微小構造体及びその製造方法
燃料電池、燃料電池膜、微小燃料電池及びこれらの製造方法を開示する。特に代表的な燃料電池は、有機伝導材料や無機伝導材料やこれらの組合せといった材料を含む膜を有する。この膜の厚さは約0.01〜10μmであり、面積抵抗は約0.1〜1000Ωcm2である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する出願に基づく優先権の主張
本出願は、2004年2月19日に出願した同時係属の米国仮特許出願第60/545,772号(発明の名称「Thin-Film Membranes For Fuel Cells」に基づく優先権を主張するものである。本願明細書中には、上記出願の内容の全体を参考として組み込んでいる。
【0002】
連邦政府の後援による研究又は開発であることの宣誓
米国政府は、この発明の一括払いライセンスを有するものとし、所定の状況では、米国政府のDARPA(グラント#F33615−01−1−2173)により定められるMDA条項に基づき、特許権者に対して他者へ合理的な期間に亘るライセンス契約を締結するよう求めることができる。
【0003】
技術分野
本発明は、広くは燃料電池に関連するものであり、より詳細には、燃料電池膜及び微小燃料電池、並びに燃料電池膜及び微小燃料電池の製造方法に関するものである。
【0004】
背景
移動通信用装置、マイクロセンサ、微小電気機械システム(MEMS)及びマイクロフルイディスク装置といった携帯型電子装置は、エネルギ貯蔵技術の進歩による恩恵を受ける。エネルギ密度がより高く価格の安い電源が利用可能になることにより、用途及び機能をより幅広いものとすることができる。考えられる高エネルギ密度の電源の一つが燃料電池である。
【0005】
所要電力が小さい電子装置のために、燃料電池を含む微小形成電源の研究が進められている。考慮すべき問題として、寸法及び重量を低減させることや、相互接続をより少なくして信号整合性を改善することや、処理効率を増大させることや、費用を安価にすることが挙げられる。
【0006】
このような装置用微小燃料電池の燃料には、水素、メタノール及びその他の炭化水素(例えばエチレングリコール又は蟻酸)がある。水素燃料電池及び直接反応方式燃料電池(DMFC)は、比較的低温(例えば周囲温度〜120℃)で動作する。これらの燃料電池は、アノードからカソードまでプロトンを移送するために固体プロトン交換膜(PEM)を使用している。水素は、加圧ガスとして、又は金属水素化物の形態で貯蔵しておくことができる。この場合、膜の伝導率を高めるために加湿を行う必要がある。
【0007】
メタノール−水混合物は、アノードにおいて液体又は蒸気のいずれの形態でも酸化させることもできる。メタノールは、液体として貯蔵することができ、安価であり、比エネルギーが高いため魅力的な燃料である。液体供給型DMFCは、他の燃料電池システムと比べて比較的簡単なもので容易に小型化することができる。その理由は、このようなDMFCは、燃料改質器を必要せず、複雑な加湿器又は熱管理システムを要しないからである。また、メタノールは、リチウムポリマー電池及びリチウムイオンポリマー電池と比べて高いエネルギ密度を有する。
【0008】
プロトン交換膜は、水素又はメタノールのいずれにより動作する低温燃料電池にも使用することができる。従来の燃料電池における固体プロトン交換膜は、たいていナフィオン(商標名)のような非スルホン酸部分で終端する側鎖を有する過フッ素化重合体である。PEM燃料電池の膜は、一般に伝導率を高く保つために水を含むようにする。メタノールが膜を通過してしまうと、混成電位が発生して酸素還元反応の作用が損なわれ、パフォーマンスが悪くなってしまう。従って、当該技術分野では上述した欠点の少なくとも幾つかを解消する必要がある。
【0009】
発明の概要
簡単に説明すると、本明細書には、燃料電池、燃料電池膜、微小燃料電池及びこれら各々の製造方法が記載されている。この中で特に代表的な燃料電池は、有機伝導材料や無機伝導材料やこれらの組合せといった材料を具える膜を有する。膜の厚さは約0.01〜10μmであり、面積抵抗は約0.1〜1000Ωcm2である。
【0010】
特に代表的な微小燃料電池は、アノード電流コレクタの配置された基板と、このアノード電流コレクタ上に配置された膜であって、この膜が、二酸化ケイ素、ドープした二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物及びこれらの組合せから選択した材料を含んでおり、この膜の厚さが約0.01〜10μmであり、この膜の面積抵抗が約0.1〜1000Ωcm2である当該膜と、前記基板の一部と前記膜の一部とにより実質的に画成される中空チャンネルであって、少なくとも1層の触媒層がチャネルに露出されており、前記アノード電流コレクタが、前記チャネルに隣接して配置されている当該中空チャネルと、前記膜の、前記基板の側と反対側に配置されたカソード電流コレクタとを有する微小燃料電池であって、前記触媒層及び前記アノード電流コレクタ間に導電経路が存在している燃料電池。
【0011】
微小燃料電池の製造方法も提供する。特に代表的な微小燃料電池の製造方法は、アノード電流コレクタが配置された基板を設ける工程と、前記基板及び前記アノード電流コレクタ上へ犠牲ポリマー層を配置する工程と、前記アノード電流コレクタ上に配置されてない部分の犠牲材料を除去し、犠牲材料部を形成する工程と、この犠牲材料部上に第1多孔性触媒層を配置する工程と、前記犠牲材料部と前記第1多孔性触媒層と前記アノード電流コレクタとの上に膜材料の層を配置する工程と、前記犠牲材料部を除去して、前記基板と、前記膜材料と、前記第1多孔性触媒層とにより実質的に画成される中空チャンネルを形成する工程とを有する。前記膜材料には、二酸化ケイ素、ドープした二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物及びこれらの組合せから選択した材料を含まれる。
【0012】
他の特に代表的な製造方法は、アノード電流コレクタが配置された基板を設ける工程と、前記基板及び前記アノード電流コレクタ上へ犠牲ポリマー層を配置する工程と、前記アノード電流コレクタ上に配置されてない部分の犠牲ポリマー材料を除去し、犠牲材料部を形成する工程と、この犠牲材料部上に第1多孔性触媒層を配置する工程と、前記犠牲材料部と、前記第1多孔性触媒層と、前記アノード電流コレクタとの上に膜材料の層を配置する工程であって、前記膜材料が、二酸化ケイ素、ドープした二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物及びこれらの組合せを含むようにする当該工程と、前記犠牲材料部を除去して、前記基板と、前記膜材料と、前記第1多孔性触媒層とにより実質的に画成される中空チャンネルを形成する工程とを有する。
【0013】
更に他の代表的な製造方法は、アノード電流コレクタ及び触媒層が配置された基板であって、前記アノード電流コレクタ及び前記触媒層が互いに隣接した基板を設ける工程と、前記基板、前記アノード電流コレクタ及び前記触媒層上へ犠牲ポリマー層を配置する工程と、前記アノード電流コレクタ上に配置されてない部分の犠牲ポリマー材料を除去し、前記触媒層上に犠牲材料部を形成する工程と、前記犠牲材料部及び前記アノード電流コレクタ上に膜材料の層を配置する工程であって、前記膜材料が、二酸化ケイ素、ドープした二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物及びこれらの組合せを含むようにする当該工程と、前記犠牲材料部分を除去して、前記基板と、前記膜材料と、前記触媒層とにより実質的に画成される中空チャンネルを形成する工程とを有する。
【0014】
その他の構造体、システム、方法、特徴及び利点は、図面及び詳述な説明を参照することにより当業者に明らかになるであろう。このような追加的な構造、システム、方法、特徴及び利点は全て、本発明の範囲内にあり且つ特許請求の範囲の記載に基づき保護されることを意図するものである。
【0015】
本発明の多くの観点は、図面を参照することによりよく理解することができる。図面中の構成要素は必ずしも寸法に比例して描かれておらず、代わりに本発明の原理が明確に示されるような強調が施してある。さらに、複数の図面を通じて、対応する部分は同じ参照符号により示してある。
【0016】
詳細な説明
燃料電池膜、微小燃料電池及びこれらの製造方法を一般的に開示する。本発明の実施例における燃料電池膜は、二酸化ケイ素及びドープした二酸化ケイ素の双方又はいずれか一方から形成されており、比較的薄肉で、厚肉のポリマー膜に匹敵する面積抵抗を有している。膜を薄肉にする程、プロトンを通過させやすくなるため、発生させうる電流量を増大させることができる。また、これら膜を形成するのに使用する材料は、現在使用されているプロトン交換膜(PEM)と比べて、特に直接反応方式の燃料電池の共通する問題点である反応物の膜通過の防止という点において優れている。更に、これら膜は、微小電子装置に関する周知の製造技術を用いて製造することができる。この点より、膜は、燃料電池の使用を想定している微小電子装置の構造体上に製造することができる。
【0017】
一例においては、燃料電池膜及び微小燃料電池を電子装置に直接一体化することができる。例えば、燃料電池膜及び微小燃料電池は、燃料電池膜又は微小燃料電池をチップに配置することにより、燃料電池膜又は微小燃料電池を基板又はプリント基板に一体化することにより、及び、燃料電池膜又は微小燃料電池をチップに結合する独立した部分としてチップに介在又は装着することにより、一体化することができる。
【0018】
一般に、燃料電池膜及び微小燃料電池を利用することができる技術分野には、微小電子装置(例えばマイクロプロセッサチップ、通信チップ及び光電子チップ)や、微小電気機械システム(MEMS)や、マイクロフルイディクスや、センサや、分析装置(例えばマイクロクロマトグラフィ)や、通信/位置決め装置(例えばビーコン及びGPSシステム)や、記録装置などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
図1は、代表的な燃料電池膜10aの断面図である。この燃料電池膜10aは膜12(即ち膜層)を有し、この膜12の両側には触媒層14a及び14bが配置されている。図1に示すように、燃料(例えば、H2、メタノール、蟻酸、エチレングリコール、エタノール及びこれらの組合せ)は、燃料電池膜10aの一方の側(例えば、膜のアノード側(図示せず))に接触し、これに対し、空気はこの燃料電池膜10aの反対側に接触する(例えば膜のカソード側(図示せず))。例えば、メタノールを使用した場合、燃料電池膜のアノード側及びカソード側のそれぞれにおいて以下の反応が起こる。
H2O→CO2+6H++6e−
3/2O2+6H++6e−→3H2O
【0020】
この膜は、有機伝導材料及び無機伝導材料のような材料を含むものとしうるが、これに限定されるものではない。膜に含ませ得る材料には、例えば、二酸化ケイ素、ドープした二酸化ケイ素、窒化ケイ素、ドープした窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、ドープした酸窒化ケイ素、金属酸化物(例えば酸化チタン、酸化タングステン)、金属窒化物(例えば窒化チタン)、ドープした金属酸化物、金属酸窒化物(例えば酸窒化チタン)、ドープした金属酸窒化物及びこれらの組合せがあるが、これに限定されるものではない。一般に、膜は、当該膜中で約0.1〜20%となるドーパントにより、約0.1〜5%となるドーパントによりドープすることができる。
【0021】
ドープした二酸化ケイ素としては、リンをドープした二酸化ケイ素や、ホウ素をドープした二酸化ケイ素や、アルミニウムをドープした二酸化ケイ素や、ヒ素をドープした二酸化ケイ素や、これらの組合せがありうるが、これに限定されるものではない。一般に、ドーピングにより、M−OH(Mは金属である)のような原子スケールの欠陥が生じて格子が歪むため、ここを通ってプロトンを移送することができる。ドーピング量は、膜中のドーパントが0.1〜20重量%となるように、膜中のドーパントが0.5〜10重量%となるように、膜中のドーパントが2〜5重量%となるようにすることができる。
【0022】
膜12の厚さは、約10μm以下であり、約0.01〜10μm、約0.1〜5μm、約0.1〜2μm、約0.5〜1.5μm及び約1μmである。膜12の長さは、約0.001m〜100mとすることができ、、膜12の幅は、約1μm〜1000μmとすることができる。膜の長さ及び幅は用途に応じたものであるため、それに従って調整しうることに留意されたい。
【0023】
膜12の面積抵抗は、約0.1〜1000Ωcm2 、約0.1〜100Ωcm2 、約0.1〜10Ωcm2 、約1〜100Ωcm2 及び約1〜10Ωcm2 である。面積抵抗とは、燃料に露出された領域の膜を跨ぐ抵抗(例えば、抵抗×面積又は抵抗×厚さ)として定義される。
【0024】
膜12は、スピンコーティング、プラズマ加速化学気相堆積(PECVD)、スクリーン印刷、ドクタプレード、スプレーコーティング、ローラーコーティング、メニスカスコーティング及びこれらの組合せを用いて形成することができるが、これに限定されるものではない。
【0025】
触媒層14a及び14bには、プラチナ、プラチナ/ルテニウム、ニッケル、パラジウム、これらの合金及びこれら各々の組合せのような触媒を含ませることができるが、これに限定されるものではない。一般に、燃料が水素である例ではプラチナ触媒を使用し、燃料がメタノールである他の例では、プラチナ/ルテニウム触媒か使用する。これら触媒層14a及び14bには、同じ触媒を含ませてもよいし、異なる触媒を含ませてもよい。これら触媒層14a及び14bは代表的には多孔性触媒層として、プロトンがこの多孔性触媒層を通過しうるようにする。更に、触媒層及びアノード電流コレクタ間には導電経路が存在する。
【0026】
触媒層14a及び14bの厚さは、1μm以下、約0.01〜100μm、0.1〜5μm及び約0.3〜1μmとすることができる。
【0027】
触媒層14a及び14bは、触媒及び膜材料を交互に層状にして、より厚肉の触媒層14a及び14bを形成することができる(例えば2以上の層)。例えば、2層の構造によれば燃料の酸化率が改善される。このことは、アノードの触媒ローディングを増加させることができ、触媒層を多孔性に保持しうるので有利である。表面積が多いことにより、燃料の酸化速度を早くすることができる。この速度が早いことは、より多くの電流及び電力が得られることを意味する。
【0028】
膜には、更にポストドーピング処理を施すことができる。ドーパントを膜に拡散又は埋め込むことによりイオン伝導度を増大させることができる。ドーパントとしは、ホウ素及びリンを挙げることができるが、これに限定されるものではない。各ドーパントは、液体源又は固体源から単独で膜内に拡散させることもできるし、或いは高圧イオン加速器を使用してイオン注入することもできる。膜の伝導率は、酸性化合物(例えば(酢酸及びトリフルオロ酢酸の形態の)カルボン酸)やリン酸及び硫酸のような無機酸)を膜内に拡散させることにより増大させることができる。
【0029】
図2は、代表的な燃料電池膜10bの断面図である。燃料電池膜10bは、複合膜18と、触媒層14a及び14bとを有する。この複合膜18は、2層の膜層12及び16(ポリマー層16)を有する。他の例では、燃料電池膜10bに3層以上の層を設けることができる。一方の触媒層14aはポリマー層16上に配置されており、他方の触媒層14bは膜層12上に配置されている。膜層12と触媒層14a及び14bとは、図1を参照して説明したものと同様のものである。また、燃料電池膜10bの動作も上述したのと同じ又は同様である。
【0030】
これら膜層12及びポリマー層16は独立した層であるが、これらの双方とも燃料電池膜として動作する。この二重層膜における特性の組合わせ(例えばイオン伝導度、燃料通過耐性、機械的強度など)は、ある場合にはこれら層の各々を単独で用いるより優れたものとなりうる。例えば、ポリマー層16により、膜層12に対して追加の機械的支持及び安定性を付与することができる。
【0031】
更に、膜層12を二酸化ケイ素とする例では、この材料は、例えば膜12を半導体装置と共に使用する場合に当該装置を製造するのに用いられる他の絶縁体と類似の材料となる。
【0032】
ポリマー層16に含ませ得るポリマーには、ナフィオン(商標名)(過フルオロスルホン酸/ポリ四フッ化エチレンコポリマー)、ポリフェニルエンスルホン酸、改質ポリイミド及びこれらの組合せがあるが、これに限定されるものではない。例えば、ポリマー層16としてナフィオンを使用した場合、電流密度を損なうことなく開路電位が増大し、それにより出力密度及び効率が増加することが示された。
【0033】
ポリマー層16の厚さは、約1〜50μm、5〜50μm及び10〜50μmである。ポリマー層16の長さは約0.01m〜100mとすることができ、ポリマー層16の幅は約1μm〜500μmとすることができる。膜の長さ及び幅は用途に応じたものであるため、それに従って調整しうることに留意されたい。このポリマーは、スピンコーティングのような技術を用いて堆積させることができるため(但しこれに限定されるものではない)、当該ポリマーにより基板を完全に被覆させることもできるし、或いは所望の領域に選択的に堆積させることもできる。
ポリマー層16の面積抵抗は、約0.001〜0.5Ωcm2である。
【0034】
図3A〜3Dは、微小燃料電池20a、20b、20c及び20dの4つの例を示す。図3Aは、膜28と、基板22と、アノード電流コレクタ24と、カソード電流コレクタ26と、第1多孔性触媒層14aと、第2触媒層14bと、3つのチャネル32a、32b及び32cとを有する微小燃料電池20aを示す。膜28の化学組成、寸法及び特性は、図1を参照して膜12に関して上述したものと同様のものとし得る。膜28の厚さは、チャネル32a、32b及び32cの頂部から測定したものである。
【0035】
基板22は、マイクロプロセッサチップ、マイクロフルイディクス装置、センサ、分析装置及びこれらの組合せといったシステムに使用しうるものであるが、これに限定されるものではない。従って、基板22は、想定されるシステムに適した材料から形成することができる(例えばプリント基板に対してはエポキシボードを使用することができる)。代表的な材料には、ガラス、ケイ素、ケイ素化合物、ゲルマニウム、ゲルマニウム化合物、ガリウム、ガリウム化合物、インジウム、インジウム化合物、その他の半導体材料及び化合物の双方又はいずれか一方、及びこれらの組合わせがあるが、これに限定されるものではない。更に、基板12には非半導体の基板材料を含ませることができ、これには、例えば、任意の誘電材料、金属(例えば銅及びアルミニウム)、セラミックス又はプリント基板に使用される有機材料がある。更にまた、基板22は、上述したあるシステムで使用される特定の構成部材などを1つ以上有してもよい。
【0036】
第1多孔性触媒層14aは、膜の基板22の側に近い底面に配置されている。第2多孔性触媒層14bは、膜の基板22の側と反対側の頂面に配置されている。微小燃料電池20aは、これら第1多孔性触媒層14a及び第2多孔性触媒層14bを有しており、これら触媒層は、それぞれアノード電流コレクタ24及びカソード電流コレクタ26に対する導電経路を形成している。これら第1多孔性触媒層14a及び第2多孔性触媒層14bは、上述したのと同じ触媒を含み、同じ厚さ及び特性を有しうるものである。
【0037】
アノード電流コレクタ24は、第1多孔性触媒層14aを通じて電子を集める。アノード電流コレクタ24は、プラチナ、金、銀、パラジウム、アルミニウム、ニッケル、炭素、これら各々の合金及びこれらの組合せを含みうるものであるが、これに限定されるものではない。
【0038】
カソード電流コレクタ26は電子を放出する。カソード電流コレクタ26は、プラチナ、金、銀、パラジウム、アルミニウム、ニッケル、炭素、これら各々の合金及びこれらの組合せを含みうるものであるが、これに限定されるものではない。
【0039】
所望する構成に応じて、種々のアノード電流コレクタ24及びカソード電流コレクタ26を直列又は並列に電気接続させることができる(例えばアノードからカソードへ(直列に)配線してもよいし、又はアノードからアノードへ(並列に)配線することもできる)。一例において、個々の微小燃料電池を直列に電気接続して燃料電池のスタックを形成し出力電圧を増大させることができる。他の例では、並列に接続して定格電圧での出力電流を増大させることができる。
【0040】
実質的に膜28と第1多孔性触媒層14aと基板22とにより、チャネル32a、32b及び32cが画成される(例えば断面図の全ての側に境界が形成される)。燃料(例えば水素及びメタノール)は、これらチャネルに流されて、上述したようにして第1多孔性触媒層14aと作用する。これらチャネル32a、32b及び32cは、直列又は並列に構成することもできるし、或いはこれらを組合せた構成とするもできる。アノード電流コレクタ24は、チャネル32a、32b及び32cに隣接して配置されているが、多孔性触媒層14aに電気接続されている。
【0041】
一例において、チャネル32a、32b及び32cは、これらチャネル32a、32b及び32cが位置することになる領域から犠牲ポリマー層を除去(例えば分解)させることにより形成する。構造体20aの製造工程では基板12上に犠牲ポリマー層を堆積させパターン化する。次に、このパターン化した犠牲ポリマー層周辺に膜28を堆積させる。
【0042】
その後、この犠牲ポリマー層を除去して、チャネル32a、32b及び32cを形成する。この犠牲ポリマー層を堆積及び除去する工程を以下に更に詳細に説明する。
【0043】
チャネル32a、32b及び32cの断面として方形の断面が示されているが、チャネルの3次元境界は、方形の断面、非方形の断面、多角形の断面、非対称形の断面、湾曲した断面、弓形の断面、テーパの付いた断面、楕円若しくはその一部に相当する断面、放物線若しくはその一部に相当する断面、双曲線若しくはその一部に相当する断面及びこれらの組合せのような断面領域とすることができる。但し、これに限定されるものではない。例えば、チャネルの三次元構造には、方形構造、多角形構造体、非方形構造、非正方形構造、湾曲した構造、テーパのついた構造、楕円形若しくはその一部に相当する構造、放物線形若しくはその一部に相当する構造、双曲線形若しくはその一部に相当する構造及びこれらの組合せがありうるが、これに限定されるものではない。また、チャネルの断面領域を、空間的高さが変化するものとしてもよい。更に、例えば、複数空気領域を相互に接続させて、例えば微小チャネル及び微小チャンバを形成することができる。
【0044】
チャネル32a、32b及び32cの高さは、約0.1〜100μm、約1〜100μm、約1〜50μm及び10〜20μmとすることができる。チャネル32a、32b及び32cの幅は、約0.01〜約1000μm、約100〜約1000μm及び約100〜300μmとすることができる。チャネル32a、32b及び32cの長さは、用途や構成に応じて幅広く変更することができる。チャネル32a、32b及び32cは、特定の用途に適するように直列、並列、蛇状及びその他の構成にすることができる。
【0045】
一例において、犠牲材料層を設けるのに用いる犠牲ポリマーは、ゆっくり分解するポリマーであって、チャネル32a、32b及び32cを形成する際に周囲の材料中に過度の圧力上昇を生じないようなものにすることができる。また、犠牲ポリマーの分解により発生するガス分子が、膜28を透過するのに十分小さくなるようにする。更に、犠牲ポリマーの分解温度は、膜28の分解又は壊変温度より低くなるようにする。
【0046】
犠牲ポリマーの含みうる化合物には、ポリノルボルネン、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリエステル、これらの各々に官能性を持たせた化合物及びこれらの組合せがあるが、これに限定されるものではない。ポリノルボルネンは、アルケニル置換ノルボルネン(例えばシクロアクリレートノルボルネン)とすることができるが、これに限定されるものではない。ポリカーボネートは、ノルボルネンカーボネート、ポリプロピレンカーボネート、ポリエチレンカーボネート、ポリシクロヘキセンカーボネート及びこれらの組合せとすることができるが、これに限定されるものではない。
【0047】
更に、犠牲ポリマーには、当該犠牲ポリマーの加工性を変化させる追加成分を含ませることができる(例えば、熱及び光放射の双方又はいずれか一方に対する犠牲ポリマーの安定性を増大又は低減させるもの)。この点に関して、追加成分として、光重合開始剤及び光酸開始剤をあげることができるが、これに限定されるものではない。
【0048】
犠牲ポリマーは、例えば、スピンコーティング、ドクターブレーディング、スパッタリング、ラミネーション、スクリーン若しくはステンシル印刷、溶融ディスペンシング、蒸着、CVD、MOCVD又はプラズマ堆積システムのような技術を用いて基板上に堆積させることができる。
【0049】
犠牲ポリマーの熱分解は、その犠牲ポリマーの分解温度まで加熱し、その温度を所定時間(例えば1〜2時間)に亘り温度を維持することで行うことができる。その後、犠牲ポリマーの分解物は膜28を通って拡散し、実質的に残留物のない中空構造体(チャネル32a、32b及び32c)が残る。
【0050】
図3Bは、膜28と、基板22と、アノード電流コレクタ24と、カソード電流コレクタ26と、第1多孔性触媒層14aと、第2触媒層14bと、触媒層34と、3つのチャネル32a、32b及び32cとを有する微小燃料電池20bを示す。膜28の化学組成、寸法及び特性は、図1を参照して膜12について説明したのと同じものとしうる。膜28の厚さは、チャネル32a、32b及び32cの頂部から測定したものである。
【0051】
基板22と、アノード電流コレクタ24と、カソード電流コレクタ26と、第1多孔性触媒層14aと、第2触媒層14bと、3つのチャネル32a、32b及び32cとは、図3Aを参照して説明したものと同様のものである。
【0052】
触媒層34は、各チャネル32a、32b及び32c内の基板12上に配置されている。他の例では、全てのチャネルに触媒層42を配置する必要はなく、触媒層を配置するチャネルは、微小燃料電池の所望する構成により決定する。この触媒層34は、多孔質層にすることもできるし、又は表面積の大きな層にすることもできる。触媒層34は、チャネル32a、32b及び32c内におけるその触媒層がなければ燃料に露出されことになる基板部分の全部を被覆するようにしてもよいし、又はそれより小さい領域を被覆するようにしてもよく、このことは所望する構成により決定する。触媒層34は、プラチナ、プラチナ/ルテニウム、ニッケル、パラジウム、これら各々の合金及びこれらの組合せのような触媒を含みうるものであるが、これに限定されるものではない。
【0053】
図3Cは、膜28と、基板22と、アノード電流コレクタ24と、カソード電流コレクタ26と、第2触媒層14bと、触媒層34と、3つのチャネル32a、32b及び32cとを有する微小燃料電池20cを示す。膜28の化学組成、寸法及び特性は、図1を参照して膜12について説明したのと同じものとしうる。膜28の厚さは、チャネル32a、32b及び32cの頂部から測定したものである。
【0054】
基板22と、アノード電流コレクタ24と、カソード電流コレクタ26と、第2触媒層14bと、触媒層34と、3つのチャネル32a、32b及び32cとは、図3A及び3Bを参照して説明したものと同様のものである。
【0055】
本例における微小燃料電池20cは、第1多孔性触媒層を有していないが、触媒層34により触媒反応及び触媒活性を生ぜしめることができる。
【0056】
図3Dは、膜28と、基板22と、アノード電流コレクタ24と、カソード電流コレクタ26と、第1触媒層14aと、第2触媒層14bと、3つのチャネル32a、32b及び32cとを有する微小燃料電池20dを示す。膜28の化学組成、寸法及び特性は、図1を参照して膜12について説明したのと同じものとしうる。膜28の厚さは、チャネル32a、32b及び32cの頂部から測定したものである。
【0057】
膜28の基板22の側と反対側の頂面にポリマー層36が配置されている。第2多孔性触媒層14b及びカソード電流コレクタ26は、ポリマー層36の膜28の側と反対側の頂面に配置されている。
【0058】
基板22と、アノード電流コレクタ24と、カソード電流コレクタ26と、第2触媒層14bと、第1触媒層14aと、3つのチャネル32a、32b及び32cとは、図3A及びBを参照して説明したのと同様のものである。この微小燃料電池20dと類似する例では、図3B及び3Cで説明したような触媒層を設けてもよいことに留意されたい。
【0059】
ポリマー層36は、図2に説明したポリマー層16と同様のものである。ポリマー層36は、図2を参照にて説明したのと同じポリマーとすることができ、また同じ寸法にすることができる。また、ポリマー層の寸法は、微小燃料電池20dの全体寸法及び膜28の寸法により一部制限される。
【0060】
ここまで微小燃料電池20a、20b、20c及び20dを有する構造体10を一般的に説明してきた。以下では微小燃料電池20aを製造するための代表的な例を説明するが、この例は、微小燃料電池20b、20c及び20dの製造に拡張して適用することができる。明確化のために、図4A〜4Hには一部の製造工程が含まれていないことに留意されたい。このように、以下の製造工程は、微小燃料電池20aを製造するのに必要な全てのステップを含む網羅的なものとすることを意図するものではない。また、この製造工程は柔軟なものである。即ち、この製造工程は、図4A〜4Hに示すのと異なる順序で実施することもできるし、又は幾つかの工程を同時に実施することもできるからである。
【0061】
明確化のために、図4A〜4Hには一部の製造工程が含まれていないことに留意されたい。このように、以下の製造工程は、微小燃料電池20aを製造するのに必要な全てのステップを含む網羅的なものとすることを意図するものではない。また、この製造工程は柔軟なものである。即ち、この製造工程は、図4A〜4Hに示すのと異なる順序で実施することもできるし、又は幾つかの工程を同時に実施することもできるからである。
【0062】
図4Aは、基板22を示しており、この基板22上にはアノード電流コレクタ24が配置されている。図4Bは、これら基板22及びアノード電流コレクタ24上に犠牲材料層42を形成する工程を示す。この犠牲ポリマー層42は、例えば、スピンコーティング、ドクターブレーディング、スパッタリング、ラミネーション、スクリーン若しくはステンシル印刷、溶融ディスペンシング、CVD、MOCVD又はプラズマ堆積システム或いはこれらの任意の組合わせのような技術を用いて、基板10上に堆積させることができる。更に、この犠牲材料層42の一部を除去してアノード電流コレクタ24を露出させるためのマスク38を、当該犠牲材質層42上に配置する。図4Cは、犠牲材料層42の一部を除去して犠牲部44a、44b及び44cを形成する工程を示す。
【0063】
図4Dは、これら犠牲部44a、44b及び44c上に第1多孔性触媒層14aを形成する工程を示す。この第1多孔性触媒層14aは、スパッタリング、蒸着、噴霧法、印刷、化学気相堆積及びこれらの組合せにより形成することができる。
【0064】
図4Eは、この多孔性触媒層14aと、これら犠牲部44a、44b及び44cと、アノード電流コレクタ24との上に膜層28を形成する工程を示す。この膜28は、スピンコーティング、プラズマ加速化学気相堆積(PECVD)、化学気相堆積、スパッタリング、蒸着、レーザアブレーション堆積及びこれらの組合せを用いて形成することができるが、これに限定されるものではない。この膜28の形成温度は、約25〜400℃、約50〜200℃又は約100〜150℃とすべきである。この温度は、その他の材料が安定である範囲に制限されることに留意されたい(例えば分解温度)。
【0065】
図4Fは、犠牲部44a、44b及び44cを除去してチャネル32a、32b及び32cを形成する工程を示す。これら犠牲部44a、44b及び44cは、熱分解、マイクロ波照射、UV/可視光照射、プラズマ露出及びこれらの組合せを用いることにより除去することができる。これら犠牲部44a、44b及び44cは、図4Gや図4Hに示される工程の後など、製造工程中の異なる工程において除去しうることに留意されたい。
【0066】
図4Gは、チャネル32a、32b及び32cの上方に第2多孔性触媒層14bを形成する工程を示す。この第2多孔性触媒層14bは、スパッタリング、蒸着、噴霧法、印刷、化学気相堆積及びこれらの組合せにより形成することができる。
【0067】
図4Hは、この第2多孔性触媒層14b及び膜28上にカソード電流コレクタ26を形成する工程を示す。
【0068】
前述したように、図2及び図3Dに示すようなポリマー層を追加するための工程を、図4F及び図4Gに示す工程間に追加して、このポリマー層上に第2多孔性触媒層及びカソード電流コレクタを形成することができる。このポリマー層は、スピンコーティング、ドクターブレーディング、スパッタリング、ラミネーション、スクリーン若しくはステンシル印刷、溶融ディスペンシング、CVD、MOCVD又はプラズマ堆積システムのような技術により形成することができる。また、第1多孔性触媒層14aを設ける工程を省略して、図3Cに示した微小燃料電池20cを形成することもできる。更に、膜層を形成する幾つか前の工程において、(図3B及び図3Cの)触媒層34を配置することもできる。
【0069】
実施例1
微細形成燃料電池を、集積回路の製造に一般的に用いられている多くの処理を利用してシリコン集積回路ウェーハ上に構成し構造化した。このような処理には、スパッタリング、ポリマースピンコーティング、反応性イオンエッチング及びホトリソグラフ処理がある。プロトン交換膜(PEM)は、二酸化ケイ素を低温プラズマ加速化学気相堆積(PECVD)させて形成した。燃料送出チャネルは、パターン化した犠牲ポリマー層を使用してPEM及びアノード触媒の下に形成した。プラチナ−ルテニウム触媒を直流(DC)スパッタリングにより堆積した。酸化膜の抵抗は従来の高分子電解質膜(例えばナフィオン(商標名))より高いが、より薄肉のものとした。
【0070】
実験方法
この微小燃料電池の構成及び製造は、アノード用の燃料送出チャネルを形成するのに犠牲ポリマーを用いる技術に基づくものである。この犠牲ポリマー(Unity2000P(オハイオ州ブレックスヴィルにあるPromerus社))は、紫外線に曝して露出領域を熱分解させることによりパターン化した。これらパターン化した部分に、順次の形成処理で膜及び電極を被覆した。この製造工程の最終工程は、前記Unityのパターン化した部分を熱分解して、カプセル化された微小チャネルを残すものである(例えば図4A〜図4Hに示す処理と同様の工程)。このUnityの熱分解は、リントベルク管状炉に一様に窒素を流して行った。最終的な分解温度及び時間は、それぞれ約170℃及び約1.5時間とした。この微小燃料電池の製造工程は、PEMとして作用するカプセル化材料を堆積させる前及び後に、触媒電極及び電流コレクタを堆積させる処理を有するものとした。並列な微小チャネルのアレイ上に形成した装置の線図的断面図を図3Aに示す。
【0071】
カプセル化材料及びPEMとして二酸化ケイ素を使した。SiO2の堆積は、Plasma−Therm PECVDシステム(フロリダ州サンクトペテルスブルグのPlasma−Therm社)により60〜200℃の温度で行った。反応ガスは、シラン及び亜酸化窒素としてこれらN2O:SiH4の比率を2.25とし、動作圧は600mTorrとした。60〜75分の時間に亘り堆積を行うことで、Alpha−Step表面プロファイルメータ(カリフォルニア州サンノゼのKLA−Tencor社)で測定すると2.4〜3.4μmの膜厚が得られた。
【0072】
触媒層は、CVC DC スパッタリング装置(ニューヨーク州ロチェスターのCVC Products社)を使用してスパッタリング堆積させた。ソースターゲットとして、原子比50:50のプラチナ/ルテニウムターゲット(ニューヨーク州ブルースターのWilliams Thin−Film Products社)を使用した。図5は、スパッタリング堆積した膜が、等量の2種の金属を有することを確認するX線光電子分光(XPS)走査の結果を示すものである。犠牲ポリマー上に約50〜200Åの平均厚さを有する多孔質薄膜を堆積し、その後これを膜で被覆してアノード触媒として作用させた。更に、Pt/Ruの約600Åの厚肉層を、アノード微小チャネルの膜の側と反対側の底部に堆積させ、追加触媒及び電流コレクタとして作用させた。この追加触媒は、特に酸性メタノールを使用した場合に、微小チャネル燃料電池のパフォーマンスを改善するものであった。
【0073】
また、多孔性触媒カソードは、PEMの頂部即ち外側にPt又はPt/Ruをスパッタリングすることにより製造した。但し、あるサンプルのカソードは、ナフィオン中に炭素担持Ptを調製した触媒インクをPEM上に印刷し、その後、金の多孔質電流コレクタを被覆することにより形成した。この厚膜にする手法により、PEMのカソード側の触媒ローディング及びパフォーマンスが増大した。このことは、律速段階からカソードでの酸素還元を排除することによりアノードのパフォーマンスを研究するのに特に有用であった。
【0074】
インピーダンス分光分析(IS)及び線形ボルタモグラムを含む全ての電気化学的測定は、PerkinElner PARSTAT 2263(ニュージャージー州プリンストンのEG&G)の電気化学システムを用いて行った。線形掃引ボルタンメトリおける走査速度は、1mV/sとした。イオン伝導度は、実際の電池の場合と同様に、SiO2薄膜をアルミニウム被覆基板上へ堆積させ水銀プローブに接触させてインピーダンス分光分析により測定した。インピーダンス測定を行う周波数範囲は、100mHz〜1MHzとし、AC信号の振幅は10mVとした。SiO2のPEM下に燃料送出チャネルとスパッタリングされた触媒とを具える半電池装置を製造した。カソードの代わりに、エポキシを用いて装置の頂部にウエルを形成し1Mの硫酸溶液で充填した。飽和カロメル電極(SCE)及びPtワイヤをこの硫酸溶液中に配置し、それぞれ参照電極及び対向電極として測定を行った。PHD 2000 Programmable Syringe Pump(マサチューセッツ州ホリストンのHarvard Apparatus社)により液体燃料を供給し流速を制御した。水素は、加圧タンクの超高純度ガスから供給し加湿のためにハブラを通過させた。
【0075】
結果及び考察
集積回路製造技術に共通する多くの材料及び工程を用いた微細形成燃料電池の製造に成功した。この微小燃料電池のパフォーマンスを、半電池及び完全な電池を含む異なる特徴の電池について異なる燃料及び温度を用いて測定した。この目的は、加工条件に応じて燃料電池の個々の構成部材(例えばアノード、カソード及びPEM)を調査することにある。
【0076】
スパッタリングした触媒層に関して触媒活性の他に望ましい基本性質は、気孔率及び導電率であった。膜と接触する触媒は多孔性にして、酸化中に発生したプロトンがPEMと接触して、カソードまで通過するようにする必要がある。アノード触媒において発生する電子には、金属の電流コレクタまでの経路が必要となる。種々の量のPtを、絶縁体の両側に2つのパターン化した固体電極を有する基板上へスパッタリングした。これら電極間のスペースを跨いでのPt層のシート抵抗を測定した。図6は、スパッタリングされたPt薄膜の抵抗測定値(Ω/□)と、その厚さの平滑で連続的な膜に対する計算値とを厚さの関数として示す。約300Åより上の値では、測定値と予測値とが一致しており、このことは、膜が連続的なものであったことを示している。約150Åより低い値では、厚さの減少により抵抗が劇的に増大した。これは、所望する多孔性で不連続な膜であることか意味する。Unityの犠牲ポリマー表面をRIE処理により荒らすことにより、固体層を形成する前にスパッタリングしうる金属の量が増大した。この作業では、荒くしたUnity犠牲ポリマー上の多孔質伝導層として、約50〜200Åの平均厚さを有するPt/Ru層を使用した。
【0077】
SiO2を堆積させる前にPt/Ruの頂部にチタン接着層を堆積させた。接着に必要なTiの量は最小になようにした。スパッタリングした電極においてSiO2とPt/Ruとの間に約45Å(平均厚さ)のTiを堆積した。
【0078】
Unityの犠牲ポリマーを堆積しパターン化する前に、約600Å即ち約100μg/cm2のPt/Ruをスパッタリングすることにより、基板上に比較的中実な(非多孔性の)層が得られ、これにより伝導検体(例えば酸性メタノール)が利用しうる電池内のアノード触媒の総量が増大した。これにより、水素による場合のパフォーマンスもある程度改善された。微小チャネルの底部にPt/Ru固体層を具えるよう製造した電池の全結果をここに説明する。
【0079】
このプロトン交換膜の条件は、従来のPEM(例えばナフィオン)とは異なっているが、それは、微細形成燃料電池に必要とされる機械的特性及び厚さのためである。ここでのSiO2は、独立型の膜として作用することが示されている。SiO2膜をPECVDによって堆積し、インピーダンス分光分析によりイオン伝導度を室温で測定した。図7は、堆積温度と二酸化ケイ素のイオン伝導度との関係を示すグラフである。堆積温度が低くなると、シロノール濃度が高くなると共に密度が低くなるため伝導率が増加した。この薄膜の伝導率は、ナフィオンのような一般的に用いられる他のPEMよりも大幅に低いが、他の燃料電池膜より極めて薄肉でもあった。押出成形されたナフィオン膜(1100重量当量)の面積抵抗は、0.1〜0.35Ωcm2である。100℃で堆積した厚さ3μmのSiO2膜の面積抵抗は、室温において1200Ωcm2である。このように抵抗が比較的高いことにより、高電流での電池電圧が低減される。これら装置に使用したSiO2膜は、アノード及びカソードの触媒ローディングといった他のパラメータを調査するのに十分なものであった。これらは、本研究に使用した低電流装置に対して充分なものであるが、将来は改良したSiO2PEMについて研究報告を行う予定である。
【0080】
半電池装置を製造して、種々の燃料を用いてアノードのパフォーマンスを評価する試験を行い、完全な電池による試験と比較した。図8及び9は、水素及びメタノールのそれぞれに関する半電池の試験結果を示す。Pt/Ruの固体層は、犠牲ポリマーをパターン化する前であってパターン化部分頂部の多孔質層を膜と接触させる前に堆積した。膜表面における触媒重量は、17μg/cm2とした。
【0081】
水素は、加圧タンクの超高純度ガスから供給し加湿のためにハブラを通過させた。図8は、入口圧力を1〜4psig(15.7〜18.7psia(1psia=6894.76 Pa))とした場合の結果を示す。半電池の電流密度は、加湿した水素の分圧に従って変化している。これは、パフォーマンスが主にアノードでの触媒化学反応速度論により規定されること、すなわち水素分圧に比例することを示す。アノード触媒の活性を改善することにより電流密度を更に向上させることができる。
【0082】
水中のメタノール濃度は1Mとした。酸性メタノール混合物は、1Mのメタノールと1Mの硫酸とを含むものとした。図9は、メタノール及び酸性メタノールに関する半電池の分極曲線を示す。燃料に硫酸を加えることにより、溶液がプロトンに対して伝導性になった。酸性メタノール溶液の伝導性のために、活性表面領域がより大きくなり電流密度が改善された。膜と接触していないチャネル壁部に堆積したPt/Ru触媒を用いることで、メタノールの酸化量が増大した。酸性メタノール燃料の流速を増すことにより、電流密度及び開路電位が改善される。低い流速においてパフォーマンスが損なわれる主要因は、微小チャネルから押し出す必要がある二酸化炭素の気泡がアノードに形成されてしまう為と思われる。0.25(V vs.SCE)で観察される電流密度(1mL/hr及び5mL/hrに対してそれぞれ2mA/cm2及び7mA/cm2)から、CO2ガスの気泡が発生して触媒部位を覆ってしまい、更に微小チャネルの底部からPEMまでの燃料を通るプロトンの伝導度が制限されるおそれがあることが分かる。
【0083】
完全な微細形成した電池を製造して、開路電位からの線形ボルタンメトリにより1mV/秒の走査速度で試験を行った。表1は、ここに提案した5組の電池間における製造工程の相違を対比して、これら電源装置の電池のパフォーマンスに影響を及ぼす主要なパラメータ(アノード及びカソード構造)を示すものである。
【0084】
【表1】
【0085】
図10は、サンプルAの電池に関する分極曲線(上方)及び電力曲線(下方)を示す。このサンプルAでは、アノード及びカソードの双方に31μg/cm2の触媒をスパッタリングにより設けた。燃料として作用する入口圧力1psigの加湿された水素と、空気からの酸素とは、カソードにおいて還元された。60℃におけるパフォーマンスは、測定された出力密度のピークが4μW/cm2であり周囲温度条件の場合の約4倍を越えるものであった。図7に示される水素で動作するアノード半電池の結果と比較して、カソード上に触媒をスパッタリングしたこれら装置の電流密度が低いことは、これら装置のパフォーマンスが空気陰極の触媒活性により制限されることを示している。このことは、カソードにおいて周囲の酸素を還元させると、加圧した水素をアノードで使用する場合にパフォーマンスが制限されるおそれがあるという予想に合致する。
【0086】
厚膜インキ触媒を、空気吸入カソード上へ被着させ触媒面積及び触媒活性を改善した。膜の上部に印刷した触媒インクを用いると、カソードの触媒ローディングが増加するため完全な電池のパフォーマンスが著しく増大した。カソードにおける酸素の還元が著しく改善されるため、もはや制限的な電極ではなくなった。厚膜カソードを有する電池のパフォーマンスは、アノードの組成の関数となった。
【0087】
図11は、周囲温度、40℃及び60℃におけるサンプルBに関する分極曲線(上方)及び出力曲線(下方)を示す。このサンプルBは、サンプルAと同様の膜及びアノードを有するが、カソードに触媒インク及び金の多孔質電流コレクタを使用した。入口圧力1psigの水素を燃料とし、カソードは空気吸入性にした。室温での分極曲線は、図7の水素半電池の結果に極めて類似した電流密度を示している。サンプルBのパフォーマンスは、0.23V及び60℃におけるピーク出力密度が42μW/cm2であり、サンプルAの場合より約1桁大きくなった。これらの2つの結果は、カソードにスパッタリングした触媒を用いる代わりに印刷した触媒を使用すると、アノードがサンプルのパフォーマンスを規定することを示している。
【0088】
温度依存性があるため、高温でより大きな電力出力を得ることができた。燃料電池においては廃熱が発生するが、これらの装置の寸法及び発生する電力量から、高温で操作するのに十分な熱を保持し得ないことが示唆される。総合燃料電池であれば、電池を組み込んだ回路(又は他の電子装置)から放出される熱をある程度使用しうる場合がある。
【0089】
アノードの触媒活性及び表面積を改善することにより、更に電流及び出力密度を高くすることができる。触媒ローディングを増大させることによりアノードのパフォーマンスが改善された。図12は、アノードにスパッタリングした触媒の量が異なる3つのサンプルに関する室温での分極曲線(上方)及び電力曲線(下方)を示す。入口圧力1psigの水素を燃料とし、厚膜カソードは空気吸入性にした。各サンプルの微小チャネルの底部には約100μg/cm2のPt/Ru固体層を堆積した。膜表面においてサンプルBは17μg/cm2のPt/Ruを有し、サンプルCは34μg/cm2のPt/Ruを有するようにした。
【0090】
サンプルCは、膜にサンプルBの2倍のPt/Ruをスパッタリングしてあるが、このサンプルBに対するパフォーマンスの改善は50%に満たなかった。Pt/Ruのスパッタリング量を2倍にすることは、触媒の表面積を2倍にすることにはならない。なぜなら、堆積された島部がより大きくなって、より連続的な(より多孔性でない)膜が形成されるためである。
【0091】
電極のパフォーマンスを改善するためには、触媒の表面積、特に電解質と直接接触する触媒量を増大させる必要がある。SiO2電解質の薄層であれば、PECVDにより堆積されるので、2つの触媒堆積部の間に堆積させることができる。
サンプルDは、パターン化した犠牲ポリマー上にサンプルCと同じ34μg/cm2の触媒層を堆積させて、その後400ÅのSiO2を堆積させ、更に8.5μg/cm2の追加触媒層を堆積させた後に、より厚肉のSiO2PEM層を堆積させたものである。スパッタリングされた第2のPt/Ru層がSiO2に埋め込まれることにより、触媒/電解質の接触面積が増大した。サンプルDは膜のPt/Ruを25%多くしただけであるが、このサンプルDの室温におけるピーク出力密度は、サンプルCの4倍を超えるものとなった。電流密度及び出力密度がこのように著しく改善されるのは、触媒の総重量が増加したというだけでなく、SiO2埋め込みPt/Ru層により膜/触媒の接触がより多くなったためである。2層のPt/Ru薄層及びそれらの間にある少量のSiO2は、プロトン及び電子の双方に対して伝導性の触媒及び電解質の混合マトリックスを形成し、触媒の全表面積、特に電解質と接触する領域を増大させる。
【0092】
水素燃料電池のパフォーマンスを時間の関数として調べ、線形ボルタンメトリにより収集したデータが定電位における定常値と一致するかどうかを確かめた。図13は、10分間定電位に保持した場合のサンプルDの電流密度を示す。このデータは、図14に示すように、1mV/sの線形掃引により収集した値に極めて近いほぼ一定したパフォーマンスを示している。異なる装置を用いてより長時間、例えば数時間にわたり行った試験も同様の結果を示した。SiO2膜は、ナフィオン膜のように水で膨潤せず、乾燥によるパフォーマンスの低下といった時間による変化の影響を受けにくい。
【0093】
図15は、厚膜カソードを有する微小チャネルの完全な電池であるサンプルEについて、酸性メタノール溶液を用いて1mL/時間の流速で室温において動作させた場合の分極曲線及び出力曲線を示す。メタノールを酸化させるのに膜にある多孔性Pt/Ruの他に微小チャネル底部の固体触媒層が利用されるが、これは燃料溶液がプロトンを伝導するためである。燃料として水素を用いた場合より開路電位は低くなっているが、ピーク電流及び出力密度は、水素を用いた同じ装置より極めて高くなっている。
【0094】
これらの実験により、微細形成燃料電池のパフォーマンスを更に向上させるのに用いられるある傾向が示された。微小チャネルの底部に触媒を追加することは、伝導性の燃料を用いる場合に有効な技術である。また、複数のSiO2埋め込み層を使用して気孔率を維持しながら膜の触媒量を増大させることで、電流密度を増大させうることが示された。
【0095】
本研究による追加領域により、アノード面積の増大といった電極に対する改善効果や、特には伝導率である膜の特性に対する改善効果も得られる。SiO2の厚さを減らせばPEMの抵抗が低減するが、アノードの微小チャネル内の燃料圧力により燃料電池が破損されるのを防ぐために機械的強度を維持する必要はある。
【0096】
結論
犠牲ポリマーに基づく微小チャネル及びSiO2薄膜を用いた微小燃料電池の製造及び試験に成功した。低温PECVDによる二酸化ケイ素膜は、薄膜集積装置に用いうることを示すものである。堆積温度を低下させることにより、この研究で用いられる電極により得られる電流密度に対して許容されるレベルまで膜の伝導率が増大した。
【0097】
触媒のスパッタリング工程とSiO2の堆積工程とを繰り返して触媒マトリックスを形成することにより、触媒及び膜触媒の接触面積が増大した電極が得られる。酸性メタノールのような伝導性の検体を使用すれば、膜と接触していない追加的な触媒を利用することができる。
【0098】
実施例2
集積回路の製造に一般的に用いられている多くの処理を用いて、シリコン集積回路ウェーハ上に微細形成燃料電池を構成し構造化した。このような処理には、スパッタリング、ポリマースピンコーティング、反応性イオンエッチング及びホトリソグラフ処理がある。これらの薄膜燃料電池に使用するプロトン交換膜として、リンをドープした二酸化ケイ素について研究を行った。リンをドープした二酸化ケイ素は、プラズマ加速化学蒸着(PECVD)により堆積する。このようなリンをドープした二酸化ケイ素のイオン伝導度は、微細形成電池において先程使用した低温堆積SiO2より2桁以上大きい。厚さが6μmで抵抗が100kΩの膜は、60Ωcm2の面積抵抗を有し、この値はナフィオン117上に厚さ175μmの厚膜を堆積させたものより好ましい。微細形成された燃料電池にリンをドープしたSiO2を使用することにより、ドープしていない二酸化ケイ素を用いた従来の電池を上回る改善されたパフォーマンスが得られた。
【0099】
実験方法
この微細形成燃料電池の線図的断面は、図3Aに示すものと類似している。薄膜燃料電池を製造するのに使用する材料及び工程については既に説明した。微細チャネルを形成するために、犠牲ポリマーとしてUnity2000P(オハイオ州ブレックスヴィルのPromerus社)を使用した。触媒層は、CVC DCスパッタリング装置(ニューヨーク州ロチェスターのCVC Products社)を使用してスパッタリング堆積した。ソースターゲットとして、原子比50:50のプラチナ/ルテニウムターゲット(ニューヨーク州ブルースターのWilliams Thin-Film Products社)を使用した。
【0100】
SiO2の堆積は、PECVDシステムにおいて約75〜250℃の温度で行った。反応ガスは、シラン及び亜酸化窒素とし、動作圧は約600mTorrとした。リンをドープした二酸化ケイ素(P−SiO2)は、標準のシランガス(Heの5.0%のSiH4)に代えて、ヘリウムキャリアガス中に0.3%ホスフィン及び5.0%シランの混合ガスを用いることにより堆積した。代表的には、PH3/SiH4対N2O(又はSiH4対N20)の流速比を2.25とし、動作温度を100℃とした。これらの値について、他のパラメータを同じにしておき1回につき1つのパラメータを変化させた。基板上の選択領域への堆積を防止するための物理的マスクを使用して、Alpha−Step表面プロファイルメータ(カリフォルニア州サンノゼのKLA−Tencor社)を用いて膜厚を測定した。従来の燃料電池装置に用いられていたドープしていないSiO2PEM層(これらによるデータの一部を比較のために示す)の堆積を、Plasma−Therm PECVDシステム(フロリダ州サンクトペテルスブルグPlasma−Therm社)を用いて100℃で他のパラメータを同じにして行った。
【0101】
フーリエ変換赤外線分光分析(FTIR)を、Nicoletモデル560及びOmnicソフトウェアを使用して行った。インピーダンス分光分析(IS)及び線形ボルタモグラムを含む全ての電気化学的測定は、PerkinEkner PARSTAT 2263(ニュージャージー州プリンストンのEG&G)電気化学システムを用いて行った。線形掃引ボルタンメトリの走査速度は1mV/sとした。水素は、加圧タンクの超高純度ガスから加湿のためにハブラを通過させ細管を通じてアノード微小チャネルに供給した。イオン伝導度は、実際の電池の場合と同様に、SiO2薄膜をアルミニウム被覆基板上へ堆積させ、水銀プローブに接触させることによりインピーダンス分光分析を用いて測定した。インピーダンス測定を行う周波数範囲は100mHz〜1MHzとし、AC信号の振幅は10mVとした。
【0102】
結果及び考察
アルミニウム被覆ガラススライド上に、SiO2膜及びリンをドープしたSiO2(P−SiO2)膜を、1.4〜1.5μmの厚さに堆積した。このアルミニウム被覆基板上のP−SiO2薄膜のイオン伝導度を、インピーダンス分光分析(IS)を用いて測定した。図16及び17は、伝導率に対する2つのパラメータ、即ち温度及びガス比の影響を示す。図16のデータは、ガス流速のみを変化させて、400Wの出力で100℃で堆積させたサンプルから得られたものでる。PH3/SiH4に対するN2Oの比率を、標準の2.25から1〜0.5まで低下させることにより、伝導度は上記比率が僅かに0.5となるまで増大した。
【0103】
図17は、P−SiO2の伝導率は元のSiO2膜のように堆積温度に依存しないことを示している。これらの膜は、標準のガス比2.25で出力を400Wとして堆積した。このことは、P−SiO2のイオン伝導度は、温度を低下させたことによるシラノール濃度の増加ではなく、リンにより改善されたことの明確な根拠となる。リンの量は、堆積温度によって著しく変化しない。PPC犠牲ポリマーの分解温度が低いため、燃料電池装置のP−SiO2の堆積には引き続き100℃の温度を使用する。
【0104】
P−SiO2膜の伝導率は、ドープしてないSiO2と比べて著しく増大しているが、ナフィオンのような一般的に用いられる他のPEMよりも低く維持されている。但し、これらは他の燃料電池膜より極めて薄肉である。押出し成形されたナフィオン膜(1100重量当量)の面積抵抗は、0.1〜0.35Ωcm2(15)である。100℃で堆積した3μmのP−SiO2厚膜の面積抵抗は、室温で30Ωcm2である。抵抗が比較的高いことにより、高電流での電池電圧が低減される。
【0105】
微細形成燃料電池のPEMとしてP−SiO2薄膜を使用してドープしてないSiO2膜と比較した。この場合もPECVDチャンバの堆積温度は100℃とした。種々の製造方法の場合についてイオン伝導度の測定試験を行ったが、幾つかのガス比の場合における膜の機械的強度は、標準的なSiO2の製造方法のものよりも劣っていた。このため、最初のリンをドーピングした燃料電池装置では、標準的な製造方法を用いてシランをホスフィン−シランガスに代えるだけとした。しかし、これら膜は、従来のSiO2膜ほど強くなく、より厚肉に堆積する必要があった。
【0106】
前述した工程を利用して完全な微細形成電池を製造し、線形ボルタンメトリにより開路電位から1mV/秒の走査速度で試験した。装置のPEMとして6μmの厚さのドープしたP−SiO2を使用することに成功した。図18は、膜表面に150ÅのPt/Ruを設け且つ厚膜カソードとした電池(U−56)の分極曲線及び出力曲線を示す。入口圧力1psigの水素を燃料として作用させ、カソードは空気吸入性にした。結果を、前述した二重触媒層のサンプル(04−28)である250ÅのPt/Ruによる結果と共にプロットした。720mVの開路電位は約70mV高いものであった。これは、おそらくPEMがより厚肉であるためで、このことが燃料通過及び電気分離に対して好ましい影響を与えた。イオン伝導度がドープしていないSiO2より高かったため、より厚肉の膜により電流密度が減少したようには思われない。ドープしたサンプルは触媒を全体に有するものでなく、表面の一部に堆積させたものであるにも拘わらず、ピーク出力密度は36μW/cm2であり他のサンプルより約40%大きかった。双方のサンプルのピーク出力密度は、約1mA/cm2で得られたが、この電流におけるドープしたサンプルの電圧は約100mVであった。
【0107】
結論
SiO2にリンを添加することにより、これをPEMとして使用した場合に膜のイオン伝導度が増大し、微細形成燃料電池の全体的なパフォーマンスが改善されることが示された。ホスフィンガスを追加することを除いて従来使用されてきたSiO2膜と同じ処理条件で堆積したP−SiO2膜の伝導率は、ドープしてない低温SiO2膜の約50倍の大きさであった。伝導率がこのように増加するため、プロトン移動に対する抵抗をなお低くしながら、装置の機械的強度を改善するためにより厚肉のPEM層を堆積させることができる。このようなより厚肉の膜によれば開路電位も改善され、全体的なパフォーマンスがより良好になる。P−SiO2サンプルのパフォーマンスは、良好なアノードを有するサンプルを含む全てのドープしてないSiO2サンプルよりも向上されたものとなった。P−SiO2は、これら装置に対して好ましい薄膜PEM材料であることが分かった。
【0108】
上述した実施例は、本発明の単なる実施可能な例であり、本発明の原理を明瞭に理解するために記載されたものであることを強調しておく。本発明の原理及び精神を逸脱することなく、上記の実施例に対して多くの変型及び修正を加えることができる。このような全ての修正及び変更は、本発明の範囲内に含まれるもので特許請求の範囲により保護されることを意図するものである。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】図1は、代表的な燃料電池膜の線図的断面図である。
【図2】図2は、他の代表的な燃料電池膜の線図的断面図である。
【図3】図3A〜3Dは、微小燃料電池の4つの例を示す線図である。
【図4】図4A〜4Hは、図3Aに示される微小燃料電池の代表的な製造方法を示す線図的断面図である。
【図5】図5は、スパッタリングされたプラチナ/ルテニウム(Pt/Ru)のXPS走査線図である。
【図6】図6は、スパッタリングされたプラチナ膜の抵抗の測定値及び計算値をプロットしたグラフである。
【図7】図7は、インピーダンス分光分析により測定したSiO2膜のイオン伝導度をプロットしたグラフである。
【図8】図8は、加湿した水素を用いた場合の微小チャネルの半電池パフォーマンスをプロットしたグラフである。
【図9】図9は、それぞれメタノール−水溶液及び酸性メタノール−水溶液を用いた場合の微小チャネル半電池のパフォーマンスをプロットしたグラフである。
【図10】図10は、スパッタリングされたアノード及びカソードを有する微小燃料電池のパフォーマンスをプロットしたグラフである。
【図11】図11は、様々な温度におけるサンプルBの微小燃料電池のパフォーマンスをプロットしたグラフである。
【図12】図12は、スパッタリングしたアノード触媒の量がそれぞれ異なるサンプルB、C及びDの微小燃料電池の環境温度におけるパフォーマンスをプロットしたグラフである。
【図13】図13は、約10分間に亘り定電位に保持した埋め込み触媒サンプルの電流密度をプロットしたグラフである。
【図14】図14は、サンプルDについて室温で加湿した水素を用いた場合の線形ボルタンメトリ分極データ及び(10分における)定常状態のデータを比較してプロットした線図である。
【図15】図15は、1mL/hrで1.0Mの酸性メタノールを用いた場合の微小チャネル燃料電池のパフォーマンスをプロットしたグラフである。
【図16】図16は、P−SiO2膜の伝導度をガス比の関数としてプロットしたグラフである。
【図17】図17は、P−SiO2膜の伝導率を堆積温度の関数としてプロットしたグラフである。
【図18】図18は、リンをドープしたSiO2及びドープしてないSiO2のサンプルの室温における分極曲線及び出力曲線をプロットしたグラフである。
【技術分野】
【0001】
関連する出願に基づく優先権の主張
本出願は、2004年2月19日に出願した同時係属の米国仮特許出願第60/545,772号(発明の名称「Thin-Film Membranes For Fuel Cells」に基づく優先権を主張するものである。本願明細書中には、上記出願の内容の全体を参考として組み込んでいる。
【0002】
連邦政府の後援による研究又は開発であることの宣誓
米国政府は、この発明の一括払いライセンスを有するものとし、所定の状況では、米国政府のDARPA(グラント#F33615−01−1−2173)により定められるMDA条項に基づき、特許権者に対して他者へ合理的な期間に亘るライセンス契約を締結するよう求めることができる。
【0003】
技術分野
本発明は、広くは燃料電池に関連するものであり、より詳細には、燃料電池膜及び微小燃料電池、並びに燃料電池膜及び微小燃料電池の製造方法に関するものである。
【0004】
背景
移動通信用装置、マイクロセンサ、微小電気機械システム(MEMS)及びマイクロフルイディスク装置といった携帯型電子装置は、エネルギ貯蔵技術の進歩による恩恵を受ける。エネルギ密度がより高く価格の安い電源が利用可能になることにより、用途及び機能をより幅広いものとすることができる。考えられる高エネルギ密度の電源の一つが燃料電池である。
【0005】
所要電力が小さい電子装置のために、燃料電池を含む微小形成電源の研究が進められている。考慮すべき問題として、寸法及び重量を低減させることや、相互接続をより少なくして信号整合性を改善することや、処理効率を増大させることや、費用を安価にすることが挙げられる。
【0006】
このような装置用微小燃料電池の燃料には、水素、メタノール及びその他の炭化水素(例えばエチレングリコール又は蟻酸)がある。水素燃料電池及び直接反応方式燃料電池(DMFC)は、比較的低温(例えば周囲温度〜120℃)で動作する。これらの燃料電池は、アノードからカソードまでプロトンを移送するために固体プロトン交換膜(PEM)を使用している。水素は、加圧ガスとして、又は金属水素化物の形態で貯蔵しておくことができる。この場合、膜の伝導率を高めるために加湿を行う必要がある。
【0007】
メタノール−水混合物は、アノードにおいて液体又は蒸気のいずれの形態でも酸化させることもできる。メタノールは、液体として貯蔵することができ、安価であり、比エネルギーが高いため魅力的な燃料である。液体供給型DMFCは、他の燃料電池システムと比べて比較的簡単なもので容易に小型化することができる。その理由は、このようなDMFCは、燃料改質器を必要せず、複雑な加湿器又は熱管理システムを要しないからである。また、メタノールは、リチウムポリマー電池及びリチウムイオンポリマー電池と比べて高いエネルギ密度を有する。
【0008】
プロトン交換膜は、水素又はメタノールのいずれにより動作する低温燃料電池にも使用することができる。従来の燃料電池における固体プロトン交換膜は、たいていナフィオン(商標名)のような非スルホン酸部分で終端する側鎖を有する過フッ素化重合体である。PEM燃料電池の膜は、一般に伝導率を高く保つために水を含むようにする。メタノールが膜を通過してしまうと、混成電位が発生して酸素還元反応の作用が損なわれ、パフォーマンスが悪くなってしまう。従って、当該技術分野では上述した欠点の少なくとも幾つかを解消する必要がある。
【0009】
発明の概要
簡単に説明すると、本明細書には、燃料電池、燃料電池膜、微小燃料電池及びこれら各々の製造方法が記載されている。この中で特に代表的な燃料電池は、有機伝導材料や無機伝導材料やこれらの組合せといった材料を具える膜を有する。膜の厚さは約0.01〜10μmであり、面積抵抗は約0.1〜1000Ωcm2である。
【0010】
特に代表的な微小燃料電池は、アノード電流コレクタの配置された基板と、このアノード電流コレクタ上に配置された膜であって、この膜が、二酸化ケイ素、ドープした二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物及びこれらの組合せから選択した材料を含んでおり、この膜の厚さが約0.01〜10μmであり、この膜の面積抵抗が約0.1〜1000Ωcm2である当該膜と、前記基板の一部と前記膜の一部とにより実質的に画成される中空チャンネルであって、少なくとも1層の触媒層がチャネルに露出されており、前記アノード電流コレクタが、前記チャネルに隣接して配置されている当該中空チャネルと、前記膜の、前記基板の側と反対側に配置されたカソード電流コレクタとを有する微小燃料電池であって、前記触媒層及び前記アノード電流コレクタ間に導電経路が存在している燃料電池。
【0011】
微小燃料電池の製造方法も提供する。特に代表的な微小燃料電池の製造方法は、アノード電流コレクタが配置された基板を設ける工程と、前記基板及び前記アノード電流コレクタ上へ犠牲ポリマー層を配置する工程と、前記アノード電流コレクタ上に配置されてない部分の犠牲材料を除去し、犠牲材料部を形成する工程と、この犠牲材料部上に第1多孔性触媒層を配置する工程と、前記犠牲材料部と前記第1多孔性触媒層と前記アノード電流コレクタとの上に膜材料の層を配置する工程と、前記犠牲材料部を除去して、前記基板と、前記膜材料と、前記第1多孔性触媒層とにより実質的に画成される中空チャンネルを形成する工程とを有する。前記膜材料には、二酸化ケイ素、ドープした二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物及びこれらの組合せから選択した材料を含まれる。
【0012】
他の特に代表的な製造方法は、アノード電流コレクタが配置された基板を設ける工程と、前記基板及び前記アノード電流コレクタ上へ犠牲ポリマー層を配置する工程と、前記アノード電流コレクタ上に配置されてない部分の犠牲ポリマー材料を除去し、犠牲材料部を形成する工程と、この犠牲材料部上に第1多孔性触媒層を配置する工程と、前記犠牲材料部と、前記第1多孔性触媒層と、前記アノード電流コレクタとの上に膜材料の層を配置する工程であって、前記膜材料が、二酸化ケイ素、ドープした二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物及びこれらの組合せを含むようにする当該工程と、前記犠牲材料部を除去して、前記基板と、前記膜材料と、前記第1多孔性触媒層とにより実質的に画成される中空チャンネルを形成する工程とを有する。
【0013】
更に他の代表的な製造方法は、アノード電流コレクタ及び触媒層が配置された基板であって、前記アノード電流コレクタ及び前記触媒層が互いに隣接した基板を設ける工程と、前記基板、前記アノード電流コレクタ及び前記触媒層上へ犠牲ポリマー層を配置する工程と、前記アノード電流コレクタ上に配置されてない部分の犠牲ポリマー材料を除去し、前記触媒層上に犠牲材料部を形成する工程と、前記犠牲材料部及び前記アノード電流コレクタ上に膜材料の層を配置する工程であって、前記膜材料が、二酸化ケイ素、ドープした二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物及びこれらの組合せを含むようにする当該工程と、前記犠牲材料部分を除去して、前記基板と、前記膜材料と、前記触媒層とにより実質的に画成される中空チャンネルを形成する工程とを有する。
【0014】
その他の構造体、システム、方法、特徴及び利点は、図面及び詳述な説明を参照することにより当業者に明らかになるであろう。このような追加的な構造、システム、方法、特徴及び利点は全て、本発明の範囲内にあり且つ特許請求の範囲の記載に基づき保護されることを意図するものである。
【0015】
本発明の多くの観点は、図面を参照することによりよく理解することができる。図面中の構成要素は必ずしも寸法に比例して描かれておらず、代わりに本発明の原理が明確に示されるような強調が施してある。さらに、複数の図面を通じて、対応する部分は同じ参照符号により示してある。
【0016】
詳細な説明
燃料電池膜、微小燃料電池及びこれらの製造方法を一般的に開示する。本発明の実施例における燃料電池膜は、二酸化ケイ素及びドープした二酸化ケイ素の双方又はいずれか一方から形成されており、比較的薄肉で、厚肉のポリマー膜に匹敵する面積抵抗を有している。膜を薄肉にする程、プロトンを通過させやすくなるため、発生させうる電流量を増大させることができる。また、これら膜を形成するのに使用する材料は、現在使用されているプロトン交換膜(PEM)と比べて、特に直接反応方式の燃料電池の共通する問題点である反応物の膜通過の防止という点において優れている。更に、これら膜は、微小電子装置に関する周知の製造技術を用いて製造することができる。この点より、膜は、燃料電池の使用を想定している微小電子装置の構造体上に製造することができる。
【0017】
一例においては、燃料電池膜及び微小燃料電池を電子装置に直接一体化することができる。例えば、燃料電池膜及び微小燃料電池は、燃料電池膜又は微小燃料電池をチップに配置することにより、燃料電池膜又は微小燃料電池を基板又はプリント基板に一体化することにより、及び、燃料電池膜又は微小燃料電池をチップに結合する独立した部分としてチップに介在又は装着することにより、一体化することができる。
【0018】
一般に、燃料電池膜及び微小燃料電池を利用することができる技術分野には、微小電子装置(例えばマイクロプロセッサチップ、通信チップ及び光電子チップ)や、微小電気機械システム(MEMS)や、マイクロフルイディクスや、センサや、分析装置(例えばマイクロクロマトグラフィ)や、通信/位置決め装置(例えばビーコン及びGPSシステム)や、記録装置などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
図1は、代表的な燃料電池膜10aの断面図である。この燃料電池膜10aは膜12(即ち膜層)を有し、この膜12の両側には触媒層14a及び14bが配置されている。図1に示すように、燃料(例えば、H2、メタノール、蟻酸、エチレングリコール、エタノール及びこれらの組合せ)は、燃料電池膜10aの一方の側(例えば、膜のアノード側(図示せず))に接触し、これに対し、空気はこの燃料電池膜10aの反対側に接触する(例えば膜のカソード側(図示せず))。例えば、メタノールを使用した場合、燃料電池膜のアノード側及びカソード側のそれぞれにおいて以下の反応が起こる。
H2O→CO2+6H++6e−
3/2O2+6H++6e−→3H2O
【0020】
この膜は、有機伝導材料及び無機伝導材料のような材料を含むものとしうるが、これに限定されるものではない。膜に含ませ得る材料には、例えば、二酸化ケイ素、ドープした二酸化ケイ素、窒化ケイ素、ドープした窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、ドープした酸窒化ケイ素、金属酸化物(例えば酸化チタン、酸化タングステン)、金属窒化物(例えば窒化チタン)、ドープした金属酸化物、金属酸窒化物(例えば酸窒化チタン)、ドープした金属酸窒化物及びこれらの組合せがあるが、これに限定されるものではない。一般に、膜は、当該膜中で約0.1〜20%となるドーパントにより、約0.1〜5%となるドーパントによりドープすることができる。
【0021】
ドープした二酸化ケイ素としては、リンをドープした二酸化ケイ素や、ホウ素をドープした二酸化ケイ素や、アルミニウムをドープした二酸化ケイ素や、ヒ素をドープした二酸化ケイ素や、これらの組合せがありうるが、これに限定されるものではない。一般に、ドーピングにより、M−OH(Mは金属である)のような原子スケールの欠陥が生じて格子が歪むため、ここを通ってプロトンを移送することができる。ドーピング量は、膜中のドーパントが0.1〜20重量%となるように、膜中のドーパントが0.5〜10重量%となるように、膜中のドーパントが2〜5重量%となるようにすることができる。
【0022】
膜12の厚さは、約10μm以下であり、約0.01〜10μm、約0.1〜5μm、約0.1〜2μm、約0.5〜1.5μm及び約1μmである。膜12の長さは、約0.001m〜100mとすることができ、、膜12の幅は、約1μm〜1000μmとすることができる。膜の長さ及び幅は用途に応じたものであるため、それに従って調整しうることに留意されたい。
【0023】
膜12の面積抵抗は、約0.1〜1000Ωcm2 、約0.1〜100Ωcm2 、約0.1〜10Ωcm2 、約1〜100Ωcm2 及び約1〜10Ωcm2 である。面積抵抗とは、燃料に露出された領域の膜を跨ぐ抵抗(例えば、抵抗×面積又は抵抗×厚さ)として定義される。
【0024】
膜12は、スピンコーティング、プラズマ加速化学気相堆積(PECVD)、スクリーン印刷、ドクタプレード、スプレーコーティング、ローラーコーティング、メニスカスコーティング及びこれらの組合せを用いて形成することができるが、これに限定されるものではない。
【0025】
触媒層14a及び14bには、プラチナ、プラチナ/ルテニウム、ニッケル、パラジウム、これらの合金及びこれら各々の組合せのような触媒を含ませることができるが、これに限定されるものではない。一般に、燃料が水素である例ではプラチナ触媒を使用し、燃料がメタノールである他の例では、プラチナ/ルテニウム触媒か使用する。これら触媒層14a及び14bには、同じ触媒を含ませてもよいし、異なる触媒を含ませてもよい。これら触媒層14a及び14bは代表的には多孔性触媒層として、プロトンがこの多孔性触媒層を通過しうるようにする。更に、触媒層及びアノード電流コレクタ間には導電経路が存在する。
【0026】
触媒層14a及び14bの厚さは、1μm以下、約0.01〜100μm、0.1〜5μm及び約0.3〜1μmとすることができる。
【0027】
触媒層14a及び14bは、触媒及び膜材料を交互に層状にして、より厚肉の触媒層14a及び14bを形成することができる(例えば2以上の層)。例えば、2層の構造によれば燃料の酸化率が改善される。このことは、アノードの触媒ローディングを増加させることができ、触媒層を多孔性に保持しうるので有利である。表面積が多いことにより、燃料の酸化速度を早くすることができる。この速度が早いことは、より多くの電流及び電力が得られることを意味する。
【0028】
膜には、更にポストドーピング処理を施すことができる。ドーパントを膜に拡散又は埋め込むことによりイオン伝導度を増大させることができる。ドーパントとしは、ホウ素及びリンを挙げることができるが、これに限定されるものではない。各ドーパントは、液体源又は固体源から単独で膜内に拡散させることもできるし、或いは高圧イオン加速器を使用してイオン注入することもできる。膜の伝導率は、酸性化合物(例えば(酢酸及びトリフルオロ酢酸の形態の)カルボン酸)やリン酸及び硫酸のような無機酸)を膜内に拡散させることにより増大させることができる。
【0029】
図2は、代表的な燃料電池膜10bの断面図である。燃料電池膜10bは、複合膜18と、触媒層14a及び14bとを有する。この複合膜18は、2層の膜層12及び16(ポリマー層16)を有する。他の例では、燃料電池膜10bに3層以上の層を設けることができる。一方の触媒層14aはポリマー層16上に配置されており、他方の触媒層14bは膜層12上に配置されている。膜層12と触媒層14a及び14bとは、図1を参照して説明したものと同様のものである。また、燃料電池膜10bの動作も上述したのと同じ又は同様である。
【0030】
これら膜層12及びポリマー層16は独立した層であるが、これらの双方とも燃料電池膜として動作する。この二重層膜における特性の組合わせ(例えばイオン伝導度、燃料通過耐性、機械的強度など)は、ある場合にはこれら層の各々を単独で用いるより優れたものとなりうる。例えば、ポリマー層16により、膜層12に対して追加の機械的支持及び安定性を付与することができる。
【0031】
更に、膜層12を二酸化ケイ素とする例では、この材料は、例えば膜12を半導体装置と共に使用する場合に当該装置を製造するのに用いられる他の絶縁体と類似の材料となる。
【0032】
ポリマー層16に含ませ得るポリマーには、ナフィオン(商標名)(過フルオロスルホン酸/ポリ四フッ化エチレンコポリマー)、ポリフェニルエンスルホン酸、改質ポリイミド及びこれらの組合せがあるが、これに限定されるものではない。例えば、ポリマー層16としてナフィオンを使用した場合、電流密度を損なうことなく開路電位が増大し、それにより出力密度及び効率が増加することが示された。
【0033】
ポリマー層16の厚さは、約1〜50μm、5〜50μm及び10〜50μmである。ポリマー層16の長さは約0.01m〜100mとすることができ、ポリマー層16の幅は約1μm〜500μmとすることができる。膜の長さ及び幅は用途に応じたものであるため、それに従って調整しうることに留意されたい。このポリマーは、スピンコーティングのような技術を用いて堆積させることができるため(但しこれに限定されるものではない)、当該ポリマーにより基板を完全に被覆させることもできるし、或いは所望の領域に選択的に堆積させることもできる。
ポリマー層16の面積抵抗は、約0.001〜0.5Ωcm2である。
【0034】
図3A〜3Dは、微小燃料電池20a、20b、20c及び20dの4つの例を示す。図3Aは、膜28と、基板22と、アノード電流コレクタ24と、カソード電流コレクタ26と、第1多孔性触媒層14aと、第2触媒層14bと、3つのチャネル32a、32b及び32cとを有する微小燃料電池20aを示す。膜28の化学組成、寸法及び特性は、図1を参照して膜12に関して上述したものと同様のものとし得る。膜28の厚さは、チャネル32a、32b及び32cの頂部から測定したものである。
【0035】
基板22は、マイクロプロセッサチップ、マイクロフルイディクス装置、センサ、分析装置及びこれらの組合せといったシステムに使用しうるものであるが、これに限定されるものではない。従って、基板22は、想定されるシステムに適した材料から形成することができる(例えばプリント基板に対してはエポキシボードを使用することができる)。代表的な材料には、ガラス、ケイ素、ケイ素化合物、ゲルマニウム、ゲルマニウム化合物、ガリウム、ガリウム化合物、インジウム、インジウム化合物、その他の半導体材料及び化合物の双方又はいずれか一方、及びこれらの組合わせがあるが、これに限定されるものではない。更に、基板12には非半導体の基板材料を含ませることができ、これには、例えば、任意の誘電材料、金属(例えば銅及びアルミニウム)、セラミックス又はプリント基板に使用される有機材料がある。更にまた、基板22は、上述したあるシステムで使用される特定の構成部材などを1つ以上有してもよい。
【0036】
第1多孔性触媒層14aは、膜の基板22の側に近い底面に配置されている。第2多孔性触媒層14bは、膜の基板22の側と反対側の頂面に配置されている。微小燃料電池20aは、これら第1多孔性触媒層14a及び第2多孔性触媒層14bを有しており、これら触媒層は、それぞれアノード電流コレクタ24及びカソード電流コレクタ26に対する導電経路を形成している。これら第1多孔性触媒層14a及び第2多孔性触媒層14bは、上述したのと同じ触媒を含み、同じ厚さ及び特性を有しうるものである。
【0037】
アノード電流コレクタ24は、第1多孔性触媒層14aを通じて電子を集める。アノード電流コレクタ24は、プラチナ、金、銀、パラジウム、アルミニウム、ニッケル、炭素、これら各々の合金及びこれらの組合せを含みうるものであるが、これに限定されるものではない。
【0038】
カソード電流コレクタ26は電子を放出する。カソード電流コレクタ26は、プラチナ、金、銀、パラジウム、アルミニウム、ニッケル、炭素、これら各々の合金及びこれらの組合せを含みうるものであるが、これに限定されるものではない。
【0039】
所望する構成に応じて、種々のアノード電流コレクタ24及びカソード電流コレクタ26を直列又は並列に電気接続させることができる(例えばアノードからカソードへ(直列に)配線してもよいし、又はアノードからアノードへ(並列に)配線することもできる)。一例において、個々の微小燃料電池を直列に電気接続して燃料電池のスタックを形成し出力電圧を増大させることができる。他の例では、並列に接続して定格電圧での出力電流を増大させることができる。
【0040】
実質的に膜28と第1多孔性触媒層14aと基板22とにより、チャネル32a、32b及び32cが画成される(例えば断面図の全ての側に境界が形成される)。燃料(例えば水素及びメタノール)は、これらチャネルに流されて、上述したようにして第1多孔性触媒層14aと作用する。これらチャネル32a、32b及び32cは、直列又は並列に構成することもできるし、或いはこれらを組合せた構成とするもできる。アノード電流コレクタ24は、チャネル32a、32b及び32cに隣接して配置されているが、多孔性触媒層14aに電気接続されている。
【0041】
一例において、チャネル32a、32b及び32cは、これらチャネル32a、32b及び32cが位置することになる領域から犠牲ポリマー層を除去(例えば分解)させることにより形成する。構造体20aの製造工程では基板12上に犠牲ポリマー層を堆積させパターン化する。次に、このパターン化した犠牲ポリマー層周辺に膜28を堆積させる。
【0042】
その後、この犠牲ポリマー層を除去して、チャネル32a、32b及び32cを形成する。この犠牲ポリマー層を堆積及び除去する工程を以下に更に詳細に説明する。
【0043】
チャネル32a、32b及び32cの断面として方形の断面が示されているが、チャネルの3次元境界は、方形の断面、非方形の断面、多角形の断面、非対称形の断面、湾曲した断面、弓形の断面、テーパの付いた断面、楕円若しくはその一部に相当する断面、放物線若しくはその一部に相当する断面、双曲線若しくはその一部に相当する断面及びこれらの組合せのような断面領域とすることができる。但し、これに限定されるものではない。例えば、チャネルの三次元構造には、方形構造、多角形構造体、非方形構造、非正方形構造、湾曲した構造、テーパのついた構造、楕円形若しくはその一部に相当する構造、放物線形若しくはその一部に相当する構造、双曲線形若しくはその一部に相当する構造及びこれらの組合せがありうるが、これに限定されるものではない。また、チャネルの断面領域を、空間的高さが変化するものとしてもよい。更に、例えば、複数空気領域を相互に接続させて、例えば微小チャネル及び微小チャンバを形成することができる。
【0044】
チャネル32a、32b及び32cの高さは、約0.1〜100μm、約1〜100μm、約1〜50μm及び10〜20μmとすることができる。チャネル32a、32b及び32cの幅は、約0.01〜約1000μm、約100〜約1000μm及び約100〜300μmとすることができる。チャネル32a、32b及び32cの長さは、用途や構成に応じて幅広く変更することができる。チャネル32a、32b及び32cは、特定の用途に適するように直列、並列、蛇状及びその他の構成にすることができる。
【0045】
一例において、犠牲材料層を設けるのに用いる犠牲ポリマーは、ゆっくり分解するポリマーであって、チャネル32a、32b及び32cを形成する際に周囲の材料中に過度の圧力上昇を生じないようなものにすることができる。また、犠牲ポリマーの分解により発生するガス分子が、膜28を透過するのに十分小さくなるようにする。更に、犠牲ポリマーの分解温度は、膜28の分解又は壊変温度より低くなるようにする。
【0046】
犠牲ポリマーの含みうる化合物には、ポリノルボルネン、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリエステル、これらの各々に官能性を持たせた化合物及びこれらの組合せがあるが、これに限定されるものではない。ポリノルボルネンは、アルケニル置換ノルボルネン(例えばシクロアクリレートノルボルネン)とすることができるが、これに限定されるものではない。ポリカーボネートは、ノルボルネンカーボネート、ポリプロピレンカーボネート、ポリエチレンカーボネート、ポリシクロヘキセンカーボネート及びこれらの組合せとすることができるが、これに限定されるものではない。
【0047】
更に、犠牲ポリマーには、当該犠牲ポリマーの加工性を変化させる追加成分を含ませることができる(例えば、熱及び光放射の双方又はいずれか一方に対する犠牲ポリマーの安定性を増大又は低減させるもの)。この点に関して、追加成分として、光重合開始剤及び光酸開始剤をあげることができるが、これに限定されるものではない。
【0048】
犠牲ポリマーは、例えば、スピンコーティング、ドクターブレーディング、スパッタリング、ラミネーション、スクリーン若しくはステンシル印刷、溶融ディスペンシング、蒸着、CVD、MOCVD又はプラズマ堆積システムのような技術を用いて基板上に堆積させることができる。
【0049】
犠牲ポリマーの熱分解は、その犠牲ポリマーの分解温度まで加熱し、その温度を所定時間(例えば1〜2時間)に亘り温度を維持することで行うことができる。その後、犠牲ポリマーの分解物は膜28を通って拡散し、実質的に残留物のない中空構造体(チャネル32a、32b及び32c)が残る。
【0050】
図3Bは、膜28と、基板22と、アノード電流コレクタ24と、カソード電流コレクタ26と、第1多孔性触媒層14aと、第2触媒層14bと、触媒層34と、3つのチャネル32a、32b及び32cとを有する微小燃料電池20bを示す。膜28の化学組成、寸法及び特性は、図1を参照して膜12について説明したのと同じものとしうる。膜28の厚さは、チャネル32a、32b及び32cの頂部から測定したものである。
【0051】
基板22と、アノード電流コレクタ24と、カソード電流コレクタ26と、第1多孔性触媒層14aと、第2触媒層14bと、3つのチャネル32a、32b及び32cとは、図3Aを参照して説明したものと同様のものである。
【0052】
触媒層34は、各チャネル32a、32b及び32c内の基板12上に配置されている。他の例では、全てのチャネルに触媒層42を配置する必要はなく、触媒層を配置するチャネルは、微小燃料電池の所望する構成により決定する。この触媒層34は、多孔質層にすることもできるし、又は表面積の大きな層にすることもできる。触媒層34は、チャネル32a、32b及び32c内におけるその触媒層がなければ燃料に露出されことになる基板部分の全部を被覆するようにしてもよいし、又はそれより小さい領域を被覆するようにしてもよく、このことは所望する構成により決定する。触媒層34は、プラチナ、プラチナ/ルテニウム、ニッケル、パラジウム、これら各々の合金及びこれらの組合せのような触媒を含みうるものであるが、これに限定されるものではない。
【0053】
図3Cは、膜28と、基板22と、アノード電流コレクタ24と、カソード電流コレクタ26と、第2触媒層14bと、触媒層34と、3つのチャネル32a、32b及び32cとを有する微小燃料電池20cを示す。膜28の化学組成、寸法及び特性は、図1を参照して膜12について説明したのと同じものとしうる。膜28の厚さは、チャネル32a、32b及び32cの頂部から測定したものである。
【0054】
基板22と、アノード電流コレクタ24と、カソード電流コレクタ26と、第2触媒層14bと、触媒層34と、3つのチャネル32a、32b及び32cとは、図3A及び3Bを参照して説明したものと同様のものである。
【0055】
本例における微小燃料電池20cは、第1多孔性触媒層を有していないが、触媒層34により触媒反応及び触媒活性を生ぜしめることができる。
【0056】
図3Dは、膜28と、基板22と、アノード電流コレクタ24と、カソード電流コレクタ26と、第1触媒層14aと、第2触媒層14bと、3つのチャネル32a、32b及び32cとを有する微小燃料電池20dを示す。膜28の化学組成、寸法及び特性は、図1を参照して膜12について説明したのと同じものとしうる。膜28の厚さは、チャネル32a、32b及び32cの頂部から測定したものである。
【0057】
膜28の基板22の側と反対側の頂面にポリマー層36が配置されている。第2多孔性触媒層14b及びカソード電流コレクタ26は、ポリマー層36の膜28の側と反対側の頂面に配置されている。
【0058】
基板22と、アノード電流コレクタ24と、カソード電流コレクタ26と、第2触媒層14bと、第1触媒層14aと、3つのチャネル32a、32b及び32cとは、図3A及びBを参照して説明したのと同様のものである。この微小燃料電池20dと類似する例では、図3B及び3Cで説明したような触媒層を設けてもよいことに留意されたい。
【0059】
ポリマー層36は、図2に説明したポリマー層16と同様のものである。ポリマー層36は、図2を参照にて説明したのと同じポリマーとすることができ、また同じ寸法にすることができる。また、ポリマー層の寸法は、微小燃料電池20dの全体寸法及び膜28の寸法により一部制限される。
【0060】
ここまで微小燃料電池20a、20b、20c及び20dを有する構造体10を一般的に説明してきた。以下では微小燃料電池20aを製造するための代表的な例を説明するが、この例は、微小燃料電池20b、20c及び20dの製造に拡張して適用することができる。明確化のために、図4A〜4Hには一部の製造工程が含まれていないことに留意されたい。このように、以下の製造工程は、微小燃料電池20aを製造するのに必要な全てのステップを含む網羅的なものとすることを意図するものではない。また、この製造工程は柔軟なものである。即ち、この製造工程は、図4A〜4Hに示すのと異なる順序で実施することもできるし、又は幾つかの工程を同時に実施することもできるからである。
【0061】
明確化のために、図4A〜4Hには一部の製造工程が含まれていないことに留意されたい。このように、以下の製造工程は、微小燃料電池20aを製造するのに必要な全てのステップを含む網羅的なものとすることを意図するものではない。また、この製造工程は柔軟なものである。即ち、この製造工程は、図4A〜4Hに示すのと異なる順序で実施することもできるし、又は幾つかの工程を同時に実施することもできるからである。
【0062】
図4Aは、基板22を示しており、この基板22上にはアノード電流コレクタ24が配置されている。図4Bは、これら基板22及びアノード電流コレクタ24上に犠牲材料層42を形成する工程を示す。この犠牲ポリマー層42は、例えば、スピンコーティング、ドクターブレーディング、スパッタリング、ラミネーション、スクリーン若しくはステンシル印刷、溶融ディスペンシング、CVD、MOCVD又はプラズマ堆積システム或いはこれらの任意の組合わせのような技術を用いて、基板10上に堆積させることができる。更に、この犠牲材料層42の一部を除去してアノード電流コレクタ24を露出させるためのマスク38を、当該犠牲材質層42上に配置する。図4Cは、犠牲材料層42の一部を除去して犠牲部44a、44b及び44cを形成する工程を示す。
【0063】
図4Dは、これら犠牲部44a、44b及び44c上に第1多孔性触媒層14aを形成する工程を示す。この第1多孔性触媒層14aは、スパッタリング、蒸着、噴霧法、印刷、化学気相堆積及びこれらの組合せにより形成することができる。
【0064】
図4Eは、この多孔性触媒層14aと、これら犠牲部44a、44b及び44cと、アノード電流コレクタ24との上に膜層28を形成する工程を示す。この膜28は、スピンコーティング、プラズマ加速化学気相堆積(PECVD)、化学気相堆積、スパッタリング、蒸着、レーザアブレーション堆積及びこれらの組合せを用いて形成することができるが、これに限定されるものではない。この膜28の形成温度は、約25〜400℃、約50〜200℃又は約100〜150℃とすべきである。この温度は、その他の材料が安定である範囲に制限されることに留意されたい(例えば分解温度)。
【0065】
図4Fは、犠牲部44a、44b及び44cを除去してチャネル32a、32b及び32cを形成する工程を示す。これら犠牲部44a、44b及び44cは、熱分解、マイクロ波照射、UV/可視光照射、プラズマ露出及びこれらの組合せを用いることにより除去することができる。これら犠牲部44a、44b及び44cは、図4Gや図4Hに示される工程の後など、製造工程中の異なる工程において除去しうることに留意されたい。
【0066】
図4Gは、チャネル32a、32b及び32cの上方に第2多孔性触媒層14bを形成する工程を示す。この第2多孔性触媒層14bは、スパッタリング、蒸着、噴霧法、印刷、化学気相堆積及びこれらの組合せにより形成することができる。
【0067】
図4Hは、この第2多孔性触媒層14b及び膜28上にカソード電流コレクタ26を形成する工程を示す。
【0068】
前述したように、図2及び図3Dに示すようなポリマー層を追加するための工程を、図4F及び図4Gに示す工程間に追加して、このポリマー層上に第2多孔性触媒層及びカソード電流コレクタを形成することができる。このポリマー層は、スピンコーティング、ドクターブレーディング、スパッタリング、ラミネーション、スクリーン若しくはステンシル印刷、溶融ディスペンシング、CVD、MOCVD又はプラズマ堆積システムのような技術により形成することができる。また、第1多孔性触媒層14aを設ける工程を省略して、図3Cに示した微小燃料電池20cを形成することもできる。更に、膜層を形成する幾つか前の工程において、(図3B及び図3Cの)触媒層34を配置することもできる。
【0069】
実施例1
微細形成燃料電池を、集積回路の製造に一般的に用いられている多くの処理を利用してシリコン集積回路ウェーハ上に構成し構造化した。このような処理には、スパッタリング、ポリマースピンコーティング、反応性イオンエッチング及びホトリソグラフ処理がある。プロトン交換膜(PEM)は、二酸化ケイ素を低温プラズマ加速化学気相堆積(PECVD)させて形成した。燃料送出チャネルは、パターン化した犠牲ポリマー層を使用してPEM及びアノード触媒の下に形成した。プラチナ−ルテニウム触媒を直流(DC)スパッタリングにより堆積した。酸化膜の抵抗は従来の高分子電解質膜(例えばナフィオン(商標名))より高いが、より薄肉のものとした。
【0070】
実験方法
この微小燃料電池の構成及び製造は、アノード用の燃料送出チャネルを形成するのに犠牲ポリマーを用いる技術に基づくものである。この犠牲ポリマー(Unity2000P(オハイオ州ブレックスヴィルにあるPromerus社))は、紫外線に曝して露出領域を熱分解させることによりパターン化した。これらパターン化した部分に、順次の形成処理で膜及び電極を被覆した。この製造工程の最終工程は、前記Unityのパターン化した部分を熱分解して、カプセル化された微小チャネルを残すものである(例えば図4A〜図4Hに示す処理と同様の工程)。このUnityの熱分解は、リントベルク管状炉に一様に窒素を流して行った。最終的な分解温度及び時間は、それぞれ約170℃及び約1.5時間とした。この微小燃料電池の製造工程は、PEMとして作用するカプセル化材料を堆積させる前及び後に、触媒電極及び電流コレクタを堆積させる処理を有するものとした。並列な微小チャネルのアレイ上に形成した装置の線図的断面図を図3Aに示す。
【0071】
カプセル化材料及びPEMとして二酸化ケイ素を使した。SiO2の堆積は、Plasma−Therm PECVDシステム(フロリダ州サンクトペテルスブルグのPlasma−Therm社)により60〜200℃の温度で行った。反応ガスは、シラン及び亜酸化窒素としてこれらN2O:SiH4の比率を2.25とし、動作圧は600mTorrとした。60〜75分の時間に亘り堆積を行うことで、Alpha−Step表面プロファイルメータ(カリフォルニア州サンノゼのKLA−Tencor社)で測定すると2.4〜3.4μmの膜厚が得られた。
【0072】
触媒層は、CVC DC スパッタリング装置(ニューヨーク州ロチェスターのCVC Products社)を使用してスパッタリング堆積させた。ソースターゲットとして、原子比50:50のプラチナ/ルテニウムターゲット(ニューヨーク州ブルースターのWilliams Thin−Film Products社)を使用した。図5は、スパッタリング堆積した膜が、等量の2種の金属を有することを確認するX線光電子分光(XPS)走査の結果を示すものである。犠牲ポリマー上に約50〜200Åの平均厚さを有する多孔質薄膜を堆積し、その後これを膜で被覆してアノード触媒として作用させた。更に、Pt/Ruの約600Åの厚肉層を、アノード微小チャネルの膜の側と反対側の底部に堆積させ、追加触媒及び電流コレクタとして作用させた。この追加触媒は、特に酸性メタノールを使用した場合に、微小チャネル燃料電池のパフォーマンスを改善するものであった。
【0073】
また、多孔性触媒カソードは、PEMの頂部即ち外側にPt又はPt/Ruをスパッタリングすることにより製造した。但し、あるサンプルのカソードは、ナフィオン中に炭素担持Ptを調製した触媒インクをPEM上に印刷し、その後、金の多孔質電流コレクタを被覆することにより形成した。この厚膜にする手法により、PEMのカソード側の触媒ローディング及びパフォーマンスが増大した。このことは、律速段階からカソードでの酸素還元を排除することによりアノードのパフォーマンスを研究するのに特に有用であった。
【0074】
インピーダンス分光分析(IS)及び線形ボルタモグラムを含む全ての電気化学的測定は、PerkinElner PARSTAT 2263(ニュージャージー州プリンストンのEG&G)の電気化学システムを用いて行った。線形掃引ボルタンメトリおける走査速度は、1mV/sとした。イオン伝導度は、実際の電池の場合と同様に、SiO2薄膜をアルミニウム被覆基板上へ堆積させ水銀プローブに接触させてインピーダンス分光分析により測定した。インピーダンス測定を行う周波数範囲は、100mHz〜1MHzとし、AC信号の振幅は10mVとした。SiO2のPEM下に燃料送出チャネルとスパッタリングされた触媒とを具える半電池装置を製造した。カソードの代わりに、エポキシを用いて装置の頂部にウエルを形成し1Mの硫酸溶液で充填した。飽和カロメル電極(SCE)及びPtワイヤをこの硫酸溶液中に配置し、それぞれ参照電極及び対向電極として測定を行った。PHD 2000 Programmable Syringe Pump(マサチューセッツ州ホリストンのHarvard Apparatus社)により液体燃料を供給し流速を制御した。水素は、加圧タンクの超高純度ガスから供給し加湿のためにハブラを通過させた。
【0075】
結果及び考察
集積回路製造技術に共通する多くの材料及び工程を用いた微細形成燃料電池の製造に成功した。この微小燃料電池のパフォーマンスを、半電池及び完全な電池を含む異なる特徴の電池について異なる燃料及び温度を用いて測定した。この目的は、加工条件に応じて燃料電池の個々の構成部材(例えばアノード、カソード及びPEM)を調査することにある。
【0076】
スパッタリングした触媒層に関して触媒活性の他に望ましい基本性質は、気孔率及び導電率であった。膜と接触する触媒は多孔性にして、酸化中に発生したプロトンがPEMと接触して、カソードまで通過するようにする必要がある。アノード触媒において発生する電子には、金属の電流コレクタまでの経路が必要となる。種々の量のPtを、絶縁体の両側に2つのパターン化した固体電極を有する基板上へスパッタリングした。これら電極間のスペースを跨いでのPt層のシート抵抗を測定した。図6は、スパッタリングされたPt薄膜の抵抗測定値(Ω/□)と、その厚さの平滑で連続的な膜に対する計算値とを厚さの関数として示す。約300Åより上の値では、測定値と予測値とが一致しており、このことは、膜が連続的なものであったことを示している。約150Åより低い値では、厚さの減少により抵抗が劇的に増大した。これは、所望する多孔性で不連続な膜であることか意味する。Unityの犠牲ポリマー表面をRIE処理により荒らすことにより、固体層を形成する前にスパッタリングしうる金属の量が増大した。この作業では、荒くしたUnity犠牲ポリマー上の多孔質伝導層として、約50〜200Åの平均厚さを有するPt/Ru層を使用した。
【0077】
SiO2を堆積させる前にPt/Ruの頂部にチタン接着層を堆積させた。接着に必要なTiの量は最小になようにした。スパッタリングした電極においてSiO2とPt/Ruとの間に約45Å(平均厚さ)のTiを堆積した。
【0078】
Unityの犠牲ポリマーを堆積しパターン化する前に、約600Å即ち約100μg/cm2のPt/Ruをスパッタリングすることにより、基板上に比較的中実な(非多孔性の)層が得られ、これにより伝導検体(例えば酸性メタノール)が利用しうる電池内のアノード触媒の総量が増大した。これにより、水素による場合のパフォーマンスもある程度改善された。微小チャネルの底部にPt/Ru固体層を具えるよう製造した電池の全結果をここに説明する。
【0079】
このプロトン交換膜の条件は、従来のPEM(例えばナフィオン)とは異なっているが、それは、微細形成燃料電池に必要とされる機械的特性及び厚さのためである。ここでのSiO2は、独立型の膜として作用することが示されている。SiO2膜をPECVDによって堆積し、インピーダンス分光分析によりイオン伝導度を室温で測定した。図7は、堆積温度と二酸化ケイ素のイオン伝導度との関係を示すグラフである。堆積温度が低くなると、シロノール濃度が高くなると共に密度が低くなるため伝導率が増加した。この薄膜の伝導率は、ナフィオンのような一般的に用いられる他のPEMよりも大幅に低いが、他の燃料電池膜より極めて薄肉でもあった。押出成形されたナフィオン膜(1100重量当量)の面積抵抗は、0.1〜0.35Ωcm2である。100℃で堆積した厚さ3μmのSiO2膜の面積抵抗は、室温において1200Ωcm2である。このように抵抗が比較的高いことにより、高電流での電池電圧が低減される。これら装置に使用したSiO2膜は、アノード及びカソードの触媒ローディングといった他のパラメータを調査するのに十分なものであった。これらは、本研究に使用した低電流装置に対して充分なものであるが、将来は改良したSiO2PEMについて研究報告を行う予定である。
【0080】
半電池装置を製造して、種々の燃料を用いてアノードのパフォーマンスを評価する試験を行い、完全な電池による試験と比較した。図8及び9は、水素及びメタノールのそれぞれに関する半電池の試験結果を示す。Pt/Ruの固体層は、犠牲ポリマーをパターン化する前であってパターン化部分頂部の多孔質層を膜と接触させる前に堆積した。膜表面における触媒重量は、17μg/cm2とした。
【0081】
水素は、加圧タンクの超高純度ガスから供給し加湿のためにハブラを通過させた。図8は、入口圧力を1〜4psig(15.7〜18.7psia(1psia=6894.76 Pa))とした場合の結果を示す。半電池の電流密度は、加湿した水素の分圧に従って変化している。これは、パフォーマンスが主にアノードでの触媒化学反応速度論により規定されること、すなわち水素分圧に比例することを示す。アノード触媒の活性を改善することにより電流密度を更に向上させることができる。
【0082】
水中のメタノール濃度は1Mとした。酸性メタノール混合物は、1Mのメタノールと1Mの硫酸とを含むものとした。図9は、メタノール及び酸性メタノールに関する半電池の分極曲線を示す。燃料に硫酸を加えることにより、溶液がプロトンに対して伝導性になった。酸性メタノール溶液の伝導性のために、活性表面領域がより大きくなり電流密度が改善された。膜と接触していないチャネル壁部に堆積したPt/Ru触媒を用いることで、メタノールの酸化量が増大した。酸性メタノール燃料の流速を増すことにより、電流密度及び開路電位が改善される。低い流速においてパフォーマンスが損なわれる主要因は、微小チャネルから押し出す必要がある二酸化炭素の気泡がアノードに形成されてしまう為と思われる。0.25(V vs.SCE)で観察される電流密度(1mL/hr及び5mL/hrに対してそれぞれ2mA/cm2及び7mA/cm2)から、CO2ガスの気泡が発生して触媒部位を覆ってしまい、更に微小チャネルの底部からPEMまでの燃料を通るプロトンの伝導度が制限されるおそれがあることが分かる。
【0083】
完全な微細形成した電池を製造して、開路電位からの線形ボルタンメトリにより1mV/秒の走査速度で試験を行った。表1は、ここに提案した5組の電池間における製造工程の相違を対比して、これら電源装置の電池のパフォーマンスに影響を及ぼす主要なパラメータ(アノード及びカソード構造)を示すものである。
【0084】
【表1】
【0085】
図10は、サンプルAの電池に関する分極曲線(上方)及び電力曲線(下方)を示す。このサンプルAでは、アノード及びカソードの双方に31μg/cm2の触媒をスパッタリングにより設けた。燃料として作用する入口圧力1psigの加湿された水素と、空気からの酸素とは、カソードにおいて還元された。60℃におけるパフォーマンスは、測定された出力密度のピークが4μW/cm2であり周囲温度条件の場合の約4倍を越えるものであった。図7に示される水素で動作するアノード半電池の結果と比較して、カソード上に触媒をスパッタリングしたこれら装置の電流密度が低いことは、これら装置のパフォーマンスが空気陰極の触媒活性により制限されることを示している。このことは、カソードにおいて周囲の酸素を還元させると、加圧した水素をアノードで使用する場合にパフォーマンスが制限されるおそれがあるという予想に合致する。
【0086】
厚膜インキ触媒を、空気吸入カソード上へ被着させ触媒面積及び触媒活性を改善した。膜の上部に印刷した触媒インクを用いると、カソードの触媒ローディングが増加するため完全な電池のパフォーマンスが著しく増大した。カソードにおける酸素の還元が著しく改善されるため、もはや制限的な電極ではなくなった。厚膜カソードを有する電池のパフォーマンスは、アノードの組成の関数となった。
【0087】
図11は、周囲温度、40℃及び60℃におけるサンプルBに関する分極曲線(上方)及び出力曲線(下方)を示す。このサンプルBは、サンプルAと同様の膜及びアノードを有するが、カソードに触媒インク及び金の多孔質電流コレクタを使用した。入口圧力1psigの水素を燃料とし、カソードは空気吸入性にした。室温での分極曲線は、図7の水素半電池の結果に極めて類似した電流密度を示している。サンプルBのパフォーマンスは、0.23V及び60℃におけるピーク出力密度が42μW/cm2であり、サンプルAの場合より約1桁大きくなった。これらの2つの結果は、カソードにスパッタリングした触媒を用いる代わりに印刷した触媒を使用すると、アノードがサンプルのパフォーマンスを規定することを示している。
【0088】
温度依存性があるため、高温でより大きな電力出力を得ることができた。燃料電池においては廃熱が発生するが、これらの装置の寸法及び発生する電力量から、高温で操作するのに十分な熱を保持し得ないことが示唆される。総合燃料電池であれば、電池を組み込んだ回路(又は他の電子装置)から放出される熱をある程度使用しうる場合がある。
【0089】
アノードの触媒活性及び表面積を改善することにより、更に電流及び出力密度を高くすることができる。触媒ローディングを増大させることによりアノードのパフォーマンスが改善された。図12は、アノードにスパッタリングした触媒の量が異なる3つのサンプルに関する室温での分極曲線(上方)及び電力曲線(下方)を示す。入口圧力1psigの水素を燃料とし、厚膜カソードは空気吸入性にした。各サンプルの微小チャネルの底部には約100μg/cm2のPt/Ru固体層を堆積した。膜表面においてサンプルBは17μg/cm2のPt/Ruを有し、サンプルCは34μg/cm2のPt/Ruを有するようにした。
【0090】
サンプルCは、膜にサンプルBの2倍のPt/Ruをスパッタリングしてあるが、このサンプルBに対するパフォーマンスの改善は50%に満たなかった。Pt/Ruのスパッタリング量を2倍にすることは、触媒の表面積を2倍にすることにはならない。なぜなら、堆積された島部がより大きくなって、より連続的な(より多孔性でない)膜が形成されるためである。
【0091】
電極のパフォーマンスを改善するためには、触媒の表面積、特に電解質と直接接触する触媒量を増大させる必要がある。SiO2電解質の薄層であれば、PECVDにより堆積されるので、2つの触媒堆積部の間に堆積させることができる。
サンプルDは、パターン化した犠牲ポリマー上にサンプルCと同じ34μg/cm2の触媒層を堆積させて、その後400ÅのSiO2を堆積させ、更に8.5μg/cm2の追加触媒層を堆積させた後に、より厚肉のSiO2PEM層を堆積させたものである。スパッタリングされた第2のPt/Ru層がSiO2に埋め込まれることにより、触媒/電解質の接触面積が増大した。サンプルDは膜のPt/Ruを25%多くしただけであるが、このサンプルDの室温におけるピーク出力密度は、サンプルCの4倍を超えるものとなった。電流密度及び出力密度がこのように著しく改善されるのは、触媒の総重量が増加したというだけでなく、SiO2埋め込みPt/Ru層により膜/触媒の接触がより多くなったためである。2層のPt/Ru薄層及びそれらの間にある少量のSiO2は、プロトン及び電子の双方に対して伝導性の触媒及び電解質の混合マトリックスを形成し、触媒の全表面積、特に電解質と接触する領域を増大させる。
【0092】
水素燃料電池のパフォーマンスを時間の関数として調べ、線形ボルタンメトリにより収集したデータが定電位における定常値と一致するかどうかを確かめた。図13は、10分間定電位に保持した場合のサンプルDの電流密度を示す。このデータは、図14に示すように、1mV/sの線形掃引により収集した値に極めて近いほぼ一定したパフォーマンスを示している。異なる装置を用いてより長時間、例えば数時間にわたり行った試験も同様の結果を示した。SiO2膜は、ナフィオン膜のように水で膨潤せず、乾燥によるパフォーマンスの低下といった時間による変化の影響を受けにくい。
【0093】
図15は、厚膜カソードを有する微小チャネルの完全な電池であるサンプルEについて、酸性メタノール溶液を用いて1mL/時間の流速で室温において動作させた場合の分極曲線及び出力曲線を示す。メタノールを酸化させるのに膜にある多孔性Pt/Ruの他に微小チャネル底部の固体触媒層が利用されるが、これは燃料溶液がプロトンを伝導するためである。燃料として水素を用いた場合より開路電位は低くなっているが、ピーク電流及び出力密度は、水素を用いた同じ装置より極めて高くなっている。
【0094】
これらの実験により、微細形成燃料電池のパフォーマンスを更に向上させるのに用いられるある傾向が示された。微小チャネルの底部に触媒を追加することは、伝導性の燃料を用いる場合に有効な技術である。また、複数のSiO2埋め込み層を使用して気孔率を維持しながら膜の触媒量を増大させることで、電流密度を増大させうることが示された。
【0095】
本研究による追加領域により、アノード面積の増大といった電極に対する改善効果や、特には伝導率である膜の特性に対する改善効果も得られる。SiO2の厚さを減らせばPEMの抵抗が低減するが、アノードの微小チャネル内の燃料圧力により燃料電池が破損されるのを防ぐために機械的強度を維持する必要はある。
【0096】
結論
犠牲ポリマーに基づく微小チャネル及びSiO2薄膜を用いた微小燃料電池の製造及び試験に成功した。低温PECVDによる二酸化ケイ素膜は、薄膜集積装置に用いうることを示すものである。堆積温度を低下させることにより、この研究で用いられる電極により得られる電流密度に対して許容されるレベルまで膜の伝導率が増大した。
【0097】
触媒のスパッタリング工程とSiO2の堆積工程とを繰り返して触媒マトリックスを形成することにより、触媒及び膜触媒の接触面積が増大した電極が得られる。酸性メタノールのような伝導性の検体を使用すれば、膜と接触していない追加的な触媒を利用することができる。
【0098】
実施例2
集積回路の製造に一般的に用いられている多くの処理を用いて、シリコン集積回路ウェーハ上に微細形成燃料電池を構成し構造化した。このような処理には、スパッタリング、ポリマースピンコーティング、反応性イオンエッチング及びホトリソグラフ処理がある。これらの薄膜燃料電池に使用するプロトン交換膜として、リンをドープした二酸化ケイ素について研究を行った。リンをドープした二酸化ケイ素は、プラズマ加速化学蒸着(PECVD)により堆積する。このようなリンをドープした二酸化ケイ素のイオン伝導度は、微細形成電池において先程使用した低温堆積SiO2より2桁以上大きい。厚さが6μmで抵抗が100kΩの膜は、60Ωcm2の面積抵抗を有し、この値はナフィオン117上に厚さ175μmの厚膜を堆積させたものより好ましい。微細形成された燃料電池にリンをドープしたSiO2を使用することにより、ドープしていない二酸化ケイ素を用いた従来の電池を上回る改善されたパフォーマンスが得られた。
【0099】
実験方法
この微細形成燃料電池の線図的断面は、図3Aに示すものと類似している。薄膜燃料電池を製造するのに使用する材料及び工程については既に説明した。微細チャネルを形成するために、犠牲ポリマーとしてUnity2000P(オハイオ州ブレックスヴィルのPromerus社)を使用した。触媒層は、CVC DCスパッタリング装置(ニューヨーク州ロチェスターのCVC Products社)を使用してスパッタリング堆積した。ソースターゲットとして、原子比50:50のプラチナ/ルテニウムターゲット(ニューヨーク州ブルースターのWilliams Thin-Film Products社)を使用した。
【0100】
SiO2の堆積は、PECVDシステムにおいて約75〜250℃の温度で行った。反応ガスは、シラン及び亜酸化窒素とし、動作圧は約600mTorrとした。リンをドープした二酸化ケイ素(P−SiO2)は、標準のシランガス(Heの5.0%のSiH4)に代えて、ヘリウムキャリアガス中に0.3%ホスフィン及び5.0%シランの混合ガスを用いることにより堆積した。代表的には、PH3/SiH4対N2O(又はSiH4対N20)の流速比を2.25とし、動作温度を100℃とした。これらの値について、他のパラメータを同じにしておき1回につき1つのパラメータを変化させた。基板上の選択領域への堆積を防止するための物理的マスクを使用して、Alpha−Step表面プロファイルメータ(カリフォルニア州サンノゼのKLA−Tencor社)を用いて膜厚を測定した。従来の燃料電池装置に用いられていたドープしていないSiO2PEM層(これらによるデータの一部を比較のために示す)の堆積を、Plasma−Therm PECVDシステム(フロリダ州サンクトペテルスブルグPlasma−Therm社)を用いて100℃で他のパラメータを同じにして行った。
【0101】
フーリエ変換赤外線分光分析(FTIR)を、Nicoletモデル560及びOmnicソフトウェアを使用して行った。インピーダンス分光分析(IS)及び線形ボルタモグラムを含む全ての電気化学的測定は、PerkinEkner PARSTAT 2263(ニュージャージー州プリンストンのEG&G)電気化学システムを用いて行った。線形掃引ボルタンメトリの走査速度は1mV/sとした。水素は、加圧タンクの超高純度ガスから加湿のためにハブラを通過させ細管を通じてアノード微小チャネルに供給した。イオン伝導度は、実際の電池の場合と同様に、SiO2薄膜をアルミニウム被覆基板上へ堆積させ、水銀プローブに接触させることによりインピーダンス分光分析を用いて測定した。インピーダンス測定を行う周波数範囲は100mHz〜1MHzとし、AC信号の振幅は10mVとした。
【0102】
結果及び考察
アルミニウム被覆ガラススライド上に、SiO2膜及びリンをドープしたSiO2(P−SiO2)膜を、1.4〜1.5μmの厚さに堆積した。このアルミニウム被覆基板上のP−SiO2薄膜のイオン伝導度を、インピーダンス分光分析(IS)を用いて測定した。図16及び17は、伝導率に対する2つのパラメータ、即ち温度及びガス比の影響を示す。図16のデータは、ガス流速のみを変化させて、400Wの出力で100℃で堆積させたサンプルから得られたものでる。PH3/SiH4に対するN2Oの比率を、標準の2.25から1〜0.5まで低下させることにより、伝導度は上記比率が僅かに0.5となるまで増大した。
【0103】
図17は、P−SiO2の伝導率は元のSiO2膜のように堆積温度に依存しないことを示している。これらの膜は、標準のガス比2.25で出力を400Wとして堆積した。このことは、P−SiO2のイオン伝導度は、温度を低下させたことによるシラノール濃度の増加ではなく、リンにより改善されたことの明確な根拠となる。リンの量は、堆積温度によって著しく変化しない。PPC犠牲ポリマーの分解温度が低いため、燃料電池装置のP−SiO2の堆積には引き続き100℃の温度を使用する。
【0104】
P−SiO2膜の伝導率は、ドープしてないSiO2と比べて著しく増大しているが、ナフィオンのような一般的に用いられる他のPEMよりも低く維持されている。但し、これらは他の燃料電池膜より極めて薄肉である。押出し成形されたナフィオン膜(1100重量当量)の面積抵抗は、0.1〜0.35Ωcm2(15)である。100℃で堆積した3μmのP−SiO2厚膜の面積抵抗は、室温で30Ωcm2である。抵抗が比較的高いことにより、高電流での電池電圧が低減される。
【0105】
微細形成燃料電池のPEMとしてP−SiO2薄膜を使用してドープしてないSiO2膜と比較した。この場合もPECVDチャンバの堆積温度は100℃とした。種々の製造方法の場合についてイオン伝導度の測定試験を行ったが、幾つかのガス比の場合における膜の機械的強度は、標準的なSiO2の製造方法のものよりも劣っていた。このため、最初のリンをドーピングした燃料電池装置では、標準的な製造方法を用いてシランをホスフィン−シランガスに代えるだけとした。しかし、これら膜は、従来のSiO2膜ほど強くなく、より厚肉に堆積する必要があった。
【0106】
前述した工程を利用して完全な微細形成電池を製造し、線形ボルタンメトリにより開路電位から1mV/秒の走査速度で試験した。装置のPEMとして6μmの厚さのドープしたP−SiO2を使用することに成功した。図18は、膜表面に150ÅのPt/Ruを設け且つ厚膜カソードとした電池(U−56)の分極曲線及び出力曲線を示す。入口圧力1psigの水素を燃料として作用させ、カソードは空気吸入性にした。結果を、前述した二重触媒層のサンプル(04−28)である250ÅのPt/Ruによる結果と共にプロットした。720mVの開路電位は約70mV高いものであった。これは、おそらくPEMがより厚肉であるためで、このことが燃料通過及び電気分離に対して好ましい影響を与えた。イオン伝導度がドープしていないSiO2より高かったため、より厚肉の膜により電流密度が減少したようには思われない。ドープしたサンプルは触媒を全体に有するものでなく、表面の一部に堆積させたものであるにも拘わらず、ピーク出力密度は36μW/cm2であり他のサンプルより約40%大きかった。双方のサンプルのピーク出力密度は、約1mA/cm2で得られたが、この電流におけるドープしたサンプルの電圧は約100mVであった。
【0107】
結論
SiO2にリンを添加することにより、これをPEMとして使用した場合に膜のイオン伝導度が増大し、微細形成燃料電池の全体的なパフォーマンスが改善されることが示された。ホスフィンガスを追加することを除いて従来使用されてきたSiO2膜と同じ処理条件で堆積したP−SiO2膜の伝導率は、ドープしてない低温SiO2膜の約50倍の大きさであった。伝導率がこのように増加するため、プロトン移動に対する抵抗をなお低くしながら、装置の機械的強度を改善するためにより厚肉のPEM層を堆積させることができる。このようなより厚肉の膜によれば開路電位も改善され、全体的なパフォーマンスがより良好になる。P−SiO2サンプルのパフォーマンスは、良好なアノードを有するサンプルを含む全てのドープしてないSiO2サンプルよりも向上されたものとなった。P−SiO2は、これら装置に対して好ましい薄膜PEM材料であることが分かった。
【0108】
上述した実施例は、本発明の単なる実施可能な例であり、本発明の原理を明瞭に理解するために記載されたものであることを強調しておく。本発明の原理及び精神を逸脱することなく、上記の実施例に対して多くの変型及び修正を加えることができる。このような全ての修正及び変更は、本発明の範囲内に含まれるもので特許請求の範囲により保護されることを意図するものである。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】図1は、代表的な燃料電池膜の線図的断面図である。
【図2】図2は、他の代表的な燃料電池膜の線図的断面図である。
【図3】図3A〜3Dは、微小燃料電池の4つの例を示す線図である。
【図4】図4A〜4Hは、図3Aに示される微小燃料電池の代表的な製造方法を示す線図的断面図である。
【図5】図5は、スパッタリングされたプラチナ/ルテニウム(Pt/Ru)のXPS走査線図である。
【図6】図6は、スパッタリングされたプラチナ膜の抵抗の測定値及び計算値をプロットしたグラフである。
【図7】図7は、インピーダンス分光分析により測定したSiO2膜のイオン伝導度をプロットしたグラフである。
【図8】図8は、加湿した水素を用いた場合の微小チャネルの半電池パフォーマンスをプロットしたグラフである。
【図9】図9は、それぞれメタノール−水溶液及び酸性メタノール−水溶液を用いた場合の微小チャネル半電池のパフォーマンスをプロットしたグラフである。
【図10】図10は、スパッタリングされたアノード及びカソードを有する微小燃料電池のパフォーマンスをプロットしたグラフである。
【図11】図11は、様々な温度におけるサンプルBの微小燃料電池のパフォーマンスをプロットしたグラフである。
【図12】図12は、スパッタリングしたアノード触媒の量がそれぞれ異なるサンプルB、C及びDの微小燃料電池の環境温度におけるパフォーマンスをプロットしたグラフである。
【図13】図13は、約10分間に亘り定電位に保持した埋め込み触媒サンプルの電流密度をプロットしたグラフである。
【図14】図14は、サンプルDについて室温で加湿した水素を用いた場合の線形ボルタンメトリ分極データ及び(10分における)定常状態のデータを比較してプロットした線図である。
【図15】図15は、1mL/hrで1.0Mの酸性メタノールを用いた場合の微小チャネル燃料電池のパフォーマンスをプロットしたグラフである。
【図16】図16は、P−SiO2膜の伝導度をガス比の関数としてプロットしたグラフである。
【図17】図17は、P−SiO2膜の伝導率を堆積温度の関数としてプロットしたグラフである。
【図18】図18は、リンをドープしたSiO2及びドープしてないSiO2のサンプルの室温における分極曲線及び出力曲線をプロットしたグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機伝導材料、無機伝導材料及びこれらの組合せから選択した材料を含む膜とを有する燃料電池であって、
この膜の厚さは約0.01〜10μmであり、
この膜の面積抵抗は約O.1〜1000Ωcm2である燃料電池。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池において、
前記膜の厚さは約0.1〜5μmである燃料電池。
【請求項3】
請求項1に記載の燃料電池において、
前記膜の厚さは約0.1〜2μmである燃料電池。
【請求項4】
請求項1に記載の燃料電池において、
前記膜の面積抵抗は約1〜100Ωcm2である燃料電池。
【請求項5】
請求項1に記載の燃料電池において、
前記膜の面積抵抗は約1〜10Ωcm2である燃料電池。
【請求項6】
請求項1に記載の燃料電池において、
前記材料を、二酸化ケイ素、ドープした二酸化ケイ素、窒化ケイ素、ドープした窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、ドープした酸窒化ケイ素、金属酸化物、ドープした金属酸化物、金属窒化物、ドープした金属窒化物、金属酸窒化物、ドープした金属酸窒化物及びこれらの組合せから選択した燃料電池。
【請求項7】
請求項6に記載の燃料電池において、
ドープした二酸化ケイ素を、リンをドープした二酸化ケイ素、ホウ素をドープした二酸化ケイ素及びこれらの組合せから選択した燃料電池。
【請求項8】
請求項1に記載の燃料電池において、
この燃料電池は更に、前記膜の一方の側に配置された触媒を含み、
前記触媒を、プラチナ、プラチナ/ルテニウム、ニッケル、テルル、チタン、これら各々の合金及びこれらの組合せから選択した燃料電池。
【請求項9】
請求項8に記載の燃料電池において、
この燃料電池は更に、前記膜の他方の側にポリマー層を有し、
このポリマー層は、前記膜の側の反対側に配置された触媒を有する燃料電池。
【請求項10】
請求項1に記載の燃料電池において、
前記膜の厚さは約0.1〜2μmであり、面積抵抗は約1〜10Ωcm2である燃料電池。
【請求項11】
アノード電流コレクタの配置された基板と、
このアノード電流コレクタ上に配置された膜であって、この膜が、二酸化ケイ素、ドープした二酸化ケイ素、窒化ケイ素、ドープした窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、ドープした酸窒化ケイ素、金属酸化物、ドープした金属酸化物、金属窒化物、ドープした金属窒化物、金属酸窒化物、ドープした金属酸窒化物及びこれらの組合せから選択した材料を含んでおり、この膜の厚さが約0.01〜10μmであり、この膜の面積抵抗が約0.1〜1000Ωcm2である当該膜と、
前記基板の一部と前記膜の一部とにより実質的に画成される中空チャンネルであって、少なくとも1層の触媒層がチャネルに露出されており、前記アノード電流コレクタが、前記チャネルに隣接して配置されている当該中空チャネルと、
前記膜の、前記基板の側と反対側に配置されたカソード電流コレクタと
を有する微小燃料電池であって、
前記触媒層及び前記アノード電流コレクタ間に導電経路が存在している
微小燃料電池。
【請求項12】
請求項11に記載の微小燃料電池において、
前記触媒層は、前記膜の基板の側である当該膜の一方の側に配置された第1多孔性触媒層を有し、
この第1多孔性触媒層は前記チャネル内に露出されており、
前記第1多孔性触媒層及び前記アノード電流コレクタ間に導電経路が存在している微小燃料電池。
【請求項13】
請求項12に記載の微小燃料電池において、
前記触媒層は、前記チャネル内で露出された基板上に配置された触媒層を有しており、
この触媒層と、前記第1多孔性触媒層と、前記アノード電流コレクタとの間に導電経路が存在している微小燃料電池。
【請求項14】
請求項11に記載の微小燃料電池において、
前記触媒層は、前記チャネル内で露出された基板上に配置された触媒層を含んでおり、
この触媒層と、前記アノード電流コレクタとの間に導電経路が存在している微小燃料電池。
【請求項15】
請求項11に記載の微小燃料電池において、
この燃料電池は更に、前記膜の、前記基板の側と反対側に配置される第2多孔性触媒層を有し、
この第2多孔性触媒層と前記カソード電流コレクタとの間に導電経路が存在している微小燃料電池。
【請求項16】
請求項15に記載の微小燃料電池において、
この微小燃料電池は更に、前記膜の、基板の側と反対側に配置されたポリマー層を有し、
このポリマー層上に、前記カソード電流コレクタと前記第2多孔性触媒層とが配置されている微小燃料電池。
【請求項17】
請求項16に記載の微小燃料電池において、
前記ポリマー層が、過フルオロスルホン酸/ポリ四フッ化エチレンコポリマー、ポリフェニルエンスルホン酸、改質ポリイミド及びこれらの組合せから選択されたものである微小燃料電池。
【請求項18】
請求項11に記載の微小燃料電池において、
前記触媒層は、プラチナ、プラチナ/ルテニウム、ニッケル、テルル、チタン、これらの合金及びこれらの組合せから選択された触媒を含む微小燃料電池。
【請求項19】
請求項11に記載の微小燃料電池において、
前記膜の厚さは約0.1〜5μmであり、
前記膜の面積抵抗は約1〜100Ωcm2である微小燃料電池。
【請求項20】
微小燃料電池の製造方法であって、
アノード電流コレクタが配置された基板を設ける工程と、
前記基板及び前記アノード電流コレクタ上へ犠牲ポリマー層を配置する工程と、
前記アノード電流コレクタ上に配置されてない部分の犠牲ポリマー材料を除去し、犠牲材料部を形成する工程と、
この犠牲材料部上に第1多孔性触媒層を配置する工程と、
前記犠牲材料部と、前記第1多孔性触媒層と、前記アノード電流コレクタとの上に膜材料の層を配置する工程であって、この膜材料を、二酸化ケイ素、ドープした二酸化ケイ素、窒化ケイ素、ドープした窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、ドープした酸窒化ケイ素、金属酸化物、ドープした金属酸化物、金属窒化物、ドープした金属窒化物、金属酸窒化物、ドープした金属酸窒化物及びこれらの組合せから選択する当該工程と、
前記犠牲材料部を除去して、前記基板と、前記膜材料と、前記第1多孔性触媒層とにより実質的に画成される中空チャンネルを形成する工程と
を有する微小燃料電池の製造方法。
【請求項21】
請求項20に記載の微小燃料電池の製造方法において、
前記膜材料の、前記基板の側と反対側の頂部に第2多孔性触媒層を配置する工程と、
この第2多孔性触媒層の一部にカソード電流コレクタを配置する工程と
を更に有する微小燃料電池の製造方法。
【請求項22】
請求項20に記載の微小燃料電池の製造方法において、
この微小燃料電池の製造方法は更に、
前記膜材料上にポリマー層を配置する工程と、
このポリマー層の、前記膜材料の層の側と反対側の頂部に第2多孔性触媒層を配置する工程と、
前記第2多孔性触媒層の一部上にカソード電流コレクタを配置する工程と
を有する微小燃料電池の製造方法。
【請求項23】
請求項20に記載の微小燃料電池の製造方法において、
前記ポリマー層を、過フルオロスルホン酸/ポリ四フッ化エチレンコポリマー、ポリフェニルエンスルホン酸、改質ポリイミド及びこれらの組合せから選択する微小燃料電池の製造方法。
【請求項24】
請求項20に記載の微小燃料電池の製造方法において、
前記基板の一部に触媒層を設ける工程であって、
この触媒層を、前記犠牲材料部及び前記基板間にある当該基板の部分に配置する微小燃料電池の製造方法。
【請求項25】
請求項20に記載の微小燃料電池の製造方法において、
前記犠牲材料を、ポリイミド、ポリノルボルネン、エポキサイド、ポリアリーレンエーテル、ポリアリーレン、無機ガラス及びこれらの組合せから選択する微小燃料電池の製造方法。
【請求項26】
微小燃料電池の製造方法であって、
アノード電流コレクタ及び触媒層が配置された基板であって、前記アノード電流コレクタ及び前記触媒層が互いに隣接した当該基板を設ける工程と、
前記基板、前記アノード電流コレクタ及び前記触媒層上へ犠牲ポリマー層を配置する工程と、
前記アノード電流コレクタ上に配置されてない部分の犠牲ポリマー材料を除去し、前記触媒層上に犠牲材料部を形成する工程と、
前記犠牲材料部及び前記アノード電流コレクタ上に膜材料の層を配置する工程であって、前記膜材料を、二酸化ケイ素、ドープした二酸化ケイ素、窒化ケイ素、ドープした窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、ドープした酸窒化ケイ素、金属酸化物、ドープした金属酸化物、金属窒化物、ドープした金属窒化物、金属酸窒化物、ドープした金属酸窒化物及びこれらの組合せから選択する当該工程と、
前記犠牲材料部分を除去して、前記基板と、前記膜材料と、前記触媒層とにより実質的に画成される中空チャンネルを形成する工程と
を有する微小燃料電池の製造方法。
【請求項27】
請求項26に記載の微小燃料電池の製造方法において、
この微小燃料電池の製造方法は更に、
前記膜材料を配置する前に、前記犠牲材料部上へ第1多孔性触媒層を配置する工程を有する微小燃料電池の製造方法。
【請求項28】
請求項26に記載の微小燃料電池の製造方法において、
この微小燃料電池の製造方法は更に、
前記膜材料の、前記基板の側と反対側の頂部に第2多孔性触媒層を配置する工程と、
この第2多孔性触媒層の一部にカソード電流コレクタを配置する工程と
を有する微小燃料電池の製造方法。
【請求項29】
請求項26に記載の微小燃料電池の製造方法において、
この微小燃料電池の製造方法は更に、
前記膜材料上にポリマー層を配置する工程と、
前記ポリマー層の、前記膜材料の層の側と反対側の頂部に第2多孔性触媒層を配置する工程と、
前記第2多孔性触媒層の一部にカソード電流コレクタを配置する工程と
を有する微小燃料電池の製造方法。
【請求項30】
請求項26に記載の微小燃料電池の製造方法において、
前記ポリマー層を、過フルオロスルホン酸/ポリ四フッ化エチレンコポリマー、ポリフェニルエンスルホン酸、改質ポリイミド及びこれらの組合せから選択する微小燃料電池の製造方法。
【請求項1】
有機伝導材料、無機伝導材料及びこれらの組合せから選択した材料を含む膜とを有する燃料電池であって、
この膜の厚さは約0.01〜10μmであり、
この膜の面積抵抗は約O.1〜1000Ωcm2である燃料電池。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池において、
前記膜の厚さは約0.1〜5μmである燃料電池。
【請求項3】
請求項1に記載の燃料電池において、
前記膜の厚さは約0.1〜2μmである燃料電池。
【請求項4】
請求項1に記載の燃料電池において、
前記膜の面積抵抗は約1〜100Ωcm2である燃料電池。
【請求項5】
請求項1に記載の燃料電池において、
前記膜の面積抵抗は約1〜10Ωcm2である燃料電池。
【請求項6】
請求項1に記載の燃料電池において、
前記材料を、二酸化ケイ素、ドープした二酸化ケイ素、窒化ケイ素、ドープした窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、ドープした酸窒化ケイ素、金属酸化物、ドープした金属酸化物、金属窒化物、ドープした金属窒化物、金属酸窒化物、ドープした金属酸窒化物及びこれらの組合せから選択した燃料電池。
【請求項7】
請求項6に記載の燃料電池において、
ドープした二酸化ケイ素を、リンをドープした二酸化ケイ素、ホウ素をドープした二酸化ケイ素及びこれらの組合せから選択した燃料電池。
【請求項8】
請求項1に記載の燃料電池において、
この燃料電池は更に、前記膜の一方の側に配置された触媒を含み、
前記触媒を、プラチナ、プラチナ/ルテニウム、ニッケル、テルル、チタン、これら各々の合金及びこれらの組合せから選択した燃料電池。
【請求項9】
請求項8に記載の燃料電池において、
この燃料電池は更に、前記膜の他方の側にポリマー層を有し、
このポリマー層は、前記膜の側の反対側に配置された触媒を有する燃料電池。
【請求項10】
請求項1に記載の燃料電池において、
前記膜の厚さは約0.1〜2μmであり、面積抵抗は約1〜10Ωcm2である燃料電池。
【請求項11】
アノード電流コレクタの配置された基板と、
このアノード電流コレクタ上に配置された膜であって、この膜が、二酸化ケイ素、ドープした二酸化ケイ素、窒化ケイ素、ドープした窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、ドープした酸窒化ケイ素、金属酸化物、ドープした金属酸化物、金属窒化物、ドープした金属窒化物、金属酸窒化物、ドープした金属酸窒化物及びこれらの組合せから選択した材料を含んでおり、この膜の厚さが約0.01〜10μmであり、この膜の面積抵抗が約0.1〜1000Ωcm2である当該膜と、
前記基板の一部と前記膜の一部とにより実質的に画成される中空チャンネルであって、少なくとも1層の触媒層がチャネルに露出されており、前記アノード電流コレクタが、前記チャネルに隣接して配置されている当該中空チャネルと、
前記膜の、前記基板の側と反対側に配置されたカソード電流コレクタと
を有する微小燃料電池であって、
前記触媒層及び前記アノード電流コレクタ間に導電経路が存在している
微小燃料電池。
【請求項12】
請求項11に記載の微小燃料電池において、
前記触媒層は、前記膜の基板の側である当該膜の一方の側に配置された第1多孔性触媒層を有し、
この第1多孔性触媒層は前記チャネル内に露出されており、
前記第1多孔性触媒層及び前記アノード電流コレクタ間に導電経路が存在している微小燃料電池。
【請求項13】
請求項12に記載の微小燃料電池において、
前記触媒層は、前記チャネル内で露出された基板上に配置された触媒層を有しており、
この触媒層と、前記第1多孔性触媒層と、前記アノード電流コレクタとの間に導電経路が存在している微小燃料電池。
【請求項14】
請求項11に記載の微小燃料電池において、
前記触媒層は、前記チャネル内で露出された基板上に配置された触媒層を含んでおり、
この触媒層と、前記アノード電流コレクタとの間に導電経路が存在している微小燃料電池。
【請求項15】
請求項11に記載の微小燃料電池において、
この燃料電池は更に、前記膜の、前記基板の側と反対側に配置される第2多孔性触媒層を有し、
この第2多孔性触媒層と前記カソード電流コレクタとの間に導電経路が存在している微小燃料電池。
【請求項16】
請求項15に記載の微小燃料電池において、
この微小燃料電池は更に、前記膜の、基板の側と反対側に配置されたポリマー層を有し、
このポリマー層上に、前記カソード電流コレクタと前記第2多孔性触媒層とが配置されている微小燃料電池。
【請求項17】
請求項16に記載の微小燃料電池において、
前記ポリマー層が、過フルオロスルホン酸/ポリ四フッ化エチレンコポリマー、ポリフェニルエンスルホン酸、改質ポリイミド及びこれらの組合せから選択されたものである微小燃料電池。
【請求項18】
請求項11に記載の微小燃料電池において、
前記触媒層は、プラチナ、プラチナ/ルテニウム、ニッケル、テルル、チタン、これらの合金及びこれらの組合せから選択された触媒を含む微小燃料電池。
【請求項19】
請求項11に記載の微小燃料電池において、
前記膜の厚さは約0.1〜5μmであり、
前記膜の面積抵抗は約1〜100Ωcm2である微小燃料電池。
【請求項20】
微小燃料電池の製造方法であって、
アノード電流コレクタが配置された基板を設ける工程と、
前記基板及び前記アノード電流コレクタ上へ犠牲ポリマー層を配置する工程と、
前記アノード電流コレクタ上に配置されてない部分の犠牲ポリマー材料を除去し、犠牲材料部を形成する工程と、
この犠牲材料部上に第1多孔性触媒層を配置する工程と、
前記犠牲材料部と、前記第1多孔性触媒層と、前記アノード電流コレクタとの上に膜材料の層を配置する工程であって、この膜材料を、二酸化ケイ素、ドープした二酸化ケイ素、窒化ケイ素、ドープした窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、ドープした酸窒化ケイ素、金属酸化物、ドープした金属酸化物、金属窒化物、ドープした金属窒化物、金属酸窒化物、ドープした金属酸窒化物及びこれらの組合せから選択する当該工程と、
前記犠牲材料部を除去して、前記基板と、前記膜材料と、前記第1多孔性触媒層とにより実質的に画成される中空チャンネルを形成する工程と
を有する微小燃料電池の製造方法。
【請求項21】
請求項20に記載の微小燃料電池の製造方法において、
前記膜材料の、前記基板の側と反対側の頂部に第2多孔性触媒層を配置する工程と、
この第2多孔性触媒層の一部にカソード電流コレクタを配置する工程と
を更に有する微小燃料電池の製造方法。
【請求項22】
請求項20に記載の微小燃料電池の製造方法において、
この微小燃料電池の製造方法は更に、
前記膜材料上にポリマー層を配置する工程と、
このポリマー層の、前記膜材料の層の側と反対側の頂部に第2多孔性触媒層を配置する工程と、
前記第2多孔性触媒層の一部上にカソード電流コレクタを配置する工程と
を有する微小燃料電池の製造方法。
【請求項23】
請求項20に記載の微小燃料電池の製造方法において、
前記ポリマー層を、過フルオロスルホン酸/ポリ四フッ化エチレンコポリマー、ポリフェニルエンスルホン酸、改質ポリイミド及びこれらの組合せから選択する微小燃料電池の製造方法。
【請求項24】
請求項20に記載の微小燃料電池の製造方法において、
前記基板の一部に触媒層を設ける工程であって、
この触媒層を、前記犠牲材料部及び前記基板間にある当該基板の部分に配置する微小燃料電池の製造方法。
【請求項25】
請求項20に記載の微小燃料電池の製造方法において、
前記犠牲材料を、ポリイミド、ポリノルボルネン、エポキサイド、ポリアリーレンエーテル、ポリアリーレン、無機ガラス及びこれらの組合せから選択する微小燃料電池の製造方法。
【請求項26】
微小燃料電池の製造方法であって、
アノード電流コレクタ及び触媒層が配置された基板であって、前記アノード電流コレクタ及び前記触媒層が互いに隣接した当該基板を設ける工程と、
前記基板、前記アノード電流コレクタ及び前記触媒層上へ犠牲ポリマー層を配置する工程と、
前記アノード電流コレクタ上に配置されてない部分の犠牲ポリマー材料を除去し、前記触媒層上に犠牲材料部を形成する工程と、
前記犠牲材料部及び前記アノード電流コレクタ上に膜材料の層を配置する工程であって、前記膜材料を、二酸化ケイ素、ドープした二酸化ケイ素、窒化ケイ素、ドープした窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、ドープした酸窒化ケイ素、金属酸化物、ドープした金属酸化物、金属窒化物、ドープした金属窒化物、金属酸窒化物、ドープした金属酸窒化物及びこれらの組合せから選択する当該工程と、
前記犠牲材料部分を除去して、前記基板と、前記膜材料と、前記触媒層とにより実質的に画成される中空チャンネルを形成する工程と
を有する微小燃料電池の製造方法。
【請求項27】
請求項26に記載の微小燃料電池の製造方法において、
この微小燃料電池の製造方法は更に、
前記膜材料を配置する前に、前記犠牲材料部上へ第1多孔性触媒層を配置する工程を有する微小燃料電池の製造方法。
【請求項28】
請求項26に記載の微小燃料電池の製造方法において、
この微小燃料電池の製造方法は更に、
前記膜材料の、前記基板の側と反対側の頂部に第2多孔性触媒層を配置する工程と、
この第2多孔性触媒層の一部にカソード電流コレクタを配置する工程と
を有する微小燃料電池の製造方法。
【請求項29】
請求項26に記載の微小燃料電池の製造方法において、
この微小燃料電池の製造方法は更に、
前記膜材料上にポリマー層を配置する工程と、
前記ポリマー層の、前記膜材料の層の側と反対側の頂部に第2多孔性触媒層を配置する工程と、
前記第2多孔性触媒層の一部にカソード電流コレクタを配置する工程と
を有する微小燃料電池の製造方法。
【請求項30】
請求項26に記載の微小燃料電池の製造方法において、
前記ポリマー層を、過フルオロスルホン酸/ポリ四フッ化エチレンコポリマー、ポリフェニルエンスルホン酸、改質ポリイミド及びこれらの組合せから選択する微小燃料電池の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【図4G】
【図4H】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【図4G】
【図4H】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公表番号】特表2007−523460(P2007−523460A)
【公表日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−554212(P2006−554212)
【出願日】平成17年2月16日(2005.2.16)
【国際出願番号】PCT/US2005/005088
【国際公開番号】WO2005/079466
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(506282595)ジョージア テク リサーチ コーポレイション (8)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月16日(2005.2.16)
【国際出願番号】PCT/US2005/005088
【国際公開番号】WO2005/079466
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(506282595)ジョージア テク リサーチ コーポレイション (8)
【Fターム(参考)】
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