwを有する第2のポリエチレンならびに1.0×10超のMwを有する第3のポリエチレンをさらに含み、かつ膜のシャットダウン活性化エネルギーE2が、3.60×10J/mol〜5.50×10J/molの範囲であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の微多孔膜。
【請求項6】
ポリオレフィンコポリマーが、122.0℃〜126.0℃の範囲のTmを有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の微多孔膜。
【請求項7】
ポリオレフィンコポリマーが、1.0×10〜1.0×10の範囲のMwを有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の微多孔膜。
【請求項8】
ポリオレフィンコポリマーが、エチレンと第2のαオレフィンとのコポリマーであり、第2のαオレフィンが、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、スチレン、他のコモノマー、またはそれらの組合せであることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の微多孔膜。
【請求項9】
コポリマーが、2.5〜4.5の範囲のMWDを有することを特徴とする請求項8に記載の微多孔膜。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の微多孔膜を含むことを特徴とするバッテリーセパレーターフィルム。
【請求項11】
微多孔膜の製造方法であって、
(1)希釈剤と、130.0℃以下のTm、9.0×10以下のMw、10.0以下のMWD、および1.0モル%〜5.0モル%の範囲のコモノマー含有量を有するポリオレフィンコポリマーを含むポリマーとの混合物を押し出す工程、
(2)押出物を少なくとも1つの平面方向に延伸する工程、および
(3)希釈剤の少なくとも一部を延伸押出物から除去して微多孔膜を形成する工程
を含むことを特徴とする微多孔膜の製造方法。
【請求項12】
ポリマーが、(ii)131.0℃以上のTmと1.0×10以下のMwを有する第2のポリオレフィンおよび/または(iii)1.0×10超のMwを有する第3のポリオレフィンをさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
第1、第2、および第3のポリオレフィンが、ポリエチレンであることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
第1のポリオレフィンのTmが122.0℃〜126.0℃の範囲であり、第1のポリオレフィンのMwが1.0×10〜1.0×10の範囲であり、かつ第1のポリオレフィンのMWDが2.5〜4.5の範囲であることを特徴とする請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
工程(3)に続いて少なくとも1つの平面方向に膜を延伸する工程をさらに含む請求項11〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
工程(3)に続いて膜を熱処理にかける工程をさらに含むことを特徴とする請求項11〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
工程(2)の前に押出物を冷却する工程をさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項18】
工程(2)の延伸が、押出物を(Tm−10℃)以下の温度にさらしながら、面積が9倍〜49倍の範囲の倍率になるまで二軸に行われることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項19】
工程(3)の後に、残留したいずれかの揮発性種を膜から除去する工程をさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項20】
ポリオレフィンコポリマーが、ポリマー−希釈剤混合物中のポリマーの重量を基準として、1.0重量%〜20.0重量%の範囲の量で存在し、第2のポリエチレンが、25.0重量%〜99.0重量%の範囲の量で存在し、かつ第3のポリエチレンが、0重量%〜74.0重量%の範囲の量で存在することを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項21】
請求項11〜20のいずれかに記載の製造方法により得られることを特徴とする膜生成物。
【請求項22】
電解質と、負極と、正極と、負極と正極の間に位置するセパレータとを含む電池であって、セパレータが、130.5℃以下のシャットダウン温度および3500J/mol以上のシャットダウン活性化エネルギーE2を有することを特徴とする微多孔膜を含む電池。
【請求項23】
電池が、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池、ニッケル水素二次電池、ニッケルカドミウム二次電池、ニッケル亜鉛二次電池、または銀亜鉛二次電池であることを特徴とする請求項21に記載の電池。
【請求項24】
正極が、集電体、およびリチウムイオンを吸収かつ放出することができる集電体上の正極活物質層を含むことを特徴とする請求項22に記載の電池。
【請求項25】
電解質が、有機溶媒中のリチウム塩を含むことを特徴とする請求項23に記載の電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−522107(P2012−522107A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503462(P2012−503462)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【国際出願番号】PCT/US2010/026426
【国際公開番号】WO2010/114675
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(510157580)東レバッテリーセパレータフィルム株式会社 (31)
【Fターム(参考)】