説明

微小電流測定装置及び線間非接触電圧計測装置

【課題】各種のラインに用いられる2つの被覆電線の間の線間電圧を金属非接触で正確に計測することができ、作業性のよい微小電流測定装置を提供する。
【解決手段】被覆電線に接するように配置した2個の前記センサユニットを備え、各センサユニットが、それぞれの被覆電線の芯線に対峙して配置した第1電極と第1電極から所定の距離を置いて第1電極より遠く離して配置した第2電極を備えて、前記芯線と各電極との間にキャパシタンスを通して流れる電流を測定する。各電流の検出値を入力する入力手段とキャパシタンスを通して流れる電流の大きさが前記芯線に印加されている電圧に比例していることを利用して入力された各電流の検出値から線間電圧を演算処理して算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの被覆電線の間の線間電圧を非接触で計測する非接触計測装置及びこれを用いた線間非接触電圧計測方法に用いる微小電流測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、交流電圧が印加される導電線のまわりを、絶縁状態の導電体で覆い、該導電体を含む電流経路のインピーダンスに基づいて、流れる電流に対して電圧に換算する係数を予め求めておき、該電流経路で電流を計測し、計測された電流を、該係数に基づいて電圧に変換して電圧を測定すること、前記電気経路を、2つの導電体間に形成し、該2つの導電線間の線間電圧を測定することが計算されている。
【0003】
特許文献2には、検出電極から流出する電流を計測し、電流とインピーダンスから導体に印加された電圧を計測することが記載されている。
【0004】
特許文献3には、電線の電圧を非接触で検出する一対の測定ユニットを備えて、各測定ユニットによってそれぞれ検出された2つの電線の各電圧の差分電圧を各電線の間の線間電圧として測定すること、各測定ユニットは、片手で保持可能にそれぞれ構成されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−55126号公報
【特許文献2】特開平10−206468号公報
【特許文献3】特開2009−244131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された技術にあっては、線間電圧を測定するに際して、導電線のまわりを、絶縁状態の導電体で覆う必要がある。特許文献2に記載されたものは線間電圧を計測するものではない。特許文献3に記載された技術にあっては、各測定ユニットを片方の手で保持可能であるというメリットがあるが、各測定ユニットによってそれぞれ電線の電圧を検出し、各電圧の差分電圧を線間電圧とするものであるために正確な電圧を測定するのは困難であるという問題がある。
【0007】
最近ますますAC100V、200V、400Vラインで、2つの被覆電線の間の線間電圧を金属である芯線に非接触で正確に計測することが出来、作業性のよい非接触電圧計測装置が求められるようになってきた。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みて各種のラインに用いられて、2つの被覆電線の間の線間電圧を金属非接触で正確に測定することができ、作業性のよい微小電流測定装置を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、微小電流測定装置に接線された線間非接触電圧計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、2つの被覆電線の芯線に印加される線間電圧を該芯線に非接触で、キャパシタンスを通して流れる電流の大きさが前記芯線に印加されている電圧に比例していることを利用して測定する線間非接触電圧計測装置に用いられる微小電流測定装置において、
2つの被覆電線にそれぞれ接するように配置した同一構成の2個の前記センサユニットを備え、
各センサユニットが、上方クランプ電線押えと、下方クランプ電線押えと、いずれかのクランプ電線押えを回動し得るようにして、かつばね機構を有して保持する中間支持体と、を備えて、両クランプ電線押え間に被覆電線をクランプするクランプ部を形成し、
いずれかのクランプ電線押えが、それぞれの被覆電線の前記芯線に対峙して配置した第1電極と第1電極から所定の距離を置いて第1電極より遠く離して配置した同一寸法、同一形状の第2電極を有するセンサ基板を備えて、前記芯線と各電極との間のキャパシタンスを通して流れる微小電流をそれぞれを検出すること
を特徴とする微小電流測定装置を提供する。
【0011】
本発明は、また、第2電極と前記被覆電線との間であって、該被覆電線に対峙し、かつ前記芯線までの配置距離が第1電極の配置距離と同一の距離に第1電極と同一形状同一大きさの導板が配置され、該導板を介して流れる微小電流を第2電極を介して検出することを特徴とする微小電流測定装置を提供する。
【0012】
本発明は、また、第1電極または第2電極から所定の同一距離を置き、かつ第1電極または第2電極の側方両側であって、前記芯線に対峙して第3電極及び第4電極が配置され、前記いずれかの電極の側方両側の前記芯線からの微小電流を検出することを特徴とする微小電流測定装置を提供する。
【0013】
本発明は、また、前記上方クランプ電線押えが下面に多層プリント基板構成の前記センサ基板を備え、すべての電極が多層プリント基板のいずれかのプリント基板に形成され、前記下方クランプ電線押えが上面に被覆電線を収納するV溝を有するクランプ材を備えることを特徴とする微小電流測定装置を提供する。
【0014】
本発明は、また、前記第1電極または/及び第2電極1は複数個配置され、第1電極または/及び第2電極で検出された複数の検出値の平均値を測定値とすることを特徴とする微小電流測定装置を提供する。
【0015】
本発明は、また、前記微小電流測定装置で測定された微小電流を線間電圧に変換する線間非接触電圧変換手段がいずれかのクランプ電線押えに設けられたことを特徴とする線間非接触計測装置を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、上述したように各センサユニットが、それぞれの被覆電線の芯線に対峙して配置した第1電極と第1電極から所定の距離を置いて第1電極より遠く離して配置した第2電極を備えて、各電極が芯線と各電極との間のキャパシタンスを通して流れる電流を検出し、キャパシタンスを通して流れる電流の大きさが芯線に印加される電圧に比例していることを利用して線間電圧を演算処理して求めるものであるために、微小な電流を測定することで正確に線間電圧を計測することができ、上述のように第1電極と第2電極を配置したセンサユニットを用いて電流を検出しているので作業性がよくなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の原理を説明する図。
【図2】本発明の実施例1の構成を示すブロック図。
【図3】本実施例1で用いるセンサ基板の構造を示す平面図。
【図4】図3の側面図。
【図5】センサ基板側面断層図。
【図6】センサ基板各層の詳細を示す図。
【図7】導板の機能、作用を説明する図。
【図8】本発明の実施例2の構成のセンサ基板側面断層図。
【図9】図8のセンサ基板各層の詳細を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は、本発明の非接触電圧計測方法の計測原理を示す図である。本発明は、導線A、Bとセンサ電極との間のキャパシタンスを通して流れる電流の大きさが導線A、Bに印加されている電圧と比例する関係にあることを利用する。このような関係を用いて電圧計としては検電器がある。本発明にあっては、センサ電極を2組用い、2つの線間の線間電圧を計測するものであること、及び1つのセンサユニットに2つあるいは複数個のセンサ電極を用いて電圧値を計測していることが一般的な検電器とは異なる。
【0020】

【0021】
このように、本発明の測定系では、微小な電流を測定する。微小な電流を測定することで線間電圧を正確に計測することができることに本発明の特徴がある。
【実施例1】
【0022】
図2は、被覆電線1、1Aの線間電圧を計測する場合の実施例をブロック図で示す。図2において、非接触電圧計測装置100は、非接触測定部となる微小電流測定装置5とパソコンあるいは専用の計測装置で構成される演算装置6とから構成される。この場合被覆電線1、1Aが被測定電線とされ、それぞれの被覆体2、2Aでそれぞれの芯線3、3Aは覆われており、この芯線3、3Aは図1で導体A、Bに該当する。微小電流測定装置5は、2個のセンサユニット7、7Aで構成される。
【0023】
被覆電線1、1Aに接するように2個のセンサユニット7、7Aが配置され、センサユニット7が被覆電線1の被覆体2に接触して配置され、センサユニット7Aが被覆電線1Aの被覆体2Aに接触して配置される。センサユニット7、7Aは被覆体2、2Aに接触するが芯線3、3Aには非接触である。すなわち金属非接触とされる。
【0024】
センサユニット7、7Aはそれぞれ第1電極11、11A、第2電極12、12A、第3電極13、13A、及び第4電極14、14Aを備える。第1−第4電極はそれぞれの対応の電極と同一位置に配置される。配置の状況については後述する。
【0025】
各センサユニット7、7Aに配設された第1電極11、11A、第2電極12、12Aが線間電圧計測の上で重要な作用をなす。
【0026】
演算装置6は、信号入力部21、21A、センサ感度調整部22、22A、測定部23、23A、判定部24、24A、制御部25、25A、増幅部26、26A、センサホールド状態判別部27、演算部28、データベース部29及び表示部30から構成される。入力手段は、信号入力部21、21Aから構成され、センサ感度調整手段は、センサ感度調整部22、22Aから構成され、演算処理手段は、測定部23、23A、判定部24、24A、制御部25、25A、増幅部26、26A、センサホールド状態判別部27及び演算部28、28Aから構成され、表示手段は表示部30から構成される。
【0027】
表示手段は、表示部30に測定データ、計測データを画面に表示することができる。
【0028】
このような構成になる演算装置6を説明する前に、図3−図8を用いて、センサユニット7、7Aについて説明する。
【0029】
演算装置6はパソコンあるいは専用の計測装置で構成してもよいし、非接触測定部5に組み込み、微小電流測定装置5に表示部30を設けるようにしてもよい。
【0030】
図3は、センサユニット7(センサ7Aについても同じ、以下、センサ7Aについて説明する。)の構造を示す上方からの平面図、図4は、その側面図を示す。
【0031】
これらの図において、センサユニット7は、ヨコ85mm×タテ30mm程度の長方形をなす上方クランプ電線押え31と下方クランプ電線押え32を備え、これらの部材は、ばね機構を有する中間支持体33によって互いに回転可能に支持され、バネ機構が設けられて常に左側のクランプ部35を閉じる方向の力が作用するように構成してある。従って、操作者は、上方クランプ電線押え31と下方クランプ電線押え32の右側の操作部34を持ち、押圧することで左側のクランプ部35の開閉を行うことができる。
【0032】
上方クランプ電線押え31は、図3に示すように、中央部に基板部品実装スペース36を有し、左端側に基板電極部37を有する。基板電極部37は左端部に配置される被覆電線1の位置に対峙した形となり、基板部品実装スペース36に近接する。
【0033】
上方クランプ電線押え31のクランプ部35の下方に形成された基板部品実装スペース36及び基板電極部37には、センサ基板38が配置される。
【0034】
このセンサ基板38の外面にアクリルシート39が張られて固着され、上方クランプ電線押え31の上方外面にシールド基板40が設けられる。
【0035】
下方クランプ電線押え32のクランプ部38の上面にシールド基板42を介してクランプ材41が固着され、クランプ材42には上方を向き、直角方法に凹部とされたV溝43が形成してある。
【0036】
操作者が片方の手で操作部34を押圧操作してクランプ部35を開放して上方クランプ電線押え31と下方クランプ電線押え32との間に大きな空間部を形成し、被覆電線1をV溝43にV溝に沿って収納するこの収納を確認、完了するとクランプ部35を閉じ、双方のクランプ電線押えはしっかりとV溝43に被覆電線1を保持することができる。
【0037】
上方クランプ電線押え31には、基板電極部37に向けてセンサケーブル44が接続され、このセンサケーブル44は、図2に示すように演算装置6の信号入力部21に接続される。
【0038】
図5は、センサ基板38の側面断層図である。センサ基板38は、長手方向において28mmの長さを有した矩形形状とされる。また、センサ基板38は、多層プリント基板として構成することができ、多層構造とされる。多層プリント基板の構成は通常のよく知られた製作方法の実施で行えばよい。このようにして構成された多層プリント基板のセンサ基板38は、V溝43内に保持された被覆電線1の長手方向に沿って配置される。
【0039】
センサ基板38は、一方の面が被覆電線1の被覆体2に接触するが、被覆電線1の電線導体である芯線3には非接触である。
【0040】
センサ基板38は、その内部に被覆電線1の長手方向に沿って配置される第1層目、第2層目第3層目及び第4層目を有して、多層構造となる。各層間にはガラスエポキシ樹脂などの高分子樹脂層が形成され、各層間を絶縁する。第1層の外側に図4に示すアクリルシート39が設けられ、このアクリルシート39が被覆電線1に接触する。
【0041】
第1層目の中央から左側2/3部分に長手方向に第1電極11が設けられ、第2層目の中央から右側2/3部分に長手方向に第2電極12が設けられ、第3層目の左側2/3−3/3部分に長手方向に第3電極13、右側2/3−3/3部分に長手方向に第4電極14が設けられ、第4層目にはシールド45が設けられる。第1電極11、第2電極12、第3電極13及び第4電極14からセンサユニット7が形成される。
【0042】
図6にセンサ基板8を構成する各層に形成された電極の配置状態を示す、図6(a)は、被覆電線側からの第1電極11の配置、図6(b)は、第2電極12の配置、図6(c)は、第3電極13及び第4電極14の配置を示し、図6(d)はシールド45のシールドベタパターン状態を示す。第1電極11と第2電極12は同一形状同一大きさをなし、第3電極13と第4電極14は同一形状同一大きさをなし、表面積は第1電極11の1/2とされる。各層は図に示すように同一形状をなして多層構成とした時に、板状となる。第1電極11及び第2電極12が主電極となり、第3電極13及び第4電極14が補助電極となる。
【0043】
これらの電極11−14は、図2に示すように、センサケーブル44を介して演算装置6の信号入力部21に接続される。センサケーブル44に代えて無線機を取りつけて検出信号を無線で無線受信機を備えた演算装置6に送信するようにしてもよい。
【0044】
第1層目には、第1電極11と切り離した状態で中央から2/3部分に電極線のない導板46が配設される。この導板46は、第1電極11と被覆電線1との間であって、被覆電線1に対峙し、かつ芯線3までの配置距離が第1電極11の配置距離と同一の距離に第1電極11と同一形状同一大きさとして樹脂層間に配置される。
【0045】
このように、本実施例は、被覆電線1、1Aに接するように配置した2個のセンサユニット7、7Aを備え、各センサユニット7、7Aが、それぞれの被覆電線1、1Aの芯線3、3Aに対峙して配置した第1電極11、11Aと第1電極11、11Aから所定の距離を置いて第1電極11、11Aより遠く離して配置した第2電極12、12Aを備える。
【0046】
また、第2電極12、12Aと被覆電線1、1Aとの間であって、被覆電線1、1Aに対峙し、かつ芯線3、3Aまでの配置距離が第1電極11、11Aの配置距離と同一の距離に第1電極11、11Aと同一形状同一大きさの導板46、46Aが配置される。なお、“A”を付した部材はセンサユニットB(7A)に対応する。
【0047】
また、各センサユニット7、7Aが、上方クランプ電線押え31と、下方のクランプ電線押え32と、いずれかのクランプ電線押え31、32を回動し得るようにして、かつ通常のばね機構を有して保持する中間支持体33と、を備えて、両クランプ電線押え31、32間に被覆電線1、1Aをクランプするクランプ部35を形成している。
【0048】
いずれかのクランプ電線押え31、32が、それぞれの被覆電線1、1Aの芯線3、3Aに対峙して配置した第1電極11と第1電極11から所定の距離を置いて第1電極11より遠く離して配置した第2電極12を有するセンサ基板38を備えて、各電極11、11A、12、12Aが前記芯線と各電極との間のキャパシタンスを通して流れる微小電流をそれぞれを検出することになる。この検出された値は、測定値となり、線間電圧計測に用いられることになる。
【0049】
上述の場合、上方クランプ電線押え31が下面に多層プリント基板構成のセンサ基板38を備えるものとされ、すべての電極が多層プリント基板のいずれかのプリント基板に形成され、下方クランプ電線押え32が上面に被覆電線1を収納するV溝43を有するクランプ材42を備える。
【0050】
以上の本実施例の構成において、センサユニット7について、第1電極11及び第2電極12は、芯線3と各電極11、12との間のキャパシタンスを通して流れる電流を検出する。センサユニット7Aについても同様である。
【0051】
また、第2電極12は、導板46が配置された場合に、この導板46を介して流れる芯線3と第2電極12との間のキャパシタンスを通して流れる電流を測定する。
【0052】
図2において、検出電流値、すなわち測定電流値は、図2に示すように、演算装置6の信号入力部21に入力される。
【0053】
センサ感度調整部22、22Aは、検出電流値の大きさによる感度に対応して感度調整を行う。感度調整された検出電流値は、測定部23、23Aに送られる。次いで、判定部24、24Aで判定が可能か判定され、判定が可能とされると制御部25、25Aによって増幅部26、26Aに送信され、演算部28で線間電圧と演算処理がなされる。この演算処理は、上述のキャパシタンスを通して流れる電流の大きさが、芯線3、3Aと各電極11と12及び11Aと12Aの間のキャパシタンスを通して流れる電流の大きさが芯線3、3Aに印加されている電圧に比例していることを利用しており、簡単な演算処理で第1電極11、11A第2電極12、12Aに発生した誘導電圧を求めることができ、芯線3、3A間に印加されている交流の線間電圧を計測することができる。
【0054】
計測した線間電圧は、表示部30に時々刻々表示することができる。
【0055】
次に導板46を配置した時の作用について説明する。導板46には電極線が設けられていないので、ダミーの電極と称することができる。
【0056】
図1におけるCのインピーダンスを3.74GΩとして100Vの電圧が印加されている場合の電流を計算すると26.7nAとなり、極めて小さい電流がセンサユニット7、7Aによって測定されることになる。センサユニット7、7Aはこのような極めて小さい電流を正確に測定することができる、この測定精度を更に向上するためにはキャパシタンスの影響をより少なくすることがよい。このことのために導板46が設けられる。
【0057】
図5に示すように、導板46を設けた場合のキャパシタンスの状態を図7に示す。
【0058】
図7に示すように、芯線3と第2電極12との間には第1電極11の位置に無接続の導体(ダミー電極)46が配置され、この配置によれば、CがCとC12の直列キャパシタンスとなる。
【0059】
この電極配置によれば、

【0060】
となって、キャパシタンスCはキャパシタンスC12の影響を極小なものとすることができる。そして、第1電極11と第2電極12との間の距離は予め定められた長さで、樹脂材料は既知であるので、キャパシタンスC12は既知として取り扱うことができるので、任意の被覆電線1と被覆電線1Aとの線間電圧を測定、計測するに当ってキャパシタンスの影響を最小とする処理を行うことができる。
【0061】
また、第1電極による電界が導板46及び第2電極12に対する影響をしにくくするために、第1電極11から離れた位置に導板46及び第2電極12を配置するのがよい。
【0062】
このように、本実施例の非接触電圧計測装置100は、キャパシタンスを通して流れる電流の大きさが芯線3、3Aに印加されている電圧に比例していることを利用して入力された各電流の検出値から線間電圧を演算処理する演算処理手段と、を有する演算装置6を備える。
【0063】
演算処理手段は、芯線3、3Aと各電極との間の電流の検出値から各誘導電圧信号を同時に演算処理して、線間電圧を演算することができる。したがって、非接触方法手段によって線間電圧が計測される。
【0064】
この演算処理手段を、上述したように、非接触測定部5に組み込むことができる。この場合、微小電流測定装置100で測定された微小電流を線間電圧に変換する線間非接触手段が上方クランプ電線押え31に組み込んで線間非接触計測装置とすることができる。したがって、線間非接触計測装置自体が図4に示す構造と同様の構造として構成される。また、表示部を同様に設けることができる。線間非接触変換手段を下方クランプ電線押え32に設けるようにしてもよいが、センサ基板38が上方クランプ電線押え31に設ける場合には、この線間非接触変換手段を上方クランプ電線押え32に組み込むのが望ましい。
【0065】
次に、第3電極13及び第4電極14の機能、作用について説明する。第3電極13A及び第4電極14Aについても同様である。
【0066】
図4において、V溝43には被覆電線1、1Aが正確にクランプ保持されることを説明した。しかしながら、場合によるとこのクランプ状態が正常でないことがあり得る。クランプ状態が正常でない時に線間電圧は計測値として用いられるべきではない。
【0067】
このクランプ状態を判定するために第3電極13及び第4電極14による検出電流が用いられる。第3電極13及び第4電極14は図5に示すように中央を境にして両側端に対象配置され、芯線3、3Aとの間の距離(間隙)は同一とされ、同じ配置条件で配置される。これらの電極13、14は第1電極11あるいは第2電極の両側に配置されれば検出可能であるが、できるだけ離して配置するのが望ましく、図4に示すように配置するのがよい。このため、図5にあっては、第3電極13、第4電極14はセンサ基板8の両端に配置している。両者の信号の差によって被覆電線1、1Aのクランプ部35におけるクランプ状態を判定することができる。クランプ状態が正常であれば両者の信号の差は零となる。具体的には、図2において、第3電極13、第4電極で測定された検出電流値は信号入力部21に入力され、センサ感度調整部22、22A、測定部23、23Aを介してセンサホールド状態判定部27に送られ、ここで両者の検出電流値が同一であるかが判定され、判定結果は表示部30に表示される。正常、非正常を色分けして表示するようにしてもよい。この色別表示によって計測された線間電圧が採用し得るか直ちに視認することができる。
【0068】
以上のように、第1電極11、第2電極12、第3電極13及び第4電極14の間の距離を一定に保つために、上述のように、多層プリント基板による多層構造として、各電極を多層プリント基板の各層に割り当てて配置していることで、精密かつ小型化が図られた非接触電圧測定のための微小電流測定装置とすることができる。
【0069】
また、第1電極11及び第2電極12をそれぞれ2またはそれ以上に分割して構成し、検出値を平均化することで測定精度を向上させることができる。
【0070】
非接触電圧計測装置100は、第1電極11または第2電極12から所定の同一距離を置き、かつ第1電極11または第2電極12の側方両側であって、芯線3、3Aに対峙して第3電極13及び第4電極14が配置されていることを1つの特徴とする。
【0071】
また、接触電圧計測装置100は、微小電流測定装置5に、第1電極11または/及び第2電極12は複数個配置され、演算処理手段6が、第1電極11または/及び第2電極12で検出された複数の検出値の平均値を用いて線間電圧を演算処理することを1つの特徴とする。図8、図9の構成を形成するに当って第1電極11及び第2電極12で検出された検出値を各電極の並列配置方式で取り出してもよいし、直列配置方式で取り出してもよい。このような構造にすることで被覆厚さのムラを吸収することができる。また、各部のキャパスタンスのムラを解消することができる。
【0072】
また、この例によれば、
センサユニット7、7Aが検出する被覆電線1、1Aの周囲にそれぞれ独立してクランプされる。
【0073】
入力手段が、各センサユニットによって検出された各電流の検出値を入力する。
【0074】
演算手段が、入力された各電流の検出値から線間電圧を演算処理すること
を特徴とする非接触電圧計測装置100による線間非接触電圧計測方法を提供する。
【0075】
本実施例によれば、センサユニット7、7Aはそれぞれ被覆電線1、1Aにクランプさせ、保持させることができ、線間電圧を測定する時に操作者は両手を自由にすることができるので、検出値のフォーマットへの記載あるいはクランプ位置のチェックにフリーハンドとなった両手を用いることができる。これによって、測定計測結果の記載あるいは通信を伴なう測定作業をスムーズに行うことができることとなる。これによって作業効率と危険な場所での安全性が確保されることになる。
【実施例2】
【0076】
図8及び図9は、本発明の実施例2の構成を示す図である。図8は、実施例1の図5に対応し、図9は図6に対応する。他の図面は実施例1の図面と同様であり、同一の構成については実施例1の説明を援用する。特に、実施例1との相違している部分について説明する。
【0077】
図8及び図9において、実施例2では、微小電流測定装置5の第1層目は、絶縁体51で構成し、第2層目に、電極11A、11B及び11Cの3つからなる第1の電極11を設けている。電極11A、11B及び11C間は絶縁される。第1の電極11の両側に対等位置に第3電極13及び第4電極14が設けてある。これらの電極は同一大きさ、同一形状としてあり、図9に示すように長手方向(図9で上下方向)に長い形状として配置され、各電極11Aと11B、11Bと11C及び11Cと第4電極14との間に導板46A、導板46B及び導板46Cからなる導板46が配置してある。
【0078】
第3層目は、図5に示と同様にして、電極12A、12B及び12Cからなる第2電極12が配置してある。図9に配置状態が示してあり、各電極は同一大きさ、同一形状としてあり、長手方向に長い形状として配置してある。各電極12A、12B及び12Cの大きさ、形状は第1電極の大きさ、形状が同一である。
【0079】
第4層目は、シールドパターンから構成される。
【0080】
以上の構成において第1電極11または/及び第2電極12は、複数個配置され、第1電極11または/及び第2電極12で検出された複数の検出値の平均を検出することになる微小電流測定装置100が構成される。
【0081】
これらの実施例によれば上述した微小電流測定装置に加えて、次のような線間非接触電圧計測装置も提供される。
【0082】
2つの被覆電線の芯線に印加される線間電圧を該芯線に非接触で、キャパシタンスを通して流れる電流の大きさが前記芯線に印加されている電圧に比例していることを利用して測定する線間非接触電圧計測装置に用いられる微小電流測定装置において、
2つの被覆電線にそれぞれ接するように配置した同一構成の2個の前記センサユニットを備え、
各センサユニットが、上方クランプ電線押えと、下方のクランプ電線押えと、いずれかのクランプ電線押えを回動し得るようにして、かつばね機構を有して保持する中間支持体と、を備えて、両クランプ電線押え間に被覆電線をクランプするクランプ部を形成し、
いずれかのクランプ電線押えが、それぞれの被覆電線の前記芯線に対峙して配置した第1電極と第1電極から所定の距離を置いて第1電極より遠く離して配置した同一寸法、同一形状の第2電極を有するセンサ基板を備えて、各電極が前記芯線と各電極との間のキャパシタンスを通して流れる微小電流をそれぞれを検出すること
を特徴とする微小電流測定装置が提供される。
【0083】
本実施例によれば、第2電極と前記被覆電線との間であって、該被覆電線に対峙し、かつ前記芯線までの配置距離が第1電極の配置距離と同一の距離に第1電極と同一形状同一大きさの導板が配置され、第2電極は該導板を介して流れる微小電流を検出することを特徴とする微小電流測定装置が提供される。
【0084】
本実施例によれば、第1電極または第2電極から所定の同一距離を置き、かつ第1電極または第2電極の側方両側であって、前記芯線に対峙して第3電極及び第4電極が配置されていることを特徴とする微小電流測定装置が提供される。
【0085】
本実施例によれば、前記上方クランプ電線押えが下面に多層プリント基板構成の前記センサ基板を備え、すべての電極が多層プリント基板のいずれかのプリント基板に形成され、前記下方クランプ電線押えが上面に被覆電線を収納するV溝を有するクランプ材を備えることを特徴とする微小電流測定装置が提供される。
【0086】
本実施例によれば、第1電極または/及び第2電極は、複数個配置され、第1電極または/及び第2電極で検出された複数の検出値の平均を検出することを特徴とする微小電流測定装置が提供される。
【符号の説明】
【0087】
1、1A…被覆電線、2、2A…被覆体、3、3A…芯線、5…微小電流測定装置、6…演算装置(パソコン又は専用の計測装置)、7、7A…センサユニット、11、11A…第1電極、12、12A…第2電極、13、13A…第3電極、14、14A…第4電極、21…信号入力部、27…センサホールド状態判別部、28…演算部、30…表示部、31…上方クランプ電線押え、32…下方クランプ電線押え、46…導板(ダミー電極)、100…非接触電圧計測装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの被覆電線の芯線に印加される線間電圧を該芯線に非接触で、キャパシタンスを通して流れる電流の大きさが前記芯線に印加されている電圧に比例していることを利用して測定する線間非接触電圧計測装置に用いられる微小電流測定装置において、
2つの被覆電線にそれぞれ接するように配置した同一構成の2個の前記センサユニットを備え、
各センサユニットが、上方クランプ電線押えと、下方クランプ電線押えと、いずれかのクランプ電線押えを回動し得るようにして、かつばね機構を有して保持する中間支持体と、を備えて、両クランプ電線押え間に被覆電線をクランプするクランプ部を形成し、
いずれかのクランプ電線押えが、それぞれの被覆電線の前記芯線に対峙して配置した第1電極と第1電極から所定の距離を置いて第1電極より遠く離して配置した同一寸法、同一形状の第2電極を有するセンサ基板を備えて、前記芯線と各電極との間のキャパシタンスを通して流れる微小電流をそれぞれを検出すること
を特徴とする微小電流測定装置。
【請求項2】
請求項1において、第2電極と前記被覆電線との間であって、該被覆電線に対峙し、かつ前記芯線までの配置距離が第1電極の配置距離と同一の距離に第1電極と同一形状同一大きさの導板が配置され、該導板を介して流れる微小電流を第2電極を介して検出することを特徴とする微小電流測定装置。
【請求項3】
請求項1または2において、第1電極または第2電極から所定の同一距離を置き、かつ第1電極または第2電極の側方両側であって、前記芯線に対峙して第3電極及び第4電極が配置され、前記いずれかの電極の側方両側の前記芯線からの微小電流を検出することを特徴とする微小電流測定装置。
【請求項4】
請求項1または2において、前記上方クランプ電線押えが下面に多層プリント基板構成の前記センサ基板を備え、すべての電極が多層プリント基板のいずれかのプリント基板に形成され、前記下方クランプ電線押えが上面に被覆電線を収納するV溝を有するクランプ材を備えることを特徴とする微小電流測定装置。
【請求項5】
請求項1または2において、第1電極または/及び第2電極は、複数個配置され、第1電極または/及び第2電極で検出された複数の検出値の平均値を測定値とすることを特徴とする微小電流測定装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載した微小電流測定装置で測定された微小電流を線間電圧に変換する線間非接触電圧変換手段がいずれかのクランプ電線押えに設けられたことを特徴とする線間非接触計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−137359(P2012−137359A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289393(P2010−289393)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【特許番号】特許第4691208号(P4691208)
【特許公報発行日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(599071809)イイダ電子株式会社 (2)
【Fターム(参考)】