説明

微小流量の流体制御方法及び抵抗体

【課題】 流体の一部を別の装置に導入したり、目的に応じた流量を得たり、流れている流体を分岐する際、特に微小流量の分岐を安定して簡単に再現性よく行えるようにする。
【解決手段】 入口から出口まで0.5μm〜100μmの貫通した連続孔を持つモノリス構造体を抵抗体として用いて、液体或いは気体の流れを分岐することにより、モノリス構造体に対応した所望の流速を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は微小流量の流体制御方法及び抵抗体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
流体の一部を別の装置に導入したり、目的に応じた流量を得たり、一部分を別に採取するなどの流れている流体を分岐する手段は重要である。
【0003】
流体を分割する方法としては、例えば図1のように抵抗体をラインに組み込み、その抵抗体の圧力によって、目的流速を得る方法が用いられる。
図1に示すように、入口から流速Q1で流された流体1は、分岐され、夫々の圧力の異なる抵抗体4,5,6に導入される。流速Q1は、2側流速Q2と3側流速Q3の和であり、2側と3側の圧力は等しく次式が成立する。
Q1=Q2+Q3 r1×u×Q2+r2×u×Q2=r3×u×Q3
r1:抵抗R1の抵抗係数、r2:抵抗体6の抵抗係数、r3:抵抗体4の抵抗係数、u:流体の粘性
2側の流速 Q2=r3/(r1+r2+r3)Q3となる。即ち、用いる抵抗体によって、必要な流速を得ることが出来る。
【0004】
特に、微量成分を扱う分析分野では必要不可欠の手法であり、質量分析計などの異なる装置への分岐導入や微量の液体を回収する精製やHPLC分析などに使用されている。
例えば、生体試料分析によく使用されるLC−MS分析では、流速4μL/min以下の流速でMSに送液する必要があるが、その領域で再現よく流せる汎用LCポンプは少ない。そのため、圧力抵抗で分析カラムに入る前に、移動相を分岐させたり、分析カラムから出てきた移動相を分岐させ、MSに必要な流速を流す方法が行われている。この分析装置としては、調圧器によってスプリット比を調整する装置や、細いキャピラリー管をとりつけて、その抵抗比でスプリットする装置が製品化されており、ポンプカラム間やカラムMS間に接続して使われている。
それらの装置では、得られる流速としては、2μL/minが限界であり、低い流量での精度のよい分岐を行うことは出来ない。
【0005】
しかし、実際に要求されている対象試料は貴重であり、極少量の試料を高感度に分析する必要がある。HPLCカラムとしては、内径が0.2mm以下のキャピラリーナノHPLCカラムが使用され、2μL/min以下の流速が要求される。更に、質量分析計における検出感度は、流量が低いほど、高くなるため、0.5μL/min以下の流速が必要となってきている。しかし、流速2μL/minの流量を得ることが限界である現状のスプリッターでは、使用できない。
その原因として、正確な分岐を行うための、低流量で安定した負荷が得られる抵抗体が存在しないことである。
【0006】
スプリッターの実施形態の一つとして、図2のように単純に、カラム圧力と抵抗管の比でスプリットしてその低流速を得る方法もある。この構造では、ポンプから送液された液体は、分岐部に達した際に、分析カラムと廃液側抵抗体の圧力抵抗(スプリット比)に応じて分岐され、カラムに送液される。
例えば、図2のようなHPLCシステムに於いて、抵抗体として、ポンプ流速40μL/minで、5Mpaの圧力が得られる長さ20cmの内径30μmFSシリカチューブを抵抗管として使えば、流速0.4μL/minで5Mpaの分析カラムに移動相を分岐して導入することができる。しかし、スプリット比が大きく、外気の影響を受け、カラム側に流れる流量の再現性が得られない。又、実際の分析に用いる溶離液の大半を廃棄することになり、無駄となる。
再現性ある流量を得るためには、10分の1以下のスプリットが理想的となるが、FSシリカチューブなどの中空パイプでこのようなスプリット比を得ようとすると、細い内径の30μmFSチューブを用いた場合でも、1m以上の抵抗管をつける必要がある。
長くなると、詰まりが生じて現実的に使用できない。このような内径の細いチューブでは、数10cmが限界であり、10分の1以下のスプリットを得ることが出来ない。
実際に内径0.03mm、長さ500cmのフューズドシリカチューブを用いた抵抗管に、流速1μL/minで送液したところ、送液開始時の送液圧力は4.8Mpaであったのに対して、送液2時間後には10Mpaに上昇し、2.5時間後には送液圧力が35Mpa以上に上昇してしまい。送液不能となってしまった。
【0007】
又、抵抗管の代わりに、10分の1程度のスプリット比が得られる粒子を詰めたHPLC用充填カラムなどを用いることも出来るが、粒子充填では、充填再現性や圧力変動による充填変化が生じ易く、やはり安定した圧力が得られない。
更に、目的の抵抗を持ったカラムを自由に作る事ができない。当然充填手数が必要となり、抵抗体としては高価となる。
更に、当然抵抗管側の方が流速が早くなるため、詰まり易くなる。
分岐してMSへの導入や分岐した成分を回収する場合などに、それらの充填剤粒子へ吸着が生じ、液体に含まれている成分が変化する可能性もある。
モノリス構造体の製造方法として、下記の各種が提案されている。
特開平6−265534号公報、特開平7−247180号公報、特表平7−501140号公報、特開平6−107461号公報。
【0008】
【特許文献1】特開平6−265534号公報
【特許文献2】特開平7−247180号公報
【特許文献3】特表平7−501140号公報
【特許文献4】特開平6−107461号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
液体或いは気体の流通の際に、特に微量成分に対応する必要のある分析分野に於いて、所望の目的の流速を得るため、低流量でもバラツキのない安定した抵抗が得られ、且つ成分変化の生じない装置・器具が不可欠である。
カラム圧力と抵抗管の比でスプリットして低流速を得るため、抵抗管として内径の細いチューブ等を細く長く形成しなければならないことによる従来の欠点たる詰まり易さ、圧力変動の生じ易さを解消し、短く形成でき、圧力変動が少ない抵抗体が要望されている。
本発明に於いては、作成時の出発原料の選択により、所望のスルーポアを形成できるモノリス構造体を利用することにより、目的に応じた抵抗を得て、高圧下でも空間の変化はなく、安定な抵抗が得られると共に、管の中だけでなく、フィルター状等種々の形状でも作成利用することができ、種々の形で、各種装置にも組み込むことができ、更に出発原料の選択によりその吸着性能もコントロールすることができる抵抗体及びそれを利用した装置・器具を提案せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、第1に入口から出口まで0.5μm〜100μmの貫通した連続孔を持つモノリス構造体を抵抗体として用いて、液体或いは気体の流れを分岐することにより、モノリス構造体に対応した所望の流速を得る微小流量の流体制御方法。第2にモノリス構造体のメソ孔が2nm未満であることを特徴とする請求項1に記載の微小流量の流体制御方法。第3に液体或いは気体の流れを分岐することにより、目的の流速に対応した入口から出口まで0.5μm〜100μmの貫通した連続孔を持つモノリス構造体より成る抵抗体。第4にモノリス構造体のメソ孔が2nm未満であることを特徴とする請求項3に記載の抵抗体。第5に液体或いは気体の流れを分岐する分岐部或いは分岐管に設けたことを特徴とする請求項3又は請求項4の何れかに記載の抵抗体。第6に外径0.2mm以下のキャピラリー内に入口から出口まで0.1μm〜20μmの貫通した連続孔を持ち、且つメソ孔が2nm未満のモノリス構造体を作製したMSスプレヤー用抵抗体を提案する。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、入口から出口まで0.5μm〜100μmの貫通した連続孔を持つモノリス構造体を抵抗体として用いて、液体或いは気体の流れを分岐することにより、モノリス構造体に対応した所望の流速を得るようにしたので、所望のスルポアを形成できるモノリス構造体を利用することにより、低流量でもバラツキの無い安定した流体に対する抵抗が得られ、微小流量でもスプリット等により低流量を得ることができ、高圧下でも空間の変動なく、所望の目的の流速を得ることが出来る。
この結果、極少量の試料を高感度に分析する必要のある質量分析やHPLC分析に必要な2μL/minの流量以下の正確な分岐を行うできる方法を提供できる。
又、請求項2の発明によれば、モノリス構造体のメソ孔が2nm未満であるので、請求項1の発明の効果の他に、圧力が一定になり、安定するまでの時間が短く、ごみ等による詰まりがなく、高圧下で試料の流れに影響が少ないため、更に低流量の迅速且つ安定した分岐ができ、一層の高感度分析が可能である。
【0012】
又、請求項3の発明によれば、液体或いは気体の流れを分岐することにより、目的の流速に対応した入口から出口まで0.5μm〜100μmの貫通した連続孔を持つモノリス構造体より成るので、モノリス構造体を作成する骨格が30〜80%存在して同径のパイプに比し、内部容積として20〜70%に形成でき、遅れ時間が少なく、抵抗体として極めて優れている。然も、その構成上圧力変動のない安定抵抗が得られ、且つ成分変化の生じない低流量でもバラツキのない安定した抵抗が得られる。又、本発明のモノリス構造体はスルポアの2乗に反比例した抵抗が得られ、低流量でも高圧が得られる。
従って、その長さを短く形成することが出来、短時間で分岐の可能な短くかつつまりが無い抵抗体を提供できる。又、圧力は作成する管の断面積にも反比例するので、目的に合せてスルポアの制御と合せて自由に抵抗を制御できる。
【0013】
又、請求項4の発明によれば、モノリス構造体のメソ孔が2nm未満であるので、請求項3の効果の他に、流量のバラツキによる不安定を改善し、再現性のある流量を迅速、且つ安定して得ることが出来る。
【0014】
又、請求項5の発明によれば、液体或いは気体の流れを分岐する分岐部或いは分岐管に設けたので、上記の各請求項の発明による効果の他に、短くても高い圧力が得られ、3方ジョイント等に直接接続でき、分岐により簡単に微量の目的流速を得ることが出来る。
この結果、再現性のよい結果が得られた。特に、タンパクの捕集に於いては、タンパクの分解も無く、その変性がないことも確認されている。
【0015】
更に、請求項6の発明によれば、外径0.2mm以下のキャピラリー内に入口から出口まで0.1μm〜20μmの貫通した連続孔を持ち、且つメソ孔が2nm未満のモノリス構造体を作製したので、均一な液滴形成が出来、特殊なスプレイヤーを接続することなく、直接分岐した液を導入することができ、液滴のイオン化がし易くなった。
この結果、装置自体も簡略化されイオン化装置も廉価となり、イオン化感度もよくなり、スプレーイオン化法をより有効たらしめた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明に使用されるモノリス構造体の作成方法としては、前記のような各種が利用できる。
ガラス又はガラスセラミックスより成り、孔径500nm以上で3次元網目上に連続した貫通孔と、この貫通孔の内壁面に形成された孔径5〜100nmの細孔とを有し、細孔の全容積が10m3/t以下であって、全体に対して貫通孔の占める容積率が20〜90%で、全気孔中の細孔の閉める容積率が10%以上であることを特徴とする無機系多孔質カラム。(特開平6−265534号公報参照)少なくとも1個の金属・炭素結合を介して結合した非加水分解性の有機官能基と、加水分解性の官能基とを含む有機金属化合物を、加水分解・重合して反応溶液系のゲル化を行った後、ゲル中の不要物質を除去し、加熱する。少なくとも1個の金属・炭素結合を介して結合した非加水分解性の有機官能基と、加水分解性の官能基とを含む有機金属化合物を、加水分解・重合して反応溶液系のゲル化を行った後、ゲル中の不要物質を除去し、加熱することを特徴とする有機官能基の結合した無機系多孔質体の製造方法。(特開平5−501935号公報参照)両端末を閉じた管に、ポルゲンを含んでいる脱気した重合混合物を加え、この混合物を重合させることでマクロ細孔有機ポリマーフラグを生じさせ、そしてこのマクロ細孔ポリマーグラフを洗浄することでポロゲンを除去し、そして約200nm端末の直径を有する小さい孔と、約600nm以上の直径を有する大きい孔とを含んでいるプラグを生じさせる方法で、作成された液体クロマトグラフィーカラム。少なくとも1個の金属・炭素結合を介して結合した非加水分解性の有機官能基と、加水分解性の官能基とを含む有機金属化合物を、加水分解・重合して反応溶液系のゲル化を行った後、ゲル中の不要物質を除去し、加熱することを特徴とする有機官能基の結合した無機系多孔質体の製造方法。(a)Rが炭素数1〜6のアルキルである式:Ti(OR)4で示されるチタン・アルコキシドの溶媒中溶液を調製し、(b)得られた溶液に対し、水を、各アルコシド分子の1つのアルコシド基と等しい化学量論量〜各アルコシド分子の全てのアルコシド基と、等しい化学量論量で混合し、所定の温度にて所定の時間加熱して加水分解及び縮合を生じさせ、(c)工程(b)で得られた成形性ゾルを膜又はモノリスに成形し、次いで(d)成形した膜又はモノリスを所定の温度に1000℃,以上の速度で加熱し、この温度を1秒〜60分間保持することにより、当該層を硬化させ、次いで室温まで冷却することを構成とする。
【0017】
高圧下で用いるため、抵抗管としては、ポリマー樹脂モノリス構造体よりも耐圧のある有機金属元素を含むモノリス体や無機系多孔質体が適している。
特に、シリコン元素やチタニア元素を含む有機金属化合物を出発原料としたモノリス体は、不活性であり、高耐圧のため抵抗体として適している。
又、モノリス構造体に於いては、作成工程で液体の流れるスルポアー孔以外に、メソ孔が存在してしまう場合があるが、このメソ孔の存在は圧力が一定になるまでの時間がかかり、メソ孔は高圧下で影響の与えない2nm未満のモノリス構造体の方が適している。
メソ孔は900度以上で焼成することによって、2nm未満に漬すことができるので、メソ孔のあるモノリス体を焼成してもよい。
それらのモノリス構造体をパイプ内に作成した抵抗体と従来の細いパイプの抵抗管との比較を考えると、モノリス構造体は、3次元網目上に連続した貫通孔があり、その貫通孔が従来の細いパイプの内径に対応することになる。
例えば、貫通孔の内径であるスルポアー30μmのモノリス構造と内径30μmのパイプで同等の抵抗を得ることが出来る。内径30μmのパイプ部では、その中に流体が流れることになり、ごみ等による詰まりが生じてしまい、抵抗体として使えないが、モノリス構造体では、貫通孔は互いに3次元状に繋がっており、詰まりに関しては、モノリス体全体の径、この場合では作成したパイプ内径による影響になる。モノリス構造体を用いることで、詰まりの無い抵抗体を得ることが出来る。モノリス構造体を作成する骨格がパイプ内に30〜80%存在しており、同じ径のパイプと比較すると内部容積としては20〜70%にすることができる。この内容積は、小さい方が遅れ時間が出ないため、抵抗体としては適している。ここで、抵抗体は、モノリス構造体そのものをさす場合と、チューブ、パイプ等の各種形状内に形成する場合がある。
【実施例1】
【0018】
モノリス構造体は、初期モノマー種及びモノマー量と共存させる触媒などにより、スルポアーを自由に作成できるが、耐圧が得られ且つ吸着が生じない有機シランを用いて、モノリス構造体を作成し、各抵抗を調べた。
スルポアに影響を与えるホルムアミド割合を代え、メチルトリメトキシシラン、共存物質としてのホルムアミド及び触媒としての1mol/l硝酸水溶液を1:2.5:2.8の割合で混合し、均一溶液を得た。スルポア1μm(表1抵抗体2A〜4A)
窒素ガス圧で、内径0.1mm、長さ100mmのフューズドシリカカラムに入れて、両端をポリプロピレンシールフィルムでシールして、40℃で15時間ゲル化後、メタノール2mLで洗浄し、モノリス構造体からなる抵抗体2Aを8本得た。
同じ溶液を同時に内径0.05mm、長さ5mのフューズドシリカカラムに入れて、両端をポリプロピレンシールフィルムでシールして、40℃で15時間ゲル化後、メタノール2mLで洗浄し、モノリス構造体からなる抵抗体を得た。
その抵抗体を長さ70mmに切断して抵抗体3Aを7本、長さ170mmに切断して抵抗体4Aを7本得た。
【0019】
スルポアに影響を与えるホルムアルデヒド割合を替え、メチルトリメトキシシラン、共存物質としてのホルムアルデヒド及び触媒としての1mol/1硝酸水溶液をモル比で1:1.8:2.8の割合で混合し、均一溶液を得た。
窒素ガス圧で、内径0.1mm、長さ150mmのフューズドシリカカラムに入れて、両端をポリプロピレンシールフィルムでシールして、40℃で15時間ゲル化後、メタノール2mLで洗浄し、モノリス構造体からなる抵抗体1Aを8本得た。
各1本及び切れ端を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、3次元網目状に連続したゲル骨格と貫通孔が観察された。又、窒素吸着法にて、上記残存溶液から作成したモノリスロッドを検査したところ、メソ孔が2nm未満であることが観察された。
【0020】
抵抗体1AのSEM写真を図3に示した。貫通孔であるスルポア径が2μmであることが分かった。抵抗体2AのSEM写真、抵抗体3AのSEM写真を図4,5に示した。その結果、同じ割合の溶液から作られたモノリス構造体では、内径の影響を受けず、同じく1μmのスルポアであることが確認できた。
これらの抵抗体に、イオン交換水を流し、圧力再現性を検査した。
その結果を表1に示した。
【表1】

モノリス構造体からなる抵抗体は、スルポアの2乗に反比例した抵抗が得られ、低流量でも高圧が得られることが分かった。又、圧力は、作製する管の断面積にも反比例するので、目的に応じた抵抗をスルポアの制御と合せて自由に作られることになる。
【0021】
比較として、内径0.03mm、長さ500cmのFSシリカチューブに流速1μL/minで流したところ、抵抗体1Aに近い4.8Mpaの圧力が得られたが、2時間後には10Mpaを越えて、2.5時間後には35Mpaを越え、流すことができなくなった。流路が長くなるために、ポンプシールなどのかすによる詰まりが生じたのが原因であった。
又、比較として、スルーポア2μm、メソポア10nmの市販されているHPLCモノリスキャピラリーカラム(MonoCapC18)の4ロットに、1μL/minで送液した圧力抵抗を調べた。流し始めから圧力が安定するまでの時間が、メソ孔の小さい本発明抵抗体の10倍以上かかり、10分以上経過してから安定した。メソ孔への液の出入りに時間がかかり、メソ孔が小さい本発明抵抗体に比べて安定までの時間が大幅にかかったと考えられる。分岐を行うための抵抗体としては、安定までの時間がかかることは、入口流量に対して、分岐した流量が追従しなくなり、問題となる。HPLCなどのカラムの入口に使う場合には、カラム均衡の時間も掛かり、それほどの影響はない。しかし、分離後や直接各装置に分岐する場合や質量分析計に導入する場合には、致命的な欠陥となり、分岐するための抵抗体としては使用できない。
抵抗体としては、メソ孔が2nm未満であることが重要な条件となる。
【0022】
又、送液開始1時間後の圧力は、ロットによって、3.5Mpa、4.5Mpa、4.8Mpaの圧力となった。メソ孔作成によるモノリス構造体のバラツキが原因と考えられるが、抵抗体としては安定した制御ができず適していない。
更に、現存する市販モノリス体は、化学種が結合されており、結合された化学種の脱落による流体の汚染が考えられる。又、当然高価であり、現実としては抵抗体としては用いられない。
メソ孔が2nm未満のモノリス構造体は、抵抗体として低流速でも充分な圧力を得られ、且つ自由にその抵抗をコントロールできるので、抵抗体として有効であることが分かった。
【実施例2】
【0023】
図2の装置に廃液側抵抗12として、実施例1のスルポアμ1mの抵抗体2Aを2cmに切断して用い、カラムとして1μL/minで送液した際に、4.8Mpaの圧力が得られるカラム11を接続し(図6)、ポンプから流速3μL/minで80%メタノール溶離液を送液し、アミルベンゼンの溶出時間を調べたところ、9.8〜9.95分となり高い再現性が得られた。
又、同じシステムに於いて、1μL/minで送液した際に、3.5Mpaの圧力が得られるHPLCカラムを装着したところ、8.76〜8.87分と同様の高い再現性が得られた。(図7)
上記2例の溶出時間の違いは、カラムの送液抵抗の違い(4.8Mpaと3.5Mpa)によりスプリット比が変化して3.5Mpaのほうでは早く溶出するようになったのである。(図7)
管の中にスルポアーが0.5〜20μmのモノリス構造を作成した抵抗体を用いれば、高圧力でより短い抵抗管ができ、又、抵抗管内に直接モノリス構造を作成できるので、充填工程がなく均質で高い再現性が得られた。
カラム:Mono Cap Fast−flow 100μm×270mm
溶離液:メタノール/水=80/20
流速 :ナノスプリッター常時3.0μL/min送液
カラム温度:室温(20℃〜25℃)
サンプル 1.ウラシル2.トルエン3.エチルベンゼン4.プロピルベンゼン
5.ブチルベンゼン6.アミルベンゼン
【0024】
実施例2で示したスプリット方法では、カラムの圧力変動は直接スプリット比の変動となり、スプリット比の変化により、分析カラムに送入される流速が大幅に変化してしまう。分析における流速の変動は、分析結果に直接関わり、分析が不可能になる場合もある。このような現象を起こす原因となる分析カラムの圧力変動は、充填型の分析カラムにおける充填状況の違いによるロット間の差、使用による充填状態の変化による変動、カラムの消耗や劣化が原因となるなど容易に起こりえる現象である。
このようなカラム圧力変動の影響を小さくする方法として、カラム前にも内部抵抗体13を入れる図8に示すような構成が理想的である。これに用いる内部抵抗体は短い方が液の置換が早くなり、又、粒子の漏れはカラムの詰まりの原因となるので、短くても高圧力が得られ、且つ粒子の漏出のないモノリス構造体の使用は必然的となる。
【実施例3】
【0025】
図8の構成はポンプ9から送液された液体は、分岐具により2つの流路に分岐され、一方はカラム側への流路へ、もう一方は廃液側の流路へと分岐される。夫々の流路に、カラム側抵抗体13(内部抵抗)、廃液側抵抗体12を配し、カラム側抵抗体の下流に分析カラムを接続する。この際,カラム側抵抗体13の送液抵抗がカラムの送液抵抗に比べて、充分に大きくなるような設計を行う。このようにすることによって、カラムの送液抵抗が変化した場合でも、分岐具以降のカラム側に掛かる抵抗の合計の変動はとても小さくなるため、溶液の分岐は、カラム側抵抗体(内部抵抗)と廃液側抵抗体の抵抗比によって生ずるスプリット比に準じた送液が確保される。
【0026】
このようにカラムの上流側に抵抗体を配する場合、従来のような長いフューズトシリカチューブを用いた抵抗体は、ポンプから送液された液体がカラムに到達するまでの大きなデットボリュームとなってしまう。そのため、特にグラジエント分析を行う場合、デットボリュームがグラジエント開始までの遅れ時間となり、分析に時間がかかる結果となる。これを解決する方法の一つとして、抵抗体として、充填型のカラムを使用する方法があるが、この場合、送液により充填状況が変化する可能性や、粒子の脱落により、抵抗体の下流の接続した分析カラムの目詰まりの原因になる可能性がある。
一方、本発明モノリス抵抗体を用いた場合、短い抵抗体で高い送液抵抗を得ることが出来るため、抵抗体内のデットボリュームを抑えることができる。
【0027】
図8の構成に於いて、内径0.1mm、長さ7cmのモノリス抵抗体12、スルポア1μmを廃液側に、内径0.05mm、長さ10cmのモノリス抵抗体13、スルポア1μmをカラム側に使用し、ポンプ9から流速3μL/minで80%メタノール溶離液を送液し、アミルベンゼンの保持時間を測定した。
2.7Mpa〜5.4Mpaのカラムで、9.8〜10.0分で、平均9.9分、偏差値0.4%の高い再現性が得られた。(表2)
【表2】

【実施例4】
【0028】
実施例3に示した最適な実施形態として、図9,10のような形態をとることができる。
図9の構成は、ポンプからの流路は、コネクタ14を介して接続され、スプリッター装置15内に送液される。送液された液体は、素管16の流路を通り分器具18に達する。分岐部18に達した液体は、それ以降に続く廃液側モノリス抵抗体17と、カラム側モノリス抵抗体19の送液抵抗の比によって分岐される。カラム側モノリス抵抗体19を通った液体は、スプリッター出口側コネクタ20を介してカラムに接続される。ポンプからの流路を接続するコネクタ14には、フィルターを内蔵し、ごみの侵入を防ぐことがも出来る。
【0029】
図10の構成は、2種類のカラム側抵抗体21,22を設置した装置図である。
使用する抵抗体としては、カラム側抵抗体21として、内径50μmの本発明モノリス抵抗体7cm、カラム側抵抗体22として、内径50μmの本発明モノリス抵抗体17cm、廃液側抵抗体17として、内径100μmの本発明モノリス充填抵抗体9cmを用いた。夫々の抵抗管に20%アセトニトリル溶液を流速0.4μL/minで送液した際の送液圧力は、カラム側抵抗体21は15Mpa、カラム側抵抗体22は36Mpa、廃液側抵抗体17は4Mpaとした。図9,10の実施例に於いて使用されるモノリス構造体のスルポアは1μmである。
【0030】
夫々の抵抗体の選定基準としては、使用するナノカラム(内径が100μm)の最適流量、一般に用いられるマイクロポンプの最適な流速(2〜3μL/min)をもとにスプリット比を算出した。又、カラム上流の抵抗体がカラムの抵抗よりも充分大きく、かつポンプへの負担の軽減のためにポンプからの送液抵抗も適切である必要がある。抵抗体は、より高いものを用いた方が、カラムの圧力変動を受けないが、抵抗の上昇に伴いポンプから高圧での送液が必要となる。高圧による送液は、ポンプ自体の許容範囲があると同時に、劣化を早くさせるためになるべく避けることが望ましい。
【0031】
一般的なカラムの最適流量は、内径100μmのカラムでは、0.5μL/min、内径75μmのカラムでは0.3μL/min、内径50μmのカラムでは、0.1μL/minである。(表3)しかし、モノリスと粒子充填型によって圧力は異なる。
【表3】

内径100μmのカラムは、抵抗体21に接続し、ポンプの流速を3μL/minとすることにより、0.5μL/minのカラム流速が得られ、内径75μmのカラムは、抵抗体21に接続し、ポンプの流速を2μL/minとすることにより、0.3μL/minのカラム流速が得られ、内径50μmのカラムは、抵抗体22に接続し、ポンプの流速を2μL/minとすることにより、0.1μL/minのカラム流速が得られる設計とした。
実際に上記の設定スプリッター15を用いて表3に示した各内径の分析カラムを測定した結果、表4のような結果が得られた。異なる種類の夫々のカラムで本発明モノリス抵抗体を用いた分岐では、最適の流速が得られた。
【表4】

実際の使用に際しては、使用しないカラム側出口にプラグを設置し、使用しない抵抗体への流入を遮断するか、もしくは使用しないカラム側出口に充分大きな抵抗体を接続することにより、使用しない抵抗管への液体の流入を充分無視できる状態にする。
【0032】
以上の組合せに於ける、グラジェントの遅れの評価を行った(図11)
スプリッターにポンプ(MP711)とUV検出器(MU701)を接続し、以下の条件により吸光度の推移をモニターした。モニター結果は図11に示すようになった。
分析条件
A.MeOH;B,0.5%acetone in MeOH
A/B
90/10−(10min)−90/10−80/20−(10min)−80/20−70/30−(10min)70/30−60/40−(10min)−60/40−50/50−(10min)−50/50−40/60―(10min)−40/60−90/10
検出波長:254nm
各遅れ時間を表5に示した。表中使用チャンネルColumn1は図10中21を用い、Column2は22を用いた結果である。
【0033】
図11から、グラジェントの遅れ時間を測定した結果、0.9〜3.3minになり、実用上問題の無い範囲であった。(表5)
これは、FSシリカチューブを抵抗体として用いたスプリッターに比べ小さなものであった。これは、モノリス抵抗体は短くても高い圧力抵抗を得られるために、デットボリュームが小さく抑えられた結果である。
【表5】

図10に示したスプリッター15を用いて、グラジェントの再現性を評価した。
ナノフロースプリッターにポンプ(MP711)とUV検出器(MU701)を接続し、評価には抵抗体22側の接続部を使用した。評価時のカラム側の流速は0.16μL/minであった。図12が示すように、0.16L/minという微少流量域でも高い再現性(N=3)があることが分かった。
これは、モノリス抵抗体が安定した抵抗を生ずるものであることを証明している。
分析条件
A.MeOH;B,0.5%acetone (in MeOH)
A/B:90/10−(5min)−90/10−(15min)−0/100(20min)−0/100
検出波長:254nm
【実施例5】
【0034】
本発明抵抗体は、短くても高い圧力が得られるので、3方ジョイントなどに直接接続でき、分岐により簡単に微量の目的流速で異なる装置に導入できる。
実施例1におけるスルポア1μmの抵抗体3Aを長さ10mmに切断し、3方ジョイント23に直接取付けた。両端とも同じ抵抗体50,51を取付け、流体を半分に分割し、異なる電気化学検出器24と紫外検出器25に導入した。(図13)
イナートシル(登録商標)ODS−3、内径0.3mm、長さ150mmのカラムを用いて、0.1M燐酸カリウム+1mMEDTA、水溶液(pH3.0)で3μL/minで尿中にビタミンCを添加した試料をECD(200mV)24とUV(254nm)25で同時分析を行った。
各検出器へは、1.5μL/minずつ均等に導入していることが確認できた。
UVでのモニター結果を図14に、ECDのモニター結果を図15に示した。保持時間5.5minにビタミンC成分溶出が見られた。
分析の結果から抵抗体の内部容量によるピーク形状の変化もなく、各検出器とも同じ時間に検出されていることから、3μL/minという微量領域の流速でも、再現よく分岐され、かつ分岐された液にも影響を与えないことが確認できた。
このように、微量での分析を必要とする生体試料成分の異なる検出に分岐する場合に、本発明抵抗管を用いた分岐装置は有効であることが実証された。
【実施例6】
【0035】
本発明抵抗体は、短くても高い圧力が得られるので、3方ジョイントなどに直接接続でき、分岐により簡単に微量の目的流速を得ることができる。
例えば図16の市販3方ジョイント23に直接抵抗管を接続し、分岐を行い、一部を検出器26に導入し、それをモニターしながら必要部分を採取することができる。
実施例1における抵抗体1Aを長さ10mmに切断し、抵抗体42として3方ジョイント23に直接取付けた。検出側として、抵抗体3Aを長さ20mmに切断し抵抗体43として、3方ジョイント23に直接取付けた。抵抗体43の先には、フレキシブルなテフロン(登録商標)チューブ27を介して検出器26に導入させた。3方ジョイント23は、フラクショクコレクター28に直接取付け、出口を分割捕集するように設置した。30対1に分割され、一部検出しながら分割捕集された。
抵抗体1Aはスルポア2μm、抵抗体3Aはスルポア1μmである。
【0036】
イナートシル(登録商標)WP300Diol、内径0.5mm、長さ250mmのカラムを用いて0.2M燐酸ナトリウム溶液(pH6.8)で10μL/minで1.コンアルブミン(72kDa)、2.牛血清アルブミン(66kDa)、3.ミオグロビン(14kDa)の混合蛋白質をモニターしながらフラクションコレクターで各分割を捕集した。各ピークトップで10秒間ずつ分取した。
図17に、モニターした結果例を示した。再現性のよい結果が得られた。
捕集された各成分を、13%濃度アクリルアミド電気泳動ゲルで各フラクションの成分の分解状態を確かめた。
図18に電気泳動写真を示した。1レーンは標準マーカーで、2レーンは混合成分で、3,4,5レーンは夫々図17の各1,2,3に対応する各フラクション成分である。
その結果、微量でも再現性よく捕集できており、本発明抵抗管は吸着が無いことが確認された。更に、捕集されたたんぱくの分解も生じておらず、微量の分解し易いたんぱくを通しても変性が無いことが確認された。
【実施例7】
【0037】
質量分析計では、高感度分析をするためには、再現のよいイオン化は重要である。再現性のよいイオン化を行うためには低い流量での導入が必要となる。そのため、1μL/min以下への微量流量への分岐が必要である。更に、なるべく小さな均一な液滴にしてイオン化室に入れる必要があり、先を数〜数十ミクロン径にテーパー加工したスプレヤーを接続して用いることが行われているが、この小さな径への再現性のよいテーパー加工は難しく、再現性が得られず、歩留まりが悪い。又、そのスプレヤー自身の加工も難しく高価となる。本発明モノリス抵抗体では、均一な数〜数十ミクロン径のスルポアーを持つため、均一な液滴形成も可能となり、従来のような特殊なスプレヤーを接続することなく、直接分岐した液を導入することができる。しかし、メソ孔が存在すると液滴形成を阻害するため、メソ孔は2nm未満のモノリスでなければならない。更に、出来上がった液滴をイオン化しやすくするためには、外径が0.2mm以下であることが望ましい。
【0038】
実施例1と同様に、メチルトリメトキシシラン、共存物質としてのホルムアルデヒド及び触媒としての1mol/1硝酸水溶液をモル比で1:1.8:2.8の割合で混合し、均一溶液を得た。
これをイオン化し易い外径0.2mm以下の外径0.15mmの内径0.05mm、長さ5mのフュズドシリカチューブ入れて、両端をポリプロピレンシールフィルムでシールして、40℃で15時間ゲル化後、メタノール2mLで洗浄し、抵抗体を得た。この抵抗体を5cmに切断し、抵抗体12を質量分析計28のイオン化室に接続した。
抵抗体13には、実施例1で作成したスルポア2μmの抵抗体1Aを取付けた。(図19)
内径0.3mm、長さ150mmのイナートシル(登録商標)ODS−3 3μm HPLCカラムを用いて、流速6μL/minで、0.1%蟻酸を含む20%アセトニトリル水溶液から1%蟻酸を含む60%アセトニトリル水溶液への40分グラジエントにより、βカゼインのトリプシン消化物の分析を行った。UV側波長は210nmで質量分析装置28はナノESIプラスで検出した。
6μL/minの流速の流体は、抵抗体12と抵抗体13に対応して、UV検出器25に5μL/min、質量分析計28に1μL/minに再現よく分岐された。
更に、特別なスプレヤーなしに、抵抗体12による効果により、イオン化され、感度よく分析された。(図20)がUV検出器、図21が質量分析計の結果で、容量を少なく出来るモノリス抵抗体では、分岐後も遅れ時間なく検出することができた。
【実施例8】
【0039】
バイオや医薬品などの分野に於いて、2次元若しくは多次元LC/MS−MSを用いて、様々な生体試料中の蛋白質などの構造又は機能解析のニーズが益々増えてきた。イオン交換、サイズ排除及び逆相クロマトグラフィーなどの分離手法を目的に応じて組み合わせ、2次元又は多次元LCとして利用される。複雑な生体資料中の各目的成分が、2次元又は多次元LCシステムにおける最終段階のカラムから溶出された後に、スプリット手段を介して下流側へ分岐される。その際に、流れの一方Aは測定手段(例えばESI−MS)、もう一方の流れBはUV−VIS検出器を経てフラクションコレクターへスプリットされる。流れBがフラクショクコレクターによりウェルプレート又はMALDIプレートに分取される。ウェルプレートに分取される各目的成分は、構造・機能解析のため、更に様々な後処理を行う。又、MALDIプレートに分取される各目的成分は、添加されたマトリックスと共結晶し、プレート共にMALDI−TOF、MSに設置され、構造解析を行う。(図21)
【0040】
実施例1の抵抗体2Aの長さを20mmとした抵抗体を13に、実施例1の抵抗体3Aの長さを14mmとした抵抗体を12に取付けた。(図21)
内径0.3mm、長さ10mmのイナートシル(登録商標)CXを第1カラムとして、内径0.3MM、長さ150mmのイナートシル(登録商標)ペプチドC18を第2カラムとして2次元LCを組んだ。
第1カラムで塩濃度を変化させ、pKaで分離させ、第2カラムで逆相グラジエントを行った。第2カラム分析条件は、流速1.4μL/min、0.1%蟻酸を含む25%アセトニトリル水溶液から0.1%蟻酸を含む蟻酸を含む40%アセトニトリル水溶液までの30分リニアグラジエント分析を行った。
本発明抵抗体の効果により、質量分析28側に0.4μL/min、マルディプレート29側に1μL/minで再現よく導入された。30よりマトリクスα−cyano-4-hydroxycinnamic acid(CHCA)10mg/0.3%TFAを添加して、AngiotensinIを含むペプチドを分析した結果、紫外線検出器25の結果を図22に示した。
本発明抵抗体を通していない溶離液のMALDI−TOF−MS結果を図23に、AngiotensinIの溶出する11〜12分間の部分をMALDI検出した結果を図24に示した。
メソ孔作成に使用される界面活性剤などを添加せずに作成した2nm未満のメソ孔の本発明抵抗体では、溶液ブランクと同じバックグラウンド且つ再現よく最適流速に分割され、MADI−プレートにスポティングできることが実証できた。
又、13の抵抗体を29にスポテツィングする先部分に直接取付けて行った結果、同等の効果が得られた。
本発明抵抗体は、少量でも高圧が得られるので、抵抗体間にマトリクス添加などの別導入口などを設けても、再現のよい分岐が得られる。
【実施例9】
【0041】
スプリッターを用いた実際の分析への応用を行った。
図25に示したクロマトグラフは、下から内径200μm、表3に示したモノリス型カラム、内径100μm、50μmの分析カラムを用いて、同一生体タンパク質混合サンプル、同一グラジェントプログラムにて、同一線速となる流速にて分析を行った結果である。カラムの長さはともに150mmである。実際の流速は、内径200μmのカラムに於いては、スプッターを用いずにポンプから流速2.0μL/minで直接送液し、内径100μmのカラムに於いては、ポンプからの3μL/minの送液をスプリッターを用いて分岐し、カラムへは0.50μL/min送液されると設定し、内径50μmのカラムに於いては、ポンプからの2μL/minの送液をスプリッターを用いて分岐し、カラムへは0.15μL/min送液されると設定した。
分析条件
溶液:A;H2O(0.1%TFA),B;CH3CN(0.1%TFA)
A/B=80/20−(30min)−50/50(40min)−50/50
ポンプからの直接送液と比較しても、スプリッターを用いたクロマトグラム(上二つ)が同等の溶出パターンを示した。
このことは全ての分析に於いて、同一線速度、同一グラジェント条件で分析されたことを示し、スプリッターにより正確に設定流量をスプリットできたことを示している。
【実施例10】
【0042】
図26に示すように、分岐具以降のカラム側に、スルポア系や内径を調節することによって得られた異なる抵抗値を持つ抵抗体をカラム側抵抗体(内部抵抗)31−34として並列に設置し、使用目的に応じた抵抗体にカラムを接続し、それ以外の抵抗体は流路を閉鎖、若しくは充分大きな抵抗体をその後に接続することにより、カラムを接続した抵抗体と廃液側に抵抗比に応じたスプリットを行うことが可能である。
夫々の抵抗体をロータリーバルブ35(一つの入口(出口)と複数の)を介して接続し、バルプの切り換えにより単一の抵抗管を選択する形態を取ることも可能である。このほうが、流路を閉鎖する必要もなく、簡便に使用目的に合せた抵抗管を選択することが可能である(図27)。ロータリーバルブとは一つの入口(出口)と複数の出口(入口)を有し、入口と出口をつなぐ流路を回転させて選択することの出来る流路切替え装置である。
【0043】
例えば、実施例1に於いて、ホルムアルデヒドの混合比を0.3,0.8,1.3,1.8,2.5に代え、スルポア20μm、スルポア10μm、スルポア5μm、スルポア2μm、スルポア1μmのモノリス抵抗体を作製する。
4にスルポア5μmの抵抗体、31にスルポア2μmの抵抗体、32にスルポア5μmの抵抗体、33にスルポア1μmの抵抗体34にはスルポア20μmの抵抗体を取付けると、略スルポア断面積に反比例するので、31のラインを用いる場合では、4ラインに対して、6:1に分割された流量が得られる。
同様に、32ラインでは1:1、33ラインでは1:4、34ラインでは1:16に分割された流量が得られる。
又、図28のように分析カラムに接続する抵抗管の上流・下流側双方に同期させたロータリーバルブ35,36を接続することにより、抵抗管の下流の分析カラム接続用の流路を単一に統一することが可能となり、抵抗管に合せてカラムを接続しなおす必要性がなくなる。これは、特に径の小さなカラムを接続する際の煩雑な操作を軽減させることができる。
【0044】
又、図29のようにバルブとしてリサイクルバルブ37(図中では3種類の抵抗管から2つの抵抗を選択し、廃液側およびカラム側とする)を用いることにより、3種類(若しくはそれ以上)の抵抗管38−40から任意の2種類の抵抗管を選択することにより、更にフレキシブルなスプリット比を作り出すことが可能となる。
同様に、38にスルポア10μmの抵抗体、39にスルポア2μmの抵抗体、40にスルポア1μmの抵抗体、38と39のラインを用いる場合では、25:1に分割された流量が得られる。
39と40のラインを用いる場合では、1:4に分割された流量が得られる。
これらのように、スルポアの異なるモノリス構造体と各種バルブを組合せることにより、自動で流量を切換えたりすることもできるようになる。
【実施例11】
【0045】
液体は温度により粘性が変化する。スプリッターに於いても抵抗体内での液体の粘性の変化は送液抵抗の変化となり、つまりはカラムへの流速の変化を生じる。フューズトシリカを用いた場合、抵抗管内の液体が大きいため、周囲の温度変化による粘性の変化が大きくなり、スプリット比のズレが生じ易い。一方モノリス充填チューブを抵抗管と用いる場合には、抵抗管内の液体は少量に抑えられるため、温度の影響を受けたとしても、その影響を最小限に押えることが可能である。
本発明品実施例4の温度による流速の変化を示す。
スプリッター装置をオーブン内に配し、温度を10℃、23℃、40℃に制御し、20%アセトニトリル水溶液及び水を送液し、カラム側出口の流速を測定した。(表6)
その結果、20%アセトニトリル水溶液、水の双方で、0.005μL/minの変動が確認された。しかし、この変動値は使用流速の1%程度の変動であり、実際の分析には充分無視できる変動である。
【表6】

【実施例12】
【0046】
分岐後にカラムへ送液される流量を更に正確に制御する方法を以下に示す。(図30)
実施例2で示したようなスプリット機構に於いて、カラムから送出された液体の流量を測定することの出来る流量センサー41を設置する。センサーによって計測される流量がカラムの適正流量でない場合、センサーからポンプへのフィードバックにより、ポンプからの送液量を調整することにより、カラムへの最適流量を安定して供給することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】従来装置の概略説明図
【図2】従来装置の概略説明図
【図3】本発明一実施例抵抗体の断面SEM写真図
【図3−1】同上拡大図
【図4】本発明他実施例抵抗体の断面SEM写真図
【図4−1】同上拡大図
【図5】本発明他実施例抵抗体の断面SEM写真図
【図5−1】同上拡大図
【図6】本発明一実施例スプリッター概略説明図
【図7】同上実施例による実施クロマトグラム
【図8】本発明他実施例スプリッター概略説明図
【図9】図8の具体的実施例概略説明図
【図10】図8の具体的実施例概略説明図
【図11】図8,9の実施例によるクロマトグラム
【図12】図10の実施例によるクロマトグラム
【図13】本発明他実施概略説明図
【図14】同上の実施例によるクロマトグラム
【図15】同上の実施例によるクロマトグラム
【図16】本発明他実施概略説明図
【図17】同上の実施例によるクロマトグラム
【図18】同上の実施例電気泳動写真図
【図19】本発明他実施概略説明図
【図20】同上実施例紫外線検出器によるクロマトグラム
【図20−1】同上実施例質量分析によるクロマトグラム
【図21】本発明他実施概略説明図
【図22】同上実施例紫外線検出器によるクロマトグラム
【図23】同上実施例MALD−TOF−MSによるクロマトグラム
【図24】同上実施例MALDI検出器によるクロマトグラム
【図25】図9,10の実施例によるクロマトグラム
【図26】本発明他実施例説明図
【図27】本発明他実施例説明図
【図28】本発明他実施例説明図
【図29】本発明他実施例説明図
【図30】本発明他実施例説明図
【符号の説明】
【0048】
11 カラム
12 廃液側抵抗
13 カラム側抵抗
14 コネクタ
15 スプリター装置
16 素管
17 廃液側抵抗体
19 モノリス側抵抗体
15 コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口から出口まで0.5μm〜100μmの貫通した連続孔を持つモノリス構造体を抵抗体として用いて、液体或いは気体の流れを分岐することにより、モノリス構造体に対応した所望の流速を得ることを特徴とする微小流量の流体制御方法。
【請求項2】
モノリス構造体のメソ孔が2nm未満であることを特徴とする請求項1に記載の微小流量の流体制御方法。
【請求項3】
液体或いは気体の流れを分岐することにより、目的の流速に対応した入口から出口まで0.5μm〜100μmの貫通した連続孔を持つモノリス構造体より成る抵抗体。
【請求項4】
モノリス構造体のメソ孔が2nm未満であることを特徴とする請求項3に記載の抵抗体。
【請求項5】
液体或いは気体の流れを分岐する分岐部或いは分岐管に設けたことを特徴とする請求項3又は請求項4の何れかに記載の抵抗体。
【請求項6】
外径0.2mm以下のキャピラリー内に入口から出口まで0.1μm〜20μmの貫通した連続孔を持ち、且つメソ孔が2nm未満のモノリス構造体を作製したMSスプレヤー用抵抗体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図3−1】
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【図4】
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【図4−1】
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【図5】
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【図5−1】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図20−1】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2006−208334(P2006−208334A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−24401(P2005−24401)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(390030188)ジーエルサイエンス株式会社 (37)
【Fターム(参考)】