微小濃度の化学種を測定するセンサ用材料組成物及びセンサの使用方法
サンプル溶液中の化学種の濃度をセンサフィルムで定量測定する方法。サンプル溶液中の化学種に曝露されると紫外、可視又は近赤外スペクトル範囲の光学的特性を変化する指示薬を含有する化学組成物を含むヒドロゲルセンサフィルムを作製する。フィルムを固定量のサンプル溶液に曝露する。センサフィルムから測定した平均吸光度を用いてサンプル溶液中の化学種の濃度を定量する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広義にはサンプルの光分析に用いるセンサに関し、特に化学種の微小濃度を測定するセンサ用材料組成物及びセンサを用いて化学種の微小濃度を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
流体中の揮発性及び非揮発性化合物を定量するセンサ方法及びセンサフィルムは当技術分野で周知である。代表的には、特別にこの目的に設計された専用のセンサシステムを用いて、これらのパラメータの定量を行う。これらのセンサシステムは、電気化学、光、音響及び磁気など様々な原理に基づいて作動する。例えば、センサシステムを用いて、生物学、化学及び生化学的サンプルの光検出を行う。比色液体及び固体試薬で作動する様々な分光センサが開発されている。実際、分析化学における分光測光指示薬(インジケータ)は、多数の市販の光センサ及びプローブに最適な試薬となっている。
【0003】
光センサは他の形式のセンサに比べて多数の利点を有するが、中でも変換原理の範囲が広いことがもっとも重要である。光センサは他のセンサが適用できない被分析物(アナライト)にも応答できる。また、光センサでは、被分析物の分光的特徴を測定する「直接」的被分析物検出だけでなく、感知用試薬を用いる「間接」的被分析物測定も行うことが可能である。このような試薬は、分析すべき化学種と相互作用すると、その光学的特性、例えば弾性又は非弾性散乱、吸収、光度、発光寿命又は偏光状態に変化を生じる。この種の間接的検出は化学的選択性と分光測定により与えられる測定値とを組合せ、多くの場合、試薬なしでは面倒な干渉作用を克服することができる。
【0004】
分光測光指示薬は元々水性用途に開発されているので、分光指示薬の固体支持体への固定化は、光感知に応用する上での肝要な問題である。試薬型光センサ用のポリマー材料はしばしば複雑な多成分組成物である。重要な処方成分には、化学的に敏感な試薬(指示薬)、ポリマーマトリックス、補助添加剤及び共通溶剤もしくは溶剤混合物が含まれる。しかし、ある所望の官能価を生成するセンサ材料の最良処方を予想するのは困難である。
【0005】
例えば、リン酸塩(ホスフェート)は水処理産業においてしばしば分析される物質である。リン酸塩分析は、環境モニタ、臨床診断で、そして採鉱や冶金プロセスなどの他の産業界でもよく行われる。リン酸塩分析には普通光センサを用いる。
【0006】
リン酸塩を測定する光学的方法としては、モリブデンブルー法がよく用いられている。モリブデンブルー法の基本的機構では、オルトリン酸塩とモリブデン酸塩との反応によりヘテロポリ酸(HPA)を形成する。モリブデン酸を形成し、ついで酸性条件で還元剤を用いて還元すると、発色する。HPA化学に基づく水溶液中のリン酸塩分析法はほかにもいくつか知られている。バナドモリブドリン酸法、モリブデン−塩化第一錫法、カチオン色素−HPA錯体法などである。HPA法は、被分析物との接触後にセンサの色変化が起こる比色法、及び/又は被分析物との接触後にセンサの光学的特性に測定可能な変化が起こる測光法とすることができる。
【0007】
HPAの形成に基づくリン酸分析用の既知の測光法は、強い酸性媒体を必要とし、センサ処方に濃硫酸溶液を使用することを必要とする。カチオン色素−HPA錯体法の場合には、普通トリフェニルメタン色素を用いる。中性pHのトリフェニルメタン溶液の吸収帯は通常色素−HPA錯体の吸収帯と重複する。したがって、色素−HPA錯体の形成による吸光度変化を顕現させるために、リン酸塩測定用の試験媒体のpHを色素の転移pHより低く制御しなければならない。既知の測光法には、腐食性かつ有毒な試薬を必要とし、カチオン色素−HPA錯体の場合にはpH依存性が強いなど、いくつかの欠点がある。
【0008】
リン酸塩分析のHPA法のもう一つの欠点はケイ酸塩干渉である。サンプル水中の3.0ppmのケイ酸塩がカチオン色素−HPA錯体法を妨害することが知られている。よく用いられているモリブデンブルー法は、10ppmまでのケイ酸塩濃度にしか耐えられないことが知られている。ケイ酸塩は天然水中に必ず存在し、したがってこのような場合にリン酸塩の低濃度を測定するのは、ケイ酸塩干渉のため、困難になる。
【0009】
さらに、既知の測光法に用いられる試薬は通常非相溶性であり、リン酸塩測定へのアプローチが段階的になる。サンプルを予め試薬が存在する反応器(又は密閉位置)に添加し、ついで別に保存された還元剤に曝露する。試薬の不安定性と化学的相溶性の欠如とが単一反応器方式を妨害し、内蔵式センサの開発を阻止する。
【0010】
センサを現場試験装置として都合良くかつ効率よく使用するために、内蔵式固体センサが必要とされる。光指示薬は元々水性用途に開発されているので、光指示薬の固体支持体への固定化は、光感知に応用する上での肝要な問題である。試薬の非相溶性と低pH要求とがこの固定化を妨げる。さらに、固体センサの低濃度への感度も問題である。例えば、米国特許第5858797号には、モリブデンブルー化学に基づくリン酸塩試験ストリップが、6ppm以上でのみリン酸塩濃度に敏感であると記載されている。さらに、試薬安定性問題を抑制するために、モリブデンブルー試薬と還元剤とは別々の層に堆積しなければならない。
【特許文献1】米国特許第5858797号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、多数の定量的検定及び/又は他の生物学、化学及び物理環境パラメータの光分析を、高い再現性で行うのに簡単に使用できる、優れたセンサ感度、少ない干渉応答、高い安定性、その他の望ましいパラメータを与える、簡単なセンサが切実に求められている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の態様では、本発明は、サンプル溶液中の化学種の濃度をセンサフィルムで定量測定する方法を提供する。本方法は、サンプル溶液中の化学種に曝露されると、紫外、可視又は近赤外スペクトル範囲の光学的特性を変化する指示薬を含有する化学組成を有するヒドロゲルセンサフィルムを製造する工程を含む。本方法は、さらに、センサフィルムを所定量のサンプル溶液に曝露する工程を含む。本方法は、さらに、光学走査装置を用いて、指示薬の極大吸収ピーク(λmax)近くの波長でセンサフィルムの吸光度を測定する工程を含む。本方法は、さらに、センサフィルムから測定された平均吸光度を用いて、サンプル溶液中の化学種の濃度を定量する工程を含む。
【0013】
別の態様では、本発明は、サンプル溶液中の化学種の濃度を複数のセンサフィルムで定量測定する方法を提供する。本方法は、サンプル溶液中の化学種に曝露されると紫外、可視又は近赤外スペクトル範囲におけるその光学的特性を変化する複数のヒドロゲルセンサフィルムを製造する工程を含み、ここでヒドロゲルフィルムに添加される化学組成物がpH指示薬、界面活性剤及び酸を含有する。本方法はまた、複数のセンサフィルムそれぞれの酸濃度を所定のパターンにしたがって変動させる工程を含む。本方法はまた、複数のセンサフィルムを所定量のサンプル溶液に曝露する工程を含む。本方法はさらに、光学走査装置を用いて、指示薬の極大吸収ピーク(λmax)近くの波長でセンサフィルムの吸光度を測定し、センサフィルムから測定された平均吸光度を用いて、サンプル溶液中の化学種の濃度を定量する工程を含む。
【0014】
他の態様では、本発明は、サンプル溶液中に微小濃度で存在する化学種の濃度の測定に用いるセンサを提供する。本センサは、四級アンモニウム塩、四級ホスホニウム塩又は四級イミダゾリウム塩と、指示薬とを含有するヒドロゲルセンサフィルムを含む。指示薬は、サンプル溶液中の化学種に曝露されると紫外、可視又は近赤外スペクトル範囲におけるその光学的特性を変化する。指示薬は、四級アンモニウムイオンとイオン対を形成することによって、ヒドロゲルフィルム中に固定化される。ここで、四級アンモニウム塩の濃度がイオン対形成に必要な化学量論的量よりも実質的に高い。
【0015】
さらに他の態様では、本発明は、サンプル中に微小濃度で存在する化学種の濃度の測定に用いるセンサを提供する。本センサは、指示薬と、化学種への応答のセンサ感度を高める添加剤とを含有するヒドロゲルセンサフィルムを含む。ここで、添加剤はポリマーであり、センサフィルムは、ヒドロゲル、指示薬及び第2ポリマーを共通溶剤混合物に溶解することによって製造される。指示薬は、サンプル溶液中の化学種に曝露されると紫外、可視又は近赤外スペクトル範囲におけるその光学的特性を変化する。
【0016】
さらに他の態様では、本発明は、内蔵式リン酸センサを提供する。内蔵式リン酸センサは、1種以上の被分析物特異的試薬及び1種以上のpH調節剤を含有する。内蔵式リン酸センサは、溶液状態で使用しても、固体装置として使用してもよい。内蔵式リン酸センサを用いて、試験サンプル中のリン酸塩濃度を測定する方法も記載される。
【0017】
さらに他の態様では、被分析物特異的試薬は、モリブデン酸塩及び色素、そしてpH調節剤としてスルホン酸を含有する。内蔵式リン酸センサは、さらに溶剤を含有してもよく、ポリマーマトリックス中に固定化してもよい。
【0018】
さらに他の態様では、被分析物特異的試薬は、金属錯体及び色素、そしてpH調節剤としてスルホン酸を含有する。内蔵式リン酸センサは、非水溶剤を含有してもよい。さらに他の態様では、被分析物特異的試薬は、金属錯体及び色素、そしてpH調節剤としてアミンを含有する。内蔵式リン酸センサは、ポリマーマトリックス中に固定化してもよい。
【0019】
本発明の実施形態によれば、試験サンプル中のリン酸塩を測定する方法も提供される。本方法は、試験サンプルを上述した内蔵式リン酸センサに接触させ、この試験サンプルと内蔵式リン酸センサとの接触によって生じる内蔵式リン酸センサの光学的特性の変化を測定し、光学的特性の変化をリン酸塩濃度に変換する工程を含む。
【0020】
本発明及びその従来技術に対する利点は、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲を添付の図面を参照しながら読むことで、明らかになるはずである。
【0021】
、添付図面に関連した以下の本発明の実施形態の説明を参照することで、本発明の上記その他の特徴が一層明らかになり、また本発明の構成自体もよく理解できるはずである。
【0022】
なお、すべての図面において、対応する参照符号は対応する要素を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、図面を参照しながら本発明を詳細に説明する。本発明を実施可能にするために、好適な実施形態を詳細に説明する。本発明を特定の好適な実施形態について説明するが、本発明はこれらの好適な実施形態に限定されない。反対に、本発明は、以下の詳細な説明から明らかになるように、多数の代替、変更及び均等な要素を包含する。
【0024】
本発明は、サンプル中に微小濃度で存在する化学種の濃度を測定する優れたセンサ材料組成物及び方法に関する。本発明の内蔵式センサの実施形態は、水性もしくは非水性溶液の形態で用いることも、固体装置として用いることもできる。このような内蔵式センサは、被分析物の濃度の測定に試薬の後添加が不要であり、被分析物測定テストに必要な工程の数が最小であるという利点を有する。さらに、内蔵式センサは感度が高く、応答時間が速い。本発明の実施形態は、試験サンプル中の化学種の濃度を測定する方法も提供する。試験サンプル中の化学種の濃度は、濃度のわかっているサンプルを試験することによって描かれた検量線を用いて定量することができる。
【0025】
一態様では、内蔵式センサは光センサである。光センサは他の形式のセンサに比べて多数の利点を有するが、中でも変換原理の範囲が広いことがもっとも重要である。光センサは他のセンサが適用できない被分析物にも応答できる。また、光センサでは、被分析物の分光的特徴を測定する「直接」的被分析物検出だけでなく、感知用試薬を用いる「間接」的被分析物測定も行うことが可能である。このような試薬は、分析すべき化学種と相互作用すると、その光学的特性、例えば弾性又は非弾性散乱、吸収、光度、発光寿命又は偏光状態に変化を生じる。この種の間接的検出は化学的選択性と分光測定により与えられる測定値とを組合せ、しばしば試薬なしでは面倒な干渉作用を克服することができる。
【0026】
本発明によれば、センサ材料は、微小濃度の化学種に曝露されると紫外(UV)、可視又は近赤外(IR)スペクトル範囲におけるその光学的特性を変化する。フィルムは、通常、化学的に敏感な、被分析物に特異的な試薬(例えば、蛍光もしくは比色指示薬)、ポリマーマトリックス又はポリマーマトリックスの組合せ、及び補助添加剤を含有するポリマー系組成物であり、この場合、前記成分を共通溶剤もしくは溶剤混合物に溶解した溶液からフィルムを製造する。被分析物特異的試薬をポリマーマトリックス内に固定化してセンサフィルムを形成する。添加剤の例には、界面活性剤及び内部緩衝剤がある。他の添加剤を配合することもできる。センサフィルムに用いられるポリマーは選択された被分析物に対して透過性であり、ここで被分析物はセンサにより検出される1つの化学種であるか、1群の化学種である。被分析物特異的試薬は、被分析物の濃度の関数としてその光学的特性(例えば、吸光度、蛍光)の変化を生じる。望ましくは、被分析物特異的試薬は、フィルム外でその光学的特性の変化を生じ、そうすれば、応答の変化が、センサ処方から与えられるような干渉種の存在により影響されない。測定は、当業者に周知の紫外/可視/近赤外検出システムを用いて行う。
【0027】
センサフィルムの組成を調整することによって所望の応答を達成する。この場合、組成物がフィルム中に追加成分を含有する。例えば、ポリマーマトリックス成分が追加のポリマーとなるようにポリマーマトリックス成分を選択することで、固定化された被分析物特異的試薬の酸化電位を調整することによって、所望のセンサ応答を達成する。センサフィルムが内蔵式であり、フィルム外からの補助試薬を必要としないのが望ましい。
【0028】
一実施形態では、上記内蔵式センサは、被分析物特異的試薬及びpH調節剤を含有する。ここで用いる用語「被分析物特異的試薬」は、物理的、化学的及び生物学的種を検出するのに有用な、比色、光屈折、光互変、熱変色、蛍光、弾性散乱、非弾性散乱、偏光、その他の光学的特性の変化を生じる化合物である。被分析物特異的試薬には、金属錯体又は塩、有機及び無機色素又は顔料、ナノ結晶、ナノ粒子、量子ドット、有機発蛍光団、無機発蛍光団及びこれらの組合せがある。
【0029】
センサ中のpH調節剤は緩衝剤として作用し、センサ処方のpHレベルを感知機構にとって好ましい一定のpHに維持する。pH調節剤の選択は、使用する被分析物特異的試薬の性質に依存するが、pH調節剤には酸、塩基又は塩が挙げられる。
【0030】
上記内蔵式センサは、溶液形態でも、固体装置としても使用することができる。センサを溶液として適用する場合、センサの異なる構成成分に対して共通溶剤を選択する。このような溶剤の例には、脱イオン化水(DI水)、1−メトキシ−2−プロパノール(Dowanol)、エタノール、アセトン、クロロホルム、トルエン、キシレン、ベンゼン、イソプロピルアルコール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、メチレンクロライド、テトラヒドロフラン、エチレングリコール二酢酸及びペルフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)があるが、これらに限らない。
【0031】
内蔵式センサを固体装置として適用する場合、上記センサをポリマーマトリックスに付着又は固定化する。つぎにセンサを基板上のフィルムとして配置する。センサフィルムを製造するのに用いたポリマー材料は、選択性、感度及び検出限界などの検出特性に影響することに留意すべきである。したがって、センサフィルムに適当な材料は、所望の応答時間、所望の透過率、所望の溶解度、透明度及び硬度、並びに分析すべき対象物質に関与するその他の同様の特性を与えることができるポリマー材料から選択する。
【0032】
センサフィルムのポリマーマトリックスは、プラスチックフィルム、即ち樹脂フィルムであるのが好ましい。ポリマー支持体を形成するのに用いる樹脂は、センサ用途に依存する。樹脂を溶剤に溶解し、被分析物特異的試薬が液体媒体中に分散されるようにする。或いは、被分析物特異的試薬を予め形成されたプラスチックフィルムに直接適用することができる。一実施形態では、ポリマーフィルムを作製し、蒸発など既知の手段によりフィルムから溶剤を除去した後、乾燥フィルムを1種以上の試薬を含有する薬液に露呈する。このようにして、試薬をフィルム中に組み込む。一実施形態では、透明プラスチック表面を薬剤混合物の薄い層で被覆し、空気中暗所で数時間乾燥させることによって、センサフィルムを製造する。フィルムの最終厚さは、望ましくは約0.1〜約200μm、より好ましくは0.5〜100μm、さらに好ましくは1〜50μmである。
【0033】
応答を評価するために、フィルムを被分析物の水性サンプルに曝露する。被分析物の水性サンプルの量が約30μL〜約50μLのサンプルの範囲であるのが望ましいが、本発明の範囲から逸脱することなく他の量も考えられる。曝露時間は、望ましくは約0.5〜1000秒、より好ましくは1〜500秒、さらに好ましくは5〜300秒である。一実施形態では、水サンプルを除去した後、センサフィルムの測定を行う。或いは、測定中に水サンプルが存在してもよい。他の実施形態では、水曝露前、水曝露中、及び水曝露後に、連続的に測定を行う。さらに他の実施形態では、水曝露前及び水曝露中に、連続的に測定を行う。
【0034】
センサフィルムを製造するのに用いたポリマー材料は、選択性、感度及び検出限界などの検出特性に影響することに留意すべきである。したがって、センサフィルムに適当な材料は、所望の応答時間、所望の透過率、所望の溶解度、透明度及び硬度、並びに対象物質に関与するその他の同様の特性を与えることができるポリマー材料から選択する。本発明にしたがってポリマー支持体として使用できる適当なポリマーはヒドロゲルである。ここで用いる用語「ヒドロゲル」は、親水性ポリマーが一緒に結束されて、水膨潤性、水不溶性構造を形成している三次元ネットワークである。用語「ヒドロゲル」は、米国特許第5744794号に記載されているように、湿潤状態の親水性ポリマーにも乾燥状態の親水性ポリマー(キセロゲル)にも適用される。
【0035】
これらのヒドロゲルを一緒に結束するのに、種々の異なる方法を使用できる。第一に、親水性ポリマーの放射線もしくはフリーラジカル架橋によるヒドロゲルの結束を利用することができ、その例には、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(グリセリルメタクリレート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(N−アクリルアミド)、ポリ(N,N−ジメチルアミノプロピル−N’−アクリルアミド)、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(アクリル酸)ナトリウム/カリウム、多糖類、例えばキサンテート、アルギネート、グアガム、アガロースなど、ポリ(ビニルピロリドン)及びセルロース誘導体がある。第二に、親水性ポリマー及びモノマーを適当な多官能性モノマーで化学架橋することによる結束を利用することができ、その例には、適当な架橋剤、例えばN,N’−メチレンビスアクリルアミド、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジ−トリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、プロポキシル化グリセリルトリアクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、その他のジ−及びトリ−アクリレート及びメタクリレートで架橋されたポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート);ヒドロキシエチルメタクリレート単量体とジメタクリレートエステル架橋剤との共重合;ヒドロキシル終端ポリ(エチレングリコール)とポリイソシアネートとの反応、もしくはトリオールのような多官能性モノマーの存在下でのジイソシアネートとの反応によって製造したポリ(エチレンオキシド)系ポリウレタン;並びにジアルデヒド、ジエポキシド及び多塩基酸で架橋したセルロース誘導体がある。第三に、ブロック及びグラフトコポリマー中に親水性モノマー及びポリマーを導入することによる結束を利用することができ、その例には、ポリ(エチレンオキシド)の、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、アクリル酸(AA)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリ(アクリルアミド−コ−メチルメタクリレート)、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシプロピルメタクリレート−コ−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート)などの適当なポリマーとのブロック及びグラフトコポリマー;ポリ(ビニルピロリドン)−コ−ポリスチレンコポリマー;ポリ(ビニルピロリドン)−コ−ビニルアルコールコポリマー;ポリウレタン;ポリウレタンウレア;ポリ(エチレンオキシド)を主成分とするポリウレタンウレア;ポリウレタンウレア及びポリ(アクリロニトリル)−コ−ポリ(アクリル酸)コポリマー;及び種々のポリ(アクリロニトリル)、ポリ(ビニルアルコール)及びポリ(アクリル酸)の誘導体がある。親水性ポリマーと他のポリマーとの間に分子複合体形成が起こることもあり、その例には、ポリ(アクリル酸)及びポリ(メタクリル酸)とのポリ(エチレンオキシド)ヒドロゲル複合体がある。最後に、高分子量親水性ポリマーの絡み合い架橋による結束を利用でき、その例には、多官能性アクリルもしくはビニルモノマーと混合した高分子量ポリ(エチレンオキシド)に基づくヒドロゲルがある。
【0036】
前述したように、上記ポリマーの単量体成分のコポリマー又は共重縮合体、並びにこれらのポリマーのブレンドも利用できる。これらの材料の適用例が、Michie et al., "Distributed pH and water detection using fiber-optic sensors and hydrogels," J. Lightwave Technol. 1995, 13, 1415-1420; Bownass et al., "Serially multiplexed point sensor for the detection of high humidity in passive optical networks," Opt. Lett. 1997, 22, 346-348; 及び米国特許第5744794号に記載されている。
【0037】
前述したように、ヒドロゲルを形成するには、ポリマーマトリックスを、ジ(エチレングリコール)メチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、エタノール、アセトン、クロロホルム、トルエン、キシレン、ベンゼン、イソプロピルアルコール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、メチレンクロライド、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジアセテート、ペルフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)などの適当な溶剤に溶解する。樹脂を含有する溶液中の溶剤の濃度は一般に約70重量%以上であり、約75重量%〜約90重量%が望ましく、約80重量%が好ましい。後述する例示目的に用いる1つの好適なヒドロゲルは、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、即ちpHEMAを1−メトキシ−2−プロパノールを含む溶剤に溶解したものである。
【0038】
センサフィルムのポリマーマトリックスは、所定の被分析物に対して透過性であるのが好ましい。センサフィルムは、寸法(即ち分子量)、親水性/疎水性、相(即ち被分析物が液体か、気体か、固体か)、溶解度、イオン電荷、コロイド状もしくは粒状物質の拡散阻止能、又は被分析物自体に加えて水サンプルの組成(例えばカルシウムの測定中のサンプルのpH)に基づいて、被分析物に対して選択的に透過性であってもよい。
【0039】
被分析物特異的試薬をポリマーマトリックス中に導入するか、ポリマーマトリックスに適用して、センサフィルムを製造する。被分析物特異的試薬として使用される材料には、当技術分野で指示薬として知られる色素及び試薬がある。ここで用いる「被分析物特異的試薬」は、物理的、化学的及び生物学的種を検出するのに有用な、比色、光屈折、光互変、熱変色、蛍光、弾性散乱、非弾性散乱、偏光、その他の光学的特性を示す指示薬である。被分析物特異的試薬には、有機及び無機色素、有機及び無機顔料、ナノ結晶、ナノ粒子、量子ドット、有機発蛍光団、無機発蛍光団及び類似の材料がある。
【0040】
被分析物特異的試薬として使用できる化合物の例には、有機色素、有機発蛍光団、蛍光色素、IR吸収性色素、UV吸収性色素、光互換性色素、熱変色性色素、スルホンフタレイン色素、その他この目的に用いることのできる既知の色素がある。色素の具体例には、ブロモピロガロールレッド(Bromopyrogallol Red,)、キシリジルブルー(Xylidyl Blue)I、クロロホスホナゾ(Chlorophosphonazo)III、ブリリアントグリーン、キサンテン色素、例えばローダミンB、ローダミン6G、エオシン、フロキシンBなど、アクリジン色素、例えばアクリジンオレンジ、アクリジンレッドなど、アゾ色素、例えばエチルレッド、メチルレッドなど、ポルフィリン色素、フタロシアニン色素、シアニン色素、例えば3,3’−ジエチルチアカルボシアニンヨージド、3,3’−ジエチルオキサジカルボシアニンヨージドなど、メロシアニン色素、スチリル色素、オキソノール色素、トリアリールメタン色素、メチレンブルー、フェノールブルーなどがある。ブロモチモールブルー及びブロモクレゾールグリーンなどのpH感受性色素を含む他の色素も同様に使用できる。被分析物特異的試薬として使用できる蛍光性材料は、センサフィルム上の特定の所定位置に結合し、特定波長の光で励起されると蛍光を発する。適当な波長は約200nm〜約1100nmの範囲、より好ましくは約300nm〜約1000nmの範囲であり、約350nm〜約950nmの範囲が特に好ましい。他の実施形態では、特定の所定位置に結合する非蛍光性の被分析物特異的試薬を使用できる。このような試薬には、光吸収性材料、例えば近赤外(NIR)吸収性材料がある。NIR吸収性材料の例には、カーボンブラック及びポリ(スチレンスルホネート)/ポリ(2,3−ジヒドロチエノ(3,4−b)−1,4−ジオキシン)がある。一実施形態では、被分析物特異的試薬は、約620〜670nmの光を吸収する光吸収性試薬である。別の実施形態では、被分析物特異的試薬は約750〜820nmの光を吸収する光吸収性試薬である。他の実施形態では、被分析物特異的試薬は約380〜420nmの光を吸収する光吸収性試薬である。これらの色素は、所望の用途に応じて、単独で用いても、組み合わせて用いてもよい。所定の用途に用いる有機化合物の選択及びその量は、有機化合物の特性並びにそれを用いる目的に依存する。例えば、当技術分野で周知のように、蛍光色素を樹脂バインダにppm濃度で添加することができる。
【0041】
本発明の一実施形態では、被分析物特異的試薬と親油性対向イオン、例えば四級アンモニウムイオンとのイオン対を形成することによって、被分析物特異的試薬をヒドロゲルマトリックス中に固定化する。四級アンモニウムイオンが被分析物特異的試薬の吸収スペクトルに変化をもたらし得ることが知られている。しかし、予期せざることには、四級アンモニウムイオンを、被分析物特異的試薬とのイオン対形成に必要とされる化学量論的量よりも実質的に高い濃度で添加すると、指示薬の選択性と感度が格段に向上することを見出した。ここで用いる「イオン対形成に必要とされる化学量論的量よりも実質的に高い濃度」は、四級アンモニウムイオンを、指示薬に対する化学量論的量より約5〜1000倍の濃度で添加することを意味する。限定するわけではないが、例を挙げると、四級アンモニウムイオン:指示薬のモル比285:1が特定のモリブデン酸センサに望ましいことが確認された。これに対して、モル比18:1が亜硫酸センサに最適であると確認された。特定の説明に拘束されるものではないが、臨界的ミセル濃度より高い四級アンモニウムイオンの量がフィルム中に存在する場合に起こる物理的変化は、その表面で2つ以上の指示薬−被分析物錯体を拘束するミセルの形成である、と現在のところ考えられる。かくて1より大きい配位子−金属比がカチオンミセルの存在下で形成され、指示薬−被分析物の予想紫外−可視−近赤外分光応答の増進をもたらし得る。
【0042】
以下に例示の目的で(限定のためでなく)使用するイオン対の一例は、BP Red−MoO4指示薬システムの場合、ブロモピロガロールレッド(BR)及びベンジルジメチルテトラデシルアンモニウムクロリド(ゼフィラミン)である。四級アンモニウム塩の存在が、BP Red−Moキレート吸収極大値の有意な深色シフト並びにキレート吸収帯の増強をもたらすことが示された。このフィルムに用いる四級アンモニウム塩は、構造及び質量に関して、ピーク吸収(λmax)の位置のより長い波長側へのシフトを達成するように選んだ。表1に、湿潤状態のpHEMAフィルム上の選択された四級アンモニウム塩が発揮するλmaxを列挙する。
【0043】
【表1】
四級アンモニウム塩をイオン対形成に必要とされる化学量論的量よりも実質的に高い濃度で添加することによって、指示薬の選択性及び感度の格段の向上が達成された。四級アンモニウム塩を色素に対して化学量論的量を上回る量添加した場合、λmaxの長波長側への有意な吸光度シフト、望ましくは約10nm〜約30nmの、さらに望ましくは約20nmの吸光度シフトが認められた。このシフトは、フィルムをλmaxに近い波長で測定するときの検出感度の有意な向上を可能にする。測定波長がλmaxの約1〜80nm以内であるのが望ましい。特定の理由に限定されるものではないが、この効果はカチオンミセルの界面上により高次(例えば、より高い配位子:金属比)なBP Red−MoO4キレートが形成される結果であると考えられる。
【0044】
本発明の別の実施形態では、サンプル溶液に曝露された後変色する化学組成物を含有する多重の透明ヒドロゲルフィルムを製造して、サンプル溶液の定量測定値を得る。この実施形態の一例では、サンプル溶液のアルカリ度を求めるのに使用する多重フィルムを製造し、この多重フィルムは、サンプル溶液中のアルカリ種に曝露された後変色する化学組成物を含有するのが望ましい。望ましくは約2〜12枚の透明フィルム、より望ましくは約2〜8枚の透明フィルムを製造し、サンプル溶液に曝露する。
【0045】
一実施形態では、ヒドロゲルフィルムに添加する化学組成物は、pH指示薬、界面活性剤、及び酸を含有する。適当な界面活性剤には、四級アンモニウム塩、例えばセチルトリメチルアンモニウムブロミド、トリドデシルメチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、その他多数がある。界面活性剤が、フィルム中に浸出する指示薬の量を減らすか実質的になくすのが望ましい。界面活性剤なしでは、指示薬の浸出で吸光度測定値に望ましくない誤差が紛れ込む。適当なpH指示薬色素にはブロモクレゾールグリーン及びブロモフェノールブルーがある。pH指示薬色素のpKa値が4.3近くであるのが望ましい。
【0046】
この実施形態に開示された方法によれば、この実施形態の多重ヒドロゲルフィルムそれぞれが異なる量の酸を含有する。適当な酸には、カルボン酸及びアリール及びアルキルスルホン酸、例えばp−トルエンスルホン酸があるが、ヒドロゲル媒体に溶解できるものであればどのような酸も使用できる。各フィルム中の酸濃度は異なり、フィルム毎に所定のパターンで変動する。酸濃度が、乾燥pHEMA(ヒドロゲル)に対して約0.2〜50重量%の範囲で変動するのが望ましい。好ましくは、最低濃度のフィルムが約0.2〜20重量%の濃度を有し、より望ましくは約0.8〜10重量%の濃度を有する。好ましくは、最高濃度のフィルムが約20〜50重量%の濃度を有し、より望ましくは約25〜35重量%の濃度を有する。カルボン酸のような弱酸を用いる場合、所定のアルカリ度範囲をカバーするのに必要なフィルムの数は、強酸を用いる場合より少ない。その理由は、弱酸が示す滴定曲線が強酸のそれより平坦であるからである。しかし、弱酸は通常、カルシウムイオンなどの、水サンプル中によく存在するイオンと錯体を形成する。
【0047】
所定量のサンプル溶液をヒドロゲルフィルム上に堆積すると、サンプル中のアルカリ種が添加した酸を中和する。一連のフィルムに異なる量の酸を添加することで酸濃度勾配ができているので、一連のフィルム(多重フィルム)をサンプル溶液に曝露したとき、異なる中和度に対応する輪郭の変色が生じる。一連のフィルム内のすべてのフィルムの平均吸光度をサンプルのアルカリ度の定量に用いる。
【0048】
一態様では、例えばリン酸センサの場合、内蔵式センサは、モリブデン酸塩及び被分析物特異的試薬としての色素、そしてpH調節剤としてのスルホン酸を含有する。モリブデン酸塩は、市場で入手でき、他の成分と相溶性であれば、種々の可溶性塩のいずれでもよい。使用できる適当なモリブデン酸塩の例には、モリブデン酸アンモニウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム及びリチウムがあるが、これらに限らない。別の態様では、ヘプタモリブデン酸アンモニウムをモリブデン酸塩として使用する。
【0049】
色素は発色性指示薬であり、色素をモリブデン酸塩及びリン酸塩と接触させた後、センサの光学的特性の変化を示すものである。被分析物特異的試薬に用いることのできる適当な色素の例には、アゾ色素、オキサジン色素、チアジン色素、トリフェニルメタン色素及びこれらの組合せがある。一態様では、被分析物特異的試薬はチアジン又はオキサジン色素である。使用できるチアジン及びオキサジン色素の具体例には、AzureA、AzureB、ベーシックブルー、メチレンブルー及びブリリアントクレジルブルーがあるが、これらに限らない。
【0050】
チアジン及びオキサジン色素を用いるのは、試験溶液のpHを3〜0.5に調節した場合、ほとんどのチアジン及びオキサジン色素の400nm〜800nmの範囲のスペクトルの主吸収帯が有意な変化を受けないからである。これは、当技術分野でリン酸分析用に周知のトリフェニルメタン色素とは対照的である。トリフェニルメタン色素の水溶液はpH範囲0〜2において色転移を生じ、中性pHで550nm〜650nmの範囲の吸収極大をもつ強い色を、低いpHではるかに弱い色もしくは無色を示す。中性pHでのトリフェニルメタン色素溶液の吸収帯は通常色素−HPA錯体の吸収帯とオーバーラップするので、色素−HPA錯体の形成による吸光度変化を顕現するためには、リン酸塩測定用の試験媒体のpHを色素の転移pHより低くなるよう制御しなければならない。したがって、トリフェニルメタン色素及びモリブデン酸塩には強酸が必要とされる。他方、チアジン及びオキサジン色素は、色素の色を抑制するのに特に強い酸性条件を必要としない。実際、この場合、低濃度の低酸度pH調節剤で色変化を生起することができる。
【0051】
前述したように、本発明の内蔵式センサにはスルホン酸をpH調節剤として使用することができる。適当なスルホン酸は、センサ処方のpHが約0.5〜3の範囲となるように、選択する。一態様では、p−トルエンスルホン酸をpH調節剤として使用する。スルホン酸の濃度は、モリブデン酸塩及びリン酸塩と接触した際に、色素の色転移が起こるか、吸光度の変化が起こるように、選択する。
【0052】
例えば、チアジン及びオキサジン色素を、水素イオン対モリブデン酸塩濃度比が30未満である水溶液中でモリブデン酸塩と混合すると、これら色素の主吸収帯の有意な赤シフトが認められる。溶液にリン酸塩を添加すると、溶液は青色に変わる。他方、チアジン又はオキサジン色素を、水素イオン対モリブデン酸塩濃度比が30〜120の範囲に保たれている水溶液中でモリブデン酸塩と混合すると、この色素の主吸収帯が同じままであるか、赤シフトが認められない。この場合、リン酸塩を試験溶液に添加すると、主吸収帯は減少する。吸光度の減少はリン酸塩濃度に比例する。
【0053】
一態様では、水素イオン濃度対モリブデン酸塩濃度の比が約0.1〜約150の範囲にあり、別の態様では、水素イオン濃度対モリブデン酸塩濃度の比が約1〜約120の範囲にあり、他の態様では、水素イオン濃度対モリブデン酸塩濃度の比が約30〜約120の範囲にある。
【0054】
他の態様では、本発明の内蔵式センサは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリビニルアルコール及びこれらの組合せからなる群から選択される1種以上の添加剤を含有する。この添加剤は、被分析物特異的試薬及び色素の可溶化を促進し、またホスホモリブデン酸塩−色素凝集体の形成を抑制する。したがって、上記添加剤の添加により、信号損失をもたらすホスホモリブデン酸塩−色素種の沈殿を防止することができる。さらに、内蔵式センサをポリマーマトリックス中に固定化した場合、上記化合物は可塑剤として機能でき、ポリマーマトリックスの分析すべき化学種(この場合リン酸塩)に対する透過度を高めるのに役立つ。
【0055】
一態様では、内蔵式センサへの添加剤としてポリエチレングリコールを用いる。一態様では、ポリエチレングリコール添加剤の分子量が約100g/モル〜約10,000g/モルの範囲にあり、別の態様では、ポリエチレングリコールの分子量が約200g/モル〜約4000g/モルの範囲にあり、他の態様では、ポリエチレングリコールの分子量が約400g/モル〜約600g/モルの範囲にある。一態様では、センサ処方に対するポリエチレングリコール添加剤の重量分率が約0.1重量%〜約20重量%の範囲にあり、別の態様では、センサ処方に対するポリエチレングリコール添加剤の重量分率が約0.5重量%〜約10重量%の範囲にあり、他の態様では、センサ処方に対するポリエチレングリコール添加剤の重量分率が約1重量%〜約5重量%の範囲にある。
【0056】
他の態様では、本発明の内蔵式センサは信号増強剤を含有する。信号増強剤は、pH調節剤と同じ材料から形成しても、異なる材料から形成してもよい。信号増強剤を用いて、ホスホモリブデン酸塩種から区別する必要のある遊離イソポリモリブデン酸塩をマスクすることができる。マスクしないと、遊離イソポリモリブデン酸塩が色素とイオン対を形成し、その結果より高い背景信号となったり、リン酸塩単独のせいで減少した信号となることがある。適当な信号増強剤の例には、シュウ酸、スルホン酸、シュウ酸塩、スルホン酸塩及びこれらの組合せがあるが、これらに限らない。
【0057】
一態様では、被分析物特異的試薬は金属錯体及び色素を含む。金属錯体は、被分析物(この場合リン酸塩)に対して高い特異性を有するように選択する。使用できる適当な金属錯体の例には、亜鉛錯体及びコバルト錯体がある。上記金属錯体はさらに、金属カチオンに配位することができる1種以上の配位子を含む。金属配位子錯体は、特定の形状のアニオンの選択的結合をもたらす幾何学的優先性を与えるように、選択する。適当な配位子の例には、ピリジン、アミン及び他の含窒素配位子がある。一実施形態では、(2,6−ビス(ビス(2−ピリジルメチル)アミノメチル)−4−メチルフェノール)配位子の二核亜鉛錯体を被分析物特異的試薬として使用した。
【0058】
金属錯体とともに金属色素指示薬を用いる。金属錯体とともに使用できる金属色素指示薬の例には、カテコール色素、トリフェニルメタン色素、チアジン色素、オキサジン色素、アントラセン色素、アゾ色素、フタロシアニン色素及びこれらの組合せがある。金属色素指示薬の具体例には、ピロカテコールバイオレット、ムレキシド(Murexide)、アルセナゾ(Arsenazo)I、アルセナゾ(Arsenazo)III、アンチピリルアゾ(Antipyrylazo)III、アゾ(Azo)1、アシッドクロムダークブルーK、BATA(ビスアミノフェノキシ四酢酸)、クロモトロープ酸及びXB−I(3−[3−(2,4−ジメチルフェニルカルバモイル)−2−ヒドロキシナフタレン−1−イル−アゾ]−4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸のナトリウム塩)があるが、これらに限らない。
【0059】
金属錯体及び金属色素指示薬を含有する被分析物特異的試薬用のpH調節剤は、センサ処方のpHがpH=7に維持されるように選択する。適当なpH調節剤の例には、生物学的緩衝剤、例えばグッドの緩衝液又はアミン類がある。使用できる生物学的緩衝剤の例には、HEPES(2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸)があるが、これに限らない。適当なアミン類の例には、シクロアミン化合物、特にシクロヘキシルアミン化合物があるが、これらに限らない。pH調節剤の濃度は、金属錯体及び色素との接触時に、色素の色転移が起こるか、吸光度の変化が起こるように、選択する。
【0060】
一態様では、内蔵式センサは金属錯体、色素及びスルホン酸pH調節剤を、非水溶剤に溶解した状態で含有する。別の態様では、内蔵式センサは金属錯体、色素及びアミンpH調節剤を含有し、これらをポリマーマトリックス中に固定化して固体装置を形成する。
【0061】
センサフィルムのポリマーマトリックスは所定の被分析物に対して透過性である。センサフィルムは、寸法(即ち分子量)、親水性/疎水性、相(即ち被分析物が液体か、気体か、固体か)、溶解度、イオン電荷、或いはコロイド状もしくは粒状物質の拡散阻止能に基づいて、被分析物に対して選択的に透過性であってもよい。一態様では、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリビニルアルコール又はこれらの組合せなどの添加剤を内蔵式センサに添加することができる。これらの添加剤は、ポリマーマトリックスを可塑化することによって、分析すべき化学種(この場合リン酸塩)に対するポリマーマトリックスの透過度を高めるのに役立つ。
【0062】
本発明のセンサフィルムは、自立式としても、ガラス、プラスチック、紙又は金属のような基板上に配置してもよい。センサフィルムは、塗装、スプレー、スピンコート、浸漬、スクリーン印刷など当業者に周知の技術のいずれかを用いて、基板上に塗工又は配置することができる。一態様では、ポリマーマトリックスを被分析物特異的試薬及びpH調節剤の共通溶剤に溶解し、次いで透明なプラスチック表面に浸漬塗布して薄い層を形成し、次いで暗所で数時間乾燥させる。或いはまた、被分析物特異的試薬を予め形成されたポリマーフィルムに直接適用することができる。
【0063】
基板の表面を被覆するのに用いる溶液の濃度は、フィルムの厚さ及びその光学的特性に悪影響を与えないように、薄く、例えば約20重量%〜約30重量%の固形分の範囲に保つ。一態様では、フィルムの厚さは約1μm〜約60μmの範囲であり、別の態様では、フィルムの厚さは約2μm〜約40μmの範囲であり、他の態様では、フィルムの厚さは約5μm〜約20μmの範囲である。
【0064】
一態様では、被分析物特異的試薬をセンサフィルムに付着するか、組み込むことができ、つぎに、そのセンサフィルムをCD、DVDなどの光媒体ディスクの上に配置する。
【0065】
別の態様では、センサフィルム上の被分析物特異的試薬は、光記憶媒体基板に適用された場合、センサスポットを形成する。ここで用いる用語「センサスポット」及び「センサ領域」は、互換性のある用語で、光記憶媒体ドライブを用いて感知するための所定空間位置にて、光記憶媒体の表面上に(或いは表面内に設けられているが、デジタル情報を担持する領域まで貫通しない凹所内に)配置されたセンサ材料を記述する。用途に応じて、センサスポットは環境中の物理的、化学的、生化学的、その他の変化に応答する。ある態様では、光記憶媒体に適用されたセンサフィルムは、適当な処理を行ってこのようなセンサスポットを形成することができる。このような適用方法は当業者に知られており、物理的マスキング系を含み、またネガ型及びポジ型ホトレジスト両方の適用を含む。或いはまた、光記憶媒体をポリマーフィルムで被覆した後、被分析物特異的試薬及びpH調節剤をセンサスポットとして光記憶媒体物品に適用してもよい。
【0066】
つぎにセンサを用いて水性試験サンプル中の化学種の存在を定性的かつ定量的に分析する。一態様では、試験サンプル中の濃度を測定する方法は、試験サンプルを前述した内蔵式センサと接触させ、この試験サンプルと内蔵式リン酸センサとの接触によって生じる内蔵式センサの光学的特性の変化を測定し、光学的特性の変化を濃度に変換する工程を含む。
【0067】
センサの試験サンプルとの接触は、センサが溶液状態であるか、固体状態であるかに応じて、任意適当な機構又は技法で行うことができる。接触を生じる技法の例には、センサの溶液を試験サンプル溶液と混合する、センサのストリップを試験サンプル溶液に浸漬する、センサフィルムに試験サンプル溶液のスポットを付ける、センサを有する試験装置に試験サンプルを流す、などの技法があるが、これらに限らない。
【0068】
接触後、センサの光学的特性の変化を光学的に測定する。光学的特性の変化は単純な定性的変化、例えばセンサの色の変化でよい。或いは、変化は定量的変化、例えば弾性もしくは非弾性散乱、吸収、光度、発光寿命又は偏光状態の変化でもよい。例えば、モリブデン酸アンモニウム、チアジン色素(例えばAzureC)及びp−トルエンスルホン酸を有するセンサをサンプルと接触させると、センサの色が紫色から青色に変化し、650nmの吸収ピークの変化が起こる。吸収ピークの変化(増加又は減少)を測定することによって、濃度を求めることができる。
【0069】
一実施形態では、光学的応答の測定を、白色光源(例えばOceanOptics社(米国フロリダ州デューンディン所在)製のタングステンランプ)及び携帯式分光計(例えばOceanOptics社(米国フロリダ州デューンディン所在)製のモデルST2000)を含む光学システムを用いて行うことができる。分光計に、400nmにブレーズした600溝/mm格子と、線状CCDアレイ検出器とを取り付ける。分光計が250nmから800nmまでの、さらには1100nmまでのスペクトル範囲を30%超えの効率でカバーするのが望ましい。ランプからの光を、集合6心の二叉光ファイバ反射プローブ(例えばOceanOptics社(米国フロリダ州デューンディン所在)製のモデルR400−7−UV/VIS)のアームの1つに収束する。プローブの共通アームがセンサ材料を照射する。プローブの第2アームは分光計に連結されている。蛍光測定のために、光源からの光を予め濾波して有効な励起波長を選択する。蛍光発光を同じセットアップ(但し発光ロングパスフィルタを含む)で集める。応答を測定する他の既知の方法を用いてもよい。
【0070】
光学的特性の変化を測定後、光学的特性の変化をリン酸塩濃度に変換することによってサンプル中の濃度を求めることができる。この変換は、検量線を用いて行うことができる。既知の濃度の試験サンプルとの接触後にセンサの光学的特性の変化を測定することによって、検量線を描くことができる。検量線を描いた後、この検量線を用いて、未知の試験サンプル中の濃度を求めることができる。一態様では、試験サンプルとの接触後のセンサの吸光度の変化が濃度に正比例している。本発明の一実施形態の内蔵式センサを、広い濃度範囲の化学種の感知に用いることができる。
【0071】
フィルムは、ポリマー溶液をスライドガラス上のくぼみに堆積するなど、当業者に周知の適当な方法により、製造することができる。一例では、ダイ切断した、接着剤裏打ちポリマーマスク層でくぼみを生成する。つぎに、フィルムを所定量のサンプル溶液に曝露する。フィルムの曝露後、各フィルムの吸光度を、既知の方法で、指示薬の極大吸光ピークに等しいか近い波長で測定する。センサフィルムから測定された平均吸光度を用いて、サンプルのアルカリ度を定量する。この方法は、吸光度測定に依拠しており、そしてフィルムのすべてが色を変えても有効に作用する。さらに、比色測定のほかに、蛍光その他の光学的測定も可能である。
【0072】
本発明の別の実施形態では、本発明者らは、予期せざることには、ある種のポリマーを添加剤(もしくはブレンド)としてポリマー処方に添加すると、この添加剤がある濃度にあれば、信号の増強が達成されることを見出した。この濃度より高くても低くても、効果が低減する。この効果は、色素、2−[2−[3−[(1,3−ジヒドロ−3,3−ジメチル−1−プロピル−2H−インドール−1−イリデン)エチリデン]−2−フェノキシ−1−シクロヘキセン−1−イル]エテニル]−3,3−ジメチル−1−プロピルインドリウム過塩素酸塩(IR768過塩素酸塩ともいう)の適用例で発見された。ナフィオン(Nafion)の添加は、最高試験濃度での残りの吸光度によりセンサ信号変化を正規化する場合に、センサフィルムの相対応答の向上をもたらした。
【0073】
内蔵式センサを用いて濃度を測定する方法を、添付図面を参照してさらに説明する。図1は、基板20上にフィルム30として配置された内蔵式センサ10の断面図である。フィルム30は、被分析物特異的試薬50及びpH調節剤60を含有する(図3)。被分析物特異的試薬50はモリブデン塩又は金属錯体及び色素を含有することができる。
【0074】
図2は、試験サンプル40と接触している内蔵式センサ10の断面図である。センサ10を試験サンプル40と接触させる方法は、当業者に周知の従来手段により行うことができ、センサ10の全体又は一部を試験サンプル40と接触関係にすればよい。
【0075】
図3は、試験サンプル40との接触後の、センサの光学的特性の変化80を生じている、内蔵式センサ10の断面図である。図3はさらに、被分析物特異的試薬50及びpH調節剤60を試験すべき試料70と接触させることによってもたらされた光学的特性の変化の拡大部分を示す。
【0076】
内蔵式センサ10の用途には、水処理産業、環境モニタリング、臨床診断、そして採鉱、冶金プロセスなど他の産業界における物質の分析があるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0077】
以下に、本発明を実施例に関連してさらに具体的に説明する。なお、以下の実施例は具体的な説明のために提示するものであって、すべてを網羅するものでも、本発明を開示した形態だけに限定するものでもない。
【0078】
実施例1:リン酸センサ
以下の試験では、1H−NMR吸収法、ガスクロマトグラフィ・質量分析法(GC/MC)及び高速電子衝撃分光分析(FAB)を用いて、反応生成物を分析した。センサ装置応答は、光ファイバプローブを取り付けたOceanOptics分光光度計を用いて測定した。装置に対して約45°〜約90°の範囲の角度にプローブを配向した。
【0079】
試験1:h−BPMP(2,6−ビス(ビス(2−ピリジルメチル)アミノメチル)−4−メチルフェノール)の合成
スキーム1にしたがってh−BPMPの合成を行った。2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−4−メチルフェノール(スキーム1中のA)を、塩化チオニルのジクロロメタン溶液を用いて塩素化した(収率85%)。生成物、2,6−ビス(クロロメチル)−4−メチルフェノール(スキーム1中のB)をビスピリジンアミンに曝露して、配位子(スキーム1中のC)を生成した(収率70%)。
【0080】
2,6−ビス(クロロメチル)−4−メチルフェノールの合成:
2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−4−メチルフェノールのジクロロメタン(DCM)25mLへの懸濁液を、塩化チオニルのDCM50mLへの溶液に添加した。添加後、混合物を10分間かきまぜた。すぐに反応が生じ、すべての固形分が溶解した。琥珀色の溶液を48時間かきまぜた。反応溶液を100gの氷に注ぎ、水層をNaOHでpH=7に中和した。有機材料を分離し、水性層を各50mLのDCMで3回抽出した。合わせた有機層をMSで乾燥し、濾過し、蒸発乾固した。5.2g(85%)の材料Bを琥珀色オイルとして得た。1H−NMRから、約90%の生成物形成が確認された。GCMSは、修正分子イオンピーク(M+)を205m/zに示した。上記反応の粗生成物をそのままつぎの工程に用いた。不安定な生成物をその後24時間以内に使用した。
【0081】
h−BPMPの合成:
2,6−ビス(クロロメチル)−4−メチルフェノールを15mLのTHFに溶解し、ついでN2中で、ビス(2−ピリジン)アミン及びトリエチルアミンを5mLのTHFに溶解した溶液で処理した。添加を0℃で1時間行った。最終懸濁液を48時間撹拌し、濾過し、減圧下で濃縮した。残留物を20mLの水で処理し、各30mLのDCMで3回抽出した。有機材料をドライ濾過し、蒸発した。残留物をSiO2中でアセトン溶離液のクロマトグラフィ処理した。1.71g(70%)の材料Cを琥珀色固体として得た。FABは修正分子イオンピーク(M+)を531m/zに示した。1H−NMRは正しい生成物と一致した。
【0082】
【化1】
以下の実施例では、実施形態に記載した通りの内蔵式リン酸センサの製造と試験をさらに具体的に説明する。スキーム2は、実施例2及び3に記載したような水性試験サンプル中のリン酸塩を感知する機構を具体的に示す。スキーム3は、実施例4〜14に記載したような水性試験サンプル中のリン酸塩を試験する機構を具体的に示す。
【0083】
【化2】
試験2:Dowanol中にh−PBMP−Zn−PCバイオレット錯体を含有するセンサの製造と試験
100mLのDowanol中で3つの基本溶液を調製した。A)ZnBr(FW=145.3)、7.7mg、0.053mmol、B)h−BPMP(FW=530)、28mg、0.053mmol、C)PCバイオレット(FW=408.4)、21.5mg、0.053mmol。少量(1.0mL)のA溶液に1.0mLのB溶液を添加し、ついで1.0mLのC溶液を添加した。この混合物に、2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸(HEPES)のDowanol溶液(pH7)を添加し、緑かかった青色の溶液を得た。少量(1.0mL)の溶液を2mLのDowanolで希釈し、pH6.9のDI水を標準として用いて、pH6.9のPO4-3水溶液に曝露した。曝露時間3分。400〜900nmの範囲でUV−Visスペクトルを記録した。
【0084】
図4は、上記装置について異なるリン酸塩濃度でのスペクトルの1群を示す。
【0085】
試験3:ポリマーマトリックス中にh−PBMP−Zn−PCバイオレット錯体を含有するセンサの製造と試験
100mLのDowanol中で3つの基本溶液を調製した。A)ZnBr(FW=145.3)、7.7mg、0.053mmol、B)h−BPMP(FW=530)、28mg、0.053mmol、C)PCバイオレット(FW=408.4)、21.5mg、0.053mmol。少量(0.6mL)のA溶液に0.6mLのB溶液を添加し、ついで0.6mLのC溶液を添加した。この混合物に、20%pMMA/pHEMA(1:3)及び3重量%のジシクロヘキシルアミンのDowanol溶液1.8mLを添加し、緑かかった青色の溶液を得た。2枚の3Mスコッチマジックテープ(登録商標)(フィルム厚さ約12μm)を用いて、5x10cmポリカーボネートシート(厚さ0.5mm)を上記溶液で被覆した。被覆したシートを2時間空気乾燥し、pH6.9のDI水を標準として用いて、pH6.9のPO4-3水溶液に曝露した。曝露時間3〜5分。OceanOptics分光光度計を用いて、400〜900nmの範囲で、45°〜90°の角度で、背景としての白紙の上にポリカーボネートを用いて、フィルムの読み取りを行った。
【0086】
図5は、上記装置について異なるリン酸塩濃度でのスペクトルの1群を示す。図6は、650nmでの吸光度をリン酸塩濃度の関数としてプロットすることによって得た、上記装置についての検量線を示す。
【0087】
【化3】
試験4:水中にAzureC及びモリブデン酸塩を含有するセンサの製造と試験:紫色−青色反応
p−トルエンスルホン酸(TsOH)、モリブデン酸アンモニウム及びAzureCをDI水に所定濃度で溶解した。1cmの使い捨てキュベット内で、0.05MのTsOH溶液2mLを0.068Mのモリブデン酸アンモニウム溶液0.25mLと混合し、ついでAzureC溶液(10mLの水中に10mg、Aldrich242187)0.1mLと混合した。異なる濃度のリン酸塩の水性サンプル約0.5mLを上記溶液に添加した。400〜900nmの範囲でUV−Visスペクトルを記録した。
【0088】
図7は、上記装置について異なるリン酸塩濃度でのスペクトルの1群を示す。図8は、650nmでの吸光度をリン酸塩濃度の関数としてプロットすることによって得た、上記装置についての検量線を示す。
【0089】
試験5:水中にAzureB及びモリブデン酸塩を含有するセンサの製造と試験:紫色−青色反応
p−トルエンスルホン酸(TsOH)、モリブデン酸アンモニウム及びAzureBをDI水に所定濃度で溶解した。1cmの使い捨てキュベット内で、0.05MのTsOH溶液2mLを0.068Mのモリブデン酸アンモニウム溶液0.25mLと混合し、ついでAzureB溶液(10mLの水中に4mg、Aldrich227935)0.1mLと混合した。異なる濃度のリン酸塩の水性サンプル約0.5mLを上記溶液に添加した。400〜900nmの範囲でUV−Visスペクトルを記録した。
【0090】
図9は、上記装置について異なるリン酸塩濃度でのスペクトルの1群を示す。
【0091】
試験6:水中にAzureB及びモリブデン酸塩を含有するセンサの製造と試験:青色−紫色反応
p−トルエンスルホン酸(TsOH)、モリブデン酸アンモニウム及びAzureBをDI水に所定濃度で溶解した。1cmの使い捨てキュベット内で、0.5MのTsOH溶液2mLを0.068Mのモリブデン酸アンモニウム溶液0.25mLと混合し、ついでAzureB溶液(10mLの水中に4mg、Aldrich227935)0.1mLと混合した。異なる濃度のリン酸塩の水性サンプル約0.5mLを上記溶液に添加した。400〜900nmの範囲でUV−Visスペクトルを記録した。
【0092】
図10は、650nmでの吸光度をリン酸塩濃度の関数としてプロットすることによって得た、上記装置についての検量線を示す。
【0093】
試験7:水中にブリリアントクレジルブルー及びモリブデン酸塩を含有するセンサの製造と試験:青色−紫色反応
p−トルエンスルホン酸(TsOH)をDI水に所定濃度で溶解した。1cmの使い捨てキュベット内で、0.0068Mのモリブデン酸アンモニウム溶液(0.154MのTsOH中)0.1mLを0.178MのBCB溶液(Aldrich858374)(0.166MのTsOH中)0.1mLと混合した。異なる濃度のリン酸塩の水性サンプル約2mLを上記溶液に添加した。400〜900nmの範囲でUV−Visスペクトルを記録した。
【0094】
図11は、622nmでの吸光度をリン酸塩濃度の関数としてプロットすることによって得た、上記装置についての検量線を示す。
【0095】
試験8:水中にAzureB及びモリブデン酸塩を含有するセンサの製造と試験:低濃度範囲検量
2インチのキュベット(光路長2.43cm)にオルトリン酸サンプル(PO4として0〜800ppbのリン酸塩を含有)20mLを入れた。ついで0.914g(0.174mM)のAzureB(1.54mol/kgのTsOH中)及び1.063g(0.068mol/kg)のモリブデン酸アンモニウム(1.54mol/kgのTsOH中)をキュベットに添加した。試薬をサンプルに添加してから3分後にHachDR2000で650nmの吸光度を測定した。
【0096】
図12は、650nmでの吸光度をリン酸塩濃度の関数としてプロットすることによって得た、上記装置についての検量線を示す。この方法についてのモル消衰係数を、検量線の傾斜から計算したところ、140700L/(mol・cm)であった。
【0097】
試験9:モリブデン酸塩及びAzureBを含有するセンサでの水道水サンプル中のリン酸塩濃度の測定
p−トルエンスルホン酸(TsOH)、モリブデン酸アンモニウム及びAzureBをDI水に所定濃度で溶解した。1cmの使い捨てキュベット内で、0.2MのTsOH溶液2mLを0.034Mのモリブデン酸アンモニウム溶液0.25mLと混合し、ついでAzureB溶液(10mLの水中に4mg)0.1mLと混合した。水道水サンプル約0.5mLを上記溶液に添加した。400〜900nmの範囲でUV−Visスペクトルを記録した。ACS品位のリン酸三ナトリウムから調製したリン酸塩標準溶液で、検量線を得た。リン酸塩標準溶液は、HachPhosVer3法で標準化した:
[PO4]/ppm=−2.867・A650+5.915
サンプル中の未知のリン酸塩濃度を求めたところ、1.45ppmであった。この値は、ICPによる分析値1.47ppm及びHach法による分析値1.25ppmと一致した。この水サンプル中の他の汚染物質の測量を、ICP発光分光計で行った。主要種は、Ca62ppm、Mg16ppm、Si5.2ppmであった。
【0098】
試験10:ポリマーマトリックス中にAzureB及びモリブデン酸塩を含有するセンサの製造と試験
モリブデン酸アンモニウム及びAzureBを脱イオン化水又は1−メトキシ−2−プロパノール(DowanolPM)に所定濃度で溶解した。9.12mMのAzureB溶液0.15mLに0.68Mのモリブデン酸アンモニウム溶液0.05mLを添加し、20%pHEMAのDowanol溶液5g中の0.33gのTsOHを添加した。ポリカーボネートシートを薬剤混合物の薄い層でフローコートし、暗所で数時間乾燥することによって、センサ装置を製造した。最終フィルム厚さは5〜20μmであった。センサ装置を種々の濃度のリン酸塩の水性サンプル約50μLに曝露した。即ち、フィルム表面にスポット適用した。サンプルのスポット適用から2分後に液体サンプルを除去し、一定な空気流で乾燥した。この後、センサ装置をリン酸塩応答について測定した。装置を暗室内で平坦表面上に置いた。センサ装置の応答を、光ファイバプローブ付きの分光光度計を用いて測定した。プローブを装置に対して90°の角度に配向した。白紙上のポリカーボネートを背景として使用した。
【0099】
図13は、上記装置について異なるリン酸塩濃度でのスペクトルの1群を示す。図14は、650nmでの吸光度をリン酸塩濃度の関数としてプロットすることによって得た、上記装置についての検量線を示す。
【0100】
試験11:ポリマーマトリックス中にマラカイトグリーン及びモリブデン酸塩を含有するセンサの製造と試験
マラカイトグリーン(8mg)、TsOH(105mg)及び0.51Mのモリブデン酸アンモニウム溶液0.050mLを20%pHEMA溶液2.5g中で混合した。ポリカーボネートシートを薬剤混合物の薄い層でフローコートし、暗所で数時間乾燥することによって、センサ装置を製造した。最終フィルム厚さは5〜20μmであった。センサ装置を種々の濃度のリン酸塩の水性サンプル約20μLに曝露した。即ち、フィルム表面にスポット適用した。サンプルのスポット適用から2分後に液体サンプルを除去し、一定な空気流で乾燥した。この後、センサ装置をリン酸塩応答について測定した。装置を暗室内で平坦表面上に置いた。センサ装置の応答を、光ファイバプローブ付きの分光光度計を用いて測定した。プローブを装置に対して90°の角度に配向した。白紙上のポリカーボネートを背景として使用した。
【0101】
図15は、上記装置について異なるリン酸塩濃度でのスペクトルの1群を示す。図16は、650nmでの吸光度をリン酸塩濃度の関数としてプロットすることによって得た、上記装置についての検量線を示す。
【0102】
試験12:ポリマーマトリックス中にベーシックブルー及びモリブデン酸塩を含有するセンサの製造と試験
ベーシックブルー3(5mg)、TsOH(105mg)及び0.51Mのモリブデン酸アンモニウム溶液0.025mLを20%pHEMA溶液2.5g中で混合した。ポリカーボネートシートを薬剤混合物の薄い層でフローコートし、暗所で数時間乾燥することによって、センサ装置を製造した。最終フィルム厚さは5〜20μmであった。センサ装置を種々の濃度のリン酸塩の水性サンプル約20μLに曝露した。即ち、フィルム表面にスポット適用した。サンプルのスポット適用から2分後に液体サンプルを除去し、一定な空気流で乾燥した。この後、センサ装置をリン酸塩応答について測定した。装置を暗室内で平坦表面上に置いた。センサ装置の応答を、光ファイバプローブ付きの分光光度計を用いて測定した。プローブを装置に対して90°の角度に配向した。白紙上のポリカーボネートを背景として使用した。
【0103】
図17は、上記装置について異なるリン酸塩濃度でのスペクトルの1群を示す。図18は、650nmでの吸光度をリン酸塩濃度の関数としてプロットすることによって得た、上記装置についての検量線を示す。
【0104】
試験13:ポリマーマトリックス中にメチレンブルー及びモリブデン酸塩を含有するセンサの製造と試験
20%pHEMAのヒドロキシルエーテル系溶剤への溶液2.5gに、2mgのメチレンブルー、5mgのシュウ酸ナトリウム、10μLの0.64Mの(NH4)6(Mo7O24)・H2O及び105mgのTsOHを添加した。混合物を暗所で21℃にて、すべての固形分が溶解するまで、撹拌した。透明プラスチック表面を薬剤混合物の薄い層でコートし、暗所で数時間乾燥することによって、装置を製造した。最終フィルム厚さは5〜20μmであった。装置を種々の濃度のリン酸塩の水性サンプル約50μLに曝露した。曝露時間は通常120秒であった。ついで水サンプルを除去し、フィルムを一定な空気流で乾燥した。この後、装置をリン酸塩応答について測定した。装置を暗室内で平坦表面上に置いた。センサ装置の応答を、光ファイバプローブ付きの分光光度計を用いて測定した。プローブを装置に対して90°の角度に配向した。
【0105】
図19は、上記装置について異なるリン酸塩濃度でのスペクトルの1群を示す。図20は、650nmでの吸光度をリン酸塩濃度の関数としてプロットすることによって得た、上記装置についての検量線を示す。
【0106】
試験14:可塑化ポリマーマトリックス中にベーシックブルー及びモリブデン酸塩を含有するセンサの製造と試験
9mgのベーシックブルー3、672mgのTsOH、302mgのポリエチレングリコール400、0.076mLの0.68Mモリブデン酸アンモニウム水溶液及び24mgのシュウ酸ナトリウムを10.0gの20%pHEMA溶液中で混合した。ポリカーボネート基板上に薬剤混合物の薄い層をスクリーン印刷し、70℃で5分間乾燥することによって、センサ装置を製造した。その後センサを暗所で室温及び外気湿度にて11日間保存した。最終フィルム厚さは5〜20μmであった。センサ装置を種々の濃度のリン酸塩の水性サンプル約20μLに曝露した。即ち、フィルム表面にスポット適用した。サンプルのスポット適用から2分後に液体サンプルを除去し、一定な空気流で乾燥した。この後、センサ装置をリン酸塩応答について測定した。装置を暗室内で平坦表面上に置いた。センサ装置の応答を、光ファイバプローブ付きの分光光度計を用いて測定した。プローブを装置に対して75°の角度に配向したが、別の角度でも同様の結果が得られた。ポリカーボネートを背景として使用した。
【0107】
図21は、上記装置について異なるリン酸塩濃度でのスペクトルの1群を示す。図22は、650nmでの吸光度をリン酸塩濃度の関数としてプロットすることによって得た、上記装置についての検量線を示す。
【0108】
実施例2:モリブデン酸センサ
20%のpHEMA(MW300,000)を1−メトキシ−2−プロパノール(DowanolPM)に溶解した溶液10.0gに、20mgのブロモピロガロールレッド及び40mgのp−トルエンスルホン酸を添加した。1時間撹拌した後、20mgのベンジルジメチルテトラデシルアンモニウムクロリド(ゼフィラミン)を添加した。さらに1時間撹拌した後、40mgのL−アスコルビン酸を添加し、混合物を室温で、固形分がすべて溶解するまで(少なくとも12時間)、撹拌した。
【0109】
透明なプラスチック表面を薬剤混合物の薄い層で被覆し、暗所で数時間乾燥することによって、センサフィルムを製造した。最終フィルム厚さは10〜20μmであった。
【0110】
センサフィルムを種々の濃度のモリブデン酸塩の水性サンプル約30μLに曝露した。曝露時間は通常120秒であった。ついで水サンプルを除去し、フィルムを一定な空気流で乾燥した。この後、センサフィルムをモリブデン酸塩応答について測定した。
【0111】
センサフィルムを暗室内で平坦表面上に置いた。センサフィルムの応答を、光ファイバプローブ付きのOceanOptics分光光度計を用いて測定した。プローブをセンサフィルムに対して90°の角度に配向した。
【0112】
図23は、上記センサフィルムについて異なるモリブデン酸塩濃度でのスペクトルの1群を示す。図24は上記センサフィルムについての応答曲線を示す。
【0113】
実施例3:マグネシウムセンサ
薬剤混合物の調製:20%のpHEMA(MW300,000)を1−メトキシ−2−プロパノール(DowanolPM)に溶解した溶液10.0gに、50mgのキシリジルブルー1のナトリウム塩及び300mgのテトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)を添加した。1時間撹拌した後、ポリエチレンイミン(低分子量Mn約1000、無水)を1−メトキシ−2−プロパノール(DowanolPM)に溶解した40重量%溶液500mgを添加した。さらに1時間撹拌した後、400mgのエチレングリコール−ビス(アミノエチルエーテル)−N,N,N’,N’−四酢酸の四ナトリウム塩(EGTA−Na4)を添加し、混合物を室温で、固形分がすべて溶解するまで(少なくとも12時間)、撹拌した。
【0114】
図25は、上記センサフィルムについて異なるマグネシウム濃度でのスペクトルの1群を示す。図26は上記センサフィルムについての応答曲線を示す。
【0115】
実施例4:硬度センサ
薬剤混合物の調製:20%のpHEMA(MW300,000)を1−メトキシ−2−プロパノール(DowanolPM)に溶解した溶液10.0gに、キシリジルブルーIのナトリウム塩50mg及びポリエチレンイミン(低分子量Mn約1000、無水)を1−メトキシ−2−プロパノール(DowanolPM)に溶解した40重量%溶液500mgを添加した。混合物を室温で、固形分がすべて溶解するまで(少なくとも12時間)、撹拌した。
【0116】
図27は、上記センサフィルムについて異なる硬度濃度でのスペクトルの1群を示す。図28は上記センサフィルムについての応答曲線を示す。
【0117】
実施例5:カルシウムセンサ
薬剤混合物の調製:20%のpHEMA(MW300,000)を1−メトキシ−2−プロパノール(DowanolPM)に溶解した溶液10.0gに、クロロホスホナゾIII25mg及びp−トルエンスルホン酸200mgを添加した。混合物を室温で1時間撹拌した後、60mgのトリドデシルメチルアンモニウムクロリド(TDMAC)を添加した。混合物を室温で、固形分がすべて溶解するまで(少なくとも12時間)、撹拌した。
【0118】
図29は、上記センサフィルムについて異なるカルシウム濃度でのスペクトルの1群を示す。図30は上記センサフィルムについての応答曲線を示す。
【0119】
実施例6:亜硫酸センサ
薬剤混合物の調製:20%のpHEMA(MW300,000)を1−メトキシ−2−プロパノール(DowanolPM)に溶解した溶液10.0gに、ブリリアントグリーン8mg及びテトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)120mgを添加した。混合物を室温で、固形分がすべて溶解するまで(少なくとも12時間)、撹拌した。
【0120】
図31は、上記センサフィルムについて異なる亜硫酸塩濃度でのスペクトルの1群を示す。図32は上記センサフィルムについての応答曲線を示す。
【0121】
実施例7:亜硫酸センサII
(高アルカリ度、高pH水サンプルに耐えるように製造)
本実施例は、第1フィルムを第2緩衝フィルムでオーバーコートすることによって、薬剤(亜硫酸塩)フィルムを緩衝する可能性を具体的に説明する。2層フィルムは、極端な水環境(極めて高いpH(pH12)及び極めて高いアルカリ度(1000mg/Lのモルアルカリ度))における目的被分析物(亜硫酸塩)の測定を可能にする方法を実現する。第1フィルムを第2緩衝フィルムでオーバーコートしないと、センサフィルムは、水サンプルの高pHに応答するが、目的被分析物(亜硫酸塩)に応答しない傾向がある。
【0122】
薬剤混合物Iの調製:25%のpHEMA(MW300,000)をジ(エチレングリコール)メチルエーテル(DowanolDM)及び1−メトキシ−2−プロパノール(DowanolPM)の65/35(重量%)混合液に溶解した溶液10.0gに、ブリリアントグリーン8mg、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)120mg及び200mLの水に溶解したリン酸二水素カリウム(KH2PO4)36mgを添加した。混合物を室温で、固形分がすべて溶解するまで(少なくとも12時間)、撹拌した。透明なプラスチック表面を薬剤混合物の薄い層で被覆し、暗所で数時間乾燥することによって、センサフィルムを製造した。最終フィルム厚さは5〜20μmであった。
【0123】
薬剤混合物IIの調製:25%のpHEMA(MW300,000)をジ(エチレングリコール)メチルエーテル(DowanolDM)及び1−メトキシ−2−プロパノール(DowanolPM)の65/35(重量%)混合液に溶解した溶液10.0gに、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)120mg及び200mLの水に溶解したリン酸二水素カリウム(KH2PO4)36mgを添加した。混合物を室温で、固形分がすべて溶解するまで(少なくとも12時間)、撹拌した。薬剤混合物IIを透明なプラスチック表面上に形成した薬剤混合物Iの乾燥フィルム上に被覆し、暗所で数時間乾燥した。合計の最終フィルム厚さは10〜40μmであった。
【0124】
図33は、上記装置について異なる亜硫酸塩濃度でのスペクトルの1群を示す。亜硫酸塩濃度は、高アルカリ度(1000mg/Lのモルアルカリ度)かつ高pH(pH12)の水マトリックス中で調製した。図34は上記装置についての応答曲線を示す。
【0125】
実施例8:アルカリ度センサ
本実施例で用いる酸はp−トルエンスルホン酸であり、用いる指示薬はブロモクレゾールグリーン(pKa=4.9、水性相中)である。ポリマー溶液組成を表2に示す。8μLのポリマー溶液をスライドガラスのくぼみに堆積することによって、フィルムを作製した。くぼみ(直径5.4mm、深さ0.32mm)は、ダイ切断、接着剤裏当てポリマーマスク層で形成した。試験中はマスク層を除去しなかった。650nmの平均吸光度を用いて、サンプルの総アルカリ度を定量する。検量線を図35に示す。
【0126】
【表2】
実施例9:塩素センサ
一実施形態では、ナフィオンポリマーをセンサ処方に添加した。ナフィオンを添加すると、センサ信号変化を最高試験濃度での残りの吸光度により正規化した場合の、センサフィルムの相対応答が向上した。この濃度の上下では、効果が低下した。指示薬としては、2−[2−[3−[(1,3−ジヒドロ−3,3−ジメチル−1−プロピル−2H−インドール−1−イリデン)エチリデン]−2−フェノキシ−1−シクロヘキセン−1−イル]エテニル]−3,3−ジメチル−1−プロピルインドリウム過塩素酸塩、別名IR768過塩素酸塩が適当である。
【0127】
図36は、漸増する量のナフィオン溶液を2000μLの色素処方に添加した場合に、566nmで測定した場合の応答感度の向上を示す。この向上は、図37に示すように、2ppm塩素への曝露時のセンサ信号としてプロットすることができる。本図は、pHEMA中のナフィオンの濃度に、最高センサ応答が得られる非直観的臨界領域が存在することを示す。
【0128】
以上、本発明を代表的な実施形態について説明したが、本発明の要旨から逸脱することなく種々の変更や置き換えが可能であるので、以上の説明は本発明を記述細部に限定するものではない。当業者であれば、ごく普通の実験を行うだけで、上記説明のさらなる変更例や等価物が想起できるはずであり、このような変更例や等価物も特許請求の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】本発明の一実施形態にしたがって構成された基板上にフィルムとして配置された内蔵式センサの断面図である。
【図2】試験サンプルと接触している図1の内蔵式センサの断面図である。
【図3】試験サンプルとの接触後にリン酸センサの光学的特性に変化を生じた、図1の内蔵式センサの断面図である。
【図4】h−PBMP−Zn−PCバイオレット錯体をDowanol中に含有する図1の内蔵式センサの実施形態についての異なるリン酸塩濃度でのスペクトルの1群を示す図である。
【図5】h−PBMP−Zn−PCバイオレット錯体をポリマーマトリックス中に含有する図1の内蔵式センサの実施形態についての異なるリン酸塩濃度でのスペクトルの1群を示す図である。
【図6】h−PBMP−Zn−PCバイオレット錯体をDowanol中に含有する図1の内蔵式センサの実施形態について、650nmの吸光度をリン酸塩濃度の関数としてプロットして得た検量線を示す図である。
【図7】AzureC及びモリブデン酸塩を水中に含有する図1の内蔵式センサの実施形態についての異なるリン酸塩濃度でのスペクトルの1群を示す図である。
【図8】AzureC及びモリブデン酸塩を水中に含有する図1の内蔵式センサの実施形態について、650nmの吸光度をリン酸塩濃度の関数としてプロットして得た検量線を示す図である。
【図9】AzureB及びモリブデン酸塩を水中に含有する図1の内蔵式センサの実施形態についての異なるリン酸塩濃度でのスペクトルの1群を示す図である。
【図10】AzureB及びモリブデン酸塩を水中に含有する図1の内蔵式センサの実施形態について、650nmの吸光度をリン酸塩濃度の関数としてプロットして得た検量線を示す図である。
【図11】ブリリアントクレジルブルー及びモリブデン酸塩を水中に含有する図1の内蔵式センサの実施形態について、622nmの吸光度をリン酸塩濃度の関数としてプロットして得た検量線を示す図である。
【図12】AzureB及びモリブデン酸塩を水中に含有する図1の内蔵式センサの実施形態について、650nmの吸光度をリン酸塩濃度の関数としてプロットして得た低濃度検量線を示す図である。
【図13】AzureB及びモリブデン酸塩をポリマーマトリックス中に含有する図1の内蔵式センサの実施形態についての異なるリン酸塩濃度でのスペクトルの1群を示す図である。
【図14】AzureB及びモリブデン酸塩をポリマーマトリックス中に含有する図1の内蔵式センサの実施形態について、650nmの吸光度をリン酸塩濃度の関数としてプロットして得た検量線を示す図である。
【図15】マラカイトグリーン及びモリブデン酸塩をポリマーマトリックス中に含有する図1の内蔵式センサの実施形態についての異なるリン酸塩濃度でのスペクトルの1群を示す図である。
【図16】マラカイトグリーン及びモリブデン酸塩をポリマーマトリックス中に含有する図1の内蔵式センサの実施形態について、650nmの吸光度をリン酸塩濃度の関数としてプロットして得た検量線を示す図である。
【図17】ベーシックブルー及びモリブデン酸塩をポリマーマトリックス中に含有する図1の内蔵式センサの実施形態についての異なるリン酸塩濃度でのスペクトルの1群を示す図である。
【図18】ベーシックブルー及びモリブデン酸塩をポリマーマトリックス中に含有する図1の内蔵式センサの実施形態について、650nmの吸光度をリン酸塩濃度の関数としてプロットして得た検量線を示す図である。
【図19】メチレンブルー及びモリブデン酸塩をポリマーマトリックス中に含有する図1の内蔵式センサの実施形態についての異なるリン酸塩濃度でのスペクトルの1群を示す図である。
【図20】メチレンブルー及びモリブデン酸塩をポリマーマトリックス中に含有する図1の内蔵式センサの実施形態について、650nmの吸光度をリン酸塩濃度の関数としてプロットして得た検量線を示す図である。
【図21】ベーシックブルー及びモリブデン酸塩を可塑化ポリマーマトリックス中に含有する図1の内蔵式センサの実施形態についての異なるリン酸塩濃度でのスペクトルの1群を示す図である。
【図22】ベーシックブルー及びモリブデン酸塩を可塑化ポリマーマトリックス中に含有する図1の内蔵式センサの実施形態について、650nmの吸光度をリン酸塩濃度の関数としてプロットして得た検量線を示す図である。
【図23】本発明の別の実施形態によるモリブデン酸センサフィルムの異なるモリブデン酸塩濃度での吸収スペクトルを示す図である。
【図24】図23のセンサフィルムについての応答曲線を示す図である。
【図25】本発明の別の実施形態によるマグネシウムセンサの異なるマグネシウム濃度での吸収スペクトルを示す図である。
【図26】図25のセンサフィルムについての応答曲線を示す図である。
【図27】本発明の別の実施形態による硬度センサの異なるマグネシウム濃度での吸収スペクトルを示す図である。
【図28】図27のセンサフィルムについての応答曲線を示す図である。
【図29】本発明の別の実施形態によるカルシウムセンサの異なるカルシウム濃度での吸収スペクトルを示す図である。
【図30】図29のセンサフィルムについての応答曲線を示す図である。
【図31】本発明の別の実施形態による亜硫酸センサの異なる亜硫酸塩濃度での吸収スペクトルを示す図である。
【図32】図31のセンサフィルムについての応答曲線を示す図である。
【図33】本発明の別の実施形態による亜硫酸センサについての異なる亜硫酸塩濃度でのスペクトルの1群を示す図である。
【図34】図33のセンサフィルムについての応答曲線を示す図である。
【図35】アルカリ度センサの検量線を示す図である。
【図36】pHEMAセンサフィルム中に漸増する濃度のナフィオンポリマーを添加した場合の応答感度の向上を示す図である。
【図37】図36の向上を2ppm塩素への曝露時のセンサ信号としてプロットした図で、pHEMA中のナフィオンの濃度に、最高センサ応答が得られる非直観的臨界領域が存在することを示す。
【符号の説明】
【0130】
10 内蔵式センサ
20 基板
30 フィルム
40 試験サンプル
50 被分析物特異的試薬
60 pH調節剤
【技術分野】
【0001】
本発明は、広義にはサンプルの光分析に用いるセンサに関し、特に化学種の微小濃度を測定するセンサ用材料組成物及びセンサを用いて化学種の微小濃度を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
流体中の揮発性及び非揮発性化合物を定量するセンサ方法及びセンサフィルムは当技術分野で周知である。代表的には、特別にこの目的に設計された専用のセンサシステムを用いて、これらのパラメータの定量を行う。これらのセンサシステムは、電気化学、光、音響及び磁気など様々な原理に基づいて作動する。例えば、センサシステムを用いて、生物学、化学及び生化学的サンプルの光検出を行う。比色液体及び固体試薬で作動する様々な分光センサが開発されている。実際、分析化学における分光測光指示薬(インジケータ)は、多数の市販の光センサ及びプローブに最適な試薬となっている。
【0003】
光センサは他の形式のセンサに比べて多数の利点を有するが、中でも変換原理の範囲が広いことがもっとも重要である。光センサは他のセンサが適用できない被分析物(アナライト)にも応答できる。また、光センサでは、被分析物の分光的特徴を測定する「直接」的被分析物検出だけでなく、感知用試薬を用いる「間接」的被分析物測定も行うことが可能である。このような試薬は、分析すべき化学種と相互作用すると、その光学的特性、例えば弾性又は非弾性散乱、吸収、光度、発光寿命又は偏光状態に変化を生じる。この種の間接的検出は化学的選択性と分光測定により与えられる測定値とを組合せ、多くの場合、試薬なしでは面倒な干渉作用を克服することができる。
【0004】
分光測光指示薬は元々水性用途に開発されているので、分光指示薬の固体支持体への固定化は、光感知に応用する上での肝要な問題である。試薬型光センサ用のポリマー材料はしばしば複雑な多成分組成物である。重要な処方成分には、化学的に敏感な試薬(指示薬)、ポリマーマトリックス、補助添加剤及び共通溶剤もしくは溶剤混合物が含まれる。しかし、ある所望の官能価を生成するセンサ材料の最良処方を予想するのは困難である。
【0005】
例えば、リン酸塩(ホスフェート)は水処理産業においてしばしば分析される物質である。リン酸塩分析は、環境モニタ、臨床診断で、そして採鉱や冶金プロセスなどの他の産業界でもよく行われる。リン酸塩分析には普通光センサを用いる。
【0006】
リン酸塩を測定する光学的方法としては、モリブデンブルー法がよく用いられている。モリブデンブルー法の基本的機構では、オルトリン酸塩とモリブデン酸塩との反応によりヘテロポリ酸(HPA)を形成する。モリブデン酸を形成し、ついで酸性条件で還元剤を用いて還元すると、発色する。HPA化学に基づく水溶液中のリン酸塩分析法はほかにもいくつか知られている。バナドモリブドリン酸法、モリブデン−塩化第一錫法、カチオン色素−HPA錯体法などである。HPA法は、被分析物との接触後にセンサの色変化が起こる比色法、及び/又は被分析物との接触後にセンサの光学的特性に測定可能な変化が起こる測光法とすることができる。
【0007】
HPAの形成に基づくリン酸分析用の既知の測光法は、強い酸性媒体を必要とし、センサ処方に濃硫酸溶液を使用することを必要とする。カチオン色素−HPA錯体法の場合には、普通トリフェニルメタン色素を用いる。中性pHのトリフェニルメタン溶液の吸収帯は通常色素−HPA錯体の吸収帯と重複する。したがって、色素−HPA錯体の形成による吸光度変化を顕現させるために、リン酸塩測定用の試験媒体のpHを色素の転移pHより低く制御しなければならない。既知の測光法には、腐食性かつ有毒な試薬を必要とし、カチオン色素−HPA錯体の場合にはpH依存性が強いなど、いくつかの欠点がある。
【0008】
リン酸塩分析のHPA法のもう一つの欠点はケイ酸塩干渉である。サンプル水中の3.0ppmのケイ酸塩がカチオン色素−HPA錯体法を妨害することが知られている。よく用いられているモリブデンブルー法は、10ppmまでのケイ酸塩濃度にしか耐えられないことが知られている。ケイ酸塩は天然水中に必ず存在し、したがってこのような場合にリン酸塩の低濃度を測定するのは、ケイ酸塩干渉のため、困難になる。
【0009】
さらに、既知の測光法に用いられる試薬は通常非相溶性であり、リン酸塩測定へのアプローチが段階的になる。サンプルを予め試薬が存在する反応器(又は密閉位置)に添加し、ついで別に保存された還元剤に曝露する。試薬の不安定性と化学的相溶性の欠如とが単一反応器方式を妨害し、内蔵式センサの開発を阻止する。
【0010】
センサを現場試験装置として都合良くかつ効率よく使用するために、内蔵式固体センサが必要とされる。光指示薬は元々水性用途に開発されているので、光指示薬の固体支持体への固定化は、光感知に応用する上での肝要な問題である。試薬の非相溶性と低pH要求とがこの固定化を妨げる。さらに、固体センサの低濃度への感度も問題である。例えば、米国特許第5858797号には、モリブデンブルー化学に基づくリン酸塩試験ストリップが、6ppm以上でのみリン酸塩濃度に敏感であると記載されている。さらに、試薬安定性問題を抑制するために、モリブデンブルー試薬と還元剤とは別々の層に堆積しなければならない。
【特許文献1】米国特許第5858797号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、多数の定量的検定及び/又は他の生物学、化学及び物理環境パラメータの光分析を、高い再現性で行うのに簡単に使用できる、優れたセンサ感度、少ない干渉応答、高い安定性、その他の望ましいパラメータを与える、簡単なセンサが切実に求められている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の態様では、本発明は、サンプル溶液中の化学種の濃度をセンサフィルムで定量測定する方法を提供する。本方法は、サンプル溶液中の化学種に曝露されると、紫外、可視又は近赤外スペクトル範囲の光学的特性を変化する指示薬を含有する化学組成を有するヒドロゲルセンサフィルムを製造する工程を含む。本方法は、さらに、センサフィルムを所定量のサンプル溶液に曝露する工程を含む。本方法は、さらに、光学走査装置を用いて、指示薬の極大吸収ピーク(λmax)近くの波長でセンサフィルムの吸光度を測定する工程を含む。本方法は、さらに、センサフィルムから測定された平均吸光度を用いて、サンプル溶液中の化学種の濃度を定量する工程を含む。
【0013】
別の態様では、本発明は、サンプル溶液中の化学種の濃度を複数のセンサフィルムで定量測定する方法を提供する。本方法は、サンプル溶液中の化学種に曝露されると紫外、可視又は近赤外スペクトル範囲におけるその光学的特性を変化する複数のヒドロゲルセンサフィルムを製造する工程を含み、ここでヒドロゲルフィルムに添加される化学組成物がpH指示薬、界面活性剤及び酸を含有する。本方法はまた、複数のセンサフィルムそれぞれの酸濃度を所定のパターンにしたがって変動させる工程を含む。本方法はまた、複数のセンサフィルムを所定量のサンプル溶液に曝露する工程を含む。本方法はさらに、光学走査装置を用いて、指示薬の極大吸収ピーク(λmax)近くの波長でセンサフィルムの吸光度を測定し、センサフィルムから測定された平均吸光度を用いて、サンプル溶液中の化学種の濃度を定量する工程を含む。
【0014】
他の態様では、本発明は、サンプル溶液中に微小濃度で存在する化学種の濃度の測定に用いるセンサを提供する。本センサは、四級アンモニウム塩、四級ホスホニウム塩又は四級イミダゾリウム塩と、指示薬とを含有するヒドロゲルセンサフィルムを含む。指示薬は、サンプル溶液中の化学種に曝露されると紫外、可視又は近赤外スペクトル範囲におけるその光学的特性を変化する。指示薬は、四級アンモニウムイオンとイオン対を形成することによって、ヒドロゲルフィルム中に固定化される。ここで、四級アンモニウム塩の濃度がイオン対形成に必要な化学量論的量よりも実質的に高い。
【0015】
さらに他の態様では、本発明は、サンプル中に微小濃度で存在する化学種の濃度の測定に用いるセンサを提供する。本センサは、指示薬と、化学種への応答のセンサ感度を高める添加剤とを含有するヒドロゲルセンサフィルムを含む。ここで、添加剤はポリマーであり、センサフィルムは、ヒドロゲル、指示薬及び第2ポリマーを共通溶剤混合物に溶解することによって製造される。指示薬は、サンプル溶液中の化学種に曝露されると紫外、可視又は近赤外スペクトル範囲におけるその光学的特性を変化する。
【0016】
さらに他の態様では、本発明は、内蔵式リン酸センサを提供する。内蔵式リン酸センサは、1種以上の被分析物特異的試薬及び1種以上のpH調節剤を含有する。内蔵式リン酸センサは、溶液状態で使用しても、固体装置として使用してもよい。内蔵式リン酸センサを用いて、試験サンプル中のリン酸塩濃度を測定する方法も記載される。
【0017】
さらに他の態様では、被分析物特異的試薬は、モリブデン酸塩及び色素、そしてpH調節剤としてスルホン酸を含有する。内蔵式リン酸センサは、さらに溶剤を含有してもよく、ポリマーマトリックス中に固定化してもよい。
【0018】
さらに他の態様では、被分析物特異的試薬は、金属錯体及び色素、そしてpH調節剤としてスルホン酸を含有する。内蔵式リン酸センサは、非水溶剤を含有してもよい。さらに他の態様では、被分析物特異的試薬は、金属錯体及び色素、そしてpH調節剤としてアミンを含有する。内蔵式リン酸センサは、ポリマーマトリックス中に固定化してもよい。
【0019】
本発明の実施形態によれば、試験サンプル中のリン酸塩を測定する方法も提供される。本方法は、試験サンプルを上述した内蔵式リン酸センサに接触させ、この試験サンプルと内蔵式リン酸センサとの接触によって生じる内蔵式リン酸センサの光学的特性の変化を測定し、光学的特性の変化をリン酸塩濃度に変換する工程を含む。
【0020】
本発明及びその従来技術に対する利点は、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲を添付の図面を参照しながら読むことで、明らかになるはずである。
【0021】
、添付図面に関連した以下の本発明の実施形態の説明を参照することで、本発明の上記その他の特徴が一層明らかになり、また本発明の構成自体もよく理解できるはずである。
【0022】
なお、すべての図面において、対応する参照符号は対応する要素を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、図面を参照しながら本発明を詳細に説明する。本発明を実施可能にするために、好適な実施形態を詳細に説明する。本発明を特定の好適な実施形態について説明するが、本発明はこれらの好適な実施形態に限定されない。反対に、本発明は、以下の詳細な説明から明らかになるように、多数の代替、変更及び均等な要素を包含する。
【0024】
本発明は、サンプル中に微小濃度で存在する化学種の濃度を測定する優れたセンサ材料組成物及び方法に関する。本発明の内蔵式センサの実施形態は、水性もしくは非水性溶液の形態で用いることも、固体装置として用いることもできる。このような内蔵式センサは、被分析物の濃度の測定に試薬の後添加が不要であり、被分析物測定テストに必要な工程の数が最小であるという利点を有する。さらに、内蔵式センサは感度が高く、応答時間が速い。本発明の実施形態は、試験サンプル中の化学種の濃度を測定する方法も提供する。試験サンプル中の化学種の濃度は、濃度のわかっているサンプルを試験することによって描かれた検量線を用いて定量することができる。
【0025】
一態様では、内蔵式センサは光センサである。光センサは他の形式のセンサに比べて多数の利点を有するが、中でも変換原理の範囲が広いことがもっとも重要である。光センサは他のセンサが適用できない被分析物にも応答できる。また、光センサでは、被分析物の分光的特徴を測定する「直接」的被分析物検出だけでなく、感知用試薬を用いる「間接」的被分析物測定も行うことが可能である。このような試薬は、分析すべき化学種と相互作用すると、その光学的特性、例えば弾性又は非弾性散乱、吸収、光度、発光寿命又は偏光状態に変化を生じる。この種の間接的検出は化学的選択性と分光測定により与えられる測定値とを組合せ、しばしば試薬なしでは面倒な干渉作用を克服することができる。
【0026】
本発明によれば、センサ材料は、微小濃度の化学種に曝露されると紫外(UV)、可視又は近赤外(IR)スペクトル範囲におけるその光学的特性を変化する。フィルムは、通常、化学的に敏感な、被分析物に特異的な試薬(例えば、蛍光もしくは比色指示薬)、ポリマーマトリックス又はポリマーマトリックスの組合せ、及び補助添加剤を含有するポリマー系組成物であり、この場合、前記成分を共通溶剤もしくは溶剤混合物に溶解した溶液からフィルムを製造する。被分析物特異的試薬をポリマーマトリックス内に固定化してセンサフィルムを形成する。添加剤の例には、界面活性剤及び内部緩衝剤がある。他の添加剤を配合することもできる。センサフィルムに用いられるポリマーは選択された被分析物に対して透過性であり、ここで被分析物はセンサにより検出される1つの化学種であるか、1群の化学種である。被分析物特異的試薬は、被分析物の濃度の関数としてその光学的特性(例えば、吸光度、蛍光)の変化を生じる。望ましくは、被分析物特異的試薬は、フィルム外でその光学的特性の変化を生じ、そうすれば、応答の変化が、センサ処方から与えられるような干渉種の存在により影響されない。測定は、当業者に周知の紫外/可視/近赤外検出システムを用いて行う。
【0027】
センサフィルムの組成を調整することによって所望の応答を達成する。この場合、組成物がフィルム中に追加成分を含有する。例えば、ポリマーマトリックス成分が追加のポリマーとなるようにポリマーマトリックス成分を選択することで、固定化された被分析物特異的試薬の酸化電位を調整することによって、所望のセンサ応答を達成する。センサフィルムが内蔵式であり、フィルム外からの補助試薬を必要としないのが望ましい。
【0028】
一実施形態では、上記内蔵式センサは、被分析物特異的試薬及びpH調節剤を含有する。ここで用いる用語「被分析物特異的試薬」は、物理的、化学的及び生物学的種を検出するのに有用な、比色、光屈折、光互変、熱変色、蛍光、弾性散乱、非弾性散乱、偏光、その他の光学的特性の変化を生じる化合物である。被分析物特異的試薬には、金属錯体又は塩、有機及び無機色素又は顔料、ナノ結晶、ナノ粒子、量子ドット、有機発蛍光団、無機発蛍光団及びこれらの組合せがある。
【0029】
センサ中のpH調節剤は緩衝剤として作用し、センサ処方のpHレベルを感知機構にとって好ましい一定のpHに維持する。pH調節剤の選択は、使用する被分析物特異的試薬の性質に依存するが、pH調節剤には酸、塩基又は塩が挙げられる。
【0030】
上記内蔵式センサは、溶液形態でも、固体装置としても使用することができる。センサを溶液として適用する場合、センサの異なる構成成分に対して共通溶剤を選択する。このような溶剤の例には、脱イオン化水(DI水)、1−メトキシ−2−プロパノール(Dowanol)、エタノール、アセトン、クロロホルム、トルエン、キシレン、ベンゼン、イソプロピルアルコール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、メチレンクロライド、テトラヒドロフラン、エチレングリコール二酢酸及びペルフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)があるが、これらに限らない。
【0031】
内蔵式センサを固体装置として適用する場合、上記センサをポリマーマトリックスに付着又は固定化する。つぎにセンサを基板上のフィルムとして配置する。センサフィルムを製造するのに用いたポリマー材料は、選択性、感度及び検出限界などの検出特性に影響することに留意すべきである。したがって、センサフィルムに適当な材料は、所望の応答時間、所望の透過率、所望の溶解度、透明度及び硬度、並びに分析すべき対象物質に関与するその他の同様の特性を与えることができるポリマー材料から選択する。
【0032】
センサフィルムのポリマーマトリックスは、プラスチックフィルム、即ち樹脂フィルムであるのが好ましい。ポリマー支持体を形成するのに用いる樹脂は、センサ用途に依存する。樹脂を溶剤に溶解し、被分析物特異的試薬が液体媒体中に分散されるようにする。或いは、被分析物特異的試薬を予め形成されたプラスチックフィルムに直接適用することができる。一実施形態では、ポリマーフィルムを作製し、蒸発など既知の手段によりフィルムから溶剤を除去した後、乾燥フィルムを1種以上の試薬を含有する薬液に露呈する。このようにして、試薬をフィルム中に組み込む。一実施形態では、透明プラスチック表面を薬剤混合物の薄い層で被覆し、空気中暗所で数時間乾燥させることによって、センサフィルムを製造する。フィルムの最終厚さは、望ましくは約0.1〜約200μm、より好ましくは0.5〜100μm、さらに好ましくは1〜50μmである。
【0033】
応答を評価するために、フィルムを被分析物の水性サンプルに曝露する。被分析物の水性サンプルの量が約30μL〜約50μLのサンプルの範囲であるのが望ましいが、本発明の範囲から逸脱することなく他の量も考えられる。曝露時間は、望ましくは約0.5〜1000秒、より好ましくは1〜500秒、さらに好ましくは5〜300秒である。一実施形態では、水サンプルを除去した後、センサフィルムの測定を行う。或いは、測定中に水サンプルが存在してもよい。他の実施形態では、水曝露前、水曝露中、及び水曝露後に、連続的に測定を行う。さらに他の実施形態では、水曝露前及び水曝露中に、連続的に測定を行う。
【0034】
センサフィルムを製造するのに用いたポリマー材料は、選択性、感度及び検出限界などの検出特性に影響することに留意すべきである。したがって、センサフィルムに適当な材料は、所望の応答時間、所望の透過率、所望の溶解度、透明度及び硬度、並びに対象物質に関与するその他の同様の特性を与えることができるポリマー材料から選択する。本発明にしたがってポリマー支持体として使用できる適当なポリマーはヒドロゲルである。ここで用いる用語「ヒドロゲル」は、親水性ポリマーが一緒に結束されて、水膨潤性、水不溶性構造を形成している三次元ネットワークである。用語「ヒドロゲル」は、米国特許第5744794号に記載されているように、湿潤状態の親水性ポリマーにも乾燥状態の親水性ポリマー(キセロゲル)にも適用される。
【0035】
これらのヒドロゲルを一緒に結束するのに、種々の異なる方法を使用できる。第一に、親水性ポリマーの放射線もしくはフリーラジカル架橋によるヒドロゲルの結束を利用することができ、その例には、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(グリセリルメタクリレート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(N−アクリルアミド)、ポリ(N,N−ジメチルアミノプロピル−N’−アクリルアミド)、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(アクリル酸)ナトリウム/カリウム、多糖類、例えばキサンテート、アルギネート、グアガム、アガロースなど、ポリ(ビニルピロリドン)及びセルロース誘導体がある。第二に、親水性ポリマー及びモノマーを適当な多官能性モノマーで化学架橋することによる結束を利用することができ、その例には、適当な架橋剤、例えばN,N’−メチレンビスアクリルアミド、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジ−トリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、プロポキシル化グリセリルトリアクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、その他のジ−及びトリ−アクリレート及びメタクリレートで架橋されたポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート);ヒドロキシエチルメタクリレート単量体とジメタクリレートエステル架橋剤との共重合;ヒドロキシル終端ポリ(エチレングリコール)とポリイソシアネートとの反応、もしくはトリオールのような多官能性モノマーの存在下でのジイソシアネートとの反応によって製造したポリ(エチレンオキシド)系ポリウレタン;並びにジアルデヒド、ジエポキシド及び多塩基酸で架橋したセルロース誘導体がある。第三に、ブロック及びグラフトコポリマー中に親水性モノマー及びポリマーを導入することによる結束を利用することができ、その例には、ポリ(エチレンオキシド)の、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、アクリル酸(AA)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリ(アクリルアミド−コ−メチルメタクリレート)、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシプロピルメタクリレート−コ−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート)などの適当なポリマーとのブロック及びグラフトコポリマー;ポリ(ビニルピロリドン)−コ−ポリスチレンコポリマー;ポリ(ビニルピロリドン)−コ−ビニルアルコールコポリマー;ポリウレタン;ポリウレタンウレア;ポリ(エチレンオキシド)を主成分とするポリウレタンウレア;ポリウレタンウレア及びポリ(アクリロニトリル)−コ−ポリ(アクリル酸)コポリマー;及び種々のポリ(アクリロニトリル)、ポリ(ビニルアルコール)及びポリ(アクリル酸)の誘導体がある。親水性ポリマーと他のポリマーとの間に分子複合体形成が起こることもあり、その例には、ポリ(アクリル酸)及びポリ(メタクリル酸)とのポリ(エチレンオキシド)ヒドロゲル複合体がある。最後に、高分子量親水性ポリマーの絡み合い架橋による結束を利用でき、その例には、多官能性アクリルもしくはビニルモノマーと混合した高分子量ポリ(エチレンオキシド)に基づくヒドロゲルがある。
【0036】
前述したように、上記ポリマーの単量体成分のコポリマー又は共重縮合体、並びにこれらのポリマーのブレンドも利用できる。これらの材料の適用例が、Michie et al., "Distributed pH and water detection using fiber-optic sensors and hydrogels," J. Lightwave Technol. 1995, 13, 1415-1420; Bownass et al., "Serially multiplexed point sensor for the detection of high humidity in passive optical networks," Opt. Lett. 1997, 22, 346-348; 及び米国特許第5744794号に記載されている。
【0037】
前述したように、ヒドロゲルを形成するには、ポリマーマトリックスを、ジ(エチレングリコール)メチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、エタノール、アセトン、クロロホルム、トルエン、キシレン、ベンゼン、イソプロピルアルコール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、メチレンクロライド、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジアセテート、ペルフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)などの適当な溶剤に溶解する。樹脂を含有する溶液中の溶剤の濃度は一般に約70重量%以上であり、約75重量%〜約90重量%が望ましく、約80重量%が好ましい。後述する例示目的に用いる1つの好適なヒドロゲルは、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、即ちpHEMAを1−メトキシ−2−プロパノールを含む溶剤に溶解したものである。
【0038】
センサフィルムのポリマーマトリックスは、所定の被分析物に対して透過性であるのが好ましい。センサフィルムは、寸法(即ち分子量)、親水性/疎水性、相(即ち被分析物が液体か、気体か、固体か)、溶解度、イオン電荷、コロイド状もしくは粒状物質の拡散阻止能、又は被分析物自体に加えて水サンプルの組成(例えばカルシウムの測定中のサンプルのpH)に基づいて、被分析物に対して選択的に透過性であってもよい。
【0039】
被分析物特異的試薬をポリマーマトリックス中に導入するか、ポリマーマトリックスに適用して、センサフィルムを製造する。被分析物特異的試薬として使用される材料には、当技術分野で指示薬として知られる色素及び試薬がある。ここで用いる「被分析物特異的試薬」は、物理的、化学的及び生物学的種を検出するのに有用な、比色、光屈折、光互変、熱変色、蛍光、弾性散乱、非弾性散乱、偏光、その他の光学的特性を示す指示薬である。被分析物特異的試薬には、有機及び無機色素、有機及び無機顔料、ナノ結晶、ナノ粒子、量子ドット、有機発蛍光団、無機発蛍光団及び類似の材料がある。
【0040】
被分析物特異的試薬として使用できる化合物の例には、有機色素、有機発蛍光団、蛍光色素、IR吸収性色素、UV吸収性色素、光互換性色素、熱変色性色素、スルホンフタレイン色素、その他この目的に用いることのできる既知の色素がある。色素の具体例には、ブロモピロガロールレッド(Bromopyrogallol Red,)、キシリジルブルー(Xylidyl Blue)I、クロロホスホナゾ(Chlorophosphonazo)III、ブリリアントグリーン、キサンテン色素、例えばローダミンB、ローダミン6G、エオシン、フロキシンBなど、アクリジン色素、例えばアクリジンオレンジ、アクリジンレッドなど、アゾ色素、例えばエチルレッド、メチルレッドなど、ポルフィリン色素、フタロシアニン色素、シアニン色素、例えば3,3’−ジエチルチアカルボシアニンヨージド、3,3’−ジエチルオキサジカルボシアニンヨージドなど、メロシアニン色素、スチリル色素、オキソノール色素、トリアリールメタン色素、メチレンブルー、フェノールブルーなどがある。ブロモチモールブルー及びブロモクレゾールグリーンなどのpH感受性色素を含む他の色素も同様に使用できる。被分析物特異的試薬として使用できる蛍光性材料は、センサフィルム上の特定の所定位置に結合し、特定波長の光で励起されると蛍光を発する。適当な波長は約200nm〜約1100nmの範囲、より好ましくは約300nm〜約1000nmの範囲であり、約350nm〜約950nmの範囲が特に好ましい。他の実施形態では、特定の所定位置に結合する非蛍光性の被分析物特異的試薬を使用できる。このような試薬には、光吸収性材料、例えば近赤外(NIR)吸収性材料がある。NIR吸収性材料の例には、カーボンブラック及びポリ(スチレンスルホネート)/ポリ(2,3−ジヒドロチエノ(3,4−b)−1,4−ジオキシン)がある。一実施形態では、被分析物特異的試薬は、約620〜670nmの光を吸収する光吸収性試薬である。別の実施形態では、被分析物特異的試薬は約750〜820nmの光を吸収する光吸収性試薬である。他の実施形態では、被分析物特異的試薬は約380〜420nmの光を吸収する光吸収性試薬である。これらの色素は、所望の用途に応じて、単独で用いても、組み合わせて用いてもよい。所定の用途に用いる有機化合物の選択及びその量は、有機化合物の特性並びにそれを用いる目的に依存する。例えば、当技術分野で周知のように、蛍光色素を樹脂バインダにppm濃度で添加することができる。
【0041】
本発明の一実施形態では、被分析物特異的試薬と親油性対向イオン、例えば四級アンモニウムイオンとのイオン対を形成することによって、被分析物特異的試薬をヒドロゲルマトリックス中に固定化する。四級アンモニウムイオンが被分析物特異的試薬の吸収スペクトルに変化をもたらし得ることが知られている。しかし、予期せざることには、四級アンモニウムイオンを、被分析物特異的試薬とのイオン対形成に必要とされる化学量論的量よりも実質的に高い濃度で添加すると、指示薬の選択性と感度が格段に向上することを見出した。ここで用いる「イオン対形成に必要とされる化学量論的量よりも実質的に高い濃度」は、四級アンモニウムイオンを、指示薬に対する化学量論的量より約5〜1000倍の濃度で添加することを意味する。限定するわけではないが、例を挙げると、四級アンモニウムイオン:指示薬のモル比285:1が特定のモリブデン酸センサに望ましいことが確認された。これに対して、モル比18:1が亜硫酸センサに最適であると確認された。特定の説明に拘束されるものではないが、臨界的ミセル濃度より高い四級アンモニウムイオンの量がフィルム中に存在する場合に起こる物理的変化は、その表面で2つ以上の指示薬−被分析物錯体を拘束するミセルの形成である、と現在のところ考えられる。かくて1より大きい配位子−金属比がカチオンミセルの存在下で形成され、指示薬−被分析物の予想紫外−可視−近赤外分光応答の増進をもたらし得る。
【0042】
以下に例示の目的で(限定のためでなく)使用するイオン対の一例は、BP Red−MoO4指示薬システムの場合、ブロモピロガロールレッド(BR)及びベンジルジメチルテトラデシルアンモニウムクロリド(ゼフィラミン)である。四級アンモニウム塩の存在が、BP Red−Moキレート吸収極大値の有意な深色シフト並びにキレート吸収帯の増強をもたらすことが示された。このフィルムに用いる四級アンモニウム塩は、構造及び質量に関して、ピーク吸収(λmax)の位置のより長い波長側へのシフトを達成するように選んだ。表1に、湿潤状態のpHEMAフィルム上の選択された四級アンモニウム塩が発揮するλmaxを列挙する。
【0043】
【表1】
四級アンモニウム塩をイオン対形成に必要とされる化学量論的量よりも実質的に高い濃度で添加することによって、指示薬の選択性及び感度の格段の向上が達成された。四級アンモニウム塩を色素に対して化学量論的量を上回る量添加した場合、λmaxの長波長側への有意な吸光度シフト、望ましくは約10nm〜約30nmの、さらに望ましくは約20nmの吸光度シフトが認められた。このシフトは、フィルムをλmaxに近い波長で測定するときの検出感度の有意な向上を可能にする。測定波長がλmaxの約1〜80nm以内であるのが望ましい。特定の理由に限定されるものではないが、この効果はカチオンミセルの界面上により高次(例えば、より高い配位子:金属比)なBP Red−MoO4キレートが形成される結果であると考えられる。
【0044】
本発明の別の実施形態では、サンプル溶液に曝露された後変色する化学組成物を含有する多重の透明ヒドロゲルフィルムを製造して、サンプル溶液の定量測定値を得る。この実施形態の一例では、サンプル溶液のアルカリ度を求めるのに使用する多重フィルムを製造し、この多重フィルムは、サンプル溶液中のアルカリ種に曝露された後変色する化学組成物を含有するのが望ましい。望ましくは約2〜12枚の透明フィルム、より望ましくは約2〜8枚の透明フィルムを製造し、サンプル溶液に曝露する。
【0045】
一実施形態では、ヒドロゲルフィルムに添加する化学組成物は、pH指示薬、界面活性剤、及び酸を含有する。適当な界面活性剤には、四級アンモニウム塩、例えばセチルトリメチルアンモニウムブロミド、トリドデシルメチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、その他多数がある。界面活性剤が、フィルム中に浸出する指示薬の量を減らすか実質的になくすのが望ましい。界面活性剤なしでは、指示薬の浸出で吸光度測定値に望ましくない誤差が紛れ込む。適当なpH指示薬色素にはブロモクレゾールグリーン及びブロモフェノールブルーがある。pH指示薬色素のpKa値が4.3近くであるのが望ましい。
【0046】
この実施形態に開示された方法によれば、この実施形態の多重ヒドロゲルフィルムそれぞれが異なる量の酸を含有する。適当な酸には、カルボン酸及びアリール及びアルキルスルホン酸、例えばp−トルエンスルホン酸があるが、ヒドロゲル媒体に溶解できるものであればどのような酸も使用できる。各フィルム中の酸濃度は異なり、フィルム毎に所定のパターンで変動する。酸濃度が、乾燥pHEMA(ヒドロゲル)に対して約0.2〜50重量%の範囲で変動するのが望ましい。好ましくは、最低濃度のフィルムが約0.2〜20重量%の濃度を有し、より望ましくは約0.8〜10重量%の濃度を有する。好ましくは、最高濃度のフィルムが約20〜50重量%の濃度を有し、より望ましくは約25〜35重量%の濃度を有する。カルボン酸のような弱酸を用いる場合、所定のアルカリ度範囲をカバーするのに必要なフィルムの数は、強酸を用いる場合より少ない。その理由は、弱酸が示す滴定曲線が強酸のそれより平坦であるからである。しかし、弱酸は通常、カルシウムイオンなどの、水サンプル中によく存在するイオンと錯体を形成する。
【0047】
所定量のサンプル溶液をヒドロゲルフィルム上に堆積すると、サンプル中のアルカリ種が添加した酸を中和する。一連のフィルムに異なる量の酸を添加することで酸濃度勾配ができているので、一連のフィルム(多重フィルム)をサンプル溶液に曝露したとき、異なる中和度に対応する輪郭の変色が生じる。一連のフィルム内のすべてのフィルムの平均吸光度をサンプルのアルカリ度の定量に用いる。
【0048】
一態様では、例えばリン酸センサの場合、内蔵式センサは、モリブデン酸塩及び被分析物特異的試薬としての色素、そしてpH調節剤としてのスルホン酸を含有する。モリブデン酸塩は、市場で入手でき、他の成分と相溶性であれば、種々の可溶性塩のいずれでもよい。使用できる適当なモリブデン酸塩の例には、モリブデン酸アンモニウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム及びリチウムがあるが、これらに限らない。別の態様では、ヘプタモリブデン酸アンモニウムをモリブデン酸塩として使用する。
【0049】
色素は発色性指示薬であり、色素をモリブデン酸塩及びリン酸塩と接触させた後、センサの光学的特性の変化を示すものである。被分析物特異的試薬に用いることのできる適当な色素の例には、アゾ色素、オキサジン色素、チアジン色素、トリフェニルメタン色素及びこれらの組合せがある。一態様では、被分析物特異的試薬はチアジン又はオキサジン色素である。使用できるチアジン及びオキサジン色素の具体例には、AzureA、AzureB、ベーシックブルー、メチレンブルー及びブリリアントクレジルブルーがあるが、これらに限らない。
【0050】
チアジン及びオキサジン色素を用いるのは、試験溶液のpHを3〜0.5に調節した場合、ほとんどのチアジン及びオキサジン色素の400nm〜800nmの範囲のスペクトルの主吸収帯が有意な変化を受けないからである。これは、当技術分野でリン酸分析用に周知のトリフェニルメタン色素とは対照的である。トリフェニルメタン色素の水溶液はpH範囲0〜2において色転移を生じ、中性pHで550nm〜650nmの範囲の吸収極大をもつ強い色を、低いpHではるかに弱い色もしくは無色を示す。中性pHでのトリフェニルメタン色素溶液の吸収帯は通常色素−HPA錯体の吸収帯とオーバーラップするので、色素−HPA錯体の形成による吸光度変化を顕現するためには、リン酸塩測定用の試験媒体のpHを色素の転移pHより低くなるよう制御しなければならない。したがって、トリフェニルメタン色素及びモリブデン酸塩には強酸が必要とされる。他方、チアジン及びオキサジン色素は、色素の色を抑制するのに特に強い酸性条件を必要としない。実際、この場合、低濃度の低酸度pH調節剤で色変化を生起することができる。
【0051】
前述したように、本発明の内蔵式センサにはスルホン酸をpH調節剤として使用することができる。適当なスルホン酸は、センサ処方のpHが約0.5〜3の範囲となるように、選択する。一態様では、p−トルエンスルホン酸をpH調節剤として使用する。スルホン酸の濃度は、モリブデン酸塩及びリン酸塩と接触した際に、色素の色転移が起こるか、吸光度の変化が起こるように、選択する。
【0052】
例えば、チアジン及びオキサジン色素を、水素イオン対モリブデン酸塩濃度比が30未満である水溶液中でモリブデン酸塩と混合すると、これら色素の主吸収帯の有意な赤シフトが認められる。溶液にリン酸塩を添加すると、溶液は青色に変わる。他方、チアジン又はオキサジン色素を、水素イオン対モリブデン酸塩濃度比が30〜120の範囲に保たれている水溶液中でモリブデン酸塩と混合すると、この色素の主吸収帯が同じままであるか、赤シフトが認められない。この場合、リン酸塩を試験溶液に添加すると、主吸収帯は減少する。吸光度の減少はリン酸塩濃度に比例する。
【0053】
一態様では、水素イオン濃度対モリブデン酸塩濃度の比が約0.1〜約150の範囲にあり、別の態様では、水素イオン濃度対モリブデン酸塩濃度の比が約1〜約120の範囲にあり、他の態様では、水素イオン濃度対モリブデン酸塩濃度の比が約30〜約120の範囲にある。
【0054】
他の態様では、本発明の内蔵式センサは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリビニルアルコール及びこれらの組合せからなる群から選択される1種以上の添加剤を含有する。この添加剤は、被分析物特異的試薬及び色素の可溶化を促進し、またホスホモリブデン酸塩−色素凝集体の形成を抑制する。したがって、上記添加剤の添加により、信号損失をもたらすホスホモリブデン酸塩−色素種の沈殿を防止することができる。さらに、内蔵式センサをポリマーマトリックス中に固定化した場合、上記化合物は可塑剤として機能でき、ポリマーマトリックスの分析すべき化学種(この場合リン酸塩)に対する透過度を高めるのに役立つ。
【0055】
一態様では、内蔵式センサへの添加剤としてポリエチレングリコールを用いる。一態様では、ポリエチレングリコール添加剤の分子量が約100g/モル〜約10,000g/モルの範囲にあり、別の態様では、ポリエチレングリコールの分子量が約200g/モル〜約4000g/モルの範囲にあり、他の態様では、ポリエチレングリコールの分子量が約400g/モル〜約600g/モルの範囲にある。一態様では、センサ処方に対するポリエチレングリコール添加剤の重量分率が約0.1重量%〜約20重量%の範囲にあり、別の態様では、センサ処方に対するポリエチレングリコール添加剤の重量分率が約0.5重量%〜約10重量%の範囲にあり、他の態様では、センサ処方に対するポリエチレングリコール添加剤の重量分率が約1重量%〜約5重量%の範囲にある。
【0056】
他の態様では、本発明の内蔵式センサは信号増強剤を含有する。信号増強剤は、pH調節剤と同じ材料から形成しても、異なる材料から形成してもよい。信号増強剤を用いて、ホスホモリブデン酸塩種から区別する必要のある遊離イソポリモリブデン酸塩をマスクすることができる。マスクしないと、遊離イソポリモリブデン酸塩が色素とイオン対を形成し、その結果より高い背景信号となったり、リン酸塩単独のせいで減少した信号となることがある。適当な信号増強剤の例には、シュウ酸、スルホン酸、シュウ酸塩、スルホン酸塩及びこれらの組合せがあるが、これらに限らない。
【0057】
一態様では、被分析物特異的試薬は金属錯体及び色素を含む。金属錯体は、被分析物(この場合リン酸塩)に対して高い特異性を有するように選択する。使用できる適当な金属錯体の例には、亜鉛錯体及びコバルト錯体がある。上記金属錯体はさらに、金属カチオンに配位することができる1種以上の配位子を含む。金属配位子錯体は、特定の形状のアニオンの選択的結合をもたらす幾何学的優先性を与えるように、選択する。適当な配位子の例には、ピリジン、アミン及び他の含窒素配位子がある。一実施形態では、(2,6−ビス(ビス(2−ピリジルメチル)アミノメチル)−4−メチルフェノール)配位子の二核亜鉛錯体を被分析物特異的試薬として使用した。
【0058】
金属錯体とともに金属色素指示薬を用いる。金属錯体とともに使用できる金属色素指示薬の例には、カテコール色素、トリフェニルメタン色素、チアジン色素、オキサジン色素、アントラセン色素、アゾ色素、フタロシアニン色素及びこれらの組合せがある。金属色素指示薬の具体例には、ピロカテコールバイオレット、ムレキシド(Murexide)、アルセナゾ(Arsenazo)I、アルセナゾ(Arsenazo)III、アンチピリルアゾ(Antipyrylazo)III、アゾ(Azo)1、アシッドクロムダークブルーK、BATA(ビスアミノフェノキシ四酢酸)、クロモトロープ酸及びXB−I(3−[3−(2,4−ジメチルフェニルカルバモイル)−2−ヒドロキシナフタレン−1−イル−アゾ]−4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸のナトリウム塩)があるが、これらに限らない。
【0059】
金属錯体及び金属色素指示薬を含有する被分析物特異的試薬用のpH調節剤は、センサ処方のpHがpH=7に維持されるように選択する。適当なpH調節剤の例には、生物学的緩衝剤、例えばグッドの緩衝液又はアミン類がある。使用できる生物学的緩衝剤の例には、HEPES(2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸)があるが、これに限らない。適当なアミン類の例には、シクロアミン化合物、特にシクロヘキシルアミン化合物があるが、これらに限らない。pH調節剤の濃度は、金属錯体及び色素との接触時に、色素の色転移が起こるか、吸光度の変化が起こるように、選択する。
【0060】
一態様では、内蔵式センサは金属錯体、色素及びスルホン酸pH調節剤を、非水溶剤に溶解した状態で含有する。別の態様では、内蔵式センサは金属錯体、色素及びアミンpH調節剤を含有し、これらをポリマーマトリックス中に固定化して固体装置を形成する。
【0061】
センサフィルムのポリマーマトリックスは所定の被分析物に対して透過性である。センサフィルムは、寸法(即ち分子量)、親水性/疎水性、相(即ち被分析物が液体か、気体か、固体か)、溶解度、イオン電荷、或いはコロイド状もしくは粒状物質の拡散阻止能に基づいて、被分析物に対して選択的に透過性であってもよい。一態様では、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリビニルアルコール又はこれらの組合せなどの添加剤を内蔵式センサに添加することができる。これらの添加剤は、ポリマーマトリックスを可塑化することによって、分析すべき化学種(この場合リン酸塩)に対するポリマーマトリックスの透過度を高めるのに役立つ。
【0062】
本発明のセンサフィルムは、自立式としても、ガラス、プラスチック、紙又は金属のような基板上に配置してもよい。センサフィルムは、塗装、スプレー、スピンコート、浸漬、スクリーン印刷など当業者に周知の技術のいずれかを用いて、基板上に塗工又は配置することができる。一態様では、ポリマーマトリックスを被分析物特異的試薬及びpH調節剤の共通溶剤に溶解し、次いで透明なプラスチック表面に浸漬塗布して薄い層を形成し、次いで暗所で数時間乾燥させる。或いはまた、被分析物特異的試薬を予め形成されたポリマーフィルムに直接適用することができる。
【0063】
基板の表面を被覆するのに用いる溶液の濃度は、フィルムの厚さ及びその光学的特性に悪影響を与えないように、薄く、例えば約20重量%〜約30重量%の固形分の範囲に保つ。一態様では、フィルムの厚さは約1μm〜約60μmの範囲であり、別の態様では、フィルムの厚さは約2μm〜約40μmの範囲であり、他の態様では、フィルムの厚さは約5μm〜約20μmの範囲である。
【0064】
一態様では、被分析物特異的試薬をセンサフィルムに付着するか、組み込むことができ、つぎに、そのセンサフィルムをCD、DVDなどの光媒体ディスクの上に配置する。
【0065】
別の態様では、センサフィルム上の被分析物特異的試薬は、光記憶媒体基板に適用された場合、センサスポットを形成する。ここで用いる用語「センサスポット」及び「センサ領域」は、互換性のある用語で、光記憶媒体ドライブを用いて感知するための所定空間位置にて、光記憶媒体の表面上に(或いは表面内に設けられているが、デジタル情報を担持する領域まで貫通しない凹所内に)配置されたセンサ材料を記述する。用途に応じて、センサスポットは環境中の物理的、化学的、生化学的、その他の変化に応答する。ある態様では、光記憶媒体に適用されたセンサフィルムは、適当な処理を行ってこのようなセンサスポットを形成することができる。このような適用方法は当業者に知られており、物理的マスキング系を含み、またネガ型及びポジ型ホトレジスト両方の適用を含む。或いはまた、光記憶媒体をポリマーフィルムで被覆した後、被分析物特異的試薬及びpH調節剤をセンサスポットとして光記憶媒体物品に適用してもよい。
【0066】
つぎにセンサを用いて水性試験サンプル中の化学種の存在を定性的かつ定量的に分析する。一態様では、試験サンプル中の濃度を測定する方法は、試験サンプルを前述した内蔵式センサと接触させ、この試験サンプルと内蔵式リン酸センサとの接触によって生じる内蔵式センサの光学的特性の変化を測定し、光学的特性の変化を濃度に変換する工程を含む。
【0067】
センサの試験サンプルとの接触は、センサが溶液状態であるか、固体状態であるかに応じて、任意適当な機構又は技法で行うことができる。接触を生じる技法の例には、センサの溶液を試験サンプル溶液と混合する、センサのストリップを試験サンプル溶液に浸漬する、センサフィルムに試験サンプル溶液のスポットを付ける、センサを有する試験装置に試験サンプルを流す、などの技法があるが、これらに限らない。
【0068】
接触後、センサの光学的特性の変化を光学的に測定する。光学的特性の変化は単純な定性的変化、例えばセンサの色の変化でよい。或いは、変化は定量的変化、例えば弾性もしくは非弾性散乱、吸収、光度、発光寿命又は偏光状態の変化でもよい。例えば、モリブデン酸アンモニウム、チアジン色素(例えばAzureC)及びp−トルエンスルホン酸を有するセンサをサンプルと接触させると、センサの色が紫色から青色に変化し、650nmの吸収ピークの変化が起こる。吸収ピークの変化(増加又は減少)を測定することによって、濃度を求めることができる。
【0069】
一実施形態では、光学的応答の測定を、白色光源(例えばOceanOptics社(米国フロリダ州デューンディン所在)製のタングステンランプ)及び携帯式分光計(例えばOceanOptics社(米国フロリダ州デューンディン所在)製のモデルST2000)を含む光学システムを用いて行うことができる。分光計に、400nmにブレーズした600溝/mm格子と、線状CCDアレイ検出器とを取り付ける。分光計が250nmから800nmまでの、さらには1100nmまでのスペクトル範囲を30%超えの効率でカバーするのが望ましい。ランプからの光を、集合6心の二叉光ファイバ反射プローブ(例えばOceanOptics社(米国フロリダ州デューンディン所在)製のモデルR400−7−UV/VIS)のアームの1つに収束する。プローブの共通アームがセンサ材料を照射する。プローブの第2アームは分光計に連結されている。蛍光測定のために、光源からの光を予め濾波して有効な励起波長を選択する。蛍光発光を同じセットアップ(但し発光ロングパスフィルタを含む)で集める。応答を測定する他の既知の方法を用いてもよい。
【0070】
光学的特性の変化を測定後、光学的特性の変化をリン酸塩濃度に変換することによってサンプル中の濃度を求めることができる。この変換は、検量線を用いて行うことができる。既知の濃度の試験サンプルとの接触後にセンサの光学的特性の変化を測定することによって、検量線を描くことができる。検量線を描いた後、この検量線を用いて、未知の試験サンプル中の濃度を求めることができる。一態様では、試験サンプルとの接触後のセンサの吸光度の変化が濃度に正比例している。本発明の一実施形態の内蔵式センサを、広い濃度範囲の化学種の感知に用いることができる。
【0071】
フィルムは、ポリマー溶液をスライドガラス上のくぼみに堆積するなど、当業者に周知の適当な方法により、製造することができる。一例では、ダイ切断した、接着剤裏打ちポリマーマスク層でくぼみを生成する。つぎに、フィルムを所定量のサンプル溶液に曝露する。フィルムの曝露後、各フィルムの吸光度を、既知の方法で、指示薬の極大吸光ピークに等しいか近い波長で測定する。センサフィルムから測定された平均吸光度を用いて、サンプルのアルカリ度を定量する。この方法は、吸光度測定に依拠しており、そしてフィルムのすべてが色を変えても有効に作用する。さらに、比色測定のほかに、蛍光その他の光学的測定も可能である。
【0072】
本発明の別の実施形態では、本発明者らは、予期せざることには、ある種のポリマーを添加剤(もしくはブレンド)としてポリマー処方に添加すると、この添加剤がある濃度にあれば、信号の増強が達成されることを見出した。この濃度より高くても低くても、効果が低減する。この効果は、色素、2−[2−[3−[(1,3−ジヒドロ−3,3−ジメチル−1−プロピル−2H−インドール−1−イリデン)エチリデン]−2−フェノキシ−1−シクロヘキセン−1−イル]エテニル]−3,3−ジメチル−1−プロピルインドリウム過塩素酸塩(IR768過塩素酸塩ともいう)の適用例で発見された。ナフィオン(Nafion)の添加は、最高試験濃度での残りの吸光度によりセンサ信号変化を正規化する場合に、センサフィルムの相対応答の向上をもたらした。
【0073】
内蔵式センサを用いて濃度を測定する方法を、添付図面を参照してさらに説明する。図1は、基板20上にフィルム30として配置された内蔵式センサ10の断面図である。フィルム30は、被分析物特異的試薬50及びpH調節剤60を含有する(図3)。被分析物特異的試薬50はモリブデン塩又は金属錯体及び色素を含有することができる。
【0074】
図2は、試験サンプル40と接触している内蔵式センサ10の断面図である。センサ10を試験サンプル40と接触させる方法は、当業者に周知の従来手段により行うことができ、センサ10の全体又は一部を試験サンプル40と接触関係にすればよい。
【0075】
図3は、試験サンプル40との接触後の、センサの光学的特性の変化80を生じている、内蔵式センサ10の断面図である。図3はさらに、被分析物特異的試薬50及びpH調節剤60を試験すべき試料70と接触させることによってもたらされた光学的特性の変化の拡大部分を示す。
【0076】
内蔵式センサ10の用途には、水処理産業、環境モニタリング、臨床診断、そして採鉱、冶金プロセスなど他の産業界における物質の分析があるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0077】
以下に、本発明を実施例に関連してさらに具体的に説明する。なお、以下の実施例は具体的な説明のために提示するものであって、すべてを網羅するものでも、本発明を開示した形態だけに限定するものでもない。
【0078】
実施例1:リン酸センサ
以下の試験では、1H−NMR吸収法、ガスクロマトグラフィ・質量分析法(GC/MC)及び高速電子衝撃分光分析(FAB)を用いて、反応生成物を分析した。センサ装置応答は、光ファイバプローブを取り付けたOceanOptics分光光度計を用いて測定した。装置に対して約45°〜約90°の範囲の角度にプローブを配向した。
【0079】
試験1:h−BPMP(2,6−ビス(ビス(2−ピリジルメチル)アミノメチル)−4−メチルフェノール)の合成
スキーム1にしたがってh−BPMPの合成を行った。2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−4−メチルフェノール(スキーム1中のA)を、塩化チオニルのジクロロメタン溶液を用いて塩素化した(収率85%)。生成物、2,6−ビス(クロロメチル)−4−メチルフェノール(スキーム1中のB)をビスピリジンアミンに曝露して、配位子(スキーム1中のC)を生成した(収率70%)。
【0080】
2,6−ビス(クロロメチル)−4−メチルフェノールの合成:
2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−4−メチルフェノールのジクロロメタン(DCM)25mLへの懸濁液を、塩化チオニルのDCM50mLへの溶液に添加した。添加後、混合物を10分間かきまぜた。すぐに反応が生じ、すべての固形分が溶解した。琥珀色の溶液を48時間かきまぜた。反応溶液を100gの氷に注ぎ、水層をNaOHでpH=7に中和した。有機材料を分離し、水性層を各50mLのDCMで3回抽出した。合わせた有機層をMSで乾燥し、濾過し、蒸発乾固した。5.2g(85%)の材料Bを琥珀色オイルとして得た。1H−NMRから、約90%の生成物形成が確認された。GCMSは、修正分子イオンピーク(M+)を205m/zに示した。上記反応の粗生成物をそのままつぎの工程に用いた。不安定な生成物をその後24時間以内に使用した。
【0081】
h−BPMPの合成:
2,6−ビス(クロロメチル)−4−メチルフェノールを15mLのTHFに溶解し、ついでN2中で、ビス(2−ピリジン)アミン及びトリエチルアミンを5mLのTHFに溶解した溶液で処理した。添加を0℃で1時間行った。最終懸濁液を48時間撹拌し、濾過し、減圧下で濃縮した。残留物を20mLの水で処理し、各30mLのDCMで3回抽出した。有機材料をドライ濾過し、蒸発した。残留物をSiO2中でアセトン溶離液のクロマトグラフィ処理した。1.71g(70%)の材料Cを琥珀色固体として得た。FABは修正分子イオンピーク(M+)を531m/zに示した。1H−NMRは正しい生成物と一致した。
【0082】
【化1】
以下の実施例では、実施形態に記載した通りの内蔵式リン酸センサの製造と試験をさらに具体的に説明する。スキーム2は、実施例2及び3に記載したような水性試験サンプル中のリン酸塩を感知する機構を具体的に示す。スキーム3は、実施例4〜14に記載したような水性試験サンプル中のリン酸塩を試験する機構を具体的に示す。
【0083】
【化2】
試験2:Dowanol中にh−PBMP−Zn−PCバイオレット錯体を含有するセンサの製造と試験
100mLのDowanol中で3つの基本溶液を調製した。A)ZnBr(FW=145.3)、7.7mg、0.053mmol、B)h−BPMP(FW=530)、28mg、0.053mmol、C)PCバイオレット(FW=408.4)、21.5mg、0.053mmol。少量(1.0mL)のA溶液に1.0mLのB溶液を添加し、ついで1.0mLのC溶液を添加した。この混合物に、2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸(HEPES)のDowanol溶液(pH7)を添加し、緑かかった青色の溶液を得た。少量(1.0mL)の溶液を2mLのDowanolで希釈し、pH6.9のDI水を標準として用いて、pH6.9のPO4-3水溶液に曝露した。曝露時間3分。400〜900nmの範囲でUV−Visスペクトルを記録した。
【0084】
図4は、上記装置について異なるリン酸塩濃度でのスペクトルの1群を示す。
【0085】
試験3:ポリマーマトリックス中にh−PBMP−Zn−PCバイオレット錯体を含有するセンサの製造と試験
100mLのDowanol中で3つの基本溶液を調製した。A)ZnBr(FW=145.3)、7.7mg、0.053mmol、B)h−BPMP(FW=530)、28mg、0.053mmol、C)PCバイオレット(FW=408.4)、21.5mg、0.053mmol。少量(0.6mL)のA溶液に0.6mLのB溶液を添加し、ついで0.6mLのC溶液を添加した。この混合物に、20%pMMA/pHEMA(1:3)及び3重量%のジシクロヘキシルアミンのDowanol溶液1.8mLを添加し、緑かかった青色の溶液を得た。2枚の3Mスコッチマジックテープ(登録商標)(フィルム厚さ約12μm)を用いて、5x10cmポリカーボネートシート(厚さ0.5mm)を上記溶液で被覆した。被覆したシートを2時間空気乾燥し、pH6.9のDI水を標準として用いて、pH6.9のPO4-3水溶液に曝露した。曝露時間3〜5分。OceanOptics分光光度計を用いて、400〜900nmの範囲で、45°〜90°の角度で、背景としての白紙の上にポリカーボネートを用いて、フィルムの読み取りを行った。
【0086】
図5は、上記装置について異なるリン酸塩濃度でのスペクトルの1群を示す。図6は、650nmでの吸光度をリン酸塩濃度の関数としてプロットすることによって得た、上記装置についての検量線を示す。
【0087】
【化3】
試験4:水中にAzureC及びモリブデン酸塩を含有するセンサの製造と試験:紫色−青色反応
p−トルエンスルホン酸(TsOH)、モリブデン酸アンモニウム及びAzureCをDI水に所定濃度で溶解した。1cmの使い捨てキュベット内で、0.05MのTsOH溶液2mLを0.068Mのモリブデン酸アンモニウム溶液0.25mLと混合し、ついでAzureC溶液(10mLの水中に10mg、Aldrich242187)0.1mLと混合した。異なる濃度のリン酸塩の水性サンプル約0.5mLを上記溶液に添加した。400〜900nmの範囲でUV−Visスペクトルを記録した。
【0088】
図7は、上記装置について異なるリン酸塩濃度でのスペクトルの1群を示す。図8は、650nmでの吸光度をリン酸塩濃度の関数としてプロットすることによって得た、上記装置についての検量線を示す。
【0089】
試験5:水中にAzureB及びモリブデン酸塩を含有するセンサの製造と試験:紫色−青色反応
p−トルエンスルホン酸(TsOH)、モリブデン酸アンモニウム及びAzureBをDI水に所定濃度で溶解した。1cmの使い捨てキュベット内で、0.05MのTsOH溶液2mLを0.068Mのモリブデン酸アンモニウム溶液0.25mLと混合し、ついでAzureB溶液(10mLの水中に4mg、Aldrich227935)0.1mLと混合した。異なる濃度のリン酸塩の水性サンプル約0.5mLを上記溶液に添加した。400〜900nmの範囲でUV−Visスペクトルを記録した。
【0090】
図9は、上記装置について異なるリン酸塩濃度でのスペクトルの1群を示す。
【0091】
試験6:水中にAzureB及びモリブデン酸塩を含有するセンサの製造と試験:青色−紫色反応
p−トルエンスルホン酸(TsOH)、モリブデン酸アンモニウム及びAzureBをDI水に所定濃度で溶解した。1cmの使い捨てキュベット内で、0.5MのTsOH溶液2mLを0.068Mのモリブデン酸アンモニウム溶液0.25mLと混合し、ついでAzureB溶液(10mLの水中に4mg、Aldrich227935)0.1mLと混合した。異なる濃度のリン酸塩の水性サンプル約0.5mLを上記溶液に添加した。400〜900nmの範囲でUV−Visスペクトルを記録した。
【0092】
図10は、650nmでの吸光度をリン酸塩濃度の関数としてプロットすることによって得た、上記装置についての検量線を示す。
【0093】
試験7:水中にブリリアントクレジルブルー及びモリブデン酸塩を含有するセンサの製造と試験:青色−紫色反応
p−トルエンスルホン酸(TsOH)をDI水に所定濃度で溶解した。1cmの使い捨てキュベット内で、0.0068Mのモリブデン酸アンモニウム溶液(0.154MのTsOH中)0.1mLを0.178MのBCB溶液(Aldrich858374)(0.166MのTsOH中)0.1mLと混合した。異なる濃度のリン酸塩の水性サンプル約2mLを上記溶液に添加した。400〜900nmの範囲でUV−Visスペクトルを記録した。
【0094】
図11は、622nmでの吸光度をリン酸塩濃度の関数としてプロットすることによって得た、上記装置についての検量線を示す。
【0095】
試験8:水中にAzureB及びモリブデン酸塩を含有するセンサの製造と試験:低濃度範囲検量
2インチのキュベット(光路長2.43cm)にオルトリン酸サンプル(PO4として0〜800ppbのリン酸塩を含有)20mLを入れた。ついで0.914g(0.174mM)のAzureB(1.54mol/kgのTsOH中)及び1.063g(0.068mol/kg)のモリブデン酸アンモニウム(1.54mol/kgのTsOH中)をキュベットに添加した。試薬をサンプルに添加してから3分後にHachDR2000で650nmの吸光度を測定した。
【0096】
図12は、650nmでの吸光度をリン酸塩濃度の関数としてプロットすることによって得た、上記装置についての検量線を示す。この方法についてのモル消衰係数を、検量線の傾斜から計算したところ、140700L/(mol・cm)であった。
【0097】
試験9:モリブデン酸塩及びAzureBを含有するセンサでの水道水サンプル中のリン酸塩濃度の測定
p−トルエンスルホン酸(TsOH)、モリブデン酸アンモニウム及びAzureBをDI水に所定濃度で溶解した。1cmの使い捨てキュベット内で、0.2MのTsOH溶液2mLを0.034Mのモリブデン酸アンモニウム溶液0.25mLと混合し、ついでAzureB溶液(10mLの水中に4mg)0.1mLと混合した。水道水サンプル約0.5mLを上記溶液に添加した。400〜900nmの範囲でUV−Visスペクトルを記録した。ACS品位のリン酸三ナトリウムから調製したリン酸塩標準溶液で、検量線を得た。リン酸塩標準溶液は、HachPhosVer3法で標準化した:
[PO4]/ppm=−2.867・A650+5.915
サンプル中の未知のリン酸塩濃度を求めたところ、1.45ppmであった。この値は、ICPによる分析値1.47ppm及びHach法による分析値1.25ppmと一致した。この水サンプル中の他の汚染物質の測量を、ICP発光分光計で行った。主要種は、Ca62ppm、Mg16ppm、Si5.2ppmであった。
【0098】
試験10:ポリマーマトリックス中にAzureB及びモリブデン酸塩を含有するセンサの製造と試験
モリブデン酸アンモニウム及びAzureBを脱イオン化水又は1−メトキシ−2−プロパノール(DowanolPM)に所定濃度で溶解した。9.12mMのAzureB溶液0.15mLに0.68Mのモリブデン酸アンモニウム溶液0.05mLを添加し、20%pHEMAのDowanol溶液5g中の0.33gのTsOHを添加した。ポリカーボネートシートを薬剤混合物の薄い層でフローコートし、暗所で数時間乾燥することによって、センサ装置を製造した。最終フィルム厚さは5〜20μmであった。センサ装置を種々の濃度のリン酸塩の水性サンプル約50μLに曝露した。即ち、フィルム表面にスポット適用した。サンプルのスポット適用から2分後に液体サンプルを除去し、一定な空気流で乾燥した。この後、センサ装置をリン酸塩応答について測定した。装置を暗室内で平坦表面上に置いた。センサ装置の応答を、光ファイバプローブ付きの分光光度計を用いて測定した。プローブを装置に対して90°の角度に配向した。白紙上のポリカーボネートを背景として使用した。
【0099】
図13は、上記装置について異なるリン酸塩濃度でのスペクトルの1群を示す。図14は、650nmでの吸光度をリン酸塩濃度の関数としてプロットすることによって得た、上記装置についての検量線を示す。
【0100】
試験11:ポリマーマトリックス中にマラカイトグリーン及びモリブデン酸塩を含有するセンサの製造と試験
マラカイトグリーン(8mg)、TsOH(105mg)及び0.51Mのモリブデン酸アンモニウム溶液0.050mLを20%pHEMA溶液2.5g中で混合した。ポリカーボネートシートを薬剤混合物の薄い層でフローコートし、暗所で数時間乾燥することによって、センサ装置を製造した。最終フィルム厚さは5〜20μmであった。センサ装置を種々の濃度のリン酸塩の水性サンプル約20μLに曝露した。即ち、フィルム表面にスポット適用した。サンプルのスポット適用から2分後に液体サンプルを除去し、一定な空気流で乾燥した。この後、センサ装置をリン酸塩応答について測定した。装置を暗室内で平坦表面上に置いた。センサ装置の応答を、光ファイバプローブ付きの分光光度計を用いて測定した。プローブを装置に対して90°の角度に配向した。白紙上のポリカーボネートを背景として使用した。
【0101】
図15は、上記装置について異なるリン酸塩濃度でのスペクトルの1群を示す。図16は、650nmでの吸光度をリン酸塩濃度の関数としてプロットすることによって得た、上記装置についての検量線を示す。
【0102】
試験12:ポリマーマトリックス中にベーシックブルー及びモリブデン酸塩を含有するセンサの製造と試験
ベーシックブルー3(5mg)、TsOH(105mg)及び0.51Mのモリブデン酸アンモニウム溶液0.025mLを20%pHEMA溶液2.5g中で混合した。ポリカーボネートシートを薬剤混合物の薄い層でフローコートし、暗所で数時間乾燥することによって、センサ装置を製造した。最終フィルム厚さは5〜20μmであった。センサ装置を種々の濃度のリン酸塩の水性サンプル約20μLに曝露した。即ち、フィルム表面にスポット適用した。サンプルのスポット適用から2分後に液体サンプルを除去し、一定な空気流で乾燥した。この後、センサ装置をリン酸塩応答について測定した。装置を暗室内で平坦表面上に置いた。センサ装置の応答を、光ファイバプローブ付きの分光光度計を用いて測定した。プローブを装置に対して90°の角度に配向した。白紙上のポリカーボネートを背景として使用した。
【0103】
図17は、上記装置について異なるリン酸塩濃度でのスペクトルの1群を示す。図18は、650nmでの吸光度をリン酸塩濃度の関数としてプロットすることによって得た、上記装置についての検量線を示す。
【0104】
試験13:ポリマーマトリックス中にメチレンブルー及びモリブデン酸塩を含有するセンサの製造と試験
20%pHEMAのヒドロキシルエーテル系溶剤への溶液2.5gに、2mgのメチレンブルー、5mgのシュウ酸ナトリウム、10μLの0.64Mの(NH4)6(Mo7O24)・H2O及び105mgのTsOHを添加した。混合物を暗所で21℃にて、すべての固形分が溶解するまで、撹拌した。透明プラスチック表面を薬剤混合物の薄い層でコートし、暗所で数時間乾燥することによって、装置を製造した。最終フィルム厚さは5〜20μmであった。装置を種々の濃度のリン酸塩の水性サンプル約50μLに曝露した。曝露時間は通常120秒であった。ついで水サンプルを除去し、フィルムを一定な空気流で乾燥した。この後、装置をリン酸塩応答について測定した。装置を暗室内で平坦表面上に置いた。センサ装置の応答を、光ファイバプローブ付きの分光光度計を用いて測定した。プローブを装置に対して90°の角度に配向した。
【0105】
図19は、上記装置について異なるリン酸塩濃度でのスペクトルの1群を示す。図20は、650nmでの吸光度をリン酸塩濃度の関数としてプロットすることによって得た、上記装置についての検量線を示す。
【0106】
試験14:可塑化ポリマーマトリックス中にベーシックブルー及びモリブデン酸塩を含有するセンサの製造と試験
9mgのベーシックブルー3、672mgのTsOH、302mgのポリエチレングリコール400、0.076mLの0.68Mモリブデン酸アンモニウム水溶液及び24mgのシュウ酸ナトリウムを10.0gの20%pHEMA溶液中で混合した。ポリカーボネート基板上に薬剤混合物の薄い層をスクリーン印刷し、70℃で5分間乾燥することによって、センサ装置を製造した。その後センサを暗所で室温及び外気湿度にて11日間保存した。最終フィルム厚さは5〜20μmであった。センサ装置を種々の濃度のリン酸塩の水性サンプル約20μLに曝露した。即ち、フィルム表面にスポット適用した。サンプルのスポット適用から2分後に液体サンプルを除去し、一定な空気流で乾燥した。この後、センサ装置をリン酸塩応答について測定した。装置を暗室内で平坦表面上に置いた。センサ装置の応答を、光ファイバプローブ付きの分光光度計を用いて測定した。プローブを装置に対して75°の角度に配向したが、別の角度でも同様の結果が得られた。ポリカーボネートを背景として使用した。
【0107】
図21は、上記装置について異なるリン酸塩濃度でのスペクトルの1群を示す。図22は、650nmでの吸光度をリン酸塩濃度の関数としてプロットすることによって得た、上記装置についての検量線を示す。
【0108】
実施例2:モリブデン酸センサ
20%のpHEMA(MW300,000)を1−メトキシ−2−プロパノール(DowanolPM)に溶解した溶液10.0gに、20mgのブロモピロガロールレッド及び40mgのp−トルエンスルホン酸を添加した。1時間撹拌した後、20mgのベンジルジメチルテトラデシルアンモニウムクロリド(ゼフィラミン)を添加した。さらに1時間撹拌した後、40mgのL−アスコルビン酸を添加し、混合物を室温で、固形分がすべて溶解するまで(少なくとも12時間)、撹拌した。
【0109】
透明なプラスチック表面を薬剤混合物の薄い層で被覆し、暗所で数時間乾燥することによって、センサフィルムを製造した。最終フィルム厚さは10〜20μmであった。
【0110】
センサフィルムを種々の濃度のモリブデン酸塩の水性サンプル約30μLに曝露した。曝露時間は通常120秒であった。ついで水サンプルを除去し、フィルムを一定な空気流で乾燥した。この後、センサフィルムをモリブデン酸塩応答について測定した。
【0111】
センサフィルムを暗室内で平坦表面上に置いた。センサフィルムの応答を、光ファイバプローブ付きのOceanOptics分光光度計を用いて測定した。プローブをセンサフィルムに対して90°の角度に配向した。
【0112】
図23は、上記センサフィルムについて異なるモリブデン酸塩濃度でのスペクトルの1群を示す。図24は上記センサフィルムについての応答曲線を示す。
【0113】
実施例3:マグネシウムセンサ
薬剤混合物の調製:20%のpHEMA(MW300,000)を1−メトキシ−2−プロパノール(DowanolPM)に溶解した溶液10.0gに、50mgのキシリジルブルー1のナトリウム塩及び300mgのテトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)を添加した。1時間撹拌した後、ポリエチレンイミン(低分子量Mn約1000、無水)を1−メトキシ−2−プロパノール(DowanolPM)に溶解した40重量%溶液500mgを添加した。さらに1時間撹拌した後、400mgのエチレングリコール−ビス(アミノエチルエーテル)−N,N,N’,N’−四酢酸の四ナトリウム塩(EGTA−Na4)を添加し、混合物を室温で、固形分がすべて溶解するまで(少なくとも12時間)、撹拌した。
【0114】
図25は、上記センサフィルムについて異なるマグネシウム濃度でのスペクトルの1群を示す。図26は上記センサフィルムについての応答曲線を示す。
【0115】
実施例4:硬度センサ
薬剤混合物の調製:20%のpHEMA(MW300,000)を1−メトキシ−2−プロパノール(DowanolPM)に溶解した溶液10.0gに、キシリジルブルーIのナトリウム塩50mg及びポリエチレンイミン(低分子量Mn約1000、無水)を1−メトキシ−2−プロパノール(DowanolPM)に溶解した40重量%溶液500mgを添加した。混合物を室温で、固形分がすべて溶解するまで(少なくとも12時間)、撹拌した。
【0116】
図27は、上記センサフィルムについて異なる硬度濃度でのスペクトルの1群を示す。図28は上記センサフィルムについての応答曲線を示す。
【0117】
実施例5:カルシウムセンサ
薬剤混合物の調製:20%のpHEMA(MW300,000)を1−メトキシ−2−プロパノール(DowanolPM)に溶解した溶液10.0gに、クロロホスホナゾIII25mg及びp−トルエンスルホン酸200mgを添加した。混合物を室温で1時間撹拌した後、60mgのトリドデシルメチルアンモニウムクロリド(TDMAC)を添加した。混合物を室温で、固形分がすべて溶解するまで(少なくとも12時間)、撹拌した。
【0118】
図29は、上記センサフィルムについて異なるカルシウム濃度でのスペクトルの1群を示す。図30は上記センサフィルムについての応答曲線を示す。
【0119】
実施例6:亜硫酸センサ
薬剤混合物の調製:20%のpHEMA(MW300,000)を1−メトキシ−2−プロパノール(DowanolPM)に溶解した溶液10.0gに、ブリリアントグリーン8mg及びテトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)120mgを添加した。混合物を室温で、固形分がすべて溶解するまで(少なくとも12時間)、撹拌した。
【0120】
図31は、上記センサフィルムについて異なる亜硫酸塩濃度でのスペクトルの1群を示す。図32は上記センサフィルムについての応答曲線を示す。
【0121】
実施例7:亜硫酸センサII
(高アルカリ度、高pH水サンプルに耐えるように製造)
本実施例は、第1フィルムを第2緩衝フィルムでオーバーコートすることによって、薬剤(亜硫酸塩)フィルムを緩衝する可能性を具体的に説明する。2層フィルムは、極端な水環境(極めて高いpH(pH12)及び極めて高いアルカリ度(1000mg/Lのモルアルカリ度))における目的被分析物(亜硫酸塩)の測定を可能にする方法を実現する。第1フィルムを第2緩衝フィルムでオーバーコートしないと、センサフィルムは、水サンプルの高pHに応答するが、目的被分析物(亜硫酸塩)に応答しない傾向がある。
【0122】
薬剤混合物Iの調製:25%のpHEMA(MW300,000)をジ(エチレングリコール)メチルエーテル(DowanolDM)及び1−メトキシ−2−プロパノール(DowanolPM)の65/35(重量%)混合液に溶解した溶液10.0gに、ブリリアントグリーン8mg、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)120mg及び200mLの水に溶解したリン酸二水素カリウム(KH2PO4)36mgを添加した。混合物を室温で、固形分がすべて溶解するまで(少なくとも12時間)、撹拌した。透明なプラスチック表面を薬剤混合物の薄い層で被覆し、暗所で数時間乾燥することによって、センサフィルムを製造した。最終フィルム厚さは5〜20μmであった。
【0123】
薬剤混合物IIの調製:25%のpHEMA(MW300,000)をジ(エチレングリコール)メチルエーテル(DowanolDM)及び1−メトキシ−2−プロパノール(DowanolPM)の65/35(重量%)混合液に溶解した溶液10.0gに、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)120mg及び200mLの水に溶解したリン酸二水素カリウム(KH2PO4)36mgを添加した。混合物を室温で、固形分がすべて溶解するまで(少なくとも12時間)、撹拌した。薬剤混合物IIを透明なプラスチック表面上に形成した薬剤混合物Iの乾燥フィルム上に被覆し、暗所で数時間乾燥した。合計の最終フィルム厚さは10〜40μmであった。
【0124】
図33は、上記装置について異なる亜硫酸塩濃度でのスペクトルの1群を示す。亜硫酸塩濃度は、高アルカリ度(1000mg/Lのモルアルカリ度)かつ高pH(pH12)の水マトリックス中で調製した。図34は上記装置についての応答曲線を示す。
【0125】
実施例8:アルカリ度センサ
本実施例で用いる酸はp−トルエンスルホン酸であり、用いる指示薬はブロモクレゾールグリーン(pKa=4.9、水性相中)である。ポリマー溶液組成を表2に示す。8μLのポリマー溶液をスライドガラスのくぼみに堆積することによって、フィルムを作製した。くぼみ(直径5.4mm、深さ0.32mm)は、ダイ切断、接着剤裏当てポリマーマスク層で形成した。試験中はマスク層を除去しなかった。650nmの平均吸光度を用いて、サンプルの総アルカリ度を定量する。検量線を図35に示す。
【0126】
【表2】
実施例9:塩素センサ
一実施形態では、ナフィオンポリマーをセンサ処方に添加した。ナフィオンを添加すると、センサ信号変化を最高試験濃度での残りの吸光度により正規化した場合の、センサフィルムの相対応答が向上した。この濃度の上下では、効果が低下した。指示薬としては、2−[2−[3−[(1,3−ジヒドロ−3,3−ジメチル−1−プロピル−2H−インドール−1−イリデン)エチリデン]−2−フェノキシ−1−シクロヘキセン−1−イル]エテニル]−3,3−ジメチル−1−プロピルインドリウム過塩素酸塩、別名IR768過塩素酸塩が適当である。
【0127】
図36は、漸増する量のナフィオン溶液を2000μLの色素処方に添加した場合に、566nmで測定した場合の応答感度の向上を示す。この向上は、図37に示すように、2ppm塩素への曝露時のセンサ信号としてプロットすることができる。本図は、pHEMA中のナフィオンの濃度に、最高センサ応答が得られる非直観的臨界領域が存在することを示す。
【0128】
以上、本発明を代表的な実施形態について説明したが、本発明の要旨から逸脱することなく種々の変更や置き換えが可能であるので、以上の説明は本発明を記述細部に限定するものではない。当業者であれば、ごく普通の実験を行うだけで、上記説明のさらなる変更例や等価物が想起できるはずであり、このような変更例や等価物も特許請求の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】本発明の一実施形態にしたがって構成された基板上にフィルムとして配置された内蔵式センサの断面図である。
【図2】試験サンプルと接触している図1の内蔵式センサの断面図である。
【図3】試験サンプルとの接触後にリン酸センサの光学的特性に変化を生じた、図1の内蔵式センサの断面図である。
【図4】h−PBMP−Zn−PCバイオレット錯体をDowanol中に含有する図1の内蔵式センサの実施形態についての異なるリン酸塩濃度でのスペクトルの1群を示す図である。
【図5】h−PBMP−Zn−PCバイオレット錯体をポリマーマトリックス中に含有する図1の内蔵式センサの実施形態についての異なるリン酸塩濃度でのスペクトルの1群を示す図である。
【図6】h−PBMP−Zn−PCバイオレット錯体をDowanol中に含有する図1の内蔵式センサの実施形態について、650nmの吸光度をリン酸塩濃度の関数としてプロットして得た検量線を示す図である。
【図7】AzureC及びモリブデン酸塩を水中に含有する図1の内蔵式センサの実施形態についての異なるリン酸塩濃度でのスペクトルの1群を示す図である。
【図8】AzureC及びモリブデン酸塩を水中に含有する図1の内蔵式センサの実施形態について、650nmの吸光度をリン酸塩濃度の関数としてプロットして得た検量線を示す図である。
【図9】AzureB及びモリブデン酸塩を水中に含有する図1の内蔵式センサの実施形態についての異なるリン酸塩濃度でのスペクトルの1群を示す図である。
【図10】AzureB及びモリブデン酸塩を水中に含有する図1の内蔵式センサの実施形態について、650nmの吸光度をリン酸塩濃度の関数としてプロットして得た検量線を示す図である。
【図11】ブリリアントクレジルブルー及びモリブデン酸塩を水中に含有する図1の内蔵式センサの実施形態について、622nmの吸光度をリン酸塩濃度の関数としてプロットして得た検量線を示す図である。
【図12】AzureB及びモリブデン酸塩を水中に含有する図1の内蔵式センサの実施形態について、650nmの吸光度をリン酸塩濃度の関数としてプロットして得た低濃度検量線を示す図である。
【図13】AzureB及びモリブデン酸塩をポリマーマトリックス中に含有する図1の内蔵式センサの実施形態についての異なるリン酸塩濃度でのスペクトルの1群を示す図である。
【図14】AzureB及びモリブデン酸塩をポリマーマトリックス中に含有する図1の内蔵式センサの実施形態について、650nmの吸光度をリン酸塩濃度の関数としてプロットして得た検量線を示す図である。
【図15】マラカイトグリーン及びモリブデン酸塩をポリマーマトリックス中に含有する図1の内蔵式センサの実施形態についての異なるリン酸塩濃度でのスペクトルの1群を示す図である。
【図16】マラカイトグリーン及びモリブデン酸塩をポリマーマトリックス中に含有する図1の内蔵式センサの実施形態について、650nmの吸光度をリン酸塩濃度の関数としてプロットして得た検量線を示す図である。
【図17】ベーシックブルー及びモリブデン酸塩をポリマーマトリックス中に含有する図1の内蔵式センサの実施形態についての異なるリン酸塩濃度でのスペクトルの1群を示す図である。
【図18】ベーシックブルー及びモリブデン酸塩をポリマーマトリックス中に含有する図1の内蔵式センサの実施形態について、650nmの吸光度をリン酸塩濃度の関数としてプロットして得た検量線を示す図である。
【図19】メチレンブルー及びモリブデン酸塩をポリマーマトリックス中に含有する図1の内蔵式センサの実施形態についての異なるリン酸塩濃度でのスペクトルの1群を示す図である。
【図20】メチレンブルー及びモリブデン酸塩をポリマーマトリックス中に含有する図1の内蔵式センサの実施形態について、650nmの吸光度をリン酸塩濃度の関数としてプロットして得た検量線を示す図である。
【図21】ベーシックブルー及びモリブデン酸塩を可塑化ポリマーマトリックス中に含有する図1の内蔵式センサの実施形態についての異なるリン酸塩濃度でのスペクトルの1群を示す図である。
【図22】ベーシックブルー及びモリブデン酸塩を可塑化ポリマーマトリックス中に含有する図1の内蔵式センサの実施形態について、650nmの吸光度をリン酸塩濃度の関数としてプロットして得た検量線を示す図である。
【図23】本発明の別の実施形態によるモリブデン酸センサフィルムの異なるモリブデン酸塩濃度での吸収スペクトルを示す図である。
【図24】図23のセンサフィルムについての応答曲線を示す図である。
【図25】本発明の別の実施形態によるマグネシウムセンサの異なるマグネシウム濃度での吸収スペクトルを示す図である。
【図26】図25のセンサフィルムについての応答曲線を示す図である。
【図27】本発明の別の実施形態による硬度センサの異なるマグネシウム濃度での吸収スペクトルを示す図である。
【図28】図27のセンサフィルムについての応答曲線を示す図である。
【図29】本発明の別の実施形態によるカルシウムセンサの異なるカルシウム濃度での吸収スペクトルを示す図である。
【図30】図29のセンサフィルムについての応答曲線を示す図である。
【図31】本発明の別の実施形態による亜硫酸センサの異なる亜硫酸塩濃度での吸収スペクトルを示す図である。
【図32】図31のセンサフィルムについての応答曲線を示す図である。
【図33】本発明の別の実施形態による亜硫酸センサについての異なる亜硫酸塩濃度でのスペクトルの1群を示す図である。
【図34】図33のセンサフィルムについての応答曲線を示す図である。
【図35】アルカリ度センサの検量線を示す図である。
【図36】pHEMAセンサフィルム中に漸増する濃度のナフィオンポリマーを添加した場合の応答感度の向上を示す図である。
【図37】図36の向上を2ppm塩素への曝露時のセンサ信号としてプロットした図で、pHEMA中のナフィオンの濃度に、最高センサ応答が得られる非直観的臨界領域が存在することを示す。
【符号の説明】
【0130】
10 内蔵式センサ
20 基板
30 フィルム
40 試験サンプル
50 被分析物特異的試薬
60 pH調節剤
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル溶液中の化学種の濃度をセンサフィルムで定量測定する方法であって、
サンプル溶液を内蔵式センサフィルムに接触させ、
このサンプル溶液と内蔵式センサフィルムとの接触によって生じる内蔵式センサフィルムの光学的特性の変化を測定し、
光学的特性の変化を濃度に変換する
工程を含む方法。
【請求項2】
前記センサフィルムが化学種の濃度の測定にフィルム外に補助試薬を必要としない内蔵式であり、光学応答がUV、可視又は近赤外スペクトル範囲に生起し、光学的特性の変化が弾性散乱、非弾性散乱、吸収、光度、発光寿命又は偏光状態の変化からなり、前記変換が検量線を用いて行われる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記センサフィルムが、透明プラスチック表面を薬剤混合物の薄い層で被覆し、乾燥することによって製造され、前記センサフィルムの厚さが10〜20μmである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
さらに、サンプル溶液中の化学種に曝露されるとその光学的特性を変化する指示薬を含有する化学組成物を有するヒドロゲルセンサフィルムを製造し、該フィルムを所定量のサンプル溶液に曝露する工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
さらに、光学走査装置を用いて、指示薬の極大吸収ピーク(λmax)近くの波長でセンサフィルムの吸光度を測定し、センサフィルムから測定された平均吸光度を用いて、サンプル溶液中の化学種の濃度を定量する工程を含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
ヒドロゲルフィルムに添加される化学組成物が有機塩又は界面活性剤及び酸を含有する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記センサが、モリブデン酸塩及び色素を含有する1種以上の被分析物特異的試薬と、1種以上のスルホン酸を含有するpH調整剤とを含有する、請求項5記載の方法。
【請求項8】
前記指示薬と四級アンモニウム、四級ホスホニウム、四級イミダゾリウム、四級ピリジウム、四級ピロリジニウム又は四級スルホニウムイオンとのイオン対を形成することによって、指示薬がヒドロゲルフィルム中に固定化され、ここで四級アンモニウム、四級ホスホニウム、四級イミダゾリウム、四級ピリジウム、四級ピロリジニウム又は四級スルホニウム塩の濃度が指示薬とイオン対を形成するのに必要な化学量論的量よりも実質的に高い、請求項5記載の方法。
【請求項9】
四級アンモニウム、四級ホスホニウム、四級イミダゾリウム、四級ピリジウム、四級ピロリジニウム又は四級スルホニウム塩の濃度が、指示薬に対する化学量論的量の約5〜1000倍である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
スルホン酸、ホスホン酸、カルボン酸及びフェノールからなる群から選択される酸を用いて、指示薬をヒドロゲルフィルム中でpH調整し、ここで酸の濃度が指示薬とイオン対を形成するのに必要な化学量論的量よりも実質的に高い、請求項5記載の方法。
【請求項11】
前記センサフィルムが、リン酸センサフィルム、モリブデン酸センサフィルム、マグネシウムセンサフィルム、硬度センサフィルム、カルシウムセンサフィルム、亜硫酸センサフィルム、アルカリ度センサフィルム及び塩素センサフィルムからなる群から選択される、請求項5記載の方法。
【請求項12】
前記センサフィルムが、ブロモピロガロールレッドの添加によって製造されたモリブデン酸センサフィルム、又はクロロホスホナゾIII、p−トルエンスルホン酸及びベンジルジメチルテトラデシルアンモニウムクロリド(ゼフィラミン)をpHEMAに添加することによって製造されたカルシウムセンサフィルムである、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記センサフィルムが、キシリジンブルー1のナトリウム塩、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)、ポリエチレンイミン及びエチレングリコール−ビス(アミノエチルエーテル)−N,N,N’,N’−四酢酸の四ナトリウム塩(EGTA−Na4)をpHEMAに添加することによって製造されたマグネシウムセンサフィルムである、請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記センサフィルムが、オキサジン、チアジン、アゾ、トリフェニルメタン、シアニン、カルボシアニン又はイノリン色素の金属塩及びポリアルキレンイミンをpHEMAに添加することによって製造された硬度センサフィルムである、請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記センサフィルムが、オキサジン、チアジン、アゾ、トリフェニルメタン、シアニン、カルボシアニン又はイノリン色素、スルホン酸、ホスホン酸、カルボン酸及び/又はフェノール及び四級アンモニウム、四級ホスホニウム、四級ピリジニウム、四級ピロリジニウム、四級イミダゾリウム又はスルホニウム塩をpHEMA(MW300,000)に添加することによって製造されたモリブデン酸、カルシウム又は亜硫酸センサフィルムである、請求項1記載の方法。
【請求項16】
前記センサフィルムが、ブリリアントグリーン及びテトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)をpHEMAに添加することによって製造された亜硫酸センサフィルムである、請求項1記載の方法。
【請求項17】
前記センサフィルムが、ナフィオン及びオキサジン、チアジン、アゾ、トリフェニルメタン、シアニン、カルボシアニン又はイノリン色素をpHEMAに添加することによって製造された塩素センサフィルムである、請求項1記載の方法。
【請求項18】
前記センサフィルムが、金属錯体及び色素を含有する1種以上の被分析物特異的試薬、1種以上のスルホン酸を含有するpH調節剤、及び1種以上の非水溶剤で製造されたリン酸センサフィルムである、請求項1記載の方法。
【請求項19】
前記センサフィルムが、オキサジン、チアジン、アゾ、トリフェニルメタン、シアニン、カルボシアニン又はイノリン色素、四級アンモニウム、四級ホスホニウム、四級ピリジニウム、四級ピロリジニウム、四級イミダゾリウム又はスルホニウム塩、及びリン酸金属塩をpHEMA中に含有するフィルムの上に、四級アンモニウム、四級ホスホニウム、四級ピリジニウム、四級ピロリジニウム、四級イミダゾリウム又はスルホニウム塩、及びリン酸金属塩をpHEMA中に含有する第2フィルムを被覆することによって製造された2層センサフィルムである、請求項1記載の方法。
【請求項20】
さらに、ヒドロゲルセンサフィルムの形成時にポリマー添加剤を添加する工程を含み、該添加剤がナフィオンで塩素の測定用のセンサフィルムを形成する、請求項1記載の方法。
【請求項21】
前記センサフィルムが塩素センサフィルムであり、ナフィオンのようなポリマースーパー酸添加剤を含有し、指示薬が2−[2−[3−[(1,3−ジヒドロ−3,3−ジメチル−1−プロピル−2H−インドール−1−イリデン)エチリデン]−2−フェノキシ−1−シクロヘキセン−1−イル]エテニル]−3,3−ジメチル−1−プロピルインドリウム過塩素酸塩である、請求項1記載の方法。
【請求項22】
サンプル溶液中の化学種の濃度を複数のセンサフィルムで定量測定する方法であって、
サンプル溶液中の化学種に曝露されると紫外、可視又は近赤外スペクトル範囲におけるその光学的特性を変化する複数のヒドロゲルセンサフィルムを製造し、ここでヒドロゲルフィルムに添加される化学組成物がpH指示薬、界面活性剤及び酸を含有し、
複数のセンサフィルムそれぞれの酸濃度を所定のパターンにしたがって変動させ、
複数のセンサフィルムを所定量のサンプル溶液に露呈し、
光学走査装置を用いて、指示薬の極大吸収ピーク近くの波長でセンサフィルムの吸光度を測定し、
センサフィルムから測定された平均吸光度を用いて、サンプル溶液中の化学種の濃度を定量する
工程を含む方法。
【請求項23】
前記センサフィルムがアルカリ度センサフィルムであり、最低濃度の酸を有するフィルム中の酸の濃度が乾燥pHEMA(ヒドロゲル)に対して約0.8重量%であり、最高濃度の酸を有するフィルム中の酸の濃度が乾燥pHEMAに対して約35重量%である、請求項22記載の方法。
【請求項24】
モリブデン酸塩及び色素を含有する1種以上の被分析物特異的試薬と、
1種以上のスルホン酸を含有するpH調節剤と
を含有する内蔵式センサ。
【請求項25】
前記色素がアゾ色素、オキサジン色素、チアジン色素、トリフェニルメタン色素及びこれらの組合せからなる群から選択される1種以上を含む、請求項24記載の内蔵式センサ。
【請求項26】
さらに、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリビニルアルコール及びこれらの組合せからなる群から選択される1種以上の添加剤を含む、請求項24記載の内蔵式センサ。
【請求項27】
さらに、シュウ酸、スルホン酸、シュウ酸塩、スルホン酸塩及びこれらの組合せからなる群から選択される1種以上の信号増強剤を含む、請求項24記載の内蔵式センサ。
【請求項28】
前記信号増強剤及び前記pH調節剤が同一材料から形成された、請求項27記載の内蔵式センサ。
【請求項29】
さらにポリマーマトリックスを含有する、請求項24記載の内蔵式センサ。
【請求項30】
前記ポリマーマトリックスが、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(グリセリルメタクリレート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレンオキサイド)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(N−アクリルアミド)、ポリ(N,N−ジメチルアミノプロピル−N’−アクリルアミド)、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(アクリル酸)ナトリウム/カリウム、多糖類、ポリ(ビニルピロリドン)及びこれらの共重合体からなる群から選択される1種以上のヒドロゲルを含む、請求項29記載の内蔵式センサ。
【請求項31】
金属錯体及び色素を含有する1種以上の被分析物特異的試薬と、
1種以上のスルホン酸を含有するpH調節剤と、
1種以上の非水溶剤と
を含有する内蔵式リン酸センサ。
【請求項32】
前記金属錯体が、亜鉛錯体、銅錯体及びこれらの組合せからなる群から選択される1種以上を含有する、請求項31記載の内蔵式リン酸センサ。
【請求項33】
前記色素がカテコール色素、トリフェニルメタン色素、チアジン色素、オキサジン色素、アントラセン色素、アゾ色素、フタロシアニン色素及びこれらの組合せからなる群から選択される1種以上を含有する、請求項31記載の内蔵式リン酸センサ。
【請求項34】
さらにポリマーマトリックスを含有する、請求項31記載の内蔵式リン酸センサ。
【請求項35】
前記ポリマーマトリックスが、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(グリセリルメタクリレート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレンオキサイド)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(N−アクリルアミド)、ポリ(N,N−ジメチルアミノプロピル−N’−アクリルアミド)、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(アクリル酸)ナトリウム/カリウム、多糖類、ポリ(ビニルピロリドン)及びこれらの共重合体からなる群から選択される1種以上のヒドロゲルを含む、請求項34記載の内蔵式リン酸センサ。
【請求項36】
微小濃度で存在するサンプル中の化学種の濃度の測定に用いるセンサであって、
センサは、四級アンモニウム、四級ホスホニウム、四級イミダゾリウム、四級ピリジウム、四級ピロリジニウム又は四級スルホニウム塩、及び指示薬、色素、顔料または試薬及び/又はこれらの組合せを含有するヒドロゲルセンサフィルムを含み、
前記指示薬、色素、顔料または試薬及び/又はこれらの組合せは、サンプル溶液中の化学種に曝露されると紫外、可視又は近赤外スペクトル範囲におけるその光学的特性を変化し、
前記指示薬は、四級アンモニウム、四級ホスホニウム、四級イミダゾリウム、四級ピリジウム、四級ピロリジニウム又は四級スルホニウム塩とイオン対を形成することによって、ヒドロゲルフィルム中に固定化され、
四級アンモニウム塩の濃度がイオン対形成に必要な化学量論的量よりも実質的に高い、
サンプル中の化学種の濃度の測定に用いるセンサ。
【請求項1】
サンプル溶液中の化学種の濃度をセンサフィルムで定量測定する方法であって、
サンプル溶液を内蔵式センサフィルムに接触させ、
このサンプル溶液と内蔵式センサフィルムとの接触によって生じる内蔵式センサフィルムの光学的特性の変化を測定し、
光学的特性の変化を濃度に変換する
工程を含む方法。
【請求項2】
前記センサフィルムが化学種の濃度の測定にフィルム外に補助試薬を必要としない内蔵式であり、光学応答がUV、可視又は近赤外スペクトル範囲に生起し、光学的特性の変化が弾性散乱、非弾性散乱、吸収、光度、発光寿命又は偏光状態の変化からなり、前記変換が検量線を用いて行われる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記センサフィルムが、透明プラスチック表面を薬剤混合物の薄い層で被覆し、乾燥することによって製造され、前記センサフィルムの厚さが10〜20μmである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
さらに、サンプル溶液中の化学種に曝露されるとその光学的特性を変化する指示薬を含有する化学組成物を有するヒドロゲルセンサフィルムを製造し、該フィルムを所定量のサンプル溶液に曝露する工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
さらに、光学走査装置を用いて、指示薬の極大吸収ピーク(λmax)近くの波長でセンサフィルムの吸光度を測定し、センサフィルムから測定された平均吸光度を用いて、サンプル溶液中の化学種の濃度を定量する工程を含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
ヒドロゲルフィルムに添加される化学組成物が有機塩又は界面活性剤及び酸を含有する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記センサが、モリブデン酸塩及び色素を含有する1種以上の被分析物特異的試薬と、1種以上のスルホン酸を含有するpH調整剤とを含有する、請求項5記載の方法。
【請求項8】
前記指示薬と四級アンモニウム、四級ホスホニウム、四級イミダゾリウム、四級ピリジウム、四級ピロリジニウム又は四級スルホニウムイオンとのイオン対を形成することによって、指示薬がヒドロゲルフィルム中に固定化され、ここで四級アンモニウム、四級ホスホニウム、四級イミダゾリウム、四級ピリジウム、四級ピロリジニウム又は四級スルホニウム塩の濃度が指示薬とイオン対を形成するのに必要な化学量論的量よりも実質的に高い、請求項5記載の方法。
【請求項9】
四級アンモニウム、四級ホスホニウム、四級イミダゾリウム、四級ピリジウム、四級ピロリジニウム又は四級スルホニウム塩の濃度が、指示薬に対する化学量論的量の約5〜1000倍である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
スルホン酸、ホスホン酸、カルボン酸及びフェノールからなる群から選択される酸を用いて、指示薬をヒドロゲルフィルム中でpH調整し、ここで酸の濃度が指示薬とイオン対を形成するのに必要な化学量論的量よりも実質的に高い、請求項5記載の方法。
【請求項11】
前記センサフィルムが、リン酸センサフィルム、モリブデン酸センサフィルム、マグネシウムセンサフィルム、硬度センサフィルム、カルシウムセンサフィルム、亜硫酸センサフィルム、アルカリ度センサフィルム及び塩素センサフィルムからなる群から選択される、請求項5記載の方法。
【請求項12】
前記センサフィルムが、ブロモピロガロールレッドの添加によって製造されたモリブデン酸センサフィルム、又はクロロホスホナゾIII、p−トルエンスルホン酸及びベンジルジメチルテトラデシルアンモニウムクロリド(ゼフィラミン)をpHEMAに添加することによって製造されたカルシウムセンサフィルムである、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記センサフィルムが、キシリジンブルー1のナトリウム塩、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)、ポリエチレンイミン及びエチレングリコール−ビス(アミノエチルエーテル)−N,N,N’,N’−四酢酸の四ナトリウム塩(EGTA−Na4)をpHEMAに添加することによって製造されたマグネシウムセンサフィルムである、請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記センサフィルムが、オキサジン、チアジン、アゾ、トリフェニルメタン、シアニン、カルボシアニン又はイノリン色素の金属塩及びポリアルキレンイミンをpHEMAに添加することによって製造された硬度センサフィルムである、請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記センサフィルムが、オキサジン、チアジン、アゾ、トリフェニルメタン、シアニン、カルボシアニン又はイノリン色素、スルホン酸、ホスホン酸、カルボン酸及び/又はフェノール及び四級アンモニウム、四級ホスホニウム、四級ピリジニウム、四級ピロリジニウム、四級イミダゾリウム又はスルホニウム塩をpHEMA(MW300,000)に添加することによって製造されたモリブデン酸、カルシウム又は亜硫酸センサフィルムである、請求項1記載の方法。
【請求項16】
前記センサフィルムが、ブリリアントグリーン及びテトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)をpHEMAに添加することによって製造された亜硫酸センサフィルムである、請求項1記載の方法。
【請求項17】
前記センサフィルムが、ナフィオン及びオキサジン、チアジン、アゾ、トリフェニルメタン、シアニン、カルボシアニン又はイノリン色素をpHEMAに添加することによって製造された塩素センサフィルムである、請求項1記載の方法。
【請求項18】
前記センサフィルムが、金属錯体及び色素を含有する1種以上の被分析物特異的試薬、1種以上のスルホン酸を含有するpH調節剤、及び1種以上の非水溶剤で製造されたリン酸センサフィルムである、請求項1記載の方法。
【請求項19】
前記センサフィルムが、オキサジン、チアジン、アゾ、トリフェニルメタン、シアニン、カルボシアニン又はイノリン色素、四級アンモニウム、四級ホスホニウム、四級ピリジニウム、四級ピロリジニウム、四級イミダゾリウム又はスルホニウム塩、及びリン酸金属塩をpHEMA中に含有するフィルムの上に、四級アンモニウム、四級ホスホニウム、四級ピリジニウム、四級ピロリジニウム、四級イミダゾリウム又はスルホニウム塩、及びリン酸金属塩をpHEMA中に含有する第2フィルムを被覆することによって製造された2層センサフィルムである、請求項1記載の方法。
【請求項20】
さらに、ヒドロゲルセンサフィルムの形成時にポリマー添加剤を添加する工程を含み、該添加剤がナフィオンで塩素の測定用のセンサフィルムを形成する、請求項1記載の方法。
【請求項21】
前記センサフィルムが塩素センサフィルムであり、ナフィオンのようなポリマースーパー酸添加剤を含有し、指示薬が2−[2−[3−[(1,3−ジヒドロ−3,3−ジメチル−1−プロピル−2H−インドール−1−イリデン)エチリデン]−2−フェノキシ−1−シクロヘキセン−1−イル]エテニル]−3,3−ジメチル−1−プロピルインドリウム過塩素酸塩である、請求項1記載の方法。
【請求項22】
サンプル溶液中の化学種の濃度を複数のセンサフィルムで定量測定する方法であって、
サンプル溶液中の化学種に曝露されると紫外、可視又は近赤外スペクトル範囲におけるその光学的特性を変化する複数のヒドロゲルセンサフィルムを製造し、ここでヒドロゲルフィルムに添加される化学組成物がpH指示薬、界面活性剤及び酸を含有し、
複数のセンサフィルムそれぞれの酸濃度を所定のパターンにしたがって変動させ、
複数のセンサフィルムを所定量のサンプル溶液に露呈し、
光学走査装置を用いて、指示薬の極大吸収ピーク近くの波長でセンサフィルムの吸光度を測定し、
センサフィルムから測定された平均吸光度を用いて、サンプル溶液中の化学種の濃度を定量する
工程を含む方法。
【請求項23】
前記センサフィルムがアルカリ度センサフィルムであり、最低濃度の酸を有するフィルム中の酸の濃度が乾燥pHEMA(ヒドロゲル)に対して約0.8重量%であり、最高濃度の酸を有するフィルム中の酸の濃度が乾燥pHEMAに対して約35重量%である、請求項22記載の方法。
【請求項24】
モリブデン酸塩及び色素を含有する1種以上の被分析物特異的試薬と、
1種以上のスルホン酸を含有するpH調節剤と
を含有する内蔵式センサ。
【請求項25】
前記色素がアゾ色素、オキサジン色素、チアジン色素、トリフェニルメタン色素及びこれらの組合せからなる群から選択される1種以上を含む、請求項24記載の内蔵式センサ。
【請求項26】
さらに、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリビニルアルコール及びこれらの組合せからなる群から選択される1種以上の添加剤を含む、請求項24記載の内蔵式センサ。
【請求項27】
さらに、シュウ酸、スルホン酸、シュウ酸塩、スルホン酸塩及びこれらの組合せからなる群から選択される1種以上の信号増強剤を含む、請求項24記載の内蔵式センサ。
【請求項28】
前記信号増強剤及び前記pH調節剤が同一材料から形成された、請求項27記載の内蔵式センサ。
【請求項29】
さらにポリマーマトリックスを含有する、請求項24記載の内蔵式センサ。
【請求項30】
前記ポリマーマトリックスが、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(グリセリルメタクリレート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレンオキサイド)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(N−アクリルアミド)、ポリ(N,N−ジメチルアミノプロピル−N’−アクリルアミド)、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(アクリル酸)ナトリウム/カリウム、多糖類、ポリ(ビニルピロリドン)及びこれらの共重合体からなる群から選択される1種以上のヒドロゲルを含む、請求項29記載の内蔵式センサ。
【請求項31】
金属錯体及び色素を含有する1種以上の被分析物特異的試薬と、
1種以上のスルホン酸を含有するpH調節剤と、
1種以上の非水溶剤と
を含有する内蔵式リン酸センサ。
【請求項32】
前記金属錯体が、亜鉛錯体、銅錯体及びこれらの組合せからなる群から選択される1種以上を含有する、請求項31記載の内蔵式リン酸センサ。
【請求項33】
前記色素がカテコール色素、トリフェニルメタン色素、チアジン色素、オキサジン色素、アントラセン色素、アゾ色素、フタロシアニン色素及びこれらの組合せからなる群から選択される1種以上を含有する、請求項31記載の内蔵式リン酸センサ。
【請求項34】
さらにポリマーマトリックスを含有する、請求項31記載の内蔵式リン酸センサ。
【請求項35】
前記ポリマーマトリックスが、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(グリセリルメタクリレート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレンオキサイド)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(N−アクリルアミド)、ポリ(N,N−ジメチルアミノプロピル−N’−アクリルアミド)、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(アクリル酸)ナトリウム/カリウム、多糖類、ポリ(ビニルピロリドン)及びこれらの共重合体からなる群から選択される1種以上のヒドロゲルを含む、請求項34記載の内蔵式リン酸センサ。
【請求項36】
微小濃度で存在するサンプル中の化学種の濃度の測定に用いるセンサであって、
センサは、四級アンモニウム、四級ホスホニウム、四級イミダゾリウム、四級ピリジウム、四級ピロリジニウム又は四級スルホニウム塩、及び指示薬、色素、顔料または試薬及び/又はこれらの組合せを含有するヒドロゲルセンサフィルムを含み、
前記指示薬、色素、顔料または試薬及び/又はこれらの組合せは、サンプル溶液中の化学種に曝露されると紫外、可視又は近赤外スペクトル範囲におけるその光学的特性を変化し、
前記指示薬は、四級アンモニウム、四級ホスホニウム、四級イミダゾリウム、四級ピリジウム、四級ピロリジニウム又は四級スルホニウム塩とイオン対を形成することによって、ヒドロゲルフィルム中に固定化され、
四級アンモニウム塩の濃度がイオン対形成に必要な化学量論的量よりも実質的に高い、
サンプル中の化学種の濃度の測定に用いるセンサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
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【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【公表番号】特表2009−513977(P2009−513977A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−537814(P2008−537814)
【出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/041104
【国際公開番号】WO2007/050463
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/041104
【国際公開番号】WO2007/050463
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】
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