説明

微小粒子の粒子数計測方法及び装置

【課題】自動車の排気ガス等に含まれる微小粒子の粒子数を、微分型電気移動度測定装置(DMA)と高感度電流計と凝縮核計数器(CNC)を利用して測定する微小粒子の粒子数計測方法及び装置において、粒子の荷電効率を実測値から算出して補正することにより、精度の高い測定をすることができる微小粒子の粒子数計測方法及び装置を提供する。
【解決手段】 微分型電気移動度測定装置2の分級用の電極14に所定の時間間隔で電圧を印加して、凝縮核計数器4で、電圧印加時の粒子数Naと、電圧非印加時の粒子数Nbを計数し、この差から算出される粒子数Naと、高感度電流計4で求めた電流値icとを比較して、粒子群の粒子の荷電効率fcを算出し、該荷電効率fcを使用して、高感度電流計4で求めた電流値imから検出される粒子数Nmを補正して、粒子群の粒子数Nvを算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の排気ガス等に含まれる微小粒子の粒子数を、微分型電気移動度測定装置(DMA)と高感度電流計と凝縮核計数器(CNC)を利用して、粒子の荷電効率を実測しながら、精度良く測定できる微小粒子の粒子数計測方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
微小粒子、特にナノ粒子、超微小粒子と呼ばれる100nm付近以下の粒子が、ディーゼルエンジン等の内燃機関から放出されており、その粒子数、粒径分布を測定することが環境対策上重要となってきている。
【0003】
従来技術の粒径分布測定装置では、ナノ粒子の粒径分布を測定するための分級方法には、微小粒子の慣性衝突を利用した多段インパクターや、電気移動度を利用した微分型電気移動度測定装置(DMA:Differential Mobility Analyser) が用いられており、また、粒子数の検出には、電気的検出のエレクトロメータや、光学的検出の凝縮核計数器(CNC:Condensation Nucleus Counter)が用いられている。
【0004】
この図4に例示する多段インパクター20では、入口21から導入した微小粒子を含むガス(エアロゾル)は、多段(S1〜SN)の開口径が各段階によって異なるノズル22を通して、エアロゾルの流速を変化させながら、気流中の微小粒子の慣性を利用して、各段階のノズル22に対向して配置された衝突板(Impaction Plate) 23に慣性衝突させて付着させ、これにより各段階の衝突板23毎に分級した状態で微小粒子を捕集し、残りの気体は、フィルタ24を通過した後、出口25から排出される。
【0005】
つまり、エアロゾルは、ノズルを通ることにより加速され、粒径の大きな粒子は正面の衝突板へ衝突・捕集され、より小さな粒子はガスと共に衝突板を回り込んで次段の衝突板へ流出して再度同様に分級され、それを多段に繰り返すことにより分級する。
【0006】
しかしながら、この多段インパクターには、100nm程度以下の分級は減圧下で行う必要があること、10nm程度以下の分級は実用上不可能であること等の欠点がある。また、10段程度の装置しか実用化されておらず、粒径の分解能が低く、また、装置の仕様により分級の範囲が固定されてしまうという問題がある。そのため、分析の用途に応じて、分級粒径の範囲を変更することは困難となる。
【0007】
また、DMAの例としては、エアロゾルを帯電させて、外筒と内筒からなる二重円筒内に導いて、その後両端を封止した後に、外筒に電圧を印加して、内筒に流れる電流を高感度の電流計で測定し、この電流値の変化が電気移動度に対応した情報を与えることを利用して、電気移動度の分布を求め、これに基づいて粒径分布を測定する粒径分布測定装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0008】
また、図5に例示するDMAとCNCを組み合わせたものでは、エアロゾルは入口31からインパクター32で大きな粒子を取り除いた後、荷電部33でガス中に浮遊している微小粒子を帯電する。この帯電した微小粒子を、入口34から供給される清浄空気(シースエア)と共に、高電位が印加されている中央ロッド35と、接地(アース)されている外筒36との間の電位場を通過させ、特定の狭い範囲の電気移動度をもつ微小粒子のみをスリット37に導いて分級する。この分級した微小粒子をCNC38に導く。また、その他の粒子と空気やガスは出口39より排出される。この中央ロッド35と外筒36との間の電位場を変化させることにより、分級する電気移動度の範囲を変更することができ、分級する粒子径の範囲を設定できる。
【0009】
しかしながら、DMAとCNCの組み合わせた装置では、特定の粒径を中心とした狭い範囲の微小粒子のみを取り出して捕集し検出するため、同時に広範囲の微小粒子の捕集は不可能である。そのため、広範囲の分級のためにDMAの電圧を走査する必要があり、高速な測定は難しく、測定に1分以上の時間が必要となるという問題がある。なお、高速化のために、複数電極とエレクトロメータを設置した装置もあるが、構造が複雑で高価である。
【0010】
更に、上記のような多段インパクターやDMAとCNCの組合せ装置を用いた場合には、所定の粒径範囲に存在する粒子数は、測定データを用いて積算処理する必要があり、解析の手間が煩雑であるという問題もある。
【0011】
その上、DMAの粒子捕集電極に微小粒子を捕集するためには、この微小粒子をコロナ放電等で帯電させる必要があるが、微小粒子全部を荷電させることは難しく、微小粒子全数に対する荷電した微小粒子の割合を100%にすることができないという問題がある。そのため、高精度の測定を行うためには、別試験によって得られた値を基に補正値を算出して、この補正値で粒子捕集電極に捕集された微小粒子の数を補正する必要がある。言い換えれば、粒径に依存する一定の荷電効率を仮定している。この場合には、この仮定による誤差が生じることになり、微小粒径ではその誤差が大きくなるという問題がある。
【0012】
一方、自動車搭載のエンジンを含めた内燃機関から排出される微小粒子は、一山あるいは二山の粒子数濃度粒径分布を示すことが知られている。一山の場合は集積モード粒子(accumulation モード粒子)と呼ばれる燃焼生成物のすす粒子(表面に付着した有機化合物を含め)が主である。また、図3に示すディーゼル排出微小粒子の粒径分布のように、二山の場合は集積モード粒子に加え、核モード粒子(nuclei モード粒子) が生成している。二種類のモード粒子は運転条件による粒径の変化は小さく、50nm付近に境界が存在し、その境界の上下の粒径範囲に対応した粒子数が概略の集積モード粒子数と核モード粒子数となる。
【0013】
これらの各モード粒子は、それぞれの物理・化学的性状や大気中での動態や健康への影響度合等が異なり、その排出量は内燃機関の運転条件に応じて変動することが知られている。そのため、これらの2種の粒子の排出量の変動を測定することは、内燃機関の微小粒子排出の実態の把握とその大気・健康への影響を評価する上で重要な課題となっている。
【特許文献1】特開平8−261911号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、自動車の排気ガス等に含まれる微小粒子の粒子数を、微分型電気移動度測定装置(DMA)と高感度電流計と凝縮核計数器(CNC)を利用して測定する微小粒子の粒子数計測方法及び装置において、粒子の荷電効率を実測値から算出して補正することにより、精度の高い測定をすることができる微小粒子の粒子数計測方法及び装置を提供することにある。
【0015】
また、更なる目的は、自動車搭載の内燃機関等の排出ガス中に含まれる核モード粒子と集積モード粒子を電圧等の走査をせずに、微分型電気移動度測定装置により分級し、これらのモード粒子の粒子数を直接測定ができる微小粒子の粒子数計測方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を達成するための本発明の微小粒子の粒径別捕集方法は、微小粒子を含んだ排出ガスを、荷電器により帯電させ、微分型電気移動度測定装置(DMA:Differential Mobility Analyser) を用いて電気移動度により分級し、所定の範囲の粒径を有する粒子群を粒子捕集電極で捕集し、該粒子捕集電極に発生する電流を高感度電流計で検出し、該検出電流から前記粒子群の粒子数を検出すると共に、前記微分型電気移動度測定装置から排出される排気ガス中の少なくとも一部に含まれる粒子数を凝縮核計数器(CNC:Condensation Nucleus Counter)で計数する微小粒子の粒子数計測方法であって、
前記微分型電気移動度測定装置の分級用の電極に所定の時間間隔で電圧を印加して、電圧印加時には、前記凝縮核計数器で前記微分型電気移動度測定装置で捕集されずに流出してきた粒子数を計数し、電圧非印加時には前記凝縮核計数器で排気ガス中の粒径の全範囲における粒子数を計数し、前記凝縮核計数器の電圧非印加時の粒子数と電圧印加時の粒子数との差から算出される粒子数と、前記高感度電流計で求めた電流値とを比較して、前記粒子群の粒子の荷電効率を算出し、該荷電効率を使用して、前記高感度電流計で求めた電流値から検出される粒子数を補正して、前記粒子群の粒子数を算出することを特徴とする。
【0017】
これにより、自動車の排気ガス等に含まれる微小粒子の粒子数を、微分型電気移動度測定装置(DMA)と高感度電流計と凝縮核計数器(CNC)を利用して測定する微小粒子の粒子数計測方法において、粒子の荷電効率を実測値から算出して補正するので、精度の高い測定をすることができる。
【0018】
また、上記の目的を達成するための微小粒子の粒子数計測方法は、微小粒子を含んだ排出ガスを、荷電器により帯電させ、微分型電気移動度測定装置を用いて電気移動度により分級し、この分級の際に、第1の所定の範囲の粒径を有する第1の粒子群を、前記微分型電気移動度測定装置の粒子捕集電極で捕集し、該粒子捕集電極に発生する電流を高感度電流計で検出し、該検出電流から前記第1の粒子群の粒子数を検出すると共に、前記微分型電気移動度測定装置から排出される排気ガス中の少なくとも一部に含まれる粒子数を凝縮核計数器で計数する微小粒子の粒子数計測方法であって、
前記微分型電気移動度測定装置の電極において所定の時間間隔で電圧を印加して、電圧印加時に、前記凝縮核計数器で排気ガス中の前記第1の所定の範囲外の第2の所定の範囲の粒径を有する前記第2の粒子群の粒子数を計数し、電圧非印加時には前記凝縮核計数器で排気ガス中の粒径の全範囲における粒子数を計数し、前記凝縮核計数器の電圧非印加時の粒子数と、電圧印加時の粒子数との差から算出した粒子数と、前記高感度電流計で求めた電流値とを比較して、前記第1の粒子群の荷電効率を算出し、該荷電効率を使用して、前記高感度電流計で求めた電流値から検出される前記第1の粒子群の粒子数を補正して、前記第1の粒子群の粒子数を算出することを特徴とする。
【0019】
これにより、第1の粒子群(核モード粒子)と第2の粒子群(集積モード粒子)の二種類の粒子数を同時かつ高速に測定できる。排出ガスに含まれた微小粒子は電気移動度により分級するので、コロナ放電を用いた荷電部により微小粒子を帯電させて、その後、高電圧を印加した二重円筒電極等のDMAにより分級して、第1の粒子群は粒子捕集電極(外側電極)に捕集され、この粒子捕集電極に接続された高感度電流計(エレクトロメータ)により電流が検出される。一方、DMAを通り抜けた第2の粒子群は、DMAの末端部の混合部で絞られ、全体的に混合された後、一部がCNCに分岐・検出され、計数される。この構成により、二種類のモード粒子の粒子数を同時かつリアルタイムに計測することができ、粒径分布測定装置と比べて安価、高速、簡便な計測が可能となる。
【0020】
そして、上記の目的を達成するための微小粒子の粒子数計測装置は、計測対象のガス中の微粒子を帯電させる荷電部と、ガス流に乗って移動する帯電微粒子を分級するための高電圧が印加される高電圧電極と、該高電圧電極と対向して配置され、所定の範囲の粒径を有する粒子群を捕集する粒子捕集用電極と、該粒子捕集用電極に接続されて帯電粒子が捕集されて発生する電流値を検出する高感度電流計と、前記高電圧電極と前記粒子捕集用電極の下流側に流出した排気ガス中の粒子数を測定するための凝縮核計数器とを有すると共に、
前記微分型電気移動度測定装置の分級用の電極に所定の時間間隔で電圧を印加して、電圧印加時には、前記凝縮核計数器で前記微分型電気移動度測定装置で捕集されずに流出してきた粒子数を計数し、電圧非印加時には前記凝縮核計数器で排気ガス中の粒径の全範囲における粒子数を計数し、前記凝縮核計数器の電圧非印加時の粒子数と電圧印加時の粒子数との差から算出される粒子数と、前記高感度電流計で求めた電流値とを比較して、前記粒子群の粒子の荷電効率を算出し、該荷電効率を使用して、前記高感度電流計で求めた電流値から検出される粒子数を補正して、前記粒子群の粒子数を算出する演算制御部とを有して構成される。
【0021】
また、上記の目的を達成するための微小粒子の粒子数計測装置は、計測対象のガス中の微粒子を帯電させる荷電部と、ガス流に乗って移動する帯電微粒子を分級するための高電圧が印加される高電圧電極と、該高電圧電極と対向して配置され、第1の所定の範囲の粒径を有する第1の粒子群を捕集する粒子捕集用電極と、該粒子捕集用電極に接続されて帯電粒子が捕集されて発生する電流値を検出する高感度電流計と、前記高電圧電極と前記粒子捕集用電極の下流側に流出した排気ガス中の粒子数を測定するための凝縮核計数器とを有すると共に、
前記微分型電気移動度測定装置の電極において所定の時間間隔で電圧を印加して、電圧印加時には、前記凝縮核計数器で排気ガス中の前記第2の粒子群の粒子数を計数し、電圧非印加時には前記凝縮核計数器で排気ガス中の粒径の全範囲における粒子数を計数し、前記凝縮核計数器の電圧非印加時の粒子数と電圧印加時の粒子数との差から算出される粒子数と、前記高感度電流計で求めた電流値とを比較して、前記第1の粒子群の荷電効率を算出し、該荷電効率を使用して、前記高感度電流計で求めた電流値から検出される前記第1の粒子群の粒子数を補正して、前記第1の粒子群の粒子数を算出する演算制御部とを有して構成される。
【0022】
これらの微小粒子の粒子数計測装置によれば、上記の微小粒子の粒子数計測方法を実施でき、同様な作用効果を奏することができる。
【0023】
更に、上記の微小粒子の粒子数計測装置において、前記第1の粒子群を捕集する粒子捕集用電極とは別の電極を前記粒子捕集用電極の上流又は下流の少なくとも一方に設けて構成すると、この別の電極により、粒子捕集電極に捕集される粒径範囲を精度よく設定できる。また、この別の電極により、粒子捕集電極の高電圧による強電場が外部に漏れないようにすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の微小粒子の粒子数計測方法及び装置によれば、自動車の排気ガス等に含まれる微小粒子の粒子数を、微分型電気移動度測定装置(DMA)と高感度電流計と凝縮核計数器(CNC)を利用して測定する微小粒子の粒子数計測方法及び装置において、粒子の荷電効率を実測値から算出して補正することにより、精度の高い測定をすることができる。
【0025】
更に、排出ガス中に含まれる二種類の粒子、核モード粒子と集積モード粒子を対象とすることにより、所定の設定をしたDMAにより分級し、最小限(2台)の検出器を用いて2種類のモード粒子の粒子数を直接測定するので、DMAにおける電圧等の走査の必要がなく、瞬時に高速で測定することができる。また、測定結果については、粒径分布から積分して粒子数を算出する必要が無いので、演算の手間を省くことができる。その上、検出器が2つでも計測できるので、装置を安価に製造することできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明に係る実施の形態の微小粒子の粒子数計測方法及び装置について、図面を参照しながら説明する。図1に、この実施の形態の微小粒子の粒子数計測装置1の構成を示す。この微小粒子の粒子数計測装置1は、微分型電気移動度測定装置(DMA:Differential Mobility Analyser:以下DMA) 2、高感度電流計(エレクトロメータ)3、凝縮核計数器(CNC:Condensation Nucleus Counter:以下CNC)4、フィルタ5、ポンプ6、循環用配管7、及び、演算制御部8等を有して構成される。
【0027】
DMA2は、エアロゾル入口11に連結する荷電器12を一端側に有する円筒状体13の内部に、中央電極(高電圧電極)14と前方外側電極(別の電極)15、粒子捕集電極16、後方外側電極(別の電極)17を有して構成される。また、筒状体13の他端側には円錐台形状の混合部18を有して構成される。この混合部18は循環用配管7により、フィルタ5とポンプ6を経由して、筒状体13の前方のエア入口11aに連結される。
【0028】
中央電極14は棒状に形成されると共に、円筒状体13の中心部に配設され、電源19により高電圧が印加される。一方、電極15、16、17は、それぞれ円筒状に形成され前後方向に分かれて、中央電極14を囲んで配置される。前方外側電極15と後方外側電極17は接地され、粒子捕集電極16は高感度電流計3に接続される。なお、DMA2の中央電極14に印加する高電圧の値を設定する時には、後方外側電極17を一時的に高感度電流計3に接続できるように構成する。この構成により、印加する高電圧の設定を、後方外側電極17でに捕集されるに粒子群M3の粒子数が最小、即ち、後方外側電極17に接続された高感度電流計3で検出される電流値が最小となるように電圧を調整することで、行うことができるようになる。
【0029】
また、演算制御部8は、DMA2の荷電器12、電源19、ポンプ6、高感度電流計3、CNC4を制御すると共に、高感度電流計3やCNC4の出力値を入力する。この演算制御部8は、図2に示すように、所定の時間間隔でDMA2の高電圧電極14に電圧を印加して、電圧印加時には、CNC4で排気ガス中の第2の粒子群の粒子数M4を計数し、電圧非印加時にはCNCで排気ガス中の粒径の全範囲における粒子数(M1〜M4)を計数する。このCNC4の電圧非印加時の粒子数Nbと電圧印加時の粒子数Naとの差から算出される粒子数Nc(=Nb−Na)と、高感度電流計3で求めた電流値icとを比較して、第1の粒子群1の荷電効率fcを算出し、この荷電効率fcを使用して、高感度電流計3で求めた電流値imから検出される第1の粒子群M2の粒子数Nmを補正して、第1の粒子群M2の粒子数Nvを算出するように構成される。これにより、精度の高い測定をすることができるようになる。
【0030】
次に、上記の構成の微小粒子の粒子数計測装置1の動作、及び、微小粒子の粒子数計測装置1による微小粒子の粒子数計測方法について説明する。
【0031】
測定対象の微小粒子を含んだ排出ガスA1は、エアロゾル入口11よりDMA2に取り入れられて荷電器12に入り,コロナ放電等により微小粒子M1〜M4は帯電される。その後、DMA2の円筒状体13内へ導入され、ポンプ10より送出されるシースエアA2によって、円筒状体13内の層流に乗り、中央電極14と、前方外側電極15、粒子捕集電極16、後方外側電極17の間を通過する。
【0032】
微小粒子M1〜M4は中央電極14と電極15〜17の間に印加された高電圧による電界中で電気移動度により分級される。核モード粒子M2より粒径が小さい微小粒子(図3のその他)M1は、前方外側電極15に捕集され、粒径が所定の範囲(例えば5nm〜50nm)の核モード粒子M2は、粒子捕集電極16へ捕集される。また、核モード粒子M2と集積モードM4の間(図3の共存部)の粒径の微小粒子M3は、後方外側電極17に捕集される。
【0033】
最初に、中央電極14と電極15〜17の間の電圧を設定する。この電圧は、後方外側電極17に図3に示す共存部の粒子M3が捕集されるように設定される。つまり、高感度電流計3を後方外側電極17に接続して、測定する粒子の粒径分布が図3に示すようなディーゼルエン粒子における典型的な粒径分布をしている際に、粒子数の谷間である共存部が後方外側電極17の捕集範囲となるように電圧を調整する。言い換えれば、この後方外側電極17に捕集されるに粒子群M3の粒子数が最小、即ち、検出される電流値が最小となるように電圧を調整する。この調整により電圧設定状態を最適とする。この設定により、各モードの粒子M1〜M3の大部分(90%以上)の粒子をDMA2で捕集できるようになる。この電圧設定後は、高感度電流計3を粒子捕集電極16に接続する。
【0034】
この前方外側電極15と後方外側電極17により、粒子捕集電極16に捕集される粒径範囲を精度よく設定でき、核モード粒子M2と集積モード粒子M4の間(共存部)の微粒子M3を分離することができる。また、この前方外側電極15と後方外側電極17は、DMA2の中央電極15と粒子捕集電極16の間の高電圧で生じる強電場を外部に漏らさないという役割を果たしている。
【0035】
次に、この設定された高電圧を印加した電圧印加の状態では、粒子捕集電極16に核モード粒子M2が捕集されると、荷電器12のコロナ放電等で帯電した核モード粒子M2の荷電が粒子捕集電極16に放出される。この荷電の放出は、粒子捕集電極16に接続された高感度電流計3により電流として検出されるので、その電流値により粒子数を算出する。
【0036】
そして、粒径が大きいためにDMA2内の電極15〜17に捕集されなかった集積モード粒子M4は、その電気移動度に応じて同心円状に分級されて円筒状体13の他端側に流出するが、ガス流を円錐状に絞ってガス流と共に流出してくる粒子を混合する混合部18において、均一に混合される。この混合ガスA3の一部がCNC4に吸引されて、この混合ガスA3中の集積モード粒子M4が光学的に計数される。なお、この集積モード粒子M4のような粒径の大きな粒子は、荷電器12において多重荷電される比率が高いために電流検出で正確な計数をすることが難しいので、CNC4のような光学的検出を用いることが好ましい。
【0037】
一方、混合ガスA3の内、CNC4により吸引されなかった残りの排ガスA4中の微小粒子はフィルタ5で除去される。このフィルタ5を通過したガスA5は、ポンプ6により、微小粒子を含まないシースエアA2として、エア入口11aに循環供給される。
【0038】
従って、電圧印加時は、排出ガス中の微小粒子M1〜M4の内、核モード粒子M2が高感度電流計3により電気的に検出・計測され、同時に、集積モード粒子M4がCNC4により光学的に検出・計数される。一方、中央電極14に高電圧が印加されない電圧非印加時では、DMA2は分級されないため、粒子径が全範囲に及ぶ粒子M1〜M4がCNC4により光学的に検出・計数される。
【0039】
次に、高感度電流計3により検出された粒子数の補正について説明する。この補正は、荷電部12では、微小粒子全部を荷電させることは難しく、微小粒子全数に対する荷電した微小粒子の割合を100%にすることができないので、この荷電効率fcを測定し、この実測値で補正し、測定精度を向上させるものである。
【0040】
この荷電効率fcの測定は、DMA中央電極14と、前方DMA外側電極15、DMA粒子捕集電極16、後方DMA外側電極17の間に、図2に示すように所定の時間間隔で電圧を印加して、電圧印加時(オン時)には、CNC9で排気ガス中の集積モード粒子(図3の「CNC検出分」)M4の粒子数Naを計数し、電圧非印加時(オフ時)にはCNC9で排気ガス中の粒径の全範囲(図3の「その他」+「DMA捕集分」+「共存部」+「CNC検出部」)における粒子数Nbを計数する。なお、DMA2の印加電圧を調整してより適切に設定すると、「その他」と「共存部」の粒子数を無視できるレベルにすることができるので、電圧非印加時のSNC9で検出される粒子数Nbを、図3の「DMA捕集分」+「CNC検出部」の粒子数、即ち、核モード粒子M2の粒子数と集積モード粒子M4の粒子数の和とみなすことができるようになる。
【0041】
この粒径の全範囲における粒子数Nbと、集積モード粒子M4の粒子数Naとの差から算出した粒子数Nc(=Nb−Na)と、高感度電流計3で求めた電流値icとを比較して、DMA2で捕集された粒子群の荷電効率fcを算出する。一般的に荷電効率fは、電流値iと粒子数nと電気素量eとの間に「i=f×e×N」の関係があるので、DMA2で捕集された粒子群の荷電効率fcは「fc=ic/(e×Nc)=ic/(e×(Nb−Na)」となる。これにより荷電効率fcを求めることができる。この荷電効率fcを用いて、計測時に得られる高感度電流計3で求めた電流値imから算出される粒子数Nmを補正して、粒子数Nvを算出する(Nv=Nm/fc)。
【0042】
なお、この電圧印加と電圧非印加の時間間隔は、排気ガスの変動度合や要求される測定精度に応じて決まり、予め実験等により求めて設定しておくことができる。この時間間隔は周期的に設定してもよいが、排気ガスの変動度合やエンジンの排気ガスの場合にはエンジンの運転状態の変化に応じて、自動的に、電圧印加と電圧非印加の補正用制御を設けるように演算制御部8を構成してもよい。
【0043】
この微小粒子の粒子数計測方法及び装置1は、CNC4で光学的に粒子数を検出し、更に、DMA2の高感度電流計3により電流値imを計測することにより、DMA2の電圧非印加時の粒子数Nbと電圧印加時の粒子数Naとの差から求められるDMA2で捕集される粒子数Nc(=Nb−Na)を求め、この粒子数Ncと電流値icの比から荷電効率fcを実測値から算出することができるので、測定精度を向上させることができる。
【0044】
更に、排出ガスA1中に含まれる二種類の粒子、核モード粒子M2と集積モード粒子M4を所定の設定のDMA2により分級して、2台の検出器3、4で粒子数を検出するので、電圧等の走査の必要がなく瞬時に高速で測定を行うことができる。また、測定結果に関しては、核モード粒子M2と集積モード粒子M4の粒子数が直接得られるので、粒径分布から積分して粒子数を算出する必要が無くなる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係る実施の形態の微小粒子の粒子数計測装置の構成を示す図である。
【図2】DMAの電圧印加と電圧非印加の状態を示す図である。
【図3】ディーゼル排出微小粒子(DEP)の粒径分布の一例を示す図である。
【図4】多段インパクターの構成の一例を示す図である。
【図5】DMAとCNCの組合せ装置の構成の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0046】
1 微小粒子の粒子数計測装置
2 微分型電気移動度測定装置(DMA)
3 高感度電流計(エレクトロメータ)
4 凝縮核計数器(CNC)
8 演算制御部
12 荷電器
14 中央電極
15 前方外側電極
16 粒子捕集電極
17 後方外側電極
18 混合部
19 電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小粒子を含んだ排出ガスを、荷電器により帯電させ、微分型電気移動度測定装置を用いて電気移動度により分級し、所定の範囲の粒径を有する粒子群を粒子捕集電極で捕集し、該粒子捕集電極に発生する電流を高感度電流計で検出し、該検出電流から前記粒子群の粒子数を検出すると共に、前記微分型電気移動度測定装置から排出される排気ガス中の少なくとも一部に含まれる粒子数を凝縮核計数器で計数する微小粒子の粒子数計測方法であって、
前記微分型電気移動度測定装置の分級用の電極に所定の時間間隔で電圧を印加して、電圧印加時には、前記凝縮核計数器で前記微分型電気移動度測定装置で捕集されずに流出してきた粒子数を計数し、電圧非印加時には前記凝縮核計数器で排気ガス中の粒径の全範囲における粒子数を計数し、前記凝縮核計数器の電圧非印加時の粒子数と電圧印加時の粒子数との差から算出される粒子数と、前記高感度電流計で求めた電流値とを比較して、前記粒子群の粒子の荷電効率を算出し、該荷電効率を使用して、前記高感度電流計で求めた電流値から検出される粒子数を補正して、前記粒子群の粒子数を算出することを特徴とする微小粒子の粒子数計測方法。
【請求項2】
微小粒子を含んだ排出ガスを、荷電器により帯電させ、微分型電気移動度測定装置を用いて電気移動度により分級し、この分級の際に、第1の所定の範囲の粒径を有する第1の粒子群を、前記微分型電気移動度測定装置の粒子捕集電極で捕集し、該粒子捕集電極に発生する電流を高感度電流計で検出し、該検出電流から前記第1の粒子群の粒子数を検出すると共に、前記微分型電気移動度測定装置から排出される排気ガス中の少なくとも一部に含まれる粒子数を凝縮核計数器で計数する微小粒子の粒子数計測方法であって、
前記微分型電気移動度測定装置の電極において所定の時間間隔で電圧を印加して、電圧印加時に、前記凝縮核計数器で排気ガス中の前記第1の所定の範囲外の第2の所定の範囲の粒径を有する前記第2の粒子群の粒子数を計数し、電圧非印加時には前記凝縮核計数器で排気ガス中の粒径の全範囲における粒子数を計数し、前記凝縮核計数器の電圧非印加時の粒子数と、電圧印加時の粒子数との差から算出した粒子数と、前記高感度電流計で求めた電流値とを比較して、前記第1の粒子群の荷電効率を算出し、該荷電効率を使用して、前記高感度電流計で求めた電流値から検出される前記第1の粒子群の粒子数を補正して、前記第1の粒子群の粒子数を算出することを特徴とする微小粒子の粒子数計測方法。
【請求項3】
計測対象のガス中の微粒子を帯電させる荷電部と、ガス流に乗って移動する帯電微粒子を分級するための高電圧が印加される高電圧電極と、該高電圧電極と対向して配置され、所定の範囲の粒径を有する粒子群を捕集する粒子捕集用電極と、該粒子捕集用電極に接続されて帯電粒子が捕集されて発生する電流値を検出する高感度電流計と、前記高電圧電極と前記粒子捕集用電極の下流側に流出した排気ガス中の粒子数を測定するための凝縮核計数器とを有すると共に、
前記微分型電気移動度測定装置の分級用の電極に所定の時間間隔で電圧を印加して、電圧印加時には、前記凝縮核計数器で前記微分型電気移動度測定装置で捕集されずに流出してきた粒子数を計数し、電圧非印加時には前記凝縮核計数器で排気ガス中の粒径の全範囲における粒子数を計数し、前記凝縮核計数器の電圧非印加時の粒子数と電圧印加時の粒子数との差から算出される粒子数と、前記高感度電流計で求めた電流値とを比較して、前記粒子群の粒子の荷電効率を算出し、該荷電効率を使用して、前記高感度電流計で求めた電流値から検出される粒子数を補正して、前記粒子群の粒子数を算出する演算制御部とを有した微小粒子の粒子数計測装置。
【請求項4】
計測対象のガス中の微粒子を帯電させる荷電部と、ガス流に乗って移動する帯電微粒子を分級するための高電圧が印加される高電圧電極と、該高電圧電極と対向して配置され、第1の所定の範囲の粒径を有する第1の粒子群を捕集する粒子捕集用電極と、該粒子捕集用電極に接続されて帯電粒子が捕集されて発生する電流値を検出する高感度電流計と、前記高電圧電極と前記粒子捕集用電極の下流側に流出した排気ガス中の粒子数を測定するための凝縮核計数器とを有すると共に、
前記微分型電気移動度測定装置の電極において所定の時間間隔で電圧を印加して、電圧印加時には、前記凝縮核計数器で排気ガス中の前記第2の粒子群の粒子数を計数し、電圧非印加時には前記凝縮核計数器で排気ガス中の粒径の全範囲における粒子数を計数し、前記凝縮核計数器の電圧非印加時の粒子数と電圧印加時の粒子数との差から算出される粒子数と、前記高感度電流計で求めた電流値とを比較して、前記第1の粒子群の荷電効率を算出し、該荷電効率を使用して、前記高感度電流計で求めた電流値から検出される前記第1の粒子群の粒子数を補正して、前記第1の粒子群の粒子数を算出する演算制御部とを有した微小粒子の粒子数計測装置。
【請求項5】
前記第1の粒子群を捕集する粒子捕集用電極とは別の電極を前記粒子捕集用電極の上流又は下流の少なくとも一方に設けたことを特徴とする請求項4記載の微小粒子の粒子数計測装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−128739(P2008−128739A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−312076(P2006−312076)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】